インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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少し間が空きましたが、最新話できました。

今回でストックがつきましたので、次からまた時間がかかると思います。

以前感想欄で「デート・ア・ライブ」からはエレンだけ登場すると言いましたが
ある人を追加登場しちゃいました(汗)



笑顔にご注意

実戦訓練ということで、戦闘の実演を山田先生を相手にすることに

なったセシリアと鈴だったが……

 

「あ、アンタねぇ……何面白いように回避先を読まれてんのよ……」

「それは鈴さんもでしょう……考えなしにつっこんだり

 ドカドカと撃ったりして!」

 

結果から言うと、二人の惨敗だった。

真耶は二人の動きを射撃でセシリアが攻撃しようとしたら鈴が、鈴が攻撃しようと

したらセシリアが邪魔になるように誘導し終始二人を翻弄したのだ。

極めつけはわざと狙いの甘い射撃をすることで

二人が油断しぶつかったところをグレネードで落とされたのだ。

 

「これが一対一ならまた別の結果になったかもしれないけど、

 タッグを組んでうまく機能しなければ、今回のように戦力は

 倍増どころか半減以下になっちゃうから、気をつけるように」

「碓氷の言うとおりだ。

 二人とも、なぜ回線をリンクさせなかった?

 そうすれば、互いの位置と動きを把握できて同士打ちは避けれたはずだぞ」

「それは……」

「面目ありません……」

「まあまあ二人とも、そんなに落ち込まないで~。

 この後、もう一戦実演をするけどその前にこれでも飲んで回復するといいよ♪」

 

実演の失敗箇所を指摘されて落ち込むセシリアと鈴に、カズキは

いつのまに持ってきたのか飲み物を入れた透明な紙コップを差し出したのだが……

 

「あ、あの~碓氷先生?」

「何……コレ?」

「ふふふ、カズキ印の特製野菜ドリンクだよ♪」

 

不気味な研究所で夜中に高笑いする科学者の如く笑うカズキが、

手に持つのは、緑色の“液体”であった。

 

「な、何が入っているのよ……コレ?」

「食べ物だよ♪」

「それはカズキさんにとっての食べ物で、他の人からしたら

 食べ物でない可能性があるんじゃないんですか?」

「「ア、アハハハハハ……」」

「ハハハハハ♪」

 

得体の知れない不気味さに加えて、一夏が余計なことを言ったのでセシリアと鈴は

引きつった笑いをし、カズキは楽しそうに笑った。

 

「味も調整してあるよ♪」

「「……(ゴクっ)」

 

二人はおそるおそる紙コップを手にして、意を決するとそれを口にした。

他の子たちや千冬が見守っていると――

 

「あああああ!!!」

「水水水!水ぅぅぅぅぅ!!!」

「……さてと。それじゃ、次行ってみようか♪」

「「「「「(流した!?)」」」」」

「すいません、遅くなりました」

 

セシリアと鈴がコップを放り出して、走り去ったのをカズキは満足そうに笑い

授業を進めようとすることに、見ていた者たちは戦慄を覚えた。

そうこうしている内に、2組の担任であるエレンが打鉄を纏って現れた。

その後ろに、真耶と同じくラファールを纏い疲労困憊といった感じの副担任を引き連れて。

 

「どうしたのですか、燎子?これから授業だというのに、情けない」

「だ、誰の所為だと……」

 

どうしたのかと首をかしげる1組とは、対象に2組は苦笑を浮かべていた。

 

「2組副担任、日下部 燎子(くさかべ りょうこ)。

 山田先生と同じく元日本代表候補生であり、どちらかと言えば

 射撃中心な彼女とは違い、距離に関係なく戦えるオールラウンダー。

 面倒見がいいせいか、貧乏くじを引くことが多く

 メイザース先生がやらかす、ドジの後始末は彼女の仕事の7割に該当する。

 今日も一夏にISスーツ姿を見られると昨夜遅くまで興奮していて、

 寝坊したメイザース先生を起こす、忘れていた本日の訓練機使用申請を

 超特急で行うなど、姉御肌もしくはおかん属性を存分に発揮して

 2組では副担任ではなく真の担任として認識している者も多い。

 最近の悩みは、実家の両親から早く孫の顔が見たいと催促されていること。

 しかしこの職場では出会いに恵まれないため、一夏が結婚できる歳になったら

 自分はピィ――!歳だが、アタックするかどうかを真剣に悩でいたりする」

「なんで、そんなこと知ってんだアンタっ!!!?」

 

悪魔手帳を開きながら燎子の説明をするカズキだったが、

本人からツッコミが入った。

 

「あれ?一夏くんにアタックって、碓氷先生にはしないのかな?」

「碓氷先生にアタックゥ~?

 ――んなことできるかぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

カズキがさらりと暴露したことに、そのカズキにアタックをしないのかと

すずかがぼやくが、それを耳にした燎子は大声を上げた。

 

「な、なんや一体?」

「大方、職員室でも千冬姉と痴話げんかとか二人だけの桃色空間とかを

 形成しているんだろ」

「あ、あははは……」

「ちっくしょうぅぅぅ!!!

 独身女性に対する当てつけかってのぉぉぉ――――!!!!!」

 

一夏がボソッとつぶやいたことを肯定するかのように真耶は

苦笑し、燎子は血涙を流さんばかりの勢いで叫んだ。

 

「毎日毎日毎日毎日、仕事が片付くと織斑先生をじっ~~~と

 見てはちょっかいをかけなおかつ!

 手作りのケーキをあ~んしたり、肩もみをしたりして

 他の女なんか最初から興味

 ありませんな男に声なんかかけられるかぁ!!!

 あんたらには想像できないだろうけど、いろいろと焦る中で

 そんな甘々な空間を日々見せつけられる私らの気持ちがわかるか!!

 おかげで、ブラックコーヒーが足りねえよ!

 しかも、当の織斑先生はいちゃついている自覚がないし!!!!!」

「まぁ、千冬のあれは一夏と同じで昔からですからねぇ~」

「メイザース先生も日下部先生も何を言っている?

 あれは、こいつが私を怒らせてからかっているだけで

 別にいちゃついてなどいない」

「「「それをいちゃついているって言うんです!!!」」」

 

燎子の魂の叫びに、エレンも同意するが千冬は何でそんなに叫ぶんだ?

な感じで答えるも、他の三人の教師にきっぱりと否定された。

 

「ねぇ、織斑くんも……アレだけどさ?」

「うん、千冬さまも結構……」

「織斑くんそっくり……というかこの場合は、弟の織斑くんが似たのかな?」

「はぁ~い!

 それじゃ、千冬ちゃんと一夏が似たもの姉弟とわかったところで

 次の実戦訓練を山田先生と日下部先生のタッグvsメイザース先生

 でやってもらうから、集中しようね~」

 

ヒソヒソと千冬と一夏がそっくりだと飛び交う中で、カズキはパンパンと

手を叩き、次の対戦カードを告げた。

その時の言葉で鋭い視線をするラウラをスルーして――

 

「さっきの代表候補生コンビの連携は、悪い例だけど

 今度はちゃんとしたコンビプレーの例だから、よ~く見るようにね~

 そして、一見いつもと変わらない千冬ちゃんも一夏がどうであれ自分と

 似てるって言われてご機嫌だから覚えておくといいよ~♪」

「やかましい!」

 

いちゃついていないと言っておきながら、千冬とカズキは目にも止まらぬ

拳とそれを回避するといういつもの痴話喧嘩を始めた。

 

「あれでよくいちゃついていない等と言えますね、山田先生?」

「そうですね」

「いい加減にしろよな!

 このバカップルがぁぁぁ!!!」

 

教師三人はもう慣れたのか、呆れるが約一名は叫びを上げた。

 

「もう、あのバカップルは無視して授業を進めた方がいいんじゃないんですか?」

「あれ?なんか織斑くん……」

「ちょっと棘がある様な……?」

「本当に何があったんだ一夏……!」

 

朝から一向に変わることのない笑顔にどこか合わない言葉を言う

一夏に、箒たちはただ引きつるだけであった。

 

「あっちが何か騒がしいみたいだけど、そろそろ始めるわよ二人とも!」

「はい!」

「いつでも」

 

燎子がそう言うと、三人とも空へと上がると教師としてではなくIS操縦者としての顔に

変わり、生徒達は自然と固唾をのんだ。

そして未だに、痴話喧嘩をする二人が巻き上げた石ころが地面に落ちたのを

合図に模擬戦が開始された。

 

「はっ!」

「くっ!」

「日下部先生!」

 

最初に動いたのは、エレンだった。

量産機の打鉄でありながら、専用機にも劣らないスピードで燎子の懐に入り込み

呼び出した近接ブレードで切り込むもののその攻撃を読んでいたのか、

彼女も開始と同時に後ろへと後退し、シールドを呼び出してその攻撃を防いでいた。

エレンはそのまま追撃することなく燎子と

同じように素早くバックステップで、その場から後退すると同時にそこに真耶が撃った

マシンガンの弾が襲いかかった。

 

「やります……ね!」

 

エレンは後退するのと同時に、アサルトライフルを呼び出し

ジクザグな軌道をしながらも正確な狙いで真耶の動きを制限して

接近すると、先ほどのバックステップのように突如として高度を上げると

そこを弾丸が通過した。

 

「おりゃあああ!!!」

 

見るとエレンに弾き飛ばされた燎子がガトリングガンを手に持ち、

これでもかという剣幕で撃ちまくっているのだ。

鬱憤を晴らすかのように見えるのは気のせいだと思いたい――

 

「あんたはしょっちゅうドジやらかしてるけど、

 ワザとやってんじゃねぇだろうな、オイ!

 少しは私の苦労も考えろってんだ!

 おかげでストレスと寝不足で肌年齢キープに必死なんだよ!

 こないだ機械で測ってみたら30代って、ウチはまだ

 ピチピチの20代じゃゴラァ!!!」

 

気のせいであるはずである。

 

「流石燎子ですね……っと!

 あなたも、面倒ですね。真耶!」

「それをメイザース先生が言いますか!」

 

ガトリングガンによる弾幕を回避していたエレンは、体を回転させて

自分を狙った真耶の弾丸を避けるもののその際に、弾幕にかすってしまう。

 

「真耶!とにかく撃って撃って撃ちまくって、近づけさせないわよ!」

「はい!」

 

普段の姿からは想像できないのか、戦っている三人を知る者たちは

呆然としていた。

 

「驚いたかい?普段は天然でドジでツッコミに見えても、三人とも

 やるときはやるんだよ~」

「先ほどの凰とオルコットとは違い、山田くんが攻撃する時は、日下部先生が。

 日下部先生が攻撃する時は山田君が、攻撃を当てやすくするためにメイザースの

 動きを牽制してサポートしている。

 タッグを組めば、できることは単純に2倍だ。

 パートナーが動きやすいようにサポートし合えば、更にできることは増える」

「あの二人ほどの腕で力を合わせれば、例え量産機でも国家代表とも

 戦える力を発揮することもできるんだ。

 でも、流石は千冬ちゃんと戦えたというか全力を出せなくても

 メイザース先生相手だと厳しいみたいだね~」

 

カズキがそう言うと、被弾しながらも真耶と燎子に斬りかかるエレンの姿が

皆の目に入った。

 

「メイザースに打鉄を使って模擬戦をするように言ったのは、このためか?」

「今の鈴ちゃんやセシリアじゃ連携はとれないからね~。

 悪い例だけじゃなく、いい例も見せないと。

 それにあの二人には悪いけど、メイザース先生が

 専用機使ったら、勝負にならないだろうし」

「そうだろうな。

 山田君も日下部先生もそれをわかっているからこそ、メイザースの

 弱点を突く戦い方をして勝ちにいっているしな」

「あの~織斑先生?」

「メイザース先生の弱点って……?」

 

カズキと千冬が模擬戦の解説をしていると、その中に出てきたエレンの弱点

について疑問の声が上がった。

 

普段は真耶に負け劣らずなドジの印象があるとはいえ、エレンはかつて世界最強の

千冬と互角に戦った人物なのだ。いくら量産機を使っているとはいえ、

自分達にはできない世界レベルの技術を見せてくれている彼女に弱点など

信じられないのだ。

 

「メイザースの弱点は、奴の強さを支えるものに起因している」

「彼女の普段のドジの半分はそれが原因でもあるんだよね~。

 まっ、元からそういう素質はあるみたいだけど」

「あいつの強さは、異常ともいえる反射神経の速度にある」

「反射……」

「……神経?」

 

千冬の答えに生徒達は揃って首を傾げた。

 

「人間の反射は外部から、刺激や情報が入ってきてそれを脳が理解して

 それに対応する動作を行うことでその速度は、だいたい0.3秒前後。

 どんなに鍛えたとしても0.1秒をきることはできないんだけど、

 メイザース先生の反射速度はそれを超える0.08~0.07秒。

 つまり、どんな攻撃にも見てから後だしで反応することができるんだ」

「反面、その反射速度に肉体はついてこないから、あいつは生身だと

 よく転んだりする」

「ISが登場するまでは、周りからどんくさいやドジと思われていたけど

 自分の反射速度についていけるISに出会えたことで、ようやく

 彼女本来の動きができるようになったわけ」

「それでも、量産機ではメイザースの動きについていくのには限界が

 あるから……」

 

ガガガガガ!!!!!

 

千冬がそう言うと、麻耶と燎子の弾幕がエレンを捉え集中砲火を受けていた。

 

「なるほど、あれがエレン姉の弱点なんですね」

「気付いたのか、一夏?それじゃ、答え合わせもかねて言ってもらおうかな~」

「はい。エレン姉ことメイザース先生の弱点は……スタミナの消費が激しい、

 ですよね?」

「正解。相手の動きを見てから反応して追加で行動できるということは、

 相手よりも動く量が多くなりスタミナの消費も数倍になるんだ」

「しかも、あいつは激しい筋トレをしようものならすぐに筋肉痛で

 動けなくなるから克服しようとしてもなかなかできない。

 必然的にあいつの戦闘スタイルは、超短期決戦型になり山田君や日下部先生

 が行っている持久戦に非常に弱い」

「それに量産機は誰でも使えるっていうコンセプトだから、エレン姉

 の反応速度に追いつけなくなってきたから、勝負はあったかな?」

「まっ、確かに~?

 実力が上の相手でも相手の長所を潰して自分の長所を全力で発揮すれば、

 勝つこともできるっていうのがこの模擬戦の意味の一つだけど、

 それに加えて人間って奴は何がきっかけで、限界をぶち破るかわからない

 っていうのを知って欲しいんだよね~」

「「「「「???」」」」」

 

皆が頭に?を浮かべる中で、カズキはタブレットを出したみたいにどこからか拡声器

を取り出し、息を吸い込んだ。

 

「メイザース先生っっっ!!!

 そのピンチから逆転してカッコイイ所を見せてくれたら明日――

 一夏がお昼の弁当を作ってくれるみたいだよ~!」

「は?」

「「へ?」」

 

カズキの予想外すぎる発言に、一夏はもちろん千冬や他の子も戦っている二人も

呆けた声を出すが、次の瞬間その場にいた全員がエレンの耳が象みたいに大きくなり

カズキの言葉が現実化して吸い込まれていく様子を見た気がした。

 

「……ふふふ……ははは!!!!!

 一夏のお弁当!手作りの!愛情たっぷりの手作り弁当!!!!!」

 

オーラのようなものを体から放出してそう叫ぶと、エレンはその姿を一瞬ブレさせ

その場から消えた。

 

「き、消えた!?」

「ど、どこに!?」

 

麻耶と燎子はハイパーセンサーを使って、

エレンを探そうとするが突如として麻耶の目の前に、エレンが現れた。

 

「うりゃりゃりゃあぁぁぁ!!!」

「なんか、目が怖い!?」

 

目を大きく見開き、手にした近接ブレード振り回す姿ははっきり言って

かなり怖い。加えて無茶苦茶なように見えて、麻耶が反応しにくい角度で

斬りかかっているのがまたなんとも恐ろしい。

 

「愛情弁当っ!!!」

「きゃふん!」

 

エレンが振り下ろしたブレードが顔に直撃し、麻耶は撃墜された。

 

「ははははは!一夏の愛情弁当があれば私は無敵無敵無敵!!!」

「そのパワーを少しでも、仕事に向けてもらえませんかね!?」

 

両手にサブマシンガンを呼び出した燎子は、涙目になりながら

叫ぶもエレンの耳には入らず、あっさりと撃墜となった。

 

 

 

「それでは一夏、明日のお弁当には――タコさんウインナーをお願いします」

 

劣勢から見事に逆転してみせたエレンは、着陸するなり真剣な表情で

一夏におかずのリクエストをした。

 

「――んっ!さて、これで一応諸君にもIS学園教員の実力はわかっただろう。

 今後は敬意を持って接するように……」

 

そうは言うものの、千冬の言葉は歯切れが悪かった。

その敬意を持たなければならない教員のエレンは、遠足を楽しみにしている

小学生のようにワクワクしているし、麻耶と燎子は足元で気絶していた。

二人の手には紙コップが握られており、倒れた際に入っていた緑色の液体が

こぼれていた――。

 

「ではこれより、グループに分かれて実習を行ってもらう。

 グループのリーダーは専用機持ちの5人がそれぞれ担当しろ。

 原田は織斑のグループに入れ。

 では、分かれろ」

 

千冬が指示を出し終わると、ほぼ全員が一夏と明の元に向かった。

 

「織斑くん、一緒にがんばろう!」

「手とり足とり、いろいろ教えて~」

「むしろ、イケナイことを!」

「原田くんには私たちが教えてあげる。い・ろ・い・ろ・と♪」

 

並ならぬ迫力に明は押されるも、一夏は変わらず笑顔であり

その光景を箒はおもしろくなさそうに見て、シャルロットは一夏にそっくりな

笑顔を浮かべていた。

 

「この馬鹿者どもが!グループは出席番号順に分かれろ!

 もたつくようならそいつはISを背負ってグラウンドを百周してもらうぞ!」

「心配しなくても、ちゃんと百周できるようこれで

 スタミナをつけるようにするからね」

 

千冬の怒号に続くように、カズキが野菜ドリンクを手にして“イイ”笑顔を浮かべた。

 

「今から5秒以内ね?はい、い~ち……」

 

カズキが2と言う前のコンマ数秒で、グループが完成した。

 

「できるなら、何故最初からしない……」

「そんなに飲みたくないのか……おいしいのに」

 

千冬が呆れる中、カズキは4人を撃沈させた野菜ドリンクをゴクゴクと

飲み干した。

 

「やったぁ♪織斑くんと原田くんの班だっ!」

「うー、セシリアかぁ……。さっきボロ負けしてたし。あれ……?」

「凰さん、後で織斑くんの話をいろいろと聞かせてよっ♪

……って、大丈夫?」

「デュノアさん、よろしくね♪」

「…………」

 

各班に分かれると早速、おしゃべりが始まるがカズキの野菜ドリンクから

回復しきっていないのかセシリアと鈴は、班の子に心配されていた。

反対にラウラは、思いっきり自分に近づくなというオーラを放っていた。

 

「も、問題ありませんわ……」

「だ、代表候補生を舐めないでよね……」

「そんなフラフラの状態だと説得力無いよ?」

 

シャルロットが言うように、二人は生まれたての小鹿のように足をフルフル

させて立っていた。

 

「それでは、みなさん。本日使う訓練機を取りに来てください。

 打鉄が3機、リヴァイヴが2機なので好きな方を早い者勝ちですよ」

「てきぱきと指示しているな、メイザースは」

「いつまで持つかね~」

 

一夏に弁当を作ってもらえるからか、普段の数倍はしっかりした様子で

エレンは生徒に指示を出していく姿を千冬とカズキは眺めていた。

 

 

 

「さてと、それじゃあ始めようか。

 出席番号順に装着と起動をしてそれから歩行。まずは――」

「はいはいは――いっ!

 出席番号一番!相川清香!ハンドボール部!

 趣味はスポーツ観戦とジョギングだよ!」

「?なんで、自己紹介?」

「ん?」

『(…………)』

 

一夏の班は、一夏が接近戦タイプなので同じ近接タイプの打鉄を選んで

準備を済ませたら、何故か元気のいい返事で一夏にアピールしてきた。

どういうことなのか、一夏と隣にいる明は首をかしげるだけだった。

 

「よろしくお願いしますっ!」

「ああっ、ずるい!」

「なら私も!」

「第一印象から決めていました!」

「「「「お願いしますっ!」」」」

 

同じ班になった箒とはやて以外の者は、一夏と明にお辞儀をして

握手を求めてきた。

 

「これ……どういうことなんだ?」

「いや、私にも……」

「ははは~。一夏くんだけやなく、原田くんもおもろいな~」

 

状況をのみ込めていない一夏と明の様子を笑うはやてだが、それは当然

他の班の目にも入るわけで……

 

「さぁ♪みんな、はりきっていこうか♪」

「デュ、デュノアさん?何か、笑顔が怖いよ……?」

「ふっ、ふふふ……わたくしがこんな状態なのに一夏さんったら……?」

「セ、セシリア?」

「ほら、ぼさっとしてんじゃないわよ!

 あの馬鹿より、上手く指導してあげるからちゃっちゃっとやるわよ!」

「鈴、落ち着いて!」

 

ラウラの班以外は、燃えあがった炎の鎮火に奔走するはめとなった。

同様に、一夏の班の女子も何とか落ち着かせて訓練に入った。

 

「相川さん、ISには何回か乗ったよな?」

「うん。授業でだけど」

「じゃあ、装着と起動は分かるな。それができたら――」

「う~ん、箒ちゃんの言うように朝から一夏くん、笑顔のままやけど

 今のところ何の問題もあらへんなぁ~」

「そうだな。このまま何事もなく、終わればいいのだが……」

「……」

 

相川に指示を出す笑顔を崩さない一夏を眺めながら、この時の一夏の

怖さを知っている箒は、無事に終わることを切に願う傍らで

明は先程の箒のようにおもしろくないものを見るかのように一夏を見ていた。

 

「そうそう。背中を預けるようにして……うん。

 次に腕のアーマーが自動でロックされるから、パージしても大丈夫だ」

「よっと。

 起動ならびに歩行、帰投訓練終わり♪」

「いや、あのさ、コックピットに届かないんだけど……」

「あっ!」

 

相川は打鉄を立ったまま固定してしまい、コックピットが高い位置になったのだ。

 

「う~ん。千冬ちゃんや俺ならジャンプで簡単に届くけど

 君達には無理だからね~」

「「「「「碓氷先生!」」」」」

「一夏は人にISを教えるなんて、初めてだから気にかけてたんだけど……

 これは、一夏が白式で誰かを運んでしゃがませるしかないね~。

 抱っこで」

「ですね。

 あっ!だったら、明。やってくれるか?」

「わ、私が!?」

 

一夏は何かを思いついたように、白式を起動させると明へと向かい立った。

 

「えぇぇ――!」

「織斑くんに、抱っこされるなんてズル――イ!」

「イケメン同士の抱き合い――なんてすばらしいの!!!」

「私がしゃがませるから、私を抱っこしてぇ!」

 

これを許したら、一夏に抱っこされる機会はないと非難の声が上がるが

箒はそれどころではなかった。

笑顔は変わらないが、明らかに一夏の“何か”が変わったのを察したのだ。

 

「ま、待つんだみんな!

 一夏の言うとおりにしよう!というか、このままだとマズイ!」

「箒、お前がああなった一夏を見た時はどんな時だったんだい?」

「昔姉さんが、小さかった一夏に女の子の服を着せてそれを見た千冬さんも

 悪ノリして二人がエスカレートしていった時に……えっ?」

「ふふふ♪」

「「「「「えええええぇぇぇぇぇ!!!!!?」」」」」

 

カズキは焦る箒を誘導して上手くいくと、してやったりな笑顔を浮かべ

聞いていた女子たちは驚きの声を上げた。

 

「年上のお姉さんにお着替えされるチビッ子!」

「何ソレ?かわいすぎるぅぅぅ!!!」

「見たい!涙目になりながら、顔を赤くする織斑くん!」

「篠ノ之さん!その話詳しk……」

 

キィ――ン!

 

みんなが小さい一夏が顔を赤くしてプルプルと震える姿を想像して

もっと話を聞こうと箒に詰め寄ろうとすると金属音が鳴り、それに続くように

何かが落ちる音がした。

 

「えっ?」

 

音がした方に顔を向けると、打鉄の肩アーマーの一部らしきものが落ちていた。

視線を上げていくと、ハンガーに固定された打鉄の肩アーマーがスッパリと

斬られており、その前には雪片を振り下ろした一夏が立っていた。

一夏は騒いでいた面々に背を向けているのだが、立ち位置的に顔が見えたのか

明は顔をひきつらせて、少しずつ後ろに下がっていた。

そして、一夏はゆっくりと皆に振り向いて“満面”の笑みを見せた。

 

「ははは、驚かせてごめんごめ~ん♪

 急に、雪片の試し斬りがしたくなってさ~。

 それで、俺が女の子の恰好されたことだっけ?

 確か千冬姉がその時の写真を持ってるから、見せてくれるようお願いしようか?

 俺と勝負して、一太刀でも当てればだけど♪

 大丈夫大丈夫♪

 IS同士で、俺はその場から動かないから♪

 だけど、俺は未熟者だから間違ってスパッ!――と斬っちまう

 ……かもだけど……ね?」

 

一夏は笑顔のまま目を細めてそう言うと雪片の刀身を指で撫でた。

 

「「「「「調子にのってすいませんでしたぁぁぁ!!!」」」」」

 

ここで頭を下げなければ、命が危ないと感じた女子たちは

一切のズレもなく動きを合わせて土下座した。

 

この後、一夏が明をお姫様だっこで運んだことで、黄色い声が上げるが

それ以外は特に問題なく進んだ。

お姫様だっこされた明は、顔を真っ赤にしてバクバクする心臓を

押さえるように胸に手を当てていた。

 

授業終了後、グラウンドに置いて行かれた麻耶と燎子が

できなかったその日の仕事やエレンのドジの後始末に再び気絶しかけることは

生徒達には関係ないことである。

 

「ところで、一夏?

 メイザース先生だけじゃなくて、お弁当は千冬ちゃんにも作ってあげてね?

 “一夏の手料理は私も最近食べていないのに!”って、思っているから♪」

「黙れ、この変態宇宙人!」

「全く次から次にあなたは……ちょっとそこでじっとしててもらえます?

 一回ブッタ斬るんで。

 大丈夫、痛くしないので」

「謹んで、断るよ♪」

 

その日の鬼ごっこは、いつもの修羅に加えて笑顔で真っ黒オーラを

放ちながら剣を振り回す剣鬼が目撃されたとのことである。

 

 

 





登場したのは、原作でも何かと気苦労が絶えない日下部 燎子さんでした。
彼女にはツッコミをがんばってもらいますww

そして、カズキが作ったドリンクは「テニスの王子様」に登場するモノと
同種のものです。

エレンはIS世界では、どうやって強くしようかと考えましたが
現在作者が嵌って、アニメも放映中の「落第騎士の英雄譚《キャバルリィ》 」や
昔読んだ、現実世界だと反応に体が追いつかないけど
電脳世界なら思い通りに動くというものを組み合わせました。
やはり、戦闘描写は難しい(汗)

一夏が今の笑顔を最初にしたのは、小学生の時。
何を思ったのか、束が一夏に無理やり似合うからと女の子の恰好を
させそれを見た千冬も最初は、束をシメるもののあまりのかわいさに
束と共に暴走して、我慢できなくなった一夏の勘忍袋の緒が切れたのが
キッカケです。
噂では、過去に同じような怒り方をした女性がいたとか……







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