インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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時間を見つけて書いていたら、ノリにのっていつもの倍近くなったので
分けて投稿します。
まずは、戦いの決着です。

後半は後程。


戦いの後の青春

「はあぁぁぁっっっ!」

 

気合いの声と共にティアナは、右手のクロスミラージュからアンカーを放ち木に巻き付けると

横飛びを行いスケートで滑るかのように素早く移動し、それに合わせて左手のクロスミラージュで遣い魔を攻撃していく。

 

ティアナの予想外の攻撃に遣い魔達は反応が遅れ、そのワンアクションで数を半分に減らした。

 

「遠距離の射撃は兄さんやマインさんが上……接近戦に持ち込まれても

 リュウガンオーのようには戦えない。

 でも、はいそうですかって白旗を簡単に上げられるガキでもないのよ!」

『撃ち抜け、ティアナ!』

「くらえっ!」

 

ティアナは両手のクロスミラージュを上下に構え、時間差で攻撃していく。

 

「基本を忠実に、そして相手を惑わして……確実に攻撃を当てる!」

『フェイクシルエット』

 

突如としてティアナの体が光ったかと思うと、彼女の姿は三人となり遣い魔達は更に混乱する。

 

「一気に決めるわよ!」

 

ときにアンカーを使って立体的に、ときに惑わせるティアナに対して遣い魔達は終始翻弄され、

ただその攻撃を受けるしかなかった。

 

 

 

「デュナメス。ティアナの方は、どうだ!」

『……彼女は、無事に任務を完了。現在離脱行動に移っている……』

 

スカイバトラーを遠方より次々と撃ち落とすティーダはその途中、妹のティアナがどうなったかをデュナメスに尋ねるが、彼は少し考え現状を伝えた。

 

「ははは♪さすが、俺の妹だ!これは、帰りにケーキでも買っていかないとな!」

『まだ戦闘中だぞ。妹の活躍がうれしいのはわかるが、後にしろ。

 こうなると思ったから、伝えたくなかった……』

 

ティアナの成果に一気に士気を高める狙い撃ちことティーダだったが、デバイスのデュナメスは

げんなりした様子で返した。

 

「何を言っているんだ!妹のがんばりを褒めない兄がどこにいるんだ!」

『わかったわかった。とにかく今は、こっちに集中してくれ。

(最近はだんだん鬱陶しがられてるから、寂しいのだろうがその反動で

 俗に言うシスコンとやらが、レベルアップしているな……。

 人間が家族を大切に思うのは理解できるが、妹や弟を持った兄や姉のこれは

 度を越えていないか?)』

 

家族や友人の情愛を理解できるデバイスは、それとはまた違う情愛の一種であるシスコンブラコンに一人頭を悩ますのであった。

しかし、彼は知らなかった。

シスコンブラコンに負け劣らずのめんどくさい情愛が、人間にはあることに……。

 

ちなみに、そんなやりとりを直感で感じ取ったのかティアナが遠距離射撃でティーダを

撃ち落とせるか、クロスミラージュに聞いていたりする。

 

 

「“デュナメス”と“クロスミラージュ”の両デバイス、全機能正常に稼働中。

 “ツンデレガンナー”は任務を完了し、現場を離脱。

 “狙い撃ち”の方も間もなく任務を終えます。

 何とか、無事に終わりそうですね……」

「ははははは!いいねいいね!

 自分の作ったものが動いて、活躍している様を見られるのは!

 しかも、シュミレショーンだけではわからなかった問題点も上がってきてるし、

 私の創作意欲が掻き立てられるよ!!!」

 

ある場所で、ティーダとティアナの様子をモニター越しに見ている者達がいた。

ウェーブがかかった薄紫の長髪をした女性が報告する内容を聞きながら彼女の後ろに立ち、

楽しそうに高笑いする白衣を着た科学者と思われる男性は、オーバーリアクションで喜びを

表していた。

 

「バリアジャケットのように魔力を流せば起動するような機能には、あらかじめ魔力を

 チャージしておくバッテリーを使用し、展開機能を簡略化することでAIに割ける

 領域を増やした新型インテリジェントデバイス。

 これにより従来のものよりも人間に近い思考を行うことが可能となり、

 使い手との息が合えば、一般的な魔導士に比べワンランク上の能力を発揮することが

 できる。

 もっともバッテリー式だから、その能力を最大限発揮できる時間が限られるし、個人の専用性

 も高くなっているから量産には向かないんだけどね~」

 

科学者ジェイル・スカリエッティは、画面に映るデュナメスを見ながら不敵につぶやく。

その目は子供が自分の手で作ったものをどう改造しようかと考えているように、キラキラと

輝いていた。

 

「今回の戦闘でいいデータが採れましたし、完成できるのもそう遠くはないでしょう。

 クアットロ、そっちはどう?」

「は~い、ウーノお姉さま~♪

 IS学園の監視システムへのハッキングは、完了。

 追跡の妨害はいつでもできますわ~」

 

ジェイルの秘書のように報告していた女性ウーノは、傍らでキーボードを操作している

丸メガネをかけた女性クアットロに、撤退準備の進行を尋ねた。

 

「それにしても、敵もエグイですわね~。

 数に任せて後から後からグリグリと……あ~ん!

 私もエスデスお姉さまに、あんな風に攻められた~~~い!!!」

 

突如として自分の体を抱きしめながらクネり始めたクアットロに、ウーノはひきつった顔をする。

 

「(以前行った親睦を深めるための交流合宿で、本当になにがあったの!?)」

 

以前は、カズキのようなSよりな性格だった妹の変わりようにウーノは頭を痛めるのであった。

 

 

 

「ここは……?」

「どうやら、戻ってこれたみたいだね」

 

一方、合体攻撃でベムードを攻撃したリュウガンオー達となのは達は戦っていた空間から脱出することができた。

 

「はぁ……はぁ……」

「大丈夫……はやて?」

「勝った……の?」

「ギ……ギリギリだったな……」

『残り魔力十数パーセント』

 

ベムードに止めを刺した4人は息も絶え絶えに、地面に膝をついていた。

そこにレイジング・ガードナーがリュウガンオーに肩を貸して、なのは達から距離を

とる。

 

「向こうの方もそろそろ終わるようだから、僕達はこれで失礼させてもらうよ」

 

そう言って、背中を向けるレイジング・ガードナーになのはは何か言おうとするが、

響き渡る爆発音にかき消されてしまう――

 

 

 

「アリーナーってことは……戻ってこれたのか!」

『そのようだな』

 

シュヴァルツ・バイザーを倒し光に包まれたTリュウケンドー達は、元のアリーナに戻っていた。辺りを見回すとラウラと魔弾ダガーをキャッチした明が箒と共におり、他には

バラバラとなったラウラのシュヴァルツェア・レーゲンだけがその場に残っていた。

 

「どうしたのだ、一夏?」

「ん?いや……あいつ本当に倒せたのかな?って思ってさ……」

 

キョロキョロと警戒するように辺りを見るTリュウケンドーに箒は、問いかけるがその答えに

一瞬何を言っているのかわからなかった。

 

「何を言っているのだ?あいつは、今お前が!」

「う~ん……確かに手ごたえはあったけど……」

「悩んでいるところ悪いが、まだ終わってないようだ。

 IS学園の近海で、こちらに攻め入る謎の敵と戦闘が継続中らしい。

 おそらく、いや間違いなく奴らだ!」

 

ラウラを抱えながら明はTリュウケンドーに、IS学園の現状を知らせる。

その顔は、苦虫を噛んだような表情を浮かべていた。

少し悩んだそぶりを見せると、ためらいがちに魔弾ダガーを差し出す。

 

「……行くのだろ?」

「ああ……」

「無茶をするなと言っても聞かないのはわかっている……

 だけど無理はするな!これだけは約束してくれ!」

 

明の悲痛な叫びにTリュウケンドーは、静かに魔弾ダガーを受け取る。

シュヴァルツ・バイザーとの戦いでかなりのダメージを受けた上に他のキーよりも体に

負担がかかるサンダーキーまで使っているのだ。

本当なら、休まなければならないのだがTリュウケンドー……一夏はこんなことでは止まらない。それを知っているからこそ、明は止めるのではなく無理をしないようにと懇願する。

 

「……ふっ。すぐに片づけて帰ってくる!」

 

Tリュウケンドーは、ゲキリュウケンを魔弾ダガーと合わせてツインエッジにすると

明にそう言って、走り出した。

 

「イーグルキー!召喚!」

『サンダーイーグル!』

「いでよ、サンダーイーグル!」

 

ゲキリュウケンから放たれた光は空中に魔方陣を描き、そこから目に見えないほどの速さで

何かが飛び出す。

 

「――――ヒュゥゥゥヤァァァッ!!!」

 

空高くその声を轟かす鷲を模した機械の体を持つ黄色の鳥は、あまりの力から封印されていた

雷の獣王、サンダーイーグルである。

 

「サンダーイーグル!ウイングモード!」

 

Tリュウケンドーの声と共にサンダーイーグルは、首を折り曲げ2枚の翼を4枚へと広げ

Tリュウケンドーと合体する。

 

「サンダーウイングリュウケンドー!ライジン!」

 

空を駆ける稲妻の如くTWリュウケンドーは、戦場へと飛翔した――

 

 

 

「ああ~もう!次から次に!」

「文句を言っていないで、手を動かしてください鈴さん!」

「さっきからの攻撃は、僕達を援護してくれてるみたいだけど……!」

「……それでも、まだ数が多い!」

 

エレン達の援護に駆け付けた鈴達は、超遠距離からのティーダの支援攻撃も合ってスカイバトラーを押しているが、疲れを知らない機械との差が少しずつ出始めて集中力が落ちてきた。

 

「私の清き熱情(クリア・パッション)もそんなに纏めて倒せないし……」

「山嵐も弾切れ……後は、地道に倒していくしかない……」

 

有効な武器や技も効果範囲や弾切れによって、後は機械との体力勝負になりかけた時、

その場にいた全ISのハイパーセンサーがアラームを響かせる。

 

「今度は、何よ!」

「IS学園から、高速で接近する物体あり!?」

 

いち早くエレンと燎子が、接近するその物体に顔を向けると同時に黄色の影が二人の

頭上を通り過ぎた。

その場にいた全員が一瞬呆気にとられた次の瞬間、十数体のスカイバトラーが切り裂かれて

爆散した。

驚く彼女達を尻目に、TWリュウケンドーは敵の爆撃機に真っ直ぐ接近し、それを妨害しようと

襲い掛かるスカイバトラーを次々と倒していく。

 

『リュウケンドー。これ以上戦闘が長引くのは、危険だ。

 一気にあのデカイのをやるぞ!』

「おう!ファイナルキー……発動!」

『ファイナルクラッシュ!』

「ツインエッジゲキリュウケン――超雷鳴斬り!!!」

 

蓄積されたダメージも考慮しゲキリュウケンは早急に勝負を決めるように言い、

TWリュウケンドーは雷をその身に纏わせ、爆撃機へと加速し突貫する。

 

 

 

「ザンリュウジン、アーチェリーモード!」

「ははははは!ぬるい!ぬるいぞ!!!」

 

爆撃機の上では、宇宙ファイターXとクリエス・ベルブの戦闘が続いていた。

ザンリュウジンを弓へと変形させ矢を射るが、クリエス・ベルブはたやすくをその矢を

切り伏せていった。

そして両者は、距離をとって武器を構えあうというにらみ合う形となる。

 

『あの野郎~攻撃が、当たってるのに効いてないのか?』

「いや、当たっているのは布石の攻撃だけだ。

 こっちの本命の攻撃は、きっちり防御している。こいつは、単純な戦闘狂じゃない。

 相手や物事を冷静に見抜く、繊細な面を持っているんだ――」

「来ないのか?ならば、こちらから……」

 

クリエス・ベルブが先に攻撃を仕掛けようとするが、何かに気付いたのか顔を下に向け

宇宙ファイターXも同様に下に顔を向け仮面の下でほくそ笑む。

 

「どうやら、俺の戦いは決着がつかなかったけど俺“達”の戦いは終わりのようだな」

 

そう漏らすと同時に足元の装甲をぶち破って、TWリュウケンドーが飛び出す。

 

「なんと!?」

「――っりゃっ!!!」

 

TWリュウケンドーが、振り返ると爆撃機が爆発に包まれる様がその目に映った。

 

「はぁ……はぁ……」

「貴様がここにいるということは、奴を倒してきたようだな。リュウケンドーよ」

 

肩で息をしているところに前方から声が聞こえてきたので、顔を上げると

表情などあるはずもないような顔なのに、体中から喜びの感情が浮かんでいるとわかる

クリエス・ベルブが空中に佇んでいた。

 

「くっ!」

『こいつ、シュヴァルツ・バイザーと同等いや……それ以上!?』

「仮初の体とはいえ、奴を退けるとは大したもんだ。

 本当に魔弾戦士というのは楽しませてくれる!」

「『!?』」

 

闘気が膨れ上がったクリエス・ベルブに、TWリュウケンドーはゲキリュウケンを構える。

 

「おいおい。こっちの決着がついてないのに、相手を変えるような浮気性だと

 友達できないぞ~」

 

一触即発の空気が流れる二人の間に、足に風を纏わせて空を飛ぶ

宇宙ファイターXが割り込んできた。

 

「宇宙ファイターX!」

「危うく、爆発に巻き込まれるところだったぞ。少しは周りを見てくれ」

『って、それをお前が言うのか?』

『余裕で逃げられたくせに』

「ははは!すまんすまん。久方ぶりに強者(つわもの)が、ゴロゴロ出てきたからな!

 お前と決着をつけるのが先だな。何なら、二人同時でも構わんぞ!」

「いえ、ここまでですよ。ベルブ」

 

子供同士のような軽いノリで自分に不利な条件を提案してくるクリエス・ベルブの隣に

突如として黒い煙が現れる。

 

「っ!(俺の風の探知をくぐって現れた!?)」

「その声……シュヴァルツ・バイザー!やっぱり、生きてたのか!」

「その言い草からすると、あなたも私を倒せたとは思っていなかったようですね。

 あなたに倒される瞬間、急いで逃げださせてもらったのでこの通りですよ」

 

シュヴァルツ・バイザーの声を発する煙は形こそ、変えないがそれほどダメージがあるとは

思えない声色で返事を返してきた。

 

「ここまでって、おいおい!ここから面白くなりそうなんだぞ!」

「今回は、ここまでです。スカイバトラーは全滅。ベムードも倒されました。

 彼らを甘く見てなどいませんでしたが、彼らが協力した時の力は見誤っていました。

 ここは、引くとしましょう……。

 それにあなたも全力を“出せない”相手は、物足りないのでは?

 彼らが全力を出せれるようになるまで待った方が、楽しいと思いますよ」

「「『『!!?』』」」

 

クリエス・ベルブを説得するために発せられた内容に、一夏達は息をのんだ。

自分達が抱える問題を知られていたからだ。

 

「……そうだな。うまいものは最後に食べたほうが、うまいからな」

「ふぅ~。素直に納得してくれて感謝しますよ。

 それで?魔弾戦士のお二方はどうしますか?

 負け犬が尻尾を巻いて逃げるように退散しますが、追ってきますか?」

「いや、やめておくよ。藪をつついたら、何が飛び出てくるかわかったもんじゃないからな」

 

剣を下したクリエス・ベルブにどこか安堵したシュヴァルツ・バイザーは、自分達を

追撃してくるかと尋ねるが、宇宙ファイターXは肩をすくませて断った。

 

「そうですか……それではいずれまたお会いしましょう――」

 

シュヴァルツ・バイザーはその煙の体でクリエス・ベルブを包みこむと

文字通り煙のようにその姿を消した……。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「だが、忠告しておくぞ?あいつらは、こちらがばれない様に作った壁や建前

 なんかお構いなしに本心でぶつかってくる。

 特に弟には強く心を持たないと、惚れてしまうぞ?」

「教官も惚れているのですか?」

「姉が弟に惚れるか、馬鹿め」

「では、先ほど言っていた“あいつ”という者には……」

「――さあ!もうすぐ休憩時間は終わりだぞ。さっさと訓練場に戻れ!」

 

どこか現実味のない幻想的な空間で、ラウラは懐かしい思い出を見ていた。

千冬に強さを尋ねたあの時、照れくさそうにしながらもうれしそうに自慢気に語る

その姿に、今だからわかるヤキモチという感情を初めて抱いたのだ。

最後は、ごまかすように話を逸らしたが“あいつ”……カズキに千冬は惚れていたのだと

ラウラは理解した。

 

そして、自分が恩師に尋ねた強さとは何かという問いに、その弟の一夏と、

友と呼べる者達との出会いで分かったかもしれない……。

彼らは圧倒的な敵を前にしても、決してあきらめなかった。

 

「仲間が……共に戦ってくれるものがいるからお前は強いのか……?」

「それもあるだろうけど……一番は守りたいものを守るって決めてそのために、

 絶対に“負けない”ために戦うからかな……」

「負けない……ため?」

「そう。負けるもんかって意地になる奴は、負けないために自分の限界を

 超えていく……ここまでってものがないんだよ」

「お前はだから強いのか?負けないようにしてきたから?」

「強いかどうかはともかく、そうやって自分で決めて、自分の意志で進んできたからな……」

「自分の意志で進む……」

「最初は、ああなりたいって憧れでもそうしたいって想いでも

 そこに自分の意志が入っていなきゃ、なんにもならないのさ

 ――だからさ。お前も誰かのためとかじゃなく自分の意志で決めて、前に進んでみろよ。

 それができるまでは、お前も守ってやるよ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

瞬間、ラウラは初めての衝撃に強く揺さぶられる。そこで彼女は意識が遠のくのを感じるが、その衝撃が俗に言う“ときめき”だと知るのは、もう少し時間がかかるのであった。

 

 

 

「う、ぁ……」

 

うっすらと感じる光によって、ラウラは目を覚ました。

 

「気が付いたようだな」

「教……官?私……は……?」

 

丁度ここに来たところだったのか、こちらへと近づいてくる千冬にラウラは

自分が何故ここにいるのかも含めた質問をする。

 

「そのままでいい。ここは保健室だ。

 全身に無理な負担がかかったことで、筋肉疲労と打撲がある。

 それと体に感電したような症状もあるから、しばらく動けないだろうから

 無理をするな」

「確か……試合に負けて、それから……」

「ああ。信じられないだろうが、お前はいわゆる魔物とか呼ばれるものに

 体を乗っ取られたらしい」

 

千冬の突拍子もない言葉にラウラは言葉を失う。

 

「残念だが、現実だ。織斑達3人の証言に加えて、中破したがお前の機体からもその時の

 記録が残っていた。

 ……そして、これは重要案件でその上機密事項なのだが……」

 

珍しく歯切れの悪い言葉で千冬は語り掛けるので、ラウラは自然と不安に襲われた。

 

「VTシステムは知っているな?」

「はい……。正式名、ヴァルキリー・トレース・システム。

 モンド・グロッソの部門受賞者(ヴァルキリー)の動きを

 トレースするシステムですが……」

「そう、IS条約によって研究・開発・使用が禁止されているそれが、かつてお前のISに

 搭載されていた」

「なっ……!?」

「安心しろ。システム自体は、カズキの奴がとっくに取り外して消去している。

 あいつがドイツに来た目的の一つが、それだったのさ。

 だが、システムはなくてもISはVTシステムに対応できるようになっていたため、

 似たようなシステムを使うことで、類似するようなことができたらしい。

 それを利用して、実体を得て織斑達に襲い掛かったらしい……」

「私が……望んだからですね。力を……暗闇から逃げるために……」

 

ぎゅぅっとシーツを握りしめながら、ラウラは涙声となっていく。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

「は、はいっ!」

 

いつもの凛とした声で呼ばれてラウラは、条件反射で返事をする。

 

「お前はだれだ?」

「えっ?あ、あの……私は……」

「わからないのなら、ゆっくり考えるといい。学生の本分は、学ぶことにある。

 何3年間はここで過ごすんだから、時間はたっぷりある。もちろん、その後もな。

 大いに悩み学んでいくといい」

「あ…………」

 

思わぬ千冬の言葉にラウラは、ぽかんと口を開けてわけがわからないと体が固まった。

 

「それともう一つ。いくら憧れても、誰も自分以外の何者にもなれないぞ。

 特に、アイツの姉というのはイロイロと心労が絶えないからな。なるものじゃない」

 

笑いながら冗談めかしに行って、千冬は保健室を後にした。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「なるほど……。つまり、整理すると……一夏は地球を守るためにその“魔弾龍”と

 共に今まで戦ってきたと?」

 

一夏は、食堂でなのは達と事後処理を行う楯無を除いたいつものメンバーが集まって、

箒にリュウケンドーのことを簡単に説明していた。

 

「そう。丁度中学に上がる頃からな」

「……はぁ~。にわかには信じられんが、実際に見ては……な」

「ははは。懐かしいな、その反応。僕も似たような感じだったよ~」

「いきなり、そんなことを言われてもピンときませんものね」

 

まだ受け止めきれない部分もあるが、とりあえず箒は無理やり現実として納得した。

 

「それよりも!こんなところで、話していいの!」

「大丈夫だよ、鈴。皆、私達の会話なんて聞いていない……」

 

簪がお茶を啜りながら、顔を向けるとそこには食堂のテレビを見ながら絶望に沈む

女子の一団があった。

 

『トーナメントは事故により中止となりました。再開の目途はたっていません。

 詳しいことは、各自個人端末で確認の上――』

「……優勝……チャンス……消え……」

「千載一遇の好機が……」

「……私の燃える青春計画が……」

「……うわあああああんっ!」

 

全員太陽へと走り出すがごとく、泣きながら立ち去っていき、一夏達を気にかけるものなど

いなかった。

 

「どうしたんだ?」

「さあ……?」

 

わけがわからず、一夏と明は頭に?を浮かべて首を傾げるばかりだった。

そして、それはこの場にいる者達も例外ではなかった。

 

「「「「「「……はぁっ~」」」」」」

 

重いため息を吐く“6人”の乙女達。

 

「「「「「ん?」」」」」

「あれ、楯無さん?」

「何故ここに?事件の後処理をしていたのでは?」

 

生徒会室にいるはずの楯無に一夏は、驚く。

 

「まさか、サボリですか……?」

「そんなわけないじゃない、鈴ちゃん!

 逃げてきたのよ~。あんまりにも居心地悪くて~」

 

ジト目の鈴に対して、楯無は涙目で反論する。

 

「……どういうこと、お姉ちゃん?」

「今ね……生徒会室では、虚ちゃんと本音が弾くんとウェイブくんのケガを

 手当てしながらイチャついているのよ~!

 私を空気扱いして、二人だけの世界ができてんだよ!二つも!チキショー!!!」

 

机を叩きながら、楯無は叫んだ。いつもと口調が変わるほどに。

そんな楯無のことなどお構いなしに、生徒会室では弾と虚は手が偶然重なって

時が止まったように見つめ合い、ウェイブは本音にワタワタと包帯をグルグルと巻かれて

いたりする。砂糖濃度が急上昇するその部屋で、ゴウリュウガンは無言で一人耐えているのを

誰も知らない。

 

「こうなったら、一夏くん!お姉さんを慰めるために、デートしなさい!」

「はい?」

「むっ?」

 

机に突っ伏して泣いていたかと思ったら、ガバッと起き上がり見開いた目で一夏に

迫ってきた。

突然のことに一夏は間の抜けた返事をし、明は怪訝な顔となる。

 

「ちょっ!待ちなさいよ!」

「抜け駆け禁止ですわ!」

「あっ……それがアリなら僕も慰めてもらおうかな?」

「私も……」

「待て!そもそも私が言い出したのだから、最初は私だろ!!」

「確かにそうだけど、その約束はトーナメントが中止になったのだから無効……

 だから、この際!ここにいるメンバー全員でデートっていうのはどうだ!!!」

 

背後に爆発音でもさせるかのように楯無はとんでもないことを宣言し、箒達は言葉を失い固まる。

 

「……いいかもしれないわね、それ」

「ええ、このまま何もなしというよりは……」

「おもしろそうだね♪(皆を出し抜くプランも練らないと……)」

「皆がいいのなら……」

「ああ~もう!わかった!全員で行けばいいのだろ!!!」

「じゃ決まりね♪それじゃ、一夏く~ん?早速彼女さんに電話して、デートの許可

 とってね~」

「い、いやとってね~って言われても」

 

こちらのことなどお構いなしに話を進めていく彼女らに一夏は、思考がついていけず

しどろもどろとなる。

 

「おい……最初の約束というのもデートのことなのか?」

 

そんな一夏に若干声を低くして、明が問いかける。目を鋭く細めて。

 

「えっ?ああ。今回のトーナメントに優勝したら、買い物に付き合ってくれって話

 だったんだけど……彼女がいるのにデートってことになってさ。

 で、誤解のないように断りを入れるってことだったんだけど……」

「……まあ、いいのではないか?その彼女とやらも一緒に行くのなら」

 

明に慌てて説明をした一夏だったが、明は不機嫌そうにそっぽを向いて顔を逸らした。

それを見ていた箒達は、内心苛立ちを覚えた。

まるで彼女のご機嫌を伺う彼氏の光景に見えたからだ。

 

「あ、ここにいたんですね皆さん!」

 

青春の一ページを刻んでいるとは夢にも思わない一夏達の元に、真耶がやってきた。

 

「すいません、原田君。碓氷先生が用があるとのことで、疲れているところを悪いですが

 先生の部屋に行ってもらっていいですか?」

「碓氷先生がですか?わかりました」

「それで、山田先生?他に何かあるんじゃないんですか?」

 

明が食堂を後にするのを見ながら、楯無は真耶に質問する。

 

「はい、織斑君に朗報です!

 なんとですね!今日から男子の大浴場の使用が解禁です!」

「本当ですか!?」

 

両手拳を握りしめてジャンプする真耶とその知らせに喜ぶ一夏とは対照的に、

舌打ちするものがこの場に一人いた。跳ねた時に真耶のあるものが、大きく揺れたのを見て。

 

「今日は大浴場のボイラー点検で元々使えなかったのですが、点検自体は

 終わっているので男子二人に使ってもらおうってことになりました♪」

「ありがとうございます、山田先生!」

 

目を輝かせて一夏は、真耶に頭を下げて感謝を述べる。一夏は風呂好きだったのだが、

男が入った後のお湯に入るのは恥ずかしいとか、自分達が入った後に入られるのもどう入ればいいのかわからないという、よくわからない女子達からの意見で一夏とカズキ、そして“明”の男性陣が大浴場を使うことは揉めにもめていたのだ。

 

「いえいえ。これが私達の仕事ですから。ああ、原田君には碓氷先生が知らせる

 とのことなので、織斑君お先にどうぞ!」

 

そう言われて、一夏はスキップしそうな足取りで着替えをとりに部屋に戻った。

 

 

 

「すっげー!」

『まさに圧巻だな』

 

大浴場へとやってきた一夏は、その広さに驚いていた。

ジェットやバブルがついたものもあれば、サウナに果ては打たせ滝まで完備されている。

しかも、今はカズキも来ていないのでこの大浴場をゲキリュウケンと共に独占できるため

一夏のテンションは自然と上がっていた。

 

「ふうううぅ~~~」

『生き返る心地だな……』

 

体を洗い終え、ゲキリュウケンを洗面器に入れてその頭に彼用のタオルをのせた一夏は、共に戦いで疲れた体を湯船に沈めて久方ぶりの風呂を満喫した。

 

『風呂は、人間が作り出したものでもトップレベルの素晴らしさだな……』

「だよな~……」

 

カポ~ンという擬音が聞こえてきそうな空間にエコーする自分達の声も堪能しながら、

無心になりそうな感覚に陥る。

 

「……今日の戦い……明と箒がいなかったら勝てなかったかもな……」

『ああ……』

「それが悪いとは思わないけど……やっぱり悔しかったな……」

『……』

「信頼するのと甘えるのは違う……もっと強くなろう……ゲキリュウケン」

『ああ』

 

目を閉じながら悔しさを吐露し、言葉数は少ないが一夏は

ゲキリュウケンと共に決意を新たにする。

 

カラカラ……。

 

そこに扉が開く音が、一夏とゲキリュウケンの耳に入ってくる。

 

『風呂を堪能して気付かなかったが、誰か来たようだな』

「カズキさんだろ?あの人も風呂好きだし……遅かったで……」

「は、入りまーーーす……」

『!?』

「ぶふっ!!!?」

 

あまりの予想外すぎる事態に、一夏は思いっきりズッコケた。

てっきりカズキが入ってくると思ったら、生まれたままの姿の明が申し訳程度にタオルで

前を隠した状態で一夏の目に飛び込んできたのだ。

 

 





スカさんが作ったクロスミラージュとデュナメスは、魔力を流せば
起動できる機能を本体と分割することで、AIに使える領域をレイジングハート達よりも増やして、リインのように人間に近い思考ができるようになっています。
特徴としては他に、バッテリーを使うことでその分の魔力を普通よりも
攻撃等に回せて強力なものが放てるということ。
時間制限があるということです。
ちなみにデュナメスは苦労人属性(爆)

クアットロは原作とは違い、痛めつけられる方に目覚めましたwww




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