幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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悪魔のお仕事 その1

 

「悪いな、智代。付き合わせちゃって」

 

「気にするな。私が好きでしていることだ」

 

深夜、俺は自転車に乗って走り回るイッセーと並走していた。何故こんな事をしているのかというと、悪魔稼業の一つであるチラシ配りならぬ簡易式の魔法陣配りだ。

 

本来は使い魔などがするのだが、新人悪魔の仕事の一つとしても行われるものだ。欲のある人間がこの魔法陣に願いを込めることで、悪魔が召喚される仕組みだ。

 

俺は手に持った携帯機器を見て、モニターに表示された赤い点のある場所に向かう。其処が悪魔を召喚しやすい家ということらしい。

 

「悪魔になって身体能力は上がったのに……我ながら情けないなぁ……智代の全力疾走に追いつけないなんて」

 

自転車を漕ぎながらイッセーは溜息を吐く。やはり男しては女の子に運動能力が劣るのは嫌なんだろうな。俺も転生前は足が速くなかったからよくわかるぞ。同年代の女子にぶっちぎられた時は一種の悟りを開いてた。とはいえ、イッセーとて十分に足は速い。ただ俺の方が速すぎるだけで。

 

「本格的に鍛えようかな……あんな訳のわからない奴らに襲われるんじゃ、不良との喧嘩レベルの実力じゃどうにもならないし」

 

「その時は私も鍛えるから、一緒に頑張ろう」

 

「おう!智代がいると色んな意味で心強いからな!」

 

なんだその含みのある言い方は。因みにイッセーも実は喧嘩が強かったりする。当然といえば当然だ。私を襲ってくる輩がイッセーだけ都合良く襲わないなんてありえない。というか、最近はイッセーの方が襲われる確率が高い気もする。そのお蔭でイッセーは喧嘩慣れしたし、打たれ強くはなったが………あの一撃に関していえばそれも殆ど意味を成していない。

 

「それにしても下僕か。何か響きが良くないよな」

 

「仕方ないだろう。悪魔には階級があると。おそらく貴族社会の風習的なものだろう」

 

「悪しき風習って感じだな。悪魔にそれを言うのは矛盾してる気もするけど」

 

悪しき風習か。言い得て妙だ。確かにあれは古き時代の悪しき風習だ。それの所為で地位の低い有能な人材よりも地位だけの無能な輩が上でふんぞりかえって、顎で使っているのだから。おまけに悪魔どもは他の生物を転生させて種を維持していかなければならないというのに、他の種族を自分達以下だと見下している。どいつもこいつも忌々しい限りだ。

 

「まあ、部長は下僕って言っても優しくしてくれるから、あんまり嫌な感じはしないけどな」

 

「リアス部長は一般的な道徳心を持ち合わせているが、気をつけろ、イッセー。リアス部長が悪魔の基準だとは思わない方が良い」

 

「……わかった。肝に銘じて置く」

 

こういう時、いちいち説明をしないで済むのは凄くありがたい。まあ、イッセーがこうして鋭くなったのは相手の心理状態をある程度見抜けないと痛い目を見るという教訓から来ていて、その原因は俺なのだが。

 

「そういう察しの良いところ、私は好きだぞ、イッセー」

 

「こうでもないと智代の幼馴染みなんて務まられないからな」

 

「ああいえばこう言う。褒めているのだから素直に受け取れ」

 

「受け取ってるよ。それにこんなやり取りが出来るのは智代だけだからな」

 

まあ、確かに俺以外には出来ないわな。今のやり取りが他の女子なら八割くらいは別の意味と取り違えるだろうな。そういう自覚がある分、イッセーは何処ぞの一級フラグ建築士よりも女性に安全だ。俺は例外だけどな。

 

そうこう話をしているうちに悪魔稼業を終え、俺達は帰路についた。

 

帰って汗を流した後、髪を乾かしてすぐに眠ったのだが、言わずもがなイッセーに起こされた時、いつも以上に眠たかった。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔人生開始から数日。

 

俺は悪魔稼業に精を出していた。

 

毎度毎度チラシ配りに智代が付き合ってくれているのが申し訳ないが、本人が頑なに付き合うと言っているので俺からはなんとも言えない。先生や他の生徒はあまり気がついていないが、授業中に時々寝てるし。その時先生に当てられないのだから凄い。

 

それはそうと一々深夜帯に俺たちは旧校舎の部室に集まっているのだが、それは夜が悪魔の力を発揮出来る時間だかららしい。闇の世界になると力が増大する。なんとも中二病めいた響きだ。

 

お蔭で少し朝が辛いが、智代を遅刻させないためにもそんな事は言ってられないし、じきに慣れるとも言っていた。

 

転生して初めの頃は少し放っておいて、自分の変化に気づかせようとしていたらしいが、智代がその提案に反対したらしい。「また堕天使に襲われて、イッセーに何かあってからでは遅い」だってさ。俺の幼馴染みはとても過保護だ。多分、チラシ配りに同行しているのももしもの時の為だろう。俺としては智代に護られているという状況は我ながら情けない。早く智代を護れるくらいに強くならないとな。

 

因みに下積みとして夜中にチラシ配りをしているわけだが、補導される事はない。仕事中は人間に存在を認識されないんだとか。智代は例外。おまけに両親へは既に何かしら手を加えているらしく、夜中に帰ってきても「ご苦労さん」の一言。悪魔って怖いね。

 

怖いといえば、学園に及ぼしている部長の力だ。俺たちが通う駒王学園は部長の領土の一部となっていて、学園の裏の支配者は部長なんだとか。学園のお偉方も悪魔と関係がある者らしく、グレモリー家に頭が上がらないそうだ。つまりあの学校はほぼリアス部長の私有物ということになる。夜中に学校に集まれるのもそのお蔭だ。

 

話は仕事に戻るが、部長から渡された最近の携帯ゲーム機みたいな機器。よく出来ていると言わざるを得ない。悪魔っていうからもっと魔術的なものばかりで現代科学には頼らないと思っていたが「使えるものは使う」というのがモットーらしい。流石は悪魔。

 

モニターには表示された俺の住む町ーーー部長の『縄張り』が表示される。

 

悪魔ごとに人間界で活動の出来る範囲は決まっていて、その領域内でしか仕事が出来ないそうだ。まあ、取引先の奪い合いとかにならない為だろうな。

 

仕事というのは召喚され、契約を結んで、相手の願いを叶える事。

 

代償は人それぞれ。お金だったり、物だったり、時には命をもらうらしいが、最近はそこまでする人はいないって話だ。出たとしても代価と願いが釣り合わず破断するとか。部長曰く「人の価値は平等じゃない」らしい。智代も昔そう言っていたが、美少女二人がそう言うと言葉に重さを感じるね。俺と智代とじゃどう考えたって智代の方が存在価値がある訳だし。本人は否定するけど。

 

しかし、こうして毎日毎日チラシ配りをしてるわけだが、モニター上の点滅が尽きることがない辺りに人間の欲深さを感じる。一度願えば、癖になって止められない。ある種、麻薬と同じだ。

 

魔法陣は一回しか使えないから、使用されたらまた投函しなきゃいけないが、大体同じ家だ。

 

つまり悪魔の世界に慣れるまで俺の下積みは当分続くというわけだ。そのお蔭で部長達は悪魔として活動出来て、仕事も尽きない訳だ。

 

だが出来れば早めに終わって欲しくはある。出ないと当分智代に無理させることになるし。いざとなったら強引に止め………られないな。知力でも腕力でも勝てないし、昔から智代の頼みは如何にも断れない。きっかけがあったような気もするが、今は忘れてしまった。

 

……と、無駄に考え込んでいたせいで若干遅れてしまった。早く智代を起こしに行かなければ。

 

なんやかんやであいつの寝起きの顔というのは役得だ。何時もはキリッとしていて全方位迎撃態勢な訳だが、寝起きの時は無防備状態。俺であるからこそ、晒してくれている年相応に可愛い表情だ。朝起こしに行った時、密かに一日の元気を貰っていたりする。智代には口が裂けても言えないが。

 

「さてと今日も一日頑張りますかね」

 

鞄を片手に何時も通りに俺は智代の家へと向かった。悪魔になってもこれだけは変わらない。

 

 

 





話がなかなか進まない………けど、まあそこそこいい感じにかけているので頑張ります。

ISの執筆に四苦八苦して何時もこっちに逃げてますが、何とか執筆したいところです。皆、おらに知識を分けてくれ!

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