突然聞こえてきた『三人目』の声は、神様と同じように頭の中に直接話しかけてきました。
私だけが聞こえたのかと思い、恐る恐る小春の方を見るとどうやら彼女も同じようです。
「何者だ! 姿を見せよ!」
《んもぉ~、そんなに身構えないでよ~。怪しいもんじゃないって。・・・ね?》
「・・・へ?」
最後の『ね』と同時に、自分の肩にポンッと効果音が鳴りそうな感触を感じた。私はその感触の正体を知りたくて、すっとんきょうな声を上げてしまった事は忘れていた。
今度は小春の時よりもいっそうゆっくりと後ろを振り返ると・・・
《ホラ、寝違えたんじゃないんだからパッと振り返りなよパッと!》
・・・途中で勢いよく頭を掴まれ、グイッと回された。
目に飛び込んできたのは女性。腰まで伸びたストーレートの金髪が最初に目に入った。背丈は圭太郎さんより少し小さいけれど、すらっとした身体つきが影響してかそれ程小さいという風には見えない。誰もが認めるような、大人の女性だった。
何よりも強烈に印象に残るのはその女性の服装。見ているだけで寒くなりそうな程にお腹の部分がパッカリと開いた・・・布。
・・・私はあまり比喩が得意でないからこういう言い方しかできないけど、端的に言えば向こう側が見えそうなくらいスケスケな布を体中にゆったりと巻きつけているようにしか見えない。
一目で並大抵の人ではないと分かる。
小春も驚いたのか、目を真ん丸にしている。
「ええと、こういう時は・・・」
《そうそう、言う事があるでしょ、言う事が♪》
私は鼻から空気を吸い込んで、近所迷惑にならない程度の大きな声で叫んだ。
「圭太郎さーん! 言葉で説明できないくらい『いけない』女の人がいまーす!!」
《・・・へっ?》
「うむ、そなた、痴女という部類の人間だろう?」
《い、いやいや・・・!》
すると私達の声を聴いたのか、圭太郎さんが二階からドタドタと駆け降りてきました。
「どうしたんだエリー! 小春! ・・・!?」
《お、やっと来てくれた! ホラ、君から二人に言ってやってよ!!》
「・・・」
《・・・?》
「・・・森へお帰り。ここはアナタがいられる場所じゃないんだ・・・」
《今度は蟲扱い!?》
さて、いきなり現れたこの痴女の対処に困っていると、ナミちゃ・・・神様が現れた。きっと状況説明をしてくれるのだろう。下の階で何が起こったか分からなかったのでダレンは上に残してきた。
〈全く・・・皆さん夜中に騒いでどうし・・・〉
《おぉ! 久しぶり、ナm
〈圭太郎さん・・・何故痴女を家に上げているのですか? 私はこのような人を転生させた覚えは無いのですけれど・・・〉
っておーい!! 怒るぞー、そろそろ怒っちゃうぞー》ピキピキ
彼女の蟀谷に怒りマークが浮き上がってきたようだし、そろそろ本格的に真面目な説明をしてもらおう。
・・・ていうか、何で俺達は会ったことも無い人を弄って遊んでいたんだろう・・・? 俺はまだしも、エリーと小春は確実に毒され始めてるよなぁ・・・
〈ほら、そろそろ機嫌を直して下さい〉
《ぶ~・・・元はと言えば、そこの二人が悪フザケするからだぞ~・・・》
実際に「ぶ〜」って口に出す奴初めて見たわ・・・
目の前の痴・・・女性は、機嫌が悪そうに唇を突き出し俺の隣に座っているエリーと小春に視線を送る。
「ははは・・・」
「まぁまぁ、社交辞令というやつだ」
《それ絶対使い方間違ってるよね!? ・・・もぉ、君がちゃんと二人の事を見てないせいだよ・・・?》
今度は俺の方を見てきたのだが、正直に言って反応に困る。
「こっちから色々質問すると面倒臭そうだから、神様にパスってことで」
〈良いでしょう。では私が説明します〉
〈この人・・・いえ、この神の名は『クロノス』。圭太郎さんには既に伝えましたが、貴方達が今やっているこの『仕事』を頼んだ張本神です〉
「張本人の『人』を『神』に変えたんですね。面白い面白い」
〈祟殺しますよ?〉
ナミさんは目も顔も笑っていなかったので、本当にヤバそうだと思って口を噤んだ。
《ども~。流石にね、元はと言えばナミちゃんに頼んだ事だとしても君達に顔を見せないのは失礼だと思ってね~》
「へぇー。あなたが、神様がホームステイしたっていう・・・」
以前、神様がそんなことを言っていたなぁ、と思い出した。
《そそ、良く知ってるね? ナミちゃんから聞いたのかな?》
場が落ち着いたので、俺は、まだよく見ていなかったクロノス神の姿をしっかり覚えようとして、彼女の方を見た。
青い目をしたパツキンの美人さんだったのでパッと見は外国人のようだったが、よくよく見てみるとテレビとかで見るような外国人の人達とは顔立ちが違う。明るく朗らかな性格が滲み出ているような、自然な笑顔を常に振りまいている人の顔だった。
イザナミ神をクールビューティーな大和撫子だとすると、クロノス神は明るくて天真爛漫な女性だ、というのが俺の第一印象だった。
俺がもっと詩的な表現に富んだ思考をしていればこの2人の神様達を『太陽と月』に例えたのだろうが、そう考えるとそれはあまりにも月並みな表現だと思ったので、見たまま感じたままを受け止めるだけにしておいた。
「ほーむすてい・・・?」
〈以前、私がクロノスの所でお世話になった事があるんですよ〉
「おぉ、そういうことか」
「それで納得出来る小春の思考回路が分からないよ・・・」
顔立ちと印象については結構覚えた。しかし、避けて通れない箇所が1点。
・・・その格好、どうにかなりませんかね?
言葉に出すと完全にセクハラなので心に留めておくだけにするが、クロノスさんの女性らしい豊満な身体つきを外界から守っているのは、長くて薄い布だけ。しかも、大事なところはしっかりと隠しつつそれを身体中にゆったりと巻きつけているのだから、目に毒なことこの上無い。少し目を凝らせばその向こう側が見えてしまいそうで、見ているこちらが恥ずかしくなる。
鳩尾の辺りからへその下まで猫の目の形のように大きく開いた布と布の間の空間は、最低限度に隠された上下共に主張の激しい部分をかえって引き立てるように、その胴体のラインをこれでもかと露わにしている。
ミニスカートのように巻き付いた布から下は絶対領域など御構い無しに、脚線美を描く太腿から爪先までが大胆に晒されている。ある程度、例の薄い布は巻き付いているものの、もはやそれはストッキング以上の意味をなしていなかった。というかストッキングより見えてる。
総括すると、大多数の男の子が大人の階段を登ることになり、ビーピーオーに引っかかり、対象年齢が15歳以上になるような・・・エリーの言葉を借りるなら、『いけない』女性です。
ーーーここまで長々と分析した自分を殴りたい。
「ところで・・・今俺達がやってる事を、クロノスさんがやってたんですよね? どういう風にやってたのか教えてくれませんか?」
《んー・・・厳密に言うと、全く同じ事をやってたって訳じゃないんだよねー》
「・・・と言いますと?」
《アタシがやってたのは『世界をくっつける』仕事なんだー》
「・・・ごめんなさい、もうちょっと詳しく・・・」
俺がさらに詳しい事を聞こうと質問したが返ってきた答えは簡単そうで難しかった。エリーは自分がよく理解できていないことを申し訳なさそうにしながら、クロノス神に再度問いかけた。一方の小春は対照的に、黙ったまま静かに話を聞いている。理解できているのかいないのかは定かでないが、彼女なりに真剣に考えて理解しようとしているのが伝わってくる。
《そうだね・・・簡単に言えば、同じ樹形図上のほとんどそっくりな二つの世界・・・良好な状態のプラスの世界と、ちょっとヤバい状態のマイナスの世界をくっつけてプラマイゼロにしてたんだ。でも、それだと効率が悪くてねー・・・世界の可能性も蔑ろにしちゃうし。アタシだけじゃ手に負えなくなっちゃったんだ》
〈そこで私はクロノスからそれを手伝って欲しいと頼まれたのです。ホームステイの恩義がありましたし、断る理由も無かったので引き受けました〉
「暇神(ひまじん)ですもんねー」
〈・・・ん?〉
「あ、スンマセンシタ・・・」
・・・触らぬ神には祟りなし、だな。
〈私はその方法を変えるべきなのでは? と提案しました。色々と調査をしていく内に発見があったのです〉
《アタシから説明するね》
《それは、世界がバランスを崩してしまう原因について。本当はもっと色々あるんだけど、1番多いのは『人々が抱える心の闇』だったよ》
「あのー・・・すみません、私には異世界と並行世界の違いがあまりよく分からなくて・・・」
《あぁ、気にしなくていいよ? 難しい話だからね》
《例えば、この世界には『圭太郎君が生まれた』場合と、『圭太郎君が生まれなかった』場合のそれぞれの世界があるんだ。ここは前者の世界。こういう風に、世界が始まったそのスタート地点からいろんな可能性によって世界の構造がちょっとずつ分岐しながら変わっていく・・・樹形図みたいにね。それが並行世界》
「・・・はい、なんとなく分かりました」
《でも『異世界』っていうのは、世界の基本構造そのものが全く違う、異なる世界のこと。この世界から見たエイブリーちゃんの世界は異世界になるね。基本構造が全く違うっていうのは説明しづらいから省略するけど、要は、この世界を一本の『樹』だとしてその世界の並行世界を樹の『枝』とすると、異世界っていうのは全く別のもう一本の『樹』なんだよ。どれだけ枝分かれして可能性を広げても、枝を遡っても、絶対に辿り着くことのない全く別の異なる世界・・・それが異世界なんだ》
「という事は、妾の生きていた時代とこの圭太郎の時代・・・世界は、並行世界というやつか?」
《そう、その通りだよ。この世界とエイブリーちゃんの世界は異世界同士の関係にあるけど、この世界と小春ちゃんの世界は異世界ほどの違いはなくて、並行世界同士の関係なんだよ》
「つまり俺は、エリーと小春の2人で異世界と並行世界の2パターンの人々と会ったってことか。なんだかお得な気分だな」
〈話を元に戻しましょう。忘れてはならないことがもう一つ。バランスを崩し、崩壊してしまった世界は・・・二度と元には戻せません。
・・・皮肉な事ですが、神々の中には敢えて世界を崩壊させ、新しい世界が生み出されることが無くなれば仕事が増える事も無い、と考えている者達もいます。
ですが私は・・・生きとし生けるもの達の『可能性』を見てみたい。数多に連なる無限の世界の中で、彼らが私達に何を見せてくれるのか。・・・その可能性を蔑ろにしない為にも、私はこの仕事を引き受けたのです》
世界の・・・生き物の可能性を無くさないために・・・か。
これは、俺がその事を他人事のように考えているからそう思ったのだが、世界が崩壊してそこから続くことがなくなってしまったとしても、それもその世界の可能性の1つであり運命だった、とは考えられないだろうか。
今それを口に出すことは色々マズイと思ったので、そんな考えを心の中にしまった。
ここで俺は、イザナミ神にいつか聞こうと思ってずっと聞いていなかった事をふと思い出し、それを聞くことにした。
「そもそも、『世界が崩壊する』って何なんですか? 人の負の感情がそれを引き起こす原因になっている理由も含めて教えて下さい」
最初に口を開いたのはイザナミ神だった。
〈説明不足になってしまい、すみませんでした。私たちが言う『世界の崩壊』とは、『世界の可能性の消失』を指す言葉です〉
〈先程説明した通り世界には分岐点があり、その数だけ平行世界が存在します〉
〈ですが、全ての事象に対して分岐が生じるわけではありません〉
「世界がある出来事で分岐する時と、そうでない時があるんですか?」
自分の中での確認の為にも、一旦「このような考え方で良いのか」といった気持ちで神様に疑問を投げかけた。
〈えぇ。その通りです〉
〈貴方も少しは耳にしたことがあるでしょう、世界には『修正力』という力が働いています。世界の歴史はある一定の道筋で進み、例え少しばかりその道から外れたとしても、最終的に本来の歴史へと収束する力のことです〉
「ちょっとやそっとの事では歴史は動かない、と?」
《流石だね〜♪ ナミちゃんが見込んだだけはあるよ》
これくらい誰でも分かることだと思うけどなぁ、と考えつつ、お世辞を受け取ったつもりで「ありがとうございます」と言っておいた。
〈先程クロノスは、貴方が生まれたかそうでないかの2通りの世界があると説明しました〉
〈ですが、例えばここでボールを上に放り投げ、キャッチしたとします〉
イザナミ神はそう言いつつ手振りを加える。
〈この場合ではボールをキャッチした場合としなかった場合の2通りに分かれそうですが、実際はこの程度の事象ではこの世界での歴史に大きな影響は無く、平行世界を生む分岐の為の事象としては影響力が小さ過ぎます〉
《平行世界はむやみやたらにポンポン増えるものじゃないんだ。世界のもう一つの可能性が生まれるには、それなりの影響力を持った事象の発生が不可欠なんだよ。ーーーまぁそれでも、多いことには変わりないんだけどねぇ・・・》
何やらクロノス神が遠い目をしているが、まだ聞きたいことが残っているのでそちらに集中することにする。
〈そして、『世界の可能性の消失』とは、歴史に対する影響力が大きい事象が起きない為に平行世界が生まれず、その世界がそこで行き詰まることです〉
《特に、その世界の人達が負の感情やネガティブな思考を持っていると、影響力の大きい事象が起きないんだ・・・》
あー・・・成る程。だんだん話が見えてきた。
「神様達は世界の可能性を守って見届ける為に、異世界や平行世界の管理をしている。けど、世界に負の感情が溜まると、そこの人達が影響力のあるアクションを起こさなくなって世界の可能性が広がらなくなり、行き詰まってしまう」
「それを解消する為に俺たちはこういう事を神様達から任されている、って事ですね?」
《大正解! ナミちゃんが君を選んだ理由が分かった気がするよ〜》
さっきからクロノス神はやたらと俺を褒めてくるが、少しばかりやり過ぎな感じがする。俺は本当に大した事をしていないし、これまでの話をただ要約していたに過ぎない。こんな事で何度も褒められると、逆に何かあるのかと疑ってしまうのは俺だけなのだろうか?
「成る程な、概ね理解した。だが何故その仕事を此奴に任せたのだ? はっきり言ってそなた等は神なのだから、超神秘の怪異でも何でも起こす事が出来るであろう。今までもそれを見てきた。・・・何故、人間である圭太郎に?」
俺含め、みんなの視線が自然にイザナミ神へと集まる。
〈先程も言いましたが、私は生物達の可能性を蔑ろにしない為にこの仕事を引き受けました。それなのに、神である私が生き物達の心の闇を無理矢理取り払ってしまっては先程の発言と矛盾します。・・・ですから、『ヒト』である圭太郎さんにこの仕事を頼み、私はサポートに入ったのです〉
「当人の目の前で言っては悪いが、此奴よりも徳の高い人間など他にごまんといるであろう。何故そういう輩には頼まなかったのだ」
「どう反応していいか分からん・・・」
〈やはり一番大きいのは、彼が私を少しでも『信仰』してくれていた事ですね。それに、目の前に神様が現れるという非現実的にしてそれこそ超神秘の怪異が起こっても、彼なら受け入れてくれると判断した結果です〉
「・・・確かにそうだな、よく分かったぞ。礼を言うイザナミ神よ」
〈いえいえ〉
《今まで顔を見せられなくてごめんね~? アタシも忙しくて・・・ていうか、アタシ一人にこんな仕事頼むなんて頭湧いてるとしか思えないよね~? こんなん無理だっちゅーの》
〈まぁ、時間を司る神なのですから無理もないでしょう。貴女のような神にしか出来ないんですよ〉
《そんな風に煽てられたってアタシには効かないぞ~》
〈そうですか・・・少し落ち着いたらまた遊びに行きたいと思っていたのですが・・・〉
《頑張る! アタシ頑張っちゃう!!》
(((ちょろい・・・)))
《そういえば・・・今もお仕事、絶賛継続中なんだって?》
「はい。アルビノ姉弟のエラとダレン君です」
《ほぉ~中々面白いキャラだね~。・・・で、どう? 上手くやれそう?》
「当たり前だ、と言いたいところだが・・・少々難敵だな。・・・主に姉が」
「俺が担当してる弟の方は首尾よくいっていると思います。このままいけばきっと大丈夫です。けど、小春の言う通りエラの方はちょっち厳しいかもしれないですね」
《うんうん、そっか~大変だよね~。もし困った事があったらいつでも頼ってくれて良いからね~? ナミちゃん程の事は出来ないかもしれないけど》
〈何を言いますか。時間を司る神が誰も来ないような古臭い神社に祭られている一介の分霊に劣るなど・・・〉
《それはナミちゃんへの信仰が足りてないからでしょ? 『本気』を出せてないだけであって・・・》
〈という感じで説明は終わりです。他に聞きたい事はありませんか?〉
「んー、今のところは特に無いかな。ありがとうございます、わざわざ来てもらって」
「私も、顔を見れて良かったです! 頼もしい神様が増えて嬉しいです!」
「イザナミ神とはまた違う神を見れて面白かったぞ。最初に会った時はすまなかったな。これからも頼りにさせてもらうぞ」
《待って、ナミちゃん。何? この子達めっちゃ優しいじゃん! 涙腺崩壊しそうなんですけど!! くぅ~羨ましいなぁ!! こんないい子達に囲まれてみたいなぁ・・・》
〈今でも十分ですが、もう少し賑やかになったら皆で遊びに行きますよ。クロノスも頑張って下さい〉
遊びに行くってどういう・・・ていうか行けんの・・・?
「・・・あ、そうだ。一つ良いですか?」
《ん? 何かな?》
「クロノスさんは神様の事をナミちゃんと呼んでいますよね?」
《まぁそうだけど、それがどうしたの?》
「クロノスさんも立派な『神様』なのに、俺たちがイザナミ神を『神様』と呼ぶとあやふやになってしまうと思って・・・」
「言われてみれそうですよね・・・」
〈私は別に構わないのですが・・・〉
「ですから、本格的に俺達も神様を『ナミちゃん』と呼b〈断固拒否します〉・・・チッ」
《えぇ~!? 面白そうで良いじゃん! そうしようよ!!》
〈何を言いますか! クロノスと私はお互いに神であり、親しい仲でもあるという事で私がそう呼ばれているだけであって、皆さんにまでそう呼ばれてしまうと威厳が無くなってしまいます! それに・・・〉
「それに?」
俺が聞き返すと、神様は顔を少し赤らめてこう呟いた。
「その・・・皆さんにまでそう呼ばれると・・・恥ずかしいというかなんというか・・・」モジモジ
《もぉ~! 可愛いな~このこの~!》
〈ちょっ! やめて下さいクロノス! 皆さんが見ていますから!!〉
「成程。これが神々の遊戯(あそび)というやつか・・・」
〈小春さんも変な勘違いをしないで下さい!!〉
「えっと、あの、神様達の遊びって・・・スキンシップが、その・・・は、激しいんですね・・・」
〈エイブリーさんまで変な勘違いをしていますから! この・・・離しなさい!〉
「それで、どうなんですか? 私も、今の呼び方だと少し不便なんですけど・・・」
クロノス神のゴットハンド(直喩)がピタリと止まり、再びみんなの視線が神様に集まる。
〈・・・仕方ありません。許可します〉
「ありがとうナミえもん!」
「ありがとうございますナミゾウさん!」
「感謝するぞナミの嬢」
〈ーーー言い残す事は?〉
上から俺・エリー・小春の順番で言ったのだが、その瞬間、ナミえもんの背後に黒いオーラが立ち昇った。
「あ、私先に小春と一緒にお風呂に入ってきますねー!」ダッ
「そういう事で、後は頼んだぞ!」ダッ
「う、裏切ったな! この薄情者共め!!」
〈・・・さて圭太郎さん。少し私とO・HA・NA・SHIしましょうか〉ニコニコォ
「待って! 何で俺だけ!? くそっ、入れろー! 俺も一緒に風呂へ避難させてくれー!!」
〈慈悲はありません・・・覚悟は良いですか・・・?〉
《あーあ、知ーらないっと・・・》ソソクサ
「ひ・・・ヒギヤァァァァァ・・・」
男性約一名の、恐怖と絶望を孕んだ悲鳴は虚空へと消えた・・・
〈全く・・・良いと言った私が馬鹿でした〉
《でも、あんなナミちゃん久しぶりに見たなぁ・・・あ、後で聞こうと思ってたんだけど・・・今良い?》
〈・・・? えぇ、構いませんが・・・〉
《ーーーどうして『生明圭太郎』を選んだの》
〈・・・その理由は貴女も聞いていたでしょう?〉
《エイブリーちゃんと小春ちゃんはあれで誤魔化せるかもしれないけど、アタシは誤魔化せないよ~?》
〈何を言いたいんです?〉
《り・ゆ・う。もし本当に理由があれだけだったら、彼を選ぶのには足らないよ。『伊邪那美命』を祀ってる神社はこの国中にごまんとあるし、その中のどこかには圭太郎君よりも信仰心の厚い人間がいるはずだよ。それよりももっと大切な『絶対に彼を選ぶ理由』があったんじゃないの?》
〈・・・〉
《沈黙を肯定ととるか否定ととるかは別として、当の本人・・・圭太郎君も、いつか必ず気付くってことはナミちゃんも分かってるでしょ? それがいつになるかは分からないけど、その時ナミちゃんは・・・》
《ま、ゆっくり考えれば良いよ。いつでも頼って良いっていうのは、なにも圭太郎君達だけじゃないからね?》
〈・・・・えぇ、分かりました〉