インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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まずは遅くなってすいません(汗)
最新話、やっとできました。
逆OHANASI、楽しんでもらえれば幸いです。

さて、冬コミの準備も進めなければ。


幻惑の弾丸と星の光

輝く太陽が空から消え、寡黙な月が静かに見守る夜が間もなく始まろうとする中、

その夜を照ら出さんとする光が溢れようとしている場所があった。

 

「八神はやてさん?戦いに参加しないって言うなら、せめて結界ぐらい

 張ってくれないかしら?こっちが張ったら、何か小細工したと思われても

 あれだし」

 

レイジングハートを構えるなのはに、同じくクロスミラージュを構えるティアナは

視線をなのはから外すことなく、その後ろにいるはやてに結界を張ることを促す。

だが、自分が負けることは絶対にないと言わんばかりの言葉に、なのはとはやては

顔をしかめる。

 

「(だぁぁぁ~~~~~!

 何言ってんのよ、私は!!!)」

 

顔をしかめた二人を見ても、一切表情を変えないティアナだったが内心では

頭を抱えて冷や汗をダラダラと流していた。

 

「(カズキさんから、大人しくしていろと言われて大人しくしているような

 二人じゃないから、首を突っ込むようなら力づくでも止めろって言われたけど、

 こんなの無理ゲーじゃない!

 相手は、顔に似合わない砲撃をバカスカ撃ちまくる管理局の白い悪魔なのよ!

 下手したら魔王になるかもしれないのに、凡人な私がどうやって止めるのよ~~~)」

 

にらみ合いが続く中、ティアナから何かを感じ取ったのか、

少しイラっとした感情がなのはに沸いた。

 

「(まあでも、絶対に勝てないってわけじゃない……。

 さっきのやり取りだけでも、勝算があるのはわかったし。

 こうなったら、腹を決めてとことんやってやろうじゃない!)

 それじゃあ、準備はいいかしら?

 後、一人でやるって言った以上はやてさんが手を出したりしたら、その時点で

 そっちの負けだからね」

「うん、わかった」

 

はやてとリインによって結界が張られ、あくまで一対一の勝負であることを決めると

一気に空気が張り詰める。

数秒かはたまた数分かの静寂が流れ、互いに構えたままだったが前触れもなく、

岩場が少し崩れて小石が海へと落ちる。

 

「アクセルシュ……!」

「っ!」

 

小石が落ちたのを合図に、なのはとティアナは戦闘を開始した。

ホーミング機能がある魔法で多方面から一気に攻めようとしたなのはに対して、

ティアナは地面に向かって攻撃を放ち、土煙を起こす。

いきなりの目くらましに、虚をつかれたなのはだったが、すぐに自分も地面に向かって

砲撃を放ち爆風で土煙を払う。

 

「ちょっ、なのはちゃん。煙を晴らすためにこれは……」

 

爆風から腕を前にして守ったはやてが文句を漏らすと、煙が晴れたそこにティアナの姿は

無かった。

 

「どこに!」

「こっちよ!」

 

姿を消したことへの疑問の回答は、その本人からすぐに返ってきた。

ティアナはクロスミラージュを構え、なのはの右側から攻撃を仕掛ける。

 

「くっ!」

 

奇襲じみた攻撃に対し、なのははほぼ反射的に防御魔法を発動しそれを防ぐ。

ティアナの攻撃の重さから、これなら自分の防御を破ることはできないと判断して

反撃をと思うなのはの脳裏に、一つの疑念が浮かぶ。

 

「(おかしい……。姿を消して、奇襲を仕掛けるつもりなら

 どうして自分から居場所を教えるようなことをしたの?)」

 

そう、死角からの攻撃は自分の居場所がわからないようにすることで、有用性が

上がるが、自分から居場所をバラすようなことをしては、有用性は半減してしまう。

 

「はぁぁぁっ!」

 

そんな疑念などお構いなしに、ティアナはなのはの右へ右へと回り込みながら

攻撃を続けていく。

 

「(どうして、一度は姿を隠したのにすぐにそれをバラしたのかぐらいは

 疑問に思ってくれたかしら?

 姿を隠し続けて、辺り一面を吹き飛ばすような攻撃をされでもしたら、

 それだけでこっちは一発アウト。

 だったら、こうやって相手に攻撃を“させない”様にした方がまだマシよ!)」

 

ティアナは動き回り、ひたすらに攻撃を続けながらも勝つための思考も並行して行っていた。

左利きのなのはに対して右から攻撃を続けることで、体を回してレイジングハートをこちらに

向けて狙いをつけるのに数瞬だが、時間はかかるように仕向けているのだ。

攻撃を行うために防御を解除し、レイジングハートを向けた瞬間。

自分の攻撃をなのはに通せる瞬間は、そこしかないとティアナは動きながら撃ち続けた。

 

「この子のデバイス、左右で攻撃方法が少し違う……!」

 

ティアナの攻撃を防ぐなのはも、目立ったダメージこそないが少しずつ確実に

魔力を消費していく現状に、焦りを感じ始めていた。

しかも、攻撃を防ぐうちにあることに気付いたのだ。

ティアナが構える2丁タイプのデバイスは、攻撃方法が異なっていた。

右手に握っている方は、威力は低いが連射性に優れ、左手の方は連射性が低いが

威力があるのだ。しかも、それ以上にティアナの射撃は正確だった。

動きながらの射撃にも関わらず、デバイスを握るこちらの左手を狙って撃っているのだ。

更に時に連射を、時に威力をメインに攻撃するなど、攻撃のリズムが読みにくくなっていた。

もしも、ダメージを覚悟の上で防御を解除してこちらから攻撃した瞬間、

左手に攻撃され、レイジングハートを取り落として集中砲火を受けてしまうかもしれない。

 

「だったら……レイジングハート!」

『All right。フラッシュムーブ』

 

なのはは、移動魔法を用いてティアナの攻撃を防御しつつ後方へと距離を取ると

そのまま上空へと移動した。

 

「空に!」

「もらった!アクセルシュータ!」

 

上を取った自分に狙いをつける暇を与えず、なのはは攻撃を仕掛ける。

 

「まだまだっ!クロスミラージュ!」

『任せろ。シールドビット、展開!』

 

ティアナは、クロスミラージュに指示を飛ばすと、彼女の周りに細長い六角形の盾のような

モノが現れ、縦横無尽に彼女の周りを動き回り、なのはの攻撃を次々と防いでいく。

 

「そんなっ!」

「ど、どうなっとるんや!」

 

シールドビットが防いでいく光景に、なのはとはやては驚愕の声を上げる。

何故なら、なのはの攻撃はシールドビットに当たった瞬間、まるで砂糖や塩が

飲み物に溶けるように霧散して、ダメージをほとんど与えられていないのだ。

 

「無駄よ。非殺傷設定の魔法じゃ、このシールドビットは壊せないわ。

 不安や恐怖を増大させてくる魔物達の精神攻撃に対抗するために、魔弾戦士の

 鎧は、その手の精神攻撃に強い耐性があるの。

 全く同じってわけじゃないけど、シールドビットはそれを参考にして

 作られているから精神攻撃の一種である非殺傷設定の攻撃は、効きにくいの……よ!」

「っ!」

 

なのはの攻撃が途切れた瞬間を狙って、今度はティアナの攻撃がなのはを襲う。

自分の攻撃が効かないことに呆然として、完全に虚を突かれてしまい、防御が

間に合わないなのはは飛行魔法をそれを駆使してかわしていく。

 

「は、はやてちゃん……」

「あかん……あの子、的確になのはちゃんの弱点を突いとる……」

 

一気に戦いの流れを傾けたティアナに、はやては焦りの声を上げる。

 

「なのはちゃんの魔法は砲撃がメインで、威力は抜群やけどその分、チャージに

 時間がかかる。

 チャージをさせる暇もできる体勢もできないように、ピンポイントで

 攻撃をしとる……」

「それに、変ですぅ!あんな正確な射撃をしながら、あの盾を飛び回すなんて、

 パンクしちゃいますよ!」

 

どんなにすごい攻撃でも撃てなければ、何の意味もない。

なのはも反撃をしているが、その攻撃はシールドビットに全て防がれてしまう。

はやては、相手は自分達が負けた魔物でもグムバのような人外でもない女の子が相手なら

楽に勝てると思った自身の考えの甘さを悔やむが同時にある疑問を感じる。

リインが言ったように、ティアナはシールドビットを飛びまわしながら、攻撃を

行っているのだ。

しかも、シールドビットは複数が固まって合体することで巨大になったりもしている。

動き回りながらピンポイントを狙う攻撃をするのと同時に、

シールドビットのようなものを飛び回すなどデバイスの補助があったとしても、

人間の許容処理能力を超えているのだ。

 

「あの子がデバイス並みの無茶苦茶な処理ができる天才なんか、

 持っているデバイスがとんでもないんか……」

 

その先をはやては、口にできなかった。

このままいけば勝敗は……。

 

「(やれやれ、事件の捜査は優秀とか言われているみたいだけど、物事の裏を見抜けない

 ようじゃ、この先生き残れないわよ!)」

 

ティアナは攻撃の手を緩めることなく、聞こえてきたはやての言葉に呆れ半分の

考えをもらす。

 

「(クロスミラージュがとんでもないデバイスっていうのは、正解だけど

 私自身は、ただ小手先の技を使うのが上手いだけのただの凡人。

 そんな凡人が一流の天才や規格外の怪物に勝つには、考えて考えて考え抜いて、

 手持ちの10%の力しかないカードを120%の力を発揮できるカードになるように切ること!)」

『(ティアナ。魔力バッテリーの残量が、間もなくレッドゾーンに入るぞ)』

 

自分がどこにでもいる凡人であることを認めながらも、ティアナは自分よりも

強い相手に勝つ手段を模索していた。

そこへクロスミラージュから、自分達の強みであるバッテリーの残量を知らされる。

 

「(予想よりも早かったわね……)」

『(これだけ、動き回って攻撃しているんだ。当然だろ。

 だが、それでも予想の範囲内だろ?)』

「(ええ。相手も私の攻撃スタイルやパターンが分かってきたころだし、

 そろそろ仕掛けるから、防御は任せるわよ!)」

『(存分にやってやれ!)』

 

はやては、ティアナがどうやって動き回りながら正確な攻撃をしてかつ、

防御の盾を飛びまわしているのか疑念を感じていたが、それは完全な間違いであった。

クロスミラージュは攻撃のサポートを“行っていない”のだ。

つまり、ティアナは完全に自身の技量だけで動き回りながら正確な射撃を行っている。

反対にシールドビットの制御はクロスミラージュが行っており、ティアナは何の指示も

出していない。

言葉にすると役割分担をすることで、実現しているということだが言葉にするほど

簡単なことではない。ティアナがどう動くか分かっていなければ、防御のタイミングを

合わせることなどできないし、逆にティアナの攻撃も阻害してしまいかねない。

そうならないのは、たゆまぬ訓練によって互いの呼吸というものを

完全に理解しているからに他ならない。

そして、ティアナは魔導士の中でも規格外に入る、Sランクオーバーのなのはに勝つための

策を切るタイミングを決断する。

 

「(この子の攻撃は本当に正確で、私が反射的に防御してしまうような所を

 狙ってくる!

 だけど、これだけの攻撃量と動き回って分の体力を考えると、あっちの方が

 私より消耗しているはずだから、チャンスはもうすぐ来るはず!)」

 

ティアナの予想外の攻撃と防御に押されていたなのはだったが、時間が経つにつれ

冷静さを取り戻し、戦況を分析していた。

実際、今はティアナが押しているように見えるがティアナの攻撃を防御して

消費されたなのはの魔力に対し、動き回って手数で攻撃しているティアナの方が

体力も魔力も大きく消費していた。内蔵されたバッテリーによって、

同ランクの魔導士より長い時間戦えるティアナだが、それでも体力の消費は

どうしようもなかった。

 

「(それに、攻撃のパターンも大体読めてきた。

 本命の攻撃が来るのは、連射の後。次に、連射が来た時が反撃の合図……来た!)」

 

見出した勝機の瞬間を待っていたなのはは、訪れたその瞬間に反撃を狙うが

ティアナの連射はなのはの防御魔法にぶつかると、霧のように消え去った。

 

「えっ!?きゃっ!」

「はぁぁぁっ!」

 

驚きによってなのはの動きは一瞬止まってしまい、ティアナはその一瞬を逃さず

今までの攻撃の中でも最も早い攻撃を放ち、再びなのはの体勢を崩し自身の周りに

大量の魔力弾を創り出し、それをなのはに向かって一斉に放った。

 

「……このっ!」

 

体勢を崩されながらも、ダメージを最小限に抑えるべく一方向しか防御できないが、

その分防御力が高いラウンドシールドを正面に張るが、放たれた魔力弾は先ほどのように

ことごとくシールドにぶつかると霧のように消え去っていく。

 

「幻術魔法っ!こんな珍しい魔法を使うなんて!」

 

ティアナの使う魔法に、なのはは驚愕の表情を浮かべる。

幻術魔法の使い手は極めて珍しく、なのはも知識としてしか知らず、ましてや

戦闘はこれが初の経験である。

 

「だけど、幻だってわかればっ!」

 

幻であるなら、防ぐ必要はないとラウンドシールドを解除して自分の十八番である

砲撃魔法を放とうとするなのはだったが、シールドを解除した瞬間、彼女は衝撃によって

吹き飛ばされた。

 

「……ぐっ!い、今のは、幻術じゃない!?」

 

吹き飛ばされたなのはがティアナの顔を見ると、ニヤリと笑みを浮かべており、

再び大量の魔力弾を創り出し、なのはへと放った。

 

「っ!今度も幻術じゃない!」

 

なのはもまた再びラウンドシールドを張ると、先ほどと違い衝撃が次々と彼女に

襲い掛かる。

 

「(一発一発は、それほどの威力じゃないけど同じところを正確に命中させてくる!)」

 

例え、一発の威力は低くてもその衝撃が消える前に同じ箇所に攻撃を続けていけば、

衝撃もダメージを蓄積していき、いつかは抑えきれなくなる。

 

「(だけど、これはこっちにもチャンスだ!

 こうやって、防いでいる間にチャージを……)」

 

この状況を利用して、砲撃のチャージをと思った瞬間、不意にシールドからの衝撃が

消え去る。魔力弾は次々と命中しているのに。

 

「今度は、本物に幻術を混ぜたの!?」

 

こんな見せかけの攻撃に何の意味があるのかと考える前に、ティアナはなのはの横に

回り込むと三度大量の魔力弾を創り出し、腕を振り抜いてそれを放っていく。

 

「さあ、これは本物か幻術か……どっちかしら!」

「っ!」

 

ティアナの言葉に、一瞬判断が遅れなのはは攻撃をまともに受けてしまう。

 

「がはっ!」

「真実の中の嘘、嘘の中の真実。

 何が真実で、何が嘘なのか……幻惑の弾丸、見抜けるものなら見抜いてみなさい!」

 

そこからは、ティアナの独壇場だった。

襲い掛かる攻撃が、本物なのか幻術なのかなのはの脳裏に疑惑がよぎり、

更に自分の分身も創り出していくティアナの変幻自在な攻撃に対応が

どんどん追いつかなくなっていき、攻撃を防ぎきれずその身にダメージが募っていった。

普段のなのはなら、ここまで翻弄されることはなかっただろう。

だが、グムバによっていいように遊ばれ、カズキやティアナからは足手まとい扱いを

受けて、なのはの思考は焦りが募り空回りしていた。

無論なのは自身、自分がそんな状態であることを分かるはずもなく、ティアナが

そうやって焦る様に戦う前から挑発して誘導していたなど知る由もなかった。

 

「はぁ……はぁ……」

「どうしたの?エースオブエースの実力はこんなもの?」

 

そして、地面へと撃ち落とされたなのはをティアナは静かに見下ろす。

だが、ティアナの方も完全に優位と言うわけではなかった。

 

「(あと一押しってところだけど、こっちも魔力切れ寸前……。

 少しでも油断して、一発でも喰らったらあっという間にひっくり返される。

 欠片も余裕がないことを顔に出すな!

 全部、こっちの手のひら……思い通りって顔をしろ!)

 そろそろ、決着をつけさせてもらうわ……よ!」

 

なのはと違って攻撃を受けていないティアナだったが、実際はなのはの一手一手に

神経を張り、動き回ってもいて体力も魔力もなのはの数倍は消費していた。ティアナは

それをなのはに悟られない様、ポーカーフェイスを貫き、勝負をつけるべく一気に手持ちのカードを切りにかかる。

再度、魔力弾を創り出していくティアナだったが、その数は今までの数倍はあり、

更にティアナを守っていたシールドビットが向きを変え、セシリアのブルーティアーズ

のような体勢となっていく。

 

「っ!?あの盾、攻撃にも使えるんか!」

「なのはさん!逃げてください!」

 

ティアナの止めの一撃に、はやてとリインは悲鳴じみた声を上げるが、なのはは

その場から動こうとしなかった。

 

「(やっぱり、こうきた!

 あの子の攻撃は正確だけど、攻撃力はそんなに高くない……。

 だから、止めの一撃は数による集中砲火!そして、その制御のために足を止める!

 そこが最後の反撃のチャンス!)

 レイジングハート、カートリッジロード!」

『All right、マスター……!』

 

なのはの意図を察しレイジングハートが、稼働すると薬莢のようなものが排出されていく。

そして、先ほどよりも出力が上がったラウンドシールドを展開する。

 

「(あの子の攻撃を完全に防ぎきるのは、不可能。

 だったら、シールドを展開するのと同時に砲撃のチャージをして

 それが妨害される攻撃だけ防ぐ!

 あなたの攻撃が私を倒しきるか、私のチャージが先に終わるか勝負だよ!!!)」

「クロスファイヤー……シュート!」

 

ティアナが放った魔力弾とシールドビットからの多重攻撃が、次々となのはに

襲い掛かるが、なのはは勝利の瞬間を掴むためにそれを耐える。

防御に力を注いでのチャージのため、いつも以上に時間がかかるが

それでも確実にチャージは進んでいった。

 

「(あと、10秒……えっ?)」

 

ようやく、見えてきた勝利の光に自然と手に力が入るなのはだったが、そんな中で

突如として、聞き慣れない発砲音を耳にする。

ティアナを見ると、その右手にはクロスミラージュではなく、“拳銃“が握られており、

魔力弾ではなく鉛玉がなのはに迫っていた。

 

「し、質量兵器っ!?」

 

ティアナは攻撃の最中、右手に持っているクロスミラージュを消すと素早く懐から

拳銃を抜き出し、装填されていた6発の弾丸を神業的な速さで放ったのだ。

魔法を使わない武器を魔導士が使うとは思わず、なのはも見ていたはやて、リインも

目を見開いて驚くが、その鉛玉はシールドに当たるとあっさりと甲高い音だけたてて

はじかれるに終わるが、硬いモノ同士がぶつかる甲高い音は次々と鳴り響いた。

 

「な、これって!一直線上に、撃ったっていうの!?」

 

ティアナは、拳銃をただ撃ったのではなく、寸分たがわず同一線上になるように

撃ったのだ。

一発目ははじかれたが、同じ個所にあたった二発目はわずかながらなのはのシールドに

くぼみを作り、三発目では先端が付き刺さり、その弾を金づちで叩くように

後続の弾が命中していき、シールドにひびが走っていく。

 

「(そう……私の攻撃力じゃ、あの防御を破るのは簡単じゃないけど

 モノには急所ってものが存在する。

 そこを狙って、破壊できればどんな防御も破れる!

 今までシールドに防がれても攻撃してきたのは、その急所を見つけるため!

 しかも、拳銃何て魔導士からしたら使うことも使われることも考えない武器で

 魔力もないのなら、完全に虚を突くことができるし、これは貫通に特化した弾……。

 一発じゃ無理でも、急所に命中させ続ければ!)」

 

シールドに突き刺さった弾に6発目が当たると、ついに弾はシールドを貫通し、

なのはのシールドは完全に破壊された。

 

「そ、そんなっ!?」

 

防御に自信のあるなのはは、まさか魔法ではなく質量兵器によって自分の防御が

破られるとは思ってもみなかったので、残り数秒でチャージが完了するというのに

砕けたシールドを見て呆然としてしまう。

 

「もらった!クロスミラージュ!」

『おう!シールドビット、アサルトモード!』

「い…………っけぇぇぇ!!!!!」

 

ティアナが左手に握ったクロスミラージュから放った攻撃が4機のシールドビットが

格子状になったものを通り抜けると、なのはの十八番である砲撃魔法に劣らずの

強力なものとなりなのはに迫る。

 

「「なのはちゃん(さん)!」」

『マスター!』

「私は……」

 

自分を呼ぶ声を遠くに感じながら、なのはは光に呑まれた。

 

「ふぅ~……」

「こ、こんなことって……」

「…………」

 

はやてとリインは自分達の目の前で起こった出来事が、信じられなかった。

負けたことが無いわけではないが、なのはが魔法で負けるなど二人は思いもしなかった。

 

「ま……まだ……だよ……」

「なのはちゃん!」

「あれを受けて動けるとか、流石にタフね……」

 

決着がついたかと思われたが、フラフラになりながらもなのはは立ち上がろうとしていた。

 

「でも、もう終わりよ。決着はついたわ……」

「まだ、終わっていないよ!」

 

もう戦う気はないとばかりに、ティアナはバリアジャケットを解除するが、

なのははレイジングハートを構える。

 

「あのね……気づかないの?

 あなた達は勝つために私を倒さなきゃいけないけど、反対に

 私は別にあなた達を倒す必要なんてないことに……」

「どういう意味?」

「……しまった、そうや!うちらは、あの子を倒してグムバと戦えることを

 示さなあかんけど、あっちはユーノ君らが作戦を開始するまでの時間を稼げれば

 それでええんや!」

「っ!?」

「正解よ」

 

呆れたものを見る態度のティアナに、はやては自分達の勘違いに気付くが

もう遅かった。

 

「そう、私達が戦っている間に、こっちの作戦は始まっているの。

 敵が使う結界は、隠密性に優れたものだからあちらが意図して取り込むか、

 目と鼻の先まで近づかないと見つけるのはすごく困難……。

 だから、仮にここで私を倒したとしても意味はないし、

 今から戦いに入っても作戦の邪魔で足を引っ張るのが関の山よ」

「そ、そんな……」

 

ティアナの言葉になのはは愕然として、レイジングハートを下す。

 

「目先のことにとらわれて、戦いの意味や本質を見抜けなかった時点で、

 勝負はついていたのよ」

 

今度こそ、なのはは地面に手をついて崩れ落ち、はやても悔しそうに

拳を握りしめるしかなかった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「へぇ~。てっきり、あの術で戦える空間を切り取ってくると思っていたのに、

 ゲームの方で勝負を挑んでくるとはねぇ~」

 

ユーノは例の互いに傷つけることができないという結界の中で、グムバと

向き合っていた。

 

「無茶を言わないでくれ。

 君は、こういうゲームが好きだけど、それをせずに普通に戦ってもかなり強いだろ?

 ボロボロの状態の僕が、真正面から戦っても勝率は低い……。

 なら、君が仕掛けるゲームで戦った方がまだマシさ」

「ふふふ。リュウケンドー達も面白そうだけど、君ともいろいろ楽しめそうだ♪

 早速始めようよ!」

 

面白そうでワクワクするといったグムバとは対照的に、ユーノは静かに

六角形の金属板のようなもの取り出し、静かにレイジング・ガードナーの姿となる。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「はぁ……はぁ……」

「ふふ、いい恰好ね~本当によく似合うわ~」

 

クリエス・リリスにさらわれたフェイトは、ある空間で十字架に貼り付けにされていた。

バリアジャケットはいたる所が破れており、呼吸も大きく乱れていた。

 

「さぁ~て、それじゃ次は――なんてどう?」

「っ!!!?」

 

うつむき具合のフェイトの顎を持ち上げ、そっと耳元で囁いたリリスの言葉に

フェイトは信じられないと大きく目を見開く。

 

「いいわ!実にいいわ、その顔!最っっっ高よあなた!!!」

『…………』

 

グムバのように心底楽しそうに笑うリリスとワナワナと体を震わすフェイトを、

空中に鎖で縛られているバルディッシュだけが見ていた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「どうなっているんだ、この場所は?

 行けども行けども、何も無いじゃないか……」

 

一夏は気がついてから、ここがドコだが探るべく砂浜の上をひたすらに歩いていたが、

何も見つけることができなかった。

ゲキリュウケンがいないので、怪物や怪人などが出てきて襲われたりしないのは

幸いだが、精神的には厳しい状態であった。

吹き抜ける風に、輝く太陽。漂ってくる潮の匂いと波の音。歩くたびに感じる砂の感触。

なのに魚一匹、鳥一匹もいないのだ。

 

「本当に、なんなんだここは?」

「――。――♪~♪」

 

ふと、どこからか歌声が聞こえてきた一夏が辺りを見回すと、

白い髪に白いワンピースを着た小学5,6年生ぐらいの女の子が躍る様に、歌っていた。

 

「……」

 

一夏は何故か、その子から目が離せずいつの間にあったのか、

落ちていた流木に座ると目の前の光景を眺め始めた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

海上のある地点。

そこでは、カズキ達によってブラック・ゴスペルを閉じ込めた

凍った水柱が少しずつ振動して、氷が崩れ始めていた。

だが、その氷が崩れ切る前に赤黒い光線によって、水柱は破壊される。

 

「命中確認……」

「よし作戦通りアーニャ、セシリアはそのまま狙撃。

 ラウラ、簪、シャルロット、リュウガンオーは中距離から、

 他のメンバーは散開しつつ、接近戦だ!」

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」

 

水柱より5キロほど離れた時点で、シャドウデルタに乗るカズキを先頭に

箒達ISを纏うメンバーと、リュウガンオー、明、ジノ、アーニャが浮かんでいた。

 

「さぁ~て、今度こそ終わりにしようか……小僧」

 

長い一日が終わるのはもう間もなく――――。

 

 





今回ティアナの使った戦法は、家庭教師ヒットマンリボーンの
霧の方のものでした。
シールドビットはもちろん、ガンダムから。
拳銃の一か所に連続というのは、技名は忘れましたが、
「グレネーダー 〜ほほえみの閃士〜」から。

今回、なのははいろいろあって普段の力をいつも通りに
発揮できていませんでした。
それを見抜いて、更に混乱させたティアナの作戦勝ちとも言えますがwww

同じ季節の内に進めたいと言ったのに、今は真逆の季節(汗)

冬コミがありますから、次回は年が明けてからですね。
来年も応援よろしくお願いします。

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