幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

23 / 60
レーティングゲーム〜中盤戦〜

 

ライザーの『兵士』と『戦車』、そして『女王』を倒し、フェニックスの涙という某RPGでいうところのエリ○サー的な回復アイテムを強奪に成功した。俺達は木場の待つ運動場へ移動していた。

 

序盤戦は快勝だ。俺を除いて大した疲労もせずに敵の戦力を五人も削った。しかもそのうち一人は『女王』だ。数的有利こそ相手の方がまだ上であるが、相手の戦力を大幅に削ったのは確かだ。それに此方はフェニックスの涙も手に入れた。これさえあればイッセーは実質四十秒禁手の状態で戦える。悪くても三十秒くらいはいけるだろう。それだけ戦えれば上等だ。それまでにライザーを倒せる。

 

ただ一つ問題があるとすれば俺自身の疲労が想像以上である事くらいか。

 

『兵士』の三人はウォーミングアップくらいの感覚で倒せたのだが、『女王』に関しては一撃でリタイアクラスのダメージを反応速度を超える速さで倒しつつ、消える前にフェニックスの涙を回収するというハードな作戦だったので、イッセーに譲渡してもらい、瞬殺は成功したのだが、やはり人間のこの身体では四倍程度とはいえ急激な倍化はかなりの負担があるらしい。となると高めるのは俺自身の力ではなく、神器の力を高めるという方法が妥当だな。相手を攻撃した反動で骨が折れかねない。

 

取り敢えず疲労はイッセーには隠しておく。あいつの事だから、俺の身体が少しでもヤバいとなると迷うことなくフェニックスの涙を使いかねない。

 

『ライザー・フェニックス様の『兵士』三名、リタイア!』

 

アナウンスが響き渡る。良し、この辺も原作通りのようだ。違う点はあくまで俺があの爆発を防いだ事で助かった小猫と倒した『女王』だけ。数的優位も無くなったし原作と違って此方が圧倒的に有利だ。

 

このまま行けばまず負けないだろうが、念には念だ。何もかもが上手く行くとは限らない。理想的なのは全員でライザーフルボッコだな。死ぬまで殺しまくる。

 

運動場へ走る俺、イッセー、小猫。打ち合わせ通りに体育館から死角になっている体育用具室の物陰へと入る。其処には先に来ていたであろう祐斗がいた。

 

「お疲れ」

 

「ああ、お疲れ。そちらは順調のようだな」

 

「まあね。そっちも想像以上の出来だね。『女王』まで倒してしまうなんて」

 

「イッセーと小猫、それに朱乃先輩がいたから出来た芸当だ。一人なら今頃戦闘の真っ最中だろう」

 

一応必殺技もある事にはあるし、ライザー以外なら倒せるとは思うが、無傷で、とは行くはずがない。多かれ少なかれダメージはもらうはずだから。それを疲労で済ませられたのはかなり大きい。

 

「ところでどうだ?相手の様子は?」

 

「なんとか見回りの『兵士』だけを集めて一網打尽にしたんだけど、ここを任せられているボスが冷静でね、まだ挑発に乗ってこないんだ。というよりも『兵士』を集めて僕の攻撃を見てたのかな。犠牲が好きな戦法のようだね、ライザー・フェニックスは。自分が不死身でかつ、僕等よりも下僕の人数が多いから出来ることなんだろうけど」

 

「まあ、そんな大切な仲間を捨て駒みたいに使う戦法なんかに俺達はやられねえさ。だろ?」

 

不敵に笑ってそう言うイッセー。言葉の中に僅かだが怒気を感じられるな。まあ、ライザーの戦法はイッセーがかなり嫌うものだからな。

 

「ここを仕切っているのは『騎士』、『戦車』、『僧侶』が一名ずつ。合計三名だよ」

 

「……かなり厳重ですね。当然といえば当然ですけど」

 

「ただでさえ、体育館を消し飛ばされたわけだから、こちらに力も集中する、か」

 

「目ぼしいルートが二つから一つになったわけだからな。激突は避けられない。空から行けるのなら話は別だが…………待てよ」

 

そうだ。空から行けば良いじゃないか。地上での激突は避けられないのなら、地上組は俺、祐斗、小猫の三人で相手をして、イッセーは空からライザーの元に行かせる。こうすれば体力の消費は移動以外無いし、おそらく既に向かっている部長とアーシア、朱乃先輩と合流し、ライザーと四対一で戦える。幸いにもイッセーが前に出て戦えば最強の前衛と最高の後衛でわかれて戦えるし、イッセーが譲渡に回るのもアリだ………けど、こらならイッセーは前衛で戦った方がいいな。力を高めるまでに誰かが欠けては話にならん。

 

「イッセー。今からお前を新校舎に送る」

 

「新校舎に?どうやっ………と、智代さん?も、もしかして思いますけど、蹴り飛ばす気じゃ………」

 

「何を言う。それではダメージがあるだろう。だから私の足を掴め、蹴り投げる」

 

「蹴り投げる⁉︎そんな日本語ありましたっけ⁉︎」

 

「さあ?ともかく掴め。奇襲をかけるなら今しか無いのだ」

 

あちらが出てきてからでは遅い。蹴り投げたイッセーを追いかけるのにジャンプ程度では届かない高さまで上げれば成功だが、出てこられては叩き落とされかねない。

 

「……はぁ、わかった。智代の無茶振りは今に始まった事じゃないし、勝つためにやらなきゃいけないんだよな?」

 

「当たり前だ。この状況で伊達や酔狂でそんな事を言うものか」

 

「だよな」

 

どこか諦めたような表情で言うイッセーは俺の足を掴んだ。

 

うぅむ、自分で言っておいてなんだがイッセーに足をつかまれると何だか変な感じがするな。

 

「智代?」

 

「何でもない。イッセー、一、二、三でイッセーも跳んでくれ。その方が飛距離も大きいだろう」

 

「おう。ところでどうやって跳ぶ方向を決めればいいんだ?俺、まだ飛べないんだけど」

 

「………一、二の……」

 

「何で無視⁉︎ああくそ、跳ぶしかねえ!」

 

三で足を思いっきり振り抜いた。

 

するとイッセーはそれこそキラーンという単語が似合いそうな勢いで飛んで行った。あれなら一体何が飛んで行ったのか、ライザーの眷属に知る術はないだろう。

 

「ものは試しでしてみたが、案外行けるものだな」

 

「か、確証はなかったんだね」

 

「………意外にチャレンジャー」

 

祐斗も小猫も俺がその場の思いつきでやった事に表情を引きつらせていた。俺だって、その場の思いつきで行動することくらいある。比較的慎重派だが、時には味方の度肝すら抜くような大胆さも必要だしな。

 

「何、イッセーの事だ。ピンポイントでライザーの元に届いているに違いない」

 

「………イッセー先輩の事、信頼してるんですね」

 

「当たり前だ。イッセーは私の幼馴染みだ。あいつの事なら誰よりも知っている」

 

そう。なんでも知ってるぞ。アーシアがホームステイしに来た時に叔母さんがうっかり漏らした一言もな。

 

いや、思春期男子なんだからそういうものを持っていても仕方ないんだけどね。でもさ、あのジャンルはマズいよね。シチュエーションこそ幅広かったけどジャンルは全部幼馴染みの子だもん。それを見た瞬間、割とガチで貞操の危機を感じた。

 

そりゃその辺の塵芥どもにヤられるくらいならイッセーの方がいいけど、流石にまだそういう風には見えない……かな?

 

「その辺はともかくだ。私達も早いうちに合流したほうが良いだろう。さっさと片付けてしまおう」

 

こそこそしあって勝機を逃す訳にはいかないし、蹴り投げておいてなんだが、イッセーが大丈夫か少し心配だ。いや、イッセーなら大丈夫だけど不安がないわけではない。総力戦の袋叩きで倒すに限る。

 

「そろそろ腹の探り合いは飽きた。私の名前は大神智代だ。まとめて相手をしてやるからかかってこい」

 

運動場のど真ん中に出て、大声でそう言う。ライザーの眷属の中に挑発をして無視して静観を決め込もうなんて奴はいないだろう。もしそれでも無視するなら…………運動場を丸ごと凍り付けにするまでだ。ぶっ倒れるかもしれないが、ライザーとの戦いを邪魔されるよりは遥かにマシだ。それにこういう事は原作じゃ、あっちがしてるしな。

 

俺が大声で挑発して僅か数秒。甲冑を装備した女性が現れた。

 

「まさかそちらの眷属の中にもお前のような戦士がいたとはな。嬉しく思うぞ。私はライザー様の『騎士』カーラマインだ」

 

やはり出てきたか。後は残る『戦車』一人と『騎士』一人、『兵士』二人、僧侶二人だが…………

 

「まとめて相手をしてやる、か。いささか此方を嘗めすぎではないか?」

 

カーラマインの後方から仮面をつけた女性が現れた。確かこいつが『戦車』だったか。名前は忘れたが、今はいいだろう。

 

そこへさらにもう一人のドレスを着た少女が文句を言いながら現れ、その後ろには二人の獣人姉妹と思しき女子。その隣には背中に剣を背負った女性、そして最後に和服姿の少女。うむ、これで全員だな。

 

「全く大きく出ましたわね。このゲーム、私達の勝ちは初めから決まっているようなものですのに、それを同じ人数にしたくらいで早くも勝った気かしら。貴女、一体何を相手にしているのかお分かりになって?」

 

金髪ドリルのお嬢様…………あ、レイヴェルだ。

 

レイヴェル・フェニックス。ライザーの実妹にして、原作ヒロインの一人。

 

最初は高飛車な嫌なやつだったけど、イッセーに惚れてからはすごく可愛い奴になったんだっけ。小猫とは何時も仲が悪かったけどいざという時は仲良しだ。基本的に戦闘に参加しない。原作では割と珍しい戦闘に参加しないヒロインだったっけ。

 

「ああ。心が折れたら蘇生不能の欠陥不死属性を持った悪魔だろう?」

 

「馬鹿にしてますの?」

 

「それ以外に聞こえるというのなら、真性の馬鹿だな」

 

「なっ⁉︎人間の癖に‼︎貴女達、あの人間をすぐに黙らせなさい!」

 

……あっれぇー?おかしいな。レイヴェルの性格ってこんなに酷かったっけ?もう少しマシだったと思ったんだけど………

 

「あはは……智代さん結構毒舌だね……」

 

「戦いは冷静さを失った方が負けだ。だから少しだけ煽ってみた」

 

「………かなり殺気立ってますよ?」

 

「その方が好都合。敵意は完全に此方に向いた。二人には負担をかけてしまうが、少しだけ相手を任せても良いか?ほんの十秒で良い。十秒経てば思いっきりジャンプしろ」

 

十秒あれば詠唱出来る。出来としてはまだ不完全だが、ライザーの眷属相手なら威力は十分な筈だ。

 

「了解」

 

「………はい」

 

レイヴェルを除いて三対六。ほんの十秒とはいえ、祐斗や小猫には相当過酷だ。なるべく詠唱を早く終わらせないと。

 

祐斗は両手に創り出した魔剣で『騎士』二人と斬り合いを演じ、小猫は『兵士』二人と近接格闘戦を行っていた。そうなると結局こちらにも『戦車』と『僧侶』が一人ずつ来るわけか。

 

「連れは手一杯のようだな」

 

「私達を見下したその罪、その身をもって思い知らせます!」

 

「いや、身をもって思い知るのはそちらの方だ…………綴る。絶望の地よ 骨凍む空よ そなたの息吹を貸しておくれ 魂すらも凍えさえておくれ 」

 

宙に魔術文字を書き込みながら詠唱を始めた俺に二人は首をかしげる。当然だよな、何せこんな魔術は存在しないんだからな。

 

「魔術詠唱?」

 

「聞いたことのないものですが、隙だらけです!」

 

『僧侶』は炎を呼び起こし、此方へと放ってくる。当たれば火傷では済まない。

 

横に飛んで回避するが、其処には既に『戦車』が肉薄していた。マズい⁉︎

 

「はっ!」

 

両腕をクロスし、後方へ飛んで威力を殺すが骨がメキメキと悲鳴を上げ、骨にひびが入り、そしてそのまま五メートル後方へ飛ばされた。

 

「……生者必滅は世の摂理 神の定め給うた不可避の宿業 水が低きへと流るるが如く 全ての(ねつ)を奪っておくれ 時すらも凍てついたが如く 全てが停まった世界を見せておくれ」

 

それでも詠唱は止めない。一度中断してしまうと魔力が暴走してしまい、私以外のすべてを凍らせてしまう可能性もある。一度失敗した時はあまり魔力を込めていなかったから半径五メートル程度で済んだが、今は相当魔力を込めている以上、五メートル程度では済まない。

 

「まだ詠唱を止めないか。だが、どんな魔術とて詠唱を中断させれば意味はない!」

 

「このまま消し炭になりなさい!」

 

二人が仕掛けて来ようとした時、何かが横から飛来し、『僧侶』を弾き飛ばし、『戦車』に仕掛けた。

 

「くっ!グレモリーの『戦車』か!」

 

「………先輩はやらせません」

 

間に入ったのは小猫だった。よく見ると先程飛んできたものは『兵士』の片割れで時間稼ぎのために投げ飛ばしたみたいだ。ありがとう、小猫。これで詠唱が間に合った。

 

「我は理解を拒む者 絶対のみを求める者 誰にも壊れることもなく 壊す者すら存在しない永劫の美を、極点を見せておくれ !氷結地獄(クライオウクラズム)

 

私が詠唱を終える直前、祐斗と小猫が跳躍し、悪魔の羽を広げる。

 

「馬鹿な……これだけの威力が……!」

 

「これが神滅具の力……!」

 

それだけ言うとライザーの下僕達は私から発せられた大質量の冷気によって飲み込まれた。

 

「ライザー・フェニックス様の『兵士』二名、『騎士』二名、『戦車』一名、『僧侶』一名。リタイア」

 

………やはりフェニックスを倒すには火力……いや、冷力不足か。もっともライザーすらも屠れるなら祐斗や小猫のいるときには間違っても使えないがな。

 

「智代さん。凄いね、まさかこれだけの規模を凍りつかせるなんて」

 

「………恐ろしい一撃」

 

「いや………まだまだ……未完成の代物だ。今回は……使い勝手が良かっ……たがな」

 

「大丈夫かい?顔色が悪いよ?」

 

「問題ない。魔力を少々使い過ぎただけだ。少し休めば……なんとかなる。だから先にイッセー達の援護に向かってくれ」

 

「………わかったよ。智代さんが休んでいる間に僕達でライザー氏を倒す」

 

「………ですから、智代先輩はここでゆっくり休んでいて下さい」

 

「ああ」

 

俺は地面に大の字に寝転がり、新校舎へと向かう祐斗と小猫を見送った。

 

良かった。

 

かなり疲労の色は濃いものの、魔力の大幅な消費程度ではリタイアにはされないようだ。普通に動けるようになればすぐに援護に向かわなければ。今頃、イッセーとライザーは激闘を繰り広げている筈だ。さっきから空気がものすごく震動しているのがわかるし、空で激しい火花が散っている。

 

………呼吸も整ってきた。

 

「イッセー………今、そっちに行く」

 

俺はまだ覚束ない足取りを無視し、イッセーとライザーが激しくぶつかり合う新校舎へと向かった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。