はぐれ悪魔祓いであるフリード・セルゼンが閃光玉(仮)で逃走した後、俺は落ちていたある物をポケットにしまって、玄関の前に立っていた。
イッセー達はいない。危険な賭けになる為、先に魔法陣で帰還してもらった。故にここにいるのは俺のみで、かなり危険だが、アーシアには一人で駒王学園へと向かってもらっている。リアス部長達が連れて行くと悪魔の気配でバレるが、アーシア一人だと気配で察知する事は下っ端のレイナーレ達では出来ないはずだ。
「あら?何処かで見た顔だと思ったら、あの時の小娘じゃない」
そう言って上空から黒い羽を羽ばたかせ降りてきたのは堕天使レイナーレとそしてその配下の堕天使三人名前はもう忘れてしまった。何せ、原作ではリアス部長に瞬殺されたからな。
「あの時以来だな、堕天使。ずっと会いたかった」
そう。あの日以来、俺はレイナーレに会いたくて会いたくて仕方がなかった。こいつだけはこの手で殺してやりたかった。イッセーに手を出した事を後悔させてやりたかった。それが例え、堕天使の長の命令だとしても。
「奇遇ね。私も会いたかったわよ。人間風情が私に手傷を負わせるなんて許されざる行為だわ」
「ならばどうする?私を殺すか?」
「それもいいでしょうけど………あの子を返すというなら見逃してあげてもいいわ。今はどんな小さなイレギュラーも起こしたくはないの。私の目的にはどうしてもあの子が必要なの」
「ふん。必要なのはアーシアではなく、アーシアの神器『
「ッ⁉︎」
「何故知っている。そんな顔をしているな。お前程度の浅い野望などお見通しだ」
アーシアが宿している『聖母の微笑』という神器は回復系のもので、対象かどんな生物であれ、治す事の出来る神器だ。基本的にどんな重傷でも治せる上に千切れた腕も接合する事が出来るが、体力は回復できないし、完全に失ったものは復活出来ない。とはいえ、どんな種族でも治せるというのはかなりレアな神器だとも言っていた気がする。
レイナーレはアーシアからその神器を抜き取り、堕天使総督のアザゼルと副総督であるシェムハザから寵愛を貰うために自身の意志に賛同する部下を引き連れてこの計画を実行した。もちろん独自行動である為、総督と副総督は知らないのだが、はっきり言ってありがたい。例え殺してしまったとしても、誰にも咎められる事はないのだから。
「一々カンに触る小娘ね。見逃してあげようかと思ったけどやめたわ。生かして連れて帰って部下の神父共にでも嬲らせるとするわ」
「出来るのか?お前程度に」
「そうほざいていられるのも今の内よ!」
レイナーレはその手に光の槍を創り出し、投げてくる。俺はそれを瞬時に凍らせて家の中に入った。
さっきの発言から察するにレイナーレは俺を殺すつもりはない。はぐれ神父に犯させて辱める事で死ぬよりも更に酷い苦痛を与えるつもりなのだろう。だから即死はまずない。あってもせいぜい瀕死程度。生きていればアーシアに治させる事が出来るからな。
家の中に逃げ込んだのは四人同時に攻撃されるのを防ぐ為だ。家が吹き飛ばされては元も子もないが、そんな破壊力のある攻撃は出来ないだろうし、出来たとしてもアーシアもいる以上、そんな方法は取れない筈だ。
取り敢えず、先程までいたリビングの中に入る。後はレイナーレが来るのを待つだけだ。
「威勢良く啖呵切った癖にすぐ逃げるなんて、早くも怖気ついたのかしら」
「他の三人はどうした?」
「貴女に教える意味なんてないわ。それよりもアーシアは何処?」
「それこそ教える意味はない。お前だけは絶対に………殺す」
俺の言葉にレイナーレは一呼吸遅れて大声で笑った。
「殺す?あははは!無理よ!不意打ちでも私の手を凍らせるのが精一杯の貴女に私を殺すなんてできないわ!さっきのだって手加減したから防げただけで、私がほんの少し本気を出せば貴女なんて一瞬で殺せるわ」
一瞬か。確かにレイナーレの攻撃を喰らえば人間の俺では瞬殺されるのがオチだ。但し、それが俺がただの凡人だった時に限る。だが、俺はこいつを殺せる力を持っている。手だけとはいえ、瞬時に凍らせる事が出来るなら時間をかければ全身を凍らせる事だって出来るはずだ。
「無駄話はここまでよ。せいぜい足掻きなさい」
レイナーレは両手に光の槍を創り出す。俺はそれを凍らせるのだが、レイナーレはそれをわかっていたようで肉薄してくると蹴りを浴びせてきた。咄嗟に飛んで威力を殺したが、壁に叩きつけられ、息を強制的に吐き出させられた。ガードした両腕も折れていないにしても痺れている。
どう考えても本気では蹴られていないっていうのに、これが人間と堕天使の差か……ッ!力が違い過ぎる。
「わかったかしら?身体能力一つを取っても私と貴女は越えられない壁があるの。今の攻撃に反応して威力を殺せたのは凄まじいけど、所詮その程度。ただの一般人にしては頑張った方じゃないかしら?それに免じて嬲るのは勘弁してあげるわ。そして貴女が持っている神器は有効活用してあげる」
「ふ………ふふ、流石は至高の堕天使を目指すだけはある。随分と自信と慢心に満ちている」
あれを使ってもこの身体では逃げられないな。だが、このまま神器だけを抜かれて殺されるのは癪だ。何とか反撃の手を………
ザシュッ。
「ぐ………ああああああああっ‼︎」
左足に光の槍が突き刺さる。焼け付くような激しい痛みに俺は声を上げずにはいられなかった。
「減らず口ばかり叩く罰よ。少し痛めつけてあげる……わ!」
「ぐ………っ!」
そしてそのまま小石でも蹴るかのように蹴り飛ばされる。そんな威力でも耐久性が人間の俺では十分にダメージがある。
「無様ねぇ。あれだけ私を殺すと息巻いていたのに、結局は人間の限界かしら?悪魔にでもなっているか、神の加護でも受けていれば貴女の身体能力を考慮して、私を倒す事が出来たかもしれないのにねぇ」
「確かに……お前の言う通りかもしれない……な」
中途半端な強さしか持たないから、護りたかった者はおろか自分の身一つ守れない。
「でも、これで良かったんじゃないかしら。あの無駄に鋭い餓鬼………そうそう兵藤一誠だったかしら。好きだった男を殺した相手に殺される………いえ、違うわね。だって殺したのは貴女だもの」
「ッ⁉︎」
「あの時、貴女が私から彼を逃す事にのみ専念しているか、或いは初めから神器を使っていたのなら、少なくともあの場面で彼は死ぬ事はなかったでしょうね。それに助けに来た癖に結局助けられたんだから、わけないわよねぇ。あはははははは!」
「…………黙れ」
こいつの言っていることは事実だ。俺がレイナーレから目を逸らさなければ俺に対する攻撃を回避する事は出来た。初めから神器を使う事が出来ていたらあの場で撃退出来たかもしれない。疑われる事を覚悟して、リアス部長達に助けを求めていればもしかしたら今もイッセーはヒトのままでいられたのかもしれない。
全部俺の所為だ。俺が招いた結果だ……………でも。それでも俺はレイナーレだけは絶対に…………この手で殺してやりたい。
その時、パリンと何かが割れるような音が俺の中で響いた。そしてそれと同時に俺を中心にして凄まじい突風が吹いた。
あの時と同じ………いや、それ以上だ。どうしてもレイナーレを殺してやりたい。例えこの身が滅びたとしてもその命をこの手で砕きたい。頭の中が憎悪と殺意で埋め尽くされる。思いつくのは目の前の堕天使をどうやって葬ろうか。そんな事ばかりか頭の中で響きわたっている。他の事なんて何も考えられない。だから私は告げる。目の前の忌々しい存在に。
「『
「な………」
何かを言おうとしたようだが、それも強制的に中断させられる。何故なら私がレイナーレを一瞬で凍らせ、そして砕いたからだ。正確には凍らせた直後に勝手に砕け散ったのだが。そんなことはどうでもいいか。後は三匹だけだ。
負傷した足を引きずりながら、外へ出る。
どうやら堕天使達はここでレイナーレが出てくるのをずっと待っていたらしく、ドアを開けて出てきたのが俺とわかるや否や表情が変わった。
「レイナーレ様はどうした」
「殺した」
「はあ?冗談も大概にするっすよ。あんたみたいな人間にレイナーレ姉さんがやられるわけないっす」
「だな。大方レイナーレ様の目を盗んで逃げてきたところか。残念だったな、それを見越してレイナーレ様が私達には見張っておくように仰せつかった」
「もういい………死ね」
バンと地面に手を当てる。すると三匹の足元が蒼く発光したかと思うと三匹を凍らせながら十メートル程の氷柱が出来上がり、これまた一瞬で砕け散った。
それを見届けた直後に失血の所為か、或いは能力を使用し過ぎた所為か、視界が大きく揺れたかと思うと俺は地面に倒れた。意識が失われる直前に俺の視界に映ったのは白髪の神父服を着た男だった。
オリ覚醒!別に禁手したわけじゃないよ!元々の力だよ!
オリジナル展開で一気に堕天使四人組退場。彼女達はオリの覚醒礎となったのです(遠い目)
そんな訳で後二話くらいで一章終わりかな?厳密には原作一巻は次で終わるけど番外編もあるので。