インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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お待たせしました。
皆さん気になる、前回から始まる戦闘回です。
一夏達は、黒い影の正体は、トーナメントの行方がどうなるのか……
楽しんでいただければ、幸いです(;´∀`) 


形となる悪意

「何が、起きた!」

「わ、わかりません!?レーダーには何も……。

 皆さん!誰でもいいから返事をしてください!!!」

 

一夏達がアリーナから消えた直後、管制室は騒然となっていた。

自分達の目の前で、何もない空間からミサイルが飛び出ただけでなく、

アリーナにいたメンバーが全員消えたのだ。

想定外すぎる事態に、管制室はパニック寸前である。

 

「管制室、聞こえますか!緊急事態です!」

「メイザースか?緊急事態はこちらも……」

「た、大変です!!!」

 

内心、一番パニックの手前であった千冬はエレンの通信に苛立ちを覚えるも

その言葉に引っかかるものを感じ、冷静さを少し取り戻す。

それと同時に、真耶が切羽詰まった声を上げ、エレンと同じ言葉を発した。

 

「「IS学園に巨大な飛行物体が接近しています!!」」

 

 

 

IS学園に向かって突如としてその姿を現したのは、大型の爆撃機であり、

その機首に一つの影が佇んでいた。

飛行による突風を意に介さず、両腕を組む様は戦士でありながら王者の風格を漂わせていた。

 

「あまり気が進む策ではないが、仕方あるまい……。

 魔弾戦士達以外の者達のお手並み拝見だな――」

 

爆撃機と共にIS学園へと近づいていくその者は薄黒い鎧を纏い、右腕には腕と一体になっている

砲門、足には高速移動を目的としたローラーが、背には羽のようなウイングが付いており、

目に当たると思われる部分はバイザーで覆われていた。

人に近い形をしているが、人間でないことは明らかであり、その体からは闘気があふれ出ていた。

 

「まずは軽く、50機と行こうか?

 さあ――ゆけ!!!」

 

組んでいた右手を前に突き出すと、爆撃機のハッチが開かれISとほぼ同じサイズの

小型戦闘機が次々と発進していく。

戦闘機は、凄まじいスピードで一気にIS学園に接近すると人型へと変形する。

 

「マイナス結界を展開したりこれといった特殊能力はもたないが、

 空戦能力に優れたスカイバトラー。

 魔物のように生物のような柔軟な行動はできんが、その分連携や制圧力に長けた

 これにどう戦う?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「……了解しました。皆、聞こえる?

 緊急事態につきIS使用許可が、下りたわ。

 まずは、来賓と一般生徒を直ちにシェルターに避難。その後、メイザース先生達と

 共にこちらに接近する未確認の機体の迎撃を行うわ。いいわね?」

「「「「はい!」」」」

 

ピットで試合のために待機していた、全学年の専用機持ちは全員楯無の指示の元

行動に移り始めていた。

一夏達が消えたことで、大半が崩れ落ちたり呆然としていたが、秘密裏に伝えられた

宇宙ファイターXから、彼らは異空間に飛ばされただけで無事だとわかり、

もちなおしていた。

 

「セシリア。あんた大丈夫なの?さっきまで、真っ青だったじゃない!」

「ご心配なく、アリサさん。このセシリア・オルコット。

 代表候補生として、責務は果たしますわ!」

「どないしたん、鈴ちゃん?か、顔が怖いで……?」

「ふふふふふ……これで、トーナメントは中止よね?

 カズキから受けた特訓の苦労が全部、水の泡……ふふふふふ」

「マナーのなっていない人に、どういうものか叩きこまなきゃ……だよね?

 シャルロットちゃん?」

「もちろんだよ、すずか♪早く避難を終わらせて、礼儀を教えてあ・げ・な・きゃ・ね♪」

「かんちゃ~ん。気をつけてね~」

「うん。本音も早く避難して」

 

簪を除いた一年の専用機持ちが、この騒動でトーナメントが中止となって

今日まで行ってきたカズキ考案の(地獄の)特訓が意味を成さないと察し、自分達に

ケンカを吹っかけて来た者達にその鬱憤を晴らそうと燃えていた。

それを感じ取ったのか、爆撃機に乗っていた者は背筋に得体の知れない冷たいモノが

流れるのを感じた。

 

 

 

「さてと、これであいつらや千冬ちゃんへの連絡は良し……。

 それにしても、ESミサイルとはねぇ~」

 

カズキは敵が現れたのを察知すると、亡国機業(ファントム・タスク)からの侵入者達全員の意識を瞬時に刈り取り、ワープキーを使ってその場から転送すると、宇宙ファイターXの姿となって

千冬達に一夏が無事なことを知らせた。

侵入者を撃退しつつ、風術で一夏の試合を見ていたカズキは、彼らが消えた原因であるミサイルの正体と違う空間に飛ばされただけなのを見破っていた。

 

「ESミサイル?なんすか、それ?」

「空間転移するミサイル、つまりワープキーの能力があるミサイルだ。

 しかもミサイルである分、離れた場所からの攻撃や奇襲にも使える。

 最も、理論はできていても技術的に課題がいくつもあるから、

 俺達はまだ使えないけどね。

 今回はそれを使って監視の目を潜って、一夏達がいる場所に転移し更にあいつらを

 アリーナごと異空間に飛ばしたんだ」

「飛ばしたって……そんなのどうやって助ければ!?」

 

カズキはウェイブに一夏達が消えた原因を教えると、声を荒げるウェイブを手で制し、

こちらに向かってくる敵がいる方角へと顔を向けた。

 

「一夏達が消えたアリーナに行けば、何か手掛かりが分かるだろうけど、

 残念だがこちらにやってくる敵がそれを許しそうにない。

 ――どうやら、先兵に遣い魔もいるようだし……。

 お前は、遣い魔の迎撃に当たってくれ。

 俺は、ユーノに弾をこっちに送ってもらうよう連絡したら、空の方を叩く」

「叩くって……一夏を見捨てるんですか!」

「違う。一夏達のことは、現状――あいつら自身に何とかしてもらうしかない。

 な~に、こんなことでやられるようなヤワな鍛え方はしてないさ」

「……わかりました」

 

カズキは、ウェイブに指示を出しグランシャリオを纏って、そこから離れるのを

見送ると仮面の下で渋い顔をした。

 

「……とは言ったモノの、今回はちょっと厳しそうだなザンリュウ――」

『ああ。ビシビシ感じるぜ。とんでもない気配を……』

「“あいつ”が来れば空の方は大丈夫だけど、この気配の主を俺達が

 どうにかできるかが、事態を左右するな……気合い入れていくぞ!」

『おうよ!』

 

カズキはそう言うとしゃがみ込み、空高く跳躍した。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「リュウケンドー?一夏、あいつは何を言って……」

「明、箒を頼む!」

「気をつけろ、一夏。奴は、ただものじゃない!」

 

ラウラに纏わりついた黒い煙と相対した一夏と明は、今までの敵とは違うことを

悟り、打鉄のシールドエネルギーがゼロとなって無防備に近い箒を庇うように移動し、

雪片とアサルトライフルを構える。

 

「“私の力を察し、瞬時に戦えぬ者を守り、いつ攻められてもいいようにする。

 やはり、油断できませんね……ですが――

 あなた方は、人間の愚かさを知らない!”」

 

ラウラと共に言葉を発する黒い煙の“何か”は、そう言うと完全にラウラを

シュヴァルツェア・レーゲンごと包み込んで、一夏達から見えなくする。

 

“さあ、さらけ出しなさい。あなたの秘めた願いを!

欲しいのでしょう?あなたを暗闇から救った織斑千冬のような『強い』力が!”

(やめろ!私の中に……入ってくるな!)

“怖がる必要はありませんよ?これは比類なき、唯一無二の力……。

あなたの敵を全て倒すことができるほどの……”

(違う違う違う!!!力は欲しい……でも、それは私が欲しかった力じゃない!)

 

煙の中で、“何か”は甘い誘惑をラウラに語りかけるが、ラウラはそれに必死に抵抗した。

以前の自分なら、容易くその誘いに乗ったかもしれないが、今は自分が目標として憧れた力が

なんなのかわかり、この誘いで手に入る力とは全く別のものであることを知っていた。

 

“それでは……また戻るのですか?あの暗闇の中に――”

(っ!!!?)

 

ラウラの脳裏に、“出来損ない”の烙印を押されてしまった時の記憶が駆け巡った。

 

「あああああっ!!!」

「っ!」

「ラウラ!?」

「何をした、お前!」

 

煙から聞こえてきたラウラの悲鳴に、一夏が煙に向かって怒鳴ると、煙は

だんだんと人のような形を取り始めた。

 

“別に、特別なことはしていませんよ?

心に負った傷というのは、克服できたと本人は思っていても簡単には治らないモノ……。

彼女の奥底にあるそれを思い出させ、マイナスエネルギーを生み出して

もらったんですよ……。

ふふふ……光の中にいる日常から、どん底に落とされて生まれるマイナスエネルギーは

極上ですね~”

「貴様!」

「この下種が!」

 

煙が放つ言葉に、箒と明は怒りをむき出しにする。

 

“加えて、この者が纏っているおもちゃにはVTシステムというモノが組み込まれて

いましてね~”

「VTシステム?」

「確か、それは優秀なIS操縦者の動きを再現するシステム。だが、パイロット

 に多大な負担が掛かるため、禁止されているはず!」

“言ったでしょう?あなた達は人間の愚かさを知らないと。

あなた達のように、他人のために自らを盾にしても守ろうとするのが人間ならば、

自らの欲望のために、他者など道具としてしか見ないのもまた人間……。

最も、システム自体は外されていますが、その者にとって計算外なのは、

このおもちゃがVTシステムに対応できるということ……。

つまり、同じように別の何かを再現するシステムを起動すると――このように!!!”

 

形を取り始めていた煙は、徐々に何かを形作りはじめた。

 

――両手の五指は鋭いカギ爪となり

――その肩には、見るもの全てを見透かすような紅い宝石が埋め込まれ

――サソリの尾のようなものが背から生え

――コウモリを思わせる黒い翼を広がせ

――吸血鬼を思わせる頭部

 

ラウラがかつて味わい、自らの欲望のために良心を捨て去った……

人間の悪意が形となって、一夏達の前に立ちはだかった――

 

「な、何だこれは……」

「こんなものが……存在……するのか?」

「これは、ちょっと洒落にならないぞ……」

『(一夏達を隔離した上に、これ程の力で挑んでくるとは!?

 今までの敵と何かが、違う!)』

 

箒は目の前に現れた異形のモノに言葉を失い、明もそれが信じられないとばかりに

体が凍りついたかのように、動きを止める。

一夏とゲキリュウケンは、現れたソレから感じる強さに驚くも、どうやって

戦うかを思案していた。

 

「ふむ……確かめてみなければわかりませんが、感覚は悪くないですね。

 とりあえず、このおもちゃの名をもじって“シュヴァルツ・バイザー”とでも

 名乗りましょうか」

 

シュヴァルツ・バイザーと名乗ったモノは、手を開いたり閉じたりして自身の

具合を確かめていた。

 

「――さて。こちらの準備は、整いました。

 もう既に分かっていると思いますが、私は創生種の一人です。

 私を倒せば、この空間から抜け出すことができます」

「帰る方法を教えてくれるとは、随分気前がいいじゃないか?」

「挑発して、情報を引き出さそうとしても無駄ですよ?

 私の目的は、あなたを倒すことですから……。

 それともう一つ。

 早く私が、取りこんだ娘を助けないと手遅れになるかもしれませんよ?

 これを動かすためのマイナスエネルギーを生み出してもらうために、

 悪夢を見続けていますから……」

「「「『なっ!!!?』」」」

「では――行きますよ!」

 

一夏は、少しでも何かを聞き出そうとするが逆にシュヴァルツ・バイザーが、

何気なく発した言葉に驚きで一瞬体が固まってしまう。

それを狙っていたのか、シュヴァルツ・バイザーは右手を振りかざし一夏達に迫る。

 

『っ!マズイ!!』

「明、箒を!」

「くっ!」

「うおわっ!?」

 

ゲキリュウケンの声に反応して、一夏は明に指示を出し攻撃を回避するために斜め後ろに

後退する。

明も箒を抱きかかえ、同じように回避行動を取る。

そして、その直後にシュヴァルツ・バイザーの拳が地面にぶつかり、ISを纏っている

一夏達を吹き飛ばすほどの衝撃が引き起こされた。

 

「うっ!」

「……このっ!」

「な、何っ!?」

 

吹き飛ばされた一夏達は何とか体勢を立て直すが、箒は目に映る光景に驚きの声を上げた。

シュヴァルツ・バイザーは拳を放っただけで、一夏達と共に飛ばされたアリーナの地面の

3分の1を消し飛ばしたのだ。

 

「ふむ……人間が作ったおもちゃをベースにしているには、パワーも

 とりあえず及第点といったところでしょうか?」

「はっ!」

「明!?」

 

自身のパワーを確認しているシュヴァルツ・バイザーの足元に向かって、明は

サブマシンガンを発砲し、無謀な攻撃に見えた箒は驚きの声を上げる。

 

「こんなもので私を倒せると考えるほど、浅慮ではないでしょう。

 何を狙って……」

「一夏っ!!!」

 

明の攻撃を気にもしないシュヴァルツ・バイザーだったが、その行動に疑問を

感じると明は、一夏に合図すると同時に閃光弾を投げつけシュヴァルツ・バイザーの

目をくらませた。

 

「っ!?そういうことですか!」

「そういうことだ!

 リュウケンキー!発動!」

『チェンジ!リュウケンドー!』

「ゲキリュウ変身!」

 

明の意図を読んだシュヴァルツ・バイザーと同じように目をくらませた箒は、

うっすらと聞こえてきた一夏に目をやると、いつの間に白式を解除したのか

ISスーツ姿となり、巨大な剣を掲げているのが目に入った。

 

「リュウケンドー……ライジン!」

「い、一夏――!?」

 

自分の想い人が特撮ヒーローのような姿になったことで、箒の混乱はピークに達した。

次々と起こる常識を破壊していく出来事に、冷静な思考を保てと言う方が無理であろう。

 

「私の強さも出方も分からない中、まずはISで様子を見ようとしましたが、

 想像を超える事態となり、ISでの対処は困難と判断。そこで、彼が変身するための

 隙を作るために、第一撃ではなくそれを囮とした第二撃を本命とする。

 ……これほどの戦略を一瞬で思いつき、更にそれを理解し互いに信頼し行動に

 移してみせた――見事です」

 

シュヴァルツ・バイザーが一夏と明の連携に感服している間、一夏ことリュウケンドーは

ゲキリュウケンを構え、ゆっくりと慎重に横に移動しながらシュヴァルツ・バイザーに

接近した。

 

『リュウケンドー。急がなければならないが、焦るなよ』

「わかっているよ……。こいつは、がむしゃらに突っ込んで勝てる相手じゃない――!」

 

シュヴァルツ・バイザーの強さを感じたリュウケンドーは、初手から魔弾キーを使って

攻めていきたいのだが、魔弾キーを使う隙が見つからなかった。

それに加え、先ほどの明との連携も、二度は通じないと二人は理解していた。

迂闊に連携をしようものなら、シュヴァルツ・バイザーはためらうことなく明と箒を

攻撃するだろう。

 

「普通ならこのまま攻めればいいのですが、こちらも力任せな攻めを

 したら、どうなるかわかりませんね~。

 ……慎重に、確実に攻めて……倒させてもらいます!」

「やれるもんならな!」

『いくぞ!』

 

ゲキリュウケンの掛け声を合図に、リュウケンドーはシュヴァルツ・バイザーへと

走り出す――

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「はあぁぁぁっ!」

「こんのっ――落ちろぉぉぉぉぉっ!!!」

 

IS学園より数十キロ離れた海上では、昼間にも関わらず僅か数秒ほどだけ咲く

火の花がいくつも咲いていた。

襲撃が起きた時の防衛のために空中で待機していたエレン達は、爆撃機から発進された

スカイバトラーを視認すると迎撃に向かうが、苦戦を強いられていた。

小型の戦闘機が、人型に変形したのも驚愕だが、襲いかかってくる数以上に

連携が恐ろしく精密なのだ。

最初は十数人いた教員部隊も、瞬く間にその数を半数ほどに減らしていた。

教員部隊は、全員がかつて真耶のように代表候補生だったりそれに準ずる実力者ばかり

なのだが、敵は人間なら見せる感情の機微というのを一切見せない機械に加え、自分達の

数倍の数、初めてと言ってもいい命をかけた実戦の空気、それらに呑まれ本来の実力を

発揮できず何人もの教員がスカイバトラーに落とされていった。

奇しくもカズキが懸念していたことが、現実となってしまったのだ。

幸い、ISの絶対防御によって最悪の事態は免れて海に浮いている状態だが、

機体は戦闘不能までに破壊され、教員の傷も浅くはなかった。

 

残った者達は、いち早く戦況の悪さを理解したエレンと燎子らの指示によって、

応戦しているが、スカイバトラーは破壊されると爆撃機から順次に発進され一向にその数を

減らさなかった。

 

「ちぃっ!次から次に……一体どんだけいんのよ!!!」

「もうへばったんですか……?だらしがないですよ、燎子」

 

現在、エレンが前面に立ち燎子が指示を出す形で戦闘が行われていた。

二人はスカイバトラーが見せる精密で正確な動きを、逆手にとり応戦していた。

状況に対応した動きを見せるので、誘導と予測がしやすいのだ。

しかし、一機を落とせば三機が発進されるので、体力やエネルギー以上に精神がかなり

消耗していた。更に――

 

「言いたくないけど、泣きごとも言いたいわよ!あんたもわかってるでしょう?

 あれに乗っている奴、下手したら千冬よりもヤバイわよ……」

「……そうですね。せめて、私の専用機があれば――」

 

ハイパーセンサーで確認した、爆撃機の機首に佇んでいる者の存在が彼女達に

重くのしかかっていた。

ただこちらを見ているだけだと言うのに、感じる強烈なプレッシャーが奴の強さを教えていた。

終わりの見えない戦闘に、ISよりも先に自分達がまいるかもという思考が脳裏をよぎった時、

閃光と見えない衝撃がスカイバトラーを撃墜した。

 

「今のは!」

「メイザース先生!日下部先生!」

「遅くなりました!」

「みなさん!」

「観客達の避難がほぼ終わったので、あちらはダリルちゃんとフォルテちゃんに

 任せてきました♪」

「前に襲ってきた、一つ目の怪人も出てきたけどリュウガンオーとグランシャリオも

 駆けつけてくれたから、こっちの応援に来ました」

 

エレン達の元に、援軍として楯無達専用機持ち達とトーナメントで生徒が訓練機を使うために

上空の防衛から外れていた教員達がその訓練機を纏って駆け付けた。

そして、援軍が合流すると同時に爆撃機の方でも爆発が起きた。

 

「今のは!?」

「うわー。あいつも来たんだ……」

「そんなげんなりした声を出さないの、鈴ちゃん。

 あの人、強いんだからあっちは任せましょう。

 さぁ、みんな――行くわよ!」

 

楯無の合図と共に、第二ラウンドの幕が上がった。

 

 

 

「……こちらの損害は、スカイバトラー46機。

 魔弾戦士以外の戦士も、なかなかやるな。

 既に落とされた分も含めて3分の一を出撃させたが、勝ちに行くにはもう100機ほど、

 搭載するべきだったか?

 奴らの援軍も来たがこちらは――お前の相手をするとしよう!!!」

 

爆撃機の上から戦闘を見ていた者は、エレン達の奮戦に感心しながら唐突に右手に剣を

取り出すと何もない空間を振り抜いた。

金属がぶつかり合うような甲高い音が響くと、何かが爆撃機に着地した。

 

「リュウジンオーか!」

「違う。私は――宇宙ファイターX!」

「ふふふ、XだろうがYだろうが構わん。

 魔弾戦士と戦うのを心待ちにしていたのでな……楽しませてもらうぞ!」

「俺達が目的なら……なんで結界も張らず、こんな派手なことを?」

「こちらにもいろいろと考えが、あるのでな……。

 だが、目的は達したのも同然!

 俺は創生種の一人、クリエス・ベルブ!

 貴様の命……貰い受ける!!!」

「(思っていた以上に、やばいなこいつ……。最初から全力で行かないと!)

 そう、うまくいくかな?

 俺は、ともかくリュウケンドーやあいつらを舐めていると痛い目に合うよ?

 ――剃(ソル)!」

 

宇宙ファイターXは、腕についている龍を象ったブレスレットになっている

ザンリュウジンを本来の双頭の斧の姿に変えるとベルブの剣とぶつかり合う――

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「うわぁぁぁっ!」

 

飛ばされた異空間で、リュウケンドーはシュヴァルツ・バイザーの圧倒的なパワーに

苦戦を強いられていた。

 

「ふん!!!」

『避けろっ!』

「っ!?」

 

シュヴァルツ・バイザーの拳を受けて、弾き飛ばされたリュウケンドーに休む暇を

与えることなく追撃が襲いかかる。

 

「……まずい。私達は、奴の策に嵌ってしまった……」

「どういうことだ、明?」

「さっき、奴が地面を砕いたのは、自分のパワーを見せつけるためだったんです。

 リュウケンドーは……一夏は、相手の攻撃をかわしたり受け流したりして

 反撃するカウンタータイプの戦い方ですが、無闇に相手の攻撃をかわしたら

 かわした攻撃で足場が破壊されてしまう……。

 空中戦に持ち込もうにも、ISでは勝ち目はない。

 だから、自分の攻撃をかわさせないように奴は――」

「そ、そんな!」

「それに奴の体内には、ラウラが捕らわれている。

 あの強固な装甲を破壊できる程の強力な攻撃を仕掛ければ、ラウラも……!」

 

明は、シュヴァルツ・バイザーの攻撃で地面を破壊しないように、直撃を避けながら

なんとか攻撃を受け流そうとするリュウケンドーの姿を見て、悔しさで拳を握りしめる。

 

「だったら、私達も加勢を!」

「だめです。それこそ、最悪の悪手です」

「何だと!」

「下手に攻撃をしかけようとしても、奴は瞬時にこちらに矛先を

 変えて攻撃してくるでしょう。

 一夏が、庇うとわかっていてね……」

「まさか、私と明は!?」

「ええ、私達もラウラ同様に奴からしたら人質なんですよ。

 こうやって、私達をこの空間に飛ばしたのも、戦うフィールドを浮島のように

 したのも全て奴の策……!」

 

明の推測に、箒は言葉を失ってしまう。そもそも箒が纏っている打鉄は、エネルギーが

尽きているため、まともな戦闘はできないが、それでも自分達が足手まといの人質という

のは言葉にできないほど悔しいものである。

 

「落ち着いてください。今の話は、“下手に”攻撃したらです。

 だったら、下手に攻撃しなければいいのです」

「それは一体……」

「箒……あなたは、一夏のために命を賭けれますか――?」

 

 

 

「くそっ!キーを使う隙が無い!」

『せめて、奴が違う攻撃をしてくれればっ……!』

 

時折、衝撃波や光線といった遠距離攻撃をしかけているがシュヴァルツ・バイザーは

主に殴る蹴る等の肉弾戦で攻撃を行っていた。

別段変わった攻撃をしているわけではないのだが、リュウケンドーは

確実に追い込まれていた。

明が言っていたように、今までにない強力な拳をかわせないようにすることで

ダメージを蓄積させているのだ。

その上、魔弾キーを発動させる隙を与えない止まない攻撃に加え、

捕らわれたラウラを気遣って、リュウケンドーは思いきった攻撃ができないでいた。

 

「あなたを倒すには、変に練った策よりも単純な……攻撃をかわせないようにする方が

 効果的と推測しましたが想像以上の成果です。

 後は、私達が確実に勝利できる体力勝負で――攻め続けさせてもらいます!!!」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「(クラス代表戦の時に、戦ってくれたグランシャリオって人が蹲っている……。

 あっちでは、リュウガンオーとはやてちゃんが何か叫んでいる……)」

 

なのはは、どこか他人事のように目の前のことを見ていた。

自身のバリアジャケットがボロボロになりながら――。

 

「(これは、夢?

 夜中に飛び起きてしまう……悪い夢なの?)」

「なのは!しっかりして!」

「フェイ……トちゃん?」

 

呆然とするなのはを、同じようにバリアジャケットをボロボロにしたフェイトが

肩を掴んで揺さぶる。

 

「キュァァァッ!」

 

その後ろで、体が五角形で鳥のような顔をした魔物が叫び声を上げていた――

 

「(記憶が、一時的に飛んでいるの?)

 なのは!なのは!」

「ぼさっとするな!!!」

 

リュウガンオーは怒鳴りながら、なのはとフェイトの頭を押さえて倒れ込むと、その上を

魔物が通り過ぎた。

 

「そ、そうだ。私達は……」

 

なのはは、自分達の上を通り過ぎた魔物の姿を見て記憶が戻ってきた。

緊急事態の警報が鳴った後、観客席にいたなのはとフェイトは教師陣と共に避難誘導を行い、

その後念話を使ってはやてと合流をした。

目の前で消えた一夏達とこちらに向かってくる謎の飛行物体に、対処するため

人目が付かない場所でセットアップし、正体がばれないよう変身魔法で姿を変えようとした

ところを、オルガードの結界のように謎の結界に取り込まれてしまったのだ。

そこで、なのは達を待ち受けていたのは謎の魔物であり、こちらを見るや否や

攻撃を仕掛けてきたので、戦闘となった。

しかし、戦闘は一方的なものとなった。

魔物はなのは達の魔法を吸収したり、跳ね返したりしてきたのだ。

それだけでなく、パワーも相当なもので体当たりやくちばしの攻撃で、なのは達を苦しめた。

そんな彼女達の元に、リュウガンオーとグランシャリオもこの結界を感知したのか、

どこからともなく駆け付けてくれたが、状況は変わらなかった。

彼らの攻撃も魔物の弾力ある体には通じず、ダメージを与えることができなった。

 

「まだ行けるか、グランシャリオ?」

「もちろんだぜ!あの鳥野郎……から揚げにしてやる!」

『否。親子丼を推奨する』

「よっし!問題なしだな!後、あれは焼き鳥にするぞ!」

「元気やな~流石、男の子ってとこやろか?

 わたしは、照り焼きにするで!」

 

震えるなのはとフェイトとは逆に、

押されながらも彼らの士気は折れるどころか高まっていった。

 

 

 

 




今回はいろんな敵を出しましたが、敵側の方が一夏勢よりクロスオーバー
をしていることに(汗)

まず、爆撃機に乗っていたクリエス・ベルブは『小さな巨人 ミクロマン』
に登場したアーデンダークのような姿です。強者と戦うことを喜びとする武人で、創生種の幹部の一人です。
自分達の目的のためなら仲間が提案したまどろっこしい策もします。
そんな彼が、率いていたのは意思を持たない機械兵スカイバトラー。
ISなら撃破可能ですが、機械であるため人間以上の精密な動きと計算されつくした連携で敵を淡々と追い詰めます。
『勇者警察ジェイデッカー』でジェイデッカーが初めて戦ったフライトバトラー。もしくは、マクロスシリーズのバルキリーを想像してもらえれば。

一夏と相対した黒い煙は、クリエス・ベルブと同じく創生種の幹部ですが今回はラウラに憑依する形で、彼女の心の傷を利用して登場。
現れた姿はこちらも同じく『小さな巨人 ミクロマン』に登場する
アクロボットマンのヘルバイザーです。
VTシステムに対応できるシュヴァルツェア・レーゲンに似たようなシステムを
使うことで出現しました。
明が言っていたように、何重にも練った策で一夏を追い詰めます。

最後になのは達と戦う魔物は、丸わかりだと思いますが次回で。

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