インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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はい、連続投稿3話目です。
ここまできたら一気にいこうかなと思って、投稿しました。

例によって会議的なものですが。
ここでカズキ達、魔弾戦士側の味方勢が大体判明。

アンケートのご協力お願いします。



真実は、誰の目にも触れない

ミッドチルダ。

時空管理局が管理する世界でも魔法文化が最も

発達した世界であり、管理局の地上本部がある世界でもある。

その世界のある病院で、一人の少女がある部屋を目指して走っていた。

 

「シグナムっ!」

「あ、主……」

「動いちゃ、ダメよシグナム」

 

病室に駆けこんできたはやてに、体中を包帯で巻かれたシグナムが

横になっているベッドから起き上がろうとしたが白衣を着た金髪の

女性、シャマルに止められてしまう。

 

「シグナムさん、大丈夫ですか!?」

「シグナム!?」

「シグナ~ムゥ~」

「なのはちゃん、フェイトちゃん、リイン!

 気持ちは分かるけど、病室では静かに!!!」

 

はやてに遅れてやってきた、なのは、フェイト、リインは

シャマルに注意されてしまう。

 

「それで、シグナムはどうなん?シャマル」

「しばらく安静と入院が必要ですが、命に別状はありません」

「よかったです~」

「でも、一体何があったのシグナム?」

「それは、僕の方から説明するよ」

「お義兄ちゃん!」

「主、私からも……」

「ザフィーラ!それに、ヴィータちゃんも!」

「よう」

 

事情を聞こうとしたフェイトに続くように、彼の義兄クロノと

共に腕などに包帯を巻いたザフィーラと赤毛の三つ編み少女、ヴィータが

入ってきた。

 

「例の基地襲撃犯なんだが、ある可能性が浮上してきたんだ」

「ある可能性?」

「襲われた全ての基地で、違法な人体実験が行われていたかもしれないんだ」

「「「「「なっ!?」」」」」

 

クロノの言葉に、聞かされていなかったものたちは絶句する。

 

「どういうことだよ!それ!」

「管理外の世界から侵入したり逃亡するものがいないかを

 見張るための基地だが、逆に言えば辺境にあるために不正等が発覚しにくい。

 そこをついて、管理外の世界から誘拐などして

 様々な人体実験をしていたらしいんだ」

「そんな……」

「他にもまだある。

 この襲撃事件は、そのほとんどが跡形もなく壊滅させられているが

 施設が残っている基地もあるのは知っているな?

 今まで単独犯かと思われていたこの事件は、

 どうやら、二つのグループで行われているようなんだ」

「その根拠は、なんなんや?クロノくん?」

「破壊されずに残っていた基地は、時間がなかったとか

 抵抗が激しかったため破壊できなかったと思われていたんだが、

 それにしては基地のデータ消去や、侵入の隠蔽工作が

 毎回同じように行われていたんだ。

 もし、これが時間や抵抗に追われての行為なら

 毎回同じようにできているというのはおかしい。つまり……」

「回収された映像に、映っていた襲撃者以外に

 基地を襲っているものがいる……!?」

 

クロノの推測に、フェイトだけでなくその場にいたもの全員が驚愕する。

 

「そこで、何かしらの手掛かりを得るために

 違法な人体実験をしている可能性がある

 監視基地を秘密裏に調査するようシグナムをはじめとしたザフィーラ

 に依頼したんだが……」

「そこからは、私が説明する」

 

ザフィーラは、クロノの前に出て説明をはじめた。

 

「私とシグナムはクロノ提督の依頼で、

 何人かの魔導士たちと一緒に、次に襲撃される可能性が

 高い基地へと向かった。

 待ち伏せして、襲撃犯を捉えるためだ。

 だが、私たちが着いた時に既に基地は落とされていた」

「それも魔法を使わないたった一人にです……」

「ひ、一人!しかも魔法を使わずにって、冗談だろ!?」

 

ザフィーラとシグナムの語りに、ヴィータは信じられないと

驚きの声をあげる。

 

「いや、事実だ。

 私たちが現場に着いた時は、基地は氷で覆われ

 何人もの骸が転がっていた。その時奴が、今まさに

 襲撃を終え入口から出てきたんだ」

「そして、私とザフィーラは奴を視界に入れた瞬間、

 奴がこの惨状を引き起こしたものだと直感した。

 感じたんだ、奴から今まで感じたこともない

 濃厚な血のにおいと恐ろしいまでの殺気を――」

 

その時のことを思い出して、ザフィーラとシグナムは身震いする。

 

「どないしたん?シグナム?ザフィーラ?」

「震えてるけど……」

「……私たちは、過去に闇の書の騎士として様々な戦場を

 駆け巡った……」

「中にはかなりの腕を持つ強者もいたが……奴は違う!

 強者と言う言葉に当てはまるものではない!

 戦いを……いや、命を蹂躙することを楽しんでいた!」

 

今まで見たことが無いほど声を荒げるシグナムに、聞いていたものは

唖然とする。

シグナムは強いものとの戦いを好み、管理局でも

バトルマニアとまで呼ばれるほどである。

そんな、彼女が楽しそうに笑うでもなく、己を鼓舞するかのように

声を上げるなどなのは達は見たことが無かった。

 

「私たちは、基地から出てきた奴に投降するよう言ったのだが、

 普通なら身構えて警戒するところを奴は、笑ったのだ。

 “これで、また愉しめる”と言わんばかりに……」

「そこから、奴は何でもないことのように基地の局員を

 全滅させたと言い、私たちに自分と戦うのかと聞いてきた……」

「そして、戦いとも言えない戦いが始まった――」

 

ザフィーラが語りだしたその戦いの内容は、もしも映像に

残っていたら、なのはやフェイト、はやてには耐えられなかった

だろう。

かつて、戦場で命が消える瞬間を幾度となく見ている

シグナムたちですら見るに堪えない惨劇とも言えるものなのだから――

 

「そ、そんなことって……」

「にわかには信じられないが、生き残った他の局員も

 同じことを証言していた……間違いないだろう……。

 つまり、襲撃犯にはシグナムでもたやすく倒せる者が

 いてかなりの危険人物ということだ。

 ……消沈しているところ悪いが、嫌な知らせはまだあるんだ。

 もう一人の騎士みたいな襲撃犯にグレアム元提督が

 襲われた」

「グレアムおじさんが!?」

「同じようにロッテとアリアも重傷は負ったが幸い、

 命は無事だそうだ」

「よかった~」

「だが、彼らが力を合わせてもほとんど

 ダメージを与えることはできなかったそうだ……」

「えっ?でも、確かグレアム元提督もリーゼ姉妹も管理局でも指折りの

 実力者って聞いたことがあるのですが?」

 

自分たちの知り合いが、襲われたと聞いてなのは達は驚くが

無事と聞いてとりあえず、ほっとする。

しかし、クロノがもたらした情報にリインが疑問を挟む。

 

「そうだ。それでも、シグナムが戦った相手同様に

 傷を負わせることさえできなかったんだ――」

 

沈痛な顔で言うクロノに、誰も何も言えなくなってしまう。

 

「聞いた話によると、襲撃者は時空管理局のことを

 世界に害なすものと言っていたらしい。

 つまり、これはテロなどではなく管理局への恨みによる犯行

 の可能性が高い」

「管理局への恨みって……」

「少なくとも逆恨みとかそんなんやないやろうな」

「はやての言うとおりだ。

 奴は、局を止めたグレアム元提督までターゲットにしている。

 少しでも関わりのあるものなら見境なしということだ。

 なのは、フェイト、はやて。

 引き続き、調査はしてもらうが遭遇しても

 戦闘は行わず、すぐに撤退するんだ」

「うん……」

「わかった……」

 

自分たちと変わらない実力者のシグナムを打ち倒した敵の存在に、

襲撃者の目的に、なのはたちは覇気を失っていた。

彼女たちは様々な事件を解決し、人の悪意というものと戦ってきたが

そこには欲望が混ざっていたある意味普通の悪意であった。

しかし、今彼女たちが戦おうとしているのは欲望が混ざっていない

純粋な悪意……いや、最早悪意を超えた信念とも言うべきもの

なのかもしれない。

今まで相対したことのない敵に、彼女たちは恐怖するが

彼女たち自身、自分たちが恐怖していることに気付いていなかった――

 

「失礼するよ」

「「「ユーノ(くん)!」」」

「ユーノ、どうしたんだ?

 お前には、襲撃者やリュウケンドーのことやら

 調べるよう頼んでいたはずだろ?」

「ああ、おかげでコーヒーとますます仲良くなれたよ、腹黒」

「そうか、その貧弱な体が健康になってよかったじゃないか

 フェレットもどき」

 

病室に入るなり、火花を散らすユーノとクロノに

なのはたちはあわわなことになる。

 

「二人とも、落ち着いて!」

「せ、せやでせっかくシグナムのお見舞いに来てくれたのに!」

「まあ、それもあるけどリインに用があってきたんだ」

「私にですか?」

 

自分に用があると聞いてリインはキョトンとした顔をした。

 

「君は確かIS学園で一瞬だけど、Sランクを超える魔力を

 感知したそうだね」

「はい、そうです」

「本当に?間違いないんだね?」

「ほんとにほんとですぅ~!」

 

念押しして確認するユーノにリインは怒り気味で返答した。

すると、ユーノは考え込む素振りを見せる。

 

「どうしたの、ユーノ?」

「急に黙り込んで?」

「もう知っていると思うけど、この間姿を現した赤い鎧を

 纏っていたリュウケンドーはS+クラス、使い魔みたいなゴリラは

 AAA+クラスの魔力を持っていて、

 怪物に止めを刺す時は計測不能だったよね?」

「せやで、最初は何の冗談かと思ったで」

「でも、彼らの結界を張ってあった時の魔力は

 Sクラスじゃなかったんだよね?」

『YES。ジャミング機能があったのか、正確な測定はできませんでした』

「それがどうかしたの?」

 

結界の中と外で測定したデータの違いに、何の意味があるのかと

なのは達は傾げるが、ユーノの顔は険しくなっていった。

 

「結界の中にいたリュウケンドーはSクラスで測定できなかった――

 じゃあ、リインが測定したSランク相当の魔力はなんだと思う?」

「そ、それは……」

「もしもリュウケンドーが怪物に止めを刺す時の測定不能レベルのものを

 感じたのだとしたら……これを見て!」

 

ユーノはポケットから紙を取り出し、みんなに見せた。

そこには、地震の揺れを測定したようなグラフが描かれていた。

 

「ユーノくん、なにこれ?」

「3年前に観測された次元振の記録だよ。

 これは、自然発生レベル規模の小さいものだけど

 観測された場所は、そんなことが起きるような場所じゃないんだ……」

「どこなんだよ、その起きた場所ってのは?」

「――地球だよ。

 でも、これをもう一度詳しく調べてみると次元振じゃなくて、

 次元振によく似たものだってわかったんだ。

 その似たものを起こしたと思われるものは、なのは達が見ている」

「私たちが?」

「でも、そないなもの……まさか!?」

「そう、リュウケンドーが放った技だよ。

 規模は違うけど怪物に止めを刺した時に発生した空間の揺れとも

 いうものが、観測されたものと非常に似ているんだ」

 

ユーノの言葉に、全員が息をのんだ。

 

「つまり、リュウケンドーには自然発生レベルの小さいものとはいえ、

 次元振レベルの技があるということ、それもこれが彼らの結界内で

 起こったものだとしたら……」

「ユーノ、リュウケンドーの調査はどれくらい進んでいる?

 お前ならもう情報は、集まっているんじゃないか?」

 

ユーノがもたらしたリュウケンドーの可能性に、誰もが言葉を失う中

クロノが以前から依頼している調査について聞いてくる。

 

「残念ながら、今でもほとんどないんだ。

 無限書庫は管理局が管理している世界の情報が全て集まっているけど、

 ここまで無いとなると管理外世界のものなのか、もしくは

 かなり重要度の高い情報で危険度の高い未整理の箇所にあるかだから――」

「思うように進まない……か」

 

クロノは増えていく一方の悩みのタネに、頭を抱え込む。

 

「このままじっとしていても始まらない。

 数日中には、このことについて対策会議があると思うから

 君たちもデータを纏めておいてくれ。

 リュウケンドーのことも、君たちを倒したと言う

 宇宙ファイターXのことも……」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「で、これがその後に行われた会議の内容と結論です」

「ご苦労さん。

 騎士の襲撃者はリベリオンナイトと呼称、

 必要なら非殺傷設定を解除しての攻撃。

 エスデスに対しては、逮捕。非殺傷設定解除については同様。

 リュウケンドーや宇宙ファイターXに関しては、

 無許可の魔法使用および公務執行妨害で捕獲……か。

 まっ、こんなもんだろ」

「でも、よかったんですか?

 あなた達が次元振クラスの力を有しているかもとバラして」

「別に、問題はないさ。

 対策としても魔法を基準にして考えるだろうし、こっちにも

 切り札はあるしな」

「まあ、そう言うなら何も言いませんけど」

「お前の方こそ大丈夫か?

 話を聞く限り、はやても鋭そうだしクロノと言う奴も

 できそうだぞ?」

「そっちの方は、こっちでなんとかしますよ。

 それじゃ、引き続き創生種やリベリオンナイトの調査

 を行います――――カズキさん」

「ああ、頼む……ユーノ」

 

カズキは、ユーノとの通信を終えるとクロノの悩みの種と

同じくらい抱えている問題に頭を悩まして、立ち上がるとその部屋を

後にした。

 

「みんな、待たせてゴメn――」

 

カズキはある部屋のドアを開けるとそこには――

 

「おめでとうぅぅぅ~~~♪

 いや~すごいね~。

 機体各部に小型のサブ動力を組み込むことで、稼働時間や出力が

 20%もアップしてるよ~♪」

「すばらしいぃぃぃっっっ!

 AMFを発動させるのではなく、機体装甲へのコーティング

 として走らせることで、エネルギー消費が試作段階の7割に抑え

 効果が1.25倍になってるよ!

 我が友よ!!!」

「もうあの人ったら、一度スイッチが入ると

 周りのことなんか目に入らないんですよ!

 オマケに面倒な部品の発注手続きとかは、全部こっちに

 押し付けてくるし……!」

「わかります!

 こっちがあれこれ世話をしているのを、何でもできると

 勘違いして、次の日に実験やるからとか気軽に言ってくるんですよ!

 そんな簡単に準備できるか紫マッド、ゴラァァァ!」

 

知らない人が見たらドン引きするぐらいのハイテンションで互いの

発明を語り合う、おどけた感じで丸眼鏡をかけた研究者と

紫のロングヘヤーでマッドサイエンティストをにおわせる科学者。

その傍らで、OLの愚痴り合いみたいなのをしている二人の

秘書と思われる女性二人。

 

「ハハハ~、私の酒が飲めないって言うのか~?

 一番最初にコイツにツバつけたのは、私だからな!

 ドSには渡さんぞ――!」

「ふっ、ならば奪い取るまでだ。

 さぁ二人で、将来のことを話し合おうじゃないか♪」

「ふふ~♪

 こ~~~んな美人お姉さんに囲まれて幸せだね~」

「ふぇ~~~、男なんて所詮アレの大きい女が好きなのよ~。

 男なんて男なんて!」

「いいぞ!もっとやれやれ!」

「……」

「みんな、酔っ払ってるよね!?

 落ち着いてくれ!というか、誰か助けてぇぇぇ!!!」

「ちょ、皆さん!タツミをそろそろ離して!

 そして、アカメとクロメの二人は何してる!」

「肉を食べてる」

「おかしを食べてる」

 

酒瓶を抱えながらタツミを自分の胸に抱き寄せる、サバサバした印象の

快活な女性と反対側に陣取るエスデス。そんな三人の後ろから

タツミをおもしろそうに見る、頭にリボンをつけキャンディーを加えた

女性に鈴と同じくツインテールで机に泣き伏せる少女に

大笑いしながら、煽る眼帯に右手が義手の女性。

女性たちは、顔を赤くしているところから酔っているようだ。

そんな彼女たちの足元には酔いつぶれたラバックが、転がっていた。

 

肉食動物に囲まれた小動物の如く助けを求めるタツミを

ウェイブが何とかしようとするも効果はなく、アカメとクロメは

黙々と食事をしていた。

 

「大体、アンタはいっつもいっつも妹のことばっかで、

 たまにはあたしのことをかまいなさいって――の!」

「うぇ~~~私なんか私なんか~~~~~!」

「あははははは♪

 み~~~んな顔が三つもある~あはははははははは♪」

「ふん、大体お前は細かすぎなんだよ。考えすぎなんだよ。

 そんなんだから、いつまでたっても妹離れできないのだ。

 おい!聞いているのか!」

「…………」

「…………」

 

ラバックのように酔いつぶれているリヴァルと黒髪で整った顔立ちの少年に

は4人の少女が絡んでいた。

一人はハネっ気の赤髪で気が強そうな少女。

泣きながら自分を卑下している橙色のロングヘヤーの少女。

金髪でどこか楯無に似たお祭り好きそうな少女。

そして、緑の髪で唯我独尊な少女。

4人とも少年たちが気絶していることに気付くことなく、

顔を赤くして絡んでいた。

 

そんな無礼講な光景の中、ふとカズキはタツミとウェイブの目と合うと

ニッコリと微笑み静かに開いたドアを閉めた。

 

「ちょっ!カズキさん!」

「見捨てないで、何とかしてくれ!」

 

二人の声を聞き流しながら、カズキはその部屋を後にした。

 

「戻るのは2、3時間後だね」

『騒がしい連中だな、ホント~。

 だけど、リベリオンナイトか~。

 敵になったらメンドそうだな』

「その心配は、ほぼないと思うよ。

 あちらさんの目的は時空管理局への復讐みたいだし、

 こっちに被害がないなら、敵対する必要もないしね。

 ……もっとも、俺たちが邪魔と判断したら

 容赦なく消しにかかるだろうけどね――」

『ふ~ん。まるでリベリオンナイトのことをよく知っているみたいだな?』

「会ったことはないけど、わかるさ。

 俺も“同じ”だったんだから……。

 それよりも、問題なのは創生種だ。

 奴らは、マイナスエネルギーを自分の強化に使えるのに

 使わないと言うことは……」

『やっぱりジャマンガのように、何かを復活させようとしている

 可能性が高いってことか』

「そして、一番の問題は奴らがいつから行動をしているかだ。

 少なくともジャマンガの封印が解かれる前からは、活動している。

 砂の一粒一粒を集めるような集め方でも相当の量になっているはずだ」

『それでもまだ集めてるってことは、マイナスエネルギーが

 足りていないってことだよな?

 どんな怪物を復活させる気だよ』

「怪物で済めばいいけどな……。

 とにかく、こっちもやれることは全部やらないと。

 俺や一夏、弾のレベルアップに、あの魔弾キーを早く探さないと」

『全くどこに行ったのやら~』

 

カズキはいつもの掴みどころのない顔ではなく、戦士としての顔で

廊下の窓から見える月を見上げた――

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

誰もいない夜のIS学園アリーナで、千冬は電話をかけていた。

 

「もしもし?お嬢さん、今日の下着は何い……」

 

ぶつっ。

相手が言い終わらない内に、千冬は通話を切った。

やはり、かけたのは間違いだったと電話をしまおうとすると

先程の相手から電話がかかってきた。

出たら面倒なことになるのは、わかりきっているのでこのまま

無視しようかと一瞬思ったが、そうすると更にまた面倒なことに

なりそうなので、とりあえず電話に出た。

 

「もうちーちゃん、そっちからかけてきたのに

 いきなり切るなんてヒドイよ~!」

「お前が変なことを言うからだろ……束」

 

千冬が電話をかけたのはISの生みの親にして、希代の大天才、

そして箒の姉である篠ノ之束であった。

 

「それでそれで?

 ちーちゃんのためなら、この束さんは120%どころか200%の

 力を発揮しちゃうよ♪

 さぁさぁ、ちーちゃんは何を悩んでいるのかな?

 それとも愛しのいっくんと触れ合う時間が少ないから

 寂しくて束さんに電話してきたのかな~?」

「斬るぞ?」

「何か文字が違う!?」

「はぁ~……まあいい。

 この間、学園に無人のISが襲撃してきたが、あれを作ったのは

 お前だな?」

 

カズキとは違う意味で相手をするのに疲れる束に、千冬は先日襲ってきた

無人機について尋ねた。

あんなものを作れるのは、世界でも束ぐらいしかいないからだ。

もっとも、千冬は束があれを送り込んだとは思ってもいないが。

 

「ああ、ゴーレムⅠね。

 あれね、盗まれちゃったんだよ~」

「何?」

「ホントは、深海とか宇宙とか、まだISでも厳しいところでの

 活動を実験するためのものだったんだけど……」

「それが盗まれたと……」

「そうなんだよ――!

 ち~~~ょっと目を離した隙にお空に

 飛んでいって、探しまくったらいつのまにかいっくんを

 襲っているし!

 束さんの言うことなんか全~~~然聞かないし!

 あげくには、あんな不細工になっちゃうし!

 わ~~~ん!!!」

「……」

 

自分と同い年なのに、ガチで泣く束に少し引く千冬だったが、

今の話を聞いて一つの可能性を想い浮かべた。

 

「つまり、無人機を盗んだのは白騎士事件を引き起こした黒幕

 かもしれないということか?」

「……うん。

 どこのどいつか知らないけど、ふざけたことをしてくれるよ

 ホント――」

 

先程までのおどけた感じから、声のトーンを低くして

忌々しく束は吐き捨てた。

 

『白騎士事件』

それは何者かが、ハッキングして日本へと発射した二千発以上のミサイルを

一機のIS『白騎士』が破壊して、日本を守った事件である。

『白騎士』を捕獲しようと各国が動いたが、最新式の軍事兵器は次々と無効化

され、しかも死者を出さずに行ったという圧倒的なまでの力の差を

見せつけられて世界は『白騎士』に敗北した。

この事件をきっかけとして、ISは世界に広く認知されることとなる。

――というのが表向きの見解である。

 

「最初はお前がISのことを認められなかったことに腹を立てて、

 自作自演をしようとしたが雅さんにバレて……」

「それ以上は言わないで、ちーちゃん……。

 雅さんのアレは思い出したくないから……」

「……すまん」

 

二人とも、雅のアレを受けたことがあるので自然と口数が

少なくなった。

 

「まあ、それでいろいろと反省した束さんは

 別の方法を考えようとしたわけだけど……」

「ある日、お前の研究所に行ったらお前が黒い何かに

 まとわりつかれていてハッキングを行い自棄気味に立てた計画通り

 ミサイルを発射」

「そして、ちーちゃんが急いでIS一号機の『白騎士』

 に乗りこんで、白騎士事件のできあがり~♪

 ……で、あれよあれよと言う間に今のバカみたいな

 世の中と……。

 あれだね、束さんは初めて無力っていうのを思い知ったよ――」

「それは、私も同じだ。

 世界最強だの何だのと言われているが、弟も守れず、友の夢も

 守れないちっぽけな人間さ……」

 

互いに自虐的なことを言い合い、千冬と束は黙り込んだ。

 

「はぁ~そもそもいっくんが、テレビの空飛ぶカッコイイヒーロー

 に憧れたから、ISを作ろうと思ったんだよね~」

「更に妹の箒が星空に憧れたから、宇宙でも活動できる

 ようにした……まったく、シスコンここに極まるだな」

「なに一人だけ普通ぶってんのさ!

 ちーちゃんだって、いっくんに憧れの眼差しをされるの

 想像してノリノリで手伝ったし、デザインだって

 もっとかっこよくしろとかアレコレ注文してきたじゃんか!!!」

「何を言っている?

 姉が弟を喜ばすために、妥協などするわけないだろ?」

 

さも当然の如く言い放つ千冬だが、ここに第三者がいれば

どっちもどっちであり、二人ともシスコン、ブラコンであると

言うのは間違いないだろう。

 

「まあ、お前がシスコンだというわかりきったことは

 置いといてだ……」

「その言葉そっくり返すよ、いっくん命なちーちゃん?」

「怪物となった無人機やそれを倒したリュウケンドー、

 そして宇宙ファイターXの映像を調べてほしい。

 お前なら、学園の施設でもわからないことも調べられるだろ?」

「そりゃ、できるけどさ。

 そんなのあのドロボウ宇宙人に聞けばいいんじゃないの~?

 あれ、どう見てもアイツじゃん~」

 

千冬の依頼に、束はドロボウ宇宙人と口にすると文句を言うように

口を尖らした。あまりその宇宙人のことが好きではないようだ。

 

「そうしたいのは山々だが、アイツと宇宙ファイターを

 結び付けるような明確な証拠がないから

 こうして頼んでいるんだ」

「ふ~ん、まあドロボウ宇宙人の悔しがる顔が見れるかもだから

 束さん全力全開でやっちゃうよ――――♪」

「そう言ってアイツに……カズキに勝ったことがあるのか?」

 

全力全開という言葉に何故か白い服を着て赤い宝石がついた杖を手にした

束が頭をよぎった千冬だったが気にせず、からかうような口調で勝てるのかと問う。

 

「今度という今度は絶対勝つよ!

 勝って、束さんの偉大さを分からせてやるんだから――――!!!」

 

そう言うと束は、電話をきった。

 

「やれやれ……」

 

束とカズキが出会ったら、昔と変わらないやりとりをするのが

目に浮かんだのか、千冬はその時に起こる頭痛に早くも

頭が痛くなってくるがどこか楽しそうでもあった。

 

「どこの誰かは知らんが、これ以上一夏や束、生徒に

 ちょっかいをかけるなら容赦はせんぞ……!」

 

姉として、友として、教師として決意を新たに決めた千冬。

 

一つの幕が下がり、新たな幕が上がるのもそう遠くはない――

 

 

 

 





ここの束は、千冬を巡ってカズキとケンカしたり雅に”アレ”を
されたりして、人づきあいは多少改善されています。
カズキとは、トムとジェリーやサドスティック王子とマヨラーみたいな
関係ですね。喧嘩友達というかwww

ISを作ったのは千冬と一緒になって箒と一夏を喜ばせたいという
シスコン、ブラコンからでした。
どこかおかしくないかな(汗)

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