インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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今年、最初の更新です。
今回は笑いのテイストにしましたので、楽しんでもらえれば幸いです。


秘密というのはいつかはバレる

「はぁぁぁっっっ!!!」

「うおぉぉぉ!!!」

 

一夏とラウラは、しばしの間互いの得物をぶつけ合うこう着状態となった。

 

「これはどうだ!」

 

ラウラは、一夏がいつもやっている相手の力を利用して距離を取ったり、体勢を

立て直す方法で一端距離を取ると、その場で回転しながら両肩のワイヤーブレードを

時間差をつけて一夏へと飛ばす。

 

「……っと!」

「それで終わりではない!」

 

一夏はワイヤーブレードを雪片で捌くが、ラウラは残りのワイヤーブレードを出し、

合計6本による同時攻撃を行う。

 

「数は多いけど、これぐら……っ!?」

 

6本のワイヤーブレードの攻撃を捌く一夏だが、ラウラがレールカノンの発射態勢に

入るのを見て急いで回避行動を取る。

 

「これで終わりではないぞ!」

 

レールカノンを避けられるのを想定していたのか、ラウラは一夏が回避した先をAICで

止めようとする。

 

「まずいっ!――瞬間加速(イグニッション・ブースト)!」

 

AICの効果範囲がどれほどかわからないが、このままではそれに捕まると察した一夏は

イグニッション・ブーストを使ってAICは発動するより先に効果範囲を通過する。

 

「ちっ!逃げるのは上手いようだが、いつまで逃げられるかな!」

 

ここぞとばかりに、ラウラは先ほどよりも鋭い6本のワイヤーブレードによる同時攻撃を

再び一夏へと行う。

 

 

 

『ありゃ~。一気にラウラが流れを掴んだね~』

「へぇ~。

 昔みたいに単純にAICを使って、相手の動きを止めて倒すんじゃなくて

 他の武器を混ぜたコンビネーションができてるね~。

 おまけに俺が教えた力の受け流しも組み込んでるな」

『コンビネーション?』

「ああ。ドイツに行った時、お前も見ただろうけどラウラはAICならAICだけを、

 レールカノンだけならレールカノンだけで相手を倒そうとして、何かを囮にして

 本命を叩きこむって発想がなかった。

 もちろん、全ての攻撃で相手を倒すようにするのは悪くないけど、それだと

 防御されたり、かわされたりした時、次の攻撃に移る際一手遅れてしまう。

 実力が互角同士だと一手の遅れはかなりデカい。

 だけど、今はワイヤーブレードで攻めつつ時折レールカノンを叩きこんでいる。

 当たればそれでよし。防御されたりかわされても、相手は動きを止めたり態勢を崩す

 からそこをAICで動きを止めて攻撃する。

 連携って奴ができているのさ」

『てことは、一夏の奴かなりヤバイんじゃねぇの?』

「そうだね~。攻撃したくても距離を取られちゃったし、煩悩鳳(ポンドほう)の

 奇襲も通用しないだろうね。

 さぁ、どうする一夏?」

 

管制室でカズキは、おもしろそうに一夏のピンチを見ていた。

 

 

 

「ちょっと、一夏の奴押されてるじゃない!」

「ええ。アリサさんの言うように、厳しい状況ですわね」

「近づこうにも、あのうっとおしいワイヤーブレードを何とかしないとダメね」

「鈴が言ったことができても、それにもたついてたらレールカノンで狙い撃ち……」

「そして、それをかわせてもAICに捕まったらアウト」

「それでは八方ふさがりではないか、簪!」

 

観客席で見ていた箒達は、一夏が今までになく苦戦する様を見て焦る。

 

「落ち着いてください、皆さん」

「しかしだな、明!」

「一夏君を見てみて、箒ちゃん」

「彼、ちっとも焦ってないわよ?」

 

すずかと楯無に促されて箒達は一夏を見てみると、そこには追い込まれて苦しむ顔ではなく冷静に反撃を窺っている戦士の顔が浮かんでいた。

 

「あいつにとって、こんなピンチなんていつものことだと言うことです」

 

どこか呆れてそれでいて絶対の信頼がこもっているように明はつぶやいた。

 

 

 

「これでも……喰らえ!」

「何っ!?」

「「「「「えええぇぇぇっっっ!!!?」」」」」

 

皆が見守る中、一夏は信じられない攻撃を行った。

雪片を槍のごとく、ラウラへとブン投げたのだ。

 

「こんな苦し紛れが……!」

 

意表をついた攻撃だったがラウラには通じずAICによって、投げられた雪片は止められてしまう。ラウラはそのまま、レールカノンを放とうとするがそこで言葉が途切れてしまう。

 

「どっっっせいぃぃぃ!!!」

 

見ると、一夏がワイヤーブレードの一本をその手に絡ませてラウラを自分の元へと

引き寄せていたのだ。

 

「相手に近づけないなら、相手に近づいてもらえばいいのさ!」

「……っの!」

「おりゃぁぁぁっ!」

 

一夏は、ラウラがAICを発動させるためにブン投げた雪片に意識を集中させた隙に

ワイヤーブレードを自分の手に絡ませたのだ。

そして、反撃とばかりに引き寄せたラウラに拳を叩きこむ。

 

「!!!?」

「おりゃりゃりゃ!!!」

「……舐めるなっ!」

 

連続で拳を叩きこまれるラウラだったが、いつまでもやられっぱなしではないと同じように

拳を叩きこもうとする。

 

「甘いぜ!」

「なっ!?」

 

一夏はラウラの拳をしゃがみ込んでかわすと、そのまま逆立ちしカポエイラの要領で

蹴りを放った。

 

「……がっ!」

「剣だけが取り柄だと思ったか?

 生憎と、武器や一つの力に頼りきったらそれが無いと何もできないからって

 いろいろと叩きこまれたんで――ね!」

 

ダメージからふらつくラウラに、一夏は彼女を殴り飛ばすと素早く先程投げた雪片を回収する。

 

「どうした、それで終わりかラウラ?俺に勝ちたいんじゃないのか?」

「負けられない……お前にもあの男にも負けるわけにはいかない……!」

「……なあ。どうして、そこまで俺やカズキさんに勝つことに拘る?」

「決まっている……!

 教官の輝かしい経歴に傷をつけ、堕落させるお前たちは倒さねばならんのだ!」

 

息を大きく乱しながらも、ラウラは立ち上がるとそう言い放った。

 

「……ふぅ~ん?けどさ、それじゃカズキさんにも俺にも勝てないぜ?

 そんな嘘ぱっちの理由じゃな」

「嘘ぱっちだと!」

「ああそうさ!お前が俺達を倒したいのは、そんな理由なんかじゃない!

 もっと単純で、バカらしいけど絶対に譲れないこと……!自分のためなんだよ!」

「貴様っ!!!」

 

一夏は雪片の切っ先を真っ直ぐラウラへと向けて挑発するようなことを言うと、

煽られたラウラはプラズマ手刀を掲げ突貫してきた。

 

「自分の憧れる人が、自分以外の誰かに笑顔にされる……」

「このっ!」

 

先ほどまでとは違いラウラは子供のようにプラズマ手刀を振り回し、一夏はそれをかわしていく。そんな中でラウラの脳裏に、ドイツで見た鬼教官というのを体現したような千冬が優しく微笑む顔がよぎる――

 

「自分が見たことない表情をそいつは、簡単にさせることができる……」

「うるさい!」

 

苦々しく言うが、頬を赤く染め照れ臭そうにカズキのことを語る千冬――

 

「自分にはできないことをあっさりやってのけるそいつのことが羨ましくて、自分から

 その人を取ってしまうかもと考えると怖くなって……」

「黙れぇぇぇ!!!」

 

一夏への怒りではない何かをごまかすようにラウラは、叫びを上げる。

 

「自分の気持ちにはきちんと向かい合わないと、見えるものも見えなくなるぞ?

 大体、経歴とか堕落とか言うけどお前は千冬姉のことをどれぐらい知っているんだよ?」

「何を言うかと思えば、私は全て知っている!

 あの人は何よりも気高く、誇り高い人だ!」

 

プラズマ手刀と雪片がぶつかり火花が両者の間に散る。

 

「そんなのは、誰が見ても思うことだと思うぞ?

 例えば休みの日で千冬姉が、家でどんな風に過ごしていると思う?」

「どんな風に過ごしているかだと!そんなの……」

「いつも昼近くまで寝て、だらしない恰好ですごしているんだ――ぞ!」

 

観客が一瞬声を失うのも気にせず、一夏はラウラを思い切り弾き飛ばし、追撃していく。

 

「IS学園で気を張っている反動か、家だと服は脱ぎっぱなしだし、返事も生返事!

 床で昼寝して足でモノをとるなんてこともしょっちゅう!

 オマケに負けず嫌いだから、ゲームとかで負けるとすっげぇ~ムキになって

 リベンジしてくるし、家事もイマイチだ!

 正直、カズキさんがいなかったらちゃんと嫁にいけるのかどうかも怪しいな!」

「ふざけるな!教官がそんなダメ人間なわけないだろ!」

「そういうダメなところがあるんだよ!千冬姉には!

 典型的な仕事はできるけど、家だとアレないわゆるまるでダメな大人な

 “マダオ”なんだよ!」

 

きっぱりと言い切る一夏に面食らうラウラだったが、それを見ている観客、

特に明達はそれどころではなかった。

背後からヒシヒシと感じるプレッシャーに冷や汗が止まらなくなっているのだが、アリーナーで戦っている一夏はそれに気付かず、管制室のカズキは腹を抱えて笑いを堪えていた。

 

「ラウラ!お前にとって、千冬姉はなんだ!」

「さっきから一体何を……!」

「俺にとって千冬姉は、千冬姉だ!

 世界最強だろうがそうでなかろうが!マダオだろうが!

 自分の気持ちに素直になれない恋愛不器用だろうが!

 千冬姉は俺の最高の姉さんだって、事実は変わらない!

 例え、俺のそばから離れたとしてもな!」

「!?」

 

一夏の言葉にラウラは動きを止めて固まり、決定的な隙を作ってしまう。

 

「大切な人……大好きな人とずっと一緒にいたいっていうのは当たり前の感情だ――。

 けどな!それじゃダメなんだ!

 いつまでも手をつないで引いてもらっているだけじゃ、一人で歩いていけない

 子供のままだ!」

「……っ――」

 

零落白夜を発動させて雪片を振り下ろす一夏の姿をラウラは、驚きで見開いた目で映しながら、

ドイツでの千冬とのあるやりとりを思い浮かべた。

 

 

 

ラウラは、戦いのために生み出された試験管ベビーだった。

教えられたのは敵を倒すための知識と技術、武器の使い方で彼女はそれらを高水準で

身につけていった。

そんな時、ラウラに転機が訪れる。

世界最強の兵器として認識されてしまったISの登場だ。

 

ドイツはISの適合性向上のために“ヴォーダン・オージェ”という処置をラウラと同じように

生みだされた姉妹たちに施した。

それは擬似ハイパーセンサーとも呼べるもので視覚の認識速度、動体視力の爆発的向上をもたらすものであった。

 

理論上は、危険性もなく不適合も起きないはずだったのだが、それが“起きて”しまった――。

ラウラは処置された“ヴォーダン・オージェ”が、常時発動状態という制御不能となってしまった。

そのため、ラウラはIS訓練で後れを取ることとなり、“出来損ない”の烙印を押されてしまう。

 

そんな彼女に二度目の転機、一夏が誘拐された時の情報提供の借りを返すためにドイツに

教官としてやってきた織斑千冬との出会いが訪れる。

千冬は特別な訓練をしたわけではなかったが、一か月ほどラウラが千冬の訓練についていくと

彼女は部隊のトップに立っていた。

そして、ラウラは千冬に憧れるようになる。

子供がテレビの中のヒーローを見て、こんな風になりたいと思うように純粋に真っ直ぐに――。

 

ある時、ラウラは千冬へと尋ねる。

“どうしてそんなに強いのか?どうすれば強くなれるのか?”と。

千冬は少し驚きながらも微笑みながら答えた。

 

「難しいな。私が思うに守るものと追いかけるものがあることが、一つの

 答えだと思う」

「守るものと追いかけるもの……ですか?」

「そうだ。私には、弟がいる。何かと手のかかる奴でな?

 あいつを守るために強くなろうと鍛えていたら、いつの間にか今のようになった。

 それだけだ」

「弟……」

 

優しく笑いながら、どこか自慢げな千冬の顔にラウラの胸にチクリと痛みが走った。

 

「そして、追いかけるものだがこれは目標だな。

 勝ちたい、超えてみたいと思うものの存在だ。それがあると自分の

 鍛え上げがいがあるだろ?いつかあいつに目にモノを……」

 

不敵に笑ったかと思ったら、拳をグヌヌと握りしめ燃えているかのような気迫を放つ千冬に

ラウラは後ずさる。

そんな中でラウラは、今まで感じたことのない感情が心を染めていくのを感じていく。

 

その数日後に千冬が追いかけるものと出会い、心を染めていた黒いモノが灰色になるのは

また別の話である。

 

「はっ!――ゴホンゴホン!とにかくだ!

 強さというのに、明確な答えというのはない。

 様々な出会いによって、自分なりの答えが見つかっていくものだ。

 いつか日本に来ることがあったら、一度会ってみるといい。

 だが、忠告しておくぞ?あいつらは――」

 

 

 

「あ、ぁぁぁ……」

 

ラウラの視界には青空が映っていた。

どうやら、数瞬ほど意識が飛んでいたようだ。

 

「お~い、大丈夫か?」

「自分でやっておいて……よく言う……」

 

結論から言うと、一夏の勝ちであるがラウラは倒れた自分を心配する一夏にどの口がそう言うのかと若干恨みがましく言いながら立ち上がる。

 

「二人ともお疲れ様~」

「カズキさん!」

「…………ふん」

 

管制室からやってきたカズキに、一夏は挨拶するもののラウラはそっぽを向いた。

 

「ラウラちゃ~ん?

 一夏に負けて、その上自分がやっていたのがお姉ちゃんを取られたくな~いって

 いう子供のような嫉妬だったからって、そんなに照れるなよ~」

「なっ!?ち、違っ……!」

「違うのか?」

「あっ、えっ?……う、ぅぅぅ~~~/////!!!」

 

カズキに自分の心情をバラされ、違うと言おうとした自分を心底不思議そうに見る一夏に

ラウラは顔を真っ赤にして唸るしかなかった。

 

「もう!碓氷先生も、一夏もラウラをイジめちゃだめだよ!」

「ええ。シャルロットの言うとおりです。二人ともからかいすぎです」

「せやけど、シャルロットちゃん?明君?

 見てみぃ~あのプルプルと顔を真っ赤にして震えるラウラちゃんを♪」

「はやてちゃんったら~。……今度ユーノくんにやってみようかな?」

「ちょっ、すずか!?何言ってんのよアンタ!!!」

「あんな風に私も一夏さんにイジめられたら……」

「待ちなさいセシリア!そっちに行くのは、ヤバすぎるわよ!」

 

観客席の中でも一夏達と一番近い場所に降りてきたシャルロットや明が、ラウラをからかう一夏とカズキに注意するが一部に同じような危ない快感を覚えるものもいたりした。

 

「しかし、一夏。勝ったのはいいが、いささかズルイのではないか?」

「うん。口でラウラのペースを崩していたから、実力で勝ったとは言いがたい……」

「箒ちゃんと簪ちゃんの言うとおり。ちょ~~~っとこズルすぎるんじゃないかしら?」

「うぐっ!」

「そうだよね」

「碓氷先生なら、やっておかしくないかもだけど……」

「君も言うことは言うね~フェイト~」

 

今回の一夏の戦い方への非難に加えて、さりげなくカズキにもその煽りが向けられた。

 

「まあ、何はともあれ。一夏、今回の勝負を仕掛けた理由をそろそろ話したら?」

「そうですね。

 もう皆は分かっていると思うけど、こうやって一回ラウラが溜めているモノを

 吐き出させるのと、俺やカズキさんに絡んでくるのがなんでかっていうのを気付かせる

 ためだったんだよ。

 それで、俺がラウラにイラついていたのは……昔俺もその……あれだ……」

「同じようなことをしたからっていう、同族嫌悪って奴だね♪」

「うっ……」

 

ラウラに試合を申し込んだ理由を話す一夏だが、だんだんと歯切れが悪くなりカズキが

“いい”笑顔で一夏が言いたいことを纏める。

 

「「「「「「「「「「「「ふ~ん……?」」」」」」」」」」」」

「あは…………あははは……。

 ま、まあ俺もまだまだ子供で成長中ということで……!」

「要するに、一夏もラウラちゃんと同じように子供じみたことはしたことがあるから

 そんなに恥ずかしがることはないってことだよ~」

「う~~~~~//////」

 

明達にジト目で見られ一夏は明後日の方向を向いてごまかし、ラウラはカズキに

一応フォローされるもののまだ顔を赤くして唸っていた。

 

「そうだな……ないことないことを楽しそうに話しているようでは

 まだまだガキだな――」

 

地の底から響く様なその声が聞こえた瞬間、一夏達は重力が数倍になったかのような

感覚を体感した。

 

「ち、千冬姉……」

「どうした?せっかく、先ほどの戦いを褒めに来たのにどうしてそんなに逃げ腰なんだ?」

 

影が差した笑顔を浮かべながら、拳をバキボキと鳴らしてやってきた千冬に明達や離れたところにいる観客達も震え上がり、一夏も弟としてこれはISを装着しててもヤバイと本能が警鐘を鳴らしていた。

 

「ち、千冬姉……?ほ、褒めに来たならなんで拳を鳴らしているのかな~なんて……」

「これか?いや、何。

 最後の方は実力で追い詰めたとは言えないから、これから直々に鍛えてやろうと

 思ってなぁ~?」

「い、いや~そ、そんない、忙しい織斑先生の手をわざわざ煩わすわけには……」

「生徒がそんなことをいちいち気にするな……。

 後で、山田君にでも押し付k……ではなく手伝ってもらうから問題なしだ……」

 

顔をひきつらせながら、一歩一歩後ろに下がる一夏に近づいていく千冬を傍でおもしろそうに

見ているカズキ以外の者は、近くにいたラウラも含め退避し始めた。

 

「全く試合中に、嘘八百な余計なことをほざくとは……フフフ」

「う、嘘八百も何も全部本当のこと……て、てかそれが本音……」

「ほぉ~?」

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!!」

 

口元は笑っているが目は得物を狙う獣ように鋭く輝いており、一夏は目で助けを

周りに求めるものの皆、視線を逸らした。

 

「まぁまぁ、落ち着いて千冬ちゃん♪

 一夏も昔の自分にそっくりだったラウラちゃんをほっとけなくて、

 いきおいがついちゃったんだよ~。

 それに千冬ちゃんのことをそんなに知っているのは、それだけ大好きだって

 ことなんだからさ~。

 こんなこともするぐらいだよ?」

 

一夏に自分の私生活を暴露されて落とし前をつけるために、にじり寄る千冬をなだめながら、

カズキは手に持つリモコンのスイッチを押すとアリーナーにある大型スクリーンが起動した。

 

“ぢふゆねぇをどらないでよ~/////ちふゆねぇ……どっぢゃ……やだ//////”

 

以前カズキがバラしたズボンの裾を握りしめながらプルプルと震えて涙を流して

学生の頃と思われるカズキに懇願するちんまい一夏の姿の……動画が流された――。

 

「なっ!?」

『は?』

『へ?』

「「「「「「「きゃあああああぁぁぁぁぁ///////////////!!!!!!!!!!」」」」」」」

「ぎゃあああああぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

映像が流れて一拍ほど後に、アリーナーが揺れる程の歓声と叫び声が上がった。

 

「天使よ……この世に舞い降りた天使よ!!!」

「ちんまい子が涙目でおねだり……ハァハァ……」

「これは――濡れるっ!」

「我が人生に一片の……悔い……無し!ガクッ……」

「しっかり!傷は浅……くはないしわかるけど、戻ってこい!」

 

映像を見た観客席は、いろんな意味で大混乱だった。

そして明達は――――

 

「「「……ぶはっっっっっ!」」」

「ちょっ!セシリア、鈴、楯無さん!

 何、鼻血出して倒れるんですか!」

「はぁはぁ……お、お前だってそうじゃないかシャルロット……」

「あ、あなたもですよ箒……はぁはぁ」

「明もね……。

 涙目の一夏――記録記録っと」

 

セシリア、鈴、楯無の三人はちんまい一夏のあまりのかわいさに鼻血を吹き出し真っ赤な海に倒れこんだ。駆け寄るシャルロットも倒れはしていないが、鼻血を流していた。それを指摘する箒と明もまた、地面に手をつき鼻を押さえたもう片方の手からは赤い水が滴り落ちていた。

簪は、男の明が何故姉達と同じ反応をするのかと疑問に思うが、そんなことより映像の記録に

勤しんだ。

 

「あ~あ~、箒達すっかりやられたわね」

「仕方ないよ、アリサちゃん」

「せやで。あれは、ある意味なのはちゃんの魔砲より破壊力あるで~」

「どういう意味かな、はやてちゃん?でもあれはかわいいね/////」

「うん。もしもユーノが同じことをしたら……」

「「「「――――ぶはっ!!!!!」」」」

「ちょっ、皆!?どうしたのいきなり!!!」

 

なのは達は、顔を赤らめながら明達の姿を見ていたがフェイトの何気ない言葉になのは以外の4人が同じように鼻血を出して倒れ込んだり、悶えたりした。

 

「ほぎょえああああああああああ!!!!!!!!!!」

「………………」

「ふふふ。どうやら、一夏が自分のためにそんなことをしていたのかと感激して

 顔に出ないように内心で悶えているようだね~」

『(ガチで悪魔だなこいつ……いろんな意味で)』

「ふむ、これがかわいいという奴か……皆が騒ぐのも納得だな/////」

 

一夏は顔を真っ赤にして手で顔を隠し、地面をゴロゴロと言葉にならない悲鳴を上げて転がっていた。ISを装着したままで。

映像を見た千冬は、時が止まったかのように固まりカズキはその様子をみてケラケラと笑い、

ザンリュウジンは苦笑していた。

その傍らで、ラウラはかわいいというモノがどういうことか学んでいた。

 

余談だが、後日流された映像を見たあるクラスの担任も明達と同じ反応をして幸せに満ちた顔で気絶した。そのため、その日は副担任が担任の分まで仕事をしてストレスがとんでもないことになったのは一夏達には関係ないことである。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「準備は整いました。後は時を待つだけ。

 残る不安要素は……やはり、魔弾戦士ですね」

「そうなるな……」

 

暗くどこまでも暗く、温かさというものが一切感じられない空間で二つの影が

話し合っていた。

 

「魔弾戦士だけでなく、仮面ライダーなる戦士達も要注意です。

 彼らを倒さんとした者達の敗因は、彼らを侮ったこと。人間を舐めていたことです」

「確かにそうだが、戦士達はともかくあのような愚かな生き物のどこにあれ程の力が

 宿っているのか未だに理解できん……」

「その愚かしさも含めて、人間の強さなのでしょう。

 ……魔弾戦士を倒すには、こちらもある程度のリスクを覚悟しなければなりませんね」

「下手に戦えば、奴らの力が増大してしまうからな……」

「ええ。彼らは土壇場に追い込まれると、想像もしない力を発揮します。

 ここは危険ですが、彼らを倒すために敢えて逆鱗に触れるようなことをしようと

 思います」

「感情によって、どれほど能力が上がるのかというデータを取るのと時間稼ぎだな?」

「倒せれば、それでよし。倒せなくてもコレのいい実験になるでしょう……」

「ほう~コレは……」

「人間は侮れない生き物ですが、同時に愚かな生き物でもありますからね……」

 

誰も知らない場所で、悪意は着々とその刃を研いでいた――

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

オ マ ケ ☆

 

「はぁはぁ……一夏ったら、あのかわいさは反則よ/////

 ルール違反よ/////」

 

鼻にティッシュを詰めて顔を赤くしながら、鈴はアリーナの更衣室へと向かっていた。

一夏がやけに明と一緒にいるから、そっちの気があるのかとシュテル達に相談したところ女の園で同年代の友人がいるからうれしいだけだろうと言うことで、ライバル達にも差をつけるために食事でも誘おうとしているのだ。

 

「あら、あれは鈴さん?一体何を……はっ!まさか抜け駆けを!

 そうはいきませんわよ!」

 

一夏がいる更衣室に向かう鈴を目撃したセシリアは、瞬時に鈴の目的を察し

追跡を開始した。鈴と同じように鼻にティッシュを詰めながら。

 

 

 

「あう~/////」

「そんなに落ち込むな、一夏」

『子供だったのだし……な?』

 

更衣室で座りながら、未だ一夏は顔を赤くして手で隠していた。

明やゲキリュウケンがフォローするも、大した効果はなかった。

 

「まあ、いいではないか。自分の恥ずかしいことがばれるのもまた青春だ♪」

「顔とセリフが合ってないぞ……」

 

明は普段からかわれていることの仕返しか、にこにこしながらチクチク攻撃をしており、

一夏はそれを恨めしそうに見ていた。

 

「そんなに言うなら、お前も恥ずかしいことをばらして青春してみるか?」

「な、何を言って……るんだ?」

 

口を怪しく歪ませながらユラリと立ち上がった一夏に、明は後ずさる。

 

「部屋での着替えは、どっちかがシャワールームに入ってやるけどお前……

 俺の着替えしている時、聞き耳を立てたり覗いたりしてる……よな?」

「にゃ、にゃにをっ!?」

 

一夏の口から出た思わぬ言葉に、明は言葉が裏返ってしまう。

 

「ISスーツに、着替える時もこっちをチラチラと見ているよな?

 そんなに俺の着替えに興味があるのかな?」

「い、いや……だからそれは……」

 

明を逃がさないようにジリジリと近づいていくと一夏はロッカーに手をつけ、明の退路を断った。所謂壁ドンという奴である。

ちなみに一夏の上半身は、シャツを着ているだけでありボタンも閉めていない。

にじりよられた明は顔を逸らしながらも、チラチラとそこから見える一夏の体を見ていたりする。

 

「そんなに見たいなら、いっそのこと一緒に着替えるか?」

「い、一緒に着替え/////!?」

「お前次第だけど……どうする?」

『(こいつら、私もいるということを忘れていないか?)』

 

ここぞとばかりに普段の反撃をした明だったが、結局いつものように一夏にからかわれ顔を真っ赤にしてオロオロしてしまう。そして、からかうことに夢中な一夏も頭に血が上って周りが見えない明も桃色な空間に放り込まれて現実逃避したいゲキリュウケンも気がつかなかった。

このやりとりを見ている者達がいたことを。

 

「(て、手遅れ…………!!!!!?)」

「(どどどどどどういうことですの!!!!!)」

 

一夏と明のやりとりの一部始終を見ていた鈴とセシリアは、顔を真っ青にして信じられないとばかりにガタガタと体を震わせた。

 

 

 





一夏がラウラにイラついたのは、昔の自分に重なったからでした~
千冬とカズキが知り合うようになるとラウラに言ったように、見たこと
ない笑顔を千冬がするようになっていったので、自分から取らないでぇ~
とおねだりしました。涙をポロポロとこぼしながらwww
その時、カズキは驚きましたが少し考えて一夏に諭すようなことを言っています。
これをきっかけに一夏はカズキに懐くようになるのですが、そうすると今度は千冬の視線が
とんでもないことにwww

オマケはこの後、二人とも泣きながら逃亡し、そのわけを聞いた一部の”ふ”女子が喜ぶことに。

今年も応援よろしくお願いします。m(_ _)m

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