インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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アンケート結果がどっちになってもいいように両方作っていたので、
最新話投稿します。

今回から、皆さんお待ちかねの2巻の話がスタートです。


やってきたのは――

「はい、というわけでお引っ越しです」

 

創生種が作ったアノマロカリス型の魔物を倒した翌日、休みなしで対応に当たっていた

一夏はカズキから今日はゆっくりするよう厳命され、部屋でくつろいでおり、そこへ

部活を終えた箒と共に山田先生がやってきて、以前カズキが言っていた引っ越しを告げてきた。

 

「や、山田先生そ、それは今すぐにですか……?」

「はい♪先生も手伝いますから、パッパッとやっちゃいましょう♪」

「……わかりました」

 

本心では、引っ越しなどしたくないがそんな我がままを言うわけには

いかず箒はトボトボと引っ越しを行った。

 

「う~ん、急に人がいなくなると広くなるけど

 寂しいな、やっぱり」

『それはわかるが、何も二度と会えないというわけでもあるまい』

「それにしても、訓練とかもできないし……暇だな~。

 カズキさんから、何か戦闘記録でも借りてくるか」

 

コンコン――

一夏が時間を持て余し、自分や仲間の戦闘映像でも見て反省や研究でもしようかと

思ったら、ドアを叩く音がしたのでドアを開ける。

 

「はい、どちらさmって、箒?どうした、何か忘れものか?」

「い、いや、そうではないが……な、中に入ってもいいか?」

「別にいいけど……?」

 

どこか決心したはいいけど、やっぱり抵抗があるみたいな感じで

ソワソワする箒をどうしたのかと一夏は首を傾げるが、とりあえず

部屋に招き入れた。

 

「…………」

「え~~~っと、用が無いのなら俺カズキさんのとこに

 行きたいんだけど……」

「よ、用ならある!ちょ、ちょっと待ってくれ、すぅ~はぁ~……。

 よし!

 ら、来月に学年別個人トーナメントがあるな?」

「ああ、6月の終わり辺りに」

 

これは一夏と鈴が戦った対抗戦とは違い、自主参加の個人戦のことである。

 

「そ、そのトーナメントでわ、私が優勝したら――

 か、買い物に付き合ってくれ//////!」

「……はい?」

『(ほう~同室というアドバンテージがなくなったから、デートでもして

 距離を縮める気か。

 だが、この馬鹿のことだ。デートとは思わず、文字通りの買い物と

 思うだろうな)』

 

箒の思わぬ発言に、ゲキリュウケンは自分の相棒は欠片もその言葉の

真意を理解していないと確信し、一人ため息を吐くのであった。

 

「ま、まあ、お前の恋人に変な誤解をさせてもいけないし

 そ、その時は電話して許可をだな……」

「「「「「ちょっと待った!!!!!」」」」」

 

これに乗じて、一夏の恋人と話をしようと思った箒だったが

鈴やセシリア、シャルロット、そして簪に楯無が部屋に

なだれ込んできた。

 

「わっ!?何だいきなり!?」

「話は聞いたわよ~箒ちゃん?」

「一夏さん!それなら、わたくしが優勝したら

 一緒にお買い物を//////!」

「何言ってんのよ!ここは、幼馴染みのあたしでしょうが!」

「それは鈴も同じでしょう?

 とにかく、優勝したら僕と一日付き合ってね、一夏♪」

「わ、私もがんばるから優勝したら

 行きたいお店があるから、一緒に行こう/////」

「というわけで♪

 一夏くんは今度の学年別トーナメントで優勝した子と一日

 デートということで♪

 もちろん、お姉さんが優勝してもよろしくね~♪」

「はっ?えっ?デ、デート?」

「ま、待て!それは私が!」

 

自分の一大決心が、かっさらわれていくのを何とかしようとする

箒だったが、今この部屋にいる乙女達はみな基本は負けず嫌いであるため

最高に燃えあがった状態で他人の主張などを聞く耳など持つはずもなく、

一夏もまた突然の事態についていけなかった。

だが、そんな風に燃える楯無達は一つのことを見落としていた。

部屋のドアがあいているということに――

 

「あちゃ~こうなってもうたか~」

「くぅ~~~!後少しで、作戦通りに押しきれたのに!

 何で、部屋の鍵をかけとかないのよ箒!」

「一夏くんをデートに誘うことで、頭が一杯だったんだろうね~」

「それで、なんで私達はこんなところから

 見ているのかな、フェイトちゃん?」

「あははは……なんでだろう」

 

部屋の外の廊下の曲がり角で、なのは達が揃って一夏の部屋を見ていた。

どうやら、箒を焚きつけたのは彼女達のようだ。

彼女たちが部屋の中で何が起きているのか、分かるのはドアが

開いているため、中で言ったことが筒抜けであるからである。

つまり、それはなのは達だけでなく偶々いた者の耳にも入るということである。

 

この出来事が、ちょっとした嵐のきっかけになるわけだが

予知能力を持たない彼女らが知る由もなかった――

 

更に、その嵐に隠れて巨大な嵐が来るなどと夢にも思わなかった――

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「やっぱり、ハヅキ社製のがいいよねぇ~」

「え~~~?ハヅキのって、デザインだけって感じしない?」

「そのデザインがいいんじゃない!」

「性能なら、私はミューレイかなぁ~。特にスムーズモデル」

「でもあれって、高いじゃん」

 

授業前の休憩時間、クラスの女子たちはカタログを手にして

ISスーツの話で盛り上がっていた。ISはそれぞれの操縦者

に合わせて変わっていくため、自分に合ったモノを選ぶのが

重要であるのだが、全員が専用機を持てるわけでもないのに

何故とも思うが、そこは花の十代乙女、少しでもおしゃれをしたい

というのが乙女心である。

 

「そういえば、織斑くんのISスーツってどこのやつなのかな?」

「見たことないタイプだよね?」

 

話は、一夏のISスーツにまで及んでいき、そこへ図ったように

一夏が教室に入ってきた。

 

「あっ!織斑く~~~ん♪

 ちょうど、よかった!あの織斑くんのISスーツってどこの……」

「やあ、みんな♪おはよう♪」

『……』

 

爽やかという言葉が似合う笑顔をする一夏に、教室にいた者たちは

その爽やかさに言葉を失い、ある者はその笑顔を見て固まった。

 

「えっ?あ、あの織斑……くん?」

「いや~今日もいい天気だね~」

「何や、えっらい機嫌ええな~一夏くん「違う、逆だはやて……」

 へっ?」

 

今まで見たことない上機嫌な一夏に驚く、はやてだったが

そこに青ざめた顔の箒が待ったをかけた。

 

「逆って、どういうことですか箒さん?」

「そのままの意味だ。

 一夏は、今すごく機嫌が悪い……」

「機嫌が悪いって……僕にはそうは見えないけど……」

「よく見ろシャルロット。一夏の目……全く笑っていない」

「あっ、ホントだ!」

「――昔、姉さんと千冬さんがくだらないことで喧嘩したことがあったんだが

 その時しびれを切らした一夏があんな風に笑って……」

「どうしたのよ、箒?」

 

言葉を詰まらせた箒にアリサが不審に思うが、突然箒は体を震え出した。

 

「すすすすまない。ああああれはできるだけ思い出したくない……」

「それって、つまり一夏くんはガチで怒ると織斑先生も黙らせられる

 ってことかい?

 笑いながら怒るって、

 まるでなのはちゃんやすずかちゃんやないかい……」

「はやてちゃん?」

「放課後、一緒に訓練しようね~」

「すいません、それは勘弁してください」

 

明かされた一夏の意外な一面に、余計なことを漏らしたはやては

命の危機に頭を下げて許しをこうのであった。

 

「諸君、おはよ――う!?」

「おはようございます、織斑先生」

 

朝のHRが始まる時間となり、教壇の前であいさつをする千冬だったが、

目の前にいる笑顔を浮かべた一夏を見て驚いたように目を見開く。

そんな千冬をどうしたのかとクラスの者たちは、頭を傾げる。

 

「え~あ~んんんっ!

 きょ、今日から本格的な実戦訓練を開始する……」

「逃げたね?千冬ちゃ~ん」

「?」

 

千冬の後に続いて入ってきたカズキはそんな千冬を

おもしろそうにからかい、真耶は生徒達と同じく首をかしげるだけだった。

 

「ISを使っての授業になるので、気を引き締めて取り組むように。

 各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので

 忘れないように気をつけろ。忘れたものは、学校指定の水着で

 授業を受けてもらう。

 それも忘れたものは、下着で……男が二人もいるから無理なので

 取りに走らせる」

「ちなみに山田先生は、去年2回下着で授業をしたらしいね~」

「/////」

「「「「「(何してんの、この学園!!!)」」」」」

 

下着でも授業をやらせようとした千冬は、一夏とカズキを見て言い直す。

それに便乗したカズキが、悪魔手帳を開きながら真耶の失敗を暴露するが、

顔を赤くする彼女の反応が本当のことだとものがたっていた。

 

「な、なんやと!?

 あの箒ちゃんやフェイトちゃん、会長さん以上のスタイルで

 下着姿やと!?

 くっ!なんで、私はそこにおらんかったんや!

 ――箒ちゃん、フェイトちゃん、ちょっとお願いが……」

「断る!」

「お断りです!」

「はやてちゃん?全力全開でO・HA・NA・SIする?」

 

メダルの怪人が真っ先に目をつけそうな己の欲望に忠実な

はやては、桃色の光に飲みこまれようとしていた。

 

「では山田先生、本日のホームルームを」

「は、はいっ!

 ええとですね、今日はまず転校生を紹介します!

 しかも二人です!」

「「「「「えええええっっっ!!!?」」」」」

「……」

『(お、落ち着け一夏……)』

 

前触れもなく告げられた転校生に、クラスが驚きの声で包まれる。

噂好きな乙女の情報網をくぐっての二人の転校生だから、この反応も無理はない。

ただ、転校生と聞いても一夏は笑顔というよりますます笑顔になって、千冬や箒を焦らせた。

 

「失礼します」

「……」

 

教室に入ってきた転校生を見て、クラスのざわめきはピタリと止まった。

何故なら、一人は一夏と同じ男子の制服を着た男だったのだから――

 

「はじめまして、みなさん。原田明(はらだあきら)と言います。

 どうぞよろしくお願いします」

 

大きなきりっとした目の少年は、礼儀正しくあいさつした。

 

「お、男……?」

「はい。ケガで入院していたので春に行われた

 男性のIS起動確認検査を受けれず、先日受けたところ

 起動することができたので、このたび転入を――」

 

丁寧なたたずまいと一つ一つの動作がまるで芸術のように美しい

その少年は、主人を命がけで守る執事のようであった。

 

「き……」

「ん?」

「「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!!!!!!!!!」」」」」」」

 

瞬間、教室の窓を揺らすほどの歓喜の声が上がった。

 

「男子!織斑くん、碓氷先生に続くカッコイイ男子!」

「しかもうちのクラス!」

「美形!その身を呈して、守ってくれそう!」

「私のハートを撃ち抜いて~!」

「そして、時にはいけない私をイジメてぇ~」

「…………」

『(おい!何私を抜こうとしているんだ、お前は!

 頼むから落ち着け!)』

 

美形の転校生に女子たちは大喜びだが、朝から一夏の笑顔が

全く変わっていないのに気付いておらず、そんな一夏は何を

考えているのかゲキリュウケンを抜こうとして、彼に止められていた。

 

「……ひ、久しぶりだな一夏」

「ああ、久しぶりだな明……」

「あれ?織斑くんと原田くんって、知り合いなんですか?」

「そうだよ~。この二人は、中学時代からの知り合いでね~」

 

少し遠慮気味に一夏へと挨拶する明を疑問に思った真耶に、カズキが答えた。

 

「二人は仲良しでね~。

 確か、プールで溺れた明を一夏が助けたこともあったけ?

 濡れた服も脱がしたんだよね~」

「なっ/////!?」

「そんなこともありましたね~」

「「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!!!!!!!!!」」」」」」」

 

カズキの思わぬ暴露に、明は瞬時に顔を赤くし一夏は何でもないことのように

言うが、クラスメート達は先程以上の歓声を上げた。

 

「美少年執事に守られる美少年の主従を超えた絆!

 いける!いけるわ!燃えてきた――!」

「そこに、年上の青年が加わって……ハァハァ……」

「今年の夏はMAXを振り切ってやるわ――!」

「そ、そういう世界って本当にあるんだ……」

「何言っているのよ、すずか!戻ってきなさい!」

「男と男……友情を超えた想いは――」

「う~ん、フェイトちゃんは一度足を入れたら

 閃光の如くどっぷりつかりそうやな~」

「なんで、仲良しなだけでそんなに騒ぐのかな?」

「い、一夏……お、お前はそっちだと……言う……のか……?」

「そ、そういう世界があるとは知っていましたが、まさか

 一夏さんが……」

「い、一夏が望むならぼぼぼ僕は……!」

 

はやてと同じく自分の欲望を存分に燃やして、薄い本の創作に燃える者や、

そっちの世界に踏み入りそうになる者、よくわかっていない者、混乱する者等

反応は様々であったが、件の中心である一夏は笑顔を崩さなかった。

 

「騒ぐな!まだ終わっていないぞ!」

「みなさ~ん!お静かに~!」

 

千冬が注意することで、ようやくもう一人の転校生に視線が集まった。

輝く銀の髪を腰まで伸ばし、小柄な体格から人形やお姫様を連想させるが

纏う空気は氷のように張りつめたものだった。

そして、一番目につくのは左目の眼帯である。医療用のモノではなく、

ガチの黒眼帯である。

先程の騒ぎにも動じず、腕組をした状態で軍人のように待機していた。

 

「…………」

「はぁ~……挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

「ここでは織斑先生だ。ここは学園で、お前は生徒、

 私は教師だ」

「了解しました」

 

千冬に敬礼して返事をする転校生――ラウラに千冬は

ため息交じりで、注意するがその後ろではカズキがクククと笑っていた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「………………」

「あ、あの~以上……ですか?」

「以上だ」

 

ラウラは、自分の名前だけ言うと口を閉じてしまった。

微妙な空気を何とかしようとする真耶も涙目である。

 

「貴様が――!」

「は~い、ラウラちゃ~ん♪

 よくあいさつできたね~♪

 いい子いい子~」

 

ラウラは一夏を見ると近づこうとしたが、その前にカズキが

彼女の頭を妹を褒めるかのように撫で始めた。

 

「こ、こら!何をする、キサマ!」

「何って、ラウラちゃんがちゃん~~~と自分の名前を

 皆に言えたから褒めてるんだよ~♪

 いや~、何も言わなかったどうしようかと思ってたよ~」

「私を何だと思っているんだ!私は子供ではない!」

「は~い♪そうでちゅね~♪

 まぁ、そんなに興奮しないでほら大好きなミルクでも飲んで落ち着いて♪」

「ふんっ!」

 

反抗期な妹をなだめるかのように、ニコニコとラウラと対話するカズキ。

見た目は、子猫とじゃれ合う飼い主である。

そんなカズキは、どこから出したのかミルクをどうかと勧めると

ラウラはそれを奪うようにひったくった。

 

「ゴクゴク……ぷっはぁ~♪…………はっ!?」

「「「「「じぃぃぃ――――」」」」」

「ぷっ……くっくっくっ――」

 

ラウラは奪ったミルクを飲み干すと、満足そうに笑顔を浮かべると

教室にいる者たちが自分を見ていることに気がついてハッ!と

我に返り、カズキは腹を押さえて笑いを堪えていた。

 

「――っ/////!貴っっっ様!!!」

「あっはっはっ!!!

 別にいいじゃん~♪これで、みんなにラウラが

 ホントはかわいくていい子だってわかってくれたんだし~。

 たくさん友達もできるよ~?」

「そんなものいるかぁぁぁ!!!」

 

最早、完全に兄におもちゃにされている妹である。

 

「落ち着けラウラ。気持ちは分からんでもないが、

 この後すぐに授業だから、続きは後だ」

「ううう~~~~~!

 認めない!私は認めないぞ!

 貴様やお前が教官の大切な人で!

 教官のファンクラブの会長、副会長なんて!!!」

 

千冬がラウラをなだめるものの、余り効果はあらずラウラは羞恥で

顔を真っ赤にしながら涙目で、カズキと一夏を指さし彼らを否定した。

千冬のファンクラブの会長、副会長であることを――

 

「えっ?何ですか、織斑先生のファンクラブって?」

「ああ、俺が会長で一夏が副会長の“放課後☆千冬CLUB”のことだね。

 主な活動内容は、千冬ちゃんを愛でることと

 礼儀知らずな、えせファンをしめr……じゃなくて

 マナーを叩きこむことだね~。

 ちなみに、千冬ちゃんは“放課後☆弟LOVE CLUB”の

 会長で、俺が副会長だね~」

「余計なことを言わんでいい!

 というか、まだ続けていたのかその恥ずかしいものを!」

 

カズキの言葉に一同唖然となり、千冬が飛び蹴りをするも

あっさりカズキに避けられてしまう。

 

「ははは♪

 それじゃ、HRはこれで終わりにして、皆。

 今日は第二グラウンドで二組と合同授業だから、遅れないようにね~。

 後、一夏。明の面倒を見てあげたら?

 知り合い同士なら、何かと気が楽だろうしね~」

『(いや、この場合はむしろ気まずいんじゃねぇの?)』

「待て!まだ話は終わってないぞ!」

 

そう言って、カズキは教室から逃亡し千冬はそれを追いかけた。

 

「それじゃ、急ぐぞ明。女子が着替え始める」

「ああ、わかった」

 

一夏は、明と共に教室を出ると走りだした。

 

「男子はアリーナの更衣室で着替えるから、実習の時は早めに

 移動するんだ」

「それはわかるが、少し急ぎすぎじゃないか?」

「それはだな……」

「転校生発見っ!」

「織斑くんと一緒だ!」

 

一夏と明がアリーナに向かって走っていると、HRを終えた他のクラスや

上級生などが彼らを見つけ、我先にといかんばかりに突撃しようとしていた。

 

「いたっ!こっちよこっち!」

「者ども出会え出会えい!」

「……この学園は武家屋敷か何かか?」

「ホラ貝が聞こえてきそうだな」

「見て!転校生の子、肌つやつや!」

「足、長~い!」

「悪魔で執事なあの人みたいに、冷たい目で私をゾクゾクさせて~!」

「生んでくれてありがとう、お母さん!

 今年の母の日は、ちゃんとお花屋さんの花を買うからね!」

『(いつもは、何を送っているんだ?)』

 

一夏とは違うクラスのため、フラストレーションが溜まっているのか

やってきた子は一組の生徒よりもテンションが高かった。

 

「おい、いつもこんなに騒がれているのか?」

「何かするたびにワイワイ言われて、珍獣扱いだよ……」

「ふぅ~ん……?」

 

アイドルのコンサートのような騒ぎっぷりに、明が一夏に問いかけるが

いつものことのように答えると、明はジト目を一夏に送った。

 

「何だよ、その目は?」

「別に……」

『(ぷっ!くくく……)』

「とにかく、これを何とか突破しないとな。

 これが原因でも遅刻したら、千冬姉は容赦してくれないぞ」

「安心しろ学園の地理は、既に頭に入れてある。こっちだ!」

 

明は、そう言うと近くにあった窓を開けるとそこから飛び降りた。

 

「「「「「「「えええええっ!!!!!?」」」」」」」

「あっ!おい、待てよ!」

「「「「「「「えええええっ!!!!!?」」」」」」」

 

予想外な明の行動に驚く面々だったが、同じようにつづいた一夏にも

驚きの声を上げた。

 

「ふぅ~何とか到着……っと」

「あまり時間が無いな、早く気がえないと」

「そうだな、ISスーツって結構着替えにくいし!」

 

着替えが見えないようにロッカーのドアを開けて、一夏は

自分の体を隠すと一気に服を脱いでいく

 

「っ!おいっ/////!」

「なんだよ……あっ!

 いくら男同士だからって……覗くなよ?」

「だれが、覗くか!!!」

『(いつもならここで、からかいの一つでもいれるが

 今の一夏を下手に刺激するのは危険か……)』

 

明は顔を真っ赤にして大声を上げ、その様子を見てゲキリュウケンは

彼らをからかいたいと思うものの、そんなことをしたら今の一夏は

何をするのかわからないので何も言わなかった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「間に合ったな」

「そうだな……」

 

女子のものとは違い、ダイビングの全身水着のような男性用ISスーツ

を着た一夏と明は、整列を始めていた一組女子の列に混じって並んだ。

 

「あれ、明じゃない?何、転校してきた二人目のIS操縦者って

 アンタなの!?」

「凰鈴音!何の因果か、こうなってな」

「鈴さん、原田さんのことを知っていますの?」

「中学時代は、鈴や弾と同じクラスだったからね~」

「そうそう……って!?どうしたのよアンタ……」

「どうしたのって、何が?」

 

中学時代の同級生であったため、驚いた声を上げる鈴だったが

笑顔を浮かべる一夏を見て青ざめる。

 

「ちょっ!何があったのよ、セシリア!

 一夏の奴、すっごい機嫌が悪いじゃない!」

「箒さんも同じことを言ってましたが、本当なんですの?

 どう見ても上機嫌にしか見えないのですが……」

「それが怖いのよ……。

 アイツがガチで怒る時は、それを顔に出さないのよ。

 一体、どこのバカよ!アイツをあんなに怒らせたバカは!!!」

「バカを探しているのか?それなら、私の目の前に二人いるぞ――」

 

思わぬ知り合いに再会したのと不機嫌モードの一夏に驚いて

授業が始まっているのに気がつかなかった鈴は、学園最強教師の

黒き宝剣(出席簿)を振り下ろされた。

話しかけられていたセシリアは、完全なとばっちりである。

その光景を千冬の後ろでカズキは、笑って見ていた。

 

「ううう……。何かというとすぐに人の頭をポンポンと……」

「……一夏のせい一夏のせい一夏のせい……」

「(変わらないな、凰鈴音)」

 

頭を押さえながらうずくまるセシリアと鈴を見て、明は

昔から変わらない鈴に安心するのであった。

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する。

 ちょうど活力が有り余っている者もいるようだし、

 まずは戦闘を実演してもらおう。

 ――凰!オルコット!」

「うぇっ!」

「な、なぜわたくしまで!?」

「専用機持ちならすぐにはじめられるから……でしょ?

 千冬ちゃん?」

「そういうことだ、早く前に出ろ」

「だからってどうしてわたくしが……」

「一夏のせいなのになんであたしが……」

「お前ら――アイツにいいとこを見せたくはないのか?」

 

不満を述べる二人に、千冬が小声で耳打ちすると――

 

「このわたくし、セシリア・オルコットの華麗な実力を

 ご覧にいれましょう!」

「あたしの隠した実力、見せてやろうじゃないの!」

「「「「「(わ、わかりやすい――)」」」」」

「「?」」

 

急にやる気を見せた二人に、一夏と明を覗く面々は何を言われたのか

大体察した。

 

「それで、お相手はどなたですか?

 なんなら、鈴さんでも構いませんが」

「へぇ~おもしろいじゃない。

 返り討ちにしてやるわ!」

「慌てるな、バカども。対戦相手は――」

「うん?なんだ?」

「ん?どうした一夏?」

「急に空何か見て?」

「何かいる……?と言うより、こっちに来る?」

 

早くも戦闘を始めようとした二人を千冬が止めていると、

一夏はいぶかしげに空を見上げたので、箒やシャルロットが

不審に思っていると明も目を細めて空を見るとこちらに

キィィィン!と空気を切り裂くような音と共に向かってくる何かを見つけた。

 

「あああっっっ!どどどどいてくださ~~~いっ!!!」

「なっ!山田先生!?」

 

明だけでなくその場にいた者が飛んできた何かを真耶と認識すると

クモの子を散らしたようにその場から退避しようとした瞬間、

白い影が明の後ろから飛び出した。

 

「はっ!」

「ひゃっ///!きゃあああああっ!!!」

 

見ると一夏が白式を展開して、何かを投げ飛ばしたような姿勢で

着地しており、真耶はあさっての方向に飛ぶというより飛ばされていた。

 

「えっ?何?」

「今、何が起きたの?」

 

今起こったことに思考が追いついてきたのか、皆がガヤガヤと騒ぎ始めた。

 

「静かにしろ!」

「ははは、今一夏は落下してきた山田先生を受け止めるんじゃなくて

 落下の力をうまく受け流して地面じゃなくて、飛んでいった空の方に

 向けることで落下を阻止したんだよ。

 まあ、タイミングを間違えたら下敷きになるけどね~」

「「「「「おおお~!」」」」」

 

カズキの説明に、一同感心した声をあげた。

 

「す、すいませ~ん」

「山田くん……」

 

そうしている間に、体勢を整えラファールを纏った真耶が降りてきたが、

千冬は初心者のような失敗をしそうになったことに呆れて頭に手をやっていた。

 

「大丈夫ですか、山田先生?」

「ひゃあっ!ひゃい!だいじょうびゅでふぅ/////!」

 

真耶を投げ飛ばした本人である一夏が大丈夫かと尋ねたが、

彼女は何故か顔を真っ赤にして体を隠すようにして、盛大に噛みながら答えた。

 

「ええっと……ああこれが原因か。

 一夏。お前、投げ飛ばす時……」

「あっ」

 

どこから出したのか、カズキはタブレットを操作して、全員に見えるように

向けると先ほどの投げ飛ばしのワンシーンが映し出され、

そこには一夏が真耶の大きな“アレ”に手を触れている場面が出ていた。

事故を回避することに、専念していたためか一夏は今気付いたような声を

上げ、次の瞬間には戦士としての勘に従い体を若干後ろに逸らすと

そこをレーザーが通り過ぎた。

 

「あら残念♪外してしまいましたわ、ホホホホホ……」

 

そこには、頭に血管を浮かべながら笑顔を浮かべるセシリアがいた。

 

「ほぅ~。一夏……ドサクサに紛れて貴様ぁ~」

「ふぅ~ん。やっぱり、大きいのが好きなんだ……」

「…………」

 

同じように箒とシャルロット、そして何故か明が冷気を纏った

鋭い視線を一夏に送ると、

ガシ――ン!と

何かを組み合わせる音が響き渡った。

 

「あれま」

「うぉぉぉぉぉりゃあああああ!!!!!」

 

間の抜けた驚く声を上げた一夏が見たのは、セシリアたちとは違い

火山の如く自らの怒りを噴火させた鈴が双天牙月を連結状態で

力いっぱい自分にブン投げた姿だった。

 

ドンッドンッ!

 

投げられた双天牙月は、銃声が二回鳴ると一夏に

当たることなく地面に突き刺さった。

 

何が起こったのかと、一夏をはじめ鈴たちが視線を向けると

そこにはアサルトライフルをしっかり構えた真耶がそこにいた。

彼女はいつものバタバタと落ち着かない小動物のような雰囲気ではなく、

落ち着いた戦士の顔をしていた。

 

一夏は入学試験の時に、勝手に壁に突っ込んで自滅した人と

同一人物とは思えず特に驚いていた。

 

「山田先生は元代表候補生だ。今くらいの射撃は、造作もない」

「む、昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし……」

「人は見かけによらないってことだね。

 今、こうしてキリッとしている千冬ちゃんも

 休日だと……おっと!授業を遅らせるわけにはいかないから

 これぐらいで♪」

 

いつものごとく、千冬をからかおうとしたカズキだったが

授業を進めるのを優先するために、今回はこれで済ました。

 

「さていつまで惚けている凰、オルコット。さっさとはじめるぞ」

「えっ?始めるって、あの……2対1で……ですか?」

「いや、さすがにそれは……」

「安心しろ。今のお前たちならすぐに負ける」

「だよね~」

 

千冬とカズキが挑発するように負けると言うと、負けず嫌いである

二人はあっという間に、闘争心を燃やし臨戦態勢に入る。

 

「いいでしょう……全力でいきます!」

「あたしの本気、見せてやろうじゃないの!」

「い、行きます!」

「準備はいいようだな。それでは……はじめ!」

 

それぞれ飛翔し、空中で待機したのを確認して

千冬は開始の合図を出した――

 

 

 

 

 

 

 





如何でしたか?
一夏は、箒の言うように笑っていますがすっごく不機嫌です。
煮えたぎる苛立ちが表に出ないようそっ――とフタをしているだけです。
それが、外れたら……

ラウラは最初は原作通りでいこうかと思ってましたが、気付いたら
こんなキャラにwww

今回出てきたファンクラブには会長よりも、上の人がいたりして――

明の容姿等は次回の後書きにでも。

感想、評価待ってま~す。


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