インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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いつもより時間がかかりましたが、何とかできました(苦笑)
しかし、あまり話は進まず(汗)
これから少しの間、月一ぐらいになるかもしれません。


消せない闇――

何故だ――?

 

滅ぼされてしまった故郷のように青く美しい世界、地球。

地球で力を出し切れない理由が分かった私は、しばらく地球から離れることに

したが、何故か妙な胸騒ぎを覚えそれに従って地球に来てしまった。

そして、やってきた私の目に飛び込んできたのは、以前私と剣を交えた戦士、

リュウケンドーが仲間をかばい海へと落ちていく光景だった。

彼の鎧が消え、仮面に隠れていた顔を見た瞬間、私はリュウケンドーを

助けるべく動いていた……助ける理由も義理もないのに――。

復讐のためなら、世界が滅ぼうが誰が死のうがどうでもいいはずなのに、

何故私はこの少年を助けたのだ――――?

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ぐっ……ええい!次から次に邪魔を!」

 

宇宙ファイターXとリュウガンオーの攻撃を両腕でガードし、そのままはじき返した

ブラック・ゴスペルは未だに宇宙ファイターXも

リュウガンオー達も抹殺することができず、仕留めたと思ったリュウケンドーも

予想外の救出が入ったことに苛立っていた。

 

「あれって、例の管理局襲撃者?何で一夏を助けてくれたんだ?」

「それを考えるのは、後にした方がいいぞ!」

「今度こそ――消えろ!」

 

オルガードが一夏を助けたことに、リュウガンオーも困惑するが

そこにブラック・ゴスペルは先ほどの暗黒の光弾を再び作り出し、今度は“的確”に

リュウガンオーと宇宙ファイターXを狙って攻撃する……。

オルガードの姿に固まっている箒達に向かって――。

 

「あの野郎っ!」

「ちっ!」

 

盛大に舌打ちしながら、リュウガンオーと宇宙ファイターXは最大速度で

一夏達の元に向かう。

 

「くそ!スカイモードは、機動力があってもスピードが!」

「これじゃあ、間に合わない……なら……剃(ソル)!そして、月歩!」

 

宇宙ファイターXは、デルタシャドウから飛び出すと空中を瞬間移動しているかのように

消えては現れるように移動し、光弾と一夏達の間に割り込む。

 

「嵐脚……乱(みだれ)!」

 

ザンリュウジンの斬撃に加えて無数の嵐脚を放つ宇宙ファイターXだったが、

光弾を相殺するには至らなかった。

 

「そこのお前。……こいつを頼む」

「えっ!?」

 

オルガードもまた、自分の近くにいた箒に一夏を預けると剣を抜き光弾を

切り裂いていった。

 

『(おい、カズキ!)』

「ぐっ!」

 

7つあった光弾のうち、オルガードと共に6つまでは防げた宇宙ファイターXだったが

最後に一つ残ってしまい、かわせば一夏を抱える箒や他の者達に当たってしまうため、

一夏と同様その身を楯代わりにして爆発にのまれる。

 

「あ~あ~、仮面が割れちまったよ……。俺まで正体バレちゃったなぁ~」

「いや、何でそんなピンピンしてるんですか?」

 

宇宙ファイターXが爆発の中から飛び出すとデルタシャドウが追いつき、その背に

着地する。宇宙ファイターXことカズキは、仮面は割れ服も所々

破れていたり血を流しているが、リュウガンオーが言うように

大したダメージを受けているようには見えなかった。

 

「攻撃が命中する瞬間、防御するのではなく風を操って衝撃を受け流したのか。

 やるな――」

 

オルガードは、光弾が当たる瞬間にとったカズキの行動に感心する。

 

「まだ、油断するのは早いみたいだよ?」

 

カズキがそう言うとオルガードとリュウガンオーが見たのは、三度暗黒の光弾を

放とうとするブラック・ゴスペルだった。

 

「今度こそ、消えろ!!!」

 

ブラック・ゴスペルの攻撃にリュウガンオーや箒達がそれぞれ防御や迎撃しようと

した瞬間、赤黒い光線がブラック・ゴスペルの後方から襲い掛かった。

 

「ガッ……!何だっ!」

「おおりぃあっ!」

 

背後からの攻撃を手をかざして障壁のようなものを展開して防ぐブラック・ゴスペル

だったが、体勢は悪く防いでいるところを更に上方から飛翔した青い何かに攻撃され

吹き飛ばされる。

 

「お待たせっ!」

「ジノ!」

「やれやれ。やっと来たか。

 でも、いきなりシュタルクハドロンはやりすぎじゃないのかアーニャ?」

「そのおかげで、敵の攻撃を防げたから結果オーライ」

「味方……?」

「――って!一夏の他にもISを動かせる男がいたの!?」

 

突然現れた援軍らしい二人に簪は呆然とし、あいさつ代わりに

一人は爽やかにもう一人は対照のようにどこかテンションは低いが、

遊び心を秘めたような声を上げて親指を立てる。

しかし、ブラック・ゴスペルを吹き飛ばした青と白の装甲に赤い翼の機体を

纏っているのは一夏と同じく男であり、そのことに鈴が驚愕の声を上げる。

 

「ちょっと、違うな。そもそもあの二人の機体はISじゃないんだ。

 まあ、それはここから帰れたら説明するよ」

「どいつもこいつ調子に乗りやがって……!」

「調子に乗っているのは、貴様だろ――」

 

吹き飛ばされたブラック・ゴスペルが、カズキ達を睨み付けると

刀のように鋭い声が耳に届く。

 

「誰だっ……GAAAAAっ!」

「しばらくおとなしくしてろ!」

 

ブラック・ゴスペルが声が聞こえた背後に振り向くと、相手を見つけるよりも前に

体に網がかかったと思うと、電流が流れその動きを止める。

それを行った左腕にロケットアンカーを、右腕に盾とライフルを複合した武器を

装備した黒いISを纏った明は、静かに怒りを燃やす。

 

「あ、明っ!?

 何で明が!それにあれって、専用機!」

「簡単なことさ、シャルロット。明は、ただ王子様の帰りをおとなしく

 待っているタイプのお姫様じゃないってことさ。

 普段は、一夏にからかわれ姿に目が行くけど、彼女もまた爪を隠している鷹でも

 ある。

 特殊なステルスシステムを搭載した強襲用IS“ブリッツ”。

 明との相性は、想像以上だな。

 とりあえず、いい加減この三文芝居の幕を閉じようか!」

 

カズキが、そう言うのと同時にブラック・ゴスペルは電流が流れる網を

引き剝がす。

 

「ジノ、近接格闘に持ち込んでこれ以上光弾を撃たせるな。

 明は中距離から援護!」

「わかった!」

「了解!」

 

ジノと呼ばれた金髪の青年は、ザンリュウジンと同じ斧剣を取り出すと『銀の福音』

以上の超高速機動でブラック・ゴスペルに斬りかかり、続くように明も

ビームライフルと杭状のロケット推進弾で牽制する。

 

「ちまちま……と!」

 

元から格闘が苦手なのか、ブラック・ゴスペルは倒されはしてないがジノの攻撃に

反応できず攻撃を受ける装甲に傷を増やしていく。

更に、死角を突いて明の援護射撃で動きを止めにかかるので戦闘は一夏達と一転して

一方的なものへとなっていった。

 

「アーニャ、奴の真下の海面を爆撃して水柱を上げろ」

「了解……全弾……発射――」

 

長めの髪を結い上げ、どこか達観したかのような少女アーニャは、その身に纏う

赤紫の鎧の全身からミサイルを放つ。

 

「ぬおっ!」

「何て、火力ですのっ!」

「しかも、先ほどの飛行を見る限り、機動力が低いというわけでもなさそうだ」

 

アーニャが放ったミサイルにより海面は爆発しそれによって生じた水柱に、

ブラック・ゴスペルは飲み込まれる。

その光景に、セシリアとラウラは息をのむ。

 

「仕上げだ、リュウガンオー!」

「おう!」

 

リュウガンオーはゴウリュウガンの後部に何かをセットする。

 

『二つの魔弾キーを同時に発動するために試作されたユニット。

 実験段階のため、何が起きるかは予測不能』

「それでも、やるしかない!」

 

リュウガンオーはファイナルキーとカズキが一夏から拝借したアクアキーを

差し込み、引き金を引く。

 

「いけぇぇぇ!!!」

 

リュウガンオーは発射の反動でひっくり返りながら吹き飛ぶが、発射された

ドラゴンキャノンは水色のエネルギーを螺旋状に纏いながら水柱に着弾し、

ブラック・ゴスペルごと水柱を凍らせていく。

 

「ちっ!こんな氷、すぐに壊しt……な、何だ!体が動かな……。

 お、お前まだ意識が――」

 

凍っていく水柱から脱出しようとしたブラック・ゴスペルだったが、突如として

動きに異変が現れ、そのまま凍った水柱に閉じ込められた。

 

「仕留めたのか?」

「いや、動きを封じただけだ。今は、撤退が優先だからね。

 態勢を立て直した第二ラウンドが、本番さ。

 それよりも、一夏を助けてくれたことに礼を言うよ、オルガード。

 俺達は急ぐから、これで失礼!

 箒、ジノに一夏を渡してくれ。

 この中で一番早いのは、エネルギーに余裕のあるジノのトリスタンだ」

「任せとけ!」

 

ブラック・ゴスペルの動きが封じられたのを確認すると、カズキは

オルガードに礼を言い、指示を出して未だ某全気味な者達と共にその場を後にした。

残されたオルガードは、凍った水柱を一目見やるとしばらく青く染まる空を見上げ、

姿を消した――――

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

花月荘に臨時で設置された作戦室では、重苦しい空気が流れていた。

部屋には、作戦に参加した専用機持ちの他に救援に来てくれたジノ、アーニャ、明、

変身を解いた弾そして、いつの間にか姿を消し再び現れた束に加え、

なのはとはやてがいてそれぞれが沈んだ表情を浮かべていた。

この二人は、一夏を抱えたジノ達が帰還した海岸にウェイブ達と共に

姿を見せたのだ。

傷だらけのユーノと共に……。

 

誰かが旅館から抜け出したのを察知したウェイブ達は、それを追跡していると

血を流しながらおぼつかない足取りのユーノと出会った。

レグドの襲撃を受けたユーノは、迎撃ではなく撤退を即決しレイジング・ガードナー

としての力を発動すると見せかけて、攻撃を受けた瞬間に転送魔法を発動させて地球へと逃亡したのだが、完全にはかわせずかなりの深手を負ってしまったのだ。

すぐに手当てをしようとするウェイブ達だったが、ユーノは微かに結界の気配を感知し

ケガを押してウェイブ達と共に気配を感じる場所へと向かった。

この時、ウェイブ達は旅館から抜け出してグムバの結界に囚われてしまった

なのは達を見失っており、それを聞いたユーノは抜け出したのは、なのは達でこの結界の中にいるのかもと考え制止するウェイブ達を振り切ってその結界に侵入して、

そこにいたなのはとはやてを救出した。

結界を解き姿を見せたグムバは、目的はある程度達したしおもしろいものも見れたから

今日はもういいやと言って、姿を消してその場での戦闘にはならなかったらしい。

ユーノはそこで力尽き“時空……管理局は……危……険だ”と言って、

気を失ってしまう。

 

その後、もう隠しておくのは無理だと判断したのか、カズキは弾に変身を解くように言い

鈴のようにジノを見て驚愕する者達の混乱をおさめて、全員に作戦室に集まる様に

伝えた。

一夏とユーノは、護衛のために戦力を分けるのを避けるために旅館の一室へと

運ばれて束の治療を受け、ウェイブ達は旅館の周りを再び警備している。

 

「それで?何から聞きたいのかな?」

「全部だ……お前が隠していることを全部話せ……。

 あのミールという輩が言っていたこと。

 高町達のことも、一夏と五反田がお前と共に戦っていたこと全部だ!」

 

部屋にいる者達の気持ちを代表するように、千冬は静かでいて有無を言わせない

剣幕で言葉を絞り出し、カズキを睨み付ける。

 

「そうだね……それじゃあ、何から説明するか……。

 まずは、俺達魔弾戦士のことかな?」

『そうなるな』

「だ、誰ですか!」

 

カズキの腕から聞こえてきた声に、真耶が驚きの声を上げる。

 

「今の声は、こいつさ」

『直接話すのは、初めてだな山田先生?

 俺の名は、ザンリュウジン。よろしく』

「そんでもって……」

『同じく、ゴウリュウガンだ』

 

カズキがザンリュウジンをみんなに見えるように机に置くとそれに続いて、

弾もゴウリュウガンを置く。

 

「こ、これってデバイス?」

「いや、違う。彼らは、魔弾龍。この地球を守ってきた守護者(ガーディアン)だ。

 この守護者(ガーディアン)である魔弾龍と共に戦う戦士が魔弾戦士……

 それが俺や弾、一夏だよ」

 

カズキの説明に、知らなかった面々の千冬達は目を丸くする。

そこからカズキは、楯無達に話したようにかつて戦ったジャマンガのことや

創生種のことを話していった。

 

「地球(ほし)を守る戦士、魔弾戦士か……大体のことはわかった。だが、なぜ――」

「このことを黙っていたのか?でしょ?」

 

ゆっくりと飲み込んで何とか理解しようとする千冬は、次の質問をカズキに

言い当てられ、黙り込む。

 

「理由は、単純なことさ。“心配をさせたくなかった”それだけだよ。

 後は……男の意地って奴かな?」

「男の意地……だと?」

 

苦笑いを浮かべて肩をすくませながら答えるカズキに、千冬は眉をひそめる。

 

「こんな危なくて怖いことを他の誰にも知ってほしくないし、

 味合わせたくないっていう、傲慢で自分勝手な考えだけど……

 残念ながらその男の意地に命をかけれない奴は男じゃないんでね……。

 分かってやってくれ」

「だから、いつも女は苦労するんですよね」

 

自虐気味に話すカズキに、明は諦めを感じさせるため息を吐いて呆れた声を出す。

 

「さてと……!少しだけ落ち着いたみたいだし、次のことを話す前に二人のことを

 紹介しておこうか」

「そう言えば、まだ自己紹介もしてなかったな」

「すっかり、忘れてるのかと思った……」

「あははは……」

 

ふと思い出したようにジノが手を叩き、アーニャが気だるそうに言うのを聞いて

弾は苦笑いを浮かべるのであった。

 

「俺は、ジノ・ヴァインベルグ。一夏達の協力者ってところかな?」

「アーニャ・アールストレイム。以下同文……」

「彼らは、ウェイブ達と同じく別世界の住人で使っているのはISじゃなくて、

 KNF(ナイトメアフレーム)と呼ばれるもので、リュウケンドーのように

 防衛のために作られたから男女関係なく使うことができるんだ」

「そういうことだったんですか……」

「別世界というのは、何のことだ?」

 

カズキの言葉に簪が納得の声を上げるが、そこにラウラが疑問の声を上げた。

 

「簡単に言うと、もしもの世界のことだ。もしもああだったら、こうだったらという

 世界が私達の世界の他に存在しているという考えだ。

 パラレルワールドとも言うな」

「そう、明の言うように世界は気づかないだけで無数に存在し

 普段は互いのことを知る由もないんだけど、たまに異世界を行き来できる技術が

 生まれたりすることもある。

 実際、俺もこの地球とは別の世界の出身で、なのはとはやてはそのたくさんの世界を

 一応守っている組織の所属なんだ」

「「ちょっ!?」」

 

ついでと言わんばかりに、自分達のことをバラされなのはとはやては驚愕する。

 

「この二人とフェイトは、時空管理局って世界を管理・維持する組織の一員で、

 今回は自分たちの基地を襲撃して、何故か一夏を助けたあの

 黒騎士オルガードとISについて調べるためにIS学園にやってきたんだよな?」

「……最初から知ってたんですね、うちらのこと」

 

よどみなくスラスラと述べるカズキに自分達は最初から、彼の掌にいたのだと

はやては降参した。

 

「まっ、俺達も管理局のことを知ったのはユーノと出会った偶然からだけどね」

「ユーノ君と出会った?」

「たまたま、俺達が特訓のために行った世界でユーノが遺跡を調査していたんだ」

 

ユーノがカズキ達と顔見知りだと言う事実になのはは驚き、それに構わず弾は

説明を続ける。

 

「そして、これも偶然だったのかその遺跡に創生種の奴らが

 創った魔物が現れてユーノに襲い掛かって、それを助けたことが出会いのきっかけ

 だったんだ。

 そこから、互いのことを話して俺達は時空管理局のことを知ったんだ。

 聞いた瞬間に胡散臭い組織だとは、思ったけどね~」

「どういうことですか、胡散臭いって?

 確かにオルガードさんの話を聞くとあれですけど……でも!」

「理由はいろいろあるけど、その一つに権力が集中しすぎているんだよ」

 

カズキの言葉に反論するなのはだが、それをバッサリ斬るようにカズキが問題点

を述べる。

 

「時空管理局は地球で言う軍隊、警察、裁判所……この3つの権力を

 一か所に集中させている。

 だからこそ、たくさんの世界を管理できる巨大な組織であると言えるが、

 逆を言えばその中で犯罪が起きても、誰も気づけないし捕まえることも難しくなると

 言える……オルガードの世界を滅ぼした連中に指示を出した奴とかね……」

「「っ!?」」

「そこで、俺達は時空管理局を調べるためにユーノと協力関係を結ぶことにしたんだ。

 場合によっては、魔弾戦士のことを知って何かしらのアクションを

 起こすかもしれないからね。

 幸いにも彼は、情報という大きな武器を扱える部署にいたから

 情報戦は俺達に圧倒的に優位だったんだけど……」

『どうかしたのか?』

「さっき、ユーノが気を失う前に“時空管理局は危険だ”って言ったろ?

 そんなことは、俺達は既に知っているのに何で今さらそんなことを

 言ったのかが気になってね……。

 そもそも俺達が時空管理局のことを気になったのは、

 創生種の奴らが利用するのにうってつけの組織だからってこともあるんだ。

 いろんな世界に行けたりするからね……

 (まさか、考えられる最悪のパターンが当たっていたのか?)」

「それもいいけど……今はあのミールって奴をどうにかするのが先じゃないか?

 管理局のことはユーノが目を覚ましたら聞けばいいわけだし」

「後、敵に攫われたって子も……」

 

考え込むカズキに、今考えてもしょうがないとジノとアーニャが目の前の問題を

何とかしようと話を振る。

 

「そうだよな~。

 何とか凍らせて動きを封じたけど、どれくらい持つか分からないし……」

「あ~それね?

 今、衛星をハッキングして見てるんだけどあの氷の内部温度が

 どんどん高くなっているから、後3~4時間ぐらいで復活するんじゃないかな?」

「3、4時間か……それまでに準備をしないと……」

 

束の情報を聞いて、話の内容をブラック・ゴスペルの迎撃に移すとするカズキだったが

それに待ったをかける人物がいた。

 

「待て、カズキ。

 あのミールとやらが言っていたことの説明が、まだだぞ?

 このまま、有耶無耶にするつもりか?」

 

千冬の指摘に全員がハッ!と思い出したように気づいて、カズキの顔を見る。

 

「……はぁ~。やっぱり、ごまかせないか~。

 しょうがないね。でも、言っておくけどつまんない話だよ?」

「いいから、さっさと話せ」

 

上手く話しを誘導して、自分の過去を話すのを避けようとしたカズキだったが

千冬にあっさり看破され、観念して重たそうな口を開く。

 

「千冬ちゃんには、さっき言ったことを昔話したよね?

 俺が別世界からやってきて、この世界に来るまではある男への

 復讐のために生きてきたって」

「ああ。最初は信じられなかったがな……」

「えっ!?」

「千冬さんは、知っていたんですか!」

 

千冬が既にカズキが別世界の人間であることを知っていたことに、真耶と弾は

声を上げて驚く。

 

「ある男への復讐って……」

「その場にいたなのはとフェイトから聞いていると思うけど、俺も君達が

 追っているオルガードと同じく、故郷を滅ぼされて家族も友達も……

 命以外の全部をそいつに奪われたんだよ……」

 

カズキの言葉にまさかとばかりの声を出すはやてに、カズキは淡々とどこか

遠くを見るように自分の過去を話し始めた。

 

「それで、奪われた俺は今度はそいつから全てを奪うために

 力を求め、鍛え続けた。毎日血反吐は吐いたし、全身の骨で

 折れなかったところは探す方が難しいかな?

 そしてそいつに関わりのある人間とか組織を片っ端から、

 潰しまくって地獄に送ったから、

 ミールっていうガキはその生き残りってところだろ。

 あの連中は、相当しぶとい上にそいつのことを異常なまでに崇拝していたからな~。

 そいつらからしたら、自分達の主を地獄に送った俺の存在は許せないんだろ。

 ――俺があいつの存在を否定するようにな……」

「で、でも……そんな……復讐って……それじゃあ、その人と同じじゃないですか!」

「せや!そんなことしたって、碓氷先生の家族も友達も喜ばへん!

 先生ならそれぐらい、分るはずや!」

「奪われたから奪うって……そんなの絶対間違ってる!」

「間違っているから、何だい?」

 

悲痛な声を上げる真耶、はやて、なのはだったがカズキは少しも動じることなく

聞き返す。

 

「何だ……って、どういう……」

「同じになる?だから、あいつを許せばよかったと?

 喜ばない?

 当り前じゃないか、死んだら誰も喜ばないし、悲しまない……何も感じない。

 死は絶対の終わり……どんなに言いつくろたって、復讐は自分のための

 自己満足さ。

 間違っている?そんなことはわかりきっているし、知ったことじゃない。

 例え、あの時あいつがみんなの命を奪わなければ世界が

 滅んでいたとしても、俺があいつを許す理由にならない……。

 まあ、他にすることもなかったっていうのも理由の一つかな……?」

 

憤るでもなく悲しむわけでもなく、感情が籠っていない声で過去を語る

カズキにその場にいた全員が言葉を失う。

間違っている狂っていると言うのは簡単だが、カズキの心に

響かせることはできないだろう。

自分でも普通じゃないと理解していて狂った道を進んだ者に、言える言葉を

誰も見つけることができなかった。

 

「俺のつまんない過去話はこれぐらいにして、話を戻すけど

 次の戦いは、おそらく最初よりもきつくなる。

 銀の福音の意志が、完全に封じられるだろうからね」

『どういうことだよ?』

「あいつが戦闘に慣れていないとしても、自分のパワーに振り回されすぎだ。

 多分、銀の福音が抵抗していたからだ。

 現に最後の言葉は……」

『確かに意識がどうとかって……』

「だが、氷に閉じ込めたことで、支配する時間も与えてしまった。

 操縦者のことも考えると――。

 千冬ちゃん。ここからは、俺達だけで何とかするよ」

 

何事もなかったようにブラック・ゴスペルの迎撃を検討するカズキは、信じられない言葉を

放ち、周りを驚かせる。

 

「どういう意味だ……?」

「もう事態は、ISで対処できる範囲を超えつつある。

 こういう事態が起きた時、俺達魔弾戦士が対応を行うことは

 既に国の方とも秘密裏に話をつけてあるしね」

「い、いつの間に」

「ははは、流石カズキさん♪」

「抜け目なし……」

 

千冬が低い声で尋ねると、カズキはイタズラのネタばらしをするように口角を

上げていつもの笑みを浮かべ、弾達は苦笑したりおもしろいと笑みを浮かべる。

 

「……つまり私達では、足手まといということか?」

「そうじゃない。

 ここからは、本当に揺るがない――何があっても絶対に生き残るっていう

 決意をする必要がある。

 だから、俺は君達に一緒に戦ってくれとも危ないから戦うなとも言わない。

 ここから先、戦うか戦わないかは自分で考えて、自分の意志で決めてほしい……」

『へぇ~。一夏や弾は、戦いを止めろってボコボコにしたのに、

 どういう風の吹き回しだ?』

「彼女達は、もう一緒に何回か戦っているだけでなく、今回の戦いで

 俺達でも負けることがあるって知ったからね。

 後は、彼女達がどうしたいかさ。

 残る問題は、連れ去られたっていうフェイトだけど……」

 

足手まといだと言われたかと思ったら、自分達で戦うかどうかを決めてほしい

と言われ、困惑する箒達を置いてカズキはなのは達を襲ったグムバに話を移す。

 

「確か、その中だと互いに攻撃できないんだっけ?」

「……ええ。それで私達は、グムバっちゅう奴が仕掛けてきたゲームで

 勝負したんですが……」

 

弾の疑問にはやては結界の中で、起きたことを話していった。

グムバは、いつも自分がやっているゲームじゃ勝手が違いすぎて

なのはとはやてが不利すぎるからと人間のゲームで勝負をしてきたのだ。

完全な上から目線の余裕に、拳を握りしめて悔しがる二人だったがどうすることも

できなかった。

ゲームは、ゲームの世界に入ったように現実と変わらないリアリティで行われたらしい。

格闘、レース、シューティング、クイズ、様々なゲームで勝負したが

どのゲームもグムバはやりこみが半端なレベルではなく、ゲームは上手いレベル程度の

なのはとはやては相手にならず、時間だけが過ぎていった。

 

「そんな時、ユーノ君が現れて私達二人と自分を……

 この間の戦いでレイジング・ガードナーが見せた結界

 で囲むと転送魔法で逃げたんです……。

 そんで、ユーノ君が着とったのは、レイジング・ガードナーの服やった……」

「ユーノ君が、レイジング・ガードナー……なんですね」

 

顔を俯かせて二人はフェイトを連れ去られた時やグムバと戦った時以上に、

拳を握りしめた。

 

「あれ?でも、その結界って転送とかできないんじゃ……」

「多分、ユーノは結界術を使って敵の結界から、自分が干渉できる

 空間を切り取ったんだ。結界術の中を別の空間と見たててね。

 普通はそんなことできないんだけど……」

「ユーノも天才……」

 

ジノの問いかけにカズキが推測でユーノがやったことを述べると、

アーニャがゲーム機のようなカメラをいじりながら、的確な言葉を発する。

 

『まずは、そのグムバを探さないとフェイトを助けようがないか』

「いや、その心配はないよザンリュウ。

 奴はまだ近くにいる」

『なんで、そんなことわかるんだよ?』

「話を聞く限り、こいつは俺達とゲームをしたがっている。

 それにフェイトを助けるには、俺達はこいつに接触するしかないことを

 見抜いているだろうから、必ず俺達が自分の前に現れるのを確信しているだろう。

 どうやって、自分を攻略してくるのかをワクワクしながらな……。

 幸いなのは、この手の相手は自分で決めたゲームで勝負がつけば約束は

 守るってことかな?」

『ああ~。お前もそういうの好きだから似た者同士で、わかるのか~』

 

ザンリュウジンが納得したという声を上げると、カズキは数秒間笑顔で動きを止めると

机の上のザンリュウジンに手を伸ばし、握り潰そうとする。

 

『アダダダダダ!!!』

「問題なのは、誰が行くかだな。

 戦闘力はハッキリ言って、意味がない。俺が行ければ、いいけど

 海の方に行かないといけないからな……」

「ルルーシュは?あいつすっげぇ~頭いいし、何とかなるんじゃ!」

「弾の言うようにそれも一つの手だけど、

 あいつは想定外のことに弱いところがあるからな~。

 もう少し、臨機応変に対応できる奴が……」

「僕が行きますよ――」

 

ザンリュウジンの悲鳴を華麗なまでにスルーして、グムバにどう対処するか

悩んでいると、ふすまを開けて包帯を巻いたユーノが姿を見せた――。

 

 

 

 





今回は、最後の方にてこずりました(汗)
一夏達の危機に、新たな助っ人としてジノとアーニャに来てもらいました。
それぞれの愛機をISのように纏っております。
明もISを纏って参戦。
忍者のような姿を考えていたので、ブリッツガンダムを選びました。


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