インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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最新話です。
おそらく今回が、今年最後の投稿になると思います。
冬コミの準備やいろいろとありますので(コラ)

リベリオンナイトの真の名が――


復讐者が最も憎むモノ

「やがて、意識を失った私の目に映ったのは星の大樹を奪われたことで

 氷に包まれて滅びてしまった変わり果てた故郷と仲間達の亡きがらだった……。

 私には、星の大樹がなくなったことでやがて消える命と

 全てを奪った時空管理局への憎しみだけが残った。

 奴らを滅ぼすために、私は体の傷だけでも治すために仮死状態で長い時を

 過ごしその上で力を蓄えこの次元世界に舞い戻った……。

 いつ目覚めるともわからない時間を、復讐心を糧にしてな!

 分かったか……そこにいる管理局の者達は世界を滅ぼす害悪そのものだ!!!」

 

剣の切っ先をなのはとフェイトに向け、リベリオンナイトは声を張り上げた。

 

「『……っ!』」

「あ……あああっ――!」

「か、管理局がそんな……」

「信じられないか?だが、これは揺るがざる事実だ!

 目覚めた私は、なんとか命を長らえる方法を見つけ奴らを探すあてのない旅に出た。

 何年かかろうが探し出すつもりだったが、すぐに見つけられたよ……

 変わることなく、平和な世界を蹂躙する奴らをな!!!」

 

リュウケンドーとゲキリュウケンはリベリオンナイトの憎しみに息をのみ、なのはと

フェイトは体を震わせながら否定しようとするが否定しきれなかった。

そして、宇宙ファイターXは黙ってリベリオンナイトの話しに耳を傾けていた。

 

「私は情報を得るために、略奪を繰り返していた奴らを捕まえ知っていることを

 引きずり出した……。

 罪人の罪を暴くのに使っていた心を覗く術を使ってな。

 負担を度外視して使ったことでそいつらの精神は崩壊したが、全てを見ることができ

 真実を知った……。

 奴らは、時空管理局のトップである最高評議会という連中直属のいわゆる暗部で、

 私の世界のように、いくつもの世界を滅ぼしてきたことを!

 その目的が、自分達が永遠に世界を管理するために不老不死を得るなどという

 馬鹿げたことだと!

 自分達が生んだ犠牲を平和のために、当然のものだと思っていることをな!!!」

『だから滅ぼすか……』

「――俺はあんたみたいな目にあったことないから、偉そうなことは言えない……。

 話を聞く限り、そいつらがやったことは絶対許せないし、なんとかしなくちゃ

 いけない……けどさ!」

 

リュウケンドーも時空管理局が行った裏の行いに怒りを感じ、リベリオンナイトの

行動理由を理解できたが、それでも納得できないとばかりに悲痛な声を上げた。

 

「他に……他に方法はなかったんですか……?」

「あなたの怒りは当然ですが、それでも復讐なんて「……でもか――?」……えっ?」

 

なのはは心が入っていない言葉でリベリオンナイトに問いかけ、フェイトも

復讐を止めるように言おうとしたので、宇宙ファイターXはマズイと思ったが一歩遅く

消え入るようにつぶやいたリベリオンナイトの言葉でフェイトの言葉は止められた。

 

「復讐をやめろと言うのか?人質にされ、私の目の前で殺された子供が…………

 私の弟でもか!!!!!」

 

憎悪のみが宿った言葉をぶつけられ、なのはとフェイトは完全に言葉を失ってしまう。

 

「やめろ。それ以上言ったら……私は君を殴らなければならなくなる……。

 いくつか質問をいいかい?」

 

宇宙ファイターXはやんわりとフェイトに釘をさすと、リベリオンナイトへと向き合った。

 

「君の行動目的と理由は分かった。

 だが、君の行動は復讐……自己満足に過ぎないのをわかっているのか?」

「ああ……。これは、誰のためでもない自分のためだ……」

「戻ってくるものは何もないぞ?」

「わかっている……。奴らをこの世界から消しても、何も帰ってこない……。

 そして、私は弟や仲間達のいる場所にはいけないだろう……」

「君から全てを奪った奴らと“同じ”に成り下がっても、やるのか?」

「だからどうした?

 奴らは、私の故郷を!仲間を!

 夢や希望に満ちていた弟や生まれてくるはずだった命の明日を奪った!

 何故そんな奴らが存在していることを許さねばならない!!!

 例え、取り戻せるものが何もなくても……全ての人間が悪だと言おうとも……

 奴らと同じに成り下がろうとも!その存在など、認めてなるものか!!!!!」

「それがわかっているなら、私が言うことは何もないな」

 

肩をすくめてやれやれといった感じで言う宇宙ファイターXに、リュウケンドー達は

驚きの目を向ける。

 

「私は君がこの世界に害をもたらしたりしない限り、邪魔はしないし助けもしない……」

「お、おい何を言って……!」

「落ち着け。“私”はと言ったろ。お前が彼を止めたいのなら、それはお前の自由だ。

 それを止めることはしない。

 だけど、こちらに理由がある時は立ち塞がらせてもらうよ?

 そう、ちょうど今のようにね……」

 

リュウケンドーがくってかかるも気にすることなく宇宙ファイターXは言葉を続け、

なのはとフェイトを庇うようにリベリオンナイトの前に立ち塞がった。

 

「私を倒すと……?」

「生憎、この二人を助ける理由がこっちにはあってねぇ~

 (教師っていうのは、生徒を守るものだからね……)

 このまま引いてくれるなら、追いかけないけど?」

「…………(どうする?数えるほどしかいないオーバーSランクを消せれる

 またとないチャンスだが、力を出しきれない以前にこいつはリュウケンドーよりも

 強い……

 おどけた態度だが現れてから一瞬も隙が無い……)」

「どうやら、迷っているようだね。

 でも、ここは君が命を賭けてでも絶対に勝たなくちゃいけない場面なのか?

 私の後ろにいるのが、例えば指示を出した最高評議会なら何が何でも邪魔者は

 排除すべきだが、この二人を倒すチャンスならまたあるかもしれない」

「何が言いたい……」

「復讐を果たしたいなら、引き際は見極めろってことさ。目的を果たすには

 時に、引くことも大事なことだぞ?

 経験者の言うことは聞いておくもんだ」

「経験者?」

「そう。私も君と同じ、大切なものを奪った連中を消すことを決め、成し遂げた

 元復讐者さ」

 

自然な流れで発した言葉をその場にいた者達が理解するのに、数秒ほどかかった。

 

「私も君と同じく、ある奴に故郷や家族を奪われてね~。

 同じように、そいつから全てを奪い去るために力を磨き抜いて全~~~部

 奪ってやったよ~。

 体は細胞の一欠けらの残らないようにすり潰して、魂は地獄に直接運んでやった」

 

誇るでもなく、後悔するわけでもなく淡々と宇宙ファイターXは言葉を述べた。

 

「だから、少なくとも他の連中よりは君の気持ちを理解できる部分はある……。

 私は君の復讐を否定しないし、肯定もしない……。

 復讐を成し遂げて、満足できるかどうかは結局本人次第だしね」

「…………いいだろう。ここは引くとしよう。

 どうやら、この世界は私には居心地がよくないみたいだしな――」

 

宇宙ファイターXの言葉に、リベリオンナイトは少しだけ悩むがやがて脱力したように

剣を下し、その場から立ち去ろうとした。

 

「……って!ちょっと待てよ!」

「何だ……?」

 

立ち去ろうとするリベリオンナイトに、リュウケンドーは慌てて呼び止めた。

 

「名前だよ、あんたの名前!俺はあんたを管理局が決めた名前で呼びたくない。

 だから教えてくれ。あんたの本当の名を!」

「――オルガード……星守の騎士(テラナイト)オルガード……」

「オルガード…………」

 

リュウケンドーの問いかけに、自身の名を明かしたオルガードはこちらを振り返ることなく

その場を立ち去り、姿を消した。

 

「それじゃ、俺達もそろそろ帰るか」

「あ、あの……さっき言ってたというか、前から言ってたことって本当だったんですか?」

「本当だよ」

 

ためらいがちなリュウケンドーの問いかけに、あっさりと宇宙ファイターXは肯定した。

 

「あの頃の俺は、とにかく奴の存在だけは許せなかった。

 奴の命を奪うことで世界が滅びようとも、絶対に奴が生きていることは

 我慢できなかった……」

「あなたは……」

 

遠い空を見るように顔を上げて、言葉を述べる宇宙ファイターXに

俯き言葉を失っていたなのはが問いかけてきた。

 

「知っていたんですか、あなたは……時空管理局があんなことをしていたって……」

「噂程度にはね。本格的に知ったのは、つい最近だよ」

「そんな……」

「人間は不完全な生き物だ。そんな生き物が集まって、作った組織が清廉潔白なわけがない。

 最初はそうでも、いずれ何かしらの歪みが出てくる……。

 勘違いしてはいけないのは、組織にいる全員が彼が言っていたような考えでは

 ないということだ。

 君達が信じていることを、同じように信じがんばっているものもいる。

 だが、君達にしろリュウケンドーにしろオルガードと戦うのはやめた方がいいだろう」

「お、おい!さっきは……!」

 

先ほどと言っていたことと反対のことを言う宇宙ファイターXに、リュウケンドーは驚く。

 

「では聞くが、彼が時空管理局以上に許せないものがあることをお前達は

 わかっているのか?」

「時空管理局以上って……」

「それが分かるまで、彼と戦うのは禁止だ。

 なに、お前なら考えればすぐにわかるさ。宿題みたいなものだと思って、考えてみろ」

「宿題って……」

 

リュウケンドーの肩を軽く叩きながら、宇宙ファイターXは後ろにいるなのはとフェイトに

顔を向けた。

 

「ああ、そうだ。さっき話に出てきた最高評議会だけど、これも調べるのは

 やめた方がいいぞ」

「どういうことですか?」

「だって、その人達が元凶なんだからなんとかしないと!」

 

宇宙ファイターXは二人に忠告をするが、納得できないとばかりに二人は反論した。

 

「相手は、君達が所属する組織のトップで権力と言う、おそらく君達が戦ったことの

 ない力を持った連中だ。

 組織の外側にいる私達はともかく、その気になれば君達は簡単に消されるぞ?

 家族や友人を人質を取られるか、洗脳という手段もある」

「「……っ!」」

 

述べられる非道な手に、なのはとフェイトは手で口を押さえ、悲鳴を押し殺した。

 

「悪いことは言わん。

 今日の出来事は知らせるのは、上司でも古くから付き合いのある者だけにしておいた方

 がいい。死にたくなかったらな……

 そして、考えろ。お前達が手にある魔法の力は、誰かを守る力にもなれば

 奪う力にもなるということを――何のためにその力を手にしたのかを……」

 

そう言うと宇宙ファイターXは、忽然とその場から姿を消し、驚いたリュウケンドーも

追いかけるようにその場を走り去った。

後に残ったのは茫然とするなのはとフェイト、そして点滅を繰り返す

彼女達の愛機のレイジングハートとバルディッシュだけだった――

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

明を狙った襲撃者達とリベリオンナイト改め、オルガードの襲撃から数日後。

なのはとフェイトは、見るからに落ち込んでいた。

授業も上の空で千冬の黒き宝剣(出席簿)を幾度となく喰らい、実技でも

今の状態で乗るのは危険だと千冬は判断しさりげなく乗せないようにしていた。

 

「(はやて達の励ましも目立った効果はなしか……)」

『(無理もない。自分が信じていたモノの根底が、揺るがされたんだからな。

 お前や弾だってそうだったろ?)』

「(そうだけど、俺達にはお前やゴウリュウガン、ザンリュウジンが

 支えて、教えてくれたから立ち上がれたけどあいつらは……)」

 

一夏は、“手を動かし”ながらも先日の襲撃のことをゲキリュウケンと話し合っていた。

 

『(力を手にし、戦士となったものは時に迷い、時に間違い仲間とぶつかってゆくことで

 自分だけの戦う理由というものを見つけていく。

 だが、なまじ彼女達は才能がありすぎたな。

 聞くところによると、力を手に入れた当初以外は自分達の行動や思いを否定されたことも

 ほとんどなく、人間と言う生き物の裏の面を知らずに、今まで過ごしてきたらしいからな)』

「(普通の犯罪は、言ってみれば表面的なもの。

 コインの表と裏みたいに、すごくいい人もいれば真逆の考え……

 信じられないぐらい残酷な考えをすることができる人間もいる……か)」

『(ところで、カズキから出された例の宿題は分かったのか?)』

「(う~ん?)」

 

手に持ったカードの中から出すカードを決めて、一夏は頭をひねる。

 

「(多分だけど……正解かもって答えはわかったよ。だけど……)」

『(何だ?)』

「(もし、これが正解だとしたら……オルガードは絶対に止めないといけない!

 だってそうだろ?

 一番許せないのが――大切なものを守ることができなかった、自分自身なんて!)」

『(…………)』

 

一夏の答えをゲキリュウケンは、黙って聞いた。

 

「(もしも俺が同じように明や千冬姉、弾、ゲキリュウケンを失ったらって、考えたら

 相手への怒りより守れなかった無力な自分に怒りが湧くと思う……。

 でも、上手く言えないけどそんなのってさ――!)」

『(大丈夫だ。言いたいことはわかる。

 だが、そうなったらお前は彼とちゃんと戦えるのか?

 カズキの宿題はともかく、オルガードと全力で戦えなかったのは

 分かっていないんだろう?)』

「(うぐっ!)」

 

一夏はゲキリュウケンの指摘が、胸に突き刺さるような感覚を感じた。

 

「(お、お前の言うとおりだけどさ……なんて言うかあの時感じたのは

 戦いたくないって言うより……懐かしい感じがしたんだ――)」

『(懐かしい?彼とは初対面のはずだろ)』

「(ああ。そのはずなんだけど、どこかで会った気がするんだ……。

 どこでだ……?)」

『(それはそうと、今は目の前の子を何とかしたらどうだ?)』

「(ははは。そうだな)」

 

意識をゲキリュウケンとの会話から目の前で行っていたUNOに向けると、

敗北し体をプルプルと震わせるラウラが、一夏の目に入ってきた。

 

「うぅぅぅ……ううう~~~。

 ま……まげ……まげまじだ/////」

 

目尻に涙を一杯に溜め、恥辱で顔を真っ赤にしながらラウラは敗北宣言をした。

 

「おい、やりすぎだぞ」

「明の言うとおりだぞ、一夏」

「そうやで」

「いくらなんでも……」

「えぐすぎるわよ、あの戦法は!」

「お姉ちゃんみたいに大人気ない」

「ちょっ!簪ちゃん!?」

「そうかな?」

「そうよ!」

「あれはねぇ~」

「はいはいラウラ。よ~しよ~し」

「うぅぅぅ、ひっぐ……」

 

その場にいた明達だけでなく、勝負を遠巻きに見ていた生徒もうんうんと頷いて

同意した。

最初の内は、一夏もラウラも1,2枚ずつカードを捨てていたのだがある時、

一夏がニヤリと笑うとリバースやスキップといったカードでラウラに番を回さずに

カードを捨てたのだ。

ラウラは、訳が分からずといった顔で見ていることしかできずあっという間に勝負は

ついてしまった。

 

「手を抜くのはよくないが、それにしても少しやりすぎだと思うぞ」

「うん。お姉ちゃんもたまにやるけど、むきになりすぎ」

「そう言われても、な~んかラウラを見ているとこう……イラっとするというか、

 負けたくないというか~」

「なんだそれは……」

 

明と簪の指摘に、一夏ははっきりしない言い方をして箒は呆れた声を上げた。

ちなみに、今まで一夏とラウラが勝負したのは七並べや神経衰弱、トランプによる

タワー作り等である。

いずれも一夏は初心者相手にやることではない、上級者の戦法を使って勝利している。

 

「言っておくけど、カズキさんと比べればかわいいもんだぞこれ?

 あの人相手が誰だろうと容赦しねぇし、相手がズルしてるって見抜くと

 もっとえげつないイカサマをするぞ?」

「なんや、簡単にその光景が浮かぶわ~」

「うぅぅぅ~わだじは、がだなぐちゃいげないのに/////」

 

一夏がはやてと話していると、シャルロットに抱きしめられて慰められているラウラが

涙声になりながら、声をもらした。

 

「あのおどごにも……ひっぐ、ぎょうがんのがおにどろをぬっだそいづにも……ひっぐ、

 がだなぐぢゃ……いげないのに……ひっぐ」

『(千冬の顔に泥を塗る?どういうことだ……って、ん?)』

「(あれだろうな~)」

 

ラウラが言う、一夏が千冬の顔に泥を塗ったというのはISの世界大会、

モンド・グロッソの第二回大会決勝で起きた事件のことである。

誰もが千冬の世界大会二連覇を疑わなかったが、

千冬は決勝を棄権しそのまま不戦敗となったのだ。

公にはなっていないが、決勝戦の裏側で一夏が誘拐されるという事件が起きていた。

千冬は、それを知るや否や愛機の暮桜を駆って、文字通り飛んで一夏を助けに駆けつけたのだ。

その時、一夏が監禁されている場所の情報を提供されたという“借り”を返すために

千冬はドイツで教官をすることになり、その後現役を引退しIS学園の教師に至っている。

 

――というのが表向きの“歴史”である――

 

『(本当は、異世界から侵略者がやってきて……)』

「(それを追いかけてきた、俺達のように何かを守るために戦う戦士……

 仮面ライダー達と一緒に時間を駆けて戦ったから、こうなったなんて……

 言えるわけないよな~)」

 

一夏の脳裏には、特に印象に残る自信家で連れの女性にあるツボを押されてしょっちゅう

笑い転がる写真家?と異様なほど運が無くセンスもどこかズレている青年、そしてお笑い

チームのような騒がしい面々の顔が思い浮かんだ。

 

彼ら仮面ライダー達と協力して、次元を超えて時間を破壊していくその敵を倒したまでは

良かったのだが時間が修復される際、一夏達の世界では一部の歴史が次元を超えた弊害か、

一夏達が魔弾龍と出会わず一般人として過ごした世界として修復されたのだ。

そのため戻ってきた一夏が気がついた時は、既に捕まった状態であり自力で脱出する前に

千冬が助けに来てしまったのだ。

 

「(まあ、でもその誘拐が千冬姉のデータや何やらを手に入れるためにドイツ軍が

 “ある組織”と協力してやったってカズキさんから聞いた時は驚いたなぁ~)」

『(それもそうだが、その情報をどうやって手に入れたのかも疑問だ……)』

 

誘拐事件後、何かを感じたカズキは独自にその事件を調査し真相を探り当てたのだ。

しかも……

 

「(“悪いことはもうしちゃダメだよ~って言ったら、”快く“ドイツの人達は俺達に力を

 貸してくれることになったから♪”って笑顔で言った時は、まじで引いたぜ――)」

『(だな)』

 

カズキはとかげのしっぽ切りみたいに、捨て駒を用意される前に迅速に包囲を固め

ドイツという国を丸ごと自分のパシリにし、千冬がドイツで教官をするのも一年間から

半年間に縮めたのだ。

 

『(だが、今問題なのはラウラをどうするかだ)』

「(別にこのままでいいんじゃね?って思ったけど、わかったよ。

 俺がこいつにイラついた理由が。だから、ここは……)」

 

一夏は、未だにシャルロットの胸に顔をうずめて泣いているラウラへおもむろに

近づいていった。

ラウラが顔を動かすたびに形が“変わるもの”を見て、ある者は舌打ちし、

ある者は指をワキワキさせていたのをスルーして。

 

「なあ、ラウラ。

 百番勝負でお前が、俺にISの勝負を持ちかけるのはできないけど……

 “俺が”お前に持ちかけることはできるのか?」

「え゛っ?」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

翌日、第三アリーナで二機のISが向かい合っていた。

 

「ふっ。まさか、貴様からわざわざ勝ち目のない勝負を挑んでくるとはな!

 私の力を見せてやる!」

「かっこよく決めているところ悪いけど、あんまり意味ないぞ?

 もう、全員にお前が小動物みたいに生意気だけどかわいい子ってのは

 知れ渡っているんだから」

「うるさい!かわいいとか、言うな/////!!!」

 

ラウラは自身の機体、メインカラーが黒で肩部にある大型のレールガンが特徴の

シュヴァルツェア・レーゲンを展開して、堂々とした態度をとっていたが一夏によって

あっさりとペースが崩された。

 

何故こんなことになったのか。

昨日、一夏がラウラに質問したらいつの間にか彼らの近くにカズキが座っており、

彼が彼女の代わりに答えたのだ。

百番勝負で上のランクのものが自分達のランクでできる勝負を下位ランクのものに

申し込む場合、申し込んだランクの者と同位以上の者が了承すれば、

その者が審判をすることで可能とのことで、こうしてISの勝負となったのだ。

噂の“かわいい”転校生のラウラがいろいろと話題の中心であるルーキーの一夏と

勝負すると聞きつけて、観客席には多数の生徒が押し寄せていた。

 

「全く何考えてんのよ、あのバカ!」

「鈴の言うとおりだ。何故こんな勝負を……」

「落ち着いて鈴、箒。一夏にも何か考えがあるはずだ……多分……きっと

 メイビー……」

「信じているって顔ではありませんわよ、明さん?」

「でも、明が心配するのも仕方ないよセシリア。ラウラは僕達と同じ代表候補だけど、

 その強さは僕達より上だよ」

「本当なん、シャルロットちゃん?」

「多分、その通り……」

「うん。普段は、かわいいところに目が行くけど軍人さんだからかな?

 体さばきは、スムーズだし授業でも頭一つ飛び出てるよ」

「今の皆だと、1対1でやったら10回勝負して下手したら10回とも負けちゃうかもね……

 オマケにラウラちゃんの機体に装備されている機能は、一夏君とは相性最悪なのよね~」

「それを知っているのかしらね、あいつ?」

「う~ん……」

「どうだろうね……」

 

明達も一夏の意図がわからず、勝負をもちかけて呆れる者とラウラの強さを見抜いて

渋い顔を浮かべる者に別れた。

 

『それじゃ、二人とも準備はいいかい?』

「いつでも!」

「問題ない!」

 

管制室にいるカズキの声に、一夏は雪片を構えラウラは相手の攻撃をねじ伏せる

ように構えた。

 

『それじゃあ、試合…………開始!!!』

「おおおっ!」

「(予想通り)」

 

開始と同時に、一夏はラウラへ接近を試みそれを見たラウラはほくそ笑んだ。

 

「(確かにこいつの近接戦闘の技術は脅威だが、そのためには私に近づかないことには

 始まらない。来るとわかっていれば、“アレ”で止められる!

 斬撃を飛ばすという、遠距離対応の攻撃も試合開始直後に使うわけが……)」

 

そこまで思考し自分の機体、レーゲンの“アレ”を発動させようと右手を

かざそうとしたところで、ラウラの脳裏にニタァ~リと笑うカズキの顔がよぎり

背筋に冷たいものを感じた。

瞬間、ラウラの目に脳裏をよぎったカズキの笑みとそっくり笑みを浮かべる一夏の

顔が映った。

 

「おおおりゃっっっ!“三十六”煩悩鳳(ポンドほう)!!!」

「なっ!?この!!!」

 

一夏は、猛スピードでラウラへ接近する途中で足を使って無理やりブレーキーをかけ

セシリアとの戦いで見せた飛ぶ斬撃、“三十六煩悩鳳(ポンドほう)”を放った。

驚いたラウラは、右手を反射的な動きでかざし

切り札とも言えるAIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)を発動させた。

AICとは、ISに搭載されている浮遊、加速、停止を可能にしている基本システム

PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)を発展させた慣性停止能力である。

これを発動させれば、対象の動きを封じることができ、一夏のような近接戦闘中心の

相手は恰好の的になるのだ。

だが、ラウラは予想外の攻撃にAICを発動“させられて”しまった。

 

「そこっ!」

「くっ!」

 

煩悩鳳を放った一夏は、そこで動きを止めず再び加速しラウラの上を取り雪片を

振り下ろすが、ラウラは接近戦用のプラズマ手刀を左手から出現させ一夏の攻撃を

受け止め鍔迫り合いになる。

 

「ふっ。腕にも負担がかかって、一試合に1回ぐらいしか使えない技を試合開始直後

 に使うわけがない……だからこそ使う!!!」

「……っ!あの男の弟子というわけはあるという……ことかっ!」

 

ラウラは気合いと共に、一夏を押し返そうとするが一夏はその勢いを利用して

バク転し身をかがめてラウラに足払いを行う。

 

「その程度っ!」

「どうした……って?」

 

一夏の足払いを難なくかわすラウラだが、そんな彼女の目の前に一夏が現れる。

 

「負けるかっ!!!」

「まだまだっ!!!」

 

ラウラはプラズマ手刀を両手に出現させ、一夏の攻撃に対抗し両者は目にも止まらない

攻防を展開する。

 

「まさか、いきなり私との戦いで見せたあの技を使うとは……」

「それも接近するための囮とは……」

「そうね。一夏君も言ってたけど、誰もいきなり切り札とも言えるあの技が

 来るなんて思ってなかったから最高の奇襲になったわ。

 しかも、防がれるって予想してたみたいね」

「だけど、ラウラちゃんが見せたあれって何かな?」

「あれはアクティブ・イナーシャル・キャンセラー、AICって言って簡単に言うと

 相手の動きを止めちゃうの」

「はぁ!?反則みたいなものじゃない、それ!」

「楯無さんが言ってたのはこれなんですね。

 AICは1対1だとアリサの言うように反則的な効果を発揮するよ。

 特に一夏みたいに近接戦闘主体にはね」

「待ってくれ、シャルロット。お前の言う通りなら、何故ラウラは今AICを

 使って、一夏の動きを止めないんだ?」

「止めないんじゃなくて、止められないのよ箒」

「どういうことや鈴ちゃん?」

「一夏くんは、ただいつものように接近戦をやっているようにしか見えないけど……?」

「待って、なのは。一夏の動きがいつもとちょっと違うような……?」

 

フェイトの言葉に、皆が一夏の動きに注目する。

 

「へぇ~AICの弱点を見抜いたか」

『何だよ、その弱点って』

「AICを使うには集中力が必要でね、どうしても相手を自分の視界にいれておく

 必要があるんだ。

 人間の目っていうのは、縦と横の動きに比べて斜めの動きを追う力は弱い。

 だから、一夏はラウラの視界に斜めに映るように動いている。

 まあ、追いにくいって言ってもゼロコンマぐらいの差だろうけど、それだけ

 あれば……結果は見ての通りさ」

 

管制室からは、一夏が二刀のプラズマ手刀を雪片でさばいて若干押し気味になって

いるところが見えた。

 

『それじゃ、この勝負は一夏の勝ちなのか?』

「それはどうかな~?

 ラウラだって、俺や千冬ちゃんの教えについてきたわけだし、

 一夏がラウラのことをいろいろ聞いてきたのと同じように、ラウラも一夏の

 戦闘記録とか調べにきたからね~

 さてさて――?」

 

カズキは見極めるように、二人の戦いを観戦するのであった。

 

 





リベリオンナイトの本当の名はオルガードと判明。
星の大樹がなくなったことで、彼の命は長くないですがある方法で
延命しています。その方法が、オルガードが地球で全力で戦えず
また一夏が全力で戦えない理由になります。
オルガードは地球以外なら、リュウガンオーやカズキなら真実を
知って戦えにくいというの理由を省くなら全力で彼と戦えます。

今回、なのはとフェイトが挫折しましたが一夏と弾もまた人間の裏側を
知ったりして挫折したことがあります。

仮面ライダーと出会った事件。何とか力を合わせて、解決できましたが
全てが上手くいったというわけではなく(汗)

カズキがドイツに殴りこむ前にある程度、黒幕のお偉いさん達はやられていました。
噂では同じように真実を探り当てた人物が、カズキよりも前に
ドイツに単身乗り込んでやったとか。
その人物は日本の主婦がするようなエプロンをしていたとか……


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