インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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今回、細かいとこで捏造設定が出てきます。

感想をくれる皆さまには、感謝感激ですm(_ _)m


予想もしない伏兵

千冬とカズキによる壮絶な鬼ごっこ(恋人のじゃれあい?)をよそに、自己紹介は順調に進み、ちょうど最後の一人が終わったところでSHRの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

そして、それを合図に二人の鬼ごっこも一応の終わりとなり、カズキが着ぐるみを脱いでななめに斬られて半分になった教卓に立った。

 

千冬は肩で息をしているにも関わらず、ケロリとしている。

 

「それじゃあ、改めましてみんな。

 俺は、碓氷カズキ。

 今日から、ISの実技実習で織斑先生の補佐をすることになったからよろしく。

 まあ、ISを動かせない男が補佐なんかできるのかって疑問もあるだろうけど、

 それは実習が始まってからのお楽しみということで♪

 

 織斑先生が俺のことを知らなかったのはさっき言ったように、千冬ちゃんの

 驚く顔が見たかったからさ☆」

 

そう言いきった瞬間、再び出席簿が振り下ろされ、カズキはそれをヒラリとかわした。

 

「はぁはぁ。

 と、とにかくこれでSHRを終わる。

 それと分かっていると思うが……」

 

これ以上、カズキに余計なことを言わせないためにSHRの終了を宣言する千冬だが、その目は雄弁に語っていた。

 

――コイツのことを聞いてきたら……ワカッテイルナ?――と

 

瞬間、二人のことを知っている以外の面々はすごいいきおいで首を縦に振った。

初日にも関わらず、クラスのシンクロ率は100%超えのようだ。

 

 

 

 

 

「では、これで一時間目を終了します」

 

ここIS学園は、将来国を担う人材育成の場であるため入学初日から授業がある。

 

一夏が在籍する一年一組に一時間目が終わった現在、担任である千冬の姿はなく山田先生が授業を行っていた。

 

 

何故ならSHR後、

 

「それじゃ、他のとこにも挨拶してくるから。

 俺はこれで♪」

 

とカズキが言い残し教室を去ると一夏が千冬に尋ねたのだ。

 

「ねえ、千冬姉?

 カズキさん、このままほっといていいの?」

「織斑先生だと、何度言えば……。

 それに一体、何を言って……」

 

瞬間、千冬の脳裏に自分とのあることないことを言っているカズキの姿がよぎった。

そして、とてもスーツを着ているとは思えないスピードで教室を飛び出していったのだ。

 

唖然とするクラスメートを余所に、一夏は一人ぼやいた。

 

「まっ、俺がこう言うことが本当の狙いかもしれないけど……」

 

それを証明するかのように授業中、どこからか怒声とそれを煽りながら笑って逃げるような人物の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

そして何とか、嵐をやり過ごした一夏だが、彼を囲う視線の数はSHR前の比ではなかった。

 

ただでさえ、恋に憧れる花の十代乙女。

女の園であるここIS学園では、恋とは無縁の学園生活だと思ったところに現われた男性操縦者に、勝ち組となって青春を謳歌しようと意気込む子も多かった。

更に、憧れの千冬の弟ということからその数はとどまることをしらなかった。

 

余談だが、千冬にやったからかいを見て、

内心“是非私もいじめて~”という子もいたりする。

 

 

「う~ん」

 

IS学園への入学前に配布された参考書に顔を隠しながら、

一夏は視線を左右隣に移していた。

 

そして、視線を移した先にいた女子は、恥ずかしさからか慌てて目をそらし、一夏を見ていたことをごまかそうとした。

 

「(あの~、ゲキリュウケンさん?

 ホント、どうにかなりませんかね?)」

『(無理だ)』

「(そんな、即決でズバッと斬らずに何とかしてくれ!)」

『(……ガンバレ♪)』

「(この人でなし!)」

『(人ではないからな)』

 

何とも言えない空気の中で、先ほどよりも切実に相棒のゲキリュウケンに助けを求めるものの、如何に神秘の力を宿した彼でもどうしようもないと斬って捨てられ、カズキと千冬のやりとりのようなコントが二人?の間で繰り広げられていた。

 

そんな人には見えないやりとりをしている一夏を、興味本位とは別の視線を送っている者たちがいた。

 

「えらい人気者やね、彼」

「ははは、そうだね」

「にゃははは」

 

からかうような感じで茶化す、茶髪でショートカットの少女八神はやてがそう言うと、金髪でストレートロングの少女フェイト・T・ハラオウンと栗色でサイドポニーテールの少女高町なのはは、苦笑した。

 

「何やってんのよ、アンタたちは」

「久しぶりって言うほどじゃないけど、久しぶりだね。

 はやてちゃん、フェイトちゃん、なのはちゃん♪」

 

三人が一夏のことを観察していると、ヒソヒソと一夏への感想をもらしていた金髪で勝気な印象の少女と穏やかな空気を纏った紫髪の少女が話しかけてきた。

 

「あっ!アリサちゃん、すずかちゃん!」

「あっ!じゃっ、ないわよ!もう!」

「アリサちゃん、落ち着いて~」

 

彼女たちの名はアリサ・バニングスと月村すずか、なのは達三人とは小学生からの付き合いのある友人でありなのは、フェイト、はやてが魔法を使う魔導士であることを知っている人物でもある。

 

「全く!

 中学を卒業して、しばらくは会えないかと思ったらこんなとこにいるし!

 いたらいたで、私たちに挨拶にも来ないし!」

「ごめんな~アリサちゃん~

 急なことやったから、かんにんなぁ」

「まぁまぁ~。

 アリサちゃんは、なのはちゃんたちと高校生活を送れるからうれしいんだよね~」

「ちょっ!ばっ!

 何言ってんのよ、すずか!」

 

アリサが、なのは達に文句を言うがすずかに本心をバラされテンパる。

見ているなのは達は、楽しそうに笑っている辺りこれが彼女たち5人の普通のようだ。

 

「と、とにかく!

 アンタたちがここにいるのは“アレ(魔法)”関係なんだろうけど、

 手伝えることがあったら、遠慮なく言いなさいよ。

 小学生の時みたいに、内緒にしていたら承知しないわよ!」

「そこは、私も同じだね。

 三人とも私たちの大切な友達なんだから」

「アリサちゃん、すずかちゃん……」

「ありがとな、二人とも」

 

アリサとすずかの変わらない優しさに、感謝する三人だった。

 

「まあ、アンタたちと同じように一言言わなきゃいけない子は、

 もう一人いるけどね~」

 

ある一人の少女を見て、アリサは獲物を見つけたような目で不敵に笑った。

 

 

 

 

「(どうすればいいのだ!)」

 

一夏の幼馴染みである箒は、頭を抱えて悩んでいた。

 

彼がこのクラスにいるとわかると、どうやって再会の言葉をかけようかと悩んでいたが、先ほどの自己紹介で他にもよく知る友人たちがいるのがわかったのだ。

 

「(なのは達にも会えたらと思っていたが、まさかこうもあっさり叶うなんて/////。

 でも、言えない。

 

 一夏のことしか目に入らなくて、気がつかなかったなんて――)」

 

そう想い人が目に入った瞬間、彼のことで頭が一杯になり自己紹介の瞬間まで彼女たちのことに気がつかなかったので、自己嫌悪に陥っているのだ。

 

「(また会おうと約束していたのに、何をやっているんだ私は!

  怒っていないだろうか?

  なのは達はそんなことで怒らないだろうが、いやしかし!)」

 

彼女は一途に一人のことを想える子なのだが、一端それが負の方向に考え行くとなかなかその流れから脱することができないのだ。

 

「とりゃっ!」

「~~~~~っ!な、何が?」

 

そうやって、箒が悩んでいると突如に頭に衝撃が走った。

 

「な~にやってんのよ?アンタは」

「ア、 アリサ?」

 

痛む頭をさすりながら顔を上げると、そこには懐かしい友の顔があった。

 

「久しぶりね、箒。

 で?小学校以来の友達に挨拶もしないで何やってんのよ?」

「い、いや。そ、それは~」

「まっ。アンタのことだから?

 昔、言ってた一夏って子と再会できたけど、私達には気がつかなかったから

 どうしよ~とかなんだろうけど?」

「ど、どうしてそれを!」

「なめんじゃないわよ!

 それぐらい、わかるに決まってるでしょう!

 友達なんだから!」

「っ!」

 

友達なんだからという言葉に、息をのむ箒。

 

「そうだよ、箒ちゃん」

「どんだけ、離れてようが友達やって言ったやん♪」

「すずか、はやて」

 

会ったときから変わらない、彼女たちに箒は視界が滲んできた。

 

「久しぶりだね。箒ちゃん」

「なのは……」

 

最後に荒れていた自分の世界に優しい光をくれた友人に再会し、

箒は静かに涙を流した――

 

「はいはい。

 湿っぽい空気はここまでにして。

 皆、気になっているのは別ことでしょう?

 箒。やっぱり彼がアンタの言ってた初恋の子なの?」

 

アリサが皆を代表して、気になっていることを箒に問いかけた。

 

「なっ!ア、アリサ!ななななな何を!」

「忘れたとは言わせないわよ~

 お泊まり会で、カミングアウトしたじゃん♪」

「あっ!それ、私も気になってた♪」

「す、すずかまで~」

 

友達の中に現在進行形で恋をしている者がいれば、

必然的に話題はコイバナにシフトするのは女の子の性なのか。

 

それが、転校して分かれることになって再会したという運命的なものなら、なおさら興味は倍増のようだ。

 

「ねぇ?アリサ、すずか?」

「何?フェイト?

 今、取り込み中よ!」

「その織斑くんに、誰か話しかけているんだけど?」

「なのはも、後にして……

 はぁっ!?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「(さてと。

 他の子達は、まだ話しかけられないみたいだし今がチャンスだね!)」

 

戦場に行くかの如く、意気込む彼女の名はシャルロット・デュノア。

その空気は武人のそれと呼んでさしつかえなかった。

 

「(他の子よりもリードするためにも先制攻撃は大切だよね!

 いろいろと、戸惑っているみたいだし、これで相談相手になれれば、

 一気に距離を縮められる!

 そしたら……イヤン、もう♪)」

 

頭の中は武人のそれとは程遠い、ピンク一色だったが。

 

 

ここで一つ、戦場における知識を紹介しよう。

 

相手の戦力が未知数だったり、自分のものより上だった場合は、自分のペースに巻き込むために奇襲による先制攻撃が有効である。

そして、その際に重要なのは機を逃さないことである。

 

早ければ自分が返り討ちに合ってしまい、

逆に遅いと誰かにその機をかすめ取られてしまう。

 

えっ?ここは学校だから、そんな戦場の知識はいらない?

いえいえ、よく言うでしょう?

恋は戦だと。

 

今回シャルロットが犯したミスは策に溺れて、同じ考えを持っていた者を見逃していたことでしょう。

 

もっとも、その子がそんなことを考えていたかはわかりませんが。

 

「ちょっと!

 織斑くんに誰か話しかけてるけど、誰!あの子!」

 

その声に、我に返るシャルロットだが、時は既に遅かった。

 

「えっ?

 えええぇぇぇ!!!?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「マジで何とかしてくれ~」

 

初日でこれで、これから大丈夫なのかと一夏は悩んでいたが、そのため彼は自分に近寄る者がいることに気付かなかった。

 

「大丈~夫?

 おりむ~」

「うん?」

 

一夏が声の方に振り向くと、そこにいたのは眠そうな目をして、普通のものよりも袖が長い制服を着た少女だった。

 

「君は確か、あの時の」

「うん。布仏 本音だよ~

 あの時は助けてくれてありがとね、おりむ~」

「ははは。助けたのは俺の仲間だけど、どう致しまして。

 ところでおりむ~って?」

「へへへ、私が三日三晩寝ながら考えた名前だよ~

 いいでしょう~」

「ははは、寝ながらって」

 

楽しげに会話するその光景に、

皆大いに慌てるが最も慌てているのは箒とシャルロットだった。

 

「いいいいい、一体これはどういうことだ!?」

「ありゃ~

 どうやら、織斑くんと知り合いやったのは箒ちゃんだけやなかったんやな~」

「のんきなこと言ってる場合じゃないわよ、はやて!

 完全に出遅れてんじゃない!」

「でも、それってアリサとすずかが箒に詰め寄ってたからじゃ……」

「にゃははは、そうだよね~」

「うっさいわよ、そこ!」

「落ち着いて、アリサちゃん。

 大事なのは、こっちも早く話しかけることだよ!」

 

なのは達5人と箒は、予想もしない事態に軽く混乱していた。

 

「誰かな~?あの子は?

 一夏もなんか楽しそうだし、フフフ……」

「ヒッ!」

 

シャルロットの周りの子は、突然彼女から放出された黒いオーラのようなものに恐怖を感じていた。

 

慌てふためく恋する乙女たちだったが、

その所為で一夏に近づく新たな人影に気づかなかった。

 

「少し、よろしいですか?」

「えっ?」

「ほぇ?」

 

談笑していた一夏と本音が振り向くとそこにいたのは、千冬と同じように黒いスーツを

その身に着た金髪の女性だった。

 

「半年ぶりになりますかね?一夏」

「エ、エレン姉!?」

 

再び、思わぬ人物と再会して呆然とする一夏だったが、周りの者たちは本音がしゃべりかけた時とは違う意味で騒然となっていた。

 

「ちょっ!あれって、エレン・ミラ・メイザース!!!?」

「うっそ~! 世界大会で唯一、

 千冬様と互角以上に戦ったお姉さまが、何で織斑くんに話しかけてるの!?」

 

 

 

エレン・ミラ・メイザース。

千冬同様、彼女の名を知らない者の方が少ないだろう。

 

千冬がその名を世界に轟かせるきっかけになった、第一回世界大会モンド・グロッソ。

圧倒的な強さで勝ち上がった千冬との決勝戦で、彼女はギリギリの接戦を繰り広げてみせたのだ。

諸事情で、第二回大会では出場しなかったもののその華麗な戦い方に未だファンも多い。

 

 

「何で、エレン姉までここn」

 

そこまで言いかけた一夏の唇にそっと、指が当たり言葉が遮られる。

 

「だめですよ、一夏。

 ここでは、メイザース先生ですよ♪」

「「「「「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」

「「なぁっっっっっ!!!!!?」」

 

突然のエレンの行動に、周囲はパニック寸前である。

 

「私がここにいるのは千冬同様、私もこの学園の教師だからですよ。

 隣の2組の担任をやっています。」

「はぁ~」

「ねぇねぇ、おりむ~

 メイザース先生とはどういう関係なの~?」

 

周りが最も聞きたいことを本音がストレートに、一夏へ問いかけた。

 

「えっと、エレンあnじゃなくて、メイザース先生は千冬姉の友達で

 昔から宿題とか見てもらってたりしたんだ」

「え~っと。それって、昔馴染みのお姉さんってこと~?」

「まあ、そんなものかな?」

 

一夏のその答えに周りは再び騒ぎ出した。

 

「ちょっ!まさか、あんな美人がライバルなの!?」

「これは、予想しなかった展開ね……」

「神よ!どうして、このような試練を我に与えるのですか!」

 

悲観的な意見もあれば、観察に興味深くなったものと様々な反応が返ってきた。

 

「何を騒いでいるんだ、みんな?」

『(そういうとこは、全然成長しないなお前は)』

 

周りの反応に?を浮かべる一夏に、

誰にも聞こえないツッコミをするゲキリュウケンであった。

 

 

「女の子ばかりで、困っていると思ってきたのですが来てよかったですね。

 これから、困ったことがあったら千冬だけでなく“私”にも相談に来てくださいね」

 

私というとこを強調して、エレンは立ち去ろうとした。

 

「(ふふふ、これで頼れるお姉さんを演出できたでしょう。

 まさか、一夏がこの学園にくるとは思っていませんでしたが、

 この千載一遇のチャンス!

 何が何でもモノにしてみせます!)」

 

内心、ガッツポーズをしながら意気込むエレンであった。

どうやら、彼女が一夏の元に来たのは親切心からではなく、他の子達と同じ気持ちからのようだ。

 

「おりむ~はモテモテだね~」

「そうかな?」

「ありゃりゃ~

 これは、かんちゃんも大変だぁ~」

「かんちゃん?」

「こっちの話だよ~

 でも、すごいよね~

 織斑先生だけでなく、あんな美人なお姉さんと知り合いだなんて~」

「でも、あの人は結構……」

「うわっ!?」

 

一夏が本音と話してると、誰かが転ぶような音が聞こえそちらに向くと……。

 

「イタタタ……」

 

話の中心になっていたエレンが転んでいた。

 

「えっ?」

 

それは誰が言ったのか、何とも言えない空気がその場に漂った。

 

――千冬様のライバルのお姉さまが、何もないとこでコケた?

 

 

「はっ!

 コ、コホン/////

 で、では私はこれで/////」

 

そんな空気を察したのか顔を少し赤らめながら、急いでその場を後にしようとしたエレンだが、再びコケてしまった。

何もない場所で――。

 

「おりむ~?

 メイザース先生って……」

「ああ。この人、ISを使えば千冬姉と同じくらいすごいけど、

 普段はかなりのドジなんだ」

「ドジじゃありません!

 ただ、その……う、運動が苦手なだけです!」

 

頼れるお姉さんを演出しようとしてた所為で、余計にドジが強調されていることに彼女は気付いていない。

 

「ふ~ん」

「苦手、ねぇ~」

 

所謂ジト目というもので、エレンを見る本音と一夏。

 

「な、なんですかその目は!

 わ、私はドジじゃないも~ん!

 うわ~~~ん!!!」

 

ジト目に耐えられなくなったのか、素の言葉に戻って泣きながら立ち去るエレンであったがその走りはかなり遅く、さらに三度転んだ。

 

「ううううう~

 そ、それじゃ、自分の教室に戻りますね……」

 

そう言い残し、今度こそエレンは一組の教室を去った。

 

その場は、SHR時に千冬の意外な顔を見た時とはまた違った空気で皆どう反応していいのかわからなかった。

その内、2時間目のチャイムが鳴り皆自分のクラスや席に戻っていった。

 

「では、今から2時間目を始めるが……どうした?お前ら?」

 

カズキとの鬼ごっこが終わったのか、千冬が戻ってきたが皆どうすればいいのかわからずあいまいな笑みでごまかした。

 

ちなみに、千冬はどこからもってきたのか日本刀を所持しているのだが、それにツッコム気力があるものはいなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「え~っと、これがああなって、こうなって?」

「――ですからISを運用するには……」

 

2時間目の授業が始まり、山田先生がスラスラと教科書を読みあげ時折、ノートにペンを走らせる子がいる中、一夏は一人唸っていた。

 

『(大丈夫か、一夏?)』

「(な、なんとかな)」

 

IS関連の勉強は、早ければ小学校高学年から行われるが、基本的にISの整備士を目指しでもしないかぎり男がその手の勉強をすることは、ほとんどない。

 

一夏は、半年前からIS関連の勉強を始めてはいるが彼の勉学方面の成績は悪くもなければよくもないというものであり、加えてこの半年は様々なことが起こり想定していたよりもISの勉強はできなかったのだ。

 

「織斑くん、どこかわからないとこはありますか?」

 

そんな一夏の様子に気付いたのか、山田先生が声をかけてきた。

 

「わ、わからないとこが数えきれないぐらいあるんですが……」

「えっ……。数えきれないぐらいですか……?」

「はい……」

 

一夏の答えに言葉を失う山田先生だったが、そこに千冬が割り込んできた。

 

「織斑。入学前に渡された参考書はどうした?」

「あの電話帳みたいに分厚い奴ですか?

 正直、あれよりカズキさんが持ってきてくれたコッチの方が

 分かりやすかったんですが、いろいろあってなかなか進められなくて……」

「アイツが持ってきただと?」

 

カズキが持ってきたと聞き、

嫌な予感しかしない千冬は一夏が見せたソレを手にとって見てみた。

 

手にとったその本は“これで完璧♪目指せ、ISマスター!”というタイトルであり、金色の奇抜なマスクをした男がサムズアップしていた。

ペラペラとページをめくって中身を見ると、入学前に配布される参考書よりもわかりやすい内容になっていて、千冬の目が驚きで軽く見開かれる。

 

「ははは、驚いた?千冬ちゃん♪」

 

いつから、そこにいたのか突然カズキが教室の後ろに現われた。

今度は着ぐるみを着ずに、スーツ姿だ。

 

「カズキ?なんだ、これは?」

 

そんなカズキの出現に千冬は動じることなく、尋ねた。

 

「それは、初心者でもすぐにISのことがわかるように作った

 俺のお手製の教本だよ~

 欲しい人がいたら、言ってねぇ~♪

 

 今なら初回特典に、このお昼寝している子供一夏と

 それを見守る千冬ちゃんの写真を……」

 

ダダダダダッッッッッ!!!!!

 

瞬間、弾丸のようなスピードで放たれたチョークがカズキに襲いかかるが、

カズキは難なくそれを全てかわした。

 

ちなみにチョークが当たった壁には、弾痕のような痕が残った。

 

「何で、お前がそんなものを持っているんだぁぁぁ!!!?」

「雅さんにもらったんだよ~♪」

「雅さ―――ん!」

 

思わぬ人が絡んでいて叫ぶ千冬だったが、その時一夏はどこから“フフフ♪“と楽しそうに笑う雅の声が聞こえた気がした。

 

「お昼寝しているちんまい織斑くん……見たい!」

「在りし日のお姉さま、是非とも!」

「これも、夏の本に使えるかしらね……?」

「(子供の一夏のお昼寝姿だと!?

 ほ、欲しい!)」

「(子供のころの一夏か~

 かわいんだろうな~♪)」

 

千冬の心情など関係なく、各々の女子が率直に欲望を解放していた。

ここに、欲望のメダルの怪人たちがいれば狂喜乱舞だろう。

 

「そんなお宝しゃsじゃなくて、恥ずかしい写真を小娘どもにやれるか!

 ネガごと私に全て渡せっっっ!!!」

 

千冬も欲望を解放するが、ごまかすようにもっともらしい理由をつけてカズキから写真の回収を図る。

 

「ははは♪

 それじゃあ、俺はこれで♪

 とう!」

 

しかし、そんなのはお見通しとばかりにカズキは窓から逃亡した。

 

補足すると、ここ一年一組は三階に位置している。

そのため……、

 

「「「「「えええぇぇぇっっっ!!!?」」」」」

 

このように皆叫ぶ結果となる。

 

だが、カズキの身体能力が千冬と同じく、常識?ナニソレ?であることを知っている一夏は全く動じなかった。

 

「すいません、山田先生。このPICについてなんですが……」

「この状況で、聞くんですか!?」

 

早くもツッコミ役が、定着しつつある山田先生であった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「やっぱり、素人が一人でやるには限度があるよな~」

 

授業後、カズキの教本や配布された参考書とにらめっこをしながら一人勉強を進める一夏だが、状況は芳しくなかった。

 

そんな一夏を見て、行動を起こそうとするものたちがいた。

 

「チャンスよ、箒!

 ここで、勉強を口実に一気に巻き返すのよ!」

「おい、アリサ!」

「何か、燃えてるねアリサ」

「いろいろと、自分に重ねてるんやろ」

「そこ、うっさいわよ!」

 

煮え切らない箒に対して、元来の世話焼きか自分とそっくりだから放っておけないのか、あれこれと策を考えているアリサだった。

 

「(よ~し、今度こそ話しかけるぞ!

 勉強で困っているみたいだし、僕の出番だよね!

 そうなると一夏が僕の生徒だから……ダメだよ!そんな恥ずかしいこと!

 でも、一夏なら/////)」

 

自らの妄想の世界に浸るシャルロットだが、またも予想外なことでその世界から帰って来ることになる。

 

 

 

「ねぇアリサちゃん、箒ちゃん?」

「なによ、すずか」

「どうしたのだ、すずか?」

「また、織斑くんに話しかけてる子がいるんだけど?」

「「何(ですって)だと!?」」

「!?」

 

すずかのその言葉にアリサと箒、そして偶々耳に入ったシャルロットが驚き一夏の席に目を移すと、金髪をロール風にまとめた子が彼に話しかけていた。

 

「ちょっと、よろしくて?」

 




はい、というわけで多重クロスということでまずは「デート・ア・ライブ」からエレン・ミラ・メイザースさんに出演してもらいました。
出てもらうのは、彼女だけで向こうの世界観とかは関係ないです。

三話でここまでだと一夏が、変身できるのはいつになるやら(汗)

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