インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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最新話、完成です。
いつもより長くなっています。

活動報告に一夏の恋人についてのアンケートを載せましたので、そちらの方も是非。



真夜中の話し合い

「あ……れ?」

 

一夏が目を開けるとそこには白い天井が、広がっていた。

 

「ここは……?」

『(気がついたか?)』

「(ゲキリュウケン?俺は確か……)」

 

起きたばかりで頭が働かない一夏は、どうして自分がこの部屋で

寝ていたのかを思い出し始めた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ふぅ~」

『無事に離脱できたみたいだな』

「二人とも、お疲れさん」

『リュウガンオーとグランシャリオも無事に離脱できたみたいだぜ』

 

一夏とゲキリュウケン、カズキ、ザンリュウジンはワープキーを使って

屋上に移動し、変身と仮面をそれぞれ解いていた。

 

「それにしても、ムドガを攻撃したあれは……」

「そっちは、俺の仕事だから任せておきな

 それよりお前に化けたハチと鈴は、保健室に運ばれただろうから

 ボロが出る前に入れ変わらないと」

「そうだった!

 あっ!そういえば、ハチが俺に化けたならカズキさんに

 化けてるのって一体……って、

 何でカズキさんはハンマーなんか構えてるんですか?

 そもそも、どこから出した!」

「だって、お前気絶してる設定だろ?

 だったら、ちゃんと気絶しておかないと♪」

「ま、待って……あああああっ!」

 

にっこり笑うカズキと振りかぶったハンマーが視界に入ったのを

最後に、一夏の意識はそこで途切れた

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「(そうだ。俺、カズキさんに気絶させられたんだった……!)」

『(あの後、カズキはお前をこっそり運んだ後、弾たちの

 元に行ったんだ)』

「(あの人は……)」

「気がついたようだな」

 

一夏がカズキのマイペースぶりに、うなだれていると千冬が姿を現した。

 

「千冬姉……」

「目立った傷はないようだが、全身に打撲と頭部にコブが

 あるそうだ。数日もすれば治るだろう」

「ハハハ……コブねぇ~」

 

まさか、カズキに殴られてできましたとは言えない一夏であった。

 

「それと凰だが、こっちは疲労だそうだ。寝てれば、その内起きるだろ」

 

一夏が隣に目をやると、ベッドの上で眠る鈴の姿が目に入った。

 

「こちらの指示を無視したとはいえ、あのような状況で

 二人ともよくやったな。

 お前たちがあの宇宙ファイターとか言う奴が

 作ったものに閉じ込められた後のことは、後日

 話を聞くことになるから、忘れない内にその時のことを

 何かメモとかしておけ」

 

そう言う千冬の顔はどこか安堵したようなものだった。

 

「千冬姉……」

「何だ?」

「心配かけてゴメン……。

 そ、そのできるだけ心配かけないよう……

 強くなるから……さっ」

「生意気なことを……。

 別に心配などしていないさ。私の弟だからな。

 しぶといに決まっている」

 

一瞬虚をつかれたように、驚く千冬だったがすぐに笑みを浮かべ

一夏の頭をクシャクシャとなでる。弟の成長がうれしいようだ。

 

「では、私は後処理に戻るがお前はもう少し休んでから、部屋に戻れよ」

 

そう言って、千冬は保健室を後にして壁にもたれかかるカズキと遭遇した。

 

「……」

「何も聞かないの?」

「……聞いたらお前は答えるのか?」

「質問にもよるね~」

 

いつもとは違う少し張りつめた空気が二人の間に流れる。

 

「まあいい。

 だが、一つだけ答えろ。

 一夏がやっていることは、お前がやらせ始めたのか?」

「やっぱり、気付いていたんだ。

 その質問だけど、答えはNoだよ。

 あいつは、自分で考えて自分で決めたんだよ」

「……ならいいさ」

 

千冬は、肩をすくめ力を抜くとやれやれといった感じで

その場を後にした。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「もう二人とも!そんなに緊張しなくていいのに~」

「い、いや!そそそそんなことないっすよ!」

『体温上昇、心拍数増加。

 いわゆる緊張している状態である』

「ばっ!何言ってるんだお前!」

「ははは……や、やっぱ緊張しますね、こういう状況」

 

現在、生徒会室では魔弾戦士のことを知っているメンバーと

清掃員の恰好をした二人の男がいた。

 

一人は赤い髪でバンダナを巻きゴウリュウガンと言いあいをしている

少年、五反田弾。

 

もう一人は、いかにも面倒見がよさそうでいい奴だがどこか

苦労人な感じを漂わせる少年、ウェイブ。

グランシャリオの装着者である。

 

「ワープーキーを使って、屋上から離脱したのはいいけど……。

 ウェイブ、なんだよこの美人さんたちは!」

「一夏の奴、こんな美人に囲まれて生活してるのかよ……」

『報告によると、本人は中学時代と大して変わらない生活態度のこと』

「まっじかよ!?

 いくら、恋人の”あいつ”がいるとしても、なんかあんだろ普通!」

「というか、何か視線が落ち着かないな……」

 

世間一般的に言って、今生徒会室にいるものたちは

アイドルやモデルといってもいいぐらいの美人ぞろいである。

そんな彼女たちと同じ空間にいるということは、一夏とは違い

普通の感性をもつこの少年たちには落ち着かないものがある。

 

ヒソヒソ声でしゃべる弾とウェイブを見て、セシリア、シャルロット、

簪は興味深そうに見て、本音はウェイブを見てきゃっ♪と頬を染めながら

イヤンイヤン♪と頭をふり、虚は興味無さそうにしているが

弾のことをチラチラと見ていた。

楯無は、幼馴染みの二人の様子を見て扇子を広げながら“ふふふ”と

笑っていた。

 

「ごめんごめん~、遅くなったみたいだね」

「カズキさん!」

「遅いっすよ!」

 

弾とウェイブがどうしたものかと思っているとカズキがやってきた。

 

「まさかと思いますけど、俺たちがオロオロするのを

 外で見てて入るタイミングを見計らっていたなんてことないですよね?」

「ははは、まっさか~」

 

ジト目で見るウェイブを気にすることなく、いつもの飄々とした

態度で返すカズキであった。

 

「さてと、とりあえず互いに自己紹介から始めようか」

「それじゃ、私から♪

 私は更識楯無、ここIS学園の生徒会長をやっているわ。

 それで、こっちが私のかわいいかわいい妹の「お姉ちゃん!」」

「い、妹の更識簪です。よろしくお願いします」

「布仏虚です。生徒会の会計をしています」

「お姉ちゃんの妹の布仏本音だよ~。生徒会では、書記をやってま~す。

 そして、更識家のお手伝いをやってま~す♪」

「わたくしは、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ。

 以後お見知りおきを」

「僕は、シャルロット・デュノア。フランスの代表候補生です」

「俺はリュウガンオーの五反田弾。こっちは相棒のゴウリュウガンだ」

『よろしく、頼む』

「俺の名はウェイブ。海の男だ、よろしくな!」

「ウェイブは別の世界から、応援に来てもらったから

 そうは来れないけどこの二人が主に援軍として来てくれるから

 仲良くしてくれ」

『でもよ、カズキ?一夏の相棒でこの世界の住人の弾はともかく、

 なんでウェイブなんだ?他にもいるだろ?』

 

自己紹介がそれぞれ終わると、ザンリュウジンはカズキへと

疑問を投げかけた。

 

「確かにそうだけど、この学園に潜入できてすぐに姿をくらませて

 教師や生徒に正体も隠せるように奴らと戦えるとなると

 ウェイブやアイツくらいだろ?

 でも、アイツがここに来たら……」

「“あの人”が黙っていないですね……」

 

ウェイブはそう言って、“あの人”が心底惚れている“アイツ”が

任務とはいえ女の園に行くとなったらどうなるか……、

考えただけで頭が痛くなるのであった。

 

「それはそれでおもしろそうなんだけどね~

 それとアイツらは今……」

「失礼します」

 

カズキが何か言おうとしたところで、“カズキ”が忍者のように現れた。

 

「う、碓氷先生が二人!」

「ふ、双子!?」

「あわわわ~」

「落ち着きなよ、皆。この人は味方だよ。

 ご苦労だったね、咲世子さん」

 

カズキがそう言うと、後から現れた“カズキ”は顔に手を当てると、顔が

マスクのようにはがれ別人の顔が現れ、髪に手をやるとカツラだったのか

それが外れるとおかっぱ頭の女性が姿を現した。

 

「はじめまして、皆さん。篠崎咲世子(しのざき さよこ)と言います。

 今回、碓氷さんの依頼で参上いたしました」

「彼女は、ある世界のSPでね。助力を頼んでいたんだ。

 その実力は、ここに現われたのとここまで正体を見抜かれなかった

 ので証明済みさ♪」

 

皆が呆気にとられる中、咲世子はうやうやしく頭を下げた。

 

「それで、どうだった咲世子さん?」

「はい、この機に潜入しようとしていた者たちは全員捕獲。

 いつでもお帰りいただける準備はできています」

「何の話ですか?捕獲?」

 

話が見えない弾とウェイブは、頭をかしげた。

 

「このIS学園には、どんな国だろうが組織だろうが干渉できないっていう

 国際規約があるんだけど、それでも隙あらば学園内の専用機のデータとかを

 奪おうと虎視眈々と狙っている奴はいてねぇ~。

 更に、今年は男なのにISを動かした奴がいるから余計にね?」

「ああ~」

「そこで、咲世子さんには俺が前線に出た時の影武者と同時に

 騒動の後処理で隙ができる

 このタイミングを警戒してもらったんだけど、見事に網に

 かかってくれたみたいだね~。

 さぁ~て、お客さんにはどうしてもらおうかな~?」

 

クククと楽しそうに笑うカズキに、寒気を覚える皆であった。

 

「話を戻すけど、咲世子さんはウェイブと同じように違う世界から

 来てもらったんだ。そこにも力を貸してくれる仲間はいるんだけど、

 今手が離せなくてね。

 それで、今回は弾とウェイブに咲世子さんの三人に来てもらったんだ」

「そう言えば、何で俺たちアルバイトって形で

 潜入させられたんですか?」

「簡単なことさ、アルバイトなら書類さえ通れば

 自然な形でIS学園に入れるし、その後の隠滅も比較的

 楽で足取りを掴ませにくいからね」

「へぇ~でも、そのおかげで中間の勉強が……」

『日ごろサボっている結果である』

「お前も大変だな、弾……」

「だったら、勉強見てもらったらどうだ?彼女に」

「へっ?」

「えっ?わ、私ですか!?」

 

いきなり話を振られて虚は、驚いた声を上げる。

いつもなら、こんな風に話を振られても落ち着いて対処するのだが、

今の虚はオロオロするばかりであり、カズキと楯無はその様を

ニタァ~とした目で見ていた。

 

「彼女は三年で優秀だし、君も弾に助けてもらったお礼をしたかったんだろ?

 だったらちょうどいいじゃないか~♪」

「そうね、虚ちゃんの教え方と~~~っても分かりやすいし♪」

「う、碓氷先生!?お嬢様!?」

「カズキさん、何言って!

 そりゃ、俺好みの美人さんというかかわいい人なら大歓迎というか

 こっちから、お願いしたい……じゃなくてっ!」

『弾の好みと比較した場合、95%以上でストライクの部類に入る』

「ちょっ!おまっ!黙ってろ!」

「え~っと、どういうこと?」

「ふふ~、虚ちゃんはね?

 私たちが一夏くんに助けられたように、弾くんに助けられたのよ

 シャルロットちゃん♪」

「しかも、一夏が君達を助けた時以上に体を張ってだから

 そりゃねぇ?」

「どういうことですの/////!」

「ぜ、是非詳しく/////!」

 

顔を赤くして慌てふためく弾と虚を尻目に、セシリアとシャルロットは

息を荒くして、カズキに楯無、簪に詰め寄った。

 

「虚ちゃんねぇ、敵に捕まって人質になっちゃったのよ。

 で、敵は弾くんに変身を解くように言って彼をタコ殴りにしたの」

「虚さんは、自分に構わず戦ってって言ったんだけど

 あの人笑いながら虚にこう言ったんだって」

「“女の子を守ってできた傷なんて、男にはこれ以上ない勲章っすよ……”

 ってね♪

 まあ、もちろんそこから見事に逆転勝利もしたから、そんなとこを

 見せられたらね?」

「「……/////」」

「二人とも、何を想像してるのかわかりやすいわね~」

「でも、気持ちはわかる/////」

 

セシリアとシャルロットは、もしも一夏にそんな風に守られたらと

想像して赤くなった。

そんなカッコイイことをされたら、何も感じないということはないだろ。

 

現に弾と虚は、顔を真っ赤にして何故か互いを褒め合っている。

 

そして、カズキはチラリとウェイブの方を見た。

 

「ねぇ~ねぇ~ウェブウェブは、海の男って言ってたけど

 海の近くで育ったの?」

「ウェブウェブって、俺のこと?」

「ダメだったかなぁ~?」

「い、いやそんなことないぞ!

 だから、そんな目はしないでくれ!」

 

ウェイブは本音としゃべっており、付けたあだ名がダメかと

涙目になる本音だったがウェイブは慌てて慰めた。

どうやら、海の男は女の子に弱いようだ。

 

「ひょっとして、布仏さんも?」

「うん、虚と同じように人質にされてあのウェイブって人に

 助けられたの」

 

シャルロットが簪に聞くと、本音はいつもののほほんとした

感じではなくはにかみながら話すという、恋する乙女オーラを全開

にしていた。

 

『この部屋の桃色空間度、現在87%。

 尚も上昇中』

『俺らにもわかるぐらい、空気が甘くなってきたな』

「青春だね~」

「碓氷さんこちら、頼まれていた例の……」

「いつもありがとう、咲世子さん♪

 おお~こっちも相変わらずのようだね~」

「別にこれぐらいかまいません。私も見てて楽しいですし♪」

 

カズキが咲世子からもらった写真には、一夏のように

整った顔立ちの一人の少年が複数人の女の子から取り合いをされている

姿が映っていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「どうだ、山田くん」

 

ここは、IS学園にある地下空間。

特別な権限がある者しか入れず、デスブロムが出現する際に

弾き飛ばされた無人ISの残骸はここに運び込まれ、解析が行われていた。

 

「破損はひどいですが、人がのっていた形跡は見られません。

 やはり、無人機である可能性が高いかと」

「やはりか……」

「遠隔操作(リモート・コントーロル)か独立起動(スタンド・アローン)。

 どちらにしても、それ以上に問題なのは……」

 

エレンがそう言うと今日の戦闘映像、リュウケンドーが姿を見せた

辺りに千冬と真耶は視線を移す。

 

「一体、何者なんでしょう……」

「カズキから話は聞けないのですか?」

「ダメだな。

 アイツが関わっていると明確な証拠でも、突き付けなければ

 話す気はないだろう……。

 逆に言えば、それができなければ関わる資格はないということか……」

「でもあの宇宙ファイターXはどう見ても……」

「あの後、私たち二人は更識妹と一緒にいるのを見ているからな、

 はぐらかされるだけだ」

「恋人としての勘というのはダメなんd、グエッ!」

 

リュウケンドーに深く関係していると思われるカズキにどう話を聞こうかと

三人は頭を抱える中、エレンがこれはダメかと提案したら千冬に

撃墜されて床に沈んだ。

 

「コアの方は見つかったか?」

「は、はい!カケラと思われるのは見つかったので、

 おそらくは破壊されたのかと!」

 

怯える真耶や頭から煙を上げて沈むエレンを無視し、千冬はもう一度

戦闘映像に目をやった。

かつて世界最高の座にあった戦士の顔で――

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「入って行ったね……」

「一体何をするつもりなんだろ……」

「それを今から、確かめに行くんや!」

 

なのは、フェイト、はやての三人は今日一夏と鈴の試合があり、

無人ISとの戦いがあったアリーナの入り口前にいた。

あんなことがあったので、アリーナは立ち入り禁止となっている。

 

「でも、こんなこと……」

「何を言うてるんや、なのはちゃん!

 あの宇宙ファイターXは誰が見ても、碓氷先生なのは間違いない!

 リュウケンドーや戦っていた相手、おまけに反応が途絶えた

 サーチャーにもSランク超えの魔力が確認された。

 もし、そんなのが他にもいて戦い合っているんやったら、

 世界が大変なことになる!

 それにひょっとしたら、基地の襲撃犯についても

 何か知っとるかも……」

「だから、直接話を聞こうと碓氷先生を探していたら、

 どこかに行くみたいだったから後を付けたわけだけど……」

「フェイトちゃんの言いたいことは、わかるで。

 如何にもな、ワナの匂いがプンプンや。

 でも、今は行くしかない!」

 

はやての言葉にうなずき、三人はそれぞれのデバイスを構える。

 

「結界を張ったと同時に、バリアジャケットを展開して突入や。

 ……行くで!」

 

はやてがそう言うと、結界を展開し、三人はそれぞれのバリアジャケットを

展開した。

 

なのはは白を基調として、どこかの学校の制服を思わせるバリアジャケットを

展開し、サイドポニーテールをツインテールと変えて

杖に変形したレイジングハートを左手に握る。

フェイトはロングヘヤーをツインテールとし藍色のコートの上から白いマントを

羽織り、左手に手甲を右手に斧へと変形したバルディッシュを構える。

はやては、黒を主体として金のラインが入ったバリアジャケットに

白のジャケットとベレー帽をかぶり、背中から3対6枚の黒い翼を生やし

杖を掴む。

 

それぞれのバリアジャケットを展開すると飛行魔法を発動し、

上空からアリーナに降り立つ。

 

「特に変わったところは、ないね……」

「油断したら、あかんでなのはちゃん……」

「バルディッシュ、結界内のサーチを……」

「その必要はないよ?」

 

前触れもなく聞こえてきた声に、辺りを見回すとアリーナの外壁の上に

月をバックにして立つ、宇宙ファイターXの仮面をつけたカズキがいた。

 

「遠い銀河の彼方から、青く輝く地球を守るため流れ着いた、

 一筋の流れ星!宇宙ファイター……X!

 とう!」

 

カズキ?は名乗りを上げると飛び降り、アリーナにクレータを

つけながら着地した。

 

「ふふふ……、私に何か用かな?時空管理局のお嬢さん方?」

「(待ち伏せされてた!)

 昼間の事件、そしてリュウケンドーに関する話を聞かせてください。

 碓氷先生」

「違う、私は宇宙ファイターXだ」

「いやいや。ごまかすのは、無理ありますって。

 だって……同じ服やないですか!」

 

フェイトが、話を斬りだすもカズキ?は頑なに宇宙ファイターX

だと言うが、はやてがばっさりと斬りにかかった。

何故なら、彼は先程からつけていたカズキと同じスーツ姿で、

宇宙ファイターXの黄金のマスクをしているだけなのだ。

 

「やれやれ、君達思いこみで話を進めるのは良くないよ?

 服は同じでも、このマスクの下にあるのは別人かもしれないじゃないか?」

「せやったら、そのマスクをとって顔を見せてください

 (これやったら、まず断るはず。

 そこから本命の要求や質問をして、一気に話の主導権を握る!)」

「うん、いいよ」

「「「えっ?」」」

「だから、マスクを取ればいいんだろ?」

 

話の主導権を握るために、確実に通らないと思った要求があっさりと

通って、なのはたちはそろって目を開いて驚く。

 

「ふっふっふっ……。

 さあ、見るがいい!この私の真の姿を!」

 

右手でマスクを左手でスーツの肩を握って、スーツを脱ぎ去ると

そこにいたのは……

 

「うそっ!?」

「なんやてっ!?」

「お、お義兄ちゃん!?」

「どうしたんだ、三人とも?そんなハトが豆鉄砲を喰らったような顔をして?」

 

なのはたちにとって縁の深い人物、フェイトの義兄クロノ・ハラオウンが

そこにいた。

 

『お待ちください、Sir』

『マスター、目の前の人物はクロノ・ハラオウンではありません。

 魔力の測定ができません』

「その通り!私はクロノ・ハラオウンではない。

 私は宇宙ファイターX。

 Xとは、未知を表す。ゆえに、その顔を知る者はおらず、

 誰かの顔と姿を借りて現れる。

 こんな風に!」

 

宇宙ファイターXが再び服に手をかけて脱ぐと、そこには

またも彼女たちに縁がある人物が立っていた。

 

「シ、シグナム!?」

「そうです、主はやて。

 私、宇宙ファイターXは

 このように姿、顔をいくらでも変えられるのです。

 ……だから、この碓氷カズキの姿も仮の姿の一つ。

 理解できたかな?」

 

宇宙ファイターXはシグナムと呼ばれた者の姿からカズキの姿を

取ると、再びマスクをつけた。

 

「だが、君たちは何を持って私をカズキやクロノ、シグナムでないと

 判断するのかな?魔力を測れないようにするなど

 そう難しくないし、第一何故私が嘘を言っていないと

 分かるのかな?

 私が悪人で君たちを騙そうとしているのかもしれない。

 でも、本当は君たちを混乱させるために仮の姿と言って

 自分の姿をカズキが出したかもしれない。

 さあ、どうする?」

「(あかん!いつの間にか、主導権をあっちに握られとる!)」

 

なのは達は、宇宙ファイターXの言葉に後ずさりはやては自然に

話の主導権を握った彼に、畏れを感じ始める。

 

「(悪いね~はやて。お前たちがつけていたのは“風”を通じて筒抜け

 なんでねぇ~。そもそも尾行はバレバレだったけどね)」

 

宇宙ファイターXことカズキは仮面の下でほくそ笑んでいた。

彼は、彼女たちが自分をつけていたことも彼女たちが設置したサーチャーの

場所も既に探し当てていた。

 

精霊魔術。

世界に存在する精霊の力を借りて、物理現象を超えた

事象を引き起こすことができるこの世界に存在する魔術。

カズキは、この精霊魔術の一つ風を操る風術を用いて彼女たちを見ていたのだ。

風は、質量が軽いため戦闘には向かないがほぼ地球上全てに存在しているので、

探査・索敵に優れておりまた速さもあるため、

カズキとしてはこの術をかなり気に入っている。

 

風は戦闘には向いていないので、他の力を扱うものからは軽視されがちだが

中には、最強の攻撃力を誇る炎の術者を圧倒するほどの風を扱うものが

いるという噂があるが、真相は定かではない。

 

「……あなたの正体はもういいです。

 その代わり、話を聞かせてもらってええですか?」

「内容にもよるけど、構わないよ」

「ありがとうございます。それではまず……」

 

はやて達は語り始めた。

自分達管理局の基地を破壊するもの、

そのものが地球に来ている可能性が高いこと、その調査に来たら

怪物に襲われリュウケンドーたちに助けられたこと、ISが関係している

可能性があること、包み隠さずに。

 

「話は以上です……」

「お願いです!何か知っていることがあったら、教えてください!」

「確かに全てじゃないけど知っていることは、ある。

 でも、さっきも言ったけどそれが嘘じゃないって君たちは

 どう判断するのかな?」

「そ、それは……」

「それでも、話を聞かせてください。

 あなたが話すことは嘘かもしれませんが、本当のことかも

 しれへんのでしょう?

 私達にこれ以上の手がかりがない以上、今はあなたの話を

 聞いて判断するしかありません」

 

はやての言葉に、カズキは少し考えるそぶりを見せた。

 

「……いいだろう。話をしよう。

 まずは、基地の襲撃犯だけど“破壊”をやった奴のことは

 生憎だが、知らないし答えようがないね」

「そうですか……」

 

カズキの言葉に落胆するなのはだが、そこに隠された真意に

気付かなかった。

 

「次にリュウケンドーだけど、彼と私は仲間でこの世界を守っている」

「でもそれなら何で私たちは、今までそれに気付かなかったんだろう……?」

「君は、随分傲慢だね?

 この世界のことを一体どれくらい知っているんだい?

 誰も知らない語られない歴史とかもあるかもしれないんだよ?」

「どれくらいって……」

 

カズキの言葉にフェイトは言葉を詰まらせた。

 

「最後に襲ってきた敵だけど、残念ながら私たちもほとんど

 把握していないんだ。分かっているのは、奴らが人間の

 負の心から生まれるマイナスエネルギーを集めていることぐらいさ」

「マイナスエネルギー?」

「人の恐怖や不安といった感情から生まれるエネルギーのことさ」

 

はやての問いかけにカズキは答える。

 

「私が話せるのはこれぐらいだ。

 それじゃ、この辺で……」

「待ってください!

 あなた達が戦っている敵が、別世界に現われる可能性が

 あるんやないですか!?」

 

立ち去ろうとするカズキに、はやては疑問を投げかける。

 

「そうか、あの怪物たちがこの世界だけで暴れているっていう保証は

 ないから、他の世界でも……」

「まあ、その可能性を否定できる要素はないね」

「っ!あんなのが、たくさん現れたら大変だよ!

 お願いです、宇宙ファイターXさん!

 私達に力を貸して下さい!」

「それは、君達時空管理局に強力しろと?」

「そうです!あなたやリュウケンドーと力を合わせればきっと……!」

「ここで、答えを迷う奴はいないな」

「それじゃっ!」

「ああ……断る!」

「えっ?」

 

管理局に協力してくれという頼みに、頷いてくれると思った

なのは達は何を言われたのか分からないと言う表情を浮かべた。

 

「聞こえなかったのか?断ると言ったんだ」

「ど、どうして……」

「個人的に、お前たち管理局の考えというのが嫌いでね~。

 もし協力したとして、そっちの法でがんじがらめにされて

 いいように使われるだけさ」

「そんなことありません!」

「それじゃあこっちからも質問だ。

 君達管理局に協力したとして、私たち側のメリットは何だ?」

「メリットって……」

「お前たちからしたら、未知の相手に対して有効な手段を確保できるが

 私たちは?

 こちら側からしたら、別に管理局の力がなくても困りはしない。

 別世界へ行く手段もこちらにはちゃんとある。

 わかるか?仮に協力体制をするにしても私たちが協力するんじゃない。

 お前達管理局が私たちに協力するんだ」

 

世界の危機となれば、自分達に力を貸してくれると思っていたので

まさか、こんな反論をされるとは思っていなかったのか、カズキの

言い分になのは達は何も言えなくなってしまう。

 

「更に言わせてもらうなら、お前たちは確かに魔導士としては

 優秀で魔法で勝てる奴を探すのは難しいだろう。

 だが、だからといってお前たちの力が奴らに通用するとは限らない。

 もしも、完全に魔法が通じない相手が出たらその時

 お前たちはどうする?」

「そ、それは……でも!」

「話は終わりだ。私はこれで失礼する」

「……待ってください!

 それじゃ、私たちが怪物と戦えるってわかったら

 管理局じゃなくて私たちに協力してくれますか!」

「「な、なのは(ちゃん)!?」」

 

とんでもないことを言い出すなのはに、フェイトとはやては驚愕する。

 

「……それを私が確認する義理も義務もないな」

「ちょ~待ってください。

 さっき、あんたは別世界に行く手段があるゆうてましたよね?

 許可のない次元移動は違法です。

 そこんとこで、話を聞かせてもらいます!」

「は、はやてまで!」

「(落ち着いてフェイトちゃん!

 今はこうやって、適当な理由をつけてでも手掛かりを掴まんとどうにもならん!

 あの人はまだ、何か知っているかもしれへんし、逮捕やのうても

 いつでも、連絡できるぐらいはしとかんと!

 何も攻撃するわけちゃう。

 バインドで動きを封じて、もう一回話をするんや)」

「(そうだね……今はさっき言ってたようながんじがらめなんか

 しないってわかってもらわないと!)」

「(決まりだね!)」

「何だ?言うことを聞かないから、力ずくでくると言うのか?

 それなら、こちらも容赦はしないぞ?」

 

カズキはスーツの懐に手を入れると、一枚のカードのようなものを取り出した。

 

「それは!」

「デバイス!?」

「やっぱり、そうやったか。

 昼間あのISを吹っ飛ばしたのも魔法を使っとたんやな!

 そんで、あの恰好があんたのバリアジャケット!」

「さぁ、どうだろうねぇ?」

 

カズキはそのカードを空にかざすように持ち上げ……

 

「させへん!」

「そこっ!」

「ごめんなさいっ!」

 

それぞれ白色、桃色、金色の輪、バインドをカズキがデバイスを起動する前に

かけようと三人は動いた。

 

「「「なっ!?」」」

 

だが、カズキはそれを消えたかと思うほどの速さで上空へとジャンプ

することでかわし、するりと着地する。

 

「やれやれ、仕方ないなぁ~

 でも、仕掛けてきたのは君たちが先だから正当防衛ってことでいいよね?」

「(まさか、私たちに先に仕掛けさせるつもりでっ!)」

「それじゃ、行くよ?」

『OK!行くぜ、相棒!』

 

カズキが手にしたカードから声が流れ、彼はそれを上へと放り投げた――

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「(……あれ?いつの間にか寝ていたのか……。

 んっ?誰か覗き込んでいる?)」

 

保健室で一夏は、千冬が部屋を出た後もう一度眠りにつき、

目覚めようとしたら、そのぼやけた視界に誰かの顔が映る。

 

「……鈴?」

「ひゃっっっ!!!?」

 

鈴は頭をぶつけんばかりに驚き、一夏から飛びのく。

 

「ああああんた、どこから起きて/////!」

「ん?いや、今起きたとこ。

 何してたんだ、お前?」

「べべべべべ別に何もないわよ/////!!!」

『(寝ている一夏に……、なんて言えないよな~)』

 

顔を真っ赤にする鈴に対して、ゲキリュウケンはおもしろそうに笑った。

 

「そうだ、前に言ってた対抗戦が終わったら体育館の裏って

 ……あの姿関係か?」

「うん……あんまり驚かないんだね。あたしが魔導士だったって」

「いろんなことがあったからなぁ~。

 ちょっとやそっとじゃ、驚かないさ。

 お前も俺がリュウケンドーだって知ってたのか?」

「中1の中頃には知ってた」

「そんな前からかよ……」

 

何とも言えない微妙な空気が二人の間に漂う。

 

「そう言えば、親父さんたちは?

 こっちに戻ってきてるなら、店やってるんだろ?

 うまかったからな~、親父さんの料理。

 夕飯をそこで済ましたりしてさ」

「……ごめん。お店はしないんだ……。

 お父さんとお母さん、離婚しちゃったから……。

 あたしの帰国もそのせいで……さ」

「えっ?」

 

鈴の思いもよらぬ言葉に一夏は目を丸くした。

それ程衝撃的だったのだ。

物心ついた頃から、両親はおらず雅と千冬に育てられてきた

一夏にとって、鈴の家族は理想だったのだ。

気前がよく馬鹿なことをいっては奥さんに、叩かれていた

親父さんとそれに呆れる鈴。

家族とは、こういうものだと思っていたのだ。

 

「で、でも今なんかより戻そうかって話になってて!

 二人とも、素直じゃないからなかなか進まないんだけどねぇ~」

「『……』」

 

笑うことをせず、一夏はゲキリュウケンと共に真剣に鈴の話を聞いた。

 

「……離婚するって聞いた時あたしいらない子なの?って

 思ってさ……。

 それでたまたまIS適正のテストで高い数値が出て、それから

 魔法を教えてくれる子たちと会ってさ……。

 強くなったら……一夏がその……相棒として必要としてくれる

 かもって、がんばってさ……」

「鈴、今度の休みに遊びに行くか」

「えっ!?それって!」

「みんなでさ、騒ごうぜ?弾とかも誘ってさ!」

「……そうよね、あんたは……一夏だもんね……」

 

鈴を元気づけようと遊びに誘う一夏だったが、鈴は一瞬顔を

明るくするもすぐにズーンと沈んだ感じとなる。

 

「何言ってるんだよ?」

『お前が女心を理解しない馬鹿だと言うことだ。

 すまないな、鈴。

 こいつはこういう馬鹿なんだ』

「なっ!誰っ!?」

「誰って、コイツだよ。ゲキリュウケン。俺の相棒」

『はじめましてだな、凰鈴音。

 私はゲキリュウケン。一夏の相棒をしている』

「あ、相棒!こんなのが!?

 じゃあカズキさんが持ってたのも!

 ……ってここにいたってことは、まさかさっきの/////!?」

「さっきの?」

『……安心しろ。私は何も見ていない。

 寝ている一夏にお前がk「わあああああ/////!!!!!」』

 

鈴はゲキリュウケンのことを知らなかったのか、仰天し

先程のことを見られていたと分かり顔を真っ赤にして

大声を上げてごまかす。

 

「どうしたんだよ、一体?」

「な、何でもないわよ……」

 

肩で息をしながらぜぇぜぇ言っていると、保健室のドアが開き

なだれ込むように人が入ってきた。

 

「はぁ~い、一夏くん!具合はどうかな?

 お姉さんが看病してあげちゃうわよ~♪」

「一夏さん!お体の具合は!?」

「一夏……汗かいたなら、私が拭いてあげる/////」

「一夏!ぼ、僕が一夏専用のナ、ナースになっても/////!」

「何なのよ、アンタたちは!!!!!」

 

やってきたのは、先程まで生徒会室にいた面々であった。

カズキが

“そう言えば、今保健室では一夏と鈴が二人きりで寝ていたなぁ~”

等と言うものだから、ここに走り込んできたのだ。

もっともゲキリュウケンもいるから、正確には二人きりではないが。

 

「あら~私はがんばった後輩のお見舞いに来ただけよ?

 それともな~に?

 私たちが来たら、何かマズイことでもし・て・た・の・か・な?」

「ななななな何言ってんのよよよよよ!!!」

「そこのところ、どうなのゲキリュウケン?」

『そうだな、彼女は……』

「黙ってろ!KYリュウ!」

「ねえ、一夏?お腹すいてない?

 今から食堂に行って一緒に食べない?」

「シャルロットさん!何抜け駆けしようとしてますの!」

「……俺がんばったのに、なんでこうなるの?」

『お前が一夏だからだろ』

 

一夏のことなどおかまいなしに騒ぐ彼女たちに

ため息をつきたくなる一夏であった。

 

「そう言えば、カズキさんは?」

「なんかなのは達に用事があるんだって……」

 

いつの間にか、一夏のベッドの隣に座っていたシャルロット

と同じく反対側に座っていた簪が答えた。

 

「なのは達と用事?あいつらとドンパチする気かな?」

「なのはさん達とってどういうことですの?」

「彼女たちは普通の生徒じゃないわ。

 一夏くんやリュウケンドーのことを調べに来た

 時空管理局の人間なの」

「時空管理局って、前に碓氷先生が言ってた?」

「ああ。あれはカズキさんの作り話でもなんでもなく、

 本当のことなんだ。

 管理局は魔法の力を使っているんだけど、なのは達の

 魔法を使っての実力は多分楯無さんぐらいだと思う」

「お姉ちゃんと互角っ!?」

 

一夏の言葉に、楯無の実力を知る簪、シャルロット、セシリア

は驚いた。4人とも特訓の合間にやったISの模擬戦で、一度も

楯無に勝ったことがないのだ。

 

「ちょっとマズイじゃない!

 国家代表クラスが3人って、いくらあの人でも!」

「大丈夫さ、鈴。

 だってあの人、生身で俺たち……リュウケンドーとリュウガンオーを

 ……ボコボコのギッタンギッタンにできるんだぜ?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

カツ―――ン

何かが、地面に落ちる音がアリーナの中に響き渡った。

 

「(何が……起きたんや……!?)」

 

アリーナに横たわり驚きに顔を染めるはやての目には、自分と

同じように驚きの表情を浮かべ倒れているなのはとフェイト、

そしてレイジングハートを

肩にかける宇宙ファイターX……カズキの姿が映っていた。

 

「やれやれ、予想はしてたけどここまでとは……。

 君たちこれがデバイスだと思ったみたいだけど、

 ただのおもちゃだよこれ?」

『OK!行くぜ、相棒!』

『了解、マスター!』

『行きましょう、ボス!』

 

カズキは、自分が放り投げて地面に落ちたカードを拾い上げて

スイッチを押していくと、セリフが発音されていく。

 

「お前たちは勝手に私が自分たちと同じように、魔法を使って戦うと思いこんだ。

 だから、このデバイスのようなおもちゃを

 本物だと警戒し放り投げたから、それを一瞬追って俺から意識を外した。

 私には、その一瞬あれば十分なのさ。

 お前たちを倒すにはな……。

 それに、これから戦おうっていうのに、お前たちは

 戦闘態勢にすら入っていなかった。

 その反応の遅さが、勝敗の決め手さ」

 

つまり、カズキはなのは達の視線を一瞬だけ外し、その一瞬で

彼女たちの懐に入り、手刀を当てて倒し、なのはが手放したレイジングハート

をキャッチしたのだ。

ケガをしないよう可能な限り、手加減して。

僅か1~2秒間の出来事である。

 

「そして、お前たちはどこかで魔法を使う自分たちが

 負けるわけがないと慢心していた。

 魔法以外に自分たちと戦える力はないと思ってな」

「「「っ!」」」

「もし私が奴らの仲間だったらどうする?

 今頃、お前たちは天国の扉をくぐってたかもしれないぞ?

 加えて、これぐらいできる奴は世界にはゴロゴロいる。

 悪いことは言わない。

 もう、私たちに関わるのはやめろ」

 

攻撃され痛む場所を押さえながらも、なのは達は何も言い返すことができず

ただその場で倒れているしかなかった。

 

「それと、そこに隠れている奴。

 あいつらは、軽く当てただけで大した傷は負っていないから

 安心するといい」

 

レイジングハートをなのはの元に放り投げて、

アリーナから立ち去ろうとしたカズキは、足を止め誰もいない観客席に

目を向けて、こう言い放った。

そして、カズキが今度こそアリーナから

立ち去ると、ある席からリインが顔を出した。

彼女は、万一なのは達がカズキと戦闘になった場合や証拠を

得るために離れた場所で映像の記録を頼まれていたのだ。

 

完全にカズキがいなくなるのを確認すると、リインは急いで

なのは達の元へと駆け付けた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「一夏、起きているか……って、何をしているのだお前たち!!!」

 

カズキとなのは達がそんな戦いとも呼べない戦いをしているとは

思っていなかった一夏たちの前に、手に何かを持った

箒がやってきた。

 

「何って、一夏くんのお見舞いよ」

「うん」

「そうそう」

「そういう箒さんこそ今頃お見舞いですか?」

『(いや、お前たちもさっき来たところだろ)』

「う、うるさい!

 それよりも、一夏!ここここここれをだな/////!」

 

箒はしどろもどろになりながら、手に持っていたものを一夏に

差し出してきた。

 

「箒、何だよこれって、この匂い……食べ物か?」

「そ、そうだ。腹が空いていると思ってな。

 作ってきた/////」

「おお~サンキュー!

 ちょうど腹減ってたんだよ!

 あれ、これチャーハン?」

「な、なんだ!なにか文句でもあるのか!」

 

箒が作ってきたのは、ほかほかのチャーハンであった。

 

「作ってくれたのに、文句なんかあるわけないだろ?

 ただ、箒が作るのだと和食のイメージがあるからさ、意外と言うか

 なんというか」

「そ、それは偏見と言うやつだ!

 べ、別に和食以外も作れるというのを見せたかったわけではない/////!」

 

赤くなりながら顔を背ける箒を、楯無たちはジト目で見ていた。

 

「じゃあとにかく、いただきます!

 ……ん?」

「ど、どうした?」

「味がしない」

「な、なにっ!?」

「えっ?」

「どういうこと?」

「見た目は普通ですわね……」

「匂いもちゃんとするわよ?」

「箒ちゃん、これ味見した?」

「一夏!貸してみろ!」

 

箒は一夏から皿をひったくるとレンゲを口に運んだ。

 

「……」

「う~ん、調味料が足りていないのか?

 でもそんなんであの匂いや色がつくわけないし……」

「こ、これはあれだ!たまたまだ!

 たまたま入れ忘れただけだ!」

「どうやったら。調味料を全部入れ忘れるんだよ」

「ええ~い!私が食べればいいのだろ!私が!」

「そんなこと言ってないだろ?

 それより早く返してくれよ。

 せっかく作ってくれたモノを残すほど恩知らずじゃないぞ?」

 

今度は一夏が箒から、皿をひったくると瞬く間に

チャーハンを食べ終わる。

 

「ごちそうさまでした」

「勘違いするなよ!今回はたまたま失敗しただけだ!

 こ、今度はちゃんと成功したものを食べさせてやる////!」

 

箒がそう言うと、彼女を押しのけるかのように鈴たちが一夏に詰め寄った。

 

「一夏っ!だったら、私の酢豚食べなさいよ!」

「一夏さん、わたくしの手料理を是非!」

「一夏?一緒に作ろう?」

「一夏?お菓子……好き?」

「一夏く~ん。今度お姉さんおっっっいしい

 ごはん作ってきてあ・げ・る♪」

「お前ら~。一夏から離れろ!」

「み、みんな、落ち着け!

 (なんで、こんなに必死なんだ?)」

『(お前なぁ~)』

「(なんで、俺の周りっていつもこんなに騒がしくなるんだ?)」

『(ふっ、それがお前と言う人間だからではないのか?)』

「(なんだよ、それは)」

 

保健室なのに、騒ぐ彼女らを眺めながら一夏は夜空に輝く

月を見上げて感慨にふけるのであった――

 

 

 

 

 

「そう言えば、さっきの箒って一夏と間接キス……」

 

簪の言葉を皮切りに保健室では、嵐が吹き荒れることになり

千冬が鎮圧にくるまで続いたと言う。

 

 




はい、これにて1巻の内容は終了です。
カズキの影武者をしてくれたのは、コードギアスの篠崎咲世子さんでした。
性格、能力は原作と変わらずですwww

風術は「風の聖痕(かぜのスティグマ)」から。
カズキは、原作に登場した正統派風術師よりも上の術者ですが、
規格外の風術師である原作主人公に風術では勝てません。主人公のことは、噂程度の認識です。

なのは達クラスはISだと楯無クラスの設定にしてますが、
ISは魔導士相手だと厳しいです。
魔導士側からしたら、ISはパワードスーツだとわかりますが
IS側にはバリアジャケットという概念が無いので、
普通の衣服を着ているようにしか見えない魔導士を攻撃するのは躊躇があるためです。

今回カズキがなのは達の戦いに使ったのは、自分への意識を逸らすこと。
そして自分の存在を希薄化することで、自分のことを一瞬だけ彼女たちの意識から外しました。
なのは達はバリアジジャケットを展開して、戦えるようにしていましたが相手が生身なので捕まえればいいという考えが攻撃という選択肢を最初から捨てていました。


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