インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの 作:すし好き
8割がたできたところで、いろいろと時間がとられてしまいました(汗)
何とか月に3回ぐらいは更新したいものです(苦笑)
「…………」
無数の屍の上で黒い鎧を纏った復讐の騎士、オルガードは自身の手を開いたり
閉じたりして自分の体の具合を確かめていた。
「やはり、俺があの世界……地球で力を出し切れないのはそういうことか?
厄介だな……ぐっ!」
壊滅させた管理局の施設を後にしようとした瞬間、オルガードは胸を押さえて崩れ落ちる。
「……ま……だだ!まだ……止まるわけには……!」
オルガードは、フラフラと立ち上がりその場を後にした。
数時間後、駆け付けた局員が見たのは壊滅させられた基地の跡だった――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「~~~♪」
食事の後、セシリアは誰が見ても上機嫌と言える状態だった。
具体的には、風呂とシャワーをそれぞれ浴びていつもとは違う“特別”な下着を
着るぐらいにである。
「(ああっ、もしものときのために用意していた甲斐がありましたわ!)」
まさに天にも昇るような感じで、セシリアは浮足立っていた。
そう、冷静な考えができないほど……
「ねえ、セシリア。何かいいことあったの?」
「いえ、何も♪」
「いや、それ真に受ける子はいないと思うよ?」
「あ~~~!せっしーがえっちぃ下着つけてる~!」
同じ部屋の者達が声をかけると、いつも眠たそうな目をしている本音がピコーン♪と
顔を赤らめて爆弾発言をする。
そうは見えないが、本音は意外と観察力と洞察力に優れているのだ。
「なにぃっ!?脱がせ脱がせぇ~!」
「剥け剥け~!」
「きゃあああっ!ちょっ、ま……って……引っ張らないで~!」
「よいでないか~よいでないか~」
抵抗するセシリアだが、昼間の海であまり泳げなかった分体力を持て余している
女子達の前では、無力であった。
「わ。本当にエロい……」
「えろい~えろい~」
「勝負下着ってやつ?織斑君のところに行けないのにそんなの着るってことは……」
「「「セシリアはエロいなぁ~」」」
好き勝手に感想を述べた後、最後に声を重ねてまとめる女子達。
「え、エロくありません!こ、これは……身だしなみ……そう!身だしなみですわ!」
顔を真っ赤にして反論するセシリアだったが、一度火が付いた女子達の鎮火は
困難を極めるのを彼女は失念していた。
「そういえば、お風呂念入りに体を洗ってたよね?」
「その後で、シャワーも浴びてたし、今も夜なのにメイクしてるし」
「あやしいなぁ~♪」
「あああ、あやしくなどありませんわ!ここここれは女として、当然の身だしなみ。
……わたくし、用がありますのでこれで!」
先ほどまでの行動を指摘される度に、ギクッとなりながらも気分を害されたようにして
外へ行こうと脱出を試みるセシリアだったが……。
「くんくん。なんかせっしーの香水いつもと違う……。
おお!これは、レリエルのナンバーシックスだ!」
本音の言葉に女子達が、ガタリと立ち上がり、脱出のタイミングがつぶれてしまう。
「レリエルのナンバーシックスって、一振り十万円って言うあの!?」
「しかも毎年百個しか生産されないシリアルナンバー入りよ、あれ!」
「見せて見せてーーー!」
「み、見ても構いませんから、わたくしはこれで――」
「「「ダメ!!!」」」
泥棒を捕まえるかのように彼女達はセシリアの腕を掴み、逃がそうとしなかった。
「さあ、者ども!セシリアのエロい香をかぐのだ~!」
「かげかげ!」
「私も香水つけて、せっし~みたいなえっちぃ下着つけた方がいいのかな~?」
セシリアにジリジリと怪しく指をワキワキさせて近づいて彼女達は、本音が
何気なくもらした言葉にビシリと固まり、一斉に本音の方へグルリと顔を向ける。
「あ、あれ……?」
「ねぇ、本音……何で私達に好きな人がいるって黙ってたのかな……?」
「オマケにそのわがままボディを存分に生かせる水着まで……」
「その破壊力……まず、私達が確認してあげる……」
目から光を消してユラユラと体を揺らしながら、彼女達は本音にジリジリと
迫っていった。
ターゲットが自分から本音に変わったこの隙をついて、セシリアは忍び足で
部屋を後にした。
「「「覚悟しなさい、本音!!!」」」
「ふぇぇぇ~~~!!!」
「な、何とか抜け出しましたわ……。
ですが、これで!」
疲弊してフラフラな足取りだったセシリアは、ようやく一夏の部屋へと
向かえると思うと今までの疲れが吹き飛びルンルン気分で目的地へと足を進める。
「あら?」
しかし、目的の部屋へとつくと既にそこには明、箒、鈴、シャルロット、ラウラ、簪
といつものメンバーが入り口のドアに耳を張り付けていた。
「みなさん?一体、何を――」
「しっ!」
何をしているのかと疑問の声を上げるセシリアに鈴が口の前に指を立てて静かに
と合図を送ると、セシリアもドアに耳をつけると――
「千冬姉、久しぶりだからちょっと緊張してる?」
「そんな訳あるか、馬鹿者。――んっ!少しは加減を――!」
「はいはい。それじゃあ、ここは……」
「くあっ!そ、そこは……やめっ――――!!!」
「だいぶ溜まっているみたいだね……というか、こういう千冬姉を
どう思います、カズキさん?」
「千冬ちゃんも人の子ということで♪」
「なあっ//////!!!?」
ドアの前のいた者達の間には沈黙が流れる。
「ここここれは一体、何ですの……/////!?」
口元をヒクヒクと震わせ、言葉を絞り出すセシリアだったがその問いに答えられる者は
おらず、沈黙がその場を支配する。
唯一、ラウラのみが訳が分からず頭に?を浮かべていた。
真実を確かめるべく、一端離した耳をドアにつけようとすると
そのタイミングに待っていたかのようにドアが開き、みんな部屋の中に倒れて
雪崩れ込む。
ドアを開けた張本人であるカズキは、クククと笑いながらその様子を見ていた。
「あれ、みんな?」
「何をしているか……」
横になっている千冬と横で座って彼女の腰に指を当てている一夏は、
雪崩れ込んできた彼女達に呆れた声を上げる。
「マ、マッサージだったんですか……」
「そ、そうですよね……」
倒れながら、先ほどまでの一夏と千冬のやりとりの正体がわかったシャルロットと
明はほっとして、胸を撫で下ろした。
「兄様。さっきから、みんなどうしたのだ?」
「みんな、ムッツリってことだよ~」
爽やかだけどどこか真っ黒な印象を与える笑顔をしながら、カズキは
ラウラの疑問に答えた。
「さてと……それじゃあ始めようかセシリア」
明達が倒れた拍子に崩れた浴衣を直していると、一夏はポンポンと布団を
叩いてセシリアを呼ぶ。
「え~っと……わたくしを部屋に呼んだのって……」
「ああ、マッサージをサービスしようと思ってな」
「…………」
あっけからんと答える一夏にセシリアは、自分の滑稽さに呆然となる。
そんな彼女の耳には、“セシリアはエロいなぁ”という声が
聞こえたとか聞こえなかったとか……
「……では、お願いします……」
「おう、任せとけ!」
意気消沈しながら、布団に横になるセシリアだったがたちまちそんな気持ちは
吹っ飛んだ。
「どうだ?痛くないか?」
「大丈夫です……とっても……気持ちいいです」
強すぎず弱すぎずな絶妙な力加減で、ほぐしていく一夏のマッサージに
セシリアは、快感の声を上げる。
「腰のコリがひどいな。セシリアって、何かやっているのか?」
「ええ……バイオリンを少々……んんっ~!そ、そこはちょっと……/////」
「ああ、悪い。ここは指じゃない方がいいな……」
指から手全体を使ってのマッサージは先ほどより緩やかな快感を
セシリアに与え、ウトウトと眠気がやってくる。
眠りそうになっているだけなのだが、どこかその光景は桃色のフィルターが
かかっているように明達には見え、頬を赤くさせていることに一夏とセシリアは
気付かない。
セシリアは快楽に身を任せて、夢の世界へ旅立とうとしていると――
もみゅん!
「ひゃぁっ!?!?!?」
突然お尻を鷲掴みにされたセシリアは、夢の世界の入り口から一気に
現実へと引き戻された。
「いいい一夏さん!?そそそそんな、みなさんが見てる前で//////」
パニックになってセシリアが後ろを振り向くとそこには……。
「ふふふ……」
イタズラが成功したと、カズキそっくりな笑みを浮かべている千冬の姿が
そこにあった。
「……ほれ」
「きゃあああああ///////!!!?」
「おーおー。マセガキめ」
獲物を捕らえた肉食動物のような笑みを浮かべていた千冬は、セシリアの
浴衣を捲り上げて、その下にあるものを拝見する。
「随分と気合いの入った下着だな。その上、黒か……。
何を考えてたんだ?」
そこにあったのは……とりあえず、高校生が着るような下着ではないと
だけ述べておこう。
カズキは、あらかじめ千冬がやることを予想してたのか捲り上げても
中が見えないような位置にいるが、それでも腹を押さえて笑いを堪えながら蹲っていた。
一夏は顔を逸らしているが、その顔は赤かった。
そして、千冬の後ろから顔を覗かせる明達は、赤くなりながらもバッチリと
その黒い下着をガン見していた。
「せせせ先生!離してください/////!」
「夢見るのはいいが、教師の前で淫行を期待するなよ、十五歳」
「いいいいいインコっ……/////!」
千冬の言葉が止めとなり、セシリアは沈んだ。
「ふう~。さすがに連続でやると、汗かくな」
「手を抜かないからだろ。少しは要領を考えろ」
「いやいや、それはせっかく時間を割いてくれた相手に失礼じゃんか」
「愚直だな」
『(だが、そこがこいつの長所でもある)』
「そんなこといっているけど、マッサージされてる時すんごく気持ちよさそうな顔を
して声を上げてたよね~。
久々の弟とのスキンシップが嬉しかったのかな~?」
いつものように始まるカズキのからかいに、自分も一夏にマッサージされたらと
考えていた明達はビシリと固まる。
ちなみにこの男、以前一夏の部屋に突然現れたように天井の板を外して、
この部屋にやってきたりする。
「…………」
「ち、千冬姉!ここ旅館だし、せっかく臨海学校なんだから落ち着いて!」
無言で拳をバキバキと鳴らす千冬に一夏が慌てて止めに入り、それをまた
カズキは面白そうに見ていた。
「……まあいい。それより、お前はもう一度風呂にでも入ってこい。
部屋を汗臭くされてはたまらん」
「わかったよ」
千冬にそう言われて、一夏はタオルと着替えを持って部屋を後にした。
「おい、やけにおとなしいな。いつものバカ騒ぎはどうしたんだ?」
『(そのバカ騒ぎの半分は、アンタとコイツが起こしてるんだけどなぁ~)』
一夏が部屋を出ていった後、片や世界最強の教師にその最強をからかえる
変人にどうしたらいいのかと途方に暮れる明達に千冬がどうしたのかと
聞くが、その言葉にザンリュウジンがひっそりとツッコミを入れるのだった。
「い、いえ、なんというか……」
「織斑先生とこうして、面と向かって話すのは初めてなので……」
「そんなにかしこまる必要はないよ?
プライベートな時の千冬ちゃんに、教師の面影なんかないっていうのは、
知っているだろ。箒、鈴?」
「……ほう~?そんなことを思っていたのか、二人とも……?」
シャルロットと簪が緊張した面持ちをしていると、カズキが何気なしに箒と鈴に
話題をふったことで、千冬のターゲットにロックオンされてしまい、二人はものすごい
勢いで顔をブンブンと横に振った。
「ふっ、冗談だ。とりあえず、飲み物でも奢ってやろう」
「そう言うと思って、用意しておいたよ♪」
カズキがいつの間にか部屋の冷蔵庫から取り出しのか、冷えた飲み物を明達に
手渡した。
「で、ではいただきます……」
「飲んだな?」
遠慮がちに全員が渡された飲み物に口をつけると、千冬がしてやったり
と笑みを浮かべた。
「え?」
「な、何?」
「ま、まさか何か入ってましたの!?」
「なわけあるか。ただの口止め料さ」
千冬はそう言うと、手に持った缶ビールをヒラヒラと見せると
ふたを開けて、喉に流し込む。
「くぅ~~~!」
「千冬ちゃん。一応仕事中なんだからお酒は、まずいんじゃないの?」
「そのための口止め料だ。それに、お前だって飲むだろ」
「まあね♪」
千冬に続くようにカズキも缶ビールを取り出し、飲み干していく。
見慣れているのか箒と鈴はやれやれと苦笑気味だが、他の者達は呆気に取られていた。
特に、ラウラは目をパチクリして呆然としていた。
「さて、本題に入るか……」
ビールを飲み終わると千冬は、不敵な笑みを明達へと向ける。
「お前ら、あいつのどこがいいんだ?」
『(わざわざ、一夏を追い出して何を聞くのかと思ったらそれかよ)』
「(まあ、千冬ちゃんは弟命なブラコンだから)」
カズキとザンリュウジンが内心でヒソヒソ話しているのに気づかず、女子一同は
面食らうが千冬の言うあいつなど一夏しかいない。
そもそもカズキを狙うとなると自然と世界最強の乙女とやり合うことになるので、
誰もが最初から白旗を上げている状態である。
「別に俺のことは、気にしなくてもいいからね?」
明達が戸惑っている所にカズキはそう言うが、どこから出したのかメガネを
かけて、悪魔手帳とペンを手にしている時点で気にしないことなど無理である。
しかし、このまま黙っていることもできないので観念して、口を開いていく。
「わ、私は……昔よりも強くなっているところが……」
「わたくしは、あの魂の気高さに……/////」
「あ、あたしは別にただの腐れ縁で……まあ、馬鹿みたいに真っ直ぐなとこは
認めてもいいけど……」
「僕は、優しいところかな/////」
「私は強くてカッコイイところだ!」
「……私はヒーローみたいに、諦めない心かな……」
それぞれ、頬を赤らめながら胸の内を話していく様を千冬とカズキはフムフムと
聞いていた。約一名はムフッ!と、ドヤ顔なので何か勘違いしているようだが。
「それで?一番肝心の君は、どうなのかな明?」
「っ!」
カズキの言葉に全員の視線が、明に集まる。
ラウラはカズキのようにワクワクといった感じだが、他の者達は千冬も含めて
明のことが相当気になるようだ。
「えっ!あっ、いや……そのなんとういうか……
わ、私は……です――」
千冬達からの視線に耐えられないのか、明は顔を赤くしてうつむきながら
呟くように答える。
「全部です!みんなが言ったこと、全部!
強いところも、気高いところも、真っ直ぐなところも、優しいところも、
カッコイイところも、諦めないところも全部好きです/////!!!」
真っ赤になって叫ぶように答えると、明は両手で顔を隠して悶えた。
追い詰められて逆に開き直っていきおいで、叫んだようだが聞いている方が
恥ずかしかったのか箒達も顔を赤くして言葉を失った。
一方で、カズキはほう~と温かい視線を送り千冬は敵を見据えるような眼差しを
した。
「……まあ、確かにあいつはいろいろできる。
家事も料理はそこら辺の小娘どもより上だし、マッサージもうまい。
最近は日曜大工もかじっているようだしな。
どうだ?欲しいか?」
「「「「「く、くれるんですか?」」」」」
「やるか、バカ」
明とラウラを除く5人が、千冬の言葉に目を輝かせるがそれも一瞬のこと。
続く千冬の言葉にガクっとなる。
「女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。自分を磨けよ、ガキども」
「でも、千冬ちゃん?一夏の心はとっくに明に奪われてるんじゃないの?」
次のビールを飲もうと立ち上がる千冬にカズキが指摘すると、千冬はビシリと固まる。
「一夏と同じ部屋だった時は、いつ一夏が狼になってもいいように
体はきれいに洗ったり身だしなみは普段の数倍は気をつかってたから、
俺や千冬ちゃんが先に伯父さん伯母さんになるかもね~。
そういえば俺、二人がどうやって付き合うようになったのか知らないんだよな~。
一夏の奴、俺に相談したかと思ったら三日もしない内にくっついたからさ。
いや~あれは驚いたね~」
「そそそそそそれは////////」
「馴れ初めというものか……是非とも聞きたいぞ、お姉ちゃん!」
キラキラと輝く眼差しを送るラウラだったが、その背後には獲物を狙う様な視線を
送る乙女が五人に加え、未だ回復できず固まった千冬がいた。
「それなら///!カズキさんはどうなんですか!
お、織斑先生とはどうやって恋人同士になったんですか!」
「っ!」
「う~ん、俺?
俺はねぇ~……千冬ちゃんに自分の心が奪われてるって気づいた時、
学校の屋上で……」
「うぉらぁ!」
自分に向けられた矛先を変えるために話題をカズキに振る明だったが、
復活した千冬が浴衣姿でカズキに回し蹴りを放つ。
「お・ま・えと言うやつは!!!」
「ははは♪いや~あの頃は、千冬ちゃんも照れまくってかわいかったよね~」
「ブ・チ・の・め・す!!!!!」
部屋の中で互いに浴衣にも関わらず、いつものケンカを始める二人だったが
それに構わず箒達は明に詰め寄っていた。
「では、明……」
「キリキリと吐いてもらいましょうか?」
「あれで、ごまかせると思った?」
「是非とも知りたいな……全部ね……」
「お姉ちゃん、早く早く♪」
「詳細、求む……」
「うぇぇぇ~~~!!!?」
少女たちの夜はまだまだ長い――
「いや~露天風呂は、最高だな♪
極楽~極楽~」
『ああ。星の海を見ながらの風呂というのは、最高の贅沢だな』
何も知らない一夏とゲキリュウケンは、幸せな時を堪能していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ~今頃みんなワイワイ楽しい夜を過ごしているのに、
何で私たちは書類と格闘しているのかしら?」
「それは、お嬢様が碓氷先生の頼みを安請け合いしたからでしょう……」
夜中のIS学園生徒会室で、楯無は机に山積みされた書類を見て落ち込むが
虚はその原因を指摘してバッサリ切り捨てる。
「だって、仕方ないじゃない!こんなに多い上に面倒だとは思わなかったんだもん!」
「それを確認する前に、幼少時の織斑君の写真をちらつかせられて、了承したのですから
自業自得です」
「あんな、かわいい一夏君の写真見せられたら誰だって、即決するわよ!」
「なんか、すいません」
「どうでもいいが……手も動かしてくれないか?」
楯無と虚の主従コントに、色素の薄いくせっ毛な人の良さそうな少年スザクが
すまなさそうに言うとその隣で作業をしているまっすぐな黒髪の少年ルルーシュが
少しイラついた口調で咎める。
「ああ、すいません。二人とも、本当は碓氷先生達がいない間に万一敵が来た時の
学園の警備を任されているのにこんなことまで……」
「はぁ~全くあいつは、人を便利屋何かと勘違いしているんじゃないだろうな?」
「そうやって、渋々だけどやっちゃうから任されるんじゃないのか?」
「違うぞ、スザク。任されるんじゃなくて、押し付けられたんだ」
「……何か他人事とは思えませんね」
頭を抱えるルルーシュに虚は、共感を覚えるのだった。
「ああ、そう言えばカズキさんから預かっていた手紙があったんだ。
何でもルルーシュが、愚痴り始めたら渡すようにって言ってたけど……」
「俺に?どうせ、碌なものじゃ……」
スザクから渡された手紙を読むとルルーシュは、動きが固まったので楯無達は
怪訝に思う。
「ふふふ……ははははは!!!
任せておけ、ナナリー!この兄が万事全てを整えてみせる、全力で!!!」
“お兄様へ。
大変でしょうけど、ナナリーはそちらの世界でもお兄様と一緒の学校に行けるのを
楽しみにしてます。
頑張ってください♡”
異様なほどやる気を見せるルルーシュだったが、渡した手紙の中身を見たスザクは
納得した。彼が溺愛する妹のナナリーからのメッセージだったようだ。
この少年、ルルーシュは千冬や楯無と同じように弟や妹のためなら
世界と戦うこともいとわないだろう。
「この人もお嬢様と同類ですか……」
「あれ。でも、虚さんにも妹がいるって聞きましたけど……ルルーシュとは違うんですか?」
「虚ちゃんは、ドライなのよね~。
本音をもっと愛でればいいのに」
「言っておきますが、私達ぐらいが普通でお嬢様達の愛でぶりがいきすぎ
なのですからね?」
ハイテンションで次々と書類を片づけていくルルーシュを見て、どこか悟りを
開けるような気がする虚であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いよいよ明日ね。一緒に、がんばりましょう」
ある軍の基地で、鮮やかな金髪をした女性が我が子を見るような自愛の目をして
一機のISに話しかけていた。
彼女の名は、ナターシャ・ファイルス。アメリカのテスト操縦者であり、
明日この新開発されたISのテストを行うのだ。
「それじゃ、お休みなさい」
ナターシャはそう言って、部屋を後にすると明かりが消えたその部屋に
一人の少年の姿が浮かび上がる。
ここは、軍の基地でありISを扱うため通常の基地よりも警備は厳戒のはずだが、
その者にはそんなことは、無意味だった。
「これが、新しく作られたおもちゃかぁ~。
悪くないセンスだね……」
現れたのはレグドの前に現れた少年だった。
彼は興味深そうに目の前のISを眺めるが、その目には残虐な光が宿っており、
心なしかISはその目に恐怖を感じてカタカタと震えているような気配を漂わせる。
「待っていろ……お前の全てをブチ壊してやる――!」
少年が初めからその場にいなかったように消えると、ISだけがそこに
残されたが、その装甲の輝きが鈍くなっているのは気のせいなのか――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いや~千冬ちゃんは、相変わらず激しかったね♪」
『毎度のことだけど、お前もよくやるよな~』
波の音が心地よく聞こえる崖の上で、浴衣から宇宙ファイターXの姿へと
着替えたカズキが立っていた。
「それはもちろん、楽しいから以外の理由はないさ。
後、一夏と明はこの臨海学校で是非とも関係を進めてほしいね~。
多分だけど、あいつらまだキスもしてないからさ」
『へっ?あんだけ、毎日イチャついてるのにか!?』
カズキの言葉にザンリュウジンは、驚きの声を上げる。
「どっちも今の関係にある程度満足して、一歩先に踏み込むのを
ためらっているんだから、かわいいもんだよ。
……おしゃべりはこのぐらいにしよう――。
シャドウキー!召喚!」
『デルタシャドウ』
「いでよデルタシャドウ!」
ザンリュウジンから夜の闇に向かって光が放たれると、魔方陣が描かれ
黒色の体に黄金のラインが走った烏、デルタシャドウが夜空に君臨する。
「――~♪」
「――アアアァァァ」
仮面越しに宇宙ファイターXが口笛を吹くと、デルタシャドウが彼の元へと舞い降り、
宇宙ファイターXはその背中に乗り立つ。
「本当は、姉弟水入らずで久しぶりに一緒に
一夏と寝られる千冬ちゃんが何をするのか見たかったんだけど、
それはまたの機会にセッティングするとしよう。
さあ、行きますか!
俺達の力を取り戻しに!」
『おうよ!』
宇宙ファイターXを乗せたデルタシャドウは、夜の海へと飛翔し、その姿を闇に
消した――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「よし、全員揃ったな」
臨海学校二日目。この日は、丸一日かけてISの各種装備試験用とデータ取りに
追われる。特に専用機持ちは、大量の装備があるためその心は眩しいほどの晴天とは
逆の曇り空である。
「では、各斑に分かれて装備試験を行ってもらう。
専用機持ちは、こっちに来てもらう……篠ノ之もこっちだ」
「?わかりました」
専用機持ちではない箒は、一般の生徒達と共にテストにとりかかろうとしたら
千冬に呼ばれ一夏達の元にやってくる。
「織斑先生……?」
「どうして、箒さんがこちらに?」
「それはだな……」
疑問を浮かべる箒達に千冬が歯切れを悪くすると、突如として地響きが聞こえ
こちらに近づいているのか、どんどんその音は大きくなる。
「ち――――ちゃぁぁぁぁぁ~~~ん!!!!!」
崖の上から土煙を上げて、暴走車のように爆走する人影は千冬に向かって
抱き着こうと跳躍する。
そばにいた者達は、その光景よりも爆走してきた者の出で立ちに唖然とした。
「不思議の国のアリス」が着るような青と白のワンピースに、メカニカルなウサミミ
を頭につけた紫がかったピンクの髪をした女性。
その上、胸元が開けたワンピースに窮屈そうに押し込まれたモノを見て
一部の生徒は舌打ちをしていた。
そんな彼女達のことなどお構いなしに、来訪者は千冬に抱き着き頬ずりを始める。
「会いたかったよぉぉぉ!ちーちゃんんんんん!!!
さあ、ハグハグしよう!
あの泥棒宇宙人とは違う、二人だけの本当の愛を確かめtグゲッ!」
頬ずりをしていた女性は、千冬に顔面を掴まれる見事なアイアンクローをされて
宙づりにされる。
顔に食い込む指が、千冬が本気で握り潰そうとしているのを物語っていた。
「……このまま、魚のエサにすれば世界は平和になるかもな……」
「もう~。相変わらずちーちゃんは、照れ屋さんだね♪」
片手で人間一人を持ち上げる千冬もそうだが、そんな千冬のアイアンクローから
するりと抜け出した彼女も、人体の常識というのを投げ捨てている。
「……ちっ。まあいい。とりあえず、自己紹介ぐらいしろ。
生徒達が固まっているだろ」
「めんどくさいけど、しょうがないな~。
はろー♪みんなの天才、束さんだよ♪
この束さんに会えたことに泣いて喜ぶがいいー!」
両手でVサインをしながら、挨拶をする束に一同ぽかーんとしてフリーズする。
相変わらずの親友に千冬は頭を抱え、一夏は苦笑いを浮かべていた。
そして、妹である箒は予想もしなかった姉の登場にみんなから隠れるように
うずくまっていた。
「ふっふっふっ……。
ではでは、皆の衆!これを見ろ!!!」
マイペースに行動する束が、腕を広げるとその背に布が被せられた板のようなものが
現れた。
「喜び、おののくがいい!これが――自分で歩けるようになった
マイスウィートエンジェル箒ちゃんの姿だ!」
布をとるとそこには、デカデカと大きな電光掲示板のような板に
赤ん坊特有の無垢な目をして、おぼつかない足で立っている……箒の画像が
映し出されていた。
楯無は二日目に、教師陣の手伝いとして潜り込もうと計画していたら
眩しい笑顔をする虚に捕獲されましたwww
現在、学園にはルルーシュやスザク達が護衛をしています。
束が最後に出したのは鋼の錬金術師で、ヒューズさんが
出したような娘さんの写真のようなものです(笑)
当然、次回は(爆)
現在、カズキはいないのでこの天災にツッコめるのは千冬だけww
今回なのは達は出ませんでしたが、部屋ではもちろん
恋バナが展開されてました♪