幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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覚醒のLOVEパワー

ドォンッ!ドォンッ!ドゴォンッ!

 

赤と白がぶつかり合う度、空気が震える。

 

今まさに俺の目の前で二天龍が激突していた。

 

まさかイッセーがブチ切れて禁手に至るとは………これは色々と予想外の出来事だ。

 

「智代。わからないって顔してるわね」

 

「リアス部長………はっきり言って、イッセーが何故あそこまで激昂しているのか、私にはわからない。ヴァーリのアレはどう考えても、ただの挑発だろう」

 

事実、あの瞬間のヴァーリに殺気は微塵もなかった。イッセーには教えてなかったが、あいつが俺を口説いた事も関係しているし、殺す気なんてさらさらないだろう。

 

それはイッセーも気づいたはずだ。なのに何故?

 

「はぁ………智代もイッセーも、驚くぐらい自分に鈍感ね。だからこそ、お節介を焼きたくなってしまうのだけれど」

 

額に手を当てて、リアス部長は溜息を吐いた。

 

なんというか、その反応は困った奴だと言わんばかりに呆れているように見える。

 

「智代さん。イッセーさんは智代さんの事を本当に大切に想われているから、あんなに怒っているんだと、私は思います。イッセーさんは、本当に優しい方ですから」

 

「………アーシア先輩の言うとおりです。イッセー先輩は冗談とか関係なく、『殺す』と口にしたことに対して、怒っているんだと思います」

 

そういうものか。

 

ただ、あれだな。大切に想われているということに対しては少しだけ嬉しい気はしなくもない。

 

少しだけだぞ?少しだけだからな!

 

しかし、確かに俺もイッセーが殺された時とか、ヴァーリが変なこと抜かした時はあんな感じだったのかな?面と向かって殺すとか言ったのはあれ以来だな。

 

「ふむ。ありがとう、リアス部長、アーシア、小猫。なんとなくだが……わかったような気がする」

 

「そう。じゃあ、そうと決まれば、早速行動ね」

 

「………は?」

 

「は?じゃないわよ。イッセーの気持ちがわかったのでしょう?なら、イッセーの応援をしなくちゃいけないじゃない。今は互角ではあるけれど、イッセーはまだ禁手になったばかり。つまり、蛹から帰った蝶のようなものよ。一時的に張り合っても、いずれボロが出てしまうわ。もしそうなった時にイッセーを立ち上がらせることが出来るのは智代。貴女だけなんだから」

 

「そ、そうか?別に他の人でも……」

 

「そんな事ないわ、智代さん!」

 

「うわっ⁉︎」

 

何時の間にか隣にはイリナが⁉︎

 

今の今まで全く話してなかったからいない者になってた………とは口が裂けても言えんな、うん。

 

「悔しいけれど、イッセーくんを奮い立たせられるのは貴女しかいないの。もしもの時はお願い。イッセーくんに力をあげて」

 

「私にも詳しい事はわからないが、イリナの言う通りだと思うぞ。イッセーは、君を特別視している節があるからな」

 

特別視って大袈裟な。大切な幼馴染み的な意味合いだろうに。

 

まぁ、特別といえば特別ではあるけれど。大袈裟に言うほどのことでもない。

 

「怒りや殺意、憎悪の感情で動いても良い方向には働かない。それを教えてくれたのはイッセーくんや智代さんだからね。だから、智代さんもイッセーくんにそれを思い出させてあげてほしいな」

 

「智代ちゃん。貴女にしか出来ないことなのです。私達ではどうしようもできません。ですから、私達を代表して、お願いできませんか?」

 

祐斗に朱乃先輩まで………。皆寄ってたかってどうしたんだろうか。

 

ギャスパーはって?

 

ははは、ギャスパーは禁手の威圧感に当てられて気絶している。まぁ、メンタル豆腐より柔らかいし、しょうがないね。

 

ドォォォォンッ!

 

その時、イッセーがヴァーリに吹き飛ばされ、校舎に思いっきり突っ込んだ。

 

その瞬間に全員が何を言うでもなく、ただ『行け』と言わんばかりに俺を見てきた。

 

ああもう!行けばいいんでしょ、行けば!

 

俺は言われるがまま、イッセーの元へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつ凄えじゃねえか。絵に描いたような凡人だったが………才能の塊のヴァーリと互角にやりあってやがる」

 

イッセーとヴァーリのやり取りを見て、カラカラとアザゼルは嗤う。

 

思想も生い立ちも境遇も何もかも違っている二人ではあるが、その二人は現在互角以上の闘いを繰り広げている。その光景は初めて見るものではないが、アザゼルはそれがとても面白いと感じた。

 

「ですが、無理でしょう。いくら一時的に張り合っても、ベースに差がありすぎる。負けるのは時間の問題です」

 

「ハッ!流石は血統至上主義の悪魔社会に生きてきた血族は言うことが違うねぇ。お前さん、才能を持っていない奴は持ってる奴に絶対に勝てないって思ってるタチだろ?」

 

「……それが何か?」

 

「違うね。寧ろ、その逆だ。才能を持ってない奴の方が何時だって死ぬ気でやりあってる分、結果的に良い方向に転がるもんさ。互角ともなると尚更な。こりゃ、赤と白の緒戦は赤の勝ちかもな」

 

そう言うとアザゼルは軽く伸びをして、仕切り直すように短剣を構え、力のある言葉を吐いた。

 

禁手化(バランス・ブレイク)……!」

 

一瞬の閃光が辺りを包み込み、それが止んだ後、現れたのは黄金の全身鎧を身につけたアザゼルの姿だった。

 

「さ。俺らも続きをやろうぜ。今は全員あっちに意識向いてるしよ。邪魔は入んねえよ」

 

「ッ⁉︎それは!」

 

「ちょいと『白い龍』と他のドラゴン系神器を研究して作り出した俺の傑作品の一つだ。『堕天龍の閃光槍』の疑似的な禁手状態『堕天龍の(ダウン・フォール・ドラゴン)(アナザー・アーマー)』だ」

 

「………力を有したドラゴンをベースにしましたね?」

 

「ああ、ちょっくら『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』ファーブニルをこの人工神器に封じてな。二天龍の神器を模したのさ。今のところは成功ってとこか」

 

「……神器の研究はそこまで進んではいなかったはずです……」

 

「その様子じゃ、俺の組織を裏切った輩が神器研究を幾らか持ち出したみたいだが、無駄だ。真理に近い部分は俺とシェムハザしかしらない」

 

舌打ちするカテレア。

 

カテレアはその体に青黒いオーラを纏い、猛スピードで飛び出す。

 

「私は偉大なる真のレヴィアタンの血を引く者!カテレア・レヴィアタン!貴方ごとき忌々しい堕天使にーー」

 

カテレアがアザゼルと交差しようとしたその瞬間、カテレアに氷柱が降り注ぐ。

 

「一体何がーー」

 

「ふぅ。威力を抑えればある程度コントロールは効くな。おい、アザゼル。さっさと殺ってくれ。こっちは今猛烈にピンチなんだ」

 

声のした方にいたのは手をこちらにかざしている智代。

 

額に汗を滲ませつつ、やや焦った表情でそういった。

 

「ったく、横槍入れやがって………まぁ、和平に割り込んでくるようなテロリストだ。卑怯だ、なんて言わねえよな」

 

アザゼルとしては、正面から打ち倒すつもりだった。

 

かといって、横槍を入れられたので、相手が態勢を立て直すまで待つほどに正義漢というわけでもない。一組織をまとめる人間であるのなら、倒せるうちに倒しておくことに越したことはない、とそう判断した。

 

アザゼルは呆気にとられていたカテレアめがけて光の槍を投げると、カテレアは悲鳴をあげる間も無く、塵と化した。悪魔は光の大ダメージを受ければ、跡形もなく消滅するのだ。

 

閃光とともにアザゼルの鎧は解除されると、その手に宝玉を持ったまま、智代の元へと向かう。

 

「なんだ、大神智代」

 

「イッセーがピンチなんだ」

 

「確かに危険だな……で、俺にどうしろと?まさかとは思うが、あれを止めろなんて言うつもりはないよな?」

 

冗談交じりに言うアザゼルに智代も首を横に振る。

 

そんな事は断じてあり得ない。百歩譲って、仕方なければ、智代は自分が止めに行くつもりこそあるが、アザゼルに頼むつもりなど毛頭ない。

 

アザゼルも智代にその気がないことに気がつくと、だったらなんだ、と問いかけた。

 

「リアス部長達は私にしか出来ない事があると言われて送り出されたのだが、皆目見当もつかない。不本意だが、何をすればイッセーに貢献できるか、お前ならわかるのではないか?」

 

「ああ?んな事分かるわけ………」

 

そこでアザゼルは止まった。

 

(待てよ。そういや、赤龍帝とこいつは…………成る程。そういう事か)

 

「アザゼル?」

 

「ああ、すまんな。今、思い出した事があったんだよ。お前さんにしか出来ない事」

 

「本当か⁉︎一体何をすればいい‼︎イッセーが勝てるなら、私が出来る範囲で何でもするぞ!」

 

「良い覚悟だな。なら、今すぐ赤龍帝の所に行って……………してこい」

 

耳打ちされた言葉に智代は身を強張らせ、アザゼルを見やる。

 

「………正気か?そんな事をして意味があるのか?」

 

「あるさ。お前さん、自分の立ち位置考えてみろよ。何にもないわけねえだろ」

 

アザゼルにそう言われ、智代はミカエルに言われたことを思い出した。

 

大神という特殊な力を持った人間達の中でも、その能力全てを持ったバグのような存在。

 

ならば、或いは。

 

智代はそう解釈をした。

 

「感謝する、アザゼル!行ってくる!」

 

「おう、行ってこい」

 

意気揚々と走り出した智代の背中を見つめ、アザゼルは内心で爆笑する。

 

(絶対に勘違いしてやがるぜ、あいつ)

 

何の疑問も持たずに実行しに行こうとしたのを見て、アザゼルは久々に面白い弄りがいのある人間を見つけたと大喜びで、リアス達のいる場所へと帰っていった。

 

おそらく、その面白い状況を待っているであろうリアス達へ教える為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ……」

 

ヴァーリに殴り飛ばされ、校舎へと吹き飛ばされた俺は盛大に吐血する。

 

最初は互角以上に闘えていた。

 

けど、それもすぐにヴァーリの奴が俺の動きに慣れ、こちらか防戦一方になり、このザマだった。

 

「ははは!どうした、兵藤一誠!俺を止めなければ、彼女が死ぬぞ!」

 

両手を大きく広げて、ヴァーリは高らかに笑う。

 

んな事言われなくてもわかってる!何が何でもてめえだけは殺さないといけないってことくらいはな!

 

震える足を無理矢理立たせ、ヴァーリへ向き直る。

 

身体は限界に近い。今までならこれで解除されていた鎧も、完全に至ったお蔭か、解除されずにいる。とはいえ、解かれるのも時間の問題か。

 

『どうする、相棒?このままだと確実に死ぬが』

 

それもそうだな。

 

けどな、俺は絶対にあいつを生かしておくわけにはいかない。智代を狙う奴は誰だろうが、全力でぶちのめす!

 

『………これもまた一興か。まさか、このような展開を二度も味わうことになるとはな。儘ならないものだ』

 

せめて、ヴァーリを戦闘不能に追い込む!その後は、残念だけど、他の人に任せよう。多分、その時に俺は死んでるだろうからな。

 

そうして勢い良く飛び出そうとした時、俺の元へと駆け寄ってくる人物が………智代⁉︎

 

「智代⁉︎なんでここに⁉︎」

 

「話は後だ。取り敢えず、マスクを外せ」

 

「なんで「いいから早く」わ、わかった」

 

智代に言われるがまま、マスクを収納する。

 

一体どうしたんだ?いや、それよりもここは危険だ。

 

「イッセー。私としても、こういう事は初めてだ。正直、緊張するが、状況が状況だ。四の五の言っている場合じゃない。不本意だろうが、これしかない。だから、先に謝る。許せ、イッセー」

 

「なんのことーー」

 

智代に疑問を投げかけようとしたとき、不意に言葉を強制的に遮られた。

 

いや、遮られたんじゃない。塞がれたんだ。目の前にいる智代に。

 

時間にして数秒。けれど、それがとても長く感じた。

 

「と、智代……?」

 

「これが終わったら、暇な日にでもデートにいくぞ。だから、その前にあの戦闘狂をぶちのめせ」

 

智代は矢継ぎ早にそうだけいうと、その場を走り去っていった。微妙に顔も赤かったし、おそらく恥ずかしかったんだろう。

 

ていうか…………え?キス……されたのか?俺?

 

しかもデートの約束まで?誰に?智代に?

 

俺の脳味噌が情報を処理しきれずにパニックを起こす。

 

え?なんで?どうして?

 

意味がわからない。頭が混乱する。

 

「………成る程、これが嫉妬という感情か。思いの外、苛立つものだな!」

 

そう言ってヴァーリは無数の魔力弾を放ってきた。

 

避けなければ無事では済まないし、さっきよりも威力が高いから、全部当たれば死ぬかもしれない………なのに。

 

一瞬だけ、こう思った。

 

負ける気が全くしない。

 

飛んできた魔力弾を俺は取り出したアスカロンで無造作に薙ぎ払った。

 

魔力弾は全て切断され、それどころかアスカロンの纏った魔力が斬撃となって、周囲を切り裂いた。

 

「何⁉︎」

 

ヴァーリが驚くが、俺も驚いている。

 

未だかつてないほどに、俺は力を漲らせていた。

 

さっきまで死に体だったのにだ。

 

「ヴァーリ」

 

俺は先程と違い、冷静に憎たらしい相手の名を告げる。

 

「この勝負。俺の勝ちだ」

 

淡々と、俺は自分よりも強かったはずのライバルにそう告げるのだった。

 

 


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