インフィニット・ストラトス 龍の魂を受け継ぐもの   作:すし好き

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今回は、敵の一端と7話でゲキリュウケンがぼやいていたことが
明らかになりますwww


明かされる敵と一夏の○○

「では!織斑くんのクラス代表決定を祝して~~~、乾~杯!」

「「「「「乾~~~杯!!!」」」」」

「あははは……」

 

夕食を食べ終わり部屋に戻ってゆっくりしていた一夏は、クラスメートに食堂に

呼び出され、熱烈なクラッカーの雨をその身に受けた。

一夏がクラス代表に決まった祝いの催しだったのだが、女子特有のテンション

の高さに主賓である一夏は、苦笑を浮かべていた。

 

「(何もここまで騒がなくても……)」

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねぇ」

「ほんとほんと」

「ラッキーだよねー。同じクラスになれて」

「ほんとほんと」

『(どうやら、何かしらの理由をつけて騒ぎたいだけのようだな)』

「(みたいだな)」

 

やれやれといった感じで、一夏が食堂を見渡すと教室で見た覚えのない顔を

チラホラと見かけた。

一夏のクラスである一組は全員が参加しており、教室で見た覚えがない

ということは、別のクラスのものまでこのパーティーに参加しているということである。

 

「いや~、相変わらずの人気だね~。

 一夏くん?」

「わたくしを倒したのですから、当然のことですわね」

「一夏、何飲む?」

「い、一夏……ケ、ケーキ食べる?」

「一夏、疲れているだろ。私が食べたいものを持ってきて……

 そ、その……た、食べさせてやる……」

「どうした、箒?

 最後の方が、聞こえなかったんだけど?」

「う、うるさい!なんでもない/////!」

 

当然、別のクラスの簪やクラスどころか学年も違う楯無も参加していた。

素早く一夏の周りに陣取った箒、セシリア、シャルロット、楯無、簪の

5人は互いに火花を散らして牽制し合い、一夏への軽めのアタックをしながら

相手をどうやって出し抜くか機をうかがっていた。

 

いつも、専用機持ちや幼馴染みと一緒の一夏とここでお近づきになろうと

思っていた子達は、彼女たちが放つ闘気の凄まじさにひるみ早々にあきらめていた。

 

「うわ~何あそこ?

 あそこだけ、別の空間みたいね」

「一夏くんは全く、気付いていないみたいだけど」

「どうなるか、ワクワクするね♪」

「はやて、なんかうわさ好きの近所のおばちゃんだよ」

「箒ちゃん、がんばれ~」

 

そんな一夏たちを遠巻きに見ていた、なのは達は恋する乙女たちの戦場に

驚いたり楽しんだりしていた。

この場に、彼女たちのことを知る者が一夏を巡る乙女たちの戦いを見たら

こう言うだろう。

“君たちにそっくりだな”と――

 

「はいは~い!

 私、二年の黛薫子。新聞部の部長で~す♪

 今話題の織斑一夏くんに、特別インタビューをしに来ました~!」

 

皆がジュースを飲んだりして騒いでいると、突如カメラを

引っ提げた二年生が登場し、一同はますますヒートアップした。

 

「な、なんでみんなそんなに盛り上がるんだ?」

『(女子というのは、騒ぐのが好きな生き物だからな)』

「それじゃあ、早速インタビューいってみよーーー!

 では、まず織斑くん!クラス代表になった感想を!」

 

一夏がゲキリュウケンと呑気にしていたら、黛が不意打ち気味に

質問を開始した。

 

「えっ!?と、とりあえず昨日の自分よりは強くなれるよう

 がんばります……?」

「おおお!かっこいいね♪

 捏造の必要は、なさそうね」

「ね、捏造って……」

「対戦相手のセシリアちゃんもコメントちょうだい~」

「わたくしもですか?

 こういったコメントはあまり好きではないのですが……」

 

インタビューは一夏だけでなく、セシリアにまで行われた。

気が進まないようなことを言っているが、満更でもないようだ。

 

『(平和だな、一夏)』

「(ああ。でも、続けられるのは俺たち次第だな……)」

 

騒々しいパーティーの光景を見ながら、一夏とゲキリュウケンは

日常という何にも代えがたい、“今”を噛みしめながらこれから

起こるであろう戦いに気を引き締めていた――

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

一夏とセシリアの試合から数日後。

一夏、セシリア、シャルロットの三名は

専用機持ちに話があるとのことで放課後、楯無に生徒会室へと呼び出された。

 

三人が生徒会室に入ると、楯無だけでなく簪、虚、本音、そしてカズキが

彼らを待っていた。

 

「さて、全員そろったようだね」

「先生、専用機持ちに話があるんじゃ……?」

『それは、ここに集まるためのカムフラージュだぜ、

 ムッツリのお嬢ちゃん?』

「今の声は誰ですの!?」

 

カズキとも一夏とも違う男の声に、セシリアが驚きの声をあげる。

すると、カズキは腕につけていたブレスレットを外して机の上に置いた。

 

『ハッハッハッ!

 俺こそ、カズキの相棒の魔弾龍、ザンリュウジンだ!』

「ザンリュウジン……っ!

 碓氷先生も一夏さんと同じ魔弾戦士ですの!?」

「ああ、そうだぜ」

『しかも、コイツにいろいろと叩きこんだ師でもある』

「それよりも!僕はムッツリじゃないよ/////!」

 

セシリアの問いに、一夏とゲキリュウケンが付け加えるように答え、

ムッツリ呼ばわりされたシャルロットは抗議の声をあげた。

 

「それよりも、碓氷先生。

 今日は私たちにあなたと一夏くんが何と戦っているのかを説明してくれる

 とのことですが?」

「スルーしないでぇぇぇーーー!」

「カズキさん、今更だけど皆に説明してもいいんですか?」

 

シャルロットの抗議をスルーして、一夏が彼女たちを巻き込んでもいいのかと

遠まわしにカズキに尋ねると、彼はにっこりと見たら背筋が凍りつくような

笑みを浮かべて一夏の方を向いた。

 

「いや~どこかの誰かさんが、近くに彼女たちがいるにも関わらず、

 ポンポンポンポンと変身して戦うもんだからさ~?

 もう、関係ないからって俺たちのことを話さないわけにもいかないだろ?

 いろん~な後始末とかホ~~~ント、大変なんだけど

 君が責任を感じる必要なんか“これぽっっっち”もないんだからね?

 ハハハ♪」

「す、すいません……」

 

黒いオーラを出しながら、笑っているけど笑っていない笑顔を浮かべるカズキに、

一夏は視線を逸らして謝るしかなかった。

 

「さてと、そろそろ説明を始めようか。

 まずは俺たちの相棒である魔弾龍から。

 

 彼らは、太古の昔から地球を守ってきた守護者(ガーディアン)で

 この星を狙う様々な敵と戦ってきたんだ」

「そして、ある戦いで生物の不安や恐怖から生まれるマイナスエネルギー

 を利用するものが現れ、魔弾龍は窮地に立たされるんだけど

 共に戦おうと立ちあがった人間たちがいたんだ……」

『最初は止めたんだが、偶然にも私たちの力とその人間たちが

 持っていたある力が共鳴し合い、マイナスエネルギーによって

 強化された敵を上回る力が発揮されたんだ』

「ある力って?」

『全ての生物が持っている、恐怖に立ち向かい明日への道を

 切り開く力……“勇気”さ♪

 魔弾戦士は、マイナスエネルギーとは逆の力、勇気や希望と

 いったプラスエネルギーを力に変えて戦うのさ』

 

ザンリュウジンから明かされた、一夏たちの力の源に彼女たちは

息を呑んだ。

 

「そこから魔弾龍たちは、人間と共に戦うためにこういう風に姿を変えて

 戦うようになったんだ」

『そして、ある時ジャマンガという軍団が攻めてきた』

『ジャマンガの支配者であるグレンゴーストは今までに、俺たちが倒してきた

 奴らが残した恨みをマイナスエネルギーごと取り込んで挑んできたんだ』

『その力は凄まじく、やっとの思いでグレンゴーストごとジャマンガを

 異次元に封印することができたが、同時に私たちも眠りについた。

 その封印が今から三年ほど前に解かれてしまった』

「解き放たれたジャマンガと戦うために、現代の魔弾戦士として

 こいつらに選ばれたのが俺や一夏ともう一人の男ってわけ」

「ちょっと待ってください。

 三年ほど前って、碓氷先生はともかく織斑くんは中学生になるかどうか

 ですよね?

 そんな子供のころから、戦ってきたんですか!?」

 

虚の指摘に皆の視線は一夏に集まり、一夏は一瞬たじろいでしまう。

 

「ま、まぁ~なりゆきというか何というか……」

『子犬を助けるために、ジャマンガの先兵に向かって飛び出した

 勇気が眠りについていた私を呼び起こすきっかけとなり、

 一夏はリュウケンドーとなったんだ』

 

リュウケンドー誕生のきっかけである一夏の無茶を聞いて、皆唖然とする。

 

「そこら辺の詳しい話はまた今度ということで、話を続けていくよ。

 俺たち三人と魔弾龍が力を合わせて、ジャマンガを倒すことが

 できたんだけどそれで戦いは終わりじゃなかったんだ。

 別世界、パラレルワールドからも敵がやってきたりしてね~。

 俺たちは、日夜戦い続けたんだ」

『そして、今問題になっているのがセシリアだけでなく

 この場にいる者が遭遇した奴らだ』

 

そう、セシリアと同じようにシャルロット、楯無、簪、虚、本音の

5人も“怪人”に襲われたことがあるのだ。

話は自分たちに大きく関わってくるものになり、一同は自然と固唾を呑んだ。

 

「奴らは自分たちを世界をあるべき姿に導く“創生種”と

 名乗っているんだけどわかっていることはかなり少ない……。

 はっきりと分かっているのは

 ジャマンガと同じく、マイナスエネルギーを集めていること。

 そして、俺たち人間をなめていないという

 今までにない強敵だってことだ……」

「でもでも、カズキン先生もおりむ~も

 今までいろんな敵と戦って勝ってきてるんだから大丈夫なんだよね~?」

 

カズキの思わぬ発言に、本音が反論を投げかけた。

今までの話を聞く限り、彼らが力を合わせれば大丈夫だと彼女たちは

思ったのだが――

 

「いや、この敵は今までのようにはいかないね」

『まず、マイナスエネルギーの集め方だな。

 ジャマンガは、セシリアが閉じ込められたような

 人間の恐怖心を増大させるマイナス結界を展開させて、

 閉じ込めた人間を襲うことで量を優先した集め方をしていた。

 だが、このやり方は多くのマイナスエネルギーを集められる分、

 その時のエネルギー反応や何かしらの痕跡が発生し

 私たちが気付かれてしまうんだ。

 隠密性に優れたマイナス結界でも限度があるからな』

『気付くことさえできれば、ジャマンガの後を追ったり

 して目的を叩きつぶすことができたんだけど……』

「今回の敵は、その痕跡を残さないように慎重に動いている……」

「オマケに、集め方も何十人の人を一度に傷めつけたりして

 恐怖を煽るんじゃなくて、一人に恐怖が深層意識に根付く様な

 痛めつけ方をしてから、わざと解放しているんだ。

 そうやって、恐怖を根付かせるようにして

 生きている限りマイナスエネルギーを発するようにしている」

『しかも生きている限りと言っても、例えば悪夢を見てうなされるという

 人間や生き物が自然に発生させている極めて低いレベルのものだから、

 私たちも本人も異常に気付きにくい。

 もっとも、エネルギーの質としては心からの恐怖の方が

 何倍もいいようだがな』

「そんな低いものを集めて、問題あるんですの?」

 

カズキたちの重い口調でされた説明では、そこまで問題がないのではと

セシリアは口を開くが、カズキは首を横に振った。

 

「問題なのは、エネルギーの量じゃない

 奴らがそうやって、気付かれないように事を進めているところさ……」

「よくわからないんですが……?」

 

シャルロットだけでなく、事態を知っている一夏や魔弾龍以外のものは首をかしげた。

 

「いいかい?

 さっきも言ったけど、マイナスエネルギーを多く確保しようとすれば

 感知されたりして必ず足がつき、俺たちに邪魔されてしまう。

 ジャマンガだけでなく大抵の侵略者は、それでも返り討ちにしてやると

 考えているけど、どこかで俺たち人間をなめているところがある。

 だからこそ、付け入る隙がある」

『だが、創生種は人間の力を恐れているのか気付かれないことを重点に

 置いて活動している』

「つまり、俺たちを最大限に警戒しているってことさ」

『しかも奴らは、ジャマンガが復活するよりも前から活動している

 可能性があるんだよなぁ~』

「俺たちが奴らと最初に遭遇できたのは、全くの偶然だったんだが

 その時に戦った奴から感じたマイナスエネルギーは、

 ジャマンガを倒した後から集めたものとは思えない量だったんだ」

『私たちが眠っている間か……下手をしたらもっと前から

 動いているかもしれないということだ……』

「そうやって、集められたマイナスエネルギーは塵も積もれば山となる

 と言う言葉があるように、とんでもない量になっているはずだ。

 ジャマンガがグレンゴーストを蘇らせるためにマイナスエネルギーを

 集めていたように奴らの目的も同じだとしたら……」

 

想像以上に、スケールの大きい話に彼女たちは言葉が出なかった。

 

『固まっているところ悪いんだけど、

 不安要素はまだあるんだよね~』

「近頃、奴らはジャマンガのように魔物に襲わせて、

 マイナスエネルギーを集めるっていう、

 やり方を変えてきているんだ」

「それには、いくつかのことが考えられる。

 一つは実験。

 発生するマイナスエネルギーをどう使えば、効率よく自分たちの

 手駒である魔物を強化、進化させられるかということ。

 そして、もう一つは陽動。

 俺たちの目を本命から逸らすために、わざとあちこちに

 魔物を放つんだ。

 普通の人間じゃ、まず魔物には勝てないから俺たちが

 対処するしかないからね」

『更にここ最近は、IS操縦者に狙いを付けている。

 君たちのようにな』

 

彼女たちは襲われたことを思い出し身震いする。

 

「IS操縦者というよりは、狙われるのはISの適正が

 高い子なのかもしれない。

 標的となる理由もいくつかには絞り込んでいるけど

 どれも決め手に欠けるから、なんとも言えないのが現状だ」

『そんなに深刻になるなって♪

 こっちだって、やられっぱなしってわけじゃないんだぜ?』

 

重くなった空気に耐えかねて、ザンリュウジンが陽気な声を上げた。

 

「セシリア、俺を助けようとしてゲキリュウケンを

 握った時の感覚を覚えている?」

「もちろん、覚えていますわ。

 なんだか体の内側から、力が溢れてくるのを感じましたわ」

『そう、それこそが魔弾戦士の力の根源である“勇気”の力、

 プラスエネルギーだ。

 あの時も言ったが、私たち魔弾龍にはプラスエネルギーを

 増幅させることができる。だが、あくまでも増幅だから

 ゼロのものを増幅させることはできない。

 あれは、君自身の勇気なんだ』

「それはここにいる全員に言えることでもある。

 皆それぞれマイナス空間内での恐怖を乗り越えているから、

 またマイナス空間に閉じ込められても、恐怖で動けなくなる

 ってことはない。

 そして、それは俺たちが創生種に対するアドバンテージでもある」

『いつの時代や世界でも、戦うものを支えるものたちが

 思わぬ活路を切り開くことは多々あるんだ』

「本来なら無関係の君たちにこんなことを

 頼むのは筋違いもいいとこなんだけど、

 俺たちに力を貸してくれないかい?」

 

カズキと同じ考えなのか一夏もゲキリュウケン、ザンリュウジンも

まっすぐに彼女らを見据えた。

その視線に気圧されそうになるものの、彼女たちを代表するように

楯無が愛用の扇子を広げて不敵に笑って見せた。

 

「あまり見くびらないでほしいですね、碓氷先生?

 学園の長として、生徒を守るのは当然ですよ」

「わ、私もがんばります/////!」

「僕も一夏や先生たちに、守られているだけなんて嫌です/////!」

「微力ながら、力をお貸しいたします」

「わたしもがんばりま~~~す」

「このセシリア・オルコットが、そんなことで臆するとでも?」

「……ありがとう、みんな」

 

彼女たちの勇気にカズキは心からの感謝を述べた。

 

『しっかし、お前も変わったなカズキ。

 昔なら子供や関係のない奴を関わらせるなんて考えられないぜ。

 一夏や“アイツ”だって、最初は魔弾戦士をやめさせるために

 ボコボコにしたこともあったっていうのに』

「……力のない子供や関係のない奴が関わるべきじゃないっていうのは

 変わらないさ。

 でも、それ以上に相手の動きや狙いが読めないいじょう、

 揃えられるだけの戦力は揃えるべきさ」

 

ザンリュウジンの言葉に、カズキは背を向けて答えた。

まるで、今の顔を見られたくないように。

 

『(とかなんとか言ってはいるが……)』

「(あれ、絶対照れてるなカズキさん。

 千冬姉に素直になれよとか言っているけど、

 この人も相当の照れ屋だよな~)

 ……、ってあだだだだだ!!!」

「あっ、悪い一夏。

 よくわかんないけど、急にシバきたくなったからさ♪」

 

ゲキリュウケンと一夏が、余計なことを考えているのを察したのか

カズキは笑顔を浮かべて一夏に、アイアンクローを喰らわせた。

 

「さてと、今日のところはこれで解散としようか。

 あんまり、いるとある連中に怪しまれるからね」

「ある連中って、誰ですか?カズキン先生?」

「それはまた今度だね。

 あまり、いっぺんに話しても頭がこんがらがるしね~」

「それはそ・う・と♪

 碓氷先~生?聞きましたよ~。

 一夏くんの恥ずかし~~~い写真を一組で公開したって。

 私や簪ちゃんにも見せてほ・し・い・な☆」

「お、お姉ちゃん!

 何言ってるの!」

「あれ、簪ちゃんは見たくないの?

 じゃあ、私だけでも……♪」

「ま、待って!だ、誰も見たくないなんて/////

 ……私も見たいです/////」

 

一夏の例の写真を見たいと楯無が言うと簪も顔を赤らめながら

見たいと言った。その時、楯無の顔も若干赤かった。

 

「ちょ!何、言ってんだ二人とも!?」

「別にいいよ?

 なんなら、現像しようか?」

「アンタも何言ってんだ!!!」

「「「「是非、お願いします!!!!!」」」」

 

一夏の主張よりも、自分の欲求が優先なのか彼の叫びが届くことはなかった。

 

余談だが、そのちんまい一夏の写真が欲しいと学年関係なく問い合わせが

殺到したので高額で取引されるようになるのだが、とある教師Tにほとんどが

取り押さえられるのは、また別の話である。

 

「ああ、君たちはこっちの写真の方がいいかな?」

「……/////」

「わ~い/////♪」

 

一方で、虚と本音は自分たちを助けてくれた者の写真をもらって

ご満悦であった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「(正直、不安がないわけじゃないが……

 お前やみんながいれば何とかなる気がするよ)」

『(ふっ。そうだな)』

 

一夏とゲキリュウケンがこれからの戦いに向けて、互いの覚悟を

確認し合った。

 

「はいはい、織斑く~ん!

 そんなとこにいないで、インタビューの続きよろしく♪」

「あははは……」

「今度は趣向を変えて、碓氷先生に関しての質問です!」

「カズキさんのですか?」

 

意外な質問に一夏は思わず、薫子に聞き返した。

 

「そうそう♪

 あの織斑先生と恋人みたいだけど、そこんところ弟として

 どう思っているのかな~って☆」

 

すごく興味があるのか、周りの者は目をランランと輝かせて

一夏に目を向けた。

 

「どう思っているのかって……」

「ほらあるでしょう?

 お姉ちゃんを盗られてさびしい~!とか?

 恋人なんて、絶対認めなーーーい!とか?」

「あなたは、俺を何だと思っているんですか。

 まあ、でも……もしもカズキさんが千冬姉を泣かしたりなんかしたら…………、

 ブッタ斬りますけどね♪」

 

薫子の回答の予想にため息を漏らす一夏だったが、

誰もが見惚れるほどのきれいな笑顔で出した答えに、みなが同じことを思った。

 

「「「「「「「「「「(こいつ……本気(シスコン)だ!!!)」」」」」」」」」」」」

 

「そ、それじゃ気を取り直して、皆が一番気になっていることを

 質問しようかな~」

 

頬を引き攣らせながらも、場の空気を変えるために薫子は次の質問をした。

それが、学園中に激震を走らせるとは思わずに――

 

「では、織斑くん!

 ズバリ、好みの女の子のタイプは!!!」

「好みの女の子のタイプ?」

「「「「「っっっ!!!!!?」」」」」

『(あっ、バカ!何という質問を……!?』

 

薫子の質問に一夏に恋する箒、セシリア、シャルロット、簪、楯無を

中心として彼女たちの耳が一瞬ゾウのように大きくなったように見えた。

なのは達も、興味津々といった感じで一夏を凝視した。

 

「好みのタイプか~。

 そうですね……ネコみたいな感じですかね?

 あいつは」

「ふむふむ、具体的に言うと?

 ……って、あいつ?」

「こっちが構ってやるとうるさいって追い返すくせに、

 いざ離れるとさみしそうにするんですよね~。

 てか、何なんですかねその時のかわいさは?

 反則ですよ反則♪

 他にもかわいいものが好きで、それに目を輝かせているところ

 を見られた時の反応は……」

「え、えっと織斑くん?」

『(こうなると、長いんだよな~、コイツ。はぁ~)』

 

想像していた回答の斜め上どころか、大気圏を軽々突破する程の

予想外な一夏の答えに薫子は目を丸くし、ゲキリュウケンは延々と

喋る一夏に諦めに近いため息をもらした。

ちなみに、一夏はうれしそうに5分以上しゃべり続けている。

 

「あ、あの織斑くん。そ、それくらいで……」

「えっ?それくらいって、こんなのまだまだ序の口ですよ?

 あいつのことは、一晩あっても語りきれませんからね~」

「……ねぇ、織斑くん。

 ひょっとして、織斑くんって……彼女いるの?」

「「「「「っ!?」」」」」

 

おそろおそる薫子は、一夏に尋ね周りの子達はゴクリと息をのみ、

一夏が“いませんよ”と答えてほしいと願った。

しかし、現実とは……無情なものである――

 

「はい、いますよ」

「「「「「…………」」」」」

「……あれ?」

『(言っちまったよ、コイツ……)』

 

一夏の答えにあれだけ騒いでいた子らは、石になったかのように

固まって声を失い、一夏はどうしたのかと思っていると……

 

「「「「「「「「「「えええええぇぇぇっっっ!!!!!?」」」」」」」」」」

「うわっ!?」

 

学園全体が揺れるほどの大声を上げ、近くにいた一夏だけでなく

遠く離れた職員室にいる教師たちまで飛びあがらせるほど驚かせた。

 

「私の青春が始まる前に終わったぁぁぁ!!!」

「この世界に神はいないっっっ!!!」

「うわーーーん!」

「こんな不条理が許されるのか!」

「あの朴念神の織斑くんが、あれだけ惚気るなんてっ!?」

「不幸だぁぁぁ!!!!!」

「(なあ、ゲキリュウケン。

 なんで、皆こんなに驚いているんだ?)」

『(もう、お前は黙っていろ……)』

 

最早、食堂は神や己の不幸を嘆く声で一杯であったが、元凶である

一夏は一ミリも事態を理解していなかった。

 

「…………」

「箒、しっかりしなさい!」

「あかん。箒ちゃん、ショックで完全に固まっとる!」

「ガクッ……(orz」

「あ、アハハ……い、一夏は冗談がうマいナぁ~……」

「セシリア、シャルロットしっかりして!

 こっちに戻ってきてぇぇぇ!!!」

「こここれは、よよよよよ予想外ねねねねね。

 かかかかか簪ちゃんんんんん???」

「エッ?ナニドウシタノ、オネエチャン?」

「会長さん、すごく動揺しているね」

「うん、簪ちゃんもロボットになっているよ……」

「かんちゃ~ん、会長~、しっかりして~~~」

 

一際衝撃が大きかった箒たち5人は、固まったり床に手をついたり

現実逃避をしたりと他の子よりも絶望が大きく、なのは達が慰めたりするも

効果はなかった。

 

この騒動は、いつまでも寮に戻ってこない生徒を探しにきた千冬が来るまで

続き、嘆く彼女たちを叱り飛ばして寮に戻すも千冬もまた騒動の原因を聞くと

何でもないように自分の部屋に戻っていったが、戻る前に飲もうとした水に

お酢を入れたり、ガクガクとコップを持った手が震えてびしょ濡れになった

ことをここに記しておく。

そうやって、フラフラと歩く千冬が通り過ぎた廊下で、ハラリと壁と同じ模様の

紙が落ち、三日月の如く楽しそうに口を歪めたものが彼女を見ていたことを

千冬は知らない――

 

 

 

 

 

「おはようーって、朝からなんでそんなに落ち込んでいるんだ、皆?」

「一夏くん?何でも、朴念仁で唐変朴やからやって許されるとは限らへんのやで?」

『(うむうむ)』

「はっ?」

 

翌日、一夏が教室に向かうと未だにショックから抜けきれない子が

多数で教室内の空気はどんよりしているが、自分が原因だとは欠片も

思わない一夏は首をかしげるだけだった。

 

「そ、そう言えば2組に転校生が来たんだってね。

 アリサちゃん!」

「ええ!何でも代表候補生だとか!」

 

少しでも場を明るくしようと、すずかとアリサは話題を一夏から

変えようとした。

 

「転校生?こんな時期に?」

「うん、中国からだって」

「中国か……」

 

中国と聞いて、一夏はある少女の顔を思い浮かべた。

元気にやっているかと思っているとアリサがしゃべりかけてきた。

 

「ちょっと、何ぼ~っとしているのよ!

 アンタには、学食デザートの半年フリーパス

 がかかっているのよ!」

 

IS実習が本格的に始まるこの時期、クラス間同士の交流やクラスの

団結のために、クラス対抗戦というものが行われ

優勝クラスには、アリサの言った学食デザートの半年フリーパス

が与えられる。

 

アリサのその言葉に落ち込んでいたクラスメートたちは一斉に顔を

上げ、目をキラーン!とぎらつかせた。

 

「そうよ!がんばって、織斑くん!」

「織斑くんは、私たちにデザートを献上する義務がある!」

「こうなりゃ、やけ食いだぁぁぁ!!!」

 

どうやら、失恋のショックは甘いものを食べることで発散させようという

方向に向いたようだ。

 

「ま、まあ、やれるだけのことはやるけどさ。

 それにしても、転校生ってどんな奴なのかな?

 代表候補ってことは、実力もあるだろうし……」

「気になるのか、一夏……?」

「あら、恋人がいるのに他の女の子に目移りするなんて、

 一夏さんったらフフフ……」

「ヘェ~、女の子なら誰デモいいノかナ?」

 

一夏が、クラスメートたちの気迫に押されて話題を転校生に

変えようとすると、目から光を消した箒、セシリア、シャルロットが

彼の周りを取り囲んだ。

 

「お、お前ら何を怒っているんだ?

 (ゲキリュウケン、ヘルプヘルプ!)」

『(……グゥ~グゥ~zzzzz)』

「(狸寝入りしないでぇぇぇ!)」

「織斑くん、がんばってね!」

「私たちのフリーパスのために!」

「他のクラスの代表で専用機持ちなのは、4組の簪さんだけだから

 彼女に勝てば、後は楽勝よ!」

 

一夏の状況が見えていないのか、彼女たちは好き勝手なことを言い始めた。

 

「その情報、古いよ」

 

唐突に、教室の入り口から声が聞こえみんなそっちに目を向けた。

 

「二組のクラス代表はこの私、中国代表候補の生凰鈴音に変わったから

そう簡単にはいかないわよ!」

 

腕を組み、片膝を立てて小さく笑みを漏らしながら

トレードマークであろうツインテールを揺らして

一夏の幼馴染みである、凰鈴音がそこに立っていた――

 

 

 

 

 




今回のことをまとめますと
・敵は創生種と名乗る者たち
・恐怖や不安といった負の感情、マイナスエネルギーを集めている
・集め方は慎重で、人間を警戒している
(『灼眼のシャナ』に登場する“屍拾い(しかばねひろい)”ラミーのような集め方)
・一夏には既に彼女がいる(笑)

千冬の動揺っぷりは、仮面ライダードライブで進ノ介や霧子がチェイスに
恋バナをふられて慌てまくったのと同じ感じです♪

ダラダラと敵について述べましたが、何か矛盾やおかしいところが
あるかもしれません。

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