インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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最新話、仕上がりました。
いろいろ詰め込んだので、いつもより長めになっております。



龍の復活、明かされる真実――

「うぉぉぉっ!!!」

「はぁぁぁっ!」

 

零落白夜とビームランサーの刃が、ブラック・ゴスペルの翼を切り裂いていく。

だが、ブラック・ゴスペルも黙っているわけがなく、残った翼を羽ばたかせて

衝撃波を放ち、再生までの時間を稼いでいく。

 

「まずい、このままじゃ……」

 

全員の波状攻撃で、追い詰めているが後一手ほど足りない。

この数分の間に何度も繰り返された攻防の中で、一夏は次第に焦りを

募らせていく。

 

――エネルギー残量15%。残り活動可能時間150秒。

 

白式が知らせるアラートに、一夏は状況を打破するべく思考をフル回転させる。

二次移行をしたことで、大幅に戦闘力が上がった白式だったが同時にそれは

エネルギーを大量に消費するようになり、元々短めだった活動時間が更に短くなって

しまったのだ。

 

「(あいつはISのことを大分舐めているみたいだったから、リュウケンドーよりも

 負担の少ない白式で敢えて戦っていたけど、そろそろ限界だな。

 何とか、変身できる隙を作ってリュウケンドーに……)」

「一夏!」

「箒!?」

「これを受け取れ!」

 

このままエネルギー切れの近い白式では、勝てないと一夏がリュウケンドーへの

変身を考えていると、そこに箒がやってきた。

驚く一夏に構わず、箒が白式の両手を握ると紅椿から光が溢れだし、白式を

包み込んでいく。

 

「これって……エネルギーが回復した!?おい、箒……」

「説明は後だ、一夏!」

『今は、奴を倒すのが先決だ』

「ごげっ!」

 

エネルギーが回復したことに、困惑する一夏だったが箒とゲキリュウケンの言葉に

我に返り、ブラック・ゴスペルへと意識を向ける。

そこには、変幻自在に偽りの天使を翻弄する忍びの姿があった。

 

「カズキさんが言っていたようにいくら人間を止めても人間に寄生している以上、

 弱点は変わらないようだな。

 関節の動きを封じれば、思うように動けまい!」

 

明はブラック・ゴスペルの関節を狙って、特殊ジェル弾を撃ちまくっていた。

これは外気に触れると、瞬時に硬化するもので様々な応用が可能な装備である。

明がこれで、ブラック・ゴスペルの動きを封じるとカズキ達は次々と翼を

破壊していく。

 

「ぐっ……こ……のっ!」

 

ブラック・ゴスペルは受けたダメージを回復していくが、その回復スピードは遅い。

度重なるダメージに、回復に回すマイナスエネルギーが尽きてきたのだ。

それによって生まれた隙を逃さず、カズキ達は追撃を仕掛けていく。

 

「はぁっ!」

「小……娘が!」

 

追撃で怯んだところを箒が、両手の二刀を振り下ろすも防がれるが、足先から

ビームブレードを展開しブラック・ゴスペルの胸部に傷を刻む。

 

「そこだ!」

 

箒が離脱したのを見計らって、カズキはザンリュウジンを取り出し、素早く魔弾キーを

差し込む。そのままブラック・ゴスペルの胸部に、矢を放つ。

 

「舐めるなぁぁぁっっっ!!!」

 

ブラック・ゴスペルが気合いを入れた叫びを上げ、手をかざすと魔方陣が現れた。

ザンリュウジンから放たれた矢は、魔方陣に当たるとガラス細工のように砕かれてしまう。

 

「ははは!!!僕だって、切り札ぐらい準備しているさ!

 お前が、憑りつかれている人間を救うために何かしらの魔弾の力を

 使ってくるのはわかっていた!

 だから、いつでもそれを防ぐ術を発動できるようにしておいたのさ!」

 

窮地に関わらず、ブラック・ゴスペルは高笑いを上げる。

分かっているのだ。いくらカズキ達が自分を追い詰めようと、止めを刺すことはない。

何故なら、それは銀の福音の操縦者の死を意味するからだ。

それを避けるために、カズキが何かしらの策を使ってくるだろうが、それには

魔弾の力が使われるはず。後は、それを防ぐだけ。

そして、次の手をこまねいているうちに自分が逆に相手の命を刈り取ればいい。

 

「今度はこっちの……」

 

人質と言うカードとカズキの策を封じた以上、自分に敗北はないと意気揚々と

反撃に転じようとしたブラック・ゴスペルの胸に衝撃が走った。

ブラック・ゴスペルが胸をのぞき込むと、箒が付けた傷に一発の弾丸が

めり込んでいた。

 

「あれ、言わなかったけ?

 目先のことに囚われすぎて周りが、見えてないって?」

 

わざとらしく、首を傾げるカズキの背後にはゴウリュウガンを構えた

リュウガンオーがいた。

 

「わざわざ、警戒されている俺がそんな大事な策を自分ですると、

 本気で思っていたのかい?」

「ぐ……Gaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!」

「今だ、一夏!」

「おおおおお!!!」

 

心の底からの疑問の声に、ブラック・ゴスペルは怒りの声を上げる暇もなく

頭を抱えて苦しみだす。

それを待っていたとばかりに、カズキは一夏へと指示を飛ばす。

一夏は雪片弐型を前に突き出し、自身を矢のようにして飛翔するが雪片弐型は

いつもの刀の形ではなく大剣の形をしていた。

 

「雪片龍式……零落白夜・龍閃斬(りゅうせんざん)!」

 

一夏がそのままブラック・ゴスペルの胸めがけて、飛び込むと

ブラック・ゴスペルの体に風穴を開けて貫通した……“銀の福音”を

抱えて――。

 

「上手くいったな」

「それはいいんですけど、カズキさん。

 結局俺が撃ち込んだのって、何だったんですか?」

「ああ、あれね?

 俺が、魔界から引っ張ってきた魔物だよ」

「なるほど、魔物ね~……魔物!?」

「そ、魔物。と言っても、死骸だけどね。

 高位の魔物は死んでも、周りに色々影響を与えたりもするから、

 術式を仕込んで使ったのさ。

 あいつがISと自分を混ぜたように、強制的に融合する術式をね♪」

 

自分の攻撃に仕込まれていたものを聞いて、驚愕するリュウガンオーの反応を

存分に楽しみながら、カズキはネタ晴らしを続ける。

 

「そして、術式が発動すると一瞬だが銀の福音との融合が緩むから、

 その瞬間を狙って、操縦者を救出する手はずだったんだ。

 まあ、けっこうな賭けだったけど、一夏と白式のおかげで博打を

 打たなくてすんだよ」

 

新たな雪片、雪片龍式。分離した白龍光翼が雪片弐型と合体し、大剣となった

ことで取り回しは悪くなったが、破壊力は格段に向上している。

最大の特徴は、プラスエネルギーを用いたマイナスエネルギーの対消滅機能である。

以前、ムドガがISコアのエネルギー増幅機能でマイナスエネルギーを増幅したのと

同じように、白式は攻撃の際プラスネルギーを瞬間的に増幅できるように進化したのだ。

これによりマイナスネルギーを使う存在に、圧倒的優位な攻撃ができるようになり、

憑りつかれている者のマイナスネルギーだけを増幅したプラスエネルギーで

消すことが可能となった。

 

「ところで、カズキ?」

「何だい、ジノ?」

「あれは、どうするんだ?」

「うん?」

「ふぅ~~~。

 ぶっつけ本番だったけど、上手くいった~」

「で?……それは、何だ一夏?」

「うん?」

 

ジノが指さした先では息を吐いて一息つく一夏に、明がジト目で声をかけていた。

どこかトゲのあるその声を聞いて、どうしたのかと一夏が振り向くと

ラウラとアーニャを除く女子メンバーが全員、明と同じジト目をして一夏を

睨んでいた。

 

「ど、どうしたんだよ、みんな。その目は?

 何だって……何が?」

「……何がって……何で、わざわざそんな抱き方をし・て・い・る・ん・だ?」

 

明達のジト目にたじろぎ訳が分からないという一夏に、明は勿体付けて

その理由を口にする。

現在、一夏は銀の福音を“お姫様抱っこ”で抱えているのだ。

 

「へっ?そんな抱き方って……えっ?」

「「「「「「…………」」」」」」

「はいは~い。君達~。一夏をとっちめたいのは、わかるけど後にしてね~。

 まだ終わってないよ?」

「ぶえにがヴぇぢをズゲ”#%’8!!!!!」

 

明達のジト目の理由が、本当にわからない一夏は首を傾げるが、

カズキが仲裁に入った。

そして、全員の目が声にならない声を上げ、もがき苦しみながら体が

ドロドロになっていくブラック・ゴスペルへと向かう。

 

「どうしたんだよ、あいつ……」

「な~に、簡単なことさリュウガンオー。

 あいつのあの戦闘力は、銀の福音を取り込んでいたから実現できていたのさ。

 銀の福音を中心にして、制御システムを組んでいたけどそれを失ったことで、

 マイナスエネルギーの制御ができなくなっている。

 加えて、さっきあいつに融合させたものは高位のもの。

 肉体が創生種になろうが、あのガキの精神レベルじゃあっさり

 それに飲み込まれるだろうね~♪」

「でも、それって逆にとんでもない力が制御されてない……ある意味ブラック・ゴスペル

 より厄介な魔物になるんじゃ……」

 

呑気に言うカズキの言葉に、リュウガンオーは引きつった声を出すが、

カズキは少しも慌てるそぶりを見せなかった。

 

「そうだね。

 しかも、銀の福音に取りついたみたいに俺達に取りついてくる

 可能性もあるね~」

「あるね~……じゃないでしょうが!

 どうすんのよ!そうなったら、同じことの繰り返しじゃない!」

「その心配はないよ、鈴。

 魔弾戦士の鎧には、相手の恐怖心を刺激してくるような精神攻撃に耐性が

 あるから、魔弾戦士に取りつくのはかなり困難なんだ。

 だから……」

「俺が変身して弾と一緒に、止めを刺すってことですね」

「残念だけど、その答えは60点かな?」

 

あと一歩まで追い詰めたブラック・ゴスペルを倒す最後の策を尋ねる一夏に、

カズキは悪だくみをばらすイタズラ小僧の笑みを浮かべて、一夏の予想への

点数を答える。

ある魔弾キーを一夏達に見せながら――。

 

「その魔弾キーって!」

「まさか!?」

『見つかったのか!』

『ということは、リュウケンドーとリュウガンオーのあのキーも……』

 

カズキが持つ魔弾キーを見て、一夏と弾は驚きの声を上げる。

喜びの感情を混ぜながら。

何故ならその魔弾キーは、ある事件で失われたモノの一つであり、

見つけ出すのは極めて困難と思われていたからだ。

そして、それが見つかったという事はある事実を示していた。

 

「察しがいいね、ゴウリュウガン。

 当然、これ一つじゃなくて二人の魔弾キーも見つけているよ。

 調査の結果、この近海にあるのがわかったからね。

 臨海学校の初日の夜に、回収をしたのさ」

「それじゃ、今日じゃなくてもう昨日か……。

 昨日の朝に来なかったのも……」

「ああ、この魔弾キーを見つけて調整の手筈を整えていたのさ。

 それで、出撃前にその調整が終わったのさ♪

 (本当なら、まだ使いたくなかったけどそうも言っていられないからね……)」

 

一夏は、カズキが二日目の装備試験にいなかった理由に得心がいき、

カズキは内心まだ使う気がなかったが、見つけたという一夏と弾の魔弾キーを

それぞれ渡す。

 

「――と言うわけで!最後の仕上げは、俺達三人がやる!」

 

カズキは粒子ランチャーで、ブラック・ゴスペルを近くの島に撃ち落とすと

その島に向かって飛翔する。

 

「俺達も!」

「わかってる!明、この人を頼む!」

 

銀の福音の操縦者を明に、手渡して一夏とリュウガンオーもカズキに続いていく。

 

「えっ。あ……おい、一夏!」

 

一夏達の行動に明達は呆気に取られて、その場に留まった。

 

 

 

「ぐがるべv#&K!」

 

カズキに撃ち落とされたブラック・ゴスペルは、

島の砂浜の上で苦しみながらのたうち回る。

 

「さ~て、やるなら今がチャンスだけど、こうやって三人同時に

 やるのは久しぶりだな」

『ハハハ♪一夏と弾と違って、俺達のキーは一つしかなかったからな♪』

「でも、そのおかげで俺や一夏はそれが無くても!ってがむしゃらに修行して、

 強くなれた!」

『ああ。悪いことばかりでは、なかった』

「それじゃあ、いくぜ!みんな!」

『今度は私が、あの娘に見せる番だな!』

 

三人は笑みを浮かべながら、カズキが見つけたという魔弾キーをそれぞれ構える。

 

「ゴッドリュウケンキー!」

「マグナリュウガンキー!」

「リュウジンキー!」

「「「発動!!!」」」

 

魔弾キーをゲキリュウケン、ゴウリュウガン、ザンリュウジンに差し込むと

三人の体は一瞬光に包まれそれぞれ鎧が解除されたりISスーツや宇宙ファイターXの服の

代わりに青、白、黒のスーツ姿となる。

 

『チェンジ!ゴッドリュウケンドー!』

『チェンジ!マグナリュウガンオー!』

『チェンジ!リュウジンオー!』

「超ゲキリュウ変身――」

「超ゴウリュウ変身――」

「ザンリュウ変身――」

 

ゲキリュウケンはその姿を剣と盾に変え、一夏が剣を抜くと青い光を放つ龍が。

ゴウリュウガンからは赤い光を、ザンリュウジンからは金の光を放つ龍が飛び出す。

三体の龍は咆哮すると、一夏、弾、カズキへと向かい眩い光が彼らを包み込む。

 

「ゴッドリュウケンドー!」

「マグナリュウガンオー!」

「リュウジンオー!」

 

リュウケンドーとリュウガンオーは、全身の鎧に金の装飾が増えた姿となり、

リュウガンオーは左手に、新たな小型銃を手にした。

カズキは、どこか髑髏を思わせる仮面と全身にはザンリュウジンの刃のような鎧を

纏った姿となる。

 

「「「ライジン!!!」」」

 

かつて、地球をジャマンガという魔の存在から守り抜いた三人の魔弾戦士がここに

復活を果たした。

 

「いつもなら、お前みたいな奴は身の程ってモノを刻み込むんだけど、

 今日は一気に決めさせてもらう……烈風――」

 

肩をザンリュウジンで叩きながら、軽口をたたくカズキことリュウジンオーは

忽然とその姿を消し、次の瞬間ブラック・ゴスペルの背後にその姿を現す。

ブラック・ゴスペルの体に無数の斬撃による攻撃を加えて――。

 

「っっっっっ!!!!!!!!!」

「もう人質はいないから、遠慮はいらないよ~」

「そんなもん、最初からする気ないですよ!

 ゴウリュウガン!マダンマグナム!

 ダブルショット!!!」

 

マグナリュウガンオーは、ゴウリュウガンと新たな武器マダンマグナムを構えて

ドラゴンショット並みの連射をブラック・ゴスペルへと浴びせていく。

 

「ぐげあらべぼへ!!!!!」

 

元々マイナスエネルゴーを制御できず碌に動けなくなっていたところを、

リュウジンオーが関節部分を攻撃して更に動きを取れない様にされたため、

ブラック・ゴスペルは最早ただの的でしかなかった。

 

「今度は、俺だ!ゴッドゲキリュウケン!」

 

マグナリュウガンオーの攻撃を浴びたブラック・ゴスペルは、銀の福音を

取り込んでいた時よりはるかに遅いが、受けたキズが少しずつ回復し始めていた。

だが、その回復をただ見ているわけがなくゴッドリュウケンドーが、新たな姿と

なったゴッドゲキリュウケンを構えて、走り出す。

 

「はぁぁぁっ!!!」

 

ゴッドリュウケンドーは、ブラック・ゴスペルの体を何度も斬り付けていく。

ゴッドゲキリュウケンの刃が走る度に、ブラック・ゴスペルの体から黒い何かが

吹き出し、霧散していく。

ブラック・ゴスペルも意地とばかりに苦し紛れの光弾を放つが、ゴッドリュウケンドー

は左手に持つ盾で軽々と防ぎ、カウンターで突きを放ってブラック・ゴスペルを

吹き飛ばす。

 

「がっ!」

「流石に、制御できなくてもあれだけのマイナスエネルギーだとかなり頑丈だね~。

 それに問題は……」

「何だよ、あれ!?」

 

リュウジンオーが自分の攻撃やマグナリュウガンオーとゴッドリュウケンドーの攻撃を

受けても、倒しきれないブラック・ゴスペルの強固さを冷静に分析する。

その時、マグナリュウガンオーが驚きの声を上げる。

突然ブラック・ゴスペルの体から、黒い煙のようなものが漏れ出し、それは

人の苦しむ顔となって怨嗟の声を上げ始めたのだ。

 

『あれは、人間の怨念だな……』

『ブラック・ゴスペルが純度の高いマイナスエネルギーを得る際に、

 マイナスネルギーと共に吸収してしまったものと推測。

 死の間際に残った恐怖、無念、理不尽に対する恨み……それらが彼らを

 縛り付ける鎖となっている。

 このまま倒したら、彼らは永久に現世をさまようこととなる』

 

ザンリュウジンとゴウリュウガンが、ブラック・ゴスペルから漏れ出した黒い煙の正体

に気付き、苦虫を噛み潰した声を吐く。

 

「だけど、俺達なら何とかできる。

 彼らの怨念をファイナルクラッシュのプラスエネルギーで、浄化する!」

「……」

『ゴッドリュウケンドー。

 私達は“神”の名を冠しているが、全てを救える神様ではない……。

 納得できなくても……割り切れなくても……今できることをやるしかないんだ――』

「わかっているよ、ゴッドゲキリュウケン……。

 どれだけ強くなっても、力があっても、俺は“ちっぽけ”な人間だ。

 それでも俺は!俺達は!!!」

「“助ける”ってことをあきらめたくない!」

 

うめき声を上げる怨念を見て、無言で拳をきつく握りしめるゴッドリュウケンドーに

ゴッドゲキリュウケンが語り掛ける。

悔しさを声に滲ませるが、その悔しさを振り切るようにマグナリュウガンオーと共に

魔弾キーを取り出す。

 

「ザンリュウジン、アーチェリーモード!」

「マグナゴウリュウガン!」

『マグナパワー!』

「ゴッドゲキリュウケン!」

「「「ファイナルキー!発動!」」」

『『『ファイナルブレイク!』』』

 

リュウジンオーは、ザンリュウジンをアーチェリーモードに。

マグナリュウガンオーは、マダンマグナムをゴウリュウガンと合体させ大型銃に。

ゴッドリュウケンドーは、ゴッドゲキリュウケンを盾に収めるのとは逆の向きに

セットして大型の剣にそれぞれ形を変え、ファイナルキーを差し込んだ。

 

「ザンリュウジン――乱舞!」

「マグナドラゴンキャノン――発射!」

「龍王――魔弾斬り!」

 

放たれた光の矢が、紅い龍が、蒼い龍がブラック・ゴスペルへ向かう。

 

「ぐぎゃぁぁぁっ!!!!!」

 

ブラック・ゴスペルが断末魔の悲鳴を上げ爆発すると、怨嗟の声を上げていた怨念達は

穏やかな顔となって天へと昇って行った――。

 

「「…………」」

「恨みは現世に置いて……逝くがいい――」

 

その様子を、声を発することなく見るゴッドリュウケンドーとマグナリュウガンオー

に代わり、リュウジンオーは彼らを送る言葉を口にした。

 

「お~い」

「終わったようですね」

 

そこへ、ジノ達がやってきていつもと違う一夏と弾に

見慣れぬ姿の戦士の姿にそれぞれ驚くが、明はそんなジノ達を気にせず声をかける。

だが、ゴッドリュウケンドーとマグナリュウガンオーに勝利の喜びはなかった。

 

「どうかした……「ちょっ!あれ!」」

 

その様子を怪訝に思った明は、何かあったのかと聞こうとするがそこに

鈴の声が重なる。

 

「う……ぐ……」

「あいつ、まだ生きているぞ!」

「そんな……一夏達の必殺技を受けたのに……!?」

 

彼らの視線の先には、ブラック・ゴスペルとなっていたボロボロなミールの姿

があり、既にひん死であったがまだ息があった。

ジノの声を皮切りに、簪は一夏だけでなく弾とカズキの決めの一撃を受けたのに

生きているミールに驚く。

咄嗟に、明達は武器を構えるがリュウジンオーが手を上げてそれを制した。

 

「さっきの技は、マイナスエネルギーだけを吹き飛ばしただけだけど、

 大丈夫……今度こそ終わったよ。

 そうだろ?シュヴァルツ・バイザー?」

「ええ、その通りですよ」

 

リュウジンオーが声をかけると、まるで最初からそこにいたのか

空中で見えない椅子に座っているように足を組む、クリエス・レグドが姿を現した。

 

「この姿では初めましてですね、魔弾戦士達に共に戦う皆さん?

 私の名は、クリエス・レグド。以後お見知りおきを」

「レ……レグ……ド様。

 助けに来て……くれたん……ですね……。

 あ、ありが……」

「助ける?最早、助かる見込みの無い者を何故私が?」

「え?」

 

気さくに挨拶をするレグドに、ミールは自分を助けてくれるのかと安堵するが

そんな彼の行動に、レグドは心の底からの疑問の声を上げる。

それを皮切りにレグドへと伸ばしたミールの手が、黒炭のように変色していき

塵となって崩れ去った。

 

「な……何だこれはっっっ!!!!!?」

 

ミールにも予想外の出来事なのか、驚きと恐怖が混ざった声を上げ、

それを見ていた一夏達にも動揺が走る。

唯一、その現象を予期していたのか知っていたのか、リュウジンオーとレグドは

慌てるそぶりはなかった。

 

「やっぱりね。

 人間が、創生種になるなんていう無茶苦茶なことをやったんだ。

 ただで済むとは、思わなかったよ」

「そこまで、推測していましたか。

 あなたの考えた通りですよ、リュウジンオー。

 人間の身に、創生種の力はあまり合わないようなのです。

 力だけを行使するならまだしも、その身まで変質させて何のリスクも

 ないわけがありません」

「強大な力には、相応のリスクがあるのは当然のこと。

 こいつの様子から見るに、体だけでなく魂も消滅するねこれは。

 まあ、楽して力を得ようなんて考えたこいつの完全な自業自得だよ……」

「ふざけるなぁぁぁっ!!!」

 

学者の意見交換のように淡々と述べていくリュウジンオーとレグドに、

ミールは怒りの声を上げる。

 

「きっ……さま!最初から、僕を利用していたのか!」

「利用する?何を言っているんです?

 あなたも私達創生種を最初から、利用するつもりだったのでしょ?

 だから、私もあなたのことを利用させてもらったのですよ。

 最も、彼らを追い詰めればいいと思っていましたが、まさか自分が

 創生種になったことのリスクを考えていなかったのは、驚きましたよ」

「それは、仕方ないさ。

 こういうタイプの奴は、優れている自分が利用されるなんて考えもしない。

 そうやって、他人を見下すからこうやって負けるっていうのに……」

「まあ、そのマヌケさのおかげで人間が創生種になる際の

 新たなデータも取れましたし、世界を平和にできるという同志の計画とやらも

 知れましたしね」

「お前……」

 

レグドの言葉にリュウジンオーは、忌々し気に戦闘態勢に入る。

自分がかつて叩き潰したものを再現する気なのかと構えるが、続く言葉は

予想外ものだった。

 

「平和を望む自分の思想を全人類に植え付けることで、争いを無くす……。

 愚かな人間というのは数えきれないほど見てきましたが、彼の者はその極みですね」

「何だとぉ!!!!!」

 

心から呆れ果てているレグドに、ミールはここまでで一番の怒りの声を上げる。

 

「そうでしょう?

 平和を望んでいると言っても、それが全ての人間にとって平和とは限りませんし、

 何より……自分だけが正しい……神であるというような傲慢なこの考え――。

 反吐が出ますね……」

「気が合うね。俺もあいつと話すたびに、キレそうだったよ……」

 

ミールの怒りなど比べられない冷たい怒りと侮蔑を含んだ言葉を放ち、

その場にいた者達は、二人の静かな迫力に息をのんだ。

 

「さて、無駄話はこれぐらいにしようか?」

「そうですね。本題に入りましょうか?」

「お……前……た――」

 

最早自分のことなど眼中にないレグドとリュウジンオーに、憤るミールだったが

何ができるというわけもなく、塵となってこの世界から完全に消え去った。

それを何もなかったように、会話を続けようとするレグドとリュウジンオーに、一夏達は

空恐ろしさを感じた。

 

「本題とは言いましたが……こちらの目的は、ほぼ果たしましたし……。

 今この場で戦うと、私と言う壁を超えるために更なる強さを手に入れて

 しまうかもしれませんから、できれば避けたいところなのですが……」

「この戦いは、こっちの負けで終わっているのによくそんなことが言えるね?」

「「「「「「「「「「「はぁっ!?」」」」」」」」」」」

 

リュウジンオーが悔し気もなく自然に口にした言葉に、一夏達は驚きの声を上げる。

 

「残念だけど、今回は俺達の負けだよ。

 あちらさんの目的は、ブラック・ゴスペルという強敵をぶつけて、こっちの

 手札を確認することだったんだ。

 なのは達やユーノを襲撃したのも、そのためだろ?

 そうやって、こちらの戦力を分断させるようにして

 俺達に隠し玉の手札を切らざるを得ないようにするために……」

「正解です。

 あなた達はかつて、ジャマンガを倒すために一人しか使えないはずの究極の力を

 三人同時に使うという離れ業をやってのけました。

 同時に、上の力を引き出したり変身のためのキーも失ったようですが、

 いずれ取り戻すとは思っていました。

 実際、考えすぎということはありませんでしたしね?」

「「っ!?」」

 

レグドの自分達の評価に、一夏も弾も言葉を失う。

ジャマンガを倒すために一夏は地球に流れるプラスエネルギーの集合点とも言うべき、

パワースポットを開放した。

これにより、究極を超えた究極の力を魔弾戦士達は手にし、ジャマンガを打倒したのだ。

だが、その反動でパワースポットは暴走しかけてしまい、それを止めるために

一夏達はそれぞれの変身キーを使ってパワースポットを制御したのだ。

その際、変身キーは地球のプラスエネルギーの流れにのってしまい、カズキが

見つけるまで行方知れずだったのだ。

このことは当人である一夏達以外知る者はほとんどいないはずなのに……

クリエス・レグドはどこまでこちらのことを知っているというのか。

 

「しかし……少々こちらに都合よく行き過ぎな気がしますね……。

 こちらの目的をそこまでわかっていながらその魔弾キーを使ったとなると、

 何かを企んでいますね?」

「どうだろうね?

 そっちの考えすぎかもしれないし、そうでないかもしれないよ?

 一つ言えるのは……俺は他人が驚く顔を見るのが大~~~好きなんだよね~♪」

 

仮面の下で意味あり気な笑いをするリュウジンオーことカズキに、一夏達は

先ほどとは違った意味で、空恐ろしさを感じた。

カズキは、十八番の心理戦をレグドに仕掛けたのだ。

 

「ふむ……これ以上の腹の探り合いは、無意味ですね。

 あなたとその手の探り合い、カマの掛け合いはとても魅力的ですが……

 そちらの二人の魔弾戦士の潜在能力が未知数すぎて、今ここで考えても

 最善の答えはでないでしょう。

 まだまだ未熟ですが、それ故“可能性”というものが測り知れません――。

 今日は、引くとしましょう。

 いずれ何も気にすることなく戦う時が来るでしょうし、その時に……

 ん?」

 

レグドはカズキとの心理戦に興味を示すも、引く姿勢となった。

一見こちらを恐れての退却にも取れるが、そんな風に楽観する者はその場には

いなかった。そして、引こうとしたレグドはこちらに近づく何かを察知した。

 

「――っと。引くのはいいけど、ちょっと待ってくれるかな?」

「ユーノ!」

 

やってきたのは、銀色のコートを纏ったユーノだった。

それに続く形で、なのはとはやて、二人に連れ添う形のリイン……グムバが姿を現した。

 

「やあ、弾。こっちも何とかなったよ……」

「ごめんね~レグド様~。負けちゃった☆」

「グムバ……」

 

見るからに落ち込んでいるなのはとはやてに気にすることなく、気楽に話す

グムバにレグドは呆れた声を出す。

 

「いや~参った参った~。

 チェスで勝負したんだけど、彼ったらキングを動かして攻めてきたもんだからさ~」

「それで?

 面白そうだからとこちらもキングを動かして、こっちから与えるような勝利は

 取らないだろうとキングでチェックをかけたら、それを取られて負けたと?」

 

グムバの言葉を聞いて、どうして負けたのかを察したレグドはやれやれと言いたげに

首を振った。

 

「まあ、いいじゃないの~。

 こっちの目的は果たせたんだし、僕も楽しめたしね♪」

「はぁ~~~」

「……何か、大変だなお前も」

「わかります?」

 

どこまでもお気楽なグムバに、レグドは深いため息を吐いた。

その姿に、カズキは何となく共感するのだった。

 

「ところで、ユーノ?

 お前ボロボロなのに、何しに来たの?」

「無理は禁物……」

「心配してくれてありがとう、ジノ、アーニャ。

 でも、どうしてもあいつに確かめなきゃいけないことがあってね……」

「それは、そこの二人が聞いても大丈夫なのか?

 その様子だと、予想通りティアナに負けて自信がズタボロだと思うけど?」

「そんな鎧着てますけど、碓氷先生ですね……?

 確かに、私らの完敗でした……。

 オマケにユーノ君が言うには、管理局に隠された真実っちゅうのは、

 オルガードさんの事より恐ろしいらしいですけど……

 私らはもう“知らない”で、すますわけにはいかんのです!

 前に進むには、どんな真実でも向き合わないことには進めへんのや……」

 

ユーノが無理をしてまで、ここに来た理由を察したカズキは、消沈している

なのはとはやてに問いかけるが、はやては辛そうな顔をしながらも

真っ直ぐにカズキの顔を見た。

なのはは、それを無言で見つめ、リインは心配顔で二人を見つめた。

 

「だ、そうだよ。ユーノ?」

「この先、遅かれ早かれこの真実は知ることになります。

 だったら、僕達を交えて知った方がまだいいでしょう……」

「やはり、あなたは気付いたのですね。

 確信を持ったのは、私があなたを襲撃したからですかね?

 それが、逆にあなたの考えが正しいという証明になったと……。

 いつの時代、どの世界でも、陰から戦士を支える裏のエースというのは

 実に厄介で……おもしろい――!」

 

レグドは、忌々し気な言葉を放つもその様子は楽し気であった。

 

「それで、ユーノ。お前が気付いた真実って何だよ?」

「一夏……僕達は、奴らが管理局を利用しているって考えていたよね?」

『そうだ。時空管理局は、様々な世界を行き来して管理をしている。

 それを利用すれば、異世界の技術に触れることも、管理と称して

 力で支配することもできる……オルガードの世界のようにな』

「だけど、事はそれだけですまなかったんだよ。ゲキリュウケン。

 僕は、マイナスエネルギーを集めるって点から、それを生みだすような

 大きな戦いの記録を調べていたんだけど……。

 そういう戦いやアルカンシェルを使ったり、裏でオルガードの世界みたいに

 襲撃をかけた世界の位置を結んでみると……途方もない巨大な魔方陣を

 描く形になったんだ……」

「巨大な……」

『魔方陣……!?』

 

ユーノの言葉に、一夏とゲキリュウケンは嫌な汗が流れるのを感じ、

他の者も一夏達のただならぬ固唾を飲んだ。

 

「それも、君達が倒したジャマンガの支配者グレンゴーストを復活させるためのものに、

 よく似たものにね……」

「な、何だって!?」

「ちょっと待ってくれよ、ユーノ……。

 グレンゴーストを復活させるために、ジャマンガが使ってたやつだって、

 かなりデカイ魔方陣だったんだぜ?

 それが、次元世界レベルの大きさって……」

『仮にその魔方陣が、何かの復活させるためのものだとしたら、

 そいつは化け物や怪物なんて言葉で表現できるものではないぞ……!』

『現在の我々の戦力を結集しても、太刀打ち不可能』

 

ユーノが告げる事実に、弾と一夏は言葉を失わんばかりに驚き、

魔弾龍達も驚愕を隠せなかった。

 

「ねえ、明。グレンゴーストって奴は、そんなに強かったの?」

「強いなんてものじゃありませんよ、鈴……」

「俺達、魔弾戦士が三人がかりでも手も足も出なかったよ」

 

一夏達が驚くきっかけとなったグレンゴーストについて鈴が、明に尋ねるが

彼女とカズキから返ってきた言葉は彼女達の予想以上のものだった。

その様子をレグドは、興味深く眺める。

 

「そして、その中でも一番古いのが時空管理局が、

 次元世界に広く知られるようになったきっかけでもある、ドクシア平定。

 当時、ドクシアは日本で言う戦国時代のように乱戦乱れる世界だったんだけど、

 それを設立直後……瞬く間に収めることで、時空管理局は世界の治安組織と

 なったんだ……」

「えっ?管理局がいろんな世界でやってきた戦いが、魔方陣の点になっとって……

 それが設立からって……」

 

ユーノが言おうとしていることに、はやては気づき顔が青ざめていく。

 

「こいつらは、何かをするために管理局を“利用”しているんじゃなくて、

 何かをするために管理局を“創った”ってことだね。ユーノ?」

 

カズキがユーノが見つけた真実を口にし、それを聞いたなのはとはやては大きく

目を見開く。

 

『つまり……治安組織の方が、都合が良かったってことか?

 いろんな世界のいろんな争いに、介入することができるから?』

「合理的だね。

 しかも、相手を傷つけないことができるクリーンな力って謳い文句で、

 主な戦力として魔法を定めた。

 使うことができる人間が限られる……ね」

『そうすることで、魔法が使える奴は使えない奴を見下して、

 逆に使えない奴は使える奴を妬むようになって、更にマイナスエネルギーを

 集められるか……』

「「「っ!!!?」」」

「くく……ははは!!!」

 

続くザンリュウジンとカズキの考察になのはとはやて、

リインは完全に言葉を失い、レグドは手を叩きながら大声で笑い声を上げた。

 

「見事です!

 その読みは、正解ですよ。時空管理局は、私達創生種が創り上げました!

 ふふ、人間というのは愚かな者の方が多いですからね~。

 思い通りになりすぎて、物足りませんでしたよ」

「管理局を創ったってことは、その魔法にも何かしら細工をしているな?

 だから、魔導士は勝てないんだろ、ユーノ?」

「ええ。ほぼ間違いなく、魔法を封じる手段を持っていますよ……。

 もしも、魔物や彼らと戦っているときに、魔法が使えなくなったら……」

「普通の人間以上に、恐怖を感じてマイナスエネルギーを生み出す……か。

『てことは、非殺傷設定や異常なまでの質量兵器の禁止もそのための布石だな?

 そうやって、戦いの怖さって奴を薄れさせて、いざって時に味わせるために!』

 

ユーノとカズキの冷静ながらも憎々し気な顔とザンリュウジンの叫びに、

レグドは正解だと言わんばかりの笑みを浮かべているように、一夏達には見えた。

 

「君達みたいに、おもしろい人間はとことんおもしろいけど、

 そうじゃない奴はホントつまんないだよね~。

 今の繁栄が自分達だけの力で、できたって勘違いしているんだからさ~」

 

心底つまらなそうにグムバは皮肉をもらし、掌で躍らされている者達を小馬鹿にする。

 

「俺達がそれに気づいても、慌てるそぶりがまるでないところを見ると、

 復活させようとしているものが目覚めるのも時間の問題ってことだね?

 例えここでお前を倒せたとしても、残ったベルブとリリスが目的を果たす……」

「仮にそうだとして、どうしますか?

 やはり、ここで私と戦いますか?」

 

ここまでのやり取りでカズキが気付いた最悪の予想を聞いて、レグドは

楽しそうな声とは裏腹に、立ち上がり戦意を高めていく。

 

「そっちがやるっていうなら、戦うけど……こっちからは仕掛けないさ。

 さっき復活も時間の問題って言ったけど、逆を言えばまだ少し時間はあるってことだ。

 なら、その時間を使って力を蓄え、一気に叩いた方がいいさ」

「そんなに、上手くいきますかね?」

「さっきお前が、言ったんじゃないか。

 未熟だからこそ、こいつらの“可能性”は計り知れないって。

 なら、俺はこの二人が俺やお前の想像を超える成長をするのに賭けるさ……」

「ふふ……いいでしょう!受けて立ちましょう!」

 

お互いに憎むわけでも侮るわけでもなく、両者は闘気をぶつけ合いそれに続くように、

一夏と弾も、カズキに並び立つ。

 

「俺達を置いて勝手に進めないでくださいよ、カズキさん」

『だが、カズキのいう事も最もだ一夏。

 奴らが何を復活させようとも、私達がやることは変わりない!』

「そうだ!何が来ても、勝つだけだ!」

『根拠も計算も何もないが……同意する』

『そうこなくちゃっな♪』

「本当にわかっているのかね、君達は……」

 

かつてない程の世界の危機だというのに、能天気や楽観的にとれる一夏達

にやれやれといった感じのカズキだったが、どこか楽し気でもあり、レグドも

同じく楽しみだという空気を体から出していた。

 

「盛り上がっているところ、悪いんだけどさ~。レグド様。

 リリス様が、どこにいるか知らない?

 僕が負けたら、どこにいるかを聞いてあげるって約束だったからさ~」

「あなたという奴は、この空気でそれを聞きますか?

 まあ、私もリリスのあの行動は予想外でしたから、構いませんが……」

 

どう考えても、ここは黙ってこちらが立ち去るという空気で呑気にリリスの

ことを聞いてきたグムバに、レグドは呆れかえる。

 

「ちょっと待ってくださいね、皆さん。

 聞こえますか、リリス?

 こちらの用は、済みましたから連れ去ったという娘を彼らに返して……」

「あああぁぁぁん!!!」

 

レグドが空間に通信用と思われる魔法を展開すると、空中に

画面が映し出され、声をかけるとそこから、どこか桃色を感じさせる声が

その場に響き渡った。

 

「ははははは!

 ほ~ら、こうやって愛しの彼に縛られて、ぶたれたいんでしょ!」

「うぅぅぅんっ!しゅ、しゅごい!

 痛いけど、しゅんごく気持ちいいところを叩いてきて……いいいっ!!!」

「叩かれているのに、気持ちいいなんて……ホントいやらしい子ね!」

 

画面の向こうでは、デザイン的な衣装を纏ったリリスが磔にされたフェイトを

鞭で打ちまくっており、水を得た魚の如く生き生きとした声を上げていた。

また、フェイトも叩かれているのに恍惚とした表情を浮かべて、気持ちいい声を

上げていた。

あまりに、突拍子の無いその光景に、敵味方関係なく言葉を失い、

ただ一人グムバは、笑い転げた。

 

「え?あれ、フェイト……だよね?え?」

「フェ、フェイト……ちゃん?」

「め、めまいが……」

「大丈夫、箒?」

「何故、目隠しするのだシャルロット?」

「ラウラには、まだ早いよ/////!」

「もしも、一夏さんにされたら……」

「ななななななんという破廉恥な////////////」

「とか言いながら、ガン見する明を記録……」

「フェイトちゃん、素質があったとはいえ、あの素敵な服のお姉さんと

 息合いすぎやろ……」

 

目の前で繰り広げられるとんでもない光景に、それぞれ信じられないとばかりの

言葉を口にする者、羨ましがる者、呆れる者と様々な反応を見せた。

しかし、共通して女性陣は目を逸らしながらもチラチラとその光景を見ていた。

 

「…………。え~すいません……。

 敵対しているあなた達に聞くのもおかしいのですが、こんな時は

 どうすればいいのでしょうか?」

「どうすればって……どうすればいいのかな、弾?」

「いや~どうしようもないんじゃいかな~?」

「話には聞いたことはあるけど、あういうのが好きな奴って本当にいるんだな~」

「まあ、何とかできなくもないけどね~」

 

駆け引きも打算も何もなく純粋にどうすればいいのかわからず、レグドは

一夏達にこういう状況の対処の仕方を尋ねる。

だが、一夏も弾も混乱して頭が回らず、ジノも

お手上げとばかりに手を上げた。

こんな時に何をすればいいのか全員途方にくれるが、カズキが意味深に呟く。

 

『何とかって……どうやってだ?』

『あれは、もう手遅れというものでは?』

『お互いに楽しそうだし、放っておいた方がいいんじゃねえの?』

「そう言うわけにもいかないだろ?

 まあ、そのためには犠牲になる者が出ておもしr、ゴホン。

 大変なことになるだろうが、仕方あるまい。

 これって、こっちからも声を届けられるんだよね?」

「今、おもしろいことになるって言いかけましたよね?こっちを見て?

 何をする気なんですか?てか、嫌な予感がヒシヒシとしますから止めてぇ!」

 

カズキはユーノをちらりと見ながら、この状況を何とかしようと動き出す。

そのユーノは直感で禄でもないことになるのを感じるが、その前にカズキは

行動に移った。

 

「おいフェイト!本当は、そういうことをやりたい本命がいるんだろ!

 今なら色々とパワーアップしているから、そいつよりもすんごいことができるぞ!」

「す、すんごいこと……?」

「あら、いつの間に見てたの?」

 

カズキの言葉にフェイトは、意識をそちらに向けリリスもそこで

通信が繋がっていることに気が付いた。

 

「そうだ。

 それに、想像してみろ!自分の今の姿が、その本命に見られるところを!

 本命に力ずくでさらけ出されるところを!」

「み、見られる――!ちちち力ずくででででで!!!?」

「今もどうやって、自慢のバインドで縛り上げて犬の如く躾けて

 やろうかって企んでいる顔をしているぞ!

 ……な?ユーノ?」

「な?……じゃあ、なぁぁぁいぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

言うだけ言って、後は丸投げな感じでカズキにバトンを渡されたユーノは

人生で一番の大声でツッコミを入れる。

 

「し、縛り上げて、犬みたいにちょちょちょ調教!?

 ――ご主人様ぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

カズキの言葉を聞いて、ワナワナと体を震わせたフェイトは、力づくで磔から

脱出を果たした。

 

「ねぇねぇねぇ!!!早く早く早く!!!

 私をご主人様の所に連れて行ってぇぇぇ!!!!!」

「へぇ~、私とするよりもその本命がいいのね~。

 ふふふ、おもしろそうだし、興味があるわね♪」

 

抜け出したフェイトは、リリスに目をランランと輝かせて詰め寄る。

リリスもここまでフェイトを熱くさせるご主人様(ユーノ)に、興味を

持ちあっさりと画面から姿を消し、一瞬でカズキ達の前に姿を見せた。

 

「ああ、レグド。やっほー♪」

「やっほー♪って、あなた……」

「ご主人様ぁぁぁ!!!!!」

 

自分に呑気に話しかけるリリスに、レグドはがっくりと肩を下し、

フェイトは自慢のスピードでユーノにダイブした。

 

「ぐへっ!フェ、フェイト!」

「さあさあさあ!このダメな私を、縛り上げて、罵って、好きなように躾けて~!!!!!」

 

ボロボロな状態だったユーノに、フェイトのダイブを止められるわけがなく、

そのまま彼女ごと倒れてしまう。

ユーノは抱き着いてきたフェイトに、困惑を隠せなかった。

現在、フェイトはリリスに鞭で叩かれまくったせいでISスーツのように

体にピタっと張り付くようなバリアジャケットのいたるとことが破れて

肌が見えている状態である。

健全な青少年であるユーノには刺激が強すぎな姿であり、彼女の暴走を

なだめながら何とか引きはがそうとするが…………。

 

「ユーノくん……フェイトちゃん……?」

 

――――ゾクリ!

 

その場にいた者全員が、背中に氷を入れられたような悪寒に襲われた。

おそるおそる悪寒の発生源に目を向けるとそこには――なのは(白い魔王)が立ちずさんでいた。

 

「さらわれて、心配していたのに随分楽しそうだね、フェイトちゃん?

 ユーノ君もフェイトちゃんにくっつかれて、楽しそうだね――?」

 

コテンと首をかしげながら、光が消えた無表情な目と怪しく歪んだ笑みを

浮かべて一歩一歩なのはは、ユーノヘと近づいていく。

 

「おおお落ち着いてなのは!

 フェイトも離れて!おい!そこで、カメラを回している元凶!

 何とかしやがれ!」

「ご主人様~♪」

「これが、人間の男女の修羅場という奴ですか……。

 ちょっかいをかけたり利用したことはありませんが、そんなことはしない方が

 よさそうですね。それをするには、こちらも命を懸けなければ……」

 

一歩なのはが自分達に近づくだけで、空気が重くなるのを感じた一同は

既になのはとユーノから距離を取って退避していた。

はやてもなのはと同じくユーノに迫ろうとしたが、なのはから放たれる

プレッシャーを感じて、一夏達と同じくその場から退避した。

そのやりとりを見ていたレグドは、この手のいざこざの恐ろしさを

体感し手を出すまいと誓うのだった。

そして、リリスは面白そうに遠巻きに眺め、その側でグムバは笑い続けた。

元凶であるカズキは離れたところから、カメラで撮影をしクスクスと

笑っていた。

リュウジンオーに変身したままで――。

 

 

 




まずは、白式の強化第三弾として攻撃力アップ形態を登場させました♪
普通に破壊力も増してますが、マイナスエネルギーを使う者に
圧倒的優位な攻撃が可能です。

続いて、リュウジンオーに加えリュウケンドー、リュウガンオーの
進化形も復活!
ここでは、仮面ライダーの強化フォームのような位置づけ
としています。なので、変身口上も変えております。
三大戦士の初戦闘としては、あっさり終わりすぎてしまいましたね(汗)
力量不足で申し訳ない。

カズキの宿敵ですが、こいつは「ガン×ソード」のラスボスである
かぎ爪の男がモデルです。
一見人の良さそうな老人ですが、怒りの感情が欠落し究極の
独善野郎です。

一夏達が強化形態に、変身できなかった理由も
原作リュウケンドーを少しアレンジしました。

時空管理局に隠された秘密は、とある錬金術マンガと同じ理由でした。
当然、魔法にも細工をしております。

ここまでは自分でもシリアスかなと思ったんですが、最後に(汗)
フェイトの暴走具合は「俺、ツインテールになります」の
ドMイエローと「この素晴らしい世界に祝福を!」の
へっぽこクルセイダーを参考にしておりますwww
てか、違和感ないなホント。

今のなのはに勝てる者は、この場にいません。
レグド達の魔法封じの策も通用しないでしょう。

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