インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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最近、伝ポケの厳選が終わって全国図鑑が完成し、
強いポケモンの育成にはまっているすし好きです。

最新話、できあがりました♪


知らぬものたちと知るもの

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

一夏が悪戦苦闘しながらも、勉強を進めていると誰かに話しかけられそちら顔を向けた。

 

「うん?」

「まぁ、なんですの!その返事は!?

 私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、

 それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

 

そこにいたのは、いかにも身分の高いような高貴なオーラを出していた女子であった。腰に手を当てた姿がより一層、様になっていた。

 

「(この子は、確かイギリス代表候補生の……)」

『(名をセシリア・オルコットと言ったか……)』

 

一夏とゲキリュウケンは、目の前の人物が前もって“知らされていた”重要人物の一人であることを記憶の棚から引き出して思い出した。

 

「聴いていますの?お返事は?」

 

そんな内心での彼らのやりとりが、気にいらなかったのか先ほどよりきつめに問いかけてきた。

 

「ああ、聞いてるよ。それで?

 俺に何か用か?

 俺は、君のことなんか知らないんだけど」

 

知らないのは、嘘ではない。確かに資料で見て、知ってはいるが面と向かって合う初対面はこれが初めてである。

 

「わたくしを知らない!?このセシリア・オルコットを!?

 イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

「(なんか、めんどくさい子だな)」

『(そうだな)』

 

“いかにも”現代の子であるセシリアに対し、一夏とゲキリュウケンはあまり関わりたくないなと感じていた。

 

現在ISを動かせるのは女性だけということから、女性=偉いという風潮が流れて街中ですれ違っただけの男がパシリにさせられるというのも珍しくない。

 

目の前の少女もそんな風潮に染まっているようだ。

 

「全く男で唯一ISを操縦できると聞いていましたが、とんだ期待はずれですわね。

 大体、そんなISのことをしらないような有様でよくこの学園に入れましたわね」

「そっちが、勝手に期待しててもなぁ~」

 

確かに、他の人よりも不思議な出来事と遭遇することは多かったかもしれないし、できることも普通の人より多いかもしれないが、だからといって自分が優れていたり特別だとは一夏は思わなかった。

 

どんなに力を持とうとも、自分が“ちっぽけな人間”であることに変わりはないのだから――。

 

「ふん。本来、わたくしのような選ばれた人間と

 同じクラスになれただけでも幸運なことなのですよ?

 その現実を、理解していないようですわね。

 まあでも?わたくしは優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてさしあげますわよ」

 

明らかな上から目線で、セシリアはしゃべり続けた。

 

「ISのことでわからないことがあれば、そうですね。

 泣いて頼めば教えて差し上げてもよくってよ。

 何せわたくしは、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

「俺も倒したぞ、それ」

「は……?」

 

信じられない言葉でも聞いたのか、セシリアの表情が固まった。

 

「まあ、倒したって言ってもただこっちに突っ込んできたのをかわして、そのまま壁にぶつかって

 動かなくなっただけだから、勝たせてくれたって言った方がいいかもな~

 ん?どうしたんだ?」

「わ、わたくしだけだと聞きましたが?」

「女子ではってオチじゃないのか?」

 

ビシリと何かに亀裂が走る音が聞こえた。

 

「あ、あなたも教官を倒したと言うのですか!?」

「いや、倒したんじゃなくて倒されてくれたというか、とにかく落ち着け」

「これが、落ち着いていられますか!」

 

ドンと一夏の机をたたくセシリアだが、そう言い放った後すぐに休憩時間の終了を知らせるチャイムがなり響いた。

 

「っ……!この続きはまた後で!

 逃げたら許しませんことよ!」

 

そう言い残しセシリアは一夏から去っていった。

 

「何だったんだ、一体……」

『(あの調子だと、本当にまた絡んでくるぞ)』

「(勘弁してほしいぜ。でもさ~?)」

『(どうした?)』

「(逃げるって……、どこに逃げる場所があるんだ?)」

『(さてな)』

 

一夏はさして気にせず次の授業の準備をするが、そうはいかない者たちがいた。

 

「っっっ!」

「あの女、何なのよ!あの態度は!」

「ずいぶん、上から目線の子やったな~」

「代表候補生って、国を担う将来のエリートなのにあの態度はよくないよね」

「“おはなし”が必要かな?」

「な、なのは。そ、それはっ……」

 

箒たちはセシリアの態度に思うものがあり、フェイトはなのはが出した言葉に冷や汗が流れるのを感じた。

 

「……クスッ」

「だ、誰か……席、変わっ……て……ガクッ」

 

シャルロットも箒たち同様、憤りを感じていたが彼女の放つ冷たく黒いオーラに、隣の席の子は最早限界だった。

 

 

 

三時間目開始時に千冬は、逃亡したカズキと一緒に教室に入ってきた。

カズキがピンピンしてるのに対し、千冬は何日も徹夜したかのような疲れ具合である。

 

「授業の前に、クラス代表を決める。

 クラス代表とはその名の通り、クラスを代表して会議や委員会への出席、

 代表者同士で行う対抗戦にも出てもらう。自他推薦は問わん」

 

ようするに学級委員のようなものかと一夏は感じていたが、一つ疑問があった。

 

「千冬ちゃ~ん。そういうのは普通、1時間目とかに決めるんじゃないの?

 ひょっとして、忘れてたとか?

 千冬ちゃん、意外とうっかりさんだからね~」

 

一夏の心でも読んだのか、感じていた疑問をカズキが代わりに問いかけた。

そして、言い終わるや否やカズキに日本刀が振り下ろされ、それを一夏がしたみたいに白刃取りで受け止めた。

 

「な~に、どこぞの変態宇宙人の退治に頭がいっぱいになっててつい、なぁ~」

 

笑ってはいるがギラギラした目で、カズキに斬りかかる千冬だった。

 

「ははは。それは大変だね~」

 

少し間違えば、スパッと斬られる事態にも関わらず、カズキは余裕な態度を崩さない。

 

「そうだ、大変なんだ。フフフ……」

「ははは……」

 

刀を振り下ろし、受け止めている状態で笑いあう千冬とカズキだが、

その空気ははっきり言って怖い。

 

「じ、じゃあ誰かクラス代表をやりたい人はいますか?」

 

耐えかねた山田先生が、涙ながらにクラス代表の話へと若干無理やりにもっていった。

 

「(大変だな。山田先生も)」

『(その大変なことの何割かは、お前のせいだと思うが?)』

 

そんな山田先生の苦労を察する一夏だが、ゲキリュウケンの言うように彼も苦労の原因の一端であることは否定できない。

 

「(とにかく、このクラス代表だけどさ。

 本当に“あの人”が言ったとおりになるのかな?)」

『(私もそんな馬鹿なと思ったが、彼女たちを見てるとおそらく……)』

「はいはいは~い!織斑くんを推薦しま~す♪」

「私も私も!織斑くんに一票♪」

「『(やっぱり~)』」

 

当たってほしくない予想が当たってしまい、嘆く一夏とゲキリュウケンだった。

 

「候補者は織斑一夏か……。他にはいないのか?」

 

刀を鞘に戻しながら、クラスに問いかける千冬に一夏が問いかけた。

 

「千冬姉じゃなくて、織斑先生。これって辞退することは……」

「推薦された以上、できるわけないだろ。

 ケガ等の、特別な理由でもない限りな……」

「ですよね~」

「待ってください!納得できませんわ!」

 

一夏が世界の理不尽?に半ばあきらめた時、突如甲高い声で反論が上がった。

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!

 わたくし、セシリア・オルコットにそんな屈辱を味わえと!」

「(ああ~やっちゃったな、あの子)」

 

自分のことを貶められているのに、一夏は冷静だった。

 

「いいですか!?クラス代表は実力がなければつとまりません!

 こんな素人にそんな実力があるはずもありませんわ!」

 

頭に血が上っているのか、どんどん言葉が苛烈になっていく。

 

「大体、文化としても後進的な国で――」

『(言いたい放題だな)』

「(だな。周りの目が入らないのかね~)」

 

このIS学園では、様々な国から学びに来ている子も多いが、

それでもクラスの大半を占めるのは日本人である。

 

ヒートアップするセシリアは、そのことが頭に無いのか先ほどから鋭い目を向けているクラスメートに気がつかない。

 

「(大物なのか、よっぽどの鈍感なのか)」

『(お前に鈍感と言われるとは、アイツもかわいそうに……)』

「(どういう意味だ、そりゃ)」

『(言ったままの意味だ。

 それにしても、あらかじめ話を聞いていてよかったな)』

「(確かに少し前の俺なら、とっくにつっかかっていたよな~

 いつもながら思うけどここまで……”あの人”、カズキさんの予想通りだなんてな)」

「ちょっと、聞いていますの!」

 

自分が熱弁してるにも関わらず、他人事のような感じの一夏にセシリアがくってかかってきた。

 

「……」

「何か言ったらどうですの!これだから男と言うのはっ!」

「……ぷっ、……ははははは」

「なっ!」

 

突然、笑いだした一夏にセシリアだけでなく皆が唖然とした。

 

「いや~悪い悪い。あんまりにも聞いてたとおりだったから、つい」

「一体、何を言ってますの!」

「それは、俺が教えてあげるよ」

 

千冬とのじゃれあいの後ここまで何も言わず、おとなしくしていたカズキが会話に入ってきた。

 

「山田先生、例のものを読みあげてください」

「は、はい!」

「例のもの?何だそれは?」

 

突然、カズキに話しかけられ慌てる山田先生だが、そこへ千冬が少し不機嫌そうに問いかけた。

 

「え~っとですね、3時間目が始まる前に碓氷先生に渡されたんです。

 ”これは預言書だ”って」

「ははは♪ラブレターかと思ったの?

 やだな~もう。俺は千冬ちゃんに、ベタ惚れなんだからそんなことするわけないじゃ~ん。

 相変わらずのヤキモチ屋さんなんだ・か・ら~♪」

「誰が妬くか!!!」

「織斑先生、落ち着いてくださ~~~い!」

 

顔を赤くして、再び斬りかかろうとする千冬に山田先生が、後ろから必死に羽交い絞めして止めにかかる。

 

「織斑先生、先に進みませんよ~」

 

一夏にそう指摘され、舌打ちしながらも千冬は刀を納め、

山田先生にその予言書を読むように促した。

 

「それでは。

 ” 織斑先生がクラス代表を決めると言うと、クラスの皆はこぞって一夏を推薦する。

 一夏が、辞退できるかと織斑先生に尋ねるも推薦されたからとケガ等の理由もないため

 却下される。

 男が代表をすることに納得がいかないセシリア・オルコットは

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!

 わたくし、セシリア・オルコットにそんな屈辱を味わえと!」

 

 と反論する。

 その後も日本は後進的で、クラスのも耐えがたい屈辱であると言う。

 そして、素知らぬ顔をしてる一夏に

 

「何か言ったらどうですの!これだから男と言うのはっ!」

 

 と聞く。

 すると、一夏が突然笑いセシリアだけでなく、クラス全員が驚く。

 その後、俺が渡したこの予言書を山田先生が読み上げて皆固まる”

 って、えっ?

 えええええぇぇぇぇぇ――!!!!!?」

 

山田先生が読み終わった途端、驚きの声をあげた。

彼女だけでなく、クラス全員が驚きで固まりセシリアにいたっては、開いた口をしまらない状態になっていた。

 

「ううううう碓氷先生!

 何なんですか!これは!!!」

「何って、預言書だよ~

 クラスの名簿を見てたら、彼女が何か問題を起こしそうだったからね~

 このままじゃ、一夏もくってかかるだろうから、彼女の性格から

 言いそうなことを推測してあらかじめ教えてたんだ♪」

 

しれっと答えるカズキだが、推測だけでここまで言い当てることができるのだろうか?

 

「山田先生。考えるだけ無駄だ。

 癪だが、この変態はとんでもなく頭がいい。

 特に人を嵌めてからかう時の回転は、束以上だ。

 私もそれで……、何度っ!」

「束って、篠ノ之束博士ですか!?」

「そう!ただの千冬ちゃんにベタ惚れで、かっこいい男ではないのです!」

「黙ってろ!この変態宇宙人!」

「まあ、それはおいといて。山田先生?まだ予言はありますよ~」

「えっ?あっ!ホントだ」

 

まだあるの!とクラスの誰もが思い、一夏もここから先は初耳なので驚いていた。

 

「これですね。

 ”ps.

 セシリアが一夏のことを馬鹿にした時、千冬ちゃんは内心

 

「この小娘、よくも私の大事な大事な大事な弟のことを虚仮にしてくれたな……。

 たかが、代表候補生ごときが随分となめた口を……。

 まあ、そんな生意気な生徒を指導するのも教師の務めだ、ククク……。

 じっ~~~くりたっ~~~ぷりと、指導してやる。

 そうSI・DO・Uをな!」

 

 と思って、弟命な千冬ちゃんはセシリアへの制裁を決めていましたとさ♪”」

 

ズバッッッ!!!と山田先生が読み終わったと同時に刀を振り下ろすような音がクラスに響いた。

 

「おい……。貴様は何をないことないこと書イテイルンダ?」

 

地の底から響くような低い声で千冬が、カズキに問いかけた。

振り下ろした日本刀を持ちながら、ユラリと体を揺らすその姿は

黄泉よりまい戻った幽鬼のようだ。

 

その姿に固まっていたクラスの皆はガタガタと震え出し、千冬の近くにいる山田先生なんか腰を抜かして気絶寸前である。

 

「何言ってるのさ~♪

 あることあること書いてるんじゃん♪ってあっ!

 ごめんごめ~ん。

 大事な大事な大事なじゃなくて、“かわいくて自慢で大好きな”だった?」

「いっぺん、地獄にいってこい!

 この変態宇宙人がぁぁぁ!!!!!」

「とまぁ。冗談はここまでにしてと」

 

日本刀を振り上げ必殺の一撃を放とうとする千冬だったが、カズキは今までの飄々とした態度から真面目な顔になり千冬に向き合ったので、その動きを一端止めた。

 

「千冬。俺が、ただお前をからかうためだけにこんなことをしたとでも?」

「どの口が、そんなことほざく……」

 

千冬ちゃんから千冬と呼び方を変え、真剣な口調へと変えるカズキだがみんなも千冬同様、内心「えっ?違うの!?」と思っていたりする。

 

「千冬は、不器用だからね。

 皆勝手なイメージを押し付けてるけど、本当は不器用で照れ屋だけど弟思いな

 優しいお姉さんだってことを皆に知って欲しかったんだ」

「なっ/////」

 

カズキの思わぬ言葉に、本日一番顔が赤くなる千冬だった。

 

「ななななな何を言って……」

「そのためには、こうやって千冬の素顔を皆に見てもらうのが一番だから、

 こんなことをしたんだ」

「おおおおおお前はいつもそうやって//////////」

 

周りの目が入らないのか、ピンクな砂糖空間を形成する二人だった。

そして、先ほどまでの震えはどこにいったのか、皆甘ったるい空気に胸焼けを起こしかけていた。

 

「でも、半分ぐらいは千冬姉の慌てる顔を見るのが楽しいからやっていたんですよね?」

「半分どころか、七割ぐらいは♪」

 

空気を読めなのかそれともわざとなのか、一夏が問いかけるとカズキはあっさりと本音をバラし、今度は空気がビシリと固まった。

 

「お、お前らなぁ~~~」

 

先ほどとは違った意味で顔を真っ赤にした千冬が、ワナワナと拳を握りしめる。

まるで、噴火寸前の火山のようだ。

 

「何してるのさ、千冬ちゃん。

 早く、クラス代表を決めないと」

「そうだよ、織斑先生。時間がもったいないですよ~」

 

カズキと一夏がわざとらしくそう促すが、

今までのやりとりを見たら、全員同じことを言うだろう。

 

――決まらないのは、お前らのせいだ――と。

 

「で、では。オルコットの言うように、織斑にクラス代表ができる実力があるかどうかを

 見るために一週間後の月曜。放課後第三アリーナで勝負をしてもらう。

 結果に関わらず、その後再びどちらがクラス代表にふさわしいかの採決をとる。

 二人は、各々準備をしておくように」

 

プルプルと二人への怒りを我慢しながら、そう宣言する千冬であった。

これで、とりあえず終わるかと誰もが思ったがそうはいかなかった。

 

「後オルコットは放課後、生徒指導室に来い……」

「な、何故ですの!?」

 

突然の指名に、驚くセシリアだがその答えは意外なとこから返ってきた。

 

「あのさ?お前、代表候補生なんだろ?

 そんな、お前があんなことを言ったんだから当然だろ」

「どういう意味ですの!」

 

呆れを含んだ声で一夏が、答えるもセシリアは納得できないようだ。

 

「候補生とはいえ、国の看板を背負っているんだ。

 つまり、君の発言は祖国であるイギリスを代表するものとして捉えられる。

 ここでさっきの発言を出すとこに出したら、君も国も面倒なことになるんだよ、セシリア?

 IS誕生の国に対してなんて言った?

 だから、千冬ちゃんはとりあえず1回目だから、ありがた~~~いお説教で

 済ましてあげようっていうんだよ?」

 

カズキが補足の説明をすると、そこでようやく分かったのかブルブルと顔が青くなっていた。

 

「そういうことだ、オルコット。

 代表候補生というものが何なのか、キッチリ理解させてやる。

 ありがたく思えよ?」

 

口角をあげて微笑む千冬だが、その目は全く笑っていない。

どうやら、一夏のことを虚仮にされたのが相当頭にきているようだ。

 

「~~~っ!こうなったのもあなたのせいですわよ!」

「何でだよ……」

 

逃げ場がなくなったセシリアは、一夏に八つ当たりをするが一夏はめんどくさそうに返した。

 

「一週間後の決闘で、ケチョンケチョンにしてあげますから覚悟なさってなさい!」

「お前に、できるかな?

 なんなら、ハンデでもやろうか?」

 

どこか千冬をからかうカズキが見せる余裕な態度とは、少し違う余裕を見せる一夏だが発した言葉に今度はクラスの女子が笑いだした。

 

「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」

「男が女よりも強かったのは、大昔の話だよ?」

「むしろ、織斑くんがハンデをもらわなきゃ~」

 

次々に女子たちは好き勝手なことを言う。それも本気で。

 

ISが登場して以来、既存の兵器は過去の遺物扱いとなり男と女で戦争をすれば、男性陣は三日ともたないとされているのが世間の常識となっている。

そのため、クラスの大半は一週間後の戦いで勝つのはセシリアであり、一夏は精々よく戦ったぐらいで勝負は終わるだろうと思っているのだ。

 

「ふふっ、日本の男子というのはジョークセンスがありますわね」

 

そんな、クラスの雰囲気に気分を良くしたのか、若干上機嫌でセシリアも嘲笑を浮かべた。

だが、一夏はその空気の中でも余裕な態度を崩さなかった。

 

「やれやれ。これだから、何も知らない素人っていうのは困るんだ」

「それどういう意味?」

 

一夏が挑発するように言葉を発すると、隣の席の子が尋ねてきた。

 

「簡単なことさ。確かにISは最強の兵器だ。

 だけど、最強=無敵という方程式は成り立たないのさ」

「男と女が戦争をすればISがある分、女性側が有利に戦局を運べるだろうけどそれだけじゃ、

 勝敗はつかない。

 戦車や戦闘機でも、ISに全くダメージをあたえられないってわけでもないからね」

 

一夏に続くように、カズキも会話に入ってきて説明を始める。

 

「そもそもISは人が乗らなきゃ、ただの金属の塊だから搭乗前に攻撃したり機動性を封じるために

 屋内で戦うとか、いくらでも戦いようはあるんだよ」

 

そうはいっても、まだ納得できないのかほとんどの子は不機嫌そうにしていた。

 

「それに、ここにISを動かすことのできる男が一人いるんだ。

 これから先も出てこないとは言いきれない。

 つまり、戦力差はひっくり返る可能性もあるんだよ?」

「付け加えるなら一昔前の人からしたら、人間が機械を纏って空を飛ぶなんて夢物語……、

 ありえないことなんだ。

 そんなありえないことが、今現実になっているんだ。

 それなのに、どうして俺が絶対に勝てないようなことを言い切れるんだ?」

「“ありえないことなんて、ありえない”んだ

 よく、覚えておくといいよ……」

 

一夏とカズキがそう言うと、今度こそ皆黙り込んだ。

 

「それと、オルコット。それほど織斑に勝つ自信があるというのなら、

 私の訓練に付き合ってくれないか?

 最近、体がなまっていてなぁ~

 ああ、安心しろ。もちろん、ISではなく生身でのことだ」

「な、何を言ってるんですの!?」

 

千冬がニタ~リと笑いながら、拳をボキボキ鳴らしてセシリアへとにじり寄った。

それに、講義するセシリアだが当然である。

生身とはいえ世界最強である千冬の訓練相手など、自分などに務まるわけがない。

 

「だから、訓練に付き合えと言っているんだ。

 何せ、この私を“追い詰めた”ことがある一夏に勝てるんだから、私の相手も余裕だろ?」

「「「「「えええええっっっっっ!!!!!?」」」」」

ゴンっ――!!!

 

千冬のその言葉に周りは大いに驚き、一夏は机に勢いよく頭をぶつけて突っ伏した。

 

「ち、千冬様を追い詰めた!?」

「じゃ、織斑くんって超強いの!?」

「何言ってんだよ、千冬姉!!!

 あれは、千冬姉が油断してくれてただけだろ!

 それに、アレ以降はボコボコにされてるんだから!!!

 ……ってぇぇぇ!」

 

みんなが騒ぐ中、一夏がちょっと待て!と言わんばかりに真実を言うが、千冬からげんこつをもらってしまった。

 

「織斑先生だと、何度言えば分かる?

 油断だろうが、何だろうが私を追い詰めたのは事実だろうが」

「とか言って、ホントはただ一夏のことを自慢したいだけなんじゃ~」

「……」

「図星みたいだね~」

 

カズキの指摘に、目をそらす千冬だが彼の言うように事実のようだ。

 

実際、一夏が千冬を追い詰めたことは一度だけだが確かにある。

数年前国家代表を引退した後、家に帰った時に一夏が鍛錬をしていたのをたまたま見た千冬は、

好奇心から勝負を持ちかけたのだ。

胸をかしてやるつもりであったが、一夏の強さは千冬の予想を超えており彼女は、油断があったとはいえ後少しと言うとこまで追い詰められたのだ。

 

それ以降、家事だけでなく強さまで追い越されたら姉の威厳に関わると危機を感じた千冬は、自主練を現役時代のものより増やしたのだ。

一夏にも時折、相手をしてもらっているが姉の意地か、一夏は毎回ボコボコに負けている。

 

「まあ、とにかく一夏はそんじょそこらの奴らより強いってことだから、

 なめていたら痛い目を見ちゃうよ?」

「ふ、ふん!た、例えそうだとしても、勝つのはわたくしですわ!」

 

げんこつをもらって頭を抱えている一夏や明後日の方向を見てる千冬に代わって、忠告をするカズキだが、意地からかセシリアは聞こうとしなかった。

 

「やれやれ。仕方ない、一夏。

 このお嬢様に、世界の広さって奴を教えてやるといいよ」

「……テテテ。

 他人事だと思ってのんきですよね、アナタは。

 まぁいいや。

 セシリア・オルコット……、いやこのクラスの全員に見せてやるよ。

 お前たちの常識って奴が、ぶっ壊れるとこをなっ!」

 

立ち上がってセシリアに向き合い、怯むことなく真っ向から挑むような一夏のその姿を

カズキと千冬はおもしろそうに見つめていた。

 

 

 




なんか、原作のとこよりオリジナルのとこが書きやすかった。
何故だ?

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