インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

15 / 75

今回からやっと多重クロスオーバーらしいことができます(苦笑)
タイトルからも分かるように皆さん待ちに待った彼。
ゲキリュウケンと同じくリュウケンドーの相棒の赤い彼が出てきます♪
そして、一夏の仲間も登場!
ある作品からなんですが、正直ファンの方や知っている人達からの
反応が心配なんですよね(汗)

そして、宇宙からの使者(笑)とは何を意味するのか!

次話は、この後すぐ投稿します。


宇宙からの使者(笑)と赤き銃士

「織斑くん!凰さん!だめです!二人とも通信を切っています!」

「ちっ!勝手なことを……!」

「でも、あながち間違いじゃないんだよね~」

 

こちらの指示を無視して行動を起こした、一夏と鈴に舌打ちをする千冬

だったが、いつの間にか端末を操作していたカズキに目を移す。

 

「ほら、これ見て」

「遮断シールドがレベル最大……、しかもアリーナへの扉が全てロック……、

 あのISの仕業!?」

「これじゃ避難も救援もっ!」

 

カズキが端末の画面に、アリーナの状態を表示するとそれを見た

簪と真耶は驚愕する。

 

「で、でしたら政府に救援を!」

「もう、やっています。

 現在も三年の精鋭がシステムをクラック中ですが、まだ時間が

 かかります。

 解除次第、すぐにアリーナに突入します」

「先生、僕たちにISの使用許可を!」

「だめよ、シャルロットちゃん」

 

エレンの言葉に、一緒に突入しようとするシャルロットを楯無が止めた。

 

「確かに、一夏くんと鈴ちゃんの救援も大事だけど、今一番優先しなきゃ

 いけないのは、一般生徒の避難よ。

 二人とも、相手のビーム兵器を撃たせないようにできるだけ、

 接近戦で戦っているけどそれもいつまで持つかわからない。

 

 ――織斑先生、避難誘導に向かいますから障壁等を破壊しても

 よろしいでしょうか?」

「かまわん。

 避難のために必要なら、いくらでも破壊しろ。

 生徒の安全と違って、壁などいくらでも修理できるからな……」

 

普段のカズキと痴話喧嘩してたり、一夏をからかうような飄々な態度ではなく

真剣な千冬や楯無の表情を見て、改めて事態の重さを認識する箒たちだった。

 

「じゃあ、まず楯無、セシリア、シャルロットの三人は

 観客席に閉じ込められた観客の避難。

 ドアだろうが壁だろうがブチ壊して、一刻も早くアリーナから

 逃がすんだ。

 メイザース先生は、突入部隊の指揮を。

 織斑先生と山田先生は、ここで侵入者の解析と一夏、鈴のサポートを。

 箒は山田先生の手伝いを頼む」

「碓氷先生、私は?」

 

すごく自然な感じで、それぞれに指示を出したカズキに自分だけ

呼ばれなかった簪はおずおずと聞いてきた。

 

「簪は、俺と一緒に三年のシステムクラックに加勢だ。

 それをクリアできれば他がスムーズにいくから、

 人手は一人でも多い方がいいからね」

「一夏さん、待っていて下さい。

 避難誘導を終えたらすぐに、このセシリア・オルコットが

 助けに参りますわ」

「いや、更識姉以外は突入部隊には参加させん」

 

セシリアと同じことを考えていたのか、シャルロットや簪も

突然の千冬の言葉に、驚く。

 

「ど、どうして……!」

「連携訓練をしていないものがいても、ただの足手まといに

 なるだけだ」

「で、ですが!」

「一夏の訓練での連携攻撃はうまくかみ合っていたことは聞いているが、

 教師陣ともうまくいくとは限らん。

 更識姉は何度か、今回のような緊急時を

 想定した教師陣との訓練はしているが、お前たちは?

 大体、突入した時の自分の役割は?

 どの武器をどう使う?味方の構成は?敵はどのレベルを想定してある?

 連続稼働時間は――」

「わ、わかりました!もう結構ですから!」

「ごめんね、セリシアちゃん。気持ちはわかるけど、今回はこらえて」

「くそっ!私たちは見ていることしか、できないのかっ!」

 

その場にいたもの達の思いを代弁するかのように、箒は悔しそうに

一夏が戦う姿を映すモニターをにらみつけた。

 

「心配は無用さ。あいつはそう簡単にやられはしない……。

 なんたって千冬ちゃんの弟で、俺の弟子なんだからね♪」

 

そう言って、カズキは簪と共に管制室を後にした――

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「きゃあああぁぁぁ!!!」

「なんなのよ、アレ!」

「なんで、ドアが開かないの!?」

 

一方、観客席はパニックに陥っていた。

いくら、ISが昨今の常識を超えた発明であっても、自分たちはそれを

持たないただの高校生。

ひょっとしたら、命を失うかもという恐怖が彼女たちから

冷静さを奪っていた。

 

「みんな、落ち着いて!!!」

「こういうときに、一番怖いのはパニックになることだよ!」

「ちょ~お、どいてな?

 ドアにハッキングして、開けれるかやってみるわ

 (リイン、できるか?)」

「(まかせてくださいですぅ~!)」

 

そんな中で、なのは達は慌てず観客を落ち着かせて避難誘導をしていた。

彼女たちは災害時に救援要請を受けることもあるので、こういった

非常事態でもやるべきことをわかっているのだ。

 

「(本当なら、この壁を壊すのが一番早いんだけど……)」

「(みんなの前で魔法を使うわけにはいかないから、

 ここは我慢して、なのは……!)」

「(こういう時にこそ、私らの力はあるのに……!)」

 

自分たちの力を使えば、みんなを助けられるのに使えないことを

歯がゆく思うなのはたちであった。

 

 

 

「おおおりゃぁ!」

「はぁぁぁっ!」

 

一夏と鈴が左右から、斬り込むも敵ISは両腕を使って

その攻撃をやすやすと防ぎ、スラスターを用いて体をコマのように回して

二人を弾き飛ばす。

 

「おわっ!?」

「っ!こんのぉ!」

 

二人とも素早く立て直して、鈴はオマケとばかりに立て直しながらも

龍哮を連射するものの、敵ISはその見えざる攻撃をスケートを

滑るかのようにジグザグに動いて、全てかわしてみせ、二人から

距離をとった。

 

「させるかよっ!」

 

距離をとられたら、ビームが飛んでくるかもと一夏は

イグニッション・ブーストを使って距離を詰め、近接戦闘に持ち込む。

 

「はっ!」

 

一夏が右切り上げで斬りかかるも、侵入者は後退して回避する。

 

「どいて、一夏!」

 

鈴の言葉を聞くや否や、右へ横っ跳びしそこを龍哮が通り過ぎる。

だが、侵入者はそれを体を再びコマのように回すことで防ぎ、おまけとばかりに

ビームを乱射する。

幸い、回りながら連射するためか威力は低く遮断シールドに

当たってもはじかれている。

 

「ああもうっ!なんなのよ、コイツは!」

「鈴、エネルギーはどれくらい残っている?」

 

どんなにフェイントをかけて、接近しても容易くこちらの攻撃を

防ぐか弾くかして距離をとられることの繰り返しに、鈴は

地団駄を踏む勢いで悔しがる。

そんな、鈴をなだめることも含めて一夏は敵ISを見据えながら

落ち着いた声で問い掛けた。

 

「残り230ってとこね。アンタは?」

「150を切ったところだ。

 ここらで、相手にダメージを与えないとマズイな……

 (ゲキリュウケンどう思う、アイツ?)」

『(お前が考えていることは、ほぼ間違いないだろう……)』

「今の火力でアイツのシールドを突破して機能停止に

 追い込められる勝率は、一ケタあったらいい方じゃない?

 厳しいわね……」

「十分さ、勝率なんてゼロじゃなきゃそれでいいさ」

「……アンタってさ、よくジジくさく健康第一って

 現実的なことを言うけどさ、ホントは宝くじとかに夢を

 求めるタイプよね」

「男は夢を追いかけてなんぼなんだよ。

 お前は勝率が低いからって勝負どころから逃げるのか?

 別に止めないけど」

「寝ぼけたこと言わないで!あたしは代表候補生なのよ!

 こういう時に、体張ってなんぼでしょうが!」

「じゃあ今、お前の背中は俺が守ってやるよ」

「うぇっ?あ。う、うん……」

『……』

 

鈴が一夏の言葉に赤くなりゲキリュウケンがジト目をすると、

侵入者がビームを撃ち彼女の横をかすめた。

 

「ところでさ、鈴。

 代表候補生のお前から見て奴をどう思う?」

「はぁ?どうって……」

「なんかあいつ機械じみているっていうか、ロボットっていうかさ。

 ……アレ、ホントに人が乗っているのか?」

「は?人が乗らなきゃISが動くわけ……

 そういえばアレ、あたしたちがこうして会話してても

 あまり攻撃してこないわね。

 それに今までの動きも……」

「ああ、どこかパターンじみている。

 しかも人間のような、不自然な呼吸を感じさせない

 規則正しいリズムで動いていやがる」

「でも、ありえない。無人機なんて……」

「男がISを動かすって、ありえない実例がお前の目の前にあるんだぜ?

 無人機をどこかの国や研究所が、完成させていてもおかしくはない」

 

一夏の言葉に敵ISの正体がうっすらとだが、見えてきた。

 

「それで?あれが無人機ならどうだって言うのよ?」

「簡単なことさ。

 人が載っていないなら、“全力”で攻撃できる」

 

そう言いながら一夏は雪片弐型を握りしめ、千冬が

イグニッション・ブーストを教えた時のことを思い返す。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「一夏、『バリアー無効化攻撃』について

 改めて詳しく教えておく。

 <雪片>の特殊能力だが、これは相手のバリアー残量に関係なく

 それを斬り裂き、本体に直接ダメージを与えられる。

 そうすると、どうなる?」

「え~っと、相手の絶対防御が無理やりに発動させられるから、

 大きくシールドエネルギーを削れる?」

「そうだ。私がモンド・グロッソの大会を勝ち抜けたのも

 この力によるところが大きい」

 

さらりと言うが、つまり千冬は刀一本で

世界の頂点に立ったということである。

 

「そして、この能力は自分のシールドエネルギーを使って

 発動する……、つまり欠陥機だ」

「欠陥機っ!?」

「いや、ISはそもそも完成していないから欠陥も何もない。

 『白式』は、他の機体より攻撃特化ということだ。

 私が使っていた『暮桜』のように、拡張領域も埋まっていないか?」

「そうだよ。だから、他の武器を装備できないって……」

「本来、他の武器を使うのに空いている処理を全て

 使っているからこそ<雪片>の攻撃力は、全ISでもトップレベルなのさ」

 

千冬の話を聞いて、改めて一夏は自分の目標のデカさを認識した。

仮にリュウケンドーに変身してゲキリュウケンと共に、闘えば千冬にも

勝てるかもしれないが、今の自分が白式を駆って千冬と同じように

世界一になることなどできないだろう。

 

「でもなぁ~。

 センスないのは分かりきっているけどせめて、一丁ぐらい銃とか在っても……」

「お前も言っていただろうが?

 射撃には3ステップ必要だと。

 それ以外にも弾道予測や反動制御、環境の影響など……、

 戦闘中にも思考しなければならないことが山のようにあるが、

 お前にできるのか?」

「ははは……無理です」

 

射撃に必要なことを述べられて、一夏はガクリと肩を落とした。

 

「わかればいいさ……」

「(そう言えば、“あいつ”はそういうことどうしてんだ?

 ――やっぱ、射撃に関しては天才なのかね?あいつは~)」

「一夏、確かに雪片の真の力、零落白夜は強力だが威力が

 ありすぎて使い方を一歩間違えば最悪なことも起こり得る……。

 力をいつ何のために、使うかのかを決して忘れるな……。

 まぁ心配はしていないさ、なにせ私の弟だ。

 一つのことを極めれば、自ずとわかるさ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「鈴、俺が合図したらフルパワーで、衝撃砲を撃ってくれ」

「それはいいけど、アイツには当たらないわよ?」

「いや、衝撃砲はアイツじゃなくて俺に撃つんだ」

「はあっ!?何言ってんのよ!

 あんたブッ飛ばされすぎて、頭のネジが飛んだの!?」

「イグニッション・ブーストと合わせるんだよ。

 イグニッション・ブーストは、スラスターから放出した

 エネルギーを取り込んで放出する。つまり、エネルギーなら

 何でもいいんだ。

 加えて、衝撃砲の威力を加速につなげれば

 アイツの反応速度を超えてダメージを与えられるかもしれない」

「理屈じゃ、そうかもしれないけど上手くいく保証なんて……!」

「そう、普通こんなバカなことをする奴なんていない……

 だからこそやるんだ!

 それに、早くアイツを早く倒さないとヤバイ気がするんだ。

 もう、迷っている暇はないんだ鈴!」

「ああもうっ!どうなっても知らないんだからね!」

 

一夏の突拍子もない作戦に、お手上げだと言わんばかりの大声を出して

鈴は作戦に同意した。

 

「よし。

 それじゃ、さっきのように二人で左右から攻撃して

 アイツが防御したら、やるぞ!」

「わかったわ!」

 

そう言うと、一夏と鈴は再び左右から斬り込んだ。

そこで、一夏の考えを裏付けるように敵ISはさっきと同じように

腕で防御した後、体を回転させて二人を弾き飛ばそうとした。

だが、二人はそう来ると読んでいたため、回転の勢いを利用して

距離をとった。

そして、一夏は相手の回転が止まるタイミングを図って――

 

「今だ、鈴!」

「行っけぇぇぇ!!!!!」

「ぐっ!」

『(一夏っ!)』

 

背中に巨大なエネルギーの塊がぶつかるのを感じながら、一夏は

飛びそうになる意識を歯を食いしばって引きとめる。

そして、一夏は加速する――

 

「うおおおぉぉぉ!!!!!

 (守ってやるさ――!あいつも、千冬姉も、雅さんも、相棒も!

 俺に関わる人達みんなを!

 そして――――俺自身の“明日”を切り開く!!!)」

 

一夏の想いに呼応するかのごとく、雪片弐型は展開しそこから

雪片よりも大きいエネルギーの刃が形成される。

電光石火を超える速さで、接近した一夏は上段に構えた雪片を

敵ISの右腕に振り下ろす。

 

「おおおおお!!!

 (っ!?この気配は!?)」

 

瞬間リュウケンドーとして、命がけの戦闘を経験して得た

第六感ともいうべきものが警鐘を鳴らした――

 

『(いかん!)』

「(すぐに、コイツから離れないと!)」

 

ほんの数コンマの判断で、攻撃をやめ退避しようとする一夏だったが、

遅かった。

 

「うわぁ!?」

「一夏っ!」

 

その場にいた鈴が、観客が、千冬が、戦いを見ていたもの全員が言葉を

失った……。

一夏はアリーナの壁に叩きつけられたのだ。

敵ISが“伸ばした”左腕によって――

 

「なに……アレ?」

 

それは誰がつぶやいた言葉だったか……。

今の侵入者の姿は、更に異様なものへと変貌していた。

 

一夏によって、斬り裂かれようとした右腕は途中まで切断されているが、

その切断面にはケーブルが露出しており、それらがまるで

生物のように唸り始めたのだ。

極めつけは、一夏を壁に叩きつけている左腕だ。

植物のツタのように形成されたそれは、一夏まで伸びて

ガッチリ拘束していた。

 

「くそっ、動きがっ!」

『(マズイぞ、一夏!奴が!)』

 

動きを封じられた一夏は、ゲキリュウケンの言葉を聞いて侵入者に目をやると

離れたここまで、聞こえるほどのエネルギーのチャージ音をさせて肩の砲門で

一夏に狙いをつけていた。

 

「一夏を離しなさいよ!このっ!」

 

敵の予想外の行動に対して、鈴は両手の双天牙月をつなげ、

両刃となったそれをブーメランのように投げつける。

 

カァァァーーーン!

 

アリーナに甲高い音が響くと敵の装甲にはじかれ、双天牙月は

地面に突き刺さってしまう。

 

「だったら……!」

 

双天牙月がはじかれたのなら、龍哮でと思った鈴だったが、

一夏が斬りつけた腕の切断面から植物のつるが伸びて、

鈴に襲いかかった。

 

「っ!?

 ちょっ!きゃあっ!!!?」

 

あまりに常識の枠を外れた出来事の連続に、鈴は取り乱してしまい回避

が遅れ、地表に叩きつけられてしまう。

と同時に、砲門の光が収束される。

その瞬間、敵のチャージが終わり一夏がビームに焼かれる光景が

鈴たちの脳裏によぎった。

 

「や、やめてぇぇぇーーーーー!!!!!」

 

聞く気などないと言わんばかりに、鈴の叫びに応えることなく敵ISは

無慈悲に一夏へ、ビームを放ちそして……、アリーナ“上部”の遮断シールド

を撃ち抜いた。

 

「へっ?」

「はっ?」

 

叫んでいた鈴も助かった一夏も、間の抜けた声を出した。

いや、この戦いを見ていた者全員が間の抜けた声を出すか、

先ほどとは違う意味で声を失っていたりした。

 

侵入者がビームを放とうとした瞬間、一夏のピットから黒い影が

飛び出し、敵ISを蹴り飛ばして地面に刺さった双天牙月の

刃の上に降り立った。

そのおかげで、ビームの軌道が逸れ一夏の拘束も解けたのだが、

その姿はこの場に合わないような、異様なものだった。

 

全身を黒タイツで着こみ、手足には白の手袋とブーツ、首には赤いマフラーを

かけ、顔には二つの緑の丸と三日月のような円が顔を構成するよう描かれた

黄金のマスクをしていた。

それはかつて一夏が持っていた“これで完璧♪目指せ、ISマスター!”の

表紙にのっていたものの姿そのものである。

そして、それはどう見ても――

 

「フフフ……ハハハハハハハハ!

 遠い銀河の彼方から、青く輝く地球を守るため流れ着いた、

 一筋の流れ星!

 そう!私の名は、宇宙ファイターX!!!」

 

宇宙ファイターXと名乗ったその者は、双天牙月から

飛び降りると体でXの文字を現すようにポーズを決めた。

 

それを見ていた者は、時が止まったような感覚を体験した……

 

「「「「「…………」」」」」

「(なぁ、あれってさ、あの人だよな?)」

『(あんな恰好をして、アレを蹴り飛ばせるような奴が他にいるのか?)』

「(何してんのよ、あの人!)」

「「『(カズキ(さん)!!!)』」」

 

そう異様な姿とはいえ、敵ISを蹴り飛ばし一夏の窮地を救ったのは、

変なコスプレをしたカズキだったのだ。

 

「(ふっ、決まった!

 見ろよ、ザンリュウ。皆、あまりのかっこよさに言葉を失ってるよ♪)」

『(そう~か?)』

「(ちょっ、一夏!

 アレ、何とかしなさいよ!弟子なんでしょう!)」

「(何とかって、ツッコめって言うのか!?アレに!)」

『(見るからにノリノりだな)』

「(鈴!お前がなんとかしてくれ!

 大丈夫、お前ならできる!!!)」

「(できるか!)」

 

みんな、どんな反応をしていいのかわからない中、鈴と一夏が

この空気をなんとかしろと目で押し付け合いを始めた。

 

「(っていうか、誰かツッコんでぇ!300円あげるから!)」

「(いくら、あたしがツッコミ体質つってもね、できるもんと

 できないもんがあるのよ!)」

 

あまりの空気のおかしさに、一夏と鈴は若干壊れ始める中で

救世主が現れた。

 

「何をしているんだ…………この大バカものがぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

アリーナ中にハウリングした声の主は、世界最強の教師にして

世界最強の恋する乙女、織斑千冬であった――

 

「「『(よかったぁ!ツッコミ入った!)』」」

 

カズキと最も近くにいた二人と一匹は、この状況をツッコめる人がいて

安堵した。

 

「違うぞ、織斑教諭。

 私は宇宙ファイターXだ。

 断じて君が、大好きだけど素直に気持ちを表せない想い人の

 カズキという男ではない!」

「貴様、こんな非常時になにをふざけたことを……」

「あ、あの~すいません……」

 

カズキの空気の読まなさにキレる数秒前であった、千冬に

おずおずとした声で通信が入った。

 

「誰だ……」

「ひっ!?さ、更識簪です……」

「何の用だ、更識妹」

 

通信を入れたのは簪であり、千冬の地の底から響くようなドスのきいた

声に一瞬で涙目となる。

 

「あ、あの、そ、その~、そ、そこにいるのは碓氷先生じゃ

 ありません……。

 う、碓氷先生は今ここでシステムクラックしています……」

「何?」

「そうだよ、千冬ちゃん?

 大~好きな俺のことを間違えるなんてひどいなぁ~」

 

管制室の端末に、簪や他の生徒たちと共にシステムクラックを

しているカズキの姿が映し出された。

 

「えっ?それじゃあ、あそこにいるのは……?」

「(簪と一緒にいるのって、影武者?)」

「私のことより、アレを見ろ!」

 

疑問に頭を傾げる鈴と一夏を無視して宇宙ファイターXが指さしたのは、

立ちあがろうとしていた敵ISだった。

体を大きく、揺さぶらせて俯いたかと思うと顔を一夏たちへと

向け背中の装甲が吹き飛ぶと、そこから植物のツタのような

ものが飛び出した。

 

「おいおい……」

『(まさか……)』

 

一夏だけでなく、見ていた者たちが驚く中でもどんどん装甲は

弾き飛ばされ、その中からツタが集まり体のようになったと

思ったら、巨大な花が姿を現した。

 

「キィシャッッッ!!!」

 

花から目と口を出し雄たけびを上げる“ソレ”は、胸と思える部分に

黒い球体を輝かせジロリと、一夏たちを睨むと、ツタを数本伸ばして

小さめの花を咲かせ、その花が割れるとギザギザの歯を見せた。

 

「な、何よアレ……?」

「(魔物!?

 でも、なんで無人機の中から!?)」

『(いや問題なのはそんなことより、アレはかなりのレベル

 だということだ。

 しかも、攻撃を受けるまで気配を感知できなかったぞ!)』

「……」

 

無人機の中から姿を現した魔物に驚愕する一夏とゲキリュウケンだったが、

周りはそれどころではなかった。

 

「あ、あああ……」

「バ、バケモノ……」

「もう……お終いよ」

 

突如として現れた魔物の姿に恐れ、

その場に座り込むもの、あきらめるものが出始めてなのはたちは

しぶい顔をした。

 

「みんな、しっかりして!」

「(はやてちゃん、あれって!)」

「(十中八九間違いない、調査員を襲った謎の怪物の仲間や!

 こうなったら、正体がバレるとかそんなん言ってられへん!

 みんなを守るためにもいくで、二人とも!)」

「待って、はやてちゃん」

「あの宇宙ファイターって奴、何かするみたいよ」

 

魔物の姿を見て、自分たちの正体などかまわず戦おうとする

はやてに、すずかとアリサが小声で話しかけてきた。

 

「結界……発動!」

 

宇宙ファイターXが地面に手を突くと、そこから何かが広がって一夏や鈴、

魔物を呑みこむと球状の何かが形成された。

 

「これはっ!」

「結界!」

「(リイン!すぐに解析や!)」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「今度は何なのよ……?」

「カズk「宇宙ファイターXだ」、う、宇宙ファイターX、

 アレは一体?」

「それは、そこにいる奴が説明してくれる……さっ!」

 

結界の中では、何が起きているのか分からず混乱している

鈴とは反対に、一夏がカズキこと宇宙ファイターXに

どういうことかと聞くと、彼は足元にあった石ころを

拾うと何もない上空に投げつけた。

 

「ほう~、私を見つけるとはなかなかやりますね~」

 

投げつけられた石は何かによって砕かれ、そこから

白い布に体を包み肩や頭には、灰色の骨を象ったような

装飾品を身にまとった神官のような男が現れた。

 

「お前はっ!?」

「私は、ムドガ。

 この次元世界において、絶対なる創生種の一人」

「ムドガ……アレを差し向けたのはお前の仕業だな」

「ふふふ、如何にも」

 

姿を現したムドガに、カズキは無人機を差し向けたのかと

聞くとあっさり白状した。

 

「あなた達が纏っているおもちゃを作った女が、作ったものでしてね~。

 実験に使えそうだったので使ったのですよ~」

「実験って、何よ!」

「おそらく、ISコアを使ってのマイナスエネルギーの

 増幅ってところだろ」

 

実験と言うムドガの言葉に、反応する鈴にカズキが答えた。

 

「ほう~、よくわかりましたね~」

「通常、魔物が成長するには大量のマイナスエネルギーが

 必要だ。人間を襲い、マイナスエネルギーを吸収していくことで

 魔物は強さを増し、知恵もついてくるようになる。

 だが、それにはかなりの時間も必要なのに、アレはいきなり

 中の上ぐらいの強さで姿を現した。

 おそらく、魔物の幼生でもISのコアに寄生させ、

 学園を襲わせることで発生する、生徒のマイナスエネルギー

 を吸収させたんだろう」

「ちょっと待ってください。そうやって、吸収するなら

 気配が小さくて感じ取れない幼生はともかく、

 少しずつ成長する魔物なら、気配を感じれるはず。

 でも、あいつはいきなり気配を出しましたよ!」

「簡単なことですよ~。マイナスエネルギーは少しずつ

 与えたのではなく、一定量まで溜めてISコアによって

 増幅したところを与えて一気に成長させたのです♪」

「なるほどなISコアには、エネルギーを増幅させる機能があると

 されているから、俺たちに感知されないような少量で集めたところで

 増幅させたということか……」

 

カズキの推理に、一夏は自分たちがもっと早く

侵入者を倒せばこんなことには、ならなかったのにと

苦虫をかみつぶしたような顔になる。

 

「実験は大成功ですね♪

 後は、あなた方を片付ければ最早我ら創生種の

 邪魔者はいなくなります~」

「寝言は寝てから言えば?

 確かに、アイツはそこそこの強さだけど

 あの程度じゃ、俺たちを倒すには役不足だぞ?」

「でしょうね。ですが……これならどうです!」

 

ムドガはそう言って指を鳴らすと、空中に映像が映し出された。

 

「こ、これは!?」

「……」

 

そこには、アリーナを取り囲む紫と黄色の縞模様に

こうもりの羽のような装飾を頭につけ剣を持った一つ目の

異形の集団が映っていた。

 

「あなた達が、半端な魔物で倒せないことは

 既にわかりきったこと。

 ですが、弱点も然り。

 こうやって、あなた達が守ろうとするものたちの命が

 かかれば、私に従うしかありませんよね?

 全く、地球を守る魔弾戦士とはいえこんな簡単なことで

 倒せるというのに、あの方々は何を恐れているのか」

「卑怯よ、アンタ!」

「構うな、鈴。

 奴の戦術は一つのやり方としてはアリだ」

「相手の弱みを狙うのは、戦術の基本だからね~」

 

勝ち誇った声を出すムドガに、反論する鈴だったが一夏とカズキは

慌てることなく、人質をとるやり方を肯定した。

 

「まっ、俺たちもやるかと聞かれたらNoだけどね」

「ふふ、負け惜しみですか?

 結界を展開され、私まで閉じ込められるのは想定外でしたが、

 後はあなた達を抹消するだけ。

 それとも、外の人間達を見捨てて戦いますか?」

 

自分の勝利を信じて疑わないのか、ムドガの余裕は崩れなかった。

アリーナを取り囲んでいるのは遣い魔(つかいま)といい、

魔物としての強さは最低クラスだが、それでも人間の4倍ほどの力

をほこり武器を持たない普通の人間が襲われたらひとたまりもないだろう。

 

「確かにお前の言うように、俺たちだけならこれで

 負けがほぼ確定だな……。

 “俺たち”だけだったらな……」

「何を言って……」

『グランフォール!!』

 

意味深なことを言うカズキに訝しむムドガだったが、突如として

映像から聞こえてきた声に、視線をそちらに移す。

 

『オラオラオラオラ!!!

 お前らの相手は、この“修羅化身、グランシャリオ”がしてやる!

 いくらでも、かかってこいザコども!!!』

「こ、これは!?」

 

そこには、遣い魔を次々と蹴散らしていく黒い鎧を纏った戦士が

映し出されていた。

 

「残念だったなぁ~、ムドガ?

 こっちもお前たちの襲撃に備えて、こっそりと仲間を呼んでいたのさ~」

「な、何だと!?」

「ついでに、言っておくと屋上に配置した

 マイナスエネルギー回収班の方にも向かっているぜ?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「ギジャァァァ!」

 

屋上では、リュウケンドーによく似た戦士が

遣い魔たちと戦っていた。

白いスーツに赤いラインを走らせ肩と膝、胸に赤い宝石を身につけ

赤き銃を持って、戦う戦士――

 

「リュウガンオー!ライジン!」

 

リュウケンドーと共にジャマンガと戦いこの世界を守り抜いた銃士、

リュウガンオーがIS学園に降臨した。

 

「しっかし、なぁんで俺はいつもこういう裏方というか、

 縁の下みたいな役割なのかね?ゴウリュウガン?」

『その考えは否定する。

 目立たないだけで、これも重要な役割である』

「まっ、言われなくても分かってるけど……さっ!

 ほんと、一夏は俺がしっかり支えてやらないとダメだよな……っと!」

『お前は本当に男前だな、弾』

「褒めても何も出ねぇぞ!」

 

リュウガンオーこと五反田弾(ごたんだだん)はゴウリュウガンを使い、

次々と遣い魔たちを倒していった――

 




はい、予想した方もいらっしゃったでしょうが、リュウガンオーは
五反田弾でした~。
彼は縁の下の力持ちということで、一夏を支えてきました。
そしてもう一人の仲間は、「アカメが斬る」からグランシャリオ。
当然、中の人は服のセンスがいまいちで海の男の彼です。

宇宙ファイターXと名乗ったカズキの姿は、
アニメ「メダロット」に出てきた、宇宙メダロッターXの恰好です。
かなりノリノリでやっておりますwww
加えて、もう一人のカズキの正体は誰なんでしょう?
ヒントはカズキが、最初に千冬たちの前に現れた時
何のアニメに出てきた着ぐるみを着ていたかです。

書いてて気付きましたが、千冬さんのISが完成していないというのは
何か意味があるのか……

コアのエネルギー増幅に関しては完全な捏造です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。