幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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宿命の決着

キスをした直後、イッセーの体から大質量の濃密なドラゴンのオーラが溢れ出す。

 

今までとは比較にならないほどのオーラ。それは目に見えて、ヴァーリの力を上回っていた。

 

流石はアザゼルだな。異能の力や神器の性質についての知識については一日の長がある。

 

近くにいると危ないので、取り敢えずリアス部長達のいるところに帰るか。

 

「よくやったわね、智代」

 

帰ってくるなり、満面の笑みでサムズアップしながら、リアス部長がそういった。な、なんだ、その想像以上の事をやってくれたみたいな言い方は。

 

「こんな所でしてしまうのは貴女も不本意だったかもしれないけれど、イッセーのピンチだもの、仕方ないわね。私も残念に思うわ」

 

「?とても残念そうには見えないのだが……何故、そんなにもリアス部長達は嬉しそうなのだ?」

 

「そんな事はありませんわ。非常に残念です。もっとこう……しっかりとした場と雰囲気ですべき事だったと私も思います。智代ちゃんが自ら行動を起こした、という点は良くはありますが……」

 

「いや、だから何故残念というわりに嬉しそうなのだ。私が何かおかしいことをしたのか?しっかりアザゼルに言われた通りにしたぞ」

 

俺がそういった瞬間に、神器を使っていないのに空気が凍った。

 

より正確には笑顔だったリアス部長、朱乃先輩、祐斗。満面の笑みとは行かないまでも嬉しそうだった小猫。哀しさと嬉しさの両方を帯びた表情をしたイリナがイッセーとヴァーリが闘っている方を眺めているアザゼルの方にゆっくりと向いた。

 

「アザゼルが……そうしろと言ったのね、智代」

 

「そ、そうだが……」

 

俺が肯定した瞬間、リアス部長の全身にありえないくらいの滅びの魔力が迸った。

 

は?あ、いや、この人何してんの?

 

「あらあら、それはそれは。聞き捨てならないことを聞きましたわね」

 

口調はいつも通りなのに、朱乃さんの目は全く笑っていなかった。そして、その手にはこれまた見たこともないくらいの魔力が。あ、あれ?

 

「いくら堕天使の総督とはいえ、ふざけた事をしてくれるね。智代さんが知らない事を良いことに、そんな事を吹き込むなんて……」

 

「………万死に値します」

 

祐斗の背後には夥しい数の聖魔剣が現れ、その手にも尋常ならざる聖と魔の気を宿した聖魔剣が握れられていた。それなんて無限の剣製?武器の貯蔵は十分じゃなさそうだ。

 

小猫に至っては自分よりも数十倍はある校舎の一部を片手で持ち上げていた。うん?『戦車』になるとこんなに力が上がるものなのですか?何かがおかしいですよ?

 

「………アザゼル。いくらイッセーくんの為とはいえ、智代さんの純情な想いを利用するのは許せないわ……イッセーくんに変わって成敗するんだから」

 

そしてイリナの手にはエクスカリバーが。

 

状況をイマイチ飲み込めておらず、混乱するアーシアを同じく理解しかねているゼノヴィアが一緒に避難していくのが見えた。サーゼクス様とミカエル様?不穏な空気になったあたりで、既にこちらから一定の距離を置いてるよ。

 

「あ?どうした、お前ら。つーか、なんだよ、その殺気」

 

愉快そうにイッセーとヴァーリのやり取りを見ていたアザゼルは、飛ばされている殺気に気づいて、こちらを向く。

 

「智代。少し耳を塞いで置いてくれるかしら?すぐに終わるから」

 

「は、はい」

 

もう頷くしかなかった。怖すぎる。多分耳を塞いだふりがバレたら、それはそれで絶対に想像を絶するナニカが待っている予感しかしない。

 

「一応聞くけれど、智代に『あれ』を吹き込んだのは貴方?アザゼル」

 

「ん?まあな。どうだ?俺なりにお前らの考えを察して、口添えしてみた……うおっ⁉︎」

 

「余計なお世話よ!『現時点では』そこまでは求めていなかったわ!私達は!」

 

「全くです!二人を応援しつつ、徐々に関係をより強固にしていく事が目的でしたのに、早急過ぎますわよ!これだから堕天使は!」

 

「アザゼル!貴方は邪悪だ!二人の為に、貴方という存在はいてはいけないんだ!」

 

「……人の恋路を邪魔するバカは馬に蹴られて死んでください」

 

「貴方がいると碌な事にならないわ!和平を結んだところにこんな事をするのは問題がしれないけど……アーメン!地獄に堕ちなさい!」

 

………なんかとても物騒な事が聞こえてくる。耳は塞いでるが、こんなに叫んでたら聞こえるっての。

 

……巻き込まれるの嫌だし、俺も逃げよ。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガゴンッ!

 

空中で硬いもの同士がぶつかる音がして、それを起点に衝撃波が起きる。

 

「オラァァァ!」

 

「がふっ⁉︎」

 

力任せにそのまま拳をねじ込むと、俺の拳がヴァーリの腹部に突き刺さる。

 

身体をくの字に曲げたヴァーリの背中にそのままかかと落としを決め、落ちていくところに先回り、さらにアッパーで上空へと吹っ飛ばす。

 

「ついでだ、受け取れェェェェ!」

 

拳に魔力を溜めて、撃ち放つ。

 

さっきと違い、どの攻撃にも龍殺しの特性を付与していたお蔭で、ヴァーリに放った魔力弾は綺麗に直撃した。

 

全てにありったけの力を込めて攻撃したというのに、全然体力を消費した感じがしない。やっぱり、さっき智代がしてくれたのは、そういう意味合いがあってのことなんだろうか?

 

『ふふっ、さあな。だが、今の相棒は『白いの』よりも強い。おまけに、どういうわけか、魔力を大気中から僅かばかりだが集められている。本人の意思はともかくとして、相棒にとっては確実にプラスに働いたな』

 

「なんで嬉しそうなんだ、ドライグ?」

 

『何、昔の事を少し思い出しただけさ。お前のように単純で、バカなやつがいたというだけの話だ』

 

言っている意味がよくわからないけど、兎にも角にも今は負ける気がしない。このうちにすぐに決めてしまおう。

 

「ふ、ふふ、ははははは!やるな、兵藤一誠!まさかここまでの力を発揮するとはな、正直いって驚いたよ」

 

「俺も驚いてるよ。身体の底から力が溢れてくるみたいだ」

 

「だから、俺も少し本気を出そう!」

 

『Half Dimension‼︎』

 

そう言うと、壊れていたヴァーリの鎧が再生し、手がこちらへと向けられる。

 

ヤバい!

 

そう感じるよりも早くに上空へと退避していた俺は、先程まで自分がいたところを見る。

 

すると、其処は空間が捻じ曲がり、足元の校舎は異様な形へと変形していた。

 

なんだよ、あれ⁉︎

 

『「白いの」の能力だ。一定範囲に存在するものを半減化する。今の相棒でも、あれに捕まればタダでは済まんぞ』

 

当たれば無事じゃ済まないって?そんなの……

 

「何時もの事じゃねぇかっ!」

 

「愚かだな。いくら速かろうと、そんな見え透いた軌道では!」

 

ヴァーリの手がこちらに向けられる。またさっきと同じ事をしてくるつもりだろう。

 

ボンッ!

 

俺は背後で魔力の塊を爆発させ、それと合わせて一気に加速する。そう、効果が発動する前にな!

 

そんでもって………そのまま殴り抜く!

 

「がはっ!」

 

殴り抜くタイミングに合わせて、ヴァーリもカウンター気味に俺の顔面に拳を放っていた。俺自身の力や速度を利用した完璧なカウンターだ。クリーンヒットした上にこちらの拳は躱された。でも、残念だったな。

 

「打たれ強さだけは誰にも負けねえよ!」

 

「なにっ⁉︎」

 

絶妙なカウンターが入ったにもかかわらず、掴みかかる俺にヴァーリは驚きの声を上げた。才能なんてものは欠片も持ち合わせてないが、その代わりに鍛えられたモンだってあるんだよ!

 

「歯ァ食いしばれやぁぁぁぁ!」

 

アスカロンの力を右拳に全部譲渡!この一撃に俺の全部を乗せてやる!

 

「くっ!」

 

『Divide!!』

 

俺の拳がヴァーリの顔を捉える直前、半減の音声が響くが、拳は止まることなく、そのまま打ち抜いた。

 

吹っ飛んだヴァーリはそのまま地面に激突し、クレーターを作る。

 

本当ならもっとボコボコにしてやりたいが、生憎ともうガス欠だ。

 

「はぁ……はぁ……どうだよ。何の取り柄もない最弱の赤龍帝の拳は」

 

「く、くくく、正直言って……驚いたよ。君の家系も、出生も、俺に比べれば取るに足らない事だ……なのに、こうして倒れているのは俺で、君は立っている。ともすれば、俺と君の間には才能差を埋める何かがあるのかもしれないな」

 

倒れたまま、ヴァーリは呟く。

 

鎧が解除されてないから、闘えないのか、もう闘う気がないのかわからないが、取り敢えずヴァーリ自身から戦意は失せていた。そういう事には鋭いからな。

 

「生憎様……俺の幼馴染みは鬼だからな。……お前に負けると、死んでも許してくれなさそうだ」

 

「ふっ……大神智代か。成る程、君と俺の差はそこにあるんだろうな」

 

変に納得したようにヴァーリは言う。

 

まぁ、確かに。俺がこいつと埋められそうな差なんて、それくらいのもんだろう。

 

「それで?どうする、兵藤一誠。この勝負は君の勝ちだ。殺したければ殺すといい」

 

「そうしたいのは山々だけどな」

 

ふっと全身から力が抜け、膝からくずおれる。

 

「俺ももう限界だ」

 

そのまま俺はヴァーリの倒れている真横にうつぶせに倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ー……ッセー……」

 

遠くから声が聞こえる。

 

焦ったような、心配しているような声。

 

その声が段々と近づいてくるにつれて、徐々に意識がはっきりし始めた。

 

「イッセー、起きろ」

 

「……智代か。俺は起きてるよ」

 

そう言って身体を起こそうとすると、智代に無理やり押さえつけられた……というよりも、頭に柔らかい感触が伝わってくる。

 

「寝ていろ、今アーシアが癒している途中だ」

 

「イッセーさん。ご無事で何よりです」

 

視線を移すと、そこには神器を使用しているアーシアがいた。あんな闘いをした割に身体があまり痛くないのは、やっぱりアーシアが癒してくれていたお陰なんだな。

 

「ありがとう、アーシア」

 

「いえ、イッセーさんのお役に立てて何よりです。それに、私よりも智代さんの方がーー」

 

「言うな、アーシア」

 

何かを言おうとしたアーシアの口を智代が塞いだ。うん?智代の方がどうしたんだ?

 

「気にするな。気にしなくていい」

 

「そ、そうか」

 

妙な迫力に聞く事が出来なくなってしまった。さ、流石は俺の幼馴染みだった。

 

「と、ところでヴァーリは?」

 

「仲間に連れられて逃亡した。『次に会う時は差を埋めておく』だそうだ。私には意味がわからないが、どういうことだ?」

 

差を埋めておく……か。それはこっちの台詞だ。

 

今回は智代のお陰で勝てたけど、ぶっちゃけ次に勝てる自信はない。あいつは魔王の血を引く天才で、俺は普通の人間の凡人なんだ。勝ってる要素なんてない。だから、次は俺だけの力でも勝てるようになってないとな。

 

「なんでもない。今回は俺が勝ったから、リベンジするって意味だと思うぞ」

 

「勝ったというには、仲良く倒れていたがな。ヴァーリが腕一本動いていたら死んでいたのはお前だぞ?」

 

「うっ……で、でも勝ったし……」

 

「意識を無くしたのはお前が早いから、勝利とは言い難いな」

 

き、厳しいです……智代さん。せっかく勝ったのに少しくらいは褒めてくれても「ただ……」ん?

 

「ま、まぁ、なんだ。相手は歴代最強の白龍皇で、こちらは歴代最弱の赤龍帝だ。圧倒的劣勢の状況から相討ちにまで持って行ったことは……その………褒めてやらなくも……ない、ぞ?」

 

ぷいっと視線をそらしつつ、少しだけどもりながら、智代は恥ずかしそうに言った。

 

うん、なんというか……可愛い。

 

だから、少しだけからかいたくなってしまった。

 

「なぁ、智代」

 

「な、なんだ」

 

「デートの約束だけど、どうする?」

 

『な⁉︎』

 

キス直後にされたデートの約束の事を言うと、全員が驚愕の声をあげ、部長達が何故かボロボロのアザゼルの方を見ると、アザゼルは必死に首を横に振っていた。

 

「智代?」

 

「イッセー。お前というやつは何でこのタイミングで……」

 

焦ったような様子で言う智代の肩に部長と朱乃さんが手をおく。

 

「智代。次の休日空いているかしら?いえ、空いているわよね」

 

「その日にデートの準備をしましょう。もちろん、私たちがお手伝いしますので」

 

「え、遠慮ーー」

 

「しなくていいわ」

 

「お構いなく」

 

「は、はい……」

 

有無を言わせず、部長と朱乃さんは智代に首を縦に振らせていた。あれだけ頑固な智代が嘘と思うくらいに素直だった……あ、睨まれた。

 

 


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