幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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グレモリーvsシトリー

シトリー眷属とのゲーム決戦前夜。

 

俺達は先生の部屋に集まり、最後のミーティングをしていた。

 

美猴や小猫ちゃんのお姉さんの襲来もあったけど、智代の機転で何事もなく決着は着き、静かに事件は終わりを告げた。

 

大事ではなかったということで、あまり知られてはいないけど、部長曰く、智代の株が上がったそうだ。俺は知らなかったことだけど、密かに部長に智代を譲ってくれと言ってくる上級悪魔が何人もいたらしい。問答無用で突っぱねたそうだけど。

 

そしてミーティングとなったわけだ。

 

「リアス。ソーナ・シトリーはグレモリー眷属の事をある程度知っているんだろう?」

 

「ええ、大まかなところは把握されているわね。例えば、イッセーや祐斗、アーシア、ゼノヴィアの主力武器は認識しているわ。ーーフェニックス家の一戦もそうだけれど、コカビエルの時は匙くんもいたから、イッセーは過去も含めて殆どの情報が割れているわ。さらに言うなら、ギャスパーの神器や小猫の素性もよ」

 

「それで、お前の方はどれくらいあちらを把握してる?」

 

「一部を除いて、ある程度知っているわ。ソーナと副会長である『女王』の事は大体知っているけれど」

 

「不利な面もあると。まあ、その辺はゲームでもよくあることだ。戦闘中に神器が進化、変化する場合もあるしな。細心の注意を払えばいい。相手の数は八名。こちらと同じか」

 

「ええ。駒は違うけれど、数の上で不利はないわ」

 

先生がいると話が進むなぁ……俺なんかまだ全然素人だし、話を理解しようとするので精一杯だ。というか、相手は八人か……これが喧嘩なら匙とタイマン張るところだけど、それはゲームになってみないとわからない。

 

次に先生は用意したホワイトボードに何かを書いていく。

 

「レーティングゲームは、プレイヤーに細かなタイプをつけて分けている。パワー、テクニック、ウィザード、サポート。この中でなら、リアスはウィザードタイプ。所謂魔力全般に秀でたタイプだ。朱乃も同様。木場はテクニックタイプ。スピードや技で戦う者。ゼノヴィアはスピード方面に秀でたパワータイプ。一撃必殺を狙うプレイヤーだ。アーシアとギャスパーはサポートタイプだが、さらに細かく分けると、アーシアはウィザードタイプに近く、ギャスパーはテクニックタイプに近い。小猫はパワータイプで、最後にイッセー。お前もパワータイプだ。但し、サポートタイプの方にも行ける。ギフトの力でな」

 

いきなりで困惑したが、つまりゲームをする眷属に幾つかタイプがあって、俺はサポートのできるパワータイプという事なんだな。

 

先生は十字線を引いて、上下左右の端にタイプ名を書いて、グラフを描いた。

 

俺達がどの位置のタイプなのか、グラフに名前を書いていく。

 

こうして見てみると割とバランスいいのかな?俺達。ウィザードタイプのパワー寄りはどっちかっていえば、滅びの力を持つ部長やどデカイ一撃を撃てる朱乃さんっぽいし、テクニックが少ないのが難点ってところか?

 

「先生。仮にこの中で智代を振るとしたら、何処ですか?」

 

なんとなく、興味本位で聞いてみると、先生が顎に手を当てる。

 

「智代は禁手も含めて、全方位死角がない。前線に出て肉弾戦も出来て、神器による氷雪系の魔法攻撃も可能、神器の応用でテクニックタイプのスタイルも取れる上に、相手を拘束したり、最終的には時間を凍結させる事ができる……ま、オールマイティだな。だからこそ、男女問わず、智代を欲しがる悪魔はいるんだよ……ま、男共の場合は下心もあるだろうがな」

 

言われてみれば、智代はどのタイプにも傾倒しているイメージはない。その場その場に応じて戦闘スタイルが変わっているし、禁手状態の時は肉弾戦も魔力戦もしている。それにパワータイプでもなく、テクニックもある……あれ?智代強すぎないか?

 

「そういう点で言えば、あいつがいりゃ、お前たちの勝ちはほぼ確定だったろうな。パワータイプの多いお前達にとって一番気をつけるべきカウンタータイプに智代をぶつけて、他をお前達で当たれば、圧倒する事もかなったが……たらればの話をしても仕方ない。兎にも角にもパワータイプはカウンターで形勢逆転を狙われる事もあるから、十分に気をつけろ。特にイッセー。お前の場合はカウンターの時のダメージが尋常じゃないだろうからな。いくら打たれ強くても、限度はある」

 

「は、はい」

 

確かに禁手状態のパンチにカウンターを合わせられれば、俺の力プラス相手の力が返ってくる。ダメージの警戒なんてしてないだろうから、そんな状態て受けたら一発で意識が飛ぶかもしれないし、下手をすると仲間に被害が出る可能性もある。気をつけておかないと。

 

「カウンターならば、力で押し切ってみるというのはどうだろうか?」

 

「それで乗り切れる場面もある。だが、相手がその道の天才なら別の話だ。出来るだけ攻撃は避け、術の朱乃か技の木場、もしくはヴァンパイアの特殊能力を持つギャスパーで受けたほうがいい。何事も相性だ。パワータイプは単純に強いが、テクニックタイプと戦うにはリスクが大きいんだよ」

 

戦闘経験が豊富なゼノヴィアには思い当たる節があったのか、先生の説明に押し黙った。

 

「リアス、ソーナ・シトリーの眷属にカウンター使いがいるとしたら、イッセーにぶつけてくるかもしれないぞ?こいつの絶大なパワーじゃ、下手をすると一発でアウトだ。よーく、戦術を練り込んでおけ」

 

「そうね。ソーナならきっとーー」

 

「多分それは無いと思います」

 

部長の言葉を遮るようにして、俺は言う。

 

すると、部長や先生は怪訝な表情を浮かべる。

 

「なんでそう思う?」

 

「相手には匙がいます。なら、十中八九、俺には匙をぶつけてくるはずです」

 

「確かに匙くんはイッセーの戦闘スタイルや癖を知っているけれど……それはイッセーも同じ条件のはずよ?それに匙くんはテクニックタイプというわけでも無いし、ソーナがライザーのように『犠牲(サクリファイス)』を行うとも考えづらいわ」

 

「いや、そういう難しい話じゃ無いんです。ただ、俺は匙元士郎という男を知っている。それだけなんです」

 

そう。俺は……俺達は匙元士郎という男がどんな奴かを知っている。

 

だから、あいつは誰よりも早く俺の前に立ち塞がる。そして俺も誰よりも早く匙の前に立ち塞がる。

 

それ以上それ以下の理由も無い。

 

だからこそ、俺はあいつをーー絶対に倒す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦日。

 

ついに来た。

 

グレモリーの居城地下にゲーム場へ移動する専用の巨大な魔法陣が存在する。

 

俺達眷属はその魔法陣に集まり、もうすぐ始まるゲーム場への移動に備えていた。

 

アーシアとゼノヴィア以外、駒王学園の夏の制服姿だ。シトリー側も駒王学園の制服だ。アーシアはシスター服、ゼノヴィアは出会った当初の頃に着ていたあのボンテージっぽい戦闘服だ。二人ともそちらの方が気合い入るらしい。かくいう俺もつけてたりするんだけど。

 

「イッセー。まだ持っていたのか?」

 

智代が指差したのは俺の手首に巻かれた赤いリストバンド。

 

「ああ。これはお守りみたいなものだからな」

 

前の時はゴタゴタしていて、着けるのを忘れていたけど、今回はこちらに持ってきていたのが幸運だった。これをつけてるとやたらめったら絡まれていた頃を思い出すから、頭の中が戦闘モードになる。

 

「リアス、記念すべき最初の公式戦だ。勝ちなさい」

 

「次期当主として恥じぬ戦いをしなさい。眷属の皆さんもですよ?」

 

「頑張って、リアス姉さま!」

 

「まあ、今回教えられることは教えた。あとは気張れ」

 

部長のお父さん、お母さん、ミリキャス様、アザゼル先生からも応援の声をかけられる。

 

この場にはサーゼクス様とグレイフィアさんだけど、要人専用の観戦会場へ移動されているようだ。そこには三大勢力のお偉いさんだけではなく、他の勢力からのVIPも招待されているという。どれだけ注目されてるんだろうか……やっぱり有望な若手悪魔という点や魔王の妹二人が戦うところで注目浴びてんだろうな。

 

緊張感漂うが、魔法陣は輝き始めた。

 

「イッセー」

 

「わかってる。絶対に勝つさ」

 

俺がそういうと智代は目をパチクリと瞬かせた後、ふっと笑った。

 

「ならいい。勝利の報告以外は聞かないからな」

 

「当然。それ以外言うつもりもない」

 

そう言ったと同時、俺の体は光に包まれた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛ばされたのは何処ぞのレストランだった。っつーか、ここ前に花戒に連れてこられた場所じゃねえか。確か……そう、駒王デパートの数ある中の一つのレストランだ。

 

これも全部専用空間に用意されたそっくりのレプリカだっつーんだから、悪魔はすげえな。

 

まぁ、場所なんざ関係ねえ。何処で誰とやり合おうが勝つのは俺達だ。それだけは譲るつもりはねえし、あの踏ん反り返ってるジジイどもの鼻を明かしてやる。

 

『皆さま、この度はグレモリー家、シトリー家のレーティングゲームの審判役を担う事になりました。ルシファー眷属『女王』のグレイフィアでございます。我が主、サーゼクス・ルシファーの名の下、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。早速ですが、今回のバトルフィールドはリアス様とソーナ様の通われる学び舎、駒王学園の近隣に存在するデパートをゲームのフィールドとして異空間にご用意致しました。両陣営、転移された先が本陣でございます。リアス様の本陣が二階の東側、ソーナ様の本陣は一階西側でございます。『兵士』の方がプロモーションをする際、相手の本陣まで赴いてください』

 

相手の本陣は正反対の二階の東側か……走っていきゃ、五分くらいだな。

 

『今回、特別なルールがございます。陣営に資料が送られていますので、ご確認ください。回復品であるフェニックスの涙は今回両チームに一つずつ支給されます。なお、作戦を練る時間は三十分です。この時間内での相手との接触は禁じられています。ゲーム開始は三十分後。それでは、作戦時間です』

 

「作戦会議を始めますよ。サジ、こちらに来なさい」

 

アナウンスが切れると同時に会長が俺を呼ぶ。

 

何時もなら「まどろっこしいのは嫌」と言ってるが、今回は状況が状況だ。多少は姑息な手も使わなきゃいけねえ。俺の主義には反するが、そうも言ってらんねえからな。

 

「今回のバトルフィールドは私達のよく知るデパートによる屋内戦です。ルールには『バトルフィールドとなるデパートを破壊し尽くさないこと』となっていますから、地の利は此方にあるでしょう」

 

資料を見ながら、副会長が言うと会長も頷く。

 

「それに今回はギャスパーくんの目も使用禁止みたいですから、停止される心配もありませんし、あまり警戒する必要はないんじゃないでしょうか?」

 

「ヴァンパイアには複数の蝙蝠に変化する能力があるのだろう?放っておいてはこちらの情報が筒抜けになるだろう。早い段階で撃破しておいた方が良いと私は思う」

 

「ギャスパーくんへの対策なら既に考えています。私達の本陣は食材売り場。吸血鬼の苦手なニンニクがあるでしょう。おそらくですが、彼はニンニクの克服まで視野に入れて特訓はされていないはずです。ですから、そこをつきます」

 

俺が黙っている間にも作戦会議は進んでいく。

 

俺はそもそも戦術は考えるが、戦略は練られないタイプだ。どんな相手にも俺が先陣突っ切ってきたから、こういう下っぱとしての行動は弁えてねえ。だから、俺自身は難しい事は考えない、ただ、俺の主サマがどんな命令をしてきても、俺はそれをこなすだけだ。

 

だが……。

 

「なあ、会長」

 

「なんですか?」

 

「兵藤とはサシでやらせてくれ」

 

「ええ。好きにしなさい」

 

「だろうな………って、はぁ?」

 

てっきり断られるかと思っていたが、どういうわけか、返ってきたのは好きにしろとの言葉。

 

「おいおい、どうしたんだよ、会長。あんたらしくもねえ。頼んだ俺が言うのもなんだが、勝算低いぜ?」

 

「それは重々承知です………が、私がどうこう言ったところで、貴方は闘うでしょう。それなら、始めから兵藤くんにぶつけた方が作戦も立てやすい……それに私は貴方が兵藤くんに劣っているとは思っていません」

 

「はっ、は、ははは」

 

ったく、なんだよそりゃ。この主サマ、もっと冷めてるもんかと思ったけどよ。

 

最高にクールな癖に、最高にホットじゃねえか。

 

「ああ、あんたの期待通り。俺が兵藤を……赤龍帝をぶっ倒して、あのジジイどもの鼻を明かしてやるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は三時間の短期決戦(ブリッツ)形式を採用しております。それではゲームスタートです』

 

「しゃあっ!行くぜ、仁村」

 

「はい、匙先輩!」

 

試合開始と同時に俺は一つ年下の後輩、仁村と共に本陣から駆け出した。

 

一人でも良いと思ったんだが、会長曰く「相手が必ずタイマンに応じるとは限らない」だそうだ。

 

まぁ、強ち間違いじゃねえ。今までやりあってきた相手にも最初はタイマンだのどうの抜かしてた癖に俺が一発ぶん殴ると伏兵をブッ込んできたやつもいた。

 

だから否定はしねえ。けど、相手は兵藤だ。なら、それはねえ。

 

「匙先輩、楽しそうですね」

 

「はっ、そう見えるか?」

 

「はい。なんだか餌を前にした獰猛な肉食獣みたいな笑い方してますよ」

 

「そりゃまあ、その通りだ」

 

不良辞めて、真っ当な人間になってから、こんな血湧き肉躍るような展開はなかった。だが、この数十メートル先にはそれがある。久々の喧嘩に、俺の本能が疼いている。

 

そのまま駆けていくと、遠くに人影が見えた。

 

「ッ!見えました!あれは……」

 

「わかってる!」

 

あっちもこっちに気づいて走り出してきた!俺の存在に気づいてる。そして俺の存在に気づいて、突っ込んでくるような馬鹿は一人しかいねえ!

 

「兵藤ォォォォ‼︎」

 

「匙ィィィィ‼︎」

 

空いていた距離がゼロになると同時に俺と兵藤の拳が互いの顔面をとらえた。

 

「ッ……洒落せえ!」

 

「ぐっ……!」

 

先に立ち直った俺の二撃目が腹部を捉え、兵藤は後ろによろけた。

 

このまま一気に……

 

「やらせるかっ!」

 

「がっ⁉︎」

 

兵藤の足が俺の顎を蹴り抜いた。

 

ったく、相変わらずの打たれ強さだぜ。これを知らなきゃ、油断してもっとえげつないのをもらってた。

 

「匙先輩!」

 

「大丈夫だ。こんなの俺らにとっちゃ挨拶代わりだ。なあ、兵藤」

 

「こんな暴力的な挨拶は嫌だ……けど、匙。今回はお前に同意するぜ」

 

俺が笑うと兵藤もニヤリと笑った。

 

「……イッセー先輩」

 

「わかってる。でも、匙とはサシでやらせてくれ。小猫ちゃんは一年生の子を。それが終わったら、俺と匙の闘いを見届けてくれ」

 

「……止めても無駄なんですよね?」

 

「ああ」

 

「わかりました。でも、負けないでください」

 

そう言うと、塔城小猫ちゃんは仁村と対峙する形で戦闘に入った。

 

「お互い、理解ある後輩がいて良かったな」

 

「ああ。これで心置きなく……」

 

「「てめえをブッ潰せる!」」

 

言うと同時、俺と兵藤はお互い目掛けて肉薄した。


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