インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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遅くなりました(汗)
4月から新生活とそれに伴う用事の連続でなかなか執筆の
時間が取れませんでした(苦笑)
今後も大体これぐらいのスピードになりそうです。

そして、GWに向けて映画ラッシュでもありますが、何から見ようか
迷いますwww


それぞれの楽しみ方

「いやーーーーー!!!もうやめてぇぇぇ!!!!!」

 

薄暗いある部屋の中で、女性の悲鳴が響き渡っていた。

 

「ふふふ……残~念♪

 そんな演技に、騙されませんわよ?苦痛が快感に変わるまでは、人間って

 余裕がありますからね~」

 

悲鳴を上げる女性に対し、丸メガネをかけた女性クアットロは甘ったるい逆撫でするような声で

目の前の女性を挑発する。

 

「もう、知っていることは全部しゃべったから……お願い……許して……!」

 

女性は涙を流しながら、クアットロに懇願した。彼女は、学年別トーナメントの際カズキが捕らえた亡国機業(ファントム・タスク)からの侵入者の一人である。

だが、今の彼女を組織の者達が見たら驚き、自分の目を疑うだろう。この女性は、男を道具として見る典型的な女尊男卑に染まった人物でいつも男に威張り散らしているのだ。

そんな彼女が涙を流しながら、許しを請う姿など誰が想像できるだろう。

……それほどクアットロが、カズキと共に考案した拷問手段が恐ろしいと言える。

 

「そんな風に口を動かせる元気があるなら、まだまだいけますわね……。

 じゃあ、次は“コレ”でいきましょうか♪」

「いやーーーーー!!!!!」

 

クアットロが喜々として、手元の機械を操作すると――――女性の体は、“ムカデ”となった。

 

「ふふふ♪どうですか~?私達のデジタル合成技術は?

 顔はそのままに、体だけ別の生き物になったように感覚を味わえるという優れもの~♪

 肉体的な痛みは訓練できますけど……精神攻撃は鍛えるのが難しいですからね~。

 次は、トノサマガエルにしましょうか?」

「やめてぇぇぇーーー!!!」

 

そんなクアットロの楽しそうな声と女性の悲鳴を別の部屋で音がうまく拾えないようなレコーダーで、聞かされた他の者達は体が震えるのを止められなかった。

音声だけを聞かされたので、想像力が下手に働いて恐ろしい光景を

頭に思い浮かばせてしまったのだ。

しかも、イスに縛られた彼らの前には仮面で表情を隠した宇宙ファイターXが座っていた。

部屋に入ってくるなり、無言でレコーダーのスイッチを入れた彼の表情は仮面に隠れて

うかがい知れない――。

 

「どうだい?少しは、喋る気に……なっていたら喋るよね。

 話を聞くために水以外は、出してなかったけどそれじゃ体が持たないと思って、

 こういう時の定番“カツ丼”を用意したよ」

 

宇宙ファイターXが苦笑しながら、指を鳴らすと彼らの腕は自由となり動かせるようになった。

それを確認すると、宇宙ファイターXはどこからドンブリを取り出し彼らの前に出した。

 

「…………」

「どうしたんだい?ああ、もちろん毒や自白剤なんか入ってないから大丈夫だよ♪」

 

予想外の対応に怪訝な表情をして警戒する彼らに、宇宙ファイターXは如何にもな

明るい声をわざとらしく出した。

 

「……それじゃ、いつまで警戒していても始まらないしいただきましょうよ、みなさん」

「おい!」

「大丈夫ですって。まずは、一番下っ端の俺が毒見しますから、他の皆はその後にでも♪」

「そうだな……なんにしても、食える時には食っとかないと……」

「でしょ♪それじゃ早速……」

 

彼らの中でもムードーメーカーなのだろうか、自分から食べると言い出した者のおかげで

若干空気は明るいものになり、ドンブリのふたを開けようとしたら――

 

ゴトリッ……

 

「あれ……?今、ドンブリ動かなかった?」

「き、気のせいじゃね?」

 

目の前のドンブリが動いたように見えて、取ろうとした手が止まり気のせいだと

彼らは自分に言い聞かせるが……

 

ガタガタガタガタガ…………!!!

 

そんな彼らを嘲笑うように、ドンブリは揺れ動く。

 

「やっぱり、気のせいじゃねぇよ!なんだよ、コレ!」

「何って……“カツ丼”だよ?」

「嘘つくんじゃねぇよ!じゃあ、材料を言ってみろよ!」

「そりゃ、“カツ丼”なんだから主なのは玉ねぎ、卵、ごはんに、後は肉だよ」

「肉って……なんの肉だよ……?」

「…………肉は“肉”だよ?」

「絶対、普通の肉じゃねえだろ!!!」

 

仮面だから表情は変わらないはずなのに、彼らは宇宙ファイターXの仮面の瞳が

妖しく光るように見えた。

 

「落ち着け、お前ら。大方、ふたの裏にでも仕掛けがあるんだろ。

 こうやって、俺達をビビらせて楽しんでいるのさ。ふたを開ければ全部……」

 

ズル……グチャっ!

 

彼らの中でも冷静だった者は、動いたのは宇宙ファイターXが仕掛けたイタズラだろうと判断し、ドンブリのふたを開けるがその瞬間……ドンブリとふたの間から植物のツタのようなものが

飛び出しその者をドンブリの中に引きずり込んだ。

 

「「「「「…………えええええっっっ!!!!!?」」」」」

「……ククク」

 

 

 

数十分後……

 

何とか、ドンブリの中に引きずり込まれた者を救出できた彼らだったが、ドンブリの中で

何があったのか、助けられた者は部屋の隅っこで体育すわりをしながら虚ろな目でブツブツと

何かを呟き続けた。その間、真っ白になった髪の毛がハラリハラリと落ちていった。

 

「う~ん……この“カツ丼”は、君達には合わないみたいだね。

 他にもあるけど、どうする?」

 

そう言って、宇宙ファイターXは両手に“カツ丼”とは別のドンブリを出すが、

片方のドンブリからは黒い“何か”が漏れ出しており、もう片方のドンブリはカタカタと

揺れて気のせいか鳴き声のような音が聞こえていた。

 

「「「「「すいません!何でも、しゃべりますからもう勘弁してください!!!」」」」」

 

命の尊さを知った裏の住人達は、プライドを殴り捨て頭を下げるのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「それで、捕まえた人達から亡国機業(ファントム・タスク)について

 何か聞き出せました?」

「い~~~んや、な~~~んにも。

 元々大した情報を聞けるとは、思ってなかったけどね~」

 

向かい合って座りながら、宇宙ファイターXとレイジングガードナーは新しい情報が

手に入ったかどうかを確認していた。

 

「思ってなかったって……じゃあ、あの合成技術とか“カツ丼”は何だったんですか?」

「それは……ぶっちゃけ俺の趣味だ!」

 

宇宙ファイターXの言葉にレイジングガードナーは、ずっこける。

 

「あういう連中が苦しむ顔を生かさず殺さず楽しみながら見るためには、手間暇を

 惜しんではいけないのだよ……フフフ……」

「あ、あなたって人は……」

 

両腕を顔の前で組んで楽しそうに笑う宇宙ファイターXに、レイジングガードナーは

脱力する。

 

「まあ、冗談はこのぐらいにして……」

「(絶対に冗談じゃない……)」

「管理局では、例の鳥の魔物についてどうなったんだ……ユーノ?」

「どうもこうも、あなたが考えていたようになりましたよ」

 

レイジングガードナーは、顔の前まで閉じたファスナーを下して被っていた

テンガロハットのような帽子を脱いで素顔をさらけ出した。

ハニーブロンドの長髪をなびかせるユーノの顔が、そこにあった。

 

「魔法をほぼ無効化する敵が現れたっていうのに、ほとんどの人は何の危機感も

 感じていません。

 “エースオブエースならそのような敵でも倒せる”、

 “管理局にそのような小細工など意味はない”

 ……クロノや地上本部トップのレジアス中将といった先が見える一部の人達だけが、

 対策を急いでいます」

「こっちも似たようなものだね。

 勝てたという結果だけを見て、戦いの中身を見ていない……。

 なまじ、大きな戦いがないことが要因の一つなんて、笑えない皮肉だな」

 

ユーノと宇宙ファイターXことカズキは、それぞれの世界の現状に頭を痛くする。

世界の争いは絶えないが、それでも少しずつ縮小はしている……しかしそれ故に

戦いの恐ろしさというのを知る者が、少なくなっているのもまた事実なのだ。

ISは最強の兵器、管理局では魔法は兵器よりもクリーンな力という

謳い文句がそれに拍車をかけていた。

 

「もっとも、これは想定の範囲内だからそれ程問題じゃない。

 問題なのは、この襲撃における創生種の“目的”だ」

「そうですね。十中八九、あなた達魔弾戦士を倒すことではありませんね……」

「ああ。それが無いってわけじゃないけど、それにしてはやってきた敵が何かおかしい。

 まずは、飛行ロボット。あの中に数体、性能を高めた指揮官機でもいればより戦闘は

 効率がよくなったはずだ。

 鳥の魔物もだ。あんなロボットを作れるなら、遣い魔のような量産に向いた

 魔物を作って、サポートをつけることだってできたはずだ。

 そして、シュヴァルツ・バイザーとクリエス・ベルブ……

 奴らは本気を出していなかった。

 本気を出されていたら、俺達は負けていたかもしれない――」

 

いつになく深刻な声を出すカズキに、自然とユーノは固唾を飲む。

 

「この襲撃は、新しい戦力のテストでそれで俺達を倒せるとは思っていないけど

 倒せたら儲けものという感じがする……

 だが、それだけじゃない。それだとシュヴァルツ・バイザーはともかく

 クリエス・ベルブのような奴まで出てくる意味がわからない……。

 だとしたら、本当は何が目的だ?

 そして、何より――奴らは俺達がここまで気づくことを分かっている気がする……」

 

ユーノも同意見なのかカズキの推測に反論せず、ただ静かに時計の針の音だけが

響き渡った。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ふぅ~……」

「調子はどうですか、ベルブ?」

 

カズキ達も時空管理局も知らない世界で、クリエス・ベルブは剣を振るったり拳を放ったりして

自分の体の様子を確かめていた。

IS学園を襲撃した薄黒い鎧ではなく、漆黒の鎧を纏いながら……

 

「問題ない。出撃前にお前が制限した俺の力は完全に戻った、クリエス・レグド」

 

クリエス・ベルブが問いかけてきたシュヴァルツ・バイザーの声に振り向くと

そこには、鎧の色が橙と白である以外クリエス・ベルブと同じ姿の者が立っていた。

 

「こちらも肉体から分離した魂を、無事に戻せました」

「ふ~ん……それでいろいろと小細工をしたけど、無様に尻尾を巻いて逃げてきたの?

 クリエス・レグドとあろうものが?」

 

呆れながらもどこか楽しそうな声で、姿を現した者がいた。その者は、ベルブともレグドとも違う人間で黒の長髪をした女性だった。

妖艶という言葉を体現したような美貌は、見る者全てを妖しく惑わすだろう。

 

「クリエス・リリスか……」

「尻尾を巻いて逃げた……ですか……。

 そうですね、量産したスカイバトラーも相手の攻撃を無効にする手段を携えた

 ベムードも倒され、私自身も魂だけとはいえリュウケンドーに……

 いえ、リュウケンドー“達”に敗れました。

 つまり、今回の戦闘は――私達の勝利ということです」

 

レグドが発した勝利という言葉に、ベルブもリリスも微笑む。

 

「この戦闘の目的は、三つ。

 一つは、新たな戦力の性能テスト。彼らが奮闘し打ち破ってくれたおかげで、

 問題点や改良点を見つけることができました。

 二つ目は、魔弾戦士達の抹殺。まあ、こちらはテストのついでに完遂できたら

 儲けものだと考えていたので、成功しても失敗しても大した問題ではありません。

 そして、三つ目は来るべき時のための“仕込み”!」

 

その三つ目こそが本命の目的とばかりに、レグドは指を鳴らす。

 

「スカイバトラーやベムードで、魔導士やISを倒せればそのままマイナスエネルギーを

 集めやすくなります。

 自分達が最強だと信じているものが敗れ去れば、多くの者の心が折れるでしょう。

 仮に倒せなくても、奴らが格上の存在や相性の悪い相手にどう立ち向かい、成長するかも

 見ることができます。

 そして、奴らは勝ったことで“苦戦したけど、やっぱり自分達は強い!”

 “どんな敵が来ても勝てる!”と思うようになる。

 次に攻めてきても、自分達なら勝てると思うようにね……。

 しかし、勝てると思っていた敵が自分達よりも強くなっていたら?

 力の差に絶望した時、一層のマイナスエネルギーが発生することでしょう。

 無論、安易にそう考えない者もいるでしょうが、それはごく少数……。

 リュウジンオー辺りは、私達の目的が自分達を倒すことだけではないと

 気付くでしょうが、そこまで……。

 私達の先の先の目的までは、気づけないでしょう。

 ここからは、再び慎重に準備を進めますからね……」

「気になってたんだけど……変わったよね、レグド。

 前から策を練って戦うタイプだったけど、昔は淡々としていたっていうか

 機械的だったのに今はなんか楽しそう。

 自分の魂を体から引っこ抜いてまで、自分で実験もするし」

 

リリスの言葉にレグドは面食らってパチクリとなったように固まるが、

自然と笑みをこぼし始める。

 

「楽しそう……そうですね、楽しいのでしょうね。

 人間は愚かな生き物で簡単に思い通りに、掌で動かすことができますが

 何かを守ろうとする戦士達は違う――。

 彼らは、常に私の考えを越えていき思い通りにならない……そんな彼らに

 対抗するにはこちらも普通ではしないことをしなければならない。

 自分の思い通りに進ませにくい相手に、策を練るのは……本当に楽しいですよ――」

「そうだな……真に強い者と戦うのは心が躍る!」

「全く、男ってのは創生種も人間も関係なく単純ね」

 

レグドとベルブの反応に呆れながら、リリスは踵を返した。

 

「それじゃあ、私はもう行くわね。準備ってのには、時間がかかりそうだしそれまで

 のんびりと羽を伸ばさせてもらうわ」

「それは構いませんが、一ついいですかリリス?」

「うん?」

「俺達にとって、姿を人間に見せるのは造作もないことだが……

 その恰好は一体何だ?」

 

ベルブも同じことを疑問に思っていたのか、問いかけるとレグドも同意するようにうなずいた。

創生種の美に関する感性は、人間とあまり変わらず姿を変えても、もしも人間だったらという容姿になる。多少いじることはできるが、大抵はそのままで大きく変えることはしない。

だが、服装ばかりは自分の意志で具現化したり人間のモノを使うのだが、

リリスがしている服はボンテージ服で、まるでとある場所にいる女王様のようなのだ。

 

「ああ、これ?なんでかわからないんだけど、この恰好で鞭を叩くと

 すっごく喜ぶ人間達がいて、試しにやってみたらすっっっごくおもしろくて♪

 男も女も叩かれるたびに、涙を流して喜ぶもんだからアハハハ♪」

 

完全なドSの顔で笑うリリスに、ベルブとレグドは顔を向け合うと何とも言えない

空気が流れる。

 

「まあ、お前が楽しいのなら別に……な?」

「……そうですね、趣味は人(?)それぞれですから……」

「ギジャ!」

 

とりあえず、リリスの服と目覚めた何かについてはここまでにしようと無言で了承した

ところで、一匹の遣い魔が敬礼してやってきた。

 

「おお、アレか!待っていたぞ!」

「何ですか?」

「これか?これは、今週のジャ○プだ♪」

 

遣い魔が持ってきたジャ○プを子供が友達に自慢するように見せるベルブに、

レグドは何も言えなくなる。

 

「たまたま拾ったものを気まぐれに読んでみたのだが、これがなかなか燃えてな?

 以来、欠かさず読んでいるのだ」

 

いわゆるドヤ顔というもので、胸を張るベルブにレグド呆れ交じりのため息をこぼす。

 

「はぁ~二人とも、楽しむのは構いませんがほどほどにお願いしますよ?

 ……こんな時は、“アレ”を作りますか――」

 

レグドは、そう言って自分の部屋に戻るとゆっくりと椅子に腰かけた。

 

「さ~て、今度は何色にしますかね?」

 

鼻歌交じりに上機嫌に手を動かして、レグドが作っているのは――“泥団子”だった。

それもただの泥団子ではない、光る泥団子である。

部屋にある棚には、様々な色の宝石のような光輝く泥団子がいくつも飾られていた。

 

「ふふふ……人間の生みだす力というのは、すごいですね。

 よもや泥から、このような美しいものを作り出す術を編み出すとは!」

 

うっとりと、手に持った泥団子を眺めながらレグドは黙々と作業を続けた――。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「で?」

 

放課後のIS学園の食堂。そのあるテーブル席は、異様な空気に包まれていた。

周りの者達は、巻き込まれないよう離れてはいるがそれでも興味津々とばかりに

聞き耳を立てて傍観していた。

 

「で、と言うのは何でしょうか鈴……」

 

そのテーブルに座っている明は、同席している者達からのプレッシャーに押されていた。

 

「何でしょうかでは、ないのではないですか明さん?」

「ええ……。普段は男の恰好をしてたけど、部屋の中では一夏くんとどんなことを

 していたのかな~って話よ?」

 

セシリアも楯無も目が全く笑っていない笑顔で、机の上にグイッと乗り出す。

 

「い、いやどんなことと言われても……」

「セシリアもお姉ちゃんも落ち着いて」

「そうだよ、皆。そんなに詰め寄ったら、喋れなくなっちゃうでしょう?」

 

言葉に詰まる明に簪とシャルロットが、助け舟を出す。

 

「だがな、シャルロット。お前も見ただろ、普段の一夏と明を。

 へ、部屋の中で二人きりとなれば……その/////」

 

箒は顔を赤くして、明から視線を逸らす。

男装をしていても一部の女生徒が、喜ぶようなことをする二人である。

部屋で二人きりともなれば、人目が無い分いろいろと我慢しないかもしれない。

 

「まあまあ。あっ、明。喉、渇いてない?」

「オレンジジュース、あるよ」

 

簪から受け取ったジュースをシャルロットは、明に手渡した。

 

「あ、ありがとうございます……」

「……それで、実際はどうなノカナ?」

 

明がジュースを一口飲んだ瞬間、シャルロットは獲物を狙うような鋭い眼をしながら

尋ね、簪は眼鏡を光らせながらクイっとレンズを動かした。

それぞれの反応をする箒達だったが、その思いは“さっさと話せ!”と一つになっていた。

 

「ど、どうと言われても……べ、別に普通ですよ……?

 朝は、早く起きた方が相手を起こしてその後、一緒にお弁当を作ったり……」

 

観念した明は、自分達の生活内容を話すがそれを聞いていた周りの者達は、

盛大に舌打ちしたりブラックコーヒーの注文に走った。

 

「いやそれ……もう夫婦じゃないの?」

「うん。ナイスツッコミやで、アリサちゃん」

 

なのは達5人も明達のテーブルの近くに座り、話を聞いておりアリサの

冷静なツッコミにはやてはグッ、と親指を立てた。

 

「にゃははは。夫婦って、別に結婚しているわけじゃ……」

「甘い!甘いでなのはちゃん!リンディさんのお茶並みに甘い!!!

 普段から織斑先生とイチャついとる碓氷先生の弟子な一夏君が、二人きりの部屋の中

 で何もしとらんとわけがない!」

「そうだね……明ちゃんもむっつりっぽいし」

「むっつりって……まさか!」

 

熱弁するはやてに、すずかがボソっとつぶやくとフェイトの脳裏に閃光の速さで

ある光景が思い浮かぶ。

 

“お。お帰りなさい/////。ご、ご飯にしますか/////?お風呂にしますか/////?

 そ、それともわ、わ・た・し/////////?”

“そうだな……”コレ“をもらおうかな?”

“ひゃっ/////!?そ、そこは……ん/////”

 

「ぶはっ!」

 

以前、楯無が着た衣装の水着無しの明と狼な笑みをする一夏を想像して

フェイトは鼻血の海に沈んだ。

 

「フェイトちゃん!?」

「あちゃ~こっちのむっつりさんが、沈んだで。

 まあ、おおかた前に会長さんが着とったエプロン姿の明ちゃんと意地の悪い顔をする

 一夏君を想像したんやろうけど」

「何やってんのよ……フェイト」

「ふふふ……。

 それにしても、あれ……かわいいね♪」

 

フェイトの反応に呆れるはやて達だったが、そんな中すずかは明達のテーブルを見て微笑む。

 

「意地の悪い顔とは、なんだ?お姉ちゃん?」

「ラ、ラウラはまだ知らなくていい/////!」

 

明の膝の上にはぬいぐるみのように、ラウラが座ってもぐもぐとおやつをほおばっていた。

 

一夏へのお兄ちゃん発言の後、カズキが

 

“じゃあ、明はラウラのお姉ちゃんだね♪

 お兄ちゃんに何かする時は、お姉ちゃんと一緒にやるといいよ~”

 

と言ったので、ラウラはすっかり明のことをお姉ちゃんと呼んで慕うようになったのだ。

トコトコと明の後ろをついていったり、コテンと顔を傾げる様にハートを打ち抜かれる生徒が

続出し、それに伴いドイツに本部を持つ黒ウサギ見守り隊の会員も急激に数を増えた。

中には、娘を盗られたと少し不満を漏らす母親のような生徒もいたとか……。

 

「すっかり、マスコットポジね。ラウラちゃんは♪……お姉さんとも仲良くなりましょう~」

「お姉ちゃん……手がいやらしい……」

「ぐへっ!」

 

手をワキワキさせながら、ラウラに近づこうとする楯無に簪の冷たいツッコミが入り

楯無は机に沈んだ。

 

「な~にやってんだか……。

 それと、ラウラ?意地の悪い顔ってのは、アレよ?

 カズキさんが、千冬さんをからかうときのような顔よ……」

「教官をということは……ああ、あれのことか!」

 

更識姉妹の漫才に呆れながら、鈴が投げやりに説明するとラウラが思い出したように

ポンと手を叩いた。

同時に、明はビクッと体が強張り箒達はむぅ?といぶかしむ。

 

「あれ……って、何?ラウラ?」

「うむ。昨日の夜、お兄ちゃんの部屋に遊びに行こうとお姉ちゃんを誘ったのだが

 見つからず、一人で行ったら部屋の中でお姉ちゃんがお兄ちゃんに猫のように

 あごをナデナデされていたのだ!

 にゃ~んとか鳴いたりして、すごくかわいくてうらやましかったぞ!

 私に気が付いたら止めたけど、私もナデナデされたかったぞ!」

 

手をブンブンと動かして不満を言うラウラだったが、周りはそれどころではなかった。

明は逃げ出したくても、膝の上にラウラが座っており、両隣には目から光を消して顔を

傾ける鈴に無言の笑顔を向けるシャルロットがいて逃げ出せなかった。

箒とセシリアは顔を真っ赤にし、簪は光り輝く眼鏡を再び動かし楯無は

追撃をもらって沈んだままだった。

同じように他のテーブルでは、楯無のように机に沈む者や机や壁を壊さんばかりに叩く者、

太陽に向かって走り出す者が続出していた。

 

「明?どういうことか……」

「説明……シテクレルワヨ……ネ?キッチリと……」

「詳細を……求ム……」

「あっ!いや!それは……その……!」

「あれ?みんな集まって、どうしたんだ?」

 

明が詰め寄られていると、話のもう一人の中心である一夏がやってきた。

 

「な~に、どうせみんなにお前と明がどんな風に生活していたか聞かれていたんだろ?

 朝起きたら、お互いに相手の寝顔にときめいて先に早く起きようと必死になったり、

 耳元で“起きて、ア・ナ・タ”とか言って顔を赤くしたり、

 お弁当を作る時に明のほっぺについたソースとかをなめとったりとか♪」

 

のんきに尋ねる一夏の後ろから、クククとおもしろそうに笑いながらカズキが現れて、

その場にいた者達を唖然とさせた。

 

「ちょっ!覗いてたんですか!?」

「あっ!おい、明!」

 

いち早く、明が驚き一夏が待ったをかけるも一足遅く、カズキの顔は愉悦にゆがむ。

 

「へぇ~なるほどね~~~」

「…………あああああっっっ//////!!!」

 

カズキのいつもの策に謀られたと気付き、明は頭を抱えて叫び一夏はヤレヤレと

頭を振った。

だが、他の者達はそうはいかない。

箒達は全員目から光を消して、一夏に笑みを向けていた。

 

「周りを気にするから、恥ずかしいんだよ~。一夏みたいに開き直ればいいのに~。

 ところで、ラウラ?昨日の夜、一夏に熱くて白いドロッとしたものを顔に

 かけられるようなハプニングにあった明は、あの後どうしてたんだい?」

「ちょっ!待っ!?」

「っっっ/////!!!!!」

「あの後?お姉ちゃんは顔を見たことないぐらい真っ赤にしてアワアワしていたぞ!兄様!」

 

背後に悪魔を幻視させるほどの邪悪な笑みを浮かべるカズキと、悪気など一ミリもない

ラウラの発言によって食堂は水を打ったように静まり返る。

ちなみにカズキはラウラに自分のことは好きに呼んでいいよ、と言ったら

兄様と呼ばれるようになった。

 

「待て、みんな。誤解だから、まずは話wどわっ!?」

 

静まり返ったみんなの反応から、とんでもない勘違いをされていると察した一夏が

説明をしようとするが、その瞬間に猫のように跳躍した鈴の回転ドロップキックを顔面に

受けてふっ飛ばされた。

 

「ふんっ!」

「がっ!」

 

ふっ飛ばされた所に移動したシャルロットが、一夏のみぞおちに拳を叩きこみ、一夏は

ボールのようにバウンドする。

 

「――っせい!」

「ぬふっ!」

 

バウンドして見えた背中に楯無のハイキックが綺麗に決まり、一夏は完全に沈黙する。

 

「「……」」

 

倒れ伏す一夏の両脇を捕らえた宇宙人のごとく抱え、箒とセシリアはズルズルと一夏を

食堂から引きずっていった。

それに続くように、うつむき具合の鈴シャルロット、楯無が続いていく。

 

「兄様、みんなどうして黙っているのだ?ただ、お兄ちゃんとお姉ちゃんが

 アツアツのクリームパンを食べただけなのに?」

「「「「「……へっ?」」」」」

 

顔を真っ赤にする明の膝の上で、ラウラが口を開くと食堂にいた者達の口から

間の抜けた声が漏れる。

 

「――プッ!ククク……君達は一体な~にを想像したのかな?」

「「「「「/////////」」」」」

「「「???」」」

 

ニタニタと笑うカズキに、みんな視線を逸らすが何もわかっていないラウラとなのは、そして箒達に置いて行かれた簪だけが頭に?を浮かべていた。

 

「……ほな、明ちゃ~ん?今度は、一夏くんとの馴れ初めや何やらを聞かせてもらおうか?」

「へっ?」

「あれで、終わりなわけないでしょ!

 そ、そのあれよ……私達にも恋人を作る方法を教えなさいってことよ//////!!!」

「こ、今後の参考に//////!」

「素直にしゃべった方が……楽になれると思うな~♪

 それとラウラちゃんは、向こうで簪ちゃんとケーキ食べててくれる?」

 

今度ははやて達が、明の周りに座りすずかはラウラを簪と共に席を外してもらう。

更に、するりと腕と足を絡めて明を逃がさないようにした。

一部の者は、その妖しげな空気にはぁはぁと息を荒くしていた。

 

「明も大変だね~。それにしても、あごをナデナデ……か~。

 ――今度、やってみようかな?ネコミミもつけて♪」

「ほぉ~~~?誰に何をしようと言うのだ?」

「そりゃあ、もちろん弟大好~~~きな千冬ちゃんに♪」

 

いつの間にやってきたのか拳をバキボキと鳴らす千冬に向かって、あっけからんと話すカズキに

みんな戦慄するが、次の瞬間には食堂に響き渡る爆音に耳をふさいだ。

 

「毎回見てて思うけど、二人とも……戦闘民族なのかな?」

「う~ん……否定しきれないね」

「ハムハム」

 

天井を突き破って、拳を交える千冬とカズキに簪は疑問を口に出すがなのはは苦笑しながら

否定しきれなかった。

そして、ラウラはケーキを頬を緩めながらほおばり、一部の者達に鼻血を垂れさせていた。

 

 

 

 

 

 





捕まえた亡国機業(ファントム・タスク)さん達には、拷問を
受けてもらいましたが、暴力は振るっておりません。
冒頭のアレは、映画「クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦」
に出てきたものです。精神的なダメージへの耐性は、鍛えにくいし
暴力よりも効果的ですwww

カツ丼の方は、『繰繰れ! コックリさん』(ぐぐれ コックリさん)から
持ってきました。引きずり込まれた人は何を見たのか!

そして、明らかになる創生種のみなさん。
レグドはベルブと同じく、『小さな巨人 ミクロマン』に登場する
アーデンフレイムのような姿です。
リリスという女性も出ましたが、彼女も本来の姿はベルブ達と色違いです。
何より、彼らもそれぞれ人間の文化というのを満喫していたりしますwww

明の尋問で出てきた顔への白いものをかけられたは、ソードアートオンライン
のコミックであった、アツアツのクリームパンがブチュッとなっただけです。

引きずられた一夏は道場に連れていかれて、訓練と称したおしおきを(汗)

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