インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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今回でIS原作3巻は、終了です。
まさか一年近くもかかるとは(汗)
前回と一緒にするつもりだったので、いつもより短めです。

IS最新11巻は、危惧していた延期がまたしても(呆)
人のことは言えませんが、いい加減にしてほしいです。

夏に現在はまっている「ナイツ&マジック」がアニメスタート
しますので、今から楽しみです♪


本当の夏の始まり――

「あ~……流石にしんどい……」

 

鬼が変わることのない鬼ごっこを終えた一夏は、翌日うなだれていた。

地獄の鬼も回れ右して、逃げ出す勢いの箒達に追いかけまわされた上、

騒ぎを聞きつけてやってきた千冬にリミットブレイクしてマキシマムドライブした

オオメダマを喰らったのだ。

更にその後に、ISや専用装備の撤収作業も行い睡眠時間は昼寝程度しか

取ることができなかった。

ブラック・ゴスペルとの戦いで体力を使い果たしていたのに、騒動に続く騒動に

一夏はこれ以上何かあったら、きれいな川の向こうにいるであろうご先祖様と

対面してしまうかもと、考えていた。

 

「織斑くん、また何かしたんだね。原田さんと……」

「だね~」

「ちっ……。バカップルが……」

 

疲労困憊の一夏を見て、クラスメート達は呆れたり舌打ちしたりしていた。

彼女達の視線の先には、不機嫌というオーラを目に見えるぐらい放出している

箒、セシリア、シャルロットと、三人とは反対に顔を赤くしてもじもじしている明がいた。

そんな彼女達とクタクタな一夏を見ただけで、何があったかを察したようだ。

一人カードゲーム大会で遊んでいたラウラは、一夏達の様子に首を傾げて

見る者を和ませているのは余談である。

ちなみに二組と四組のバスでは、鈴が爆発寸前の爆弾の如く苛立っており、

簪は無言で何かのシミュレーションを行っていた。

 

「でもさ~?織斑くん達は、いつものことだからいいんだけど……」

「高町さん達は、どうしたの?」

「さあ?だけど……こっちも下手に刺激したら、ヤバイわ……」

 

IS学園の日常風景となった一夏達のドタバタはともかく、クラスメート達は

バスの中に立ち込めるもう一つの異様な空気に、戦々恐々としていた。

彼女達が視界に入れようとしない席には…………。

 

「~~~~♪」

 

鼻歌を歌っているが、何故か震えてしまう笑みを浮かべるはやて。

 

「ぅ~~~//////////」

 

おあずけをされたペットのように切ない顔で、頬を染めたフェイト。

 

「ふん!」

 

鈴と同じく、刺激したら今にも噴火するぐらい怒っているアリサ。

 

「ふふふふふ…………」

 

影が差した笑みで、見る者に極寒の寒さを感じさているすずか。

 

「はぁぁぁ~~~~~~~~」

 

そして、魂が抜けたように放心状態のなのはがいた。

 

昨夜の夕食の時も5人は似たような空気を放っていたが、一つ違うのは

なのはが心ここにあらずな点である。

時は昨晩、カズキが千冬と束に会う少し前に遡る――。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「来てくれてありがとう。なのは」

「ユーノくん……」

 

一夏達が鬼の変わらない鬼ごっこをしている海岸から少し離れた、場所で

ユーノはなのはを呼び出していた。

 

「それで?何の用かな?ここでOHANASIするの?」

 

呼び出されたなのはは、フェイトが帰ってきてから浮かべている笑みのまま

レイジングハートを構える。

 

「ははは……。ちょっと、話をしたくてね……」

 

笑みを浮かべながら夜の闇のように黒いオーラを放つなのはに引きつりながらも、

ユーノはどこか遠くを見る目で夜空を見上げる。

 

「こうやって二人で、ゆっくり話すのは久しぶりだね。

 …………なのは。

 僕はね……ずっと……君と出会ったことを後悔してたんだ」

「ユーノくん!?」

「いや……正確には自分の弱さにだね……」

 

予想外のユーノの言葉に驚くなのはを気にせず、ユーノは言葉を続けていく。

 

「君と最初に出会った時、そもそも僕がレイジングハートを使えたら……。

 君と一緒に飛び続けていたら……。

 君やフェイト達との力の差を才能って言葉を使って、逃げていなかったら……。

 なのはは、こんな危険と隣り合わせな道に行かせなかったかもしれない。

 友達とかけがえのない日常を送っていられたかもしれない。

 落ちることも……なかったかもしれない――」

「っ!?違うよ、ユーノくん!

 落ちたのは私の……自分のせいで!」

 

否定の言葉を上げて、なのははユーノの言葉を遮る。

魔法という力と出会って、2年が過ぎた頃。

それまでの休むことなくハードなトレーニングや実戦を続けたなのはは、

その疲労から来る一瞬の判断ミスで、ある任務で瀕死の重傷を負ってしまった。

何とか過酷なリハビリで、回復することができたが未だに多くの者の

心に深い爪跡が残っている。

 

「それでも、きっかけが僕との出会いに変わりはないよ……。

 何百、何千回と思ったよ。どうして、僕みたいな奴がなのはみたいな

 優しい子と出会ってしまったんだろう……ってね。

 だけど、一夏やカズキさん達と出会ってわかったんだ。

 起きてしまった、過ぎてしまった過去は決して変えることができないって……。

 逃げることなんてできないって……」

「ユーノくん……」

「どんな過去も現在(いま)を作っているんだ。

 例え、それがどんなに辛く悲しいものでも……。

 だから、なのは……僕は決めたんだ……!」

 

なのはに背を向けていたユーノは振り向くと、なのはに真っ直ぐ目を向ける。

見たことのないユーノの真剣な眼差しに、なのはの胸は高鳴る。

 

「僕は、君の笑顔を守りたい。

 力が必要なら強くなればいい……どんな恐ろしい相手が来ても勝てばいい……

 一人で勝てないなら仲間と力を合わせればいい……。

 もう二度と、君の翼を折らせはしない!

 なのは……僕は君が好きだよ――」

 

ザァァァッ――――。

一際強い波が岩に当たり、風がなのはの髪を揺らした。

 

「……ふぇっ?そ、それってその////」

「もちろん友達とかじゃなくて、男が女を好きになることだからね?」

 

突然の告白に思考が停止するなのはにユーノは、誤解されない様念押しをして、

ウインクを投げ飛ばす。

 

「は?へ?え?」

「言っておくけど、ガンガン攻めていくからね?

 君に想いを伝えるには、並大抵なことじゃないから。

 全力全開で行くから、覚悟してね♪」

「…………にゃぁぁぁぁぁ//////////////////////////////!!!!!?????」

 

いつもの穏やかな少年の顔ではなく、獲物を狙う獰猛な獣の笑みで

宣戦布告をするユーノになのはは爆弾が爆発したように頭と耳から煙を

吹き出し顔を真っ赤にして奇声を上げた。

 

ドォォォォォン!!!!!

 

そして、なのはが奇声を上げたと同時に海が爆発し、

襲撃かとユーノが振り向くとそこには――――。

 

「なに…………しとるんかなぁ~。お・ふ・た・り・さ・ん?」

 

夜の闇よりも深い闇を纏ったはやてが夜天を統べる王として、空に佇み。

 

「野外?焦らし?……はぁ……はぁ……はぅっ///////!」

 

瞳を潤みさせ、息を興奮したように荒くしているフェイトが自分の体を抱きしめ。

 

「姿が見えないと思ったら……!」

 

体から炎が噴き出ているかのように、髪をうねらせワナワナと震えているアリサが

メラメラと怒りを燃やし。

 

「どうして、なのはちゃんが顔を真っ赤にしているのか……

 説明してくれるよね。ユーノくん?

 じっくりと……ね?」

 

見る者全てを凍えさせる笑みを浮かべるすずかが、深淵を宿した目を向け。

 

怒りのなのはに勝るとも劣らぬ威圧感を放っていた。約一名は若干違うが。

はやてとフェイトと違い、アリサとすずかはバリアジャケットを

着ているわけでもないのに、ユーノは空を飛んでも二人から逃げられる気がしなかった。

 

「え~っと……逃げるが勝ちってことで!」

「はにゃぁぁぁっ////////!!!?」

 

ユーノは、今の彼女達に話し合いが通じないと悟るとなのはを連れて逃亡する。

お姫様抱っこで抱えて。

 

「あああ!!!」

「ユーノ君、OHANASIやで!」

「へ~……。私達が見ている前で、そういうことするんだ……」

「ほ、放置プレイ……。ユ、ユーノ……しゅごい//////!」

 

お姫様抱っこでなのはを抱えて逃げ出したユーノに、はやて達は放出していた

黒いオーラを真っ黒いオーラに変えて、追撃を開始する。

アリサとすずかはバリアジャケットを着ているわけでも、ISを纏っているわけでも

ないのにそれに劣らない動きで追いかけ、ユーノを震撼させた。

ちなみに、騒ぎを聞きつけてやってきたカズキは、

一部始終をカメラに録画して一通り笑い転げて楽しんでから止めに入ったのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「八神さん達は、篠ノ之さん達と同じ感じだけど、高町さんのあれは……」

「原田さんに似ているよね……」

「あっ。メール見て、顔真っ赤にした……」

「私達の知らないところで、どいつもこいつも青春しやがって……ケッ!」

 

慣れ親しんだ空気を放つはやて達と、一人明と同じ恋する乙女のオーラを

放つなのはに何があったのかおおよそ察したクラスメート達は、

やっていられないとばかりに舌打ちするのであった。

 

 

 

「(よし!明は、昨日のあれで一夏を気にかけている余裕が無いみたいだから、

 ここで一気に!)」

「(最大の障害である明さんが動かない、今がチャンスですわ!)」

「(う、うむ//////!何事も迅速な行動が、大事だからな!

 勝負だ一夏!)」

 

昨晩一夏と新たなステップを踏んだ明に、焦りを覚える箒達は明がオーバーヒート

している今の内に、一夏に何かアピールをと考えていた。

そして、他の者よりも先手を打つべく、クタクタな一夏に水分をと、帰りのバスの中で

飲もうと購入しておいたペットボトルを手に持って立ち上がる。

彼女達も一夏と同じく、千冬の説教を受けて同じ作業をしたにも関わらず、一夏よりも

元気なのは千冬の威圧が主に一夏に向いていたからではない。

恋する乙女の回復力である。

そう。決して、自分はカズキと大して変わらずいつも通りだったのに、

一夏は明とちゃっかりひと夏の思い出を作ったから、

千冬の嫉妬が一夏に注がれていたからでは決してない。

 

「あ~……何か飲み物飲み物と……」

「「「一夏っ(さん)!」」」

「ねえ、織斑一夏くんがいるのはこのバスかしら?」

 

箒達三人が一夏を呼ぶのと同時に、バスの中に見知らぬ女性が入ってきた。

見た目からしておそらく千冬と同年代と思われるが、教師の中にいた記憶は

誰にもない。

鮮やかな金髪が、夏の日差しで眩しいぐらいに輝き、ブルーのサマースーツと

合わさって絵画のような見惚れる大人の美しさだった。

 

「え~っと……一夏は俺ですけど……?」

「へぇ~君がね……」

 

かけていたサングラスを開いた胸元から谷間に預けると、女性は一夏の顔を

好奇心を覗かせて観察する。

 

「私は『銀の福音』の操縦者、ナターシャ・ファイルスよ」

「あっ!どこかで見た覚えがあると思ったら、福音の!」

 

一夏がポンと手を叩く様子を見て、ナターシャはクスリと笑みを浮かべる。

 

「ふふっ♪こうして見ると、どこにでもいる男の子なのに

 空に上がると大人の男の顔をするなんて、ちょっと反則よね~」

「?」

 

ナターシャは何が言いたいのかと一夏が首を傾げていると、ふいに柑橘系のコロンが

香ると頬に柔らかい何かが触れる感触がした。昨日と明とキスしたような……。

 

「……へっ?」

「あの子と私を助けてくれてありがとう。白い騎士さん♪

 今度はゆっくり会いましょう。バーイ~」

 

そう言ってナターシャはバスから去り、後には過ぎ去った嵐を見るように呆然とする面々が残された。

 

「…………」

『(おい、一夏。後ろ……)』

 

放心状態の一夏は、ゲキリュウケンに言われるままクルリと首を後ろに向ける。

 

「一夏……」

「モテモテだね~」

「幸せいっぱいのようですわね~」

「……浮気者……」

 

振り向いた先にいたのは、ジト目や笑顔でこめかみに浮かべる恋する乙女達。

 

「えっ!あ、あれ!これ俺が悪いの!?

 って、なんでみんなペットボトルを持って振りかぶって……ぎゃあああ!!!」

 

4人が投げたペットボトルは、正確に一夏の顔面に直撃して彼を撃沈させた。

 

『(こいつは、こういう星の元に生まれたのか?)』

 

ゲキリュウケンは倒れ伏す相棒に、ため息を人知れずこぼすのだった。

そして、何かを感じ取った鈴と簪は拳をバキボキと鳴らしたりシャドーボクシングを

したりしていた。

 

 

 

「おいおい、余計な火種を残すな。

 ただでさえ、面倒な奴らが多くて大変なのに、いつの間にかそれが増えてるんだぞ?」

 

バスから降りたナターシャに千冬は頭を押さえながら、ため息をもらす。

 

「まあ、本音は私の大好きな弟にあんなことを!なんだけどね~」

 

背後から聞こえてきたお約束の声に、千冬はためらうことなく裏拳を放つ。

その裏拳を声の主であるカズキは、やすやすとかわした。

 

「ふふ。予想よりずっと素敵な男性で、将来が楽しみだったからつい♪

 あなたも噂以上に、王子様と仲いいじゃない?」

「これのどこがそう見える!」

「俺は、王子様って言うよりご主人様かな?」

 

いつもの応酬を繰り広げる千冬とカズキをおもしろそうに見るナターシャに、

千冬が抗議の声を上げるがカズキが漏らした言葉に、日本刀のように目を鋭くして

数段キレのある技を放っていく。

 

「き~~~さ~~~ま~~~は~~~!!!!!」

「ははは♪ところで、君は……っと。もう動いて大丈夫……なのかい?」

「ええ。彼だけじゃなく、『あの子』も私を守ってくれたから……」

 

ナターシャは寂しそうに空を見上げながら、拳を握りしめる。

『あの子』というのは、彼女の愛機である銀の福音のことである。

カズキが言っていたように、憑りつかれながらも銀の福音はナターシャを

守っていたのである。

 

「まあ、査問委員会もコアの凍結処理っていうのも形だけだけど、

 今は大人しくしているのを勧めるよ」

 

今回の事件は表向き、暴走事件として処理され福音のコアも凍結ということに

なっているが、実際はISが創生種に対抗するための手段を憑りつかれたコアから

得られるかもと束が修復するのと同時に解析しているのである。

もちろん、反発の声もあったがカズキが両手であるものを持って見せたら、

瞬時に“よろしくお願いします!”と頭を下げたのである。

そのあるものとは、何やら黒い手帳のようなものだったとか……。

 

「本当に色々とありがとう。お礼を返すのは、大変そうね」

「いや、こっちも戦力のアテができそうだったからね~。

 その時が来たら、千冬ちゃん共々に存分に頼らせてもらうよ♪」

「頼らせてもらう……だと?」

 

カズキが口にした言葉に、千冬は怪訝な顔となる。

 

「あいつら、創生種の力は計り知れない。

 だから、戦力は多いに越したことはないし、俺が止めた所で

 止まるような千冬ちゃんじゃないしね♪

 戦う準備も天才(笑)に頼んでいるみたいだし、それに決めたんでしょう?

 戦うって。弟を守らなければって姉の義務感でも責任感でもなく、

 一人の人間織斑千冬として――」

「……ふん」

 

自分のことなど全部お見通しと言わんばかりのカズキに、千冬は

拗ねたようにそっぽを向いた。

 

「あらあら♪

 かのブリュンヒルデも恋人の前では形無しね♪」

「何言っているのかな?

 千冬ちゃんは、どこにでもいる弟大好きなお姉ちゃんだよ?」

「やかましいわ!!!」

 

太陽が燦然と輝く青空の下で、カズキと千冬は学生時代から何も変わらない

やり取りを繰り返し、それを見たナターシャは夏真っ盛りだというのに

熱~~~いブラックコーヒーを飲みたい衝動に襲われた。

 

 

 

 

 

彼らの熱い夏は、まだ始まったばかりである――――

 

 




というわけで、前回起きたもう一つの騒動はなのは達でしたwww
ユーノは、これからガンガン攻めていきます。
顔を真っ赤にしたメールは、家族に挨拶をするという
宣戦布告です♪

ちなみに、弾達も違う部屋で宴会をしてましたが――
弾:カズキと楯無が虚を言いくるめて水着にエプロン姿をさせたものを
  通信で見せられて撃沈。
  楯無は見られていると思わなかった虚に、軌跡がTになる蹴りを
  何十発も叩き込まれ絶望までのカウントダウンを数えさせられた。

タツミ、ラバック:いつものように、酒で潰される。

他のメンバー:泣き上戸や笑い上戸で宴会を存分に味わう。

ボルス:たまたま出会った教師陣や生徒達に恋愛のアドバイス。
    結婚するまで2回もふられたことから、一番大事なのは
    諦めないことだと説く。

夏休みに本格的に入って、修行やらなにやら色々なことがやっと
できます(苦笑)
4巻は混ぜやすいですが、5巻まではかなり長くなると思います。

次は最初に、カズキが言っていたご主人様についてでもやろうかな?

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