インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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後半投稿です!
皆さん待った入浴イベント♪戦闘描写とは違った難しさでした(苦笑)
タイトルは悪役っぽいけど、笑うのは誰なのか!
どうぞ!

*今回は激しいキャラ崩壊を起こす人がいます。
 ご注意を。


影でほくそ笑む者

『さあさあ、やってまいりました今回のオモシロいじりタ~~~イム♪

 解説の方をお願いします、カズキン先生』

「どうも。仕掛け人兼解説のカズキです。

 今回は山田先生の協力、そして連絡の順番が重要なポイントとなっております」

『と言いますと?』

「まず、山田先生には明に俺のところに来ること、一夏への入浴の連絡そして

 俺が明に入浴を伝えるという連絡を頼みます。

 これによって、彼女が俺の頼みを順番に彼らへと伝えると一夏と明が

 二人同時に入浴の件を聞いて、一緒に大浴場に行くことが無くなります」

『なるほどなるほど~』

「その後、頃合いを見て俺の所に来た明に入浴の件を伝えます。一夏には山田先生に

 伝えてもらうのを“忘れていた”ことを話すために、ここに来てもらうと言って

 明に大浴場へ行ってもらいます。

 これで、彼女は一人でお風呂を楽しめると一夏と鉢合わせる可能性が

 頭から無くなるということになります」

『それでそれで?』

「“たまたま”連絡がすれ違って、互いにお風呂で鉢合わせることを考えなくて。

 “たまたま”お風呂に入っている一夏と連絡が取れなくて。

 “たまたま”服を脱ごうとしたら、一夏の服を見つけて頭が沸騰して困惑しながらも

 入ることを決めても……全ては“たまたま”だよね♪」

『だよねー♪』

 

自室で誰に向かって話しているのか、マイクを片手にカズキとザンリュウジンはテレビ番組の

ようなやりとりを心底楽しそうな笑顔と声で語り合った。

 

「更に重要なのが、手伝ってもらう人には仕掛けを一切話さないということ♪

 変に意識しない素の行動こそが、最高の演技なのです!」

『なのです!』

「そして、確実に成功するという保証が無いのもポイント♪

 もしも仕掛けがバレても、確実性が無いからすっとぼけられます!」

『られます!』

「だが、これは本命のための仕込み♪

 明日の本番をお楽しみに~――ふふふ………ははははは!!!!!

 ……ああ。捕まえたネズミさん達との“お話し”の準備もしておかないと」

 

悪の組織の幹部の如く高笑いするカズキの姿からは、確実性が無いと言っておきながら自分の

仕掛けが成功すると確信していることがうかがえた。

しかし、そんなカズキでもまさか箒達6人が一夏の元に突撃しようとしたけど、明が大浴場へと入っていったのを見たから突撃を諦めたなど知る由もなかった。

 

 

 

「ななななななんででででで!!!」

「こここっちを見るな!」

「はい!すみません!」

 

男の悲しい性か明をガン見していた一夏は、明に言われてすぐさま顔を逸らす。

普通に考えれば、明の方が注意される立場とか言ってはいけない。

 

『では、私は眠るから後はごゆっくり。……zzzzz』

「おい、ゲキリュウケン!」

 

この場で唯一の味方が早々に離脱して本格的に焦り始める一夏のことなどお構いなしに、

明は湯船に体を沈め一夏に近づいてきた。

 

「お、おい。風呂場であまり騒ぐな……」

「なんで、俺が悪いことになってるの!?」

 

そのツッコミを最後に一夏は、顔を半分まで沈め互いに無言となる。

鈍感だなんだと言われたりカズキのようにからかったりしても、やはり15歳の少年。

人並みにそういうことに興味はあるし、こういう状況も初体験である。

もっとも下着を見たり等のイベントは結構あったりするが。

背を向けているからわからないが、明が自分の近くにいることはわかるので

心臓は破裂してもおかしくないほどバクバクしていた。

 

数秒かはたまた数分の時間が流れると、明の方から口を開いた。

 

「これはその……カズキさんが今日は男子がお風呂に入れる日と聞いて

 入らないのはおかしいかな~と思って……な?

 それに、その……彼氏は彼女と一緒にお風呂に入るのが好きって聞いたから……」

「誰だ!いらんことを吹き込んだ奴は!でも、ありがとうございます!」

 

か細くなっていく明の声に、一夏も本格的に混乱していく。

 

「あ、後……戦いで疲れているだろうから……身体を洗ってあげよう……かと」

「――――えっ?」

 

静まり返った大浴場で、ワシャワシャと体を洗うタオルだけが音を立てる。

 

「(どうしてこうなった!?)」

 

腰にタオルを巻いて座りながら、視線を下の方に向けて一夏は自問をした。

既に体は洗い終えていたのだが、疲れてろくに洗えてないだろうと明に押し切られ

彼女に背中を洗ってもらう形となっている。

しかも両手を使っているため、明の体を隠すものは何もない状態である。

一夏は理性が焼き切れないよう、頭の中で円周率や素数を数えたりお経を唱えたりするも

焼け石に水にもならなかった。

風呂から上がる際、チラリと視界に入った明の姿が頭から離れないのだ。

ほどよく濡れた髪に、女子特有の柔らかい肌、そして平均を大きく上回る胸とその揺れる様。

男にとってこれ以上ないほど、凶悪な組み合わせである。

 

「(さっきから、ずっと見てる……)」

 

背中を洗っている明は、一夏の視線が目の前の鏡へチラチラ動いてそこに映る明の姿を

見ようとしているのに気付いていた。

最も一夏自身の体に隠れて、ほとんど見えてはいないのだが。

見ている人はバレていないと思っても見られている人からは、視線が丸わかりなのだ。

特に女は、男よりも遥かにそういった視線に敏感である。

 

「(うぅぅ~~~/////。

 ただ体を洗っているだけなのに、のぼせそうだ//////)」

 

明も一夏同様、頭が沸騰寸前であり原因の一つが一夏の視線にあるのは明白だが、明は

何故か一夏に注意しない。その理由は、明だけが知る。

 

「よ、よし。洗い終わったぞ……。つ、次は前を……」

「っ/////!!!!!?おおおおおい!!!あああああ当たって……!!!!!」

「へっ?…………~~~~~っっっ#$%&☆///////////!!!!!!!!!」

 

一瞬、何を言われたのか分からなかった明は、自分の体勢を見てようやく気が付く。

背後から前を洗おうとしたら、自然と一夏の背中に密着してしまうのだ。

頭に血が上っていた明はそんな当然のことにも言われるまで気が付かず、顔をトマトよりも真っ赤にして両手であるものを隠して後ろに後ずさる。

最も密着したのが数秒程とはいえ……いや数秒だからこそ、その柔らかい感触はしっかりと一夏の体に残った。

 

「おい!大丈b「見るなぁぁぁぁぁ!!!!!」ごへっ!!!」

 

純粋に明を心配して反射的に振り返る一夏だが、明の拳によって吹き飛ばされる。

他意はないが、この場合は一夏が悪いということにしておこう。

 

「……………………」

「……………………」

「……………………そろそろ上がるか……」

「……………………そうだな//////」

『……zzzzz~』

 

 

再び湯船に浸かった二人は終始無言で20分ほど入ると、風呂場から上がった。

着替えは順番に行い部屋に戻っていくが、そこでも互いに顔を赤くして無言だった。

その様子を見てケタケタと悪魔のように、笑う者がいたことを二人は知らない。

 

部屋に戻った後は、そのまま一夏も明もすぐにベッドで眠りについたのは今日の戦いで

疲れていたからだであろう。……そのはずである。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「(ね、寝た気がしない……)」

『(ツッコまんぞ。昨日私が眠っている間に何があったのかなんて、

 絶対にツッコまん!)』

 

夜が明けて翌日。一夏が目を覚ますと明の姿はなく、先に行ってくれとの書置きが

残っていた。

朝のホームルームを待つ一夏は、睡眠をきちんと取ったはずなのに眠った気がしていなかった。

その原因をなんとなく察しているゲキリュウケンは、完全に回復していない状態で

これ以上のダメージはゴメンとばかりに無言を貫いた。

 

そこに、ふらふらと疲れているのが見てわかる真耶と眉間に皺を寄せて難しい顔をする

千冬、そしてワクワクしている様子のカズキが教室に入ってきた。

 

「み、みなさん……おはようございます……。

 ……織斑君、何を考えているかわかりませんが、先生を子供扱いしようとしているのは

 わかります……はぁ……」

「?」

 

一夏を咎めるようなことを言う真耶だったが、その言葉に覇気はなかった。

 

「ええと……転校生を紹介します……あっいえ、すでに紹介は終わっているというか

 何と言うか……」

 

自分でも何を言っているのかわからいのか歯切れの悪い真耶の言葉に、クラスの皆も

騒ぎ始める。

 

「もう見た方が早いです、はい……。では、入ってきてください」

「し、失礼します/////!」

 

どこか恥ずかしそうな声で、呼ばれた転校生?は教室に入ってくる。

 

「は、原田……明です/////。あ、改めてよろしくお願いします//////」

 

入ってきたのは、スカート姿で顔を赤くした明だった。

よほど恥ずかしいのかスカートの裾を押さえて、誰とも目を合わせようとしなかった。

 

「「「「「……へっ?」」」」」

「つ、つまり原田君は原田さん……ということでした。

 はぁ~、また寮の部屋割りを組み立てなおしです……」

 

よよよと聞こえてきそうな感じで、真耶は落ち込む。

 

「簡単に言うと、明はボディーガードのような仕事をしていてね~。

 その関係で、男の恰好をしてもらってたんだ」

 

カズキが前に出てきて説明をするが、その顔は笑うのをこらえているように

引くついていた。

だが、そんな言葉など最早誰の耳にも入っていなかった。

 

「え?原田君が……女……?」

「ははは……わ、私ったらまだ部屋で寝ているみたい……。

 そうよ、これは夢よ……夢に決まっているわ」

「神様はどれだけ、私達をあざ笑えば気が済むの!

 訴えてやる!!!」

「……篠ノ之さんやハラオウンさんと同じくらい大きい……」

「一×明が……明×一が……ネタが全部パァー……」

「って、織斑君!原田君とは前からの知り合いで同室なんだから

 知らないってことは――」

「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場を使ってなかったけ!?」

 

事実という刃に指輪の魔法使いの敵を生みださんばかりに絶望する者、

神様に怒る者、ギリッと歯ぎしりする者等様々な反応が飛び交う中、

ポロっと呟かれた指摘に、全員が一夏へと視線が集まるがその瞬間彼女達は

後悔した。

 

「へぇ~~~。女子の制服も似合うじゃん♪」

「ううううるさい!お世辞なんかいるか/////!」

「おいおい。俺は、素直な感想を言っているんだぞ?

 こんなことで、お世辞とか言ってなんになるんだよ。

 それに昨日あんなことをしてきたのに、今さら何を恥ずかしがっているんだ/////?」

「うっ!そ、それは……うぅぅぅ~~~//////」

 

こちらも彼女達とは別の意味で、周りの言葉が耳に入っていなかった。

 

「……ゴヘッアッ!!!?な、なに……アレ?」

「ま、まぶしい!なんか知らないけどアレは、私にはまぶしすぎる!!!」

「桃色空間度が一万……一万五千……なおも上がって……バカな!?

 織斑先生と碓氷先生のそれを上回っただと!!!?」

「だ、誰か取って!この胸の中にある黒いモノを取って!!!」

「王子様に変装したお姫様のデレ……ギャップ萌えぇぇぇ!!!!!」

 

周りのことなど耳だけでなく目にも入っていない、一夏と明のやりとりに教室の

混沌は加速を増していく。

納めるべき教師達は、ある者は顔を赤くしてアワワとなり、ある者はおもしろくないと

ばかりの顔で睨みつけ、またある者はまだ我慢とばかりに顔を上に向けて笑うのを必死に

堪えていた。

 

「一夏ぁっ!!!」

「一夏く~~~ん?」

「一……夏?」

 

混沌に呑まれる教室の前後のドアが吹き飛び、前の方はドアを蹴り飛ばしたと思われる足が、後ろの方は吹き飛ばした槍の先端と薙刀の刃が顔を出した。

そこにISの腕だけを展開して、怒りのあまりツインテールを逆立てて双天牙月を肩にかけた鈴と、きれいすぎるぐらいきれいな笑顔を浮かべて鈴と同じく蒼流旋(そうりゅうせん)を構える楯無、鈴や楯無とは違い一切の感情を見せない冷たい無表情で目から光を消した

簪が夢現(ゆめうつつ)を手にして、入ってきた。

 

「明が女って……どういうことよ!!!」

「お姉さんにも~わかるように説明してほしいなぁ~♪」

「一夏……一緒にハイッタノ?」

「ええ。わたくしも是非とも聞きたいですわ。オホホホ……」

「ちゃんと説明してくれるよね?」

「詳しく聞こうか……?」

 

鈴達に続いて、先ほどまで驚きで固まっていた箒達もジリジリと一夏に迫ってきた。

血管マークを浮かべたり、何故か寒気を覚える笑顔をしたり、頬を引くつかせて

スターライトmkⅢや盾に内蔵されている盾殺し(シールド・ピアース)、木刀を

取り出す。

 

「おいおい……」

「み、みなさん!ISの武器を生身の人間に向けるのは……」

「大丈夫よ、明ちゃん」

「確かにこのままじゃ危ないけど……」

「一夏さんもISを展開すれば、問題ありませんわ♪」

「うん、ソノ通リ。だかラ、早ク白式出しテ?」

「ISだったら、木刀など危なくもないだろ?」

「ていうか、明!あんたにも話を……」

 

流石に生身の人間に対してISの武器を使う気はないようだが、それでも白式を

出したが最後。話を聞く気はないだろう。

そうやって、一夏に詰め寄る中、鈴は明に目を向けると愕然とした。

 

「……なんで……なんで男の恰好できるような奴が、あたしよりも大きいのよ!!!」

「えええ!?」

 

鈴の血涙を流さんばかりの魂からの慟哭に、何人かの女子はぐっ!と胸を押さえて

うずくまった。その子達は鈴と似ているとだけ、記しておく。

 

「皆さん、とにかく落ち着いてください!

 黙っていたのは悪かったですが、べ別に一夏と変なことはしていません!

 そ、そりゃあ昨日は一緒にお風呂に入りましたが、私と一夏は恋人同士ですし……」

 

この場を納めるために落ち着くよう言う明だが、だんだんと小さくなっていく声で

人差し指をツンツンしながらとんでもない爆弾を投下したことに気が付いていなかった。

 

「ん?あれ?」

「おい、どうしたんだ?皆?」

『(知らん。私は知らんぞ!)』

 

時が止まってしまったかのように固まる彼女らに、明と一夏は首を傾げゲキリュウケンは

我関せずとばかりに叫んだ。

 

「う……」

「嘘ですよね!!!!!」

 

誰かが言葉を発しようとした瞬間、教室にエレンが駆け込んできた。

 

「は……ははは。いいいいい一夏?エエエエイプリルフールはとっくに

 過ぎましたよ……?そそそそそその冗談は笑えませんよ……ハハハ……」

 

目を見開き、信じられないとばかりにフラフラとした足取りでエレンは教室に

入った。

実は、エレンは一夏に彼女がいると聞いてもカズキが吹き込んだ冗談と信じていなかったのだ。

 

「冗談じゃないぜ、エレン姉。明と俺は恋人だよ」

「ほ、本当だよ……もう俺と千冬ちゃんが昔やったことは

 大体やったかな……」

「「「「「…………ええええええええええ!!!!!?」」」」」

「カズキと千冬がやったことを?……グハッ!!!」

「あう~~~//////」

「…………」

 

一夏と笑いを堪えながら口にしたカズキの言葉にエレンと同じく何かの間違いだと

信じたかった者達も驚きの声を学園中に響かせ、エレンは血を吐いて気絶した。

学生時代のカズキと千冬を知る彼女は、それを一夏と明がしたと知って

一番のダメージを受けたようだ。

教室が驚きに包まれる中、明は頭から煙を出していた。

 

「ちょっ!えっ!?だって……えええ!!!?」

「ふふふ……ハハハ!神様の大馬鹿野郎!!!」

「私の青春は……終わった……」

「あの織斑君にあんなこと言わせるなんて、一体何をしたの原田さん!?」

「恋なんて知るかぁぁぁ!!!!!私はISに生きるんじゃ!!!」

「あわわわわわ!!!どどどどうしましょう、織斑先生!」

 

箒達は一夏の言葉に石像の如く固まり、動かなくなった。

他の生徒は気絶するものもいれば、泣き叫びまくった。

まさに阿鼻叫喚となった教室で、真耶は千冬へと助けを求めるが彼女もパニックに

なって気付いていなかった。カズキが口と腹を押えてうずくまっているのを。

千冬が少しも表情が変わっていないことを――。

 

「落ち着き給え、山田君。たかが生徒の恋愛で騒ぎすぎだ。

 こういう時はまず――――机の引き出しにあるタイムマシンに乗ってだな……」

 

千冬は22世紀のネコ型ロボットの道具を使うように机の引き出しを引っ張ると、

そこに片足を入れようとする。

 

「ブフッ!」

「えっ!?ちょっ!落ち着いてください、織斑先生!!!」

 

現実逃避しようとする千冬を真耶が羽交い締めで引き止め、それを見たカズキは地面を

叩き始めた。

 

「あ~あれ絶対最初から狙ってたわね、碓氷先生」

「そうだね、アリサちゃん。なのはちゃん達は具合が悪いってことで、今日は

 休んでるけど、はやてちゃんは“これ”見れなくて悔しがるんじゃないかな?」

 

一組の教室で唯一パニックになっていないアリサとすずかは、この騒動の原因が

わかり半ば呆れていた。

なのは達は、昨日の戦いを報告するために体調不良ということで休みをとって

クロノ達と通信をしていた。

 

「ん?何か騒がしいな」

「ラウラ!もう動いて大丈夫なのか?」

 

隣どころか学園中に響くような騒動に包まれる教室に、ラウラが入ってきた。

 

「ああ。しばらく、大事をとらなければならないが日常生活に支障はない。

 それと……今までいろいろと迷惑かけた。皆にもだ。すまない」

 

いきなり、頭を下げて謝罪をするラウラに皆驚いた。

 

「そして、今日からあなたをお兄ちゃんと呼ばせてもらう!」

「はい?」

「女の子を時にからかい、時に叱り、時に導く男性をお兄ちゃんと呼んで慕うのが

 日本流だと聞いた!それに、お兄ちゃんと呼ばれてうれしくない男もいないと!」

「なんか日本が勘違いされてる!?」

 

一夏と明の恋人関係がバレた衝撃からもう立ち直ったのか、黄色い声が沸いた。

最もラウラにそんなことを教えたオタク軍人は、相手がカズキだと思って教えたのだが

その勘違いを教えられる者はいなかった。

 

「ねぇ、一夏?……今から模擬戦……シヨウ?」

「ええ……私達全員と一夏さんデヤリマショウ?」

「…………(ニコッ♪」

「織斑一夏に対して最も有効なのは、射撃武装による遠距離攻撃……

 まずは、スラスターを破壊して動きを封じたところをジワジワと攻めて……」

「ふふふふふ……お姉さん久々に張り切っちゃうわよー♪

 もちろん、箒ちゃんもね。会長権限で訓練機を貸し出すわ」

「ありがとうございます、楯無さん……一夏……覚悟シロヨ?」

 

怒りが振り切れたのか、箒達は硬直から回復すると体から黒いオーラのような

ものを放出し、全員一夏へ目から光を消したまぶしい笑顔を向けた。

そこに、断るという選択肢はなかった。

 

「あれ?なんで、俺が悪役みたいなことになっているの?

 (ゲキリュウケンさーーーん!お助けーーー!!!)」

『(空が……青いな……目に染みるぜ)』

 

一夏は、昨日のお風呂でも浮かんだ疑問にゲキリュウケンへ助けを求めるも

軽くスルーされてしまった。

 

「俺に味方はいないの!?」

 

ゲキリュウケンから周りへと助けを求めようとするも、皆視線を合わせようとしなかった。

今の箒達の相手はヤバイとわかっているからだ。

 

「はぁ~流石にこれはな……仕方ない私が一緒にやろう」

「私は戦えないが……がんばれ、お兄ちゃん!」

 

見かねた明とラウラが手助けを申し出た。その際、応援するラウラの姿がいじらしくて悶える者達がいたのは余談である。

 

「おお!ありがとう、明!」

「べ、別に礼を言われる程じゃ……」

 

一夏が明の手を取って感謝するが、それを見た箒達は数倍の黒いオーラを放出する。

この模擬戦は、IS学園を揺らすほど激しいものになり、使用したアリーナがしばらく

使用不能となって復活した千冬にダイカイガン!オオメダマ!されることになるのだが、

この時の一夏達が知る由はない。

更に、エレンと千冬がまともな授業ができなかったので真耶と燎子が走り回って

疲労困憊になるのだが、それも一夏達が知る由はなかった……。

 

 

 

「さてと、もうすぐゾロ目の時間帯になるな。

 ドアを開けて時の列車に乗って、時間を修正……」

「織斑先生!戻ってきてくださーーーい!!!」

 

千冬が時間の彼方より帰還するのはまだ先のようだ。

そんな千冬を見て、カズキは両手で腹を押さえて笑い転げて、腹筋が筋肉痛になるのは

先の話。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

オ マ ケ 2 ☆

 

時間の彼方より帰還した千冬と復活したエレンは、後日明と話をすることで

落ち着きを取り戻した。

 

「ふっ。恋人ができたからといって、いちいち騒ぐものか」

「そう、私達は大人なのですから大人として弟分の幸せを素直に祝福しますよ」

 

職員室でそう漏らす二人だったが……

 

「「――って、納得できるかぁぁぁ!!!!!」」

 

ある夜、二人の姉の叫びが寮長室に轟いていた。

 

「うぇぇぇ~~~、一夏はてっきり千冬みたいにかっこいい大人の女が

 好きだと思って頑張ってきたのに~~~」

「ふふふ……昔は“ちふゆねぇ、ちふゆねぇ”と私の後をトコトコと

 ついてきたのになぁ……ふふふ」

「あの~もうその辺にした方が……」

「飲みたいのはこっちよ……」

 

ジョッキを片手に持ち酒を注ぐ二人だったが、その手は震えまくって酒をこぼしていた。

足元に転がっているビンを見ると、相当の量を飲んでいるようだ。

無理やり連れてこられた真耶と燎子が止めたりしたり愚痴るも、酔っ払いの耳には入らなかった。

 

「うるさーい!姉のものだった弟がろことも知れないろんなにとられらんたぞ!

 飲まずにやってられっか!」

「そうらそうら!やってられっかーーー!」

「あらら、すっかりでき上がってるね~」

 

完全な酔っ払いと化した二人の元に、カズキがやってきた。

 

「なんら!カドゥキ!弟をとられたわたひを笑いに……ヒック!……きらのか!」

「う~ん、おもしろい姿の千冬ちゃんを見に来たってのもあるけど……

 愚痴を聞きに?」

「ヒューヒュー!熱いぞご両人!ぐえっ!」

 

茶化すエレンだったが、千冬に殴られて黙らせられる。

 

「まぁまぁ、千冬ちゃん。雛っていうのはいつかは自分の翼で

 飛び立つんだからさ、お姉ちゃんも弟離れをしないとね~」

「うるら~い!そんなことわーってるんだよ!でも、もう少しお姉ちゃんのうちろを

 ろんでいて……ヒック!……ろしかっら!」

「はいはい。じゃあ、後は俺が横で一緒に飛んであげるから」

「ちょのことら!わちゅれるなよ!」

 

まるで娘を嫁に出す父親のような千冬に、カズキはうまいこと言葉を伝えていく。

 

「……ねぇ、真耶?なんで、私達はわざわざバカップルのいちゃつきを

 見せらレテイルワケ?」

「さ、さぁ~?」

 

独身貴族には目に毒な光景を見せつけられた燎子は、中身の入った缶ビールを握り潰しながら拳をワナワナと震わせる。

翌日、千冬とエレンは二日酔いとなるがなんとか立ち直った。

しかしこれからしばらく、一夏と明がカズキと千冬のようなやりとりをしているのを見るたびにエレンは燎子を自棄酒に付き合わせて、燎子の肌や何やらがマズイこととなる。

 

 

 




明もまた仲間からいろいろと吹き込まれているので、恥ずかしがり屋なのに
男と一緒に入るという大胆な行動をwww
千冬の現実逃避は、前々からやってみたかったことです♪

ラウラにお兄ちゃん云々を吹き込んだのは、もちろんオタクな副官さんです。
ですが、連絡した時ラウラは一夏の名前を出さなかったので
カズキと勘違いされこんなことにwww
恋愛感情を兄妹と思い込む形で進めていきます。

オマケで千冬の言葉がおかしいですが、それは酔っているという表現
というのをご了承ください。

戦いの後の事後処理等は、次回で!


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