インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

18 / 75

今回は幕間ということで日常回、一夏たちの話です。
そして、本作品最強のお方が登場します。

活動報告にアンケートを載せているので協力お願いしますm(_ _)m


幕間 妹を思う兄心

「で?」

「で?って何がだよ?」

 

6月のある日曜日、一夏は五反田弾の家にいた。

今は弾の部屋でTVゲームに興じている。

 

「だ~から!女の園の話だよ!いい思いしまくってんだろ、お前!」

 

血の涙を流さんばかりに叫ぶのは、外側にはねたような髪形の少年、

リヴァル・カルデモンドであった。

 

「嘘をつくなよ、嘘を。ついてもすぐわかるからな?

 さぁ吐け!お前が毎日過ごしている天国を!

 男の夢のヘヴンのことを全部吐け!!!」

 

リヴァルと同じように血涙を流す勢いで一夏に詰め寄るのは、少し

お調子者のように見えるラバックという少年である。

 

「いい思いも何も特にないぞ?

 創生種は襲ってくるし、ISの特訓はきついし、

 トイレの数は少ない、力仕事は押し付けられる、

 そしてISスーツ目のやり場には困るし、

 飯を食いに行こうとしたら両手を誰が組むとかで喧嘩に

 なって俺まで怒られて……」

「「それがいい思いだっつ――――の!!!」」

「お、落ちつけよ二人とも」

『こいつの“コレ”はいつものことだろ?』

「気持ちはわかるけど、叫んだってしょうがないだろ?」

 

一夏の言葉に天を衝かんとばかりに叫ぶ、リヴァルとラバックを

なだめるのはウェイブとゲキリュウケン、そして元気がよさそうな

少年タツミであった。

彼らは一夏たちと共に戦う仲間であり、住む世界は違えど

歳も近いためかよくこうやって、集まったりする。

 

「うるせぇ!お前らみたいなモテる奴らはすっこんでろ!」

「そうだ!そうだ!」

『聞く耳もたんか』

「お前らいい加減にしろ!!!」

 

嫉妬に狂う二人にゲキリュウケンが呆れていると、彼らがいる部屋の

主である弾が大声を上げた。

 

「こっちはこれからお客さんが来るって言うのに、

 何でお前ら俺の部屋で騒いでんの!?

 早く片付けして、服も準備しなきゃいけないってのに!!!」

『昨晩、興奮と緊張のために寝れなかったための寝坊が原因である』

「何そんなに慌ててるんだよ弾?」

 

ああでもないこうでもないと部屋を右往左往する弾に、一夏が問いかけるが

その答えは突然の訪問者によって聞けなくなる。

 

「お兄(にい)!さっきからうるさい!

 それとお昼だからさっさと――って、い、一夏さん!?」

 

ドアを蹴破って入ってきたのは、五反田蘭。弾の一つ下の妹である。

 

「あ、久しぶりだな蘭。お邪魔してるぞ」

「おー!なになに、このかわいい子!」

「はじめましてかな?俺はウェイブ」

「俺はタツミ、弾の友達だ」

「リヴァル・カルデモンド、よろしくー♪」

「へっ!あ、あのっ!こ、こちらこそよろしく……。

 そ、それよりもき、来てたんですか……一夏さん?」

「ああ、家の様子を見に。後はちょっと、野暮用」

「そ、そうなんですか……はっ!」

 

次々に彼らは自己紹介をするが、蘭の耳には届いておらず

一夏しか目に入っていないようである。

そんな蘭が視線を落とし、自分の恰好を見てばつが悪そうになる。

彼女の恰好はタンクトップにショートパンツ、長い髪もクリップで

止めてあるだけという、かなりラフな恰好なのである。

 

「蘭、お前もノックくらいしろよ。恥知らずな女だと思われ――」

 

ギンッ!

・蘭(妹)のにらみつける攻撃

・弾(兄)には効果バツグンだ!

・弾(シスコン)は怯んでしまった。

 

「……何で言わなかったのよ……」

「あ、あれ?言ってなかったっけ?ハ、ハハハ……」

 

古今東西どこでも、ISとか関係なく女性の家族に男は

勝てないようである。

 

「はぁ~。それじゃ、皆さんや一夏さんもお昼ご一緒にどうぞ」

「元から、そのつもりだよ。ありがとな」

「い、いえ……」

 

そう言って、ドアを閉じて蘭は去っていった。

 

「しっかし、蘭の奴もう会って三年ぐらいになるのに

 敬語とか……まだ俺に慣れないのか?」

「「「「「『『は?』』」」」」」

 

一夏の言葉に、人間や魔弾龍関係なく“何言ってんだ、コイツ?”な顔となる。

今のやり取りで、蘭が一夏のことをどう思っているかなど

誰が見ても明白である。

 

「だって、なんかよそよそしかったじゃないか?

 すぐに部屋からも出てってたし」

「お前ってさ……たまにわざとやっているのかって

 思う時があるよな~」

「弾、お前の気持ちはよ~くわかるぜ?」

「よかったじゃねぇか?こんな義弟ができなくてさ?」

「はっ?なんで弟なんか出てくるんだ?

 わけわからん」

『それはこっちのセリフだ』

『同意する』

 

頭に?を浮かべる一夏に呆れながら、彼らは部屋を出て下に降りた。

 

弾の家は、食堂を営んでおり昼食をとるために6人は

テーブルにつこうとするとそこには先客がいた。

 

「うげ」

「なによ?何か文句があるの?

 あるならお兄ひとりで外で食べれば?」

「聞いたかよ、皆?

 今の優しさに満ち溢れた言葉。泣けてくるぜ~」

 

一夏の肩をつかみ弾はヨヨヨと泣く真似をする。

だが、一夏は知っていた。

如何に憎まれ口を言われようが、弾が蘭のことを大切に思っていることを。

妹を守るために戦う勇気をゴウリュウガンに認められて、

リュウガンオーになったことを――

 

「別にいいじゃないか。みんなで食べた方が飯もうまいだろ?」

 

一夏がそう言うとタツミ、ウェイブ、ラバック、リヴァルが同じ

テーブルに、残りの一夏、弾、蘭が相席することになった。

 

「あれ?蘭、着替えたのか?

 この後、どこか出かけるのか?」

「こ、これはですねっ?」

 

蘭の恰好は先程のラフなものではなく、清楚なものになっていた。

髪はおろしてロングストレートにし、薄手で半そでのワンピースを纏って、

健康的な脚にはフリルのついたニーソックスを履いている。

 

「あっ!彼氏とデートか!」

「違いますっ!」

 

頭に電球を光らせた一夏の言葉に、超反応で否定する蘭だった。

 

「「「「『『はぁ~』』」」」」

「まっ、兄としてはお前の言うとおりであってほしいけどな。

 何せコイツが家でこんな気合いの入った恰好をするのは

 数か月ぶりゅう!」

 

瞬間、弾の口は蘭の手によってふさがれ、いすから持ち上げられた。

こんなきゃしゃな腕のどこに、そんな力があるのだろ?

 

「オニィ…………?」

「ゴゴゴゴゴメンナヒャイイイイイイ!!!!!」

 

瞳から光が消えた氷点下の眼差しに、数々の戦いを乗り越えてきた

魔弾戦士はあっさりと白旗をあげた。

 

「なんて言うか……すごいな」

「ああ、俺一人っ子でよかったかも」

「アイツも妹に勝てないからな~」

「ああ~、あの頭はすごくいいけど体力ナシのあいつか~

 て言うか、蘭ちゃん。一夏に彼女いること知らねぇのか?」

「相変わらず、仲がいいみたいだね君達?」

「「「「「「「うん?」」」」」」」

 

全員が声が聞こえてきた入り口を見るとそこには、カズキが立っていた。

しかも、一人ではなく――

 

「やっほう~一夏くん♪」

「こ、こんにちは/////」

「久しぶりね、ここも」

「き、奇遇だな一夏/////」

「わ~、ウェブウェブだぁ~」

「お、お邪魔します/////」

「ふむ、いいにおいがするな」

「そうだね、お姉ちゃん。すごく楽しみ」

「カズキさん!それに、楯無さん!簪!鈴!箒も!」

「ほ、本音ちゃん!」

「う、虚さん!もう来たんですか!?」

「アカメにクロメまで!」

「なんか、嫌な予感しない?ラバック?」

「今の内に、離れておくか……」

 

楯無を筆頭にIS学園の恋する乙女を引き連れてやってきた。

アカメ、クロメと呼ばれた二人は、驚く一夏たちは目に入らず、

入った瞬間に漂う匂いに食欲をそそられていた。

 

 

 

「で?何しにきたんですか、カズキさん?」

「何しにきたって、久しぶりにここの料理を食べに来ただけだよ?

 リヴァル」

「じゃあ、そのビデオは何なんすか?」

「決まっているだろ、ラバック?

 あれだよ、あれ」

 

カズキは、リヴァルとラバックの近くに座りビデオカメラを回して

三人の目の前で行われている出来事を録画する。

 

「ねぇ~、一夏くん?

 ここに来るまでに疲れちゃったから、食べさせて~」

「お姉ちゃん、ずるい!」

「そ、それなら私も同じだ!た、たべたたべべべべ/////」

「何なのよ~、この美人さん達は~」

「ら、蘭にも負けてる……」

「ちょっ!落ち着いてくれ!」

 

一夏の周りでは、楯無が一夏に甘えようとしそれを見た簪と箒が

同じようなことをしたり、一目で彼女たちがライバルだと理解した蘭が

彼女たちのあまりのレベルの高さに落ち込んだり、

鈴が年下の蘭にまで“あれ”の大きさが負けてorzになっていたりと

なかなかに混沌としていた。

 

「わ~い♪ウェブウェブとごはん♪ごはん♪」

「…………」

「ほ、本音ちゃんちょ!近いって!

 ……イデデデデデ!ク、クロメ!?

 なんで、つねってるんだよ!」

 

ウェイブの隣では、両方にそれぞれ本音とクロメと呼ばれた黒髪でセーラ服を

着た女の子が座っている。本音はウェイブの腕にくっつきながら、ご飯を

食べ、それを見たクロメが普段は何を考えているか読めない顔を

若干ふてくされたように歪め、食事しながらウェイブの脇をつねるという

器用なことをしていた。

ちなみに、本音のあれは箒や楯無と変わらない大きさであり、

ウェイブの腕にはそのやわらかいものが当たっていたりする

 

「うむ、店主。なかなかの腕だな!」

「いつもながら、どれだけ食うんだよお前は」

 

一夏とウェイブに比べて、タツミとクロメに似た容姿で黒い長髪の

アカメは比較的平和であった。この店の料理が気にいったのか、

サムズアップをしながら、何杯もお代わりをしている。

 

「いや~、やっぱりこういうのは見てておもしろいよね~

 ククク。

 本当は、一夏には後二人いるんだけど、今日は用事が

 あるみたいでね~。

 ちなみにあいつも実家に帰ってるところ。

 ここにいたら、もっとおもしろいことになったのにねぇ~」

「相変わらずっすね、アンタは……」

「うるせーぞ、おめぇらぁ!

 おとなしく食わねえなら下げるぞ!」

 

怒鳴り声を上げたのは、ここ五反田食堂の大将で弾の祖父、五反田厳(げん)

である。齢は80を超えているというのに、中華鍋を一度に二つも振れる

豪快な人であり、マナーの悪いものには例外なくお玉が飛んでくる。

孫娘溺愛歴14年でもある。

 

「それより、何すか?あれ?」

 

ラバックが指さしたのは、互いに向き合って座りカチンコチンに

固まっている弾と虚であった。

 

「……(ぐほっ!なんだ今日の虚さん!かわいすぎて、直視できねぇ!)」

「……(五反田さん、どうして黙っているのでしょう?

 ど、どこかおかしかったでしょうか??)」

「「あ、あの!」」

「う、虚さんからどうぞ/////」

「い、いえ五反田さんから/////」

「いや~甘酸っぱいね~青春だね~♪」

「ラバック、なにこれ?」

「弾の野郎、いつのまにあんな美人と」

 

付き合い始めたカップルがごとく、話が進まない二人をカズキは

にんまりとして録画し、リヴァルとラバックはついこの間まで

自分たちと同じだった弾を背後に炎を燃やしながら、睨んでいた。

 

「お姉ちゃん朝から気合い入れて服選んでたのに、

 ダンダンったら、気のきいたこといわなきゃダメだぞ~」

「あ、あのカズキさん。お兄と一緒にいる人って……」

 

本音の言うように、虚は学園での生真面目な印象とは違い蘭と同じく

清楚な服装であるが、そこに知的という印象もプラスされているので

街中にいけば、男たちが我先とばかりに声をかけてくるだろう。

もっとも、彼女は更識家の従者であるため護身術も体得しており

並の男より強いのであるが。

そんな彼女が本日、ここ弾の家に来るためにいつも整理整頓している

部屋をひっくり返すほどの勢いで服を選んでいたなど

余裕のない弾には知る由もなかった。

 

一方、蘭はふと静かな兄の方に目をやると自分の想い人の周りに

いる者たちに優らぬとも劣らない美人と一緒に初めてのお見合いの

ようにしてるものだから、カズキにおずおずと尋ねてきた。

 

「うん?彼女は、布仏虚と言ってね~。

 まあ、簡単に言うと君の将来のお姉さん候補ってところかな~?」

「え?……えええええええええ!!!!!?

 おおおおおお姉さん候補って……ええええええええええ!!!!!」

 

余程信じられないのか、蘭は目を見開いて驚く。

 

「おおおおお兄に彼女!!!?

 だってお兄は、お兄で!だから……えええええ!!!!!」

「蘭、何言ってんだ!!!そりゃ、こんな美人が彼女ならうれしい、

 じゃなくて!!!」

「わわわわわ私が彼女、恋人、お嫁さん……キュウ~」

「わ~、お姉ちゃんタコさんみたいに顔真っ赤~」

「あらら、あんなかわいい虚ちゃんは始めてみるわね、簪ちゃん?」

「うん、意外」

「彼女か……」

「あれが普通よね。なのにコイツは……」

「何見てんだよ二人とも?」

「ククク♪ちょっと、予想外だったけどいいね~いいね~」

 

蘭の暴走に、弾だけでなく虚までいつかの簪みたいにオーバーヒートし、

楯無と簪は見たことのない彼女の様子をアラアラと見て、

箒と鈴は、これが普通の反応だよな~と思いながら少しも

今の状況がわかっていない一夏に目をやった。

しかし、そんな二人に我慢できないのが……

 

「嘘だろ……弾も結局“そっち側”かよ……」

「だぁぁぁ!!!一夏は、天然ジゴロ!

 ウェイブはクロメちゃんだけでなく、天然っぽいかわいい子にも

 懐かれてるし!タツミは年上受けするし!

 他の連中もなんだかんだで、女の子とイチャイチャしてるし、

 ふざけんじゃねぇぇぇ!!!」

 

リヴァルは手をつきながらこの世の不公平を嘆き、ラバックは頭を抱えて

嫉妬の声を天高く上げた。

 

「こうなったら、弾が俺から借りてきたお宝本の数々を暴露して……」

「あら~?せっかく、咲き始めた恋の花をつまもうとする

 悪い子はだぁ~~~れ?」

 

男ならばれたくないヒミツを明かそうとした、ラバックの後ろに

いつの間にいたのか、笑顔に影を纏った吉永雅が立っていた。

 

「「「「雅さん!?」」」」

「おお~きれいな人だね~」

「一夏くんの知り合い?」

「きれいだけど、なんだろう?何か近づきたくない……」

「あら、雅さんお久しぶりです♪」

 

突然やってきた雅に、彼女を知る一夏、箒、鈴、蘭は驚きの声をあげた。

一夏たちの驚きに疑問の声を出す、楯無たちだが簪は雅の

言いようのない迫力に怯えてしまう。

 

そして自称、五反田食堂の看板娘、五反田蓮(れん)が

久しぶりの雅の来店を喜んでいた。

この人は弾と蘭の母親であるのだが、実年齢は二人とも知らない。

“28から歳をとっていない”とのことである。

 

「ちょっと待てよ!」

「あの人、ラバックの後ろを取ったぞ!?」

「……できる」

「……」

 

ウェイブとタツミは、雅がラバックの後ろをとったことを驚いていた。

彼らの気配察知能力は、裏の世界を知る楯無や

魔弾戦士である一夏、弾以上なのだがそれに気付かれることなく

現れたことから、警戒を強める。

 

「はは、落ち着きなよ皆。

 この人は吉永雅さん、一夏や千冬ちゃんの保護者だよ」

「みなさん、こんにちは。

 吉永雅です。

 さて、厳さん?奥の部屋を借りてもいいかしら?」

「へ、へい!いくらでも好きに使ってくだせぇ!!!」

 

頬に手を当てて顔を傾げながら、尋ねてくる雅に対して

一夏たちを怒鳴った時の勢いはどこに行ったのか、厳は

背筋を伸ばし、ビクビクしながら答えた。

 

「うふふ、ありがとう。

 じゃあそこの君?カズキくんみたいに、さりげなく

 バラすんじゃなくて、直接人様の恋路を邪魔する悪い子が

 どうなるか、教えてあげるね♪」

「えっ!ちょ、待って!

 てか何?この人!すっげぇ力なんだけど!ちょっ!」

 

微笑みながら、うっすらと開けたその細めた雅の目は

笑っておらずラバックの襟首を掴んでズルズルと奥の部屋へと

有無を言わさず連れていった。

 

「ラバック……お前のことは忘れない」

「友よ、安らかに眠ってくれ……」

「いい奴だったよね~」

「えっ?何?何が起きるの?」

「何であきらめモード?」

「楯無さん、簪、何も言ってはいけない」

「そうよ、あの人だけは絶っっっっっ対に敵に回しちゃいけないのよ。

 千冬さんだって、敵わないんだから……」

 

一夏たちが、ラバックとはもう会えないかのごとくふるまう中で

なにがなんだか分からない面々は傾げるだけだったが、

その理由はすぐにわかった。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

ラバックの悲鳴が店の中に響き渡った。

 

「あ゛あ゛あ゛っ……あ゛あ゛!

 ……あ゛……………」

 

悲鳴がどんどん小さくなって、静まり返って数分が

過ぎると、雅が戻ってきた。

 

「は~いみん~な♪お説教は終わりましたよ~♪」

「…………」

 

笑顔を浮かべる雅とは対象的に、ラバックはほにゃ~とした

放心状態であった。

 

「……何が起きたの?」

「なあ、一夏。お前たちなら知ってる……ってどうした!?」

 

楯無が扇子を開いて摩訶不思議の文字を浮かべ、

ウェイブが詳細を知ってるであろう、一夏たちに話を聞こうとしたら

一夏、箒、鈴はこれでもかと言うぐらいガタガタと震えていた。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

「あああああああああ……!!!!!」

「ひぃっ!ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

「一体何が……」

「タツミ、それにみんな。

 世の中には、知らなくてもいいことがあるんだよ?

 俺も、アレを受けるのは流石に勘弁だね~」

「ふふふふふ……」

 

ラバックの身に何が起きたのかを知っているのか、カズキは

知らない者たち忠告をし、自身もそれを受けるのはゴメンだと言う。

異様な空気の店の中で雅の微笑みだけが静かに響き渡った――

 

その後、雅も交えて一同は昼食を再開した。その中で、

一夏とのやりとりも再開した箒たちを見て、蘭は立ちあがった。

 

「私、決めました。来年IS学園を受験します!」

「はあっ!?お前何言って――」

 

ガツ――――ン!

弾の顔にお玉が命中して、顔を押さえてうずくまり、みんなの視線が

蘭に集まる。

 

「待てよ蘭。受験って、確か蘭の学校は大学までエスカレータ式だろ?

 おまけにネームバリューまであるし……」

「大丈夫です!お兄と違って、私の成績は優秀ですから筆記でも余裕です!」

「いや、そういうことじゃなくて……」

「待て待て待て!た、確かIS学園って、実技があるだろ!?」

「ええ、あるわよ。IS起動試験っていうのがあって、

 適性のない子はそこで落とされるの」

 

蘭の言葉に大慌てで弾は、なんとか諦めさせようとし楯無が試験に

ついて簡単に説明する。

 

「心配ご無用です!」

 

蘭はポケットから、何かの紙を取り出し弾に渡した。

 

「何だコレ?IS簡易適性試験……判定Aっ!?」

「というわけで、問題は既に解決済みなのです!」

「で、でも待てよ!適性があるからって、うまく動かせるとは

 限らないんだろ!?なっ!」

「う~ん、俺はあまり気にしたことないけど……」

「蘭、あんまISのこと甘く見ない方がいいわよ?

 適性が高ければいいってもんじゃないし……」

「そうね、適性なんてあくまで目安みたいなものだしね~」

「うぐっ!と、とにかく受験しますから一夏さんには

 先輩として是非ご指導を!」

「だ~か~ら~待てっての!

 そんな簡単に学校を変えるのを決めんなっての!」

「何だ、弾。おめぇ蘭が決めたことに文句あるのか?」

 

ああ言えばこう言うな感じで、受験を止めさせられそうになるが

蘭は強引に話をまとめようとする。

尚も反対する弾に厳がギロリと睨みをきかした。

いつもなら、これで弾がビビって終わりなのだが――

 

「文句ありまくりだろうが!俺は絶対反対だぞ!」

「ほぅ~」

「お兄!」

「俺も反対だな」

 

頑なに反対する弾に対して、一触即発の空気が流れるが

弾と同じように一夏も反対した。

 

「一夏さんっ!どうして!?」

「蘭は簡単にISを学ぶとか言ってるけど、実際はそんな簡単なことじゃ

 ないんだ。

 そうだな……例えば今俺たちが食べているご飯があるだろ?」

「はい?」

 

何故ここで、食事の話が出てくるのか分からなかったが一夏の目は

至って真剣だった。

 

「この料理は、厳さんが丹精込めて作ってくれて、食べた人を笑顔に

 してくれるけど、このご飯を作るのに使った道具……包丁とか

 使い方を間違えたら逆に人から笑顔を奪うだろ?」

「そ、それは……」

「厳さんのように、正しく使えば包丁は多くの人を笑顔に

 できるけど人を傷つけることもできる……。

 ISも同じさ。

 今は競技で落ち着いているけど、

 あれは人から笑顔を奪う力でもある。

 それを使う意味を本当に分かっているか?」

「……」

 

一夏の言葉に、蘭は言葉を失ってしまう。他のみんなも一夏の話に

耳を傾けていた。

 

「弾もさ、意地悪で反対してるわけじゃないぞ。

 お前のことが心配だから、こう言っているんだ。

 だから、よく考えて決断した方がいい」

「……わかりました」

「厳さん?甘やかすだけが、家族じゃないのよ?

 時には嫌われてでも厳しくしないと!」

「雅さん……面目ねぇ……」

 

一夏の言葉に続くように、雅も視線を鋭くして厳に説教をした。

 

「かっこいいねぇ~一夏くん」

「うん/////」

「……/////」

「い、一夏のくせに/////」

「あらあら、一夏ったら♪

 ほ~~~んと、あの子に似てるんだから~」

「あの子って、誰のことですか?」

 

一夏の言葉に顔を赤くする、箒たちを見て雅は昔を懐かしむような

顔で一夏が誰かにそっくりだと言う。

それを聞いていたタツミが、どういうことか尋ねてきた。

 

「あの子っていうのは、一夏の父親よ~。

 一夏以上に女の子が集まってね?

 でも、周りの子達なんか目に入らないで幼馴染み、一夏の母親に

 ずっ~と夢中だったもんだから、一夏より大変だったのよ?」

「こ、これ以上って……」

「どんな父親だよ……」

 

目の前で行われた恋する乙女の戦場ですらかなりのものなのに、

それ以上のものとは……、

ウェイブとリヴァルは顔も知らぬ一夏の父親に畏怖を覚えるのだった。

――何でそんな20代の容姿で、一夏の両親の昔話を知っているのかと

疑問を抱くのを忘れるほどに。

 

その後、食事を済ませ弾と虚が連絡先を交換し合いなどして、

五反田食堂での一幕は終わった。

 

ちなみに弾とウェイブは本音と虚にそれぞれ

“お姉ちゃん(妹)を泣かしたら……夜道には気をツケテネ(クダサイネ)?”

と、笑っていない目をしながら満面の笑みでこんなことを言われていたりする。

 

 

 

 

 





久々に本人登場の雅さんでした~。
一話目で言っていた”アレ”とは、おイタをした子を
部屋に連れ込んで……(´°ω°`)となることをします。
えっ?内容?……どうしても……知りたいんですか?

布仏姉妹は普通に互いが好きな普通のシスコンですwww


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。