インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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まさか、自分が連続投稿なんてできるとは思いませんでしたwww
今回、鈴が……


燃えろ!炎の力!

「何だ、アレは!?」

「一夏っ!」

「わ、わかりません!!?」

 

千冬と箒、真耶は宇宙ファイターX(カズキ)が、展開した

正体不明の球状のものに驚いていた。

そして、息つく暇もなく管制室に異常を知らせるアラームが鳴り響く。

 

「今度は何だ!?」

「これは……っ!

 織斑先生っ!!!」

「何だコレは……」

 

目の前で宇宙ファイターXが展開したものと同じく、

理解の範囲を超えた光景に、流石の千冬も言葉を失う。

 

画面には、地面から次々と紫色の水がわき出たかと思ったら

たちまち遣い魔の姿となって、出現する様が映し出された。

 

「アリーナ前に、この未確認の生命体が多数出現しています!」

「(くっ、どうする!

 メイザースたちを向かわせるか?

 だが、一夏たちを放っておくわけには!)」

 

思いもよらない事態に千冬がどうすべきかと、判断を迷っていると

再び動きが起こった。

 

『グランフォール!!』

 

上空から何かが降ってきたと思ったら、そこにはクリアーな

フェイスカバーと背後に浮いているパーツが目につく、

黒い鎧を纏った戦士が降り立っていた。

 

『オラオラオラオラ!!!

 お前らの相手は、この“修羅化身、グランシャリオ”がしてやる!

 いくらでも、かかってこいザコども!!!』

「何だ……この強さは……」

 

突如として現れたグランシャリオと名乗る者の強さに、箒は

目を奪われた。

拳や蹴りを放つだけで、何体もの遣い魔が吹っ飛ばされ消滅していくのだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「えっ!?どういうことですか!

 アリーナを謎の生命体が囲んでいるって!?」

『そ、それがいきなり紫色の水たまりがわいたと思ったら、

 一つ目のオバケみたいのになって、それを黒い鎧を纏った

 人が倒しているんですぅ~』

 

セシリア、シャルロット、楯無の三人は観客席に閉じ込められた生徒を

避難させるためにアリーナに向かっていたが、その道中で下されていた

シャッターに足止めされていた。

その途中で、真耶からアリーナを遣い魔が取り囲んでいること、それを

倒している者がいることを通信で伝えられた。

 

「山田先生。その映像を見せてもらってもいいですか?」

『はい、わかりました』

「これって!」

「……山田先生、この黒い鎧の人は一つ目のオバケと戦って

 くれているんですよね?

 目的も正体も不明ですが、それ探るのに時間を割くよりも

 観客の避難を行います。

 今は、彼が私たちの敵ではないことを信じるしかありません」

 

グランシャリオの映像を見た楯無は、そう言うと通信を切った。

 

「た、楯無さん、そのグランシャリオという人を放っておいて

 よろしいんですの?」

「大丈夫だよ、セシリア。

 彼、あの一つ目オバケと戦っていたでしょう?

 あれ、一夏たちが戦う敵で僕も襲われたことがあるんだ」

「シャルロットちゃんの言うとおり、彼も一夏くんの仲間。

 私たちの味方ってことよ♪」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「“敵がマイナスエネルギーを回収する際、アリーナにいる

 俺たちに見つからないように、ここから行う可能性が高い”

 って、カズキさんが言ってたけどまさかドンピシャとは~」

『敵の目的、行動の分析によるカズキの推測の的中率97.8%』

「ギジャ!ギジャ!」

 

屋上では、清掃員の恰好をして赤い髪にバンダナを巻いた

五反田弾が、相棒のゴウリュウガンを手にして遣い魔たちと

対峙していた。

 

「まあ、とにかく行くぜ!

 リュウガンキー!発動!」

『チェンジ!リュウガンオー!』

「ゴウリュウ変身!」

 

弾が取り出した魔弾キーをゴウリュウガンに差し込むと白銀の龍が

紅い火花を巻き起こして咆哮すると、弾へと向かっていきまばゆい光が

彼を一瞬包み込むとそこには――

 

「リュウガンオー!ライジン!」

 

魔弾戦士の一人、リュウガンオーが絶望を撃ち抜くために降臨した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「(どうや、リイン?)」

「(ダメです!この結界はリイン達のものとは

 全くの別物です!構造も、中の解析もできません!)」

「(私達の魔法とは別の魔法?そんなことって!?)」

『(Sir。結界内から、強大な魔力反応を感知!)』

『(マスター、サーチャーにも反応があります。

 魔力照合……アリーナ周囲に例の生命体、学園内に

 リュガンオー、結界内にリュウケンドーのものを確認)』

「(結界内にリュウケンドーって、さっきの宇宙ファイターって人が?

 それとも鈴ちゃん?一夏くん?)」

 

なのは達も次々に起こる事態に、思考が追いつかなかった――

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「これは、一体どういうことだ!!!

 なぜ、マイナスエネルギーを回収するものたちまで!!!?」

 

結界内では、グランシャリオとリュウガンオーに遣い魔が倒されていく

様を見てムドガが信じられないと大声を出していた。

 

「お前が言う、俺たちの弱点。

 それを狙った奴が、今までにいなかったと思うのか?

 伏兵ぐらい、忍ばせておくに決まってるじゃん。

 

 しっかし、この対抗戦に何か仕掛けてくるとは思ったけど

 まさかお前のような小物が来るとはねぇ~。

 他の連中なら、魔物の実験だけにして

 後は、観客のマイナスエネルギーをついでに回収

 することができれば良しとしただろうに~。

 まあ、せっかく欲を出して来てくれたんだ、

 持っている情報を洗いざらい吐いてもらうよ?」

『この結界には、転移を封じる機能もある。

 観念して、素直に捕まって吐いた方が身のためだと

 思うよ~?』

「こ……んの虫けら風情がぁ!!!」

 

カズキとザンリュウジンの小馬鹿にしたような態度に、プライドを

刺激されたムドガは、今までの冷静さをかなぐり捨てた。

 

「これで終わったと思うなよ!

 デスブロム!!!遣い魔ども!!!」

「マだン戦し……倒ス!」

「「「「「ギジャ!ギジャ!」」」」」

 

ムドガが腕をふるうと、夥しい数の遣い魔が次々と現れ

それに呼応するかのようにジッとしていた魔物、デスブロムも動き出した。

 

「敵さん、本性出してきましたね」

「薄っぺらい奴ほど、挑発すれば簡単にのるからね~。

 さてと、あいつや遣い魔の相手は俺がやるとして、

 魔物の方は任せるよ一夏。

 鈴への説明は、後で何とかするから遠慮なく行け。

 あいつは急激に成長した分、知能は低いみたいだけど

 時間をかければどうなるかわからないから、短期決戦で

 一気に決めろ」

「はい!」

「それと鈴?

 止めても無駄だろうから言っておくけど、

 エネルギーが残り少ない甲龍でも、遣い魔ぐらいなら

 倒せるだろうけど無理だけはしないように」

『へぇ~てっきり、おとなしくしてろって言うと

 思ったのに』

 

一夏だけでなく、若干呆けていた鈴にまで指示を出したカズキに

ザンリュウジンは意外そうな声をもらす。

 

「言っただろ?止めても無駄だって。

 だったら、余計なことをされるより最低限の指示を出して

 一緒に戦ってもらう方がまだ安全だよ」

「ちょっと、人をおてんば娘みたいに言わないでよ!」

「「『『…………』』」」

「何でそこで、目を逸らす!」

 

鈴の言葉に一夏も魔弾龍二体もカズキも、それとなく視線を

逸らした。

 

「じゃあ役割も決まったことだし、ちゃちゃっと片付けますか♪」

「『『おう!』』」

「ごまかすな!」

 

鈴の叫びを無視して、一夏は白式を解除しゲキリュウケンを出現させる。

 

「リュウケンキー!発動!」

『チェンジ!リュウケンドー!』

「ゲキリュウ変身!」

 

デスブロムへと駆けだし、一夏は魔弾キーをゲキリュウケンへ差し込む。

 

「リュウケンドー!ライジン!

 おりゃあああ!!!」

 

リュウケンドーへと変身した一夏は、向かってきたデスブロムの

口のついた触手を片っ端から斬り裂いていった。

 

「それじゃ、俺たちもいきますか」

「これ終わったら、覚えてなさいよ!」

 

一夏に続くように鈴とカズキも遣い魔たちに突撃していった。

その様子をガレキに隠れて覗いているものがいたことは、

カズキ以外誰も気付いていなかった。

 

『ところで、鈴の奴。一夏が変身したことや俺がしゃべったことに

 あんまり驚いていなかったな?』

「あっ」

 

ザンリュウジンが漏らした疑問に、カズキは間の抜けた声を上げた。

 

 

 

「このっ!」

 

デスブロムが伸ばした触手が四方八方から襲いかかり、リュウケンドーは

苦戦をしていた。

 

『言葉は話せないのに、的確にこちらの死角をついてくるな』

「ああ、おまけにこの数と……これだっ!」

 

的確に襲いかかる触手を斬っていくリュウケンドーだったが、斬られた触手

はそこから、新たなものを生やし襲いかかってくるので一向に

数が減らなかった。

 

『相手は植物に似ているからあのキーが有効だと思うが、

 これでは……』

「こんなことなら白式使って、もっと近づいとけば良かったかな?」

『さっきの零落白夜でほとんどエネルギーが、残っていなかっただろうが』

「ははは、そうでした」

『っ!何か来るぞ!』

「おわっ!?」

 

ゲキリュウケンとしゃべりながら、戦っているとどこからか光線が迫り

何とかかわすことができたが、かすった肩の鎧が焦げていた。

 

「これは……ビーム?」

『どうやら、ただツタを伸ばして攻撃するだけではないようだな……』

 

リュウケンドーとゲキリュウケンが目を向けると、そこには

触手の先の口から煙を上げているデスブロムがいた。

 

「キィシャッッッ!!!」

「まさか、無人機の攻撃を使えるのか!?」

『厄介な……来るぞ!かわせ!』

 

ゲキリュウケンに言われるまま、リュウケンドーは走りながら触手

の先についているキバとビームの攻撃をかわし始めた。

 

「おっ!なんか苦戦してるね~」

「のんきなこと言っている場合!

 こっちは、私一人でも大丈夫だから早く

 一夏を助けに行って!」

 

一方、遣い魔たちを相手にしていたカズキは一夏のピンチを

のんきに見ており鈴は、助けに行くよう急かした。

 

「心配ないよ。こんなピンチはよくあることだし、俺が助けなくても

 自力で何とかするさ。

 それよりも、俺があっちにいったら君がピンチだろ?」

『うんうん』

「うっさいわね!

 っ!本当にもぅ~、こいつらは次から次にっ!」

 

カズキが結界を張る前に受けた攻撃によって、甲龍のエネルギーは

100を切っており、鈴は現在エネルギーの消費が少ない双天牙月

を両手に持って、遣い魔たちと戦闘をしていた

双天牙月を一振りするだけで、簡単に倒せているが2、3体を倒している

間に、ムドガが10体ほど出すものだから、体力は消耗するばかりであった。

 

「ひゃひゃひゃっ!

 どうした!さっきまでの威勢はどうしたんだ、オイ!」

「(一気に遣い魔を倒してもいいが、創生種の力は未だに

 未知数。負ける気はしないが、怒り狂って

 万一暴走とか自爆とかされたら鈴や結界の外にいる皆が危ない。

 さて、どうしたものか……)」

 

ムドガの挑発をスルーして、カズキは向かってくる遣い魔たちの攻撃を

軽く運動するみたいにかわしながらデコピンで倒していき、

戦況を分析していた。

 

自分がその気になれば、アリーナにいる遣い魔は簡単に一掃できるが

もしそれでムドガが激怒し、隠し持っていた何かしらの力を

使われたらどうなるかという可能性があるため、攻めきれないでいた。

 

『(カズキ。アイツ、リュウケンドーが自分が作った魔物に

 勝てるわけないって顔してるぜ?)』

「(みたいだな。となると、リュウケンドーが魔物を

 倒して奴が驚きで固まる瞬間が勝負か……)」

 

カズキがリュウケンドーの勝利を信じて、攻め手を考えていると

鈴が予想もしない行動に出た。

 

「っああ~もう~!うっとおしいぃぃ!!!

 こうなったら、奥の手よ!」

 

言うが早いや、鈴は周囲の遣い魔を龍哮を使って倒すと、甲龍を

解除し、青いブレスレットがついた左腕を突きあげる。

 

「セットアップ!青龍(せいりゅう)!!!」

 

瞬間、鈴は光に包みこまれた。

光が晴れるとそこには、少し露出が多い青いチャイナドレス風の

バリアジャケットを纏い、槍を手にした鈴が立っていた。

 

「何っ!?」

「『なっ!?』」

「おいおい……」

『マジかよ……』

「さあ、いくわよ!」

 

驚く、リュウケンドーたちを尻目に鈴は手に持った槍、ウォータランス

を構えて、遣い魔たちに突撃した。

 

「おりゃあ!」

 

ウォータランスを大薙ぎして、近くにいた遣い魔たちを倒すと

その場に止まることはせず、飛翔してその場を離れる。

 

「はあっ!」

 

着地した鈴は素早く、ウォータランスを地面に突き刺すとそれを軸にして

回し蹴りをし、遣い魔を一度に何体も倒していく。

 

「おそいわよ!」

 

押し寄せる遣い魔たちを、鈴はウォータランスと一体化したような

見惚れる動きで次々と倒していった。

 

「(私のバリアジャケットは、そんなに防御力が高くないから

 攻撃を受けないように気をつけないと!)」

 

バリアジャケットとは、魔導士が用いる防護服である。

強度や性能は、千差万別であるが鈴のものは機動力を重視した分、

防御力が低いようだ。

 

「ええい!何をしている!そんな小娘ごときに!」

 

思わぬ出来事で、戦況は一気に動いていく――

 

 

 

「鈴の奴いつの間に……」

『ボサとしている場合じゃないぞ!

 敵も固まっている。今がチャンスだ!』

 

自分と同じように、普通ではない力を奮う鈴にリュウケンドーは

いろんな疑問が頭をよぎるが、ゲキリュウケンの言葉で我にかえる。

 

「っと!そうだな!それじゃ、いくぜ!

 ファイヤーキー!発動!」

『チェンジ!ファイヤーリュウケンドー!』

「火炎武装!」

 

ゲキリュウケンから、炎の龍が飛び出しリュウケンドーと一つになると、

リュウケンドーは炎を象った赤い鎧を纏っていた。

 

「ファイヤーリュウケンドー!ライジン!」

「魔ダんせん士っっっ!!!」

 

デスブロムが伸ばした触手を先程のように、斬り裂く

Fリュウケンドーだったが、違う点があった。斬られた触手は燃え上がり、

再生ができていなかった。

炎は本体へ触手を伝って本体へと向かっていくが、デスブロムは

燃える触手をビームで撃つことでちぎった。

 

デスブロムがFリュウケンドーに目をやると、その手に持つ

ゲキリュウケンは、刀身に炎を纏っていた。

 

「自分で自分の体をブッ飛ばしやがったぞ!?」

『あの再生力があれば、あまり問題ではないのだろう。

 決着をつけるには、本体に直接攻撃するんだ!』

「おう!」

 

 

 

遣い魔を倒していた鈴は、流石に体力が厳しくなっている状況だった。

 

「ま、まだまだ……」

「おい、鈴。無理はするなって言ったろ?

 お前は一夏との試合もあって、かなり消耗している。

 後は俺と一夏に任せて、防御に徹しろ」

 

カズキは、ウォータランスを支えにして立つ鈴の背に立ち、

遣い魔たちを殴り飛ばしていく。

 

「何故だ!何故、こんな小娘に戦況をひっくり返されたのだ!」

 

ムドガは、最初の平静な様は見る影もなく、喚き散らしていた。

 

「それは、簡単さ。

 鈴のことを戦力として、舐めていたからさ。

 お前も……俺も」

「黙れ!黙れ!

 この私が!創生種であるこの私が!

 そんな、無いものを見せつけるようなかわいそうな思考の人間

 のせいで負けるなどあるわけがない!!!」

 

その時、敵味方関係なくビシリと特大の

ひびが入る音が聞こえ、みなが動きを止めた。

 

「……」

「そんな見せるものがないのに、見せるものを見せるための

 隙間がある服を着るという、愚か者に私の計画が崩れるだと!

 馬鹿なことを言うな!!!」

『なあ、これってマズイこt「しっ!黙っていろザンリュウ……」』

「ギ、ギジャ……」

「なあ、ゲキリュウケン?

 俺、炎の力を纏っているのにものすごく寒気がするんだけど……?」

『何も言うな……命が惜しければな……』

「キィ……キィ……」

 

ムドガの言うように、鈴のバリアジャケットは、“あるもの”を

見せつけるかのように胸元が大きく露出しているのだ。

そう、まるで箒や楯無、フェイトなどが着たら

似合うように。何故似合うかはご想像にお任せします。

 

遣い魔たちもカズキもソロリ……ソロリ……と鈴から距離を取り、

デスブロムもFリュウケンドーもおそるおそるといった

感じで後退していくが、ムドガはそれに気付かずしゃべり続ける。

俯むいて、表情が見えない鈴に向かって。

 

「おい!そこの残念な思考の小娘!聞いているのか!

 自分に似合う服も分からないような、貴様にこのわたしの

 「残念残念うっさいわ、ボケェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」」

 

鈴は一瞬で、ムドガに接近して結界の壁まで殴り飛ばした。

 

「面かせや!!!オラァァァァァァァァ!!!!!」

「うっわ~痛そう~」

『だな』

『おっかねぇ~』

「すごいな、俺でも見えるのがやっとのスピードで動いたぞ」

「「「ギィ、ギィ!」」」

「キキキキキキィ……」

 

一夏、ゲキリュウケン、ザンリュウジンは、タコ殴りにされるムドガを憐み、

カズキは鈴の移動スピードを素直に賞賛していた。

反対に、遣い魔たちは目を刃の如く鋭くして咆哮しながらムドガに拳を

突きたてる鈴を見て、互いに抱き合いながら怯え、デスブロムも

すっかり怯んでいた。

 

「がっ!ごっ!」

『ところで、このまま鈴の奴があいつを殴り続けたら

 結界壊れないか?』

「ははは、それは大丈夫だよザンリュウ。

 この結界を壊すには、ファイナルブレイク級の力がないと~」

 

バキーーーン!

空気などではなく、物理的にひびが入る音が結界内に聞こえ渡った。

 

「ん?」

『お、おいあれ……?』

「結界がわ、割れ……た?」

『女の怒りは、ファイナルブレイクに匹敵するというのか……!?』

 

武器などに頼らず、拳だけでムドガを戦闘不能にまで追い込み、

結界をも破壊せんとする鈴の底知れぬ力に、驚愕する魔弾戦士たちだった。

 

「うっっっがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

乙女の純情を踏みにじられたから、怒りのまま鈴はムドガを

結界をぶち破って外にまで殴り飛ばした。

 

『おおお、飛んだね~』

「あっ、鈴がぶっ倒れた。

 あれで全パワーを使いきったのか

 って、感心してる場合じゃねえーーー!?」

『このまま結界が壊れたら、お前がいないことが

 外の連中に見られて面倒なことになるぞ!』

「任せろ!

 出番だぞ!来い、ハチ!」

 

結界が壊れていく様を見ながら、急いでごまかしに入る

カズキたちだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「喰らえッ!」

 

リュウガンオーは、向かってくる遣い魔の刃をゴウリュウガンや

腕の装甲で受け止めて至近距離から撃ったり、蹴り飛ばすなど

射撃だけでなく格闘術も使って、確実に遣い魔の数を減らしていった。

 

「これで決める!

 ショットキー!発動!」

『ドラゴンショット!』

「はあああっ!!!」

「「「「「ギジャアアアーーーーー!」」」」」

 

ゴウリュウガンをマシンガンモードに切り替え、リュウガンオーは

遣い魔たちを一掃した。

 

「残るは、あれか!」

『ISのセンサーにも引っかからないよう、巧妙に

 隠したマイナスエネルギーの回収装置のようだが、

 私たちの目はごまかせない』

 

リュウガンオーは上空に目を向けると、どこか風景が歪んでいる

箇所を見つける。

それこそ、ムドガが発生させた大量のマイナスエネルギーを

回収することも兼ねた地上を攻撃する兵器だった。

ISのハイパーセンサーにも反応しないステルス機能を持っていたが

ゴウリュウガンは、大気中をサーチして何も

感知できない箇所を見つけることで回収兵器の場所を特定した。

 

「行くぜ!ファイナルキー、発動!」

『ファイナルブレイク!』

 

リュウガンオーが、ファイナルキーを発動させると足から肩から、

胸の宝石にエネルギーが集まるように光が集約しゴウリュウガンへと

チャージされていく。

 

「ドラゴンキャノン……発射!!!」

 

ゴウリュウガンから、紅い龍型のエネルギーが放たれ

リュウガンオーが反動で後ずさる。

その後には火が走り、ドラゴンキャノンの威力がうかがい知れる。

そして、ドラゴンキャノンは敵の兵器に命中し、跡形もなく破壊した。

 

「ジ・エンド」

『任務達成』

「お~い」

 

リュウガンオーがマイナスエネルギーの回収兵器の破壊を確認すると

そこへ、グランシャリオがやってきた。

 

「こっちは片付いたぜ。そっちは?」

「今、終わったところだ。後は一夏の方だけど……」

 

バリーーーーーン!!!

 

互いに敵の殲滅を確認し合うと、一夏がいるアリーナの方向から

何かが割れるような音が聞こえた。

 

「な、何だぁ!?」

『結界の破壊を確認』

「は、破壊って、結界を壊されたってことか!?」

「そんな……。応援に行くぞ!」

「おう!」

『待て。ゲキリュウケンより連絡。

 怒る乙女によって結界を破壊されるも、問題はないとのこと。

 予定通り、撤退を開始せよとのことである』

「「怒る乙女?」」

 

ゴウリュウガンオーとグランシャリオは顔を見合わせて傾げるばかりであった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「(っ!結界が壊れた!)」

「(何か出てきたけど……何アレ?)」

 

観客席で宇宙ファイターXが、展開した結界を見守っていた

なのは達は、内側から結界が壊れたことに驚くが、飛び出たモノに

目がいった。

人のような形をしているが、飛び出たソレは腕や足がありえない方向に

曲がっており、ピクピクと震えてもはや瀕死の状態であった。

 

結界が完全に消えるとそこには十数体の遣い魔にデスブロム、

Fリュウケンドー、そして気絶した鈴と“一夏”を抱える

宇宙ファイターXがアリーナに立っていた。

 

「リュウケンドー!

 この気絶した少女とそれかばって倒れた少年の二人は私に任せて

 心おきなく、奴らを倒せ!」

 

宇宙ファイターXはどこかわざとらしくそう言うと、

自分がここに入ってきた一夏側へのピットへと二人を

抱えて向かった。

 

「何と言うか、あの人も良くやるよな」

『まさか、結界が壊されて一夏がいないのをごまかす必要が

 出た場合に備えて、変化(へんげ)能力をもったタヌキを

 呼んでいたとは恐れ入る』

 

そう、宇宙ファイターXに抱えられていたのは、一夏に化けた

ハチなのだ。アリーナに侵入した際に、石ころに化けさせ

潜ませていたのだ。

 

「まっ!ともかく、そろそろいきますか!」

『リュウケンドー、炎の獣王も呼んで一気に決めるぞ!』

「おう!コングキー!召喚!」

『ファイヤーコング!』

「いでよファイヤーコング!」

 

ゲキリュウケンから光が放たれ魔法陣が描かれると

そこからブレイブレオン同様、赤い機械の体でありながら

生命の息吹を感じさせるゴリラが召喚された。

炎の獣王、ファイヤーコングである。

 

「(あれは召喚魔法と使い魔!?)」

「(すっごくパワーありそう~)」

「(いや、それよりもリュウケンドーはいつどうやって

 ここに現れたんや!?

 リイン、映像を一瞬も見逃さんと記録するんや!)」

「(はいですぅ~!)」

 

フェイトとなのはがファイヤーコングに驚く中、はやては

リュウケンドーがいつここに現われたのか疑問に思い、素早く

リインに記録するよう指示を出した。

 

「おりぃやあああ!!!」

「「「「「ギジャアアアーーーーー!」」」」」

 

Fリュウケンドーが、ゲキリュウケンを横薙ぎに振るうと

それに沿うように炎が放たれ、使い魔たちが倒されていく。

 

「ヴオゥ!ヴオゥ!」

「キィシャアアア!!!」

 

ファイヤーコングは、そのパワーを大いに発揮しデスブロムが

攻撃に伸ばしてきたツルを逆につかみ振り回していた。

 

「ち、調子に乗るなよ……虫けらども!

 こうなればっ!」

 

Fリュウケンドーが戦っていると、鈴にスタボロにされたムドガが

よろよろと立ちあがり、手を光らせデスブロムと残っていた

遣い魔たちに向けると自身へと引き寄せた。

 

「がああアあアあアア!!!」

 

すると彼らは、禍々しい光に包まれ巨大な植物へと姿を変えた。

 

「うお!なんじゃこりゃ!」

『まさか、観客達から生まれたマイナスエネルギーごと

 魔物と遣い魔を吸収したと言うのか!』

「ハはは!虫けラハむシけららしく、潰レロ!」

 

一番上に咲いた花の中央に、ムドガは鎮座しツルを伸ばして

花をつけると、光が収束されていった。

 

「あれは、無人機の!」

『マズイ、エネルギーの量はケタ違いだ!』

「なら!ファイヤーコング!キャノンモード!」

 

Fリュウケンドーがそう叫ぶと、ファイヤーコングは

ジャンプし、体を上下逆さまになると大型砲へと変形して

背負われる形でFリュウケンドーと合体する。

 

「ファイヤーキャノン!」

 

Fリュウケンドーは巨大化したムドガに火炎弾を発射し

ビームを撃とうとした花を破壊した。

 

「きィ、キザマァぁぁ!!!」

「出鱈目に、力をつけても無駄だ!

 俺たちの本当の力を見せてやる!」

『ああ、やるぞ!ファイヤーコング!』

「ヴオゥ!ヴオゥ!」

 

ファイヤーコングは、キャノンモードを解除すると何かを

持ち上げるように腕を組む。

 

「はあああっっっ!!!!!」

「ヴオゥゥゥゥゥ!!!」

 

Fリュウケンドーは、ファイヤーコングに向かって走り出すと

腕に飛び乗り、ファイヤーコングはFリュウケンドーを巨大ムドガよりも

高く放り投げた。

 

「ファイナルキー、発動!」

『ファイナルブレイク!』

「ゲキリュウケン火炎斬り!」

 

Fリュウケンドーは炎を宿した赤く光るゲキリュウケンを振り下ろし、

ムドガの体を斬り裂いていく。

 

「ガァァァ!!!!!」

「燃え尽きろ、その怒りと共に――」

 

Fリュウケンドーの言葉と共に、ムドガは崩れ去った。

 

「ん?」

「がっ……くっ……」

『ファイナルブレイクを受けて、まだ生きているのか』

 

ムドガの体は、焼け焦げていたが、まだ生きていた。

だが、もう戦う力は残っていないようだ。

 

「へぇ~存外しぶといんだね~」

「宇宙ファイターX!」

 

すると、宇宙ファイターXことカズキがやってきた。

 

「まあ、ちょうどいい感じで動けなくなったみたいだし

 後は持って帰っていろいろと……」

「ゴヘッ!」

 

カズキが、ムドガを捕獲するために近づこうとしたら、彼の体を

光の槍が貫き、塵も残さず消滅した。

 

「っ!?」

「どこからっ!」

 

Fリュウケンドーとカズキが空に目を向かるとそこには手だけが、

空中から生えていた。

 

「(馬鹿な!“風”は全く気配も殺気も感じなかったぞ!?)」

 

カズキが驚いていると、その手はふっと消えた。

 

「っ!こいつの口ぶりからして、独断で動いていたみたいだが

 こうも簡単に口封じをするとは……」

「仲間じゃないのかよ……」

「とにかく、戦闘は終了だ。

 ここから……」

「動かないでください!」

 

とりあえず、Fリュウケンドーとカズキがここから離脱しようと

するとラファールを展開したエレンが二人に銃口を向けてきた。

それを皮切りに、訓練機を纏った教師陣が次々とアリーナに

やってきて、二人を取り囲んだ。

 

『あの怪物と戦い、生徒を守ったお前たちが悪い奴ではないのは

 分かっているがこちらもはい、そうですかと

 お前たちを解放するわけにはいかん。

 とりあえず、話しぐらいはしてもらうぞ』

「悪く思わないでください」

 

管制室と目の前で、千冬とエレンがすまなさそうな声で

投降を二人に呼び掛けた。

 

「気にすることはないよ~。

 それが当然の対応だし、それに俺たちは捕まらないよ?

 リュウケンドー!ここに来た時みたいに、“アレ”で

 逃げるぞ!」

「アレ?……あっ!

 ワープキー!発動!」

 

Fリュウケンドーはワープキーを発動させ、カズキと共にそこから

離脱した。

 

「消えたっ!?」

『山田くん!』

『だめです!レーダー類に反応ありません!

 追跡は不可能です!』

『わかった。

 聞いての通りだ、メイザース。お前たちは、とりあえず

 更識姉達と協力して、観客席の生徒達を解放してやってくれ』

「了解……」

 

多くのものが苦い思いを呑みこんで、戦いは終わった――

 




鈴のバリアジャケット姿は、アライブ版ISコミック第二巻の扉絵
の恰好を青くして胸元が見えるようになったものです。
それがムドガのボコりに繋がり、元ネタは「俺、ツインテールになります。」
からになります。
あまりにそっくりだったのでやっちゃいましたwww

そのムドガですが、ボウケンジャーに登場するジャガの恰好で
顔は強化形態のガジャドムです。
ボウケンジャーでは、ラスボスでしたがここでは実力は遠く
及びません。
デスブロムは、デジモンのブロッサモンを参考にしています。
名前はモデルとしたものの名を並べ替えただけなので、特に
深い意味はありません。

今回、ムドガは巨大化する際に観客たちが発生させたマイナスエネルギー
も吸収しているので、敵が回収できたエネルギーはそれ程ありません。

カズキの無双ぶりを描きたかったんですが、遣い魔相手だと
上手く出来なかった(汗)
あの恰好は、ISスーツくらいの防御性能はありますがそれだけです。
ほぼ生身の力で、蹴飛ばしたりしてます。

鈴のデバイスや武器の名前といい我ながらネーミングセンスがない(苦笑)

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