アスタロトとハクに拉致…もといデート(強制)を初めてから10分、二人は俺の両腕をへし折るかのような力でしがみついていた。
「…お兄ちゃんが痛がっているから離したら?」
「…それならそっちだって離すことになるよ?」
「私は良いの、妹だから。」
「ふーん、なら私は彼女だから私の方が優先されるね。」
「…お兄ちゃんは妹大好き属性だから私のルートに来るよね?」
「…ダーリン、私を選んでくれるよね?」
「…取り敢えずお前ら黙れ、俺の人生を終わらせるつもりか。」
「えー、別に良いじゃん。」
「むしろロリと結婚できるのは…レア…!」
「まじで黙って下さいお願いします。」
つか腕が変な方向に曲がり始めているんだがこいつらは離す気無いのだろうか?
「アイス買ってやるから一回離してくれ、財布すら取り出せない。」
「…ここは停戦協定で。」
「…仕方ない。」
ようやく両腕が自由になり、刑務所から出てきたような気分だ。
「さてと、アスタロトは苺で良いか?」
「うん、別に良いよ。」
「私は…一緒のが良い。」
「いい加減止めれ、ったく…。」
もうこの際シカトすることにし、メニューを見る。
「じゃあ… 黒蜜抹茶っていうのが気になるからそれにしよう、すいません、黒蜜抹茶を2つとストロベリーを1つ下さい。」
「はいニャ!」
「…にゃ?」
おかしいな、目の前に猫みたいな人が居るんだけど何でアイス屋のエプロンを着ているんだ?
「あ…バステト、ここで何してるの…?」
「アルバイトだニャ、ハクも何ニャ?」
「デート中、そこの小娘は只のオマケ。」
「…喧嘩売ってんの?」
「あれ…違ったっけ?」
「…倒す。」
お互い臨戦態勢をとり距離を置く。
「お兄ちゃんに遺言が何か有るなら今の内に言っておいたら?」
「あなたこそ…殺される前に懺悔したら?」
正に一触即発…止めに入ろうとしたらバステトが俺を制して二人に近づく。
「まぁまぁ、取り敢えず落ち着くニャ、はいお待ちどうさまにゃ。」
「「…ふんっ!」」
二人ともバステトの手に持っていたアイスを奪うように受け取り距離を更に置いてアイスを食べ始めた。
「助かった…ありがとな。」
「戦闘が始まったら周りにも被害が出ていたから当然の行動ニャ、はい瀧賀くんの分ニャ。」
「あれ?俺の名前教えたっけ? 」
「アテナからの情報ニャ、ずーっとキミの話をするから自然と覚えたニャ。」
「はぁ…悪いな、迷惑かけて。」
「別に良いニャ、キミの話は面白い事ばっかだしネタが尽きないから全然オッケーニャ。」
「そうか?それなら良かった。」
「あとたまにはアテナを誉めてあげて欲しいニャ、ずっとキミの側から離れず、どんな些細な事でも直ぐに気付いて、ずっと笑ってられるニャ。」
「…そうだな、たまには誉めてやる事にするか。」
あいつは黙ってれば普通に可愛いし正直俺を慕ってくれるのは嬉しい、だけど今更感がちょっと有るんだよな。
「…ちょっと二人を任せて良いか?」
「何処に行くニャ?」
「少し一人で考えてみようかなって。」
「ニャフフ、若い内は散々悩んだり迷ったりするが良いニャ、それがキミの経験ニャ。」
「…ありがとう。」
「別に感謝される必要は無いニャ、行くならさっさと行くニャ。」
「ああ、そうさせて貰うかな。」
「あれ?お兄ちゃんどこ行くの?」
「ちょっと気になる所が有ったからな、お前らはゆっくり休んでてくれ。」
「分かった…早めに戻ってきてね。」
「ああ、じゃあ行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
「…スリに気を付けてね。」
「分かってるよ。」
二人をバステトに任せて人通りの多い大通りから細い路地をゆっくり歩きながらアテナの事を考えるのであった。
一方女性陣は多少ヤバイことになっていた
「ヤバイです…瀧賀さんに会いたい…。」
生きてる希望が断たれた感じがしてたまらない、今すぐにでも駆けて行きたいけどトーコさんがそれを許さない。
「そんな死霊みたいな顔してもダメよ、彼にも休みを与えなきゃいつか倒れてしまうわ。」
トーコさんは私の頭をグリグリしながら頭を撫でてるが正直物凄く痛い。
「はぁ…瀧賀さん…。」
「全く…仕方ないわね、さっきヘルメスから取り寄せて貰った物だけどあなたにあげるわ。」
「何ですか…これ?」
何やら紙袋に入っていて手の感触は真空パックされた物だった。
「あなたを最高にハイにさせれる物よ、下手な薬より効き目が凄いわ。」
「…?」
「…瀧賀くんの脱ぎたてホヤホヤのインナーを真空パックに入れたものよ。」
「フォオオオオ!」
真空パックを即座に破り捨て顔に当てる、そうすると心と体が真価を発揮させてくる。
「凄いわね、素材もないのに究極進化状態になってるわ。」
「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
「…ちょっと一人で楽しんできます。」
「そう、後処理は自分でしてね。」
「べっ…別にそういう訳じゃありませんよ!私は仮にも神様ですし…その…いっ、行ってきます!」
「はいはい、行ってらっしゃい。」
トイレの個室に駆け込みベルトを緩める。
「…すぅー…はぁー…瀧賀さん…。」
理性がぶっ飛びそうになるがギリギリ耐える、流石に自分の部屋ならまだしも旅館のトイレでなんて…でも、我慢が出来なくなってしまう。
「…少しだけなら…。」
意識が遠退くが人が二人ほど入って来たから出来ない、早く出ていけと思うが正直助かったと言うのもある。
「全く…わざわざ手洗いなんかに付いてこなくても良いだろう。」
「エヘヘ、別に良いじゃん。」
この声はロズエルさんとファミエルさん、この人たちもここに来てたんですね。
「そう言えばさ、ロズエルの代わりに入って来た天使の子なんだけどさ、あのメタトロンさんの妹らしいんだよね。」
「そうか、なら安心だな。」
「…そう言えば瀧賀くんと一緒に生活してたんだよね?」
「まぁ…そうだな、私はあっちの世界の情報に疎かったからな。」
「ふーん、デートとかした?」
「ああ、水族館に…!」
「あれ?顔真っ赤になってるよ?…何か有ったんだ。」
「後ろから抱きしめられて好きだと言われた…。」
「それで?」
「…断ってしまった、瀧賀を愛してるのに…何であのとき愛してると言えなかったのだろうか…。」
「あー…結局ショックだったと思うよ?瀧賀くんだって心を決めたのにそれなのに断ったなんて…彼はそういう所で真面目だから誰とも付き合ったりしなくなるかもね。」
「…ちゃんと謝ろう、そして私も心を決めて気持ちを伝えなくてはいけない。」
「うんうん、それが良いと思うよ。」
「じゃあ先に戻ってるからな。」
どうやらロズエルさんは行ったようですが…瀧賀さんの好きな人は…。
「アテナさんと矢弥さん、出てきたらどうですか?」
「…気付いてたのですか?」
「私気配察知だけは得意なので。」
「それよりも!センパイの好きな人ってロズエルさんなんですか!?」
「1年と言う年月は長いからね、そりゃお互い好きになるよ。」
「…私も、1年一緒に居ればお互い好きになれてましたかね…。」
「それは私には分からないけど多分違うと思う。」
「じゃあどうしたら…っ!。」
1キロ先からとてつもない力が巻き起きている…。
「これはヤバイっすね…場所的にもセンパイが泊まってる旅館近くの町っす。」
「となると…瀧賀さんが狙われているかもしれません!急ぎましょう!」
「行ってどうするの?」
「え?」
「もしそれが…《瀧賀くん自身》だったらどうする?」
「何を…。」
「本人は気付いてないと思うけど、彼自信には何かとてつもない物が存在してる、世界その物をまとめて飲み込むレベルの物がね。」
「それが…何だと言うんです、私はどんな存在でも…瀧賀さんの近くに居ます、行きましょう。」
「そうっすね、もし何か有ったらぶっ飛ばして何とかするっす。」
「やれやれ…じゃあこれを君たちに渡しとこう。」
「これは…闇の宝玉!?どうして貴女が…。」
「細かいことは気にしなーい、あ、ちゃんと洗って返してね、私意外と潔癖症だから。」
「…ここトイレですよ?」
「うん、正直今すぐ出たい。」
「ですよね…では矢弥さん、行きましょう。」
「了解っす!」
瀧賀さんが何者だって構わない、側に居るって心の底から決めたのですから。
少し時は遡り、瀧賀視点に移る。
「あれ?ここは…。」
確か裏通りを探索していたはずが境内に迷い込んでしまったようだ。
「神社か、前はよく通っていたな…。」
亜栖が少しでも良くなるように毎日お参りしてから会いに行ってたんだよな…。
「少しお参りしていくか。」
小銭を投げ込み鈴を鳴らす、そして2回手を叩き祈る。
「…これで良し。」
踵を帰しアスタロト達の所に帰ろうと思った時にとてつもない頭痛と吐き気、体中に痺れが起きる。
「ぐ…うぇ…。」
体の中から何か込み上げてくる、体の自由が効かなくなくなってってきた。
「あ…かはっ…。」
呼吸をする事すら出来なくなってしまう、俺は…死ぬのか…。
「いや…死んで…たまるかっ…!」
這ってでも体を動かすと、声が聞こえた。
「何…だ…?」
「…お前には調律の龍契士になってもらう、覚悟しろ。」
男の手が俺の首を掴み呪文らしきものを唱え、入り込んでくる。
「すまないがお前には…世界を救って貰わなければいけない…許せ。」
最後に聞こえたのは、その一言だった。
アポカリプスの背中に乗り到着したところは古風な場所だった。
「ここは…境内ですね。」
「そうみたいっす…アテナさん!」
「え?」
巨大なエネルギー砲が目の前を掠める、矢弥さんの注意が無ければ直撃していた。
「あれは…アテナさん!何か変わってますけどあれセンパイっす!」
「そんな…。」
「ヴヴゥ…ヴァァァァァ!」
こちらに狙いを定めて一直線に飛んできた。
「くっ!仕方ありません…応戦します!」
「アポカリプス!死なない程度に全力を尽くて…。」
「ヴァァァァァ!」
矢弥さんが指示を出したとたんに狙いはアポカリプスの方へ行き、放たれたエネルギー砲がアポカリプスの頭を直撃した。
「一撃で…ゼローグ!出番っす!」
「…出来ぬ。」
「何でっ!」
「奴は我らが神竜を食らう龍契士、かすり傷すらも満足につけられん。」
「じゃあどうしたら…。」
「俺達に任せろ!」
突然空から声がしたかと思うと変な二人組が降りてきた。
「貴殿方は?」
「俺はばあちゃ…グラン様の命令でここに来たガディウスっつー龍契士だ、こっちは…。」
「ティフォンだ、それより…ずいぶんと禍々しい姿だな。」
「ヴゥ…アァァァァ!」
「させるかっ…!」
とてつもない速さで近づき斬撃を浴びせ、戦闘不能にまで陥らせた。
「ちょっ…センパイは大丈夫何すか!?」
「安心しろ、息の根は止めてない。」
「兄貴はそういうのが上手いからなぁ…兄貴!まだ意識が有るぞ!」
「何!?」
「ヴルァァァァァ!」
腕についてる大筒に光が灯りあのエネルギー砲が至近距離で放たれようとしていた。
「ちっ…1つ貸しだぜ、迸れ!サンライズ…ゾーン!」
一瞬だけ閃光が走り双刃が瀧賀さんを切り裂いていた、動きは止まりだらんと力なく倒れこんだ。
「やべっ…さっきの感覚は確実に仕留めた時のやつだ。」
「いや、こいつは生きている…見ろ、もう傷が治っている。」
「マジかー…取り敢えず連れてくか。」
「何処へ?」
「…お前らには関係ない、力無き神と脆弱な盤面使いは大人しくしていろ。」
「っ…!」
「ちょ…兄貴、言い方悪いぞ。」
「本当の事だろ、さっさと行くぞ。」
「後で帰しにくるから気長に待っててくれ、じゃな!」
赤い方が瀧賀さんを担ぎ上げ空に消えていった。
「瀧賀さん…。」
「取り敢えずトーコさんに連絡しましょう、話はそれからッス。」
「この大馬鹿!何でそのまま連れていかせた!」
「…あの二人は私達では歯が立たない位強い相手でした、瀧賀さんが人質に取られている状態で戦うのは…。」
「言い訳無用!項垂れている内に取り押さえれば良かったでしょうに…。」
「トーコさんは…何か知っているんスか。」
「…別に、そもそも知っていても絶対に教えたりなんかしないわ。」
「え…何処に行くんですか?」
「ちょっと瀧賀君を引き取りに行ってくる、馬車を借りるわよ。」
「待ってください、私も…。」
「頭を冷やして待ってなさい、一時間で戻るわ。」
「…分かりました、瀧賀さんをお願いします。」
「最初からそうしてれば良いのよ、じゃあ行ってくるわね。」
トーコさんは急ぎ足で去っていった、取り敢えずは私に出来ることをしよう。
「矢弥さん、男性陣に連絡を入れておきましょう。」
「わかったッス。」
どうか、少し乱暴で、とても優しい…元の瀧賀さんでありますように…。
次回からもう少しギャグを入れておきたいなと思います