幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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突然の訪問

 

アーシアが俺の家で暮らすようになって数日後、俺、智代、アーシアの三人で通学する事が早くも日課となりつつあったのだが、その途中であう駒王学園の男子達の殺意と嫉妬の入り混じった視線が凄まじい。

 

わからなくもない、というか大いに同意出来る。何せ金髪の美少女転校生に銀髪の美少女幼馴染みと登校してるなんてアニメや漫画の中でしか見られない光景だもんな。因みにその場合は知らず知らずのうちにフラグの一つや二つ立っているものだが、あくまでここは現実。そんな夢みたいな話、あるはずもない。

 

それ故に結果として無駄な恨みばかり買う羽目になっているのだが、生憎と襲われてはいない。まあ俺に関する噂の事を考えれば当然だ。そんな勇気ある奴はいないし、俺をボコった場合、我が最強の幼馴染みが報復に出るので、嫌われるのを怖れて、こうして遠巻きに殺意を飛ばされるだけに済んでいる。後、脳内では既に万を超えるだけ俺は殺されているだろう。流石に其処までは何も言わない。それくらいは許してあげないと俺に生き霊とか飛ばしてきそうだし。ていうか、今も二十体くらいついてそうで怖い。

 

「アーシアちゃーん!智代お姉様!おはよー!」

 

「おはよう、アーシアさん。智代お姉様。今日もお美しいですね」

 

教室に着くなり、坊主頭の男子ーーー松田と、眼鏡をかけた男子ーーー元浜が俺そっちのけでアーシアと智代に近づく。なんていうか、本当にわかりやすい奴らだ。変態コンビとして郊外に知れ渡るほど有名で、俺の悪友でもある。行動の九割はスケベな事なのだが、残る一割は的確な助言などをしてくれたりするのでいざ接してみればそう悪い奴らではない。愛すべき馬鹿といった所だろうか。

 

「おはようございます、松田さん、元浜さん」

 

「おはよう、松田、元浜。だが、お姉様はやめろといつも言っているだろう」

 

アーシアからは笑顔の挨拶を、智代からは溜め息交じりの挨拶をもらい、感無量の二人。

 

「やはり、これだね、元浜くん」

 

「ああ、そうだな、松田くん。美少女達からの『おはようございます』、今まで智代お姉様だけでも幸せだったというのに、二人になるとさらに生きる活力になるな」

 

……相変わらず、小さなところで幸せを噛みしめる奴らだな。

 

ていうか、松田は普通に運動部に入って、ひたむきに頑張っていればモテるだろうに。中学時代は様々な記録を塗り替えてきたスポーツ万能少年だって言ってたし、成績を残せば多少のエロさは目を瞑ってくれる彼女が出来てもおかしくはない。元浜だってさりげなくテストの学内順位は常に十位以内に入ってるわけだから、もっと知的さを感じさせる素振りを見せれば、今年の一年生くらいにはワンチャンあるかもしれない。

 

と、其処で不意に松田が俺にボディーブローを叩き込んできた。だが、人外はともかく人間相手なら打たれ強さには自信がある。いくらスポーツ万能少年とはいえ、普通の高校生の拳程度では大したダメージはない。

 

「何すんだ、ハゲ」

 

「ハハハ、聞いたよ、イッセーくん。何でも智代お姉様はおろかアーシアちゃんとまで毎日登校しているそうじゃないか」

 

「それがどうした?」

 

「おかしいじゃないか。何故に毎日同じ方向から朝登校してくるのかな?かな?」

 

お前は何処の竜宮さんだよ。斧とかデフォで持ってないよな?

 

ていうか、こいつとは登校時間被ってないのになんで知って………ああ、人伝ての噂か。

 

「あー、それはな。アーシアがうちにホームステイしてるからだよ。なあ、アーシア」

 

「はい、イッセーさんのお家でご厄介になっています」

 

『ッッ⁉︎』

 

ニコニコ顔で答えるアーシアを見て絶句する二人。最早言葉すら出ないらしい。

 

「嘘だ!」

 

全否定の松田。相変わらず竜宮さんネタを引っ張ったままだが、涙を流していた。

 

「バ、バカな………銀髪美少女が幼馴染みの上に金髪美少女と同棲だと?そんな事現実であり得るのか………?」

 

手をふるふると震わせながら、元浜はズレた眼鏡を直す。

 

ところがどっこいあり得るんだな、これが。現に俺はそうなってるわけだし。

 

「じゃ、じゃあ、朝、アーシアちゃんに起こされる事も⁉︎」

 

「何時もは俺の方が早く起きるけど、今日は起こされたな」

 

あっ、松田が吐血して地面に倒れた。

 

「ご飯をよそって貰ったりとか?」

 

今度は元浜が聞いてくる。

 

「アーシアは気が利く子だって、母さんも褒めていたな」

 

「そんな……照れますよ」

 

自分の頬に手を当てて、顔を赤くしているアーシア。

 

その光景に血涙を流しそうな勢いで俺を睨みつける元浜。まるで親の仇でも見つけたみたいな目だな。いや、そんな目見たことないけど、こうなんとなく。

 

そういえばこの二人と出会って間もない頃も同じ事があったっけ。あの時は松田は早退して三日間学校休んだし、元浜も体調を崩したとかなんとかで同じく三日間学校を休んだっけ。どんだけショックなんだよ。いくら何でもそれは行き過ぎだと思う。

 

「お前!本当は裏で色んな子を取っ替え引っ替えしてるんだろ⁉︎リアス先輩!姫島先輩!そして智代お姉様!学園の三大お姉様だぞ⁉︎さらに学園の小さなアイドル小猫ちゃんときて今度は今度は金髪美少女転校生のアーシアちゃんだ!おかしいよ!理不尽で俺が壊れそうだよ!」

 

松田が頭を抱えて喚く。

 

確かにここ最近の間で一気に美少女との交友率が増した。智代とアーシアとの登下校しているし、部活には部長や朱乃さんや小猫ちゃんがいるし、こう考えると俺って結構幸せな状況だったりするのかな。

 

「イッセー、一人ぐらい紹介してくれても罰は当たらないと思うぞ。というか、誰か紹介してください」

 

紹介たって、出会い系サイトじゃないんだから。それに松田が言ってる人達以外いないしなぁ………いや、いるっちゃいるか。一応乙女だもんな。

 

「ちょっと待ってろ」

 

俺は四人にこの場で待ってもらうと携帯を取り出し、電話で相手に確認を取る。

 

数分の間話したが、あちらはOKらしい。よかった。

 

「大丈夫な子がいたぞ。今日はOKだとさ。友達も連れてくるって。これ、紹介出来る子の番号。メアドもあるから。てか、先ずはメールで連絡しとけ。そっちの方が賢明だ」

 

「サンキュー!」

 

俺の含みのある言い方などそっちのけで先程まで嘆いていた松田が高速で俺の携帯を奪い、ソッコーで番号を登録する二人。

 

「ありがとうございます!イッセーさま!この御恩は決して忘れません!」

 

「ああ、今度トリプルデートしようぜ!待ってろ!俺たちもソッコーで彼女作るからな!」

 

二人ともいい笑顔してやがる。脳内お花畑満開ってところだな。

 

「で、どんな子なんだ?美少女なんだろうな?」

 

「それは人によるだろ。少なくとも乙女ではあるな」

 

「乙女!す、素晴らしい……素敵だよ、イッセーくん!」

 

「全く、兵藤先生に頭が下がる思いだ」

 

現金なやつらだ。コロコロと態度を変えやがって。まあ、そんな感じに性格の方もこれを機に紳士になってくれると助かるんだが。

 

「………おい、イッセー」

 

今まで黙っていたが、二人の狂喜乱舞っぷりに疑問を抱いたのか、智代は俺の耳元に顔を寄せてくる。その時に女子特有の良い匂いが俺の鼻腔を刺激する。相変わらず何で女子ってこんなに良い匂いがするんだろうな。

 

「一体誰を紹介したんだ?」

 

「仕事の依頼主の人だよ」

 

俺の返答に智代は眉を顰めた。

 

「依頼主は変人ばかりしかいないと嘆いていたのはイッセーだろう」

 

その通り。俺の依頼主は変人ばかりだ。比較的マトモなのは森沢さんだな。それ以外は個性が強いを通り越して、そういう新種なんじゃないかと思う時もある。強ち間違いではないだろう。

 

「あいつらには良い薬になるかと思ってさ」

 

「はぁ……報復されても私は知らんぞ」

 

「大丈夫だ。智代には迷惑かけないから」

 

「そういう問題では………まあいいか。それで?結局誰を紹介したんだ?」

 

「ミルたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。俺は住宅街を自転車で駆け抜けていた。

 

今行っているのはチラシ配りなのだが、俺は既にチラシ配りの儀式を終了している。だというのに何故しているのかというと自転車後方に座っているアーシアのチラシ配りの手伝いだ。

 

所謂二ケツ状態で深夜の住宅街を疾走している訳だが、自分一人でチラシ配りをしていた時よりも軽やかにペダルを漕げているような気がする。多分、朝練の成果だと思うが、ここまで違うものかと感心せずにはいられない。無理をしてでも重りを付けていた甲斐があった。

 

「……イッセーさん、本当によろしいんですか?私のチラシ配りをお手伝いしてくださるなんて……」

 

「アーシアは自転車に乗れないだろう?なら、俺が運転手代わりさ」

 

「うぅ、すみません。自転車とは縁がなかったものですから……。でも、歩いてならーーー」

 

「そんなの、余計にさせられないよ。アーシアの事が心配だ」

 

自転車ならいざ知らず、アーシアを深夜の住宅街に一人で走り回らせるなんて出来ない。それにアーシアは北欧の片田舎から先月日本に来たばかりだ。日本の文化をあまり知らない。悪魔になった特典で言葉こそ理解出来るようになったけど、文字はそういかないし、生活は当然不便を強いられている訳で、不安な点が多々ある。

 

それにもしかしたら前の堕天使みたいな輩やはぐれ悪魔が居たらアーシアではどうしようもない。そう考えるとやはり心配で、つい部長へ進言していた。部長はそれを快く承諾してくれた。そんな訳で俺はアーシアのフォローに回った。こうやって、毎夜ともに住宅街を自転車で走っている。

 

「アーシア。あれが神社。俺らは悪魔だから入っちゃダメだぞ」

 

「はい。悪魔は精霊が集まるところや土地の神様に関係する所へ行ってはダメなんですよね?クリスチャンの私には日本の『八百万の神』は理解しかねますけど……」

 

「まあ、それはおいおいわかっていけばいいさ。あ、彼処は今は夜だから閉まってるけど、美味しいパン屋なんだ。今度一緒に買いに行こうか」

 

「はい!日本のパンは甘くて大好きです!」

 

何気ない会話だというのにアーシアは楽しそうだ。俺も楽しいけどさ。

 

「イッセーさん、『ローマの休日』を観たことがありますか?」

 

不意にアーシアがそう聞いてくる。

 

「昔の映画だろ?ゴメン、観たことないな」

 

「そうですか……」

 

俺の答えにアーシアは少し残念そうな声音だった。ラブストーリーっていうのはわかるが、俺はあまり洋画とか観ないからな。

 

「でも、どうしてその映画が?」

 

「……ずっと、憧れだったんです。こうやって………あれはバイクでしたけど。それでも私……うふふ」

 

嬉しそうな笑い声。腰に回す腕もギュッとしてきた。

 

よくわからないけど、アーシアが嬉しいならそれでいいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「只今戻りました!」

 

「あらあら、お疲れ様。今お茶を淹れますわ」

 

俺とアーシアはチラシ配りを終えて、部室に戻ってきた。

 

最初にお出迎えしてくれたのは、副部長であり部長の参謀、朱乃さん。いつも通りのニコニコ笑顔で俺たちをお出迎えしてくれた。

 

「やあ、夜のデートはどうだった?」

 

爽やかなスマイルを浮かべるのは学園の王子こと木場裕斗。大抵の男子はイケメンだからと敵視しているが、俺はイケメン嫌いではないので毛嫌いはしていない。だが、時々爽やかなスマイルを浮かべたまま、弄ってくるのが腹立つ。

 

「最高だったよ」

 

金髪美少女と深夜のデート。悪いはずがない。

 

「……深夜の不純異性交遊」

 

静かな声で厳しいことを言ってくるのはロリっ子少女塔城小猫ちゃん。見た目とは裏腹にもの凄い量を食べる。一体その小さい身体の何処に入っているのか是非とも問いたい。

 

「そういうのじゃないから」

 

不純とか言わないでほしい。どことなく松田や元浜と同系列に見られているような気がしてならないから。

 

俺とアーシアは奥のソファに座る部長の元へ足を向ける。

 

「部長。只今帰還しました」

 

そう報告するが部長はぼーっとしたまま、あらぬ方向を見つめていた。物思いに耽っている?深い溜息もついているし。悩み事だろうか。部長のような人が悩み事ともなるとよほどの事だと思うけど。

 

「部長、只今帰還しました!」

 

今度は少し声を大きくしてみる。それに気づいたのか、部長はハッと我に帰った様子だった。

 

「ご、ごめんなさい。少しぼーっとしていたわ。ご苦労様、イッセー、アーシア」

 

少しっていうか、心此処にあらずって感じだ。普段はいつも通りエレガントな立ち振る舞いなのに、少し目を離すとぼーっとしている。

 

「さて、今夜からアーシアにもデビューしてもらいましょうか」

 

おおっ、ついにアーシアもか!

 

「え?」

 

何かわからずキョトンとしているアーシア。

 

「今日から悪魔として本格的にデビューだ。魔法陣から契約者の元にジャンプして契約してくるんだよ」

 

「わ、私がですか?」

 

「ですよね、部長」

 

「そうよ。チラシ配りは今夜で終了。何時までもやらせておくと、二人のデートの方が先に進んでしまいそうだもの」

 

下僕弄りはやめてください、部長。それにあれ以上は進みませんよ。っていっても説得力ないか。

 

俺のデビュー時と同様、アーシアの手のひらに部長がグレモリー一族印の魔法陣を記していく。確かあれのお蔭で魔法陣を行き来出来るようになるんだったっけ。

 

「朱乃、アーシアが魔法陣を通れるだけの魔力があるか、調べてみて」

 

「はい、部長」

 

部長に頼まれ、朱乃さんがアーシアの額に手を当てていた。

 

「イッセーの前例があるから、ちょっと調べないとね。流石にないとは思うけれど」

 

部長の心配そうな一言が俺のトラウマを抉った。

 

俺は魔力が微量すらも無かったせいで、一人では魔法陣を介してジャンプする事が出来ない。魔力量だけでいえば俺は生まれたての悪魔の赤子と同等かそれ以下らしい。智代はその神器の特性故か上級悪魔クラスの魔力を宿しているらしい。持つ者と持たざる者の差を改めて感じましたよ。

 

「部長、大丈夫ですわ。問題ありません。それどころか、眷属悪魔としては部長と私に次ぐ魔力の持ち主かもしれません。魔力の潜在キャパシティが豊富ですわ」

 

「それは吉報だわ。『僧侶』としての器が存分に活かせるわね」

 

部長が言った『僧侶』とは、アーシアの悪魔としての役目だ。

 

現在の悪魔は人間界の盤上ゲーム『チェス』を模したルールを下僕に与えている。主である悪魔が『王』であり、下にそれぞれ『兵士』、『騎士』、『僧侶』、『戦車』、『女王』と続く。駒一つ一つには特性があり、下僕悪魔の能力を後押ししてくれている。『騎士』なら速さ、『戦車』なら攻撃力と防御力といった感じに補正がかかる。『僧侶』は魔力に秀でた特性を持っているらしい。潜在キャパシティが豊富なアーシアは特性に後押しされてより才能を発揮させられるだろう。

 

アーシアの幸先が良くてなによりだ。ある意味俺より心配がない…………自分で考えていて悲しくなってきた。

 

「あらあら、早速アーシアちゃんがこなせそうな願いを持った方が私達を召喚しようとしていますわ」

 

「それは都合が良いわ。早速契約者の元へ向かってちょうだい」

 

「は、はい!行ってきます!」

 

「頑張れ、アーシア」

 

俺の応援にニコリと微笑むとアーシアは魔法陣の光の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、アーシアと共に帰宅した。

 

アーシアが仕事を終えるまで待っていたのだが、俺のデビューとは違い、スムーズに事は進んだらしい。

 

「すみません、先にシャワーいただきますね」

 

そう言って、アーシアは風呂へ行った。無事に仕事を終えて彼女も笑みが絶えない。

 

アーシアが帰ってくるまでの間、木場や小猫ちゃんと談笑をしていたのだが、その時も部長は思い詰めた表情をしていた。よほど重大な案件でもあるのかな。俺なんかに出来ることなんてたかが知れているかもしれないが、出来ることなら力になりたい。

 

その時、部屋の床に光が走る。光は円状に展開し、見覚えのある図柄を描き出す。

 

これは……俺たち眷属の紋様だ!

 

何でグレモリー眷属の魔法陣が?ていうか、なんで俺の部屋に?忘れ物なら明日取りに行けばいいし、もしかしてまたはぐれ悪魔の討伐?

 

一層眩い光が部屋を包み込んだ時、魔法陣から人影が現れる。

 

「部長……?」

 

魔法陣から姿を現したのは、紛れもなくリアス部長だった。しかし、何故俺の部屋に?思い詰めた表情が変わってないということはもしかして悩みの種は俺だったのか⁉︎

 

部長は俺を確認するなり、ズンズンと詰め寄ってきた。そして開口一番に衝撃的な事を言ってきた。

 

「イッセー、私を抱きなさい」

 

「はい?」

 

一瞬何を言っているのかわからず思考が飛んだ。人間予想外の展開になると思考停止するっていうのはどうやら本当らしい。あ、そういえば俺悪魔だった。

 

「私の処女を貰ってちょうだい。至急頼むわ」

 

二度目に発せられた言葉に俺は言葉を失った。


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