インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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最新話、出来上がりました。
オリジナル回なので、いつもよりクオリティが低いかもしれません(汗)
ある魔法について独自解釈とオリジナルの考えが出てきますので
何かおかしな箇所や矛盾があるかもしれませんが、ご容赦をm(_ _)m

アンケートはまだまだ募集していま~す。


過去からの挑戦

「待てっ!」

『ちょこまかちょこまかと!』

「どこに行った!」

『現在、索敵中』

 

月が輝くある夜。

リュウケンドーとリュウガンオーはそれぞれ、ある魔物を追っていた。

 

「見つけた。

 リュウガンオー、そこから南西へ730mの地点に。

 リュウケンドー、今追っている奴をうまく廃工場後に追い込め。

 ……今回は、奴らにやられたな」

『全くだぜ。昔、倒したあの魔物がこんなに厄介になるなんてな……』

 

カズキは、宇宙ファイターXの姿をしてビルの屋上から風術を用いて、逃亡する魔物を

探索しリュウケンドーたちをサポートしていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

時は、5日前に遡る。

都内の各地で電柱やコンクリートが、刀で斬られたように切断

されていたり、何かにかじられた跡が見つかったのだ。

一夏達は、過去に倒したジャマンガの魔物でこれと同じことをしたものが

いたのですぐに魔物を使った創生種の仕業だとわかり、目撃情報からも

同じ魔物だと断定しすぐに行動に移った。

 

この魔物は、約5億年前の地球で生態系の頂点に君臨していた生物、

“アノマロカリス”を模したものである。

戦闘力や知能はそれほど高いものではないが飛行して移動し

機動力が高い上、遣い魔同様かなりの数が一度に現われたので

早急に倒さなければならなかった。

 

何故、一度倒した魔物を創生種が使うかはわからなかったがその理由は

数日経って判明した。

とにかく、逃げるのだ。

ジャマンガのものは、動物の本能のまま動いていたが今回のものは、

街中で暴れては誰かに見つかるとそれ以上暴れることはせずに、

すぐ姿をくらますのだ。

昼夜問わず、暴れるため人々はいつ自分が襲われるのかと怯え、

マイナスエネルギーが終始発生し続けていた。

更に、IS学園に襲撃してきた無人機や魔物、リュウケンドー等のことは

外部に漏らさないよう目撃した生徒たちには緘口令がしかれたが、

人の口に戸は立てられず、

IS学園でISと戦える怪物が暴れたという噂が立ち、

マイナスエネルギー発生に拍車をかけていた。

 

すぐに逃げるこの魔物を結界に閉じ込めることは難しく、

必然的に戦闘は結界を張らずに行われた。

そのため、リュウケンドーやリュウガンオーも人目につくようになり、

特撮ヒーローのような戦う姿を一目見ようと野次馬が集まるようになった。

その人達に、被害が出ないよう注意を払わなければならないため

魔物退治は思うように進まず、鈴にも戦闘に協力してもらったが

倒せた魔物は十数体。

かつて、ジャマンガがこの魔物を出現させた時は、最終的に数百体出現したことを考えると

焼け石に水であった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「これが、この5日間で魔物が目撃された箇所です」

「うん、ありがとう」

 

カズキ達は翌日の放課後、生徒会室に集まり魔物アノマロカリスに

ついての対策を練っていた。

 

「目撃情報だけで100は、超えていますわね……」

「目撃されていないモノも考えると、何体いるかなんて考えたくもないな」

「ISで攻撃するわけにはいかないんですか?」

「無理ね。実際戦った鈴ちゃんの報告からこの魔物はISでも倒せるみたいだけど、

 この魔物、逃げる際にISじゃ追えないような狭い道を選んでいるから下手に攻撃

 しようものなら建物ごと倒してしまうわ。

 かといって、火力の低い攻撃だと今度は倒せないし。

 それにお偉いさん達は、被害がそんなに大きくないから

 魔物のことをISを出すほどじゃないって、考えているのよ。

 下手にこの間の襲撃のことを、言ってどれだけ危険か説明しても信じないか、

 リュウケンドーまで捕獲か討伐対象になりかねないわ」

 

楯無は、融通が効かない上層部に呆れながら自分たちにできることの少なさに苛立った。

 

「カズキさん。

 風術って、かなりの遠距離攻撃ができるんですよね?

 それで、一掃できないんですか?」

「無理だね。

 試しに一体、それで倒してみたけど

 風術はそもそも攻撃に向いていないから、

 倒せる攻撃をあの移動スピードに

 当てるとなると一度にできる数は限られてくる」

 

一夏の提案に、カズキは自分の力でも厳しいと返した。

 

「この魔物は、前に倒したことがあるんだよね?

 その時は、どうやって倒したの?」

「ああ、最初は4体だけだったから俺と弾ですぐに

 倒せたんだけど、その後に空を覆い尽くすくらいの数が現れたんだ。

 でも、奴らが何かする前に固まっていたところを

 攻撃して一気に倒したんだ」

 

簪が以前の倒し方を聞くが、魔物が行動を起こす前に

ゆっくりと飛行していたところを叩いたので、同じ戦法は今回はできないだろう。

 

「とにかく、大人数に警戒させて恐怖させるところは

 変わらないけど、今回は見つかったらすぐに逃げるのと

 攻撃能力を少し落とした分の力を防御に回して、かなり

 倒しにくくしているな」

『ここにきて、一気に集めに来たな』

「本腰をついに入れたのか、必要なマイナスエネルギー

 の量が目前だから大量に集めに来たのか……。

 不幸中の幸いは、こういうことでマイナスエネルギーを

 発生させやすい小さな子がリュウケンドーの噂のおかげで

 それほど発生させていないということかな」

 

カズキはそう言うものの、この流れも敵の思惑通りであるという

嫌な予感がしていた。

 

『とにかく、今はこのアノマロカリス型の魔物を何とかすることが

 先決だ』

「こういう時って、敵の好物とかで一か所に集めて

 殲滅っていうのがセオリーだけど……」

「特にこれと決めて、かじっているわけじゃなさそうだし、

 魔物だから本物のアノマロカリスの好物で集まるってわけでも

 ないしなぁ~」

「いや、鈴の考えは間違っていない。手はあるよ」

 

目撃情報の場所が書き込まれた地図を見ながら、カズキは立ち上がった。

 

「そのための仕込みももうすぐ、終わる。

 チャンスは一度、今夜が勝負だ!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「準備はいいか、ユーノ?」

「できてますよ……」

『どうした?なんか元気ないじゃないか?』

 

その日の夜、再びビルの屋上で宇宙ファイターXの姿をしたカズキと

民族衣装のようなバリアジャケットを纏ったユーノが立っていた。

だが、ユーノはどこか疲れたような顔をしており、ザンリュウジンが

気にかける。

 

「当たり前だよ、3日前にいきなり連絡して

 今日の作戦に必要な“アレ”を発動させるための

 複雑な魔法陣をあちこちに準備したんだよ!

 しかも、本業を休むわけにはいかないから、この3日間は

 一睡もしていないし……。

 まあ、そのぐらいはいつものことなので別に

 どうということはありませんが、あの魔法陣の

 準備がホント大変でしたよ~」

「でも、最初はしぶってたけど報酬として

 なのはのIS学園の制服姿やISスーツ姿の写真を

 渡すって言ったら、二つ返事でOKしたよね?」

『へぇ~張り切って準備していると思ったら、そういうことか~』

「……」

 

ザンリュウジンのからかいに、ユーノは目を逸らした。

 

「さて、ムッツリフェレットも準備できたみたいだし、

 君たちも準備はできているか?」

「ちょっ!ムッツリって、なんですか!?」

「リュウケンドー、いつでもいけるぜ!」

「リュウガンオー配置完了!」

「あたしも準備OKよ!」

 

リュウケンドーたちもカズキ達同様、ビルの屋上にそれぞれ配置していた。

 

「よし……作戦開始!」

「広域結界……発動!!」

 

カズキの合図とともに、ユーノが3日間かけて設置した魔法陣を

用いて、街を2、3つ覆えるような巨大な結界を発動させる。

 

ユーノは結界魔導士と呼ばれる、防御や治癒の補助魔法を得意としているが

今回のような巨大な結界を一人で発動させるのは不可能である。

そこで、カズキは一つの結界を発動できる魔法陣をより巨大な魔法陣を

描くようにあらかじめ各所に配置させることで、一人による巨大結界の発動を

提案しユーノは見事に成功させた。

だが、これは僅かでも配置がずれると想定の効果や強度は弱まってしまう。

それを一寸の狂いもなく構築、発動させたユーノの才覚は

とんでもないものだろう。

 

「結界の発動を確認。

 内部探索開始……作戦通り魔物の閉じ込めに成功。

 続いて、第二段階に入る」

「了解、結界の縮小を開始」

 

カズキの報告を聞き、ユーノは発動させた結界の縮小を開始した。

 

見つかったら即、逃げる今回の魔物をいちいち結界に閉じ込めることは

困難だが、カズキは目撃情報と自身の探索により魔物の出現範囲を

算出し、それを取り囲むように結界を発動させることで

一網打尽に魔物のみを結界に閉じ込める作戦を考え付いた。

 

そして、巨大な結界を一か所に、しかも撃ち落としやすいように

空中に追い込む形で縮小したところで撃破する。

それが今回の作戦だった。

 

「よし、魔物が大体一か所に固まったな」

『このまま上手くいくといいが……』

「今のところ作戦通りだな」

『では、始めよう』

「ああ、ファイナルキー発動!」

『ファイナルブレイク!』

「ドラゴンキャノン……発射!!!」

 

リュウガンオーが追い込んだ魔物たちにドラゴンキャノンを

撃ちこむが、攻撃を逃れたものが逃亡を図った。

 

「そうは問屋が!」

「下ろさない!」

 

だが、あらかじめドラゴンキャノンだけで倒しきれるとは

思っていなかったため、上空に逃げたものを鈴が。

地上へと逃げようとするものをレオントライクを駆る

リュウケンドーが追撃を始めた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「なんとか、無事に終わりそうですね」

「まだ終わっていない。最後まで油断するな、ユーノ」

『それにしても、スゲェ~よな~』

「そうだね、ザンリュウジン。

 まさか、巨大な結界を使って更にそれを小さくすることで魔物全部を捕まえるなんて

 普通思いつかないよ」

『違ぇ―よ。スゲェって言ったのは、お前のことだよ』

「僕?」

 

ザンリュウジンの言葉にユーノは首をかしげた。

 

『張ってある結界を小さくするなんてこと、できないんだろカズキ?』

「ああ。

 結界は発動する時に、大きさも決まるから、サイズを小さくしようとする

 なら新しく張らないと無理だ」

「その無理を、一定時間に部分ごとに解除、再構築を繰り返すことで

 可能にしたのは誰ですか」

「確かに理論上はそれでできるようにしたが、それだと

 逐一、膨大な魔法式を計算、構築しなければならないから

 並の奴ならすぐに脳が焼き切れるぞ?

 俺でもやったら、倒れかねないものを平然とやっているお前も

 タイプは違うがなのは達と同じ天才だよ」

「天才なんかじゃありませんよ、僕は……

 一人の女の子さえ、守れないちっぽけな人間です……」

 

カズキとザンリュウジンはユーノの才覚を賞賛するが、彼は

自虐的に笑うだけだった。

 

『(やっぱり、まだ自分を許せないのかねコイツは?)』

「(だろうな。話を聞く限り、辿っていけばユーノが始まりだけど

 全部が全部コイツの所為というわけじゃない。

 でも、これは理屈の問題じゃないからね。

 俺たちにできるのは、捌け口になってやることぐらいか……)

 ん?」

 

ユーノの抱える闇について考えていると、カズキは結界内に残っていた

魔物が妙な動きをするのを感知した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「あれ?」

「魔物が一か所に集まり始めた?」

『マズイ、何かする気だぞ!』

『先制攻撃を推奨』

「分かっている!ショットキー!発動!」

『ドラゴンショット!』

「ナックルキー!召喚!」

『魔弾ナックル!』

「ナックルスパーク!」

「ウォータアタック!」

 

生き残った魔物たちは一か所に集まり、何かを形成する。

リュウケンドーたちはそれぞれの技を発動させて、魔物たちの塊に

攻撃を仕掛けた。

爆発が魔物たちを覆う――

 

「やったの?」

「バカ!余計なことを言うな鈴!」

「それ、やられていないフラグ!」

『奴らから目を離すな!』

『エネルギー反応増大』

 

ゲキリュウケンとゴウリュウガンの注意を聞き、警戒を強めると

煙が晴れていき、そこから球状の黒い物体が現れた。

何なのかと、リュウケンドーたちが行動を起こす前にその物体に

ひびが走り、だんだんと大きくなっていった。

 

そして、ひびが全体に走ると中から全身が殻のようなもので

覆われ、二足歩行のカニのような魔物が姿を現した。

 

「シャァァァァァ!!!」

「ほら見ろ、鈴が余計なこと言うから、あんなのが出てきたじゃねぇか!」

「なっ!あたしの所為だって言うの!」

「漫才するのは、後にしろよ二人とも!

 先にいくぜ!」

 

喧嘩するリュウケンドーと鈴をおいて、リュウガンオーは出現した

魔物にゴウリュウガンの弾丸を撃ち込んでいく。

 

「シャアアア!!!」

「何っ!?」

 

ところが、魔物は両手のハサミを楯のようにクロスさせることで

攻撃を防御して、リュウガンオーに突っ込んでいき、振り上げた

ハサミを振りおろそうとした。

 

「ゴウリュウガン、ブレードモード!」

『了解』

 

リュウガンオーは、ゴウリュウガンの接近戦用ブレードを展開して

攻撃を受け止めようとするが――

 

「がっ!」

『っ!?』

「リュウガンオー!!!」

「嘘っ!」

『何だと!?』

 

魔物はそのハサミでゴウリュウガンのブレードを切り裂き、

リュウガンオーの鎧をも切り裂いた。

 

「この!ナックルスパーク!」

「無ダっ!」

 

リュウガンオーに追撃しようとする魔物に、攻撃するリュウケンドーだったが

その攻撃もハサミに切られてしまった。

 

「なら、これはどう!」

「シャッ!」

 

鈴がウォータランスで突き刺そうとすると魔物は背を向け、

攻撃を受け止めた。

 

「硬っ!」

「喰ラえッ!」

「鈴っ!」

 

殻のあまりの硬さに、鈴が手を痺れさせて動きを止めた一瞬をついて

魔物が回し蹴りを喰らわせようとするが、リュウケンドーが二人の

間に走り込む。

 

「……っは!!」

「きゃっあああ!」

 

だが、魔物はリュウケンドーごと鈴を蹴り飛ばした。

 

「なんだよ、コイツは!?」

『複数の魔物が統合されたことで、防御と切断能力に優れた

 新たな魔物になったものと推測。

 先日、リュウケンドーたちが遭遇した魔物同様、

 知能はそれ程高くないと思われる。

 破損具合から、奴の切断攻撃を防御するのは困難と判断する。

 回避せよ』

 

ゴウリュウガンが魔物を分析し、その特性から防御より回避を

優先するよう言い、リュウガンオーがよろよろと立ち上がる瞬間、

大型トラックがぶつかった時以上の衝撃が彼を襲った――

 

「ごほっ!?」

 

吹き飛ばされるリュウガンオーの目に映ったのは、肩を突き出し

タックルの態勢となっていた魔物だった。

 

「な、何なのよあの速さは!?」

「今行くぞ、リュウガンオー!

 ……って、うわっ!」

 

蹴り飛ばされたリュウケンドーは、倒れ伏すリュウガンオーを助けるために

走り出すか、その途中で足を滑らせこけてしまう。

 

「こんな時に、何やってんのよ!」

「……ってて、何か足が滑って……何だコレ?」

 

リュウケンドーが足元を見ると、泡のようなものが地面にあった。

 

「これは……」

『そうか、あの魔物はその泡みたいなもので摩擦を減らすことで

 氷の上を滑るようにして、高速で移動したのか!』

「どうやら、一筋縄じゃいかないようだね」

 

ゲキリュウケンが泡の正体を推測すると、カズキの声が聞こえ

その直後に顔を覆ってしまうほどの風が吹き荒れた。

 

『大丈夫か、お前ら?』

「ザンリュウジン!宇宙ファイターX!」

「これはまた面倒なことになったねぇ~」

 

風が収まると、リュウケンドーのそばにリュウガンオーを抱えた

カズキが立っていた。

 

「だ……じゃなかった。大丈夫なの、リュウガンオー?」

「な、なんとか……」

「無理するな、軽いダメージじゃないだろ。

 それにしても、あいつ硬いな。

 リュウガンオーを助けるついでに、殻と殻のつなぎ目に

 風で攻撃したけど、傷一つつかないとはねぇ~」

「オれの殻、すごク硬イ。お前タちの攻げキ、効カナイ。

 ソレに、コのはサみ、何デもキレル」

 

魔物たちの妙な動きを感知したカズキは、すぐに結界内に入った。

そして、風で魔物の目をくらますと素早く、リュウガンオーを

抱えて離脱し、その際に攻撃を繰り出していたのだが、魔物に

目立った傷もダメージもなかった。

そのことが、誇らしいのか自慢げに魔物は自分の能力を語る。

 

『オマケに、あいつは摩擦を小さくする泡を使って

 移動するから、スピードもかなりのものだぞ』

「摩擦を小さくするってことは、全身に纏えばこっちの

 攻撃も滑って、あのカニに当たらなくなるね。

 俺の風で、その泡を吹き飛ばすことはできるけど

 問題は殻とハサミか……。

 あのハサミで斬れないモノで殻を

 切り裂かないといけないってことか……」

「そんな都合のいいモノが、あるわけないでしょう!」

 

状況は芳しくなかったが、カズキは焦ることなく状況を見定める。

それが癪に触ったのか、鈴は大声を上げる。

 

「落ち……着けよ……鈴」

「リュウガンオーの言うとおり、こんなピンチは

 いつものことだ。焦ることはない」

「そうは言うけど、どうするだい?なんなら、俺がやるけど?」

「いや、大丈夫です。

 要はアイツのハサミより、切れ味のあるもので攻撃すれば

 いいんでしょう?」

「それが無いから、アタシたちピンチになってるんでしょうが!」

「おレのハサみで、きれナイもの無イ。

 オマエ達、こコで負けル」

 

自分が負けることなどありえないと、魔物は自信にあふれた

言葉を言い放つも、リュウケンドーたちは揺るがなかった。

 

「お前の敗因を教えてやる。

 自分の武器を過信しすぎたことだ。

 行くぜ、ゲキリュウケン」

『いつでも、いいぞ』

「アクアキー、発動――!」

『チェンジ、アクアリュウケンドー!』

「氷結武装――」

 

ゲキリュウケンから水の龍が現れ、リュウケンドーと一つになる。

リュウケンドーは一瞬、光に包まれると水と氷を象った水色の

鎧を纏っていた。

 

「アクアリュウケンドー……ライジン!」

 

Aリュウケンドーは、モードチェンジするとゲキリュウケンを

静かに脇に構える。

 

「シ、シャ……」

 

リュウケンドーが纏う空気が変わったのを感じ取ったのか、

魔物は後ずさるが、すぐに動きを止めてハサミを構える。

 

両者は、相手の隙をうかがいずつ武器を構えたまま少しずつ

歩み寄っていき、同時に走り出してハサミとゲキリュウケンを

交錯させ…………

 

カ――――ン

 

何かが落ちる音が響き渡り、魔物が膝をつく。

 

「バ、ば鹿なッ!?

 何デ、俺ノハさみが!!!」

 

魔物のハサミは切り裂かれ、凍りついていた。

 

『Aリュウケンドーは、水の力を自在に使うことができる』

「高速、高密度の水は、ダイヤすら斬ることができる。

 しかも、水は形というものがないから斬られることが無い上、

 お前の泡も流すことができる」

『勝負ありだな』

 

Aリュウケンドーはゲキリュウケンに高密度の水を纏わせながら、

その切っ先を魔物へと向けて静かに言い放った。

 

「クっ!ならバっ……!」

 

魔物は、残った片方のハサミで足元のコンクリートを切り刻むと

それをAリュウケンドーやカズキたちの元へと投げつけた。

 

「こんなモノ!」

「っ!」

 

ゲキリュウケンと風でそれぞれ瓦礫を防御するも、

魔物はもういなかった。

 

「あいつ、どこに!?」

「どうやら、逃げたようだね

 東の方に向かって、あの泡で滑りながら移動しているよ。

 入り組んだ道をスケート選手みたいに

 滑っているから、ブレイブレオンでも追いつけないだろう」

「のんきにしている場合!!!」

「いくらユーノの結界っていっても、切り裂きかねないぞアイツ」

『彼が普段使う結界なら、問題ないが

 複雑な機能を取り入れたこの結界は、若干強度が下がっている。

 リュウガンオーの言うことを否定はできない』

 

風術で魔物の姿と逃げた方向は特定できたが、追いつくことは

困難な上、結界を破られてしまう可能性まであるというのに

Aリュウケンドー達には焦りはなかった。

 

「のんきっていうか、慌てる必要はないのさ。

 行くぜ!シャークキー!召喚!」

『アクアシャーク!』

「いでよアクアシャーク!」

 

ゲキリュウケンから放たれた光は、魔法陣を描き

そこから、青い機械の体のサメが空中を泳ぐようにして現れた。

水の獣王、アクアシャークである。

 

「そ、空飛ぶサメェェェ!!!?」

「初めて見たら、驚くよな~」

『のんびりしている暇はないぞ』

「そうだった!

 アクアシャーク、アクアボードモード!」

 

予想外すぎる援軍に驚く鈴に、自分も初めて見た時は驚いたと懐かしむ

Aリュウケンドーだったが、ゲキリュウケンの言葉で

慌てて、アクアシャークをビークルモードのアクアボードへと

変形させる。

 

「それじゃ……行くぜ!!!」

 

Aリュウケンドーが、アクアシャークに飛び乗るとエンジンがうなりを

上げ、いきおいよく発進し、瞬く間に鈴たちの視界から消え去る。

 

「早っ!?」

「アクアシャークは、ブレイブレオンでは追跡できない

 水上でも進むことができるし、縦横無尽の機動力も有している。

 その追跡から、逃れられる者は……いない!」

 

カズキがそう言うのとほぼ同時に、Aリュウケンドーは逃亡する

魔物を視界に捉えていた。

 

「見つけたっ!」

「シャッ!?」

 

魔物はAリュウケンドーの姿を見ると、スピードを上げ

入り組んだ脇道へと入り込み振り切ろうとする。

 

「なめるなよ!」

『アクアシャークの力を見くびるな!』

 

だが、そんな小細工は関係ないと言わんばかりに、Aリュウケンドーも

アクアシャークのスピードを上げ、水中を泳ぐが如く進み

グングンと魔物との距離を縮めていく。

 

『奴は、まだ距離があると油断しているはずだ』

「ならここで決める!ファイナルキー!発動!」

『ファイナルブレイク!』

「ゲキリュウケン氷結斬り!」

 

Aリュウケンドーがゲキリュウケンを振り下ろすと魔物に向かって

冷気が放出された。

 

「アガッ!ガ……シ、シャ」

 

冷気が魔物に当たると、その体は一瞬で氷に包まれ動きが止まる。

 

「はぁぁぁぁぁ……はっ!」

 

氷漬けになった魔物をアクアシャークが追い越す瞬間、Aリュウケンドーは

ゲキリュウケンを一閃する。

瞬間、氷に一筋の切れ目が走りひびが氷全体に広がっていき、

魔物は木っ端微塵に砕け散った。

 

「氷河に包まれ……砕け散れ――」

 

砕けた氷が雪の如く降り注ぐ中で、Aリュウケンドーの言葉が

静かに響き渡った――

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「お疲れ、一夏」

「お前もな、ユーノ」

 

戦闘を終えた一夏は、ユーノの転送魔法で彼の元へと戻っていた。

同じように転送された、カズキたちもバリアジャケットや変身を

解いており、弾はユーノの回復魔法を受けていた。

 

「あ~~~、つッッッかれた!!!

 帰ってゆっくり眠りたいわ~」

「そうだな、たくさん眠れば大きくなれるかもな、イロイロと」

「ユーノだっけ?ごめんね、これからもう一仕事増えるわ……」

「ちょっ!落ち着け!冗談だからっ!!!」

 

余計なことを言った弾は、再びバリアジャケットを纏い

背後に般若を召喚する鈴の姿を目撃する破目となった。

 

「あはは。どうしたんですか、カズキさん?」

 

弾と鈴のどつき漫才(一方的に弾がボコられるだけ)を苦笑しながら、

見ていたユーノはキョロキョロと周囲を見るカズキにどうしたのかと

尋ねる。

 

「ん?いや、なのは達に代わりの局員が来ないな~って思ってね」

「ああ、確かあの三人は別件でミッドチルダに

 行ってるんだっけ、ユーノ?」

「管理局が追っていた、犯罪組織のアジトが見つかったから、

 その応援にね。なのは達がいない間の、調査は別の局員が

 行うことになっているはずだよ」

「IS学園内は、なのは達が設置したサーチャーがあるから

 主に付近の調査がメイン。俺たちが今いる町は

 学園から離れているから手が回らないんだろうけど

 今回の結界クラスなら、異変を察知してやってくると警戒していたんだけどねぇ~」

「確かに、変ですよね?

 いつ来てもいいように、僕も準備してたんですけど……」

 

ユーノはそう言うと、六角形の金属塊を取りだした。

 

「まあ、とにかく今回の戦いはこれで終了だ。

 みんな帰るぞ~」

「「「「はぁ~い」」」」

 

カズキはそう言って、その場を纏めるが少し顔をしかめて夜空を見上げる。

 

「(今回の創生種の目的は、本当にマイナスエネルギーを

 集めることなのか?

 今までの魔物はほとんどが、一芸に特化したモノで

 確かに苦戦こそするが、それでもリュウケンドーやリュウガンオーを

 倒せるほどのものは出てきたことが無い……。

 だが、それなら目的は何だ?

 本命のための陽動?時間稼ぎ?

 ――待てよ?時間稼ぎ?

 何かの時が来るのを待っているのか!)」

 

思考の中、辿り着いた一つの可能性。

果たして、それが的中した時世界に何が起こるのか――――

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「これで全員だな……」

 

IS学園付近のある町で、一つの影が剣についた何かを取るために

手にしていた剣を軽く振り、鞘に戻していた。

月明かりもない闇の中、雲のすき間から差し込んだ淡い光が

影を照らし出し、その姿を浮き上がらせた。

黒い騎士のような存在――リベリオンナイトである。

 

彼の鎧には、液体のようなものが付着しており、足元にも

水たまりと何かの塊が広がっていた。

やがて、雲が晴れていきリベリオンナイトの足元に

あったものが、姿を現していった。

 

そこにあったのは、赤い水…………血の海としか言いようのない

モノが広がっていた――。

その赤い水たまりには、同じ服を着た者たちが横たわっていたり

壁にもたれかかるようにして浮いていた。

なのは達がいない間の調査を行っていた、管理局員である。

 

「あそこにいるのは、今までとは違うオーバーS魔導士……。

 ――だが、相手が誰であろうと関係ない。

 世界の害悪は俺が消し去るっ!」

 

リベリオンナイトは、自身が浴びた返り血のことなど気にすることなく

IS学園を見つめながら、血が出んばかりに拳を握りしめた。

まるで、何かに誓うように――

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ふぅ~」

 

とある、アパートの一室。そこで部屋の住人が、Tシャツに

ハーフパンツというラフな恰好をして一息ついていた。

その部屋は、きれいに住人の性格を表すかのようにきれいに整理整頓されていた。

ただ一つ、机の上に分解された銃やクナイが置いてあることを除けば。

 

Prrrrr――

 

「ん?メール?誰からだ?」

 

このメールをきっかけとして、新たな幕がIS学園で上がろうとしていた――

 

 

 

 

 





アクアリュケンドー登場回でした。
最初は別の敵にするつもりだったんですが、とある方の作品に
登場する敵の能力に似ていたので、何でも切れて攻撃も効かない
人型のカニにしました~。
ハサミの切れ味は、ユーノのシールドでも何度か切りつけば
切れる程のものです。
オマケに、アノマロカリス型魔物時同様逃げ足も速いという。

ユーノはカズキ達と出会ったことで、大幅に戦闘力を
上げています。

リベリオンナイトの影もチラホラと出てますが、どうなるのか。

最後に登場したキャラは――


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