幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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久しぶりの投稿と原作四巻に突入です!

前回に続いて今回もかなり原作とはかけ離れたものになるだろうと思いますので、皆様どうぞお楽しみに!


停止教室のヴァンパイア
魔王来訪


 

「よー、悪魔くん。今日も悪いな」

 

コカビエルとの死闘を終えて、もう二週間。

 

ドラゴンの気を散らす行為も半日に一回のペースに落ち着き始めた頃、少し前から俺は悪魔の仕事を再開していた。

 

流石に身体半分ドラゴンのまま、悪魔の仕事をするわけにはいかないので、ドラゴンの気を散らしてすぐに悪魔の仕事をするようにしている。

 

そして今回も同じようにしてきたのだが、俺は呼び出してきた相手を見て溜息を吐いた。

 

俺を呼び出したのは黒髪の悪そうな風貌の男。見た目から察するに年齢は二十代から三十代くらいだ。

 

まぁ、日本人じゃないし、実年齢はわからないが、しょっちゅう浴衣着てるんだよな。この人。

 

しかし、まあ。相当のイケメンなんだよな。

 

木場やライザーとは違ったタイプのダンディーなワル系。マフィアとかにいそうな風貌だ。

 

で、俺はこの人に四日連続で召喚された。

 

今は、とあるマンションの彼の自室にお邪魔している。

 

決まって指名は俺だ。

 

どういう理由かさっぱりだけど、俺は気に入られたらしい。毎日毎日大したお願いでもないのに呼び出してくる。

 

昨日はパンのパシリ、前は一緒に釣り、その前は心霊スポット巡り。

 

もう面倒くさいことこの上ない。つーか、悪魔を呼び出すような事じゃない。

 

とはいえ、俺たち悪魔は願いを叶えてナンボの稼業。文句も言ってられないし、部長に顔向け出来ない。

 

変人軍団の中で森沢さんに続いて比較的マトモな方だから、なんとかお得意様にしておかないと。

 

「悪魔くん、今日はゲームでもやらないか?昼間にレースゲームを買ったんだ。相手がいなくて寂しくてな」

 

「失礼ですが、ご友人は?」

 

「こっちには俺一人しかきてないんだ。連れも今は用事で外してる」

 

「そうですか。じゃあ、喜んで」

 

またそんな願いか。と思いつつも、文句は言えない。

 

この人は契約面では非常に良いお客で、こちらの要求以上のものをくれたりする。

 

高級そうな絵画や宝石、果ては金塊まで、甥っ子にお小遣いをあげるかのごとく、ぽんぽん渡してくる。その事からこの人は相当金に困らず、遊び呆けられる環境にいる方だと推測出来る。羨ましい限りだ。

 

「よし、ゲームもセットできた。日本って国は時間潰しのアイテムが多くていいな。悪くないところだ。ほら、コントローラー」

 

「あ、どうも。俺、この手のゲームに強いですよ?よく幼馴染とやってましたから」

 

因みに勝率は三割弱。

 

智代は勉強も運動も出来ればゲームも強い。多分、反応速度の問題なんだろうな。格ゲーやシューティングゲームとかだと歯が立たない事はないが、殆ど勝てない。

 

「そりゃ楽しみだ」

 

智代によって培われしゲームセンスを見せてやるぜ!

 

と、意気込んだものの、開始して数レースしていくうちに少し雲行きが怪しくなってきた。

 

「一通り覚えたぜ。そろそろ抜きにかかるか」

 

なんて、相手がほざいたと思ったら、本当にレースが拮抗し始めた。

 

抜いたり抜かれたりの激戦。辛くも制したのは俺だった。

 

危なかった。まさか智代以外の奴に負けそうになるなんて。

 

「ちっ。勝てると思ったんだがなぁ………次だ次」

 

「良いですよ。俺は負ける気ありませんけどね」

 

「大した自信だな。じゃあ今日は一晩レースと洒落込むか、なあ、悪魔くんーーーーいや、赤龍帝」

 

「そうですね………はい?」

 

え?い、いまなんて言った。

 

男の言葉を聞くなり、俺の全身に冷たいものが走った。

 

何処と無く、普通じゃない感じはしていた。なんていうか、カタギじゃないみたいな。

 

だけど、その言葉を発すると言うことはこの人………人間じゃないのか?

 

「……あんた、誰だ?」

 

「俺か?俺は堕天使どもの頭をやってる。名前はアザゼルってんだ。よろしくな、赤龍帝の兵藤一誠」

 

「へぇ〜」

 

『WIN!』

 

画面に勝利の文字が表示される。勝ったのはーーーー俺だった。

 

驚いた事には驚いたし、今も開いた口が塞がらない状態だ。

 

だが、それとこれとは話が別。

 

意識はゲームに残したまま、リアクションも取りつつ、手はひたすら勝利のために動いていた。これもひとえに智代とのアイスを賭けた賭けゲームの賜物だ。

 

それはそうと………アザゼル?堕天使どもの頭……⁉︎

 

「あ、ああああああああ⁉︎」

 

「リアクション遅えな。ったく、一瞬俺の方がやらかしたのかと思っちまっただろ」

 

呆れ顔でそういう男の背中には黒い漆黒の翼が生えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冗談じゃないわ」

 

そう言って部長は憤慨していた。

 

「確かに悪魔、天使、堕天使の三すくみのトップ会談が執り行われるとはいえ、突然堕天使の総督が何の連絡もなしに私の縄張りで営業妨害なんて……!」

 

先日、この街で起きた事件がキッカケで悪魔、天使、堕天使の三すくみの関係に多少なりと影響を及ぼし、結果としてこの町に三すくみのトップが集まり、会談が開かれることになった。

 

俺、智代、匙、木場、そして新たな眷属となったゼノヴィアはその場に居合わせ、結果的には解決に努めることになった事で、その会談に参加しなければいけなくなった。

 

その過程で俺はそこに様々な意図が交錯していることを知った。

 

二度と過ちを繰り返さないためにその礎となろうとした者。聖剣に憑かれ、その悪意を周囲にばら撒き続けた者。いるはずのないもう一人の生き残りで、演技を続け復讐を虎視眈々と待ち続けた者。

 

彼らがこの地を選んだのは偶然か、それとも俺のドラゴンの力が呼び寄せたのかはわからない。

 

もし、ドラゴンの力によるものならば、俺は今後色々な出来事を呼び寄せてしまう可能性がある。

 

だから、一刻も早く、強くならないといけないわけで。今日も今日で結構な量のトレーニングはこなしてきた。

 

「私の可愛い下僕に手を出そうなんて、万死に値するわ!アザゼルは神器に強い興味を持つと聞くから、きっとイッセーが赤龍帝の籠手を持っているから接触してきたのね………もしかしたら、智代の永遠の氷姫の方も何かしらするつもりだったのかもしれないわ。でも、大丈夫よ。貴方達二人は私達が全身全霊をかけて守るから」

 

優しい微笑みを浮かべて部長は言う。

 

部長は下僕の眷属悪魔を大切に可愛がる上級悪魔では珍しいタイプのお方だ。自分の所有物を勝手に触られたり、傷つけられたりするのを酷く嫌う。

 

特に部長は俺と智代に関して、過保護と言えるレベルで面倒を見てくれる。嬉しいことには嬉しいが、少しだけ恥ずかしかったり、情けなかったりする。

 

「……やっぱ、俺や智代の神器をアザゼルは狙ってるのかな?」

 

だとしたら、何が何でも智代だけは守り抜いてみせる。俺がどうなろうと知ったこっちゃないが、智代が何かされるのだけは看過できない。

 

「確かにアザゼルは神器に造詣が深いと聞くね。そして、有能な神器所有者を集めているとも聞く。でも大丈夫だよ」

 

俺のぽつりと呟いた不安を聞き取ったのか、木場は何だか妙な熱意のこもった瞳でこちらを見てきた。

 

「僕が二人を守るからね」

 

………なんか、危ない匂いがするのは何故だろう。

 

「いや、あの、嬉しいんだけどさ………なんていうか、真顔でそんな事を言われても反応に困るというか……」

 

「真顔で言うに決まってるじゃないか。キミや智代さんは僕を率先して助けてくれた。二人が無茶を承知で働きかけてくれていなければ、僕はここにいなかったかもしれない。いや、いなかった。そんな僕の恩人であり、仲間である二人を助けないで、グレモリーの『騎士』は名乗れないさ」

 

うん。それはわかるし、ものすごいかっこいいことを言ってるのはわかる。

 

ただ、お前の口調はどう考えても俺を落としにきてるようにしか聞こえんのだが。それは君のお得意さんにしてあげようね?きっと狂喜乱舞すると思うよ!

 

「問題ないよ。僕は君達の為なら命を投げ打つ覚悟すら出来ている。それにイッセーくんの赤龍帝の籠手や智代さんの永遠の氷姫が合わさればどんな困難だろうと克服できる気がするんだ。……ふふ、少し前まではこんな事を口にするタイプじゃなかったんだけどね。君達を見ていると心構えも変わってしまう。けれど、それが嫌じゃないんだ。何故だろうね?」

 

「やめろ……ち、近寄るな。お前は今来る世界を間違えてるんだっ!それは気になる女子に向かって言っとけ!」

 

お前は乙女ゲームのキャラクターか!

 

ただでさえ、理由が全くわからないが俺と木場のBL疑惑が色々なところから浮上しているんだ。これ以上、俺はお前とBL展開なんぞなりたくない!

 

「そ、そんな……」

 

露骨に落ち込むなっ!何かいたたまれなくなるだろうっ⁉︎

 

「しかし、どうしたものかしら……あちらの動きがわからない以上、こちらも動きづらいわ。相手は堕天使の総督。下手に接することも出来ないわね」

 

「……おそらく……あちらにこれといった思惑は……ないはず……」

 

ソファーからよろよろと起き上がったのは今まで眠っていた智代だった。

 

あれからそれなりに経つというのに智代の体調は未だ回復の兆しが見えない。

 

ドラゴンの力を散らしているときは何故か智代の体調は一時的に回復するものの、それもものの一時間程度で終わり、その後は大体智代は寝ている。

 

その為、授業が終わればすぐにドラゴンの気を散らすようにしている。俺としてもいきなり授業にドラゴンに戻らないようになるから良いといえば良いんだが………最近睡眠時間が異様に長い。本当に智代は大丈夫なのだろうか?

 

もし、アザゼルと接触できる機会がもう一度あるのだとしたら、一度智代を診てもらうのも一つの手かもしれない。俺達を手伝う体ではあるものの、智代はまたどの派閥にも属していないという理屈は通るはずだ。悪魔側の人間だから。なんてならないことを祈りたい。

 

「彼女の言う通りだ。アザゼルは昔から、ああいう男だよ、リアス」

 

突然、この場の誰でもない声が聞こえる。全員が声の下方向に視線を移してみるとーーーーそこには紅髪の男性がにこやかに微笑んでいた。

 

はて、見た事のない顔だ。

 

俺もアーシアもキョトンとし、新顔のゼノヴィアも首をかしげる中、朱乃さん達はその場で跪いた。

 

「お、お、お兄様」

 

部長は驚いた様子でそういった。

 

お兄様?……って事はこの人が魔王様かっ⁉︎

 

俺も急いで朱乃さん達と同じように跪く。俺の行動を見て、アーシアも真似をする。

 

「先日のコカビエルのようにはならないさ。ただ、今回みたいな悪戯はするだろうけどね。しかし、総督殿は予定よりも早い来日だな」

 

「イッセーにちょっかいを出すためだけに早く来たのだと思う………傍迷惑な堕天使だ」

 

「大丈夫なのか?寝てなくても?」

 

「……多少はな。この部屋にいると幾分かはマシなんだ。それに魔王がいるとなるとそのまま寝ているというのもな」

 

そうは言うけど、やっぱり顔色は良くない。智代は昔から無理する癖があるから、目を離さないようにしないと。

 

「気にしないでくれたまえ。今日はプライベートで来ているから、くずしてくれて構わないよ」

 

手を上げて、俺たちにかしこまらないでいいと促してくれる。全員がそれに従い、立ち上がる。

 

「我が妹よ。相変わらずこの部屋は殺風景だ。年頃の娘達が集まるにしても魔法陣だらけというのはどうだろうか」

 

「お兄様、どうしてここに?」

 

「何を言っているんだい。授業参観が近いのだろう?私も兄として参加しようと思ってね。是非とも我が妹が勉学に励む姿を間近で見たいものだ」

 

そういえばもうすぐこの学園の授業参観があったな。去年と同じように俺の両親も有給取って乗り込んでくるって言ってたな。

 

もちろん、目的は俺ではなく智代とアーシア。去年は智代だけだったが、今年はアーシアもいるってんでかなり張り切っている。因みに俺は蚊帳の外。一応息子なんですけどね。

 

「グ、グレイフィア?お兄様に伝えたのは」

 

「はい。学園からの報告はグレモリー眷属のスケジュールを任されている私の元へ届きます。サーゼクス様の『女王』でもありますので主へ報告も致しました」

 

「報告を受けた私は魔王職が激務であろうと、休暇を入れてでも妹の授業参観に参加したかったのだよ。安心しなさい。父上もお越しになられる」

 

「そ、そうではありません!お兄様は魔王なのですよ?仕事をほっぽり出してくるなんて!魔王が一悪魔を特別視されてはいけませんわ!」

 

部長としてはいくら家族だからとはいえ、特別にしてもらうのは良しと出来ないらしい。それじゃ他の悪魔に示しがつかないっていうのもあるんだろうな。

 

でも、魔王様は首を横に振る。

 

「いやいや、これは仕事でもあるんだよ、リアス。実は三竦みの会談をこの学園で執り行おうと思っていてね。会場の下見に来たのだよ」

 

な、な、なにぃぃぃ⁉︎

 

まじですか⁉︎

 

「ーーーっ!ここで?本当に?」

 

「ああ。事が起きたのは別の場所だが、アザゼルの報告書ではコカビエルはこの学園で事を起こそうと考えていたらしい。私の妹であるおまえと、伝説の赤龍帝にその幼馴染の神滅具使い、聖魔剣使い、聖剣デュランダル使い、魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹が所属し、状況次第ではこの地にコカビエルと白龍皇が襲来したかもしれない。偶然にしては少々出来過ぎだ。様々な力が入り混じり、うねりとなっているのだろう。そのうねりを加速度的に増しているのが兵藤一誠くん。赤龍帝だとは思うのだが………ただ、彼女もーー大神智代も気になる」

 

魔王様の視線が俺と智代へと移る。

 

「まぁ、その事についてはおいおい話す機会があるだろう。これ以上難しい話をここでしてしまっても仕方がない。うーむ、しかし、人間界に来たとはいえ、夜中だ。宿泊施設は空いているのだろうか?」

 

こんな時間に空いてるところはあったっけ?

 

あいにく、この駒王は都会ってわけじゃないから、空いてるところはあっても探すのに時間がかかるかもしれないな…………あ、そうだ!

 

俺は手を挙げて魔王様に提案した。

 

「もし、宜しければ、俺の家に来ます?」

 

 

 


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