インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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最新話、完成しました。
今回は細かいネタをちょこちょこ入れてみましたwww


巻き起こる嵐

「鈴?お前、鈴か?」

「そうよ、今日は噂の一組代表に宣戦布告しにきたってわけ」

 

鈴と呼ばれた少女はまるで百戦錬磨の大人のような余裕の態度を見せ、

一組をざわつかせた。

 

「何やってんだよ、お前。

 あれか?朝起きたら、ベッドにタマゴがあって、

 そこから生まれたしゅ○キャ○で○ャラチェン○でもしているのか?」

 

もっとも付き合いの長い一夏には、ただの格好付けであることは

瞬時にバレてしまった。

 

「そうそう、あたしの心をアンロックして

 キ○ラ○りを……って、

 違うわよ!何やらせるのよ、一夏!」

「おい……」

「なによ!?」

 

鈴が一夏と漫才みたいなやりとりをしていると、

彼女の後ろから地の底から響く様な声が聞こえ鈴が、

いきおいよく振り向くと彼女の視界は黒い影に覆われた。

 

「……痛っ!」

「さっさと自分の教室に戻れ。SHRの時間だ……」

「ち、千冬さん……」

 

鈴の前に現れたのは、いつにも増して鋭い眼光を放つ

IS学園最強教師、千冬であった。

昔から、千冬のことが若干苦手な鈴は彼女の迫力に涙目となり

後ずさってしまう。

 

「織斑先生だ。そこの馬鹿と同じことを言わせるな。

 そして、道を塞ぐな。邪魔だ……」

「は、はいぃぃぃ!」

 

コンマ数秒で姿勢をただし、教室を出ようとする前に

鈴は再び一夏の方を向いた。

 

「またあとで来るから、逃げるんじゃないわよ!一夏!」

「いいから、早く戻れ……」

 

千冬がゆっくりと黒き宝剣(出席簿)を構えようとしているのを目に入れた瞬間、

鈴は電光石火の早さで自分のクラスへと逃亡した。

 

風になびくツインテールは、何とも様になっていた。

 

「やれやれ、何だったんだ?

 というかアイツが、中国の代表候補生だって?」

 

何気なく今の嵐について、ぼやく一夏だったがそれがいけなかった。

 

「おい、一夏。今のは誰だ?やけに親しそうだったが……」

「一夏さん?納得のいく説明を――」

「一夏?後ろには注意した方が、いいかもしれないよ?」

 

箒、セシリア、シャルロットが一夏の周りを包囲して質問という

集中砲火をはじめ、他のクラスメートたちも同じように質問を投げかけ

援護射撃を行うが、一夏は何も答えず心の中で彼女たちに合掌をしていた。

 

「席につけ、馬鹿ども!」

 

構えていた黒き宝剣(出席簿)が振り下ろされ、

一夏の周りには、頭から煙を上げるものが多数横たわった。

 

「もう~、千冬ちゃん。

 大好きな弟が自分以外の女に取られたからって、

 八つ当たりはダメだよ~?」

 

その日のSHRで、行われた痴話喧嘩はいつもより激しかったという――

 

 

 

「(さっきの女は、誰だ?

 私たちに接するみたいに仲良さげであったが……)」

「(何なんですの、さっきの人は!

 ただでさえ、恋人という以前から知り合いである箒さんたち以上の

 ライバルがいるというのに!)」

「(これ以上、ライバルが増えるのはゴメンだよ~

 あれ?でも一夏の彼女って、確か……)」

 

SHR前に嵐のようにやってきた少女のことが、余程気になるのか箒たちは

授業そっちのけで自分たちのライバルかもしれない鈴のことを考えていたが、

ふとある考えに至った。

 

「(いや~、三人とも考えとることまるわかりやな~♪

 恋人がおると思ったら、またライバルやなんて♪)」

「(ああ、はやてったら楽しそうに笑って。

 でも、一夏の恋人ってネコみたいな人で……)」

「(構ってほしいけど構ってほしくないって言っちゃう、

 アリサちゃんみたいなツンデレさん……)」

「(なんかわかんないけど、失礼なこと考えてるわね、すずか。

 まあ、それは後にして昨日一夏の奴言ってたわね、

 恋人はかわいいもの好きって。

 あの鈴て子、なんか動物とか好きそうだったし……)」

「(さっきやってきた子は、まるでネコさんみたいでかわいかったなぁ~)」

「「「「「「「(まさか、さっきの女の子が一夏(くん)(さん)の

 彼女!!!?)」」」」」」」

 

授業の内容なんて、まるで頭に入っていない様子の箒たちを見てフフフと

笑うはやてであったが、彼女やフェイトたちも鈴のことが気になっており、

箒たちと同じ考えに辿り着いた。

約一名は、全く別のことを考えていたが。

 

昨日、一夏が惚気ていた内容はピタリと鈴に当てはまる。

まさか、鈴が彼女なのかと思うが彼女たちはある重要なことが頭から

抜け落ちていた。

それは、IS学園の生徒なら決して忘れてはならない掟。

すなわち――

 

「お前ら、そんなに私の授業は退屈か……?」

「「「「「「「はっ!?」」」」」」」

 

千冬が授業をしている時に、考えごとは命に関わるということである。

バババババババシ――――ン!!!!!!!

その授業中、教室の7か所で煙があがった――

 

 

 

「……」

「う~~~」

「むぅ~」

「どうしたの、三人とも?」

「何か、あったんでしょう?

 一夏くん関連で」

「何で、俺が原因みたいなことを言ってるんですか、楯無さん」

「「「「(いや、実際事実だし)」」」」

 

午前の授業も終わり、昼食と言うことで食堂に向かう途中に一夏たちは

同じように彼らを誘おうとしていた楯無、簪と合流していたが、

箒、セシリア、シャルロットの三人は一夏のことを恨めしそうに見ていた。

 

千冬の後の授業でも同じように先生たちに注意され、元々の原因である一夏が

それを不思議そうに見ているものだから、自業自得なのはわかっているが

睨まずにはいられないのだ。

 

「待っていたわよ、一夏!」

 

そんな彼らの前に、もう一人の原因である鈴がドーン!と

効果音でも上げたかのように立ちふさがった。

 

「……、鈴まずはそこをどいてくれ。

 食券が出せないし通行の邪魔だぞ?」

「う、うるさいわね!

 アンタを待っていたのに、何ですぐに来ないのよ!」

「いや、俺は一日18時間寝ているポ○モンじゃないから、

 テレポートなんてできないぞ?」

「うぐっ……!

 と、とにかく席取っておくから早く来てよね!!!」

「あいかわらずだな~

 あいつは」

「なるほど、そういうことね……」

 

一夏と鈴のやりとりを見て、何があったのか察しがついたのか

楯無と簪はジト目で一夏を見つめるのであった。

 

「まっ、なにはともあれ、久しぶりだな鈴。

 大体一年ぶりくらいか?」

 

それぞれの昼食を受け取った一夏たちは、鈴がとっていたテーブルに

座り、早速一夏が質問を彼女に投げかけた。

箒たちをはじめ、皆食事そっちのけで興味津々である。

 

「そうね。アンタも元気そうじゃない?

 でも何?

 何で、ISなんか動かしてるのよ」

「まぁ、いろいろとあってな」

『(ほぼ、お前のドジだろうが……)』

 

まるで、休み明けに会った友達のように自然に会話をする二人だったが、

それをおもしろく思わないのが乙女心である。

 

「い・ち・か・く~ん?

 そろそろ、お姉さん達にも説明してほしいんだ・け・ど・なぁ~?」

「……(コクコク」

「そうだぞ!一夏!」

「僕たちに、ちゃんとわかるようにね?」

「ままままさか、こちらの方が昨日言っていた一夏さんの彼女ですの!?」

 

楯無とシャルロットは、目が笑っていない笑顔で一夏に迫り、簪は頷きながらも

無言の圧力を送った。

そして、箒とセシリアがグイっと鈴を指さし、

学園中の誰もが気になることをズバリと問いかけた。

 

「かかかかか、彼女!!!!!?

 いや、それは、なったらうれしいというか、これからなりたいというか……

 じゃなくて!

 えっ!?

 いいいいい、一夏どういうことよ!かかか彼女って!?」

 

予想外にも程がある質問だったのか、慌てに慌てて取り乱して

一夏に問いただす鈴だったが、そこまで言ってあることが頭に浮かんだ。

 

「(ひょっとして、一夏もあたしのこと好きで

 こいつの中じゃ、あたしはもう彼女ってことになってるの!?

 やだもう/////!

 そうならそうと、男らしく言いなさいよ/////)」

 

しかし、悲しいかな。

人の夢と書いて儚いと読むように、乙女の夢ならぬ乙女の妄想もまた

儚いものである……

 

「いや、鈴は俺の彼女じゃないぞ。

 鈴は箒と入れ替わるように、転校してきた

 幼馴染みだよ。

 で、俺の彼女とは、昨年の秋ぐらいから付き合い始めたんだ」

 

乙女心を一ミリどころか、一ミクロンも理解できていない一夏は

今日も平常運転である。

 

「はっ?

 ……、はぁぁぁぁぁ!!!か、彼女!!!?

 あああああ、あんたが!!!!!?

 どどどどどどいうことか説明しなさい!!!!!」

「説明って言っても、好きな子ができて告白して

 付き合っているとしか言いようがないぞ?

 (そう言えば、“あいつ”は鈴とはある意味初対面になるのか?)」

「告っ……!」

 

掴みかからんとするぐらいの勢いであった鈴だったが、一夏の

そのまますぎる説明を受けて、瞬く間に真っ白になってしまう。

同時に、肩を落としこの世の終わりみたいに意気消沈するもの、

バカヤローと叫んで走り出すものなど多数であった。

 

「あちゃ~、冗談やなかったんやねぇ~」

「あ、口から魂出てる子もいる……」

「あの唐変朴が告白って、どんな子なのよ!」

「箒たちも、落ち込んでるね……」

 

はやて達が眺めていると、真っ白になって

机に手をつき顔を俯かせていた鈴がガバッ!と顔を上げた。

 

「ふふふ……、ああああんたもおもしろいジョークができるように

 なったじゃない……ま、漫才師でもめめ目指したら?

 あっ!わかった!

 どうせ、カズキさんが仕掛けたドッキリでしょう!」

「はっ?何言って……」

「そうよそうよ!

 でなきゃ、あんたが告白なんてするわけないし~

 (うんうん、きっとそうよ!

 あんにゃろ~、人の一世一代の告白を覗くだけでなく

 こんなことまでするなんて!

 どこまで、人をおちょくれば気が済むのよ!!!)」

 

一夏が告白したということをカズキが仕掛けたドッキリと一人

納得する鈴であったが、それには理由があった。

実は、彼らが小学六年のある日に鈴は一夏に、

告白しようとしたことがあるのだ。

 

よくある“毎日味噌汁を~”なセリフをアレンジして

勉強中であった酢豚でやろうと誰もいない夕方の教室で

実行したのだ。

だがその途中で、窓の外にカメラをかまえたカズキを見つけ、

さらに彼は自分を見つけたことに気付くと、

にんまりと笑いながらスケッチブックに

“気にせず続けて続けて♪”

と書いて見せるものだから、鈴は一気に顔が赤くなって

恥ずかしさのあまり一夏をブッ飛ばして、その場から逃げたのだ。

 

まあ、その後流石に悪いと思ったカズキが何回か二人きりになる

よう取り計らったのだが、一夏の鈍感や鈴のツンデレ体質などで全て

無駄に終わっていたりする。

 

「(見つけたら、今度こそケチョンケチョンにして、

 ついでに“アレ”や“ソレ”もこの世から消してやる!)」

「そんなに言うなら、後で本人に直接聞いてみたらどうだ?」

「何言っているのよ?

 男のカズキさんが、このIS学園にいるわけ……」

「呼んだかい?」

「…………、っっっっっ!!!!!?????」

 

カズキと会ったら、いろいろなかりをまとめて返そうと決意する鈴で

あったが、唐突に姿を現したカズキを見て声にならない悲鳴をあげて

いすから飛び上がった。

 

「やぁ、鈴。久しぶりだにゃあ~♪」

「あああああ――」

 

両手を使って、自分の体を抱きながら鈴はまるで幽霊に

出会ってしまったかのようにガタガタと震え始めた。

 

実際は、幽霊の方がマシなのかもしれないが……

 

「あれ、どうしたのかな?

 何か俺をケチョンケチョンにしてやるとかって、心の声が聞こえた

 気がしたんだけどなぁ~?」

 

“いや、心の声って、あなたエスパーか!”と食堂にいたものが

心の中でツッコんだのは言うまでもない。

 

「ききききき気のせいではないでしょうかかかかか?」

「なぁ、一夏くん?鈴ちゃんなんで、あんなに碓氷先生に

 ビビッとるん?」

「あれか?

 俺にもよくわからないんだよな~

 何か、会うごとにビビるようになったような……」

 

あまりの鈴の怯えように何事かとはやては、一夏に尋ねるが

彼にも理由はわからなかった。

 

「(言えるかぁぁぁ!!!

 家でこっそりやっていた中二的なアレコレや

 ポエム手帳とかを書いてたのを誘導尋問でバレたりしたなんて!!!)」

 

そう、鈴がカズキにビビっているのは単に彼女の人に知られたくない

黒歴史の大半が悪魔手帳に記されているからであったりする。

もっとも半分はカズキが自分から調べたのではなく、たまたま目撃したもので

あることを鈴は知らない。

 

「ははは♪

 俺はもう食べ終わったから、行くけど

 これからも“い・ろ・い・ろ”とよろしくね?

 鈴ちゃ~~~ん♪」

 

そう言ってカズキが食堂から立ち去ると先程とは違った意味で

鈴は真っ白になり、今度は口から魂のようなものまで出して座り

こんだ。

 

「お、おい。鈴……」

「……う、うっっっがぁぁぁ!!!

 一夏、あんた放課後どこかつきあいなさい!

 とういうか、何かおごりなさい!!!」

「あ~ら、ごめんなさい♪

 一夏くんは放課後、私たちとISの特訓をすることになってるのよ~♪

 なのはちゃん達も簪ちゃんも今日は一緒にやりましょう~」

「えっ?でも私4組……はっ!

 うん、わかった!」

「何よ、私が先に話しt「鈴この人ここの生徒会長で、国家代表」うぐっ!

 じゃあ、それが終わったら待ってなさいよ!」

 

予想外のことが起こりすぎて、八つ当たり気味に一夏に迫った鈴だったが

やんわりと楯無に断られてしまい、尚も噛みつこうとするも一夏に楯無が

生徒会長かつ国家代表と言われて悔しそうに引きさがり、食堂を去っていった。

 

「じゃあ、放課後の特訓がんばりましょうね~」

「うん、一夏。がんばろう♪」

 

そう言う楯無と簪は同じような笑みを浮かべた。

まちがいなく笑顔なのだがそれは、逆らったら何が起こるか分からないというか

渡ってはいけない川を渡ってご先祖さまと会ってしまうかもしれないという

一夏が最も恐れる人物、彼や千冬を育てた吉永雅がたまに浮かべる

笑みと同じであった。

そのため、一夏に断るという選択肢はなかった――

 

そして、今だ落ち込む箒、セシリア、シャルロットに楯無が

何か耳打ちし“いい”笑顔になったことを一夏は知らない……

 

 

 

「え~っと……、どういうこと?」

 

放課後、アリーナに来た一夏はその場の光景に唖然としていた。

そこには、セシリア、シャルロットが自分の機体を展開しており

簪、楯無も自分の専用機を展開していた。

簪は、機動力と火力を兼ね備えた打鉄弐式(うちがねにしき)を

楯無は、他のISに比べて装甲が少ないが機体を覆う水のヴェールと

ランスが特徴のミステリアス・レイディ(霧纏の淑女)を

その身に纏っていた。

そこまでは、まだわかる。

だが、問題は他のメンバーであった。

 

「なんで、箒やなのはたちもISを展開させているんだよ!」

「なんだ?私たちがいては、ダメなのか?」

「へぇ~こんな風になってるんだ~」

「アハハハ……」

「いや~会長さんから、頼まれてなぁ~」

「うふふふ……」

「さあ覚悟しなさい、この朴念仁!」

 

そう、箒をはじめなのは達5人も生徒が使う訓練機を

展開してその場にいたのだ。

素直に感動するもの、苦笑するもの、寒気を覚えさせるような

笑みを浮かべるもの様々であった。

 

箒、フェイト、すずか、アリサは簪の専用機に

似た打鉄(うちがね)を。

なのはとはやては、シャルロットとは違ったネイビーカラーのラファールを

それぞれ、展開していた。

 

これらの機体は第二世代の量産機であり、打鉄は安定した性能で

初心者にも扱いやすく、ラファールは汎用性が高く操縦者を選ばないので

多様な機能の切り替えを行うことができる。

簪とシャルロットの機体はこれらの後継機やカスタム機に当たる。

 

「ISに慣れるためにも、そろそろ本格的な実戦が必要だと思ってね。

 一夏くんは、ISの技術はともかく戦闘経験はすごいみたいだし

 こうやってみんなで戦えば、手っ取り早く強くなれるかな~って思って♪」

「みんなで戦えばって、まさかここにいる全員といっぺんに

 戦うんですか!?」

「うん、そうだよ一夏♪」

「覚悟してね♪」

「代表決定戦のリベンジを、させていただきますわ!」

「いやいやいや!

 いくらなんでも、10人がかりは無理ですって!

 そもそも訓練機って、こんなに簡単に借りれるものなんですか!?」

 

さらっととんでもない訓練内容を言う楯無に必死に、なんとかしようとする

一夏は訓練機が6機も同時に借りれたことを指摘したが、

そんなものは予想通りなのか、楯無が笑顔で答えた。

 

「その心配はいらないわ♪

 今日訓練するはずだった子と例の一夏くんの恥ずかしい写真で

 取引したから♪」

「うぉい!それでいいのか生徒会長!!!」

「ええい、一夏!お前も男なら潔く、覚悟を決めんか!」

「ごめんね、一夏。

 でも、一夏も悪いと思うから……」

「そうやで、一夏くん?

 乙女心を弄んだ罪は重いでぇ~」

「大丈夫。

 別に訓練にかこつけて、乙女心を一欠けらもわかっていない

 一夏くんをおしおきするわけじゃないから♪」

「そうよ?私たちは“純粋”に、アンタが強くなる手伝いをする

 だけなんだから!」

「よ~し、それじゃみんなで張り切って一夏くんに

 O・HA・NA・SIしよう♪」

 

一夏の言い分など最初から関係ないのか、みんな乙女心をわかっていない

この朴念仁をや(殺)る気まんまんである。

 

「ちょっと待て!

 それ絶対、普通のお話じゃないだろ!?」

「もう、心配しすぎよ一夏くん?

 碓氷先生からも

 “あいつは、ピンチになればなるほど限界を

 超えて強くなるから遠慮なくやっていいぞ♪”

 って、許可をとってあるからがんばって、

 自分の限界を超えてみよう♪」

「ちょっ!?」

『(一夏……、時には諦めも必要だ)』

「それじゃ、みんな?

 ……、思う存分やっちゃいましょう!!!」

「ま、待っt………、どわぁぁぁぁぁ…………!!!!!?」

 

飄々とした笑みから一転して、鋭い目となった楯無の合図と共に、

アリーナの使用時間一杯まで、乙女心を全くもって理解していない

朴念仁の悲鳴が止まることはなかった――

 

 

 

「ふぅ~。それじゃ、今日はここまでにしましょう。

 みんな、お疲れ~♪」

 

訓練と言う名の朴念仁へのおしおきが終わると、一夏は息も絶え絶えに

寝転がっていた。

他のものも、息を切らしていたがどこかスッキリしたような顔をしていた。

中でもなのはは、とてもイキイキとしていたと述べておく。

 

「い、一夏。大丈夫?」

「だ、大丈……夫じゃな……いかも……」

 

このメンバーの中で比較的同情気味であったフェイトが、一夏を心配するも

彼はすっかり疲れ切っていた。

 

『(まあ、無理もないがな。

 とても初めてとは、思えない連携だったからな……)』

 

そう、彼女たちは始めて組んだとは思えない連携で一夏を追い詰めたのだ。

一夏と同じ近接タイプの箒、フェイト、アリサが三人同時に斬りかかり、

指揮能力に優れたはやてとすずかの指示の元、残りのメンバーが

遠距離から攻撃を仕掛けたのだ。

すぐには、終わらせないようジワジワといたぶる様な射撃に加えて

こちらに迫りながら笑顔で撃ってくるものだから、精神的な

疲労は肉体的なものとは比較にならないものであり、彼女たちより

遥かに体力がある一夏がへばる程であった。

 

「それじゃあ、一夏くん?

 私はあきらめないからね♪」

 

そう言って、楯無は扇子を広げ“Never Give Up”と書かれた文字を

一夏に見せた。

 

「……はい?」

「私もだ。勝負はこれからだからな!」

「このまま引き下がると思わないでください」

「絶対に、僕の方を見させてみせるからね!」

「私も……、もうあきらめるなんてことはしない……!」

「あらら、皆どうやら一夏くんにまだまだアタックし続ける方向で、

 いくみたいやね~」

「のんびりしてんじゃないわよ、はやて!

 こうなったら、同室の箒が何かと有利なんだから

 ガンガン行けるよう、作戦を考えないと!」

「ふふ♪

 ほんと、アリサちゃんって友達思いだよね~」

「た、楽しそうだね、すずか……」

「なんか、碓氷先生に似てるかも……?」

 

例え恋人がいようが、あきらめないと改めて決意する友達を応援しようと

燃えるアリサたちであったが、そんな光景を楽しそうに見るすずかに

一抹の不安を覚えるフェイトとなのはであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「で、箒?なんで、こっち側に来るんだ?」

「わ、私がどっちのピットにいようといいではないか!」

 

何とか動けるまで回復した一夏が、ピットにいくと何故か箒まで同じピットに

きたので口をはさむ一夏だったが、にべもなく返されてしまった。

無論、同じピットに行くよう口添えをしたのは、狸の耳や尻尾がよく似合う

少女であるのは言うまでもない。

 

「ふぅ~、それにしても今日は疲れたなぁ~」

「私としては、あんなに疲れていたのにどうして

 もうそんなに動けるのか疑問なんだか?」

「まあ、あれ以上のことは前にカズキさんに何度かされてるし……。

 知っているか箒?

 生きるってことは、おいしいっていうことらしいんだぜ?」

『……』

「どういう意味だ?」

 

脈絡のない話を始めた一夏に箒は顔をしかめるが、

そんな彼女が目に入らないのか、一夏は天井を見上げて話を続けた。

 

「肉を食べても魚を食べても、もしかしたら空気を吸っても

 おいしいらしいんだ~。

 俺も最初はわらなかったんだけど、“アレ”を生き延びて

 やっっっっっとわかったんだよなぁ~。

 おいしかったなぁ、あの時の空気は~」

『(そうだな、あの味は忘れられないな)』

「何を言いたいのか、何となくわかったが

 こっちに戻ってきてくれ、一夏!!!」

 

一夏だけでなく、ゲキリュウケンまで遠い目をして

どこか別の世界にいきそうになり、慌てて箒は一夏を呼び止めた。

 

「ははは、わりぃな箒」

「き、気にするな……」

 

呑気に笑う一夏が、あんな悟りに至ったような目をするなんて、

どんなことがあったのか気になるが、聞いたら自分も帰ってこれないような

気がするので聞くに聞けない箒であった。

 

「で、では一夏。悪いが今日のシャワーは……」

「一夏っ!」

 

気を取り直して一夏に話しかけようとする箒だったが、

そこに、猫のようにしなやかな動きで鈴が乱入してきた。

 

 

 

時は、一夏の訓練が終わる少し前。

鈴はあるもの達に電話をつなげていた。

 

「はい。どうしました鈴?

 こちらは、かつてフェイトがやったようにマンションを借りて

 引っ越し等がまもなく終わるところですが?」

「やっほ~鈴!

 こっちは元気だよ~!」

「やかましいぞ、レヴィ!

 静かにせんか!!」

 

そう電話をかけた相手は、魔法の師匠である

シュテル、レヴィ、ディアーチェであった。

彼女たちも、鈴と一緒に日本に行きたいと言うので

かつて、別の世界からやってきたフェイトのように、いろいろ

表沙汰に出せないような技能を駆使して、IS学園近くのマンションに

いるのだ。

 

「ちょっと、聞いてよ!

 実は――」

 

鈴は昼の出来事をありありと語った。

好きだった一夏には、もう彼女がいたこと。

自分が最も苦手とする人物がいたことなどをシュテルたちにこぼした。

 

「なるほど、それは……」

「一夏って、鈍感さんなんだね~」

「ふん、乙女心をわからないとは男の風上にもおけんわ!」

「それでね……、

 アンタたちのモデルになったって子にも会ったんだけど……」

「っ!

 なのはにですか!?」

「オリジナルがいるの!」

「何故、あの子鴉がいるのだ!!!」

 

一夏の鈍感に三者三様の反応をするシュテルたちであったが、

自分たちのオリジナルとなったなのはたちがいることに驚愕した。

 

「いえ、ロード。

 織斑一夏は、現在世界で唯一ISを動かす存在。

 時空管理局が何かしらの調査を行っても、

 おかしくないかと」

「う、うむ……」

「まあ、見た感じ悪いようには見えなかったんだけどさ……。

 そうじゃなくて、……ったのよ……」

「鈴?」

 

鈴は、なのはたちがいることなどどうでもいいのか、急に歯切れが

悪くなりシュテルは、不審に思う。

 

「大きかったのよ!

 アンタたちのモデルも!一夏の周りにいる子たちも!

 みんなみんな、あああああアレが大きかったのよ!!!

 喧嘩売ってんのか、コラァァァ!!!!!」

「はい?」

「?」

「はっ?」

 

血の涙を流さんばかりの鈴の魂の叫びだが、シュテルたちは頭を

傾げるばかりであった。

 

鈴も自分の“アレ”が他の同世代の子と比較してひかえめであるのは

認めたくはないが自覚してはいる。

しかし、何も自分が好きな男の周りにいる子全員が

自分のより、ボリュームがあったら叫びたくもなるだろう。

 

更に、なのはたちはシュテルたちのモデルであるから、もしも

シュテルたちが自分と同い年ぐらいに成長したらその姿は、

なのはたちが一番近いのだ。

一夏に恋人がいたこと、周りにいたライバルたちだけでなく、

妹分兼師匠にまでスタイルで負けるかもとなって、鈴の精神は

現在荒れに荒れていた。

 

「まぁまぁ、落ち着いてください鈴。

 確かに男性は、大きい方を好むと聞きますが鈴には鈴の良さが

 あるわけですし、ないものを嘆いていても始まらないのでは?」

「うぐっ……」

「でもでも!その一夏って、もう彼女さんがいるんだよね!

 じゃあ、鈴は失恋ってやつをしたの?」

「どうなのだ、鈴よ?」

「そう簡単にあきらめられたら苦労するかぁぁぁ!!!

 相手が誰であろうが、負けられるかぁ!!!」

 

どうやら、鈴も箒たち同様顔も知らぬ一夏の恋人と戦う道を

選ぶようである。

 

「そうですか。

 ならば、我らも全力でサポートするとしましょう。

 私が入手した情報を検討したところ、鈴のようなタイプは

 部活のマネージャーのようにして、攻めるのが効果的かと。

 一夏の訓練が終わったら、ドリンクやタオル等を

 持っていてどうでしょう?」

「ナイスアイディアよ、シュテル!

 早速、行ってくるわ!」

「やれやれ、落ち着きのない奴だ」

 

そう言って、鈴は通話をきり、ディアーチェはそんな鈴に対して

やれやれといった感じである。

 

「それではレヴィ、ロード。

 今後の鈴のサポートのために、共にこれを

 読みましょう」

「シュテルん、何それ?」

「これは、いつの時代でも恋に悩む少女たちの心強き味方の

 “恋愛のバイブル”です。

 これを読めば、我らでも鈴の力になれます」

「しかし、やけに多いな?」

「恋愛とは多種多様、一人一人によって違うものらしいので」

「ふ~ん?」

「なるほどな……」

 

そう言うと、彼女たちはシュテルが集めた書物を読み始めた。

恋愛のバイブル……“少女漫画”が鈴の恋の手助けになるかは

まだ誰もわからない――

更にもしも近い未来で、彼女たち三人と同じように少女漫画を

恋愛の教本としている本人非公認のあるファンクラブが

シュテルたちと知り合い同盟を組んだらどうなるかも

誰もわからない――

 

ちなみにマンションの家賃や少女漫画の購入費は、

シュテルが株取引で稼いだお金を使っていたりする。

 

 

 

 

 

 




はい、というわけでシュテルたちにも再び登場してもらいました。
電話は普通の携帯からしているので、なのはたちは気付いておりません。
書いているうちにすずかに、カズキに似たような属性が付加されてしまいましたが
何故、こうなった(汗)

ラブ アンド パージ購入しましたがおもしろいですね~

箒たちヒロインズは、一夏に恋人がいようともまだあきらめない
方向でしばらくいくつもりです。
まあ、その恋人とのイチャイチャ空間を見せられたら
あきらめるかもですがwww

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