銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第九章:渦の中のエリヤ・フィリップス
第86話:みんな英雄になった 801年11月10日~11月中旬 ハイネセンポリス~テレビ局控室


 同盟全土にエリヤ・フィリップスブームが吹き荒れていた。人々はエリヤ・フィリップスの話題を挨拶代わりにした。エリヤ・フィリップスが笑うだけでニュースになった。エリヤ・フィリップスが何かを言っただけでニュースになった。エリヤ・フィリップスが何かを食べるだけでニュースになった。エリヤ・フィリップスが姿を現すだけで人だかりができた。エリヤ・フィリップスがテレビに出るだけで、視聴率が跳ね上がった。エリヤ・フィリップスが新聞や雑誌に載るだけで、飛ぶように売れた。何もかもがエリヤ・フィリップスだった。

 

 市民軍総司令官エリヤ・フィリップス宇宙軍中将は、宇宙軍大将に昇進した。三三歳七か月での大将昇進は、同盟宇宙軍史上第五位の早さとなる。

 

「アッシュビー提督より早いのか。凄いなあ」

 

 俺は新聞を読んで驚いた。同盟宇宙軍史上最高の戦術家ブルース・アッシュビー提督は、三四歳二か月で宇宙軍大将・宇宙艦隊副司令長官となった。そんな英雄よりもフィリップス大将の昇進は早いのだ。

 

「ヤン提督よりは遅いんだな。当然と言えば当然か」

 

 うんうんと頷き、マフィンを口に放り込む。ヤン・ウェンリー提督は三一歳七か月で大将に昇進したそうだ。さすがのフィリップス大将も、戦うたびに奇跡を起こす男には及ばない。

 

「へえ、ヤン提督でも宇宙軍史上第三位なんだ」

 

 むしろ、ヤン大将より早く宇宙軍大将になった人が、二人もいる方が驚きだ。一人は二九歳一一か月、もう一人は二九歳六か月だという。想像もつかない世界である。

 

「士官学校を出ていない宇宙軍軍人としては史上最速。トリニダーデ提督の記録を一三〇年ぶりに更新」

 

 なるほどと思い、砂糖とクリームでドロドロになったコーヒーに口をつける。フィリップス大将は徴兵されて二等兵からスタートした。これまでの記録保持者だったトリニダーデ提督は、専科学校出身者で伍長からのスタートだった。二重の意味でフィリップス大将は凄い。

 

 電子新聞を置き、週刊誌を手に取った。フィリップス大将の写真を使った表紙をめくり、フィリップス大将の特集記事に目を通す。

 

「凄いなあ」

 

 俺はため息をついた。どれほど頑張っても、ここまで凄い人になれそうにはない。どこで差がついたのだろうか?

 

「エリヤ・フィリップスって本当に……」

 

 ここまで言ったところで、赤毛の女性が一枚の紙を突き付けてきた。

 

「フィリップス提督、今日のスケジュールです。ご確認ください」

 

 優しさの成分が一グラムもこもっていない声が、現実逃避を終わらせた。

 

「わかった」

 

 俺は赤毛の副官代理ユリエ・ハラボフ中佐から紙を受け取り、今日のスケジュールを確認する。テレビ出演、インタビュー、対談、写真撮影、行事出席などの予定でいっぱいだ。

 

 英雄エリヤ・フィリップス大将とは、俺のことなのである。クーデター鎮圧の功績により、偉大なアッシュビー提督やヤン提督と昇進速度を比べることになってしまった。あまりに恐れ多くて身長が縮んでしまいそうだ。

 

 右翼系のマスコミからは、「共和国の盾」と呼ばれるようになった。この異名は最大級の国難を防いだ者に与えられる。歴史上、共和国の盾と呼ばれた者は、建国期の英雄ジェシー・バンクス、六二〇年代に内戦の危機を防いだカトリーナ・ツクダ、七六七年の六月クーデターを鎮圧したルチオ・アルバネーゼの三名だ。麻薬王アルバネーゼと同じ異名で呼ばれると、微妙な気分になる。

 

 一方、ヤン大将は「共和国の剣」の異名を手に入れた。一一月九日、彼が率いる復員支援軍は正面攻撃でイゼルローン要塞を陥落させ、全銀河の度肝を抜いた。並行追撃を仕掛けて混戦状態に持ち込み、敵に「味方ごと復員支援軍を吹き飛ばすか、復員支援軍を見過ごして味方を生かすか」の二択を示した。敵将メリダ中将は味方を生かすことを選び、戦闘中止を命令すると、頭を撃ち抜いて自決したのである。ヤン大将が攻めたのは要塞ではなかった。メリダ中将の良心を攻めたのであった。

 

 イゼルローン要塞を二度陥落させた功績は、「共和国の剣」を名乗るにふさわしい。過去にこの異名を得た者は、ダゴンの勝者リン・パオ、第二次ティアマト会戦の勝者ブルース・アッシュビーの二名である。帝国領から膨大な亡命者を連れ帰ったネイスミス・ウォード、シャンダルーアの勝者スラージ・バンダレー、フォルセティの勝者エルゼ・オストヴァルト、帝都オーディンを攻略したラザール・ロボスですら、共和国の剣とは呼ばれなかった。

 

 人々は「剣と盾が揃った。フィリップスが内を守り、ヤンが外に備えれば、同盟は盤石だ」と語り合う。前世界の逃亡者が、史上最高の軍事的天才と並び称されるまでになった。戦記を読んだ人なら冗談だと思うに違いない。

 

 エリヤ・フィリップス以外にも大勢の英雄がいた。褐色のハイネセン攻防戦とその前哨戦で勇戦した者、再建会議の命令を拒否して逮捕された者、再建会議から市民軍に寝返った軍人、ゲリラとして後方かく乱を行った者などが、賞賛の的となった。ライフラインを遮断された市民軍支配地域での助け合いは、美談として報じられた。

 

 トリューニヒト政権は英雄に手厚い待遇を与えた。命がけで戦った者を一階級昇進させた。特別な功績のあった者は、一階級昇進させた直後に再び一階級昇進させ、階級を二つ引き上げた。負傷者には名誉戦傷章、捕虜となった者には名誉捕虜章を与えた。戦死者のうち、軍人と義勇兵には二階級昇進及び自由戦士勲章、警察官と消防士には二階級昇進及び国家功労勲章を授けた。

 

 褐色のハイネセン攻防戦で南部方面隊を指揮したロマン・ギーチン地上軍准将は、地上軍中将に昇進した。「事実上の二階級昇進は、将官には適用されない」という前例を覆す人事である。昇進と同時に最高勲章の自由戦士勲章を授与された。俺に次ぐ殊勲者だと認められたことになる。

 

 他の方面隊司令官は一階級昇進し、ハイネセン記念特別勲功大章を授与された。西北方面隊のセノオ地上軍准将とル=マール予備役宇宙軍准将、北部方面隊のギーゼブレヒト予備役地上軍准将、東部方面隊のガオ宇宙軍准将は少将となった。西南方面隊のヘイズ予備役地上軍少将は、予備役地上軍中将に昇進した。余談ではあるが、ル=マール予備役少将は、七年前のヴァンフリート四=二攻防戦でも一方面の指揮官を務めた人だ。

 

 最も奮戦した部隊は「ダイヤモンド部隊」と呼ばれた。名誉戦傷章はダイヤモンドのような形をしているので、同盟軍では死傷率の高い部隊をダイヤモンド部隊と呼ぶのだ。エリヤ・フィリップス戦隊、ブラボー義勇旅団、エイブラハム・リンカーン義勇旅団、イオン・ファゼカス長征部隊、聖シルヴァ騎士団がダイヤモンド部隊として認定された。

 

 エリヤ・フィリップス戦隊の献身的な戦いぶりは高く評価され、全隊員が一階級昇進することとなった。前哨戦で捕虜となり、褐色のハイネセンに参戦できなかった者も昇進できた。二階級昇進した者は一五名にのぼる。三名の副司令は二階級昇進と自由戦士勲章という名誉に輝いた。シェリル・コレット副司令は宇宙軍中佐から宇宙軍准将、ファジル・キサ副司令は宇宙軍中佐から宇宙軍准将、エリオット・カプラン副司令は宇宙軍少佐から宇宙軍大佐に昇進した。コレット准将とカプラン大佐は俺の元部下である。

 

 最も高い死傷率を記録したブラボー義勇旅団は全隊員が一階級昇進し、一九名が二階級昇進を遂げた。重傷を負ったパエッタ予備役少将、アップルトン予備役准将らは、新しい階級章と名誉戦傷章・名誉捕虜章を病院のベッドで受け取った。

 

 エイブラハム・リンカーン義勇旅団は全隊員が一階級昇進し、一二名が二階級昇進を果たした。第三大隊の第五中隊長ウィンザー下院議員は、義勇軍大尉から義勇軍少佐に昇進し、名誉戦傷章を授与された。

 

 聖カーロス騎士団は全隊員が一階級昇進し、一〇名が二階級昇進を遂げた。聖カーロスとは、地球統一政府の宇宙省長官であり、地球教の聖人でもあるカーロス・シルヴァを指す。精強な地球教徒義勇兵の中でも、この部隊の勇敢さは際立っていた。

 

 イオン・ファゼカス遠征部隊は全隊員が一階級昇進し、九名が二階級昇進を果たした。その名の通り、熱烈なハイネセン主義者の部隊である。

 

 特殊部隊隊員を率いて突撃したアルマ・フィリップス地上軍大佐は、二階級昇進して地上軍少将となった。二八歳七か月での少将昇進は地上軍史上第二位、同盟軍史上第四位、士官学校を出ていない者としては最速である。前の世界で中卒無職だった妹が将軍閣下になったのだ。

 

 チーム・フィリップスのメンバーは戦闘に参加しなかったが、俺を補佐した功績を買われた。参謀長代理チュン・ウー・チェン准将は宇宙軍少将、副参謀長アブダラ准将は地上軍少将となった。作戦部長ラオ大佐、情報部長ベッカー大佐、後方部長イレーシュ大佐、人事部長オズデミル大佐、通信部長マー技術大佐、憲兵隊長ウェイ大佐らは准将の階級を得た。メッサースミス宇宙軍中佐は宇宙軍大佐、ハラボフ宇宙軍少佐は宇宙軍中佐になるなど、佐官級や尉官級の幕僚も昇進した。

 

 総司令部勤務の軍人は昇進の対象となった。アラルコン宇宙軍中将はトリューニヒト議長を罵倒したにも関わらず、宇宙軍大将の階級を得た。シュラール地上軍技術少将はバリケードが突破されたショックで倒れ、病院のベッドで地上軍技術中将に昇進したとの知らせを聞いた。

 

 ボーナム救援作戦に加わった第七陸戦遠征軍の隊員は一階級昇進した。シューマッハ司令官は宇宙軍少将から宇宙軍中将となった。前の世界で皇帝を誘拐した人物が、同盟軍の中将にまで昇進したのである。戦記を読んだ者には信じられないだろう。彼らと行動を共にしたルグランジュ宇宙軍大将は、元帥待遇を受けることが決まった。

 

 第七八陸戦航空団は前哨戦での功績が大きかったことから、全隊員が階級を引き上げられた。ブレツェリ司令は宇宙軍代将から宇宙軍准将となり、六三歳にして将官の地位を得た。

 

 政府は派手に活躍した者だけに恩賞を与えようとしたが、俺が「裏で頑張った人も評価してほしい」と頼んだため、秘密協力者も昇進や叙勲の対象となった。セレブレッゼ宇宙軍中将はクーデターが終わるまで監禁されていたが、セレブレッゼ派の兵站部隊を市民軍に協力させた功績により、宇宙軍大将に昇進した。説得工作に功績のあったグリーンヒル宇宙軍大将は、同盟軍殊勲星章を与えられたが丁重に断った。再建会議司令部勤務将校ルンヴィサイ宇宙軍少佐は、市民軍のスパイとして多大な功績があったので、二階級昇進で宇宙軍大佐になった。

 

 今回の人事は間に合わせ的な性格が強い。昇進者は現職に留まり、逮捕などで空いたポストには代理が立てられた。宇宙艦隊司令長官ビュコック大将と地上軍総監ベネット大将は辞表を提出したが、現職に留まるよう命令された。空席となった統合作戦本部長は、ドーソン大将が代行することとなった。本格的な人事異動は来月下旬に実施される予定だ。

 

 これが物語であれば、スタッフロールが流れる場面であろう。現実の世界では戦後処理という難題が立ちはだかってくる。

 

 一〇日間の分裂は力の空白を生み、治安を著しく悪化させた。クーデターを支持した自治体や軍隊が降伏し、再建会議の勢力はほぼ消滅したが、混乱は収まっていない。都市部では暴動や略奪が続発し、辺境では独立派武装勢力が息を吹き返した。海賊やテロリストの活動が活発になった。予断を許さない状況が続いている。

 

 ハイネセンの混乱は、交易の停滞と金融の混乱を引き起こした。星間国家を一個の生命体とすると、交易は消化器であり、金融は循環器である。株とディナールの低落は止まったものの、経済が著しく悪化し、倒産や失業が急増した。企業の倒産が相次いだ。ディナール安と物資不足により、物価が跳ね上がった。

 

 市民は軍を信用できないと思うようになった。制服組のトップがクーデターを起こし、数千人の同胞を死なせたのだ。軍の体質に問題があると思われても、反論はできない。

 

 トリューニヒト議長は事態の収拾に乗り出した。乗り出さざるを得なかったと言う方がより正確であろうか。クーデターの間、沈黙を続けていたことは、彼の評価を著しく損ねた。リーダーシップを見せる必要がある。

 

 クーデターに関与した者が次々と粛清されていった。一週間で軍人三五万人、政府職員一六万七〇〇〇人、自治体職員七万二〇〇〇人、民間人一二万四〇〇〇人が拘束された。軍人五二万人と政府職員三〇万人が、職務停止処分を受けた。事情聴取を受けた者は二〇〇万人を超える。同盟議会はクーデターに加担した議員の除名決議を可決し、野党議員の半数が議席を失った。クーデターを支持した首長や地方議員は失職に追い込まれた。

 

 出頭要請に応じなかったとして、三七〇名が指名手配を受けた。その中には、前国家安全保障顧問アルバネーゼ退役宇宙軍大将、ジャーディス前上院議員、科学技術本部次長ドワイヤン宇宙軍中将といった麻薬関係者もいる。

 

 国民平和会議(NPC)、進歩党、反戦市民連合、環境党の四党がテロ組織認定を受けた。これらの党の執行部はクーデターを支持し、再建会議に抵抗した者を除名したため、テロ組織とみなされたのである。

 

 法秩序委員会は四党の解散請求を行った。NPC除名議員の指導者ウィンザー議員、反戦市民連合除名議員の指導者ソーンダイク議員、環境党除名議員の指導者ゴンスン議員は、解散請求を受け入れる意向だ。

 

 進歩党除名議員の指導者レべロ議員は、「国政政党の強制解散は悪しき前例になる」と言って、最高裁に異議を申し立てた。解散請求が却下された後に、進歩党を自主解散させるとのことだ。

 

 当初は軍部がクーデターを起こし、改革派勢力が後から乗ってきたと思われていたが、最近になって異なる見方が出てきた。計画段階から改革派勢力が関与していたというのだ。トマシェフスキ同盟警察長官は、「再建会議は巨大な氷山だ。ボロディンやブロンズは水面に突き出た先端に過ぎない」と語る。

 

 反クーデター派を粛清する一方で、不穏分子を一掃する作戦が始まった。作戦指導を行うのは統合作戦本部長代行ドーソン宇宙軍大将だ。ギオー地上軍中将の部隊は中央宙域、モートン宇宙軍中将の部隊はシャンプール方面、シャイデマン宇宙軍中将の部隊はフェザーン方面、ジャライエル地上軍中将の部隊はネプティス方面、ホルヘ宇宙軍中将の部隊はカッファー方面、メネンディ地上軍中将の部隊はパルメレンド方面に向かった。モートン中将以外の方面司令官五名は、トリューニヒト派の幹部である。

 

 トリューニヒト議長はフェザーン自治領から巨額の融資を受けると、大規模な市場介入に踏み切った。これによって当面の危機を回避することができた。

 

 イゼルローン方面は完全に安定している。復員支援軍司令官ヤン大将はイゼルローン方面艦隊と要塞防衛隊を指揮下に収めると、回廊の守りを固めた。シヴァ方面艦隊は同盟政府に降伏し、帝国軍のメルカッツ艦隊は根拠地に引き返していった。

 

 多数の国会議員・地方議員・首長が失職したため、統一補欠選挙が一二月二二日に実施されることとなった。大衆党は上院での単独過半数確保を目指す。統一正義党と汎銀河左派ブロックは、反クーデター闘争での実績を強調し、党勢拡大を狙う。ウィンザー議員は市民軍で活躍した旧与党系政治家を集め、中道新党を結成すると発表した。旧進歩党、旧反戦市民連合、旧環境党、楽土教民主連合の四党は、合同して反戦リベラル新党を結成する予定だ。

 

 同盟が混乱している間に、帝国のルドルフ原理主義革命は鎮圧された。ラインハルトが選民評議会主力を撃破し、オーベルシュタイン大将とジーク将軍が帝都オーディンを奪還した。ルドルフ原理主義者五〇〇万人が即決裁判で処刑されたという。キルヒアイス上級大将は辺境のルドルフ原理主義者を打ち破った。ヴァーゲンザイル大将がクレーフェ星域で敗れたものの、ラインハルト派がほぼ独力で勝利を収めた。

 

 クーデターとルドルフ原理主義革命の余波が銀河を揺らし続ける。静かになるには時間が必要であろうと思われた。

 

 

 

 マスコミに出るのも英雄の仕事である。俺はテレビ局に到着すると、控室に入った。その中には妹のアルマがいた。初めての共演である。

 

 妹は最も人気のある英雄の一人だった。身長一八四センチの女性が敵兵を棍棒で殴り倒す姿は、「ボーナムの赤鬼」と称された。可愛らしい童顔とパワフルな戦いぶりのギャップが、人々を驚かせた。作戦立案や切り崩しに活躍した頭脳派でもある。優等生的な言動、英雄エリヤ・フィリップスの妹という看板が好感度をさらに高めた。

 

 口の悪いネットユーザーも妹を好意的に見ている。有名コミュニティサイトのアルマ・フィリップススレッドは、「胸が平たいけど、モデルみたいでかっこいい」「胸が小さいけど可愛い」「胸が薄いことを除けば完璧超人」など、好意的な書き込みで占められる。

 

「なかなかの人気じゃないか」

 

 俺は冗談まじりに言った。

 

「全然いいことないよ」

 

 妹はすっかり落ち込んでいる。本来は友達のいないデブだし、軍人になってからも地味な仕事ばかりやってきたので、注目されることに慣れていない。

 

 ある番組で好きなスイーツを聞かれると、妹は「フィラデルフィア・ベーグルのドライフルーツ入りマフィン」と答えた。その直後から、フィラデルフィア・ベーグルにドライフルーツ入りマフィンの注文が殺到し、三か月先まで予約が満杯になったのだ。軍人はファンからのプレゼントを受け取れない決まりなので、妹は好物を食べられなくなった。

 

「クーデターが終わったら、おなか一杯食べようと思ってたのに……」

「これでも食べて元気出せよ」

 

 俺が潰れていないフルーツサンドイッチを渡しても、妹の表情は暗いままだ。

 

「どうした? 糖分が足りないか?」

「前の件が結構こたえててさ」

 

 妹はデブだった過去を必死に隠してきたのに、ある週刊誌が中学時代の写真を発掘した。デブだったことが知られても、人気が落ちることはなく、「さすがはフィリップス将軍。ダイエットも超一流だ」と称賛された。地上軍には女性の志願者が殺到しているそうだ。それでも、妹は喜んでいない。

 

「過去を暴くなんて最低だよ」

「制服ピース写真が発掘されるよりはましだろう」

 

 俺は苦笑いを浮かべた。二年前、ダーシャの遺品の中から、妹が中学の制服を着てピースしている写真が発見された。デブではなくて痩せていた。しかも、制服のサイズはぴったりだった。身長一八四センチの女子は特注の制服になる。つまり、妹は軍人になってから、中学の制服を特注で作って写真を撮り、ダーシャに「中学時代の写真だよ」と言って渡した。想像するだけで情けなくなってくる。

 

「やめて」

 

 妹は耳をふさぐ。

 

「英雄なんだから、もっと堂々としろよ。ああいうふうに」

 

 俺はテレビを指さした。三人の男女が画面に映っている。真ん中にいる長身で胸の大きい美人はコレット准将、右にいるへらへらした長身の男性はカプラン大佐、左にいる屈強な中年男性はキサ准将だ。いずれも市民軍エリヤ・フィリップス戦隊の副司令である。

 

「あの子嫌い」

 

 妹はそっぽを向いた。彼女はコレット准将を嫌っている。

 

「何が嫌なんだ?」

「嫌いなものは嫌いなの」

 

 どうして嫌いなのかは言おうとしない。妹はコレット准将、イレーシュ准将、ハラボフ中佐を激しく嫌っていた。この三人には美人という以外の共通項はないので、理由は不明だ。

 

 スター揃いのエリヤ・フィリップス戦隊の中でも、コレット准将の人気は抜群だった。拙劣だが一生懸命な戦いぶりから、「フィリップス提督の一番弟子」と呼ばれた。自分を誇るよりも俺を褒めることに熱心なところは好評だ。色気のある美貌、大きな胸と尻、すっきりしたウェストは男性受けがいい。もっとも、「男受けを狙いすぎ」「狂信者みたいで気持ち悪い」「ポルノ女優が軍服を着ているように見える」という声もある。

 

「カプラン君が一人で出ればいいのに」

「あいつ、へらへらしてるじゃないか」

「可愛いじゃん」

 

 不可解なことではあるが、カプラン大佐は人気者だった。へらへらした笑顔やピントがずれた言動が、女性の目には可愛く見えるらしい。

 

「背が高いと得だよな。何をやっても好意的に見てもらえる」

 

 俺は憂鬱な気持ちになった。カプラン大佐はコレット准将よりも背が高い。妹もコレット准将もその他の人気者も平均以上の身長を有する。小柄な人気者はマノン義勇軍少佐ぐらいのものだ。

 

「カプラン君は性格良さそうだから。お兄ちゃんと雰囲気が似てる」

「似てないだろう」

「似てるって」

 

 やがて三人の出番が終わり、妹がチャンネルを変えた。俺がボーナム総合防災公園で演説する場面が映る。

 

「またやってんのか」

 

 うんざりした気分になった。マスコミはボーナム総合防災公園の攻防戦を、「ボーナムの奇跡」と名付け、繰り返し放送した。

 

「英雄エリヤ・フィリップスの最大の名場面だからね」

「もっといい場面があるだろうに」

「私は好きだけど。お兄ちゃんと一緒に映ってるから」

「俺は好きじゃない」

 

 ボーナムの奇跡を見たくない理由は単純だ。背が高い人が周りにいるせいで、俺の背の低さが目立ってしまう。

 

 ネットでは「エリヤ・フィリップスはチビ」というのが定説となった。有名コミュニティサイトには、「エリヤ・フィリップス身長検証スレッド」なんてスレッドもあり、俺の身長が何センチなのかを議論している。最も有力な説は一六七センチだ。本当の身長より二センチも低い。これほど酷いデマは人類史上でも稀だろう。

 

「アルマの姉ちゃんがいるぞ」

 

 俺がハラボフ中佐を指さし、話題転換を図った。

 

「どう見てもあっちの方が年下じゃん」

 

 妹は頬を膨らませる。ハラボフ中佐より年下だと思われることが我慢ならないのだ。どう見ても年下なのに本人だけが気づいていない。

 

 副官代理のハラボフ中佐は武勲を立てる機会がなかったが、俺の左隣にいたことから注目を浴びた。クールな雰囲気の美人で、体はすらりとしていて、身長は俺とほとんど同じだ。イレーシュ准将やコレット准将には及ばないが、十分にインパクトはある。俺や妹と同じ色の髪の毛、妹と似た顔立ちから、「エリヤ・フィリップス提督の妹で、アルマ・フィリップス将軍の姉」との説が根強い。

 

「彼女、今年で三〇歳だぞ」

「嘘でしょ。化粧で大人っぽく見せてるけど、絶対に私より年下。肌を見たら一目でわかるよ」

 

 赤ん坊のような肌の持ち主に言われても説得力に欠ける。

 

「アルマより年下に見える士官なんて、士官学校を出たばかりの新品少尉ぐらいだろうが」

「私は年相応だけど」

 

 妹は童顔とつやつやした肌がどう見られるかを都合よく無視した。立派な軍人になっても、せこいところは変わっていない。

 

「お兄ちゃんは基準がおかしいのよ。周りが変だから。あれだって四〇歳手前には見えないし」

 

 あれと呼ばれたのは、俺の恩師であるイレーシュ准将だ。確かに三九歳には見えない。一三年前からずっとこんな顔だった。肌のつやはむしろ良くなっていた。まさしく年齢不詳である。

 

 イレーシュ准将は目立った武勲がなかったものの、ボーナムの奇跡の画像が公表されると、「あの美人は何者だ?」と騒がれた。顔は氷のように美しく、目つきは殺気に満ちており、髪の毛はほとんど坊主に近い短さで、身長は女性と思えないほどに高く、胸は大きく張り出している。どう見てもただ者ではない。ネットでは、「フィリップス提督直属の殺し屋」「議長警護室から派遣された特殊ボディーガード」などと噂された。

 

 俺の部下に目立つ容姿の女性が多いことから、一部のネットユーザーはチーム・フィリップスを「ハーレム・フィリップス」と呼んだ。

 

 本当は背の低い女性が好みなのに、背の高い女性を好んでいると勘違いされることもあった。同盟人女性は平均一六三センチだが、俺の女性幕僚は平均一六八センチだ。妻のダーシャは一六九センチ、前副官のコレット准将は一八二センチ、副官代理のハラボフ中佐は一六九センチである。小柄な一〇代の女性兵をオペレーターとして採用すると、急激に身長が伸びた。縁のある女性はみんな背が高かった。背が低い人と知り合ったと思えば、ブーブリル議員のように罵倒してきたり、ハッセルのように命を狙ってきたりする。神が嫌がらせをしているとしか思えない。

 

 後ろ向きなことを考えている間に画面が切り替わる。ギーチン中将が陣頭指揮をとり、敵の大軍を食い止めていた。褐色のハイネセン攻防戦の一場面だ。

 

「またギーチン将軍かあ」

 

 妹がつまらなさそうな顔をした。

 

「そんなこと言うな」

「ギーチン将軍の功績は認めるけど持ち上げすぎでしょ。本当の殊勲者はセノオ将軍とル=マール提督なのに」

「大人の事情だ」

 

 本音を言うなら、俺だって最大の殊勲者はセノオ少将とル=マール予備役少将だと思う。この二人が指揮した西北方面は、褐色のハイネセン攻防戦で最も重要だった。ボーナムから五キロしか離れていない地点に敵の集結拠点があった。一歩間違えばあっという間に突破されただろう。あの状況で三時間も戦線を維持できたのは奇跡と言っていい。

 

 政治的事情がギーチン中将を殊勲者に仕立て上げた。良識派のセノオ少将や年老いたル=マール予備役少将を持ち上げても、トリューニヒト議長にはうまみがない。一方、ギーチン中将はトリューニヒト議長のお気に入りで、見栄えのする容姿を持っており、持ち上げるにはうってつけの人材だ。

 

「ギーチン将軍をお兄ちゃんの対抗馬にしたいのかな?」

「まさか」

「討伐軍だって露骨な牽制人事じゃん。お兄ちゃんと付き合いがない人ばかり選んでるし」

「偶然だ」

「お兄ちゃんと仲が悪い士官学校七八八年度組も、たくさん参加してるよ。首席のマリキさんはカッファー方面の作戦主任だって」

「うってつけの人選だろう。彼女はエリートだからな」

 

 俺は笑いながら否定した。もっとも、妹なら作り笑いだと見抜くだろう。

 

「トリューニヒト議長は新しいスターを作りたいんだろうね。市民軍には嫌われてるから」

 

 妹はいい気味だと言いたげな顔をする。アラルコン大将がトリューニヒト議長を罵った時、止めに入ろうとした俺の腕を掴んだのは彼女だった。黙って見ていた者も内心では同意していたのだ。

 

「悪く言うのはやめろ。議長には議長の事情があるんだ」

「表では言わないよ。約束だからね。でも、陰口ぐらいは言わせて。黙ってるとストレスたまるんだから」

「ああ、わかってる」

 

 俺が「人前で議長の悪口を言うな」と釘を刺したため、市民軍隊員がトリューニヒト議長を公然と批判することはない。だが、不満はくすぶり続けている。

 

 世論に弱いトリューニヒト議長は、市民軍との関係に気を配った。戦功審査が始まったばかりなのに、昇進や勲章をばらまいた。市民軍幹部に対しては、名指しで褒めたり、会食に誘ったり、議長記念賞の名目で金品を贈ったりした。露骨すぎる機嫌取りはさらなる反発を生んだ。

 

 妹がトリューニヒト批判をしていると、若い女性が控室に入ってきた。地上軍の英雄アマラ・ムルティ准将である。今日は三人の英雄が共演するのだ。

 

 ムルティ准将を一目見た途端、ひざまずきたい衝動にかられた。根本的な格の違いを感じる。涼し気な切れ長の目、すっきりした高い鼻、つややかな唇、きめ細やかな小麦色の肌、シャープで無駄のない輪郭、美しい黒髪、まっすぐ伸びた背筋、高い身長、平たい胸……。美神の寵愛を一身に集めたかのような容姿だ。一流の女優やモデルですら、彼女には一歩及ばないだろう。軍服を飾る略綬の数は、彼女の伝説的な武勇が事実だと語る。前の世界に登場しなかったのが不思議なほどの神々しさだ。

 

「あ、お兄ちゃんっすか。初めまして。アマラ・ムルティっす」

 

 女神のような美貌から雑な言葉が飛び出した。

 

「お初にお目にかかる。小官はエリヤ・フィリップス宇宙軍大将だ」

「どうもっす。それにしても、本当にちっさいっすね」

 

 ムルティ准将は言ってはならないことを口にする。

 

「そう見えるか」

「ところでタバコ吸いたいんですけど、いいっすか?」

「この部屋は禁煙みたいだよ」

 

 俺は壁の張り紙を指差す。

 

「そうっすか」

 

 ムルティ准将は残念そうな顔をすると、ポケットからタバコとライターを取り出した。そして、何事もなかったかのように火をつけようとする。

 

 俺は唖然となった。彼女はいったい何を聞いていたのか? わざとやっているのか? 俺を試しているのか?

 

「パール! 何やってんのよ!」

 

 フリーズしていた妹がようやく動き出し、ムルティ准将からライターを取り上げる。

 

「シュガーはケチくせーな」

 

 ムルティ准将は舌打ちするとタバコをしまう。シュガーとは妹のあだ名で、パールはムルティ准将のあだ名らしい。この二人は長い付き合いなのだ。

 

「ごめんね、お兄ちゃん。この子は強いけど馬鹿なの」

「シュガーと比べたら誰だって馬鹿じゃんか」

「パールは誰と比べても馬鹿だから」

 

 妹はムルティ准将を馬鹿と決めつける。付き合いの長い彼女がそう言うのなら、本当にただの馬鹿なのだろう。こんな真実は知りたくなかった。

 

「ムルティ将軍、喫煙所に行った方がいいんじゃないか」

「了解っす」

 

 ムルティ准将が喫煙所に行った後、俺は妹に話しかけた。

 

「とんでもないな。入隊したばかりの少年兵みたいだ」

「自覚が育つ暇がなかったの。専科学校を出てすぐ英雄になっちゃって、その後はスピード昇進だったから。悪い子じゃないんだけどね」

「成果主義の弊害だな」

 

 俺はため息をついた。同盟軍はダゴン以前から成果主義を採用しており、功績をあげた者を年齢や実績に関係なく昇進させる。士官学校上位卒業者の昇進が早いのは、功績を立てやすいポストに配属されやすいからであって、学力だけで昇進するわけではない。功績さえあげれば、エリートでない者や素行の悪い者でもスピード昇進できるが、弊害も大きかった。

 

 最大の問題は精神面だ。若くして高位を得た軍人の中には、軍事能力はあるが内面は普通の若者と変わらない者が多い。人間的に未熟な者が出世し、部下を掌握できない高級軍人、味方と協調できない高級軍人、責任を取ろうとしない高級軍人になってしまう。このような人物は勇猛であっても、用兵センスが優れていても、戦力としては使いにくい。

 

 意外に思われるかもしれないが、能力面でも問題があった。同盟軍は艦長が功績を立てたら部隊長に昇進させ、部隊長が功績を立てたら提督に昇進させるシステムである。しかし、有能な艦長が有能な部隊長になるとは限らないし、有能な部隊長が有能な提督になるとは限らないのだ。実力以上の地位を得たせいで駄目になる者は珍しくない。あまりに早く出世したせいで、知識や経験が身に付かないうちに大任を任されてしまい、悲惨な目にあうなんて話はよく耳にする。

 

 公平な人事と士気向上のために導入された成果主義は、逆の結果を生んだ。功績の大小を厳密に審査することが難しいため、目立つ活躍をした者の評価が高くなり、不公平感が広がった。功績をあげるために何でもする風潮が強く、スタンドプレーや足の引っ張り合いが頻繁に起きた。功績のある者は自分たちが軍を支えていると威張り、功績のない者を侮る。功績のない者は出世を諦めて保身に走る有様だ。

 

「同盟軍が心配だよ。一線級の人がごっそり消えたからね。宇宙艦隊最大派閥の第一二艦隊系は壊滅だし。今回のばらまき人事で昇進した人が穴を埋めるんでしょ。やっぱ、成果主義はまずいよ」

「どうにかなるんじゃないか。地方には生きのいい予備役軍人がたくさんいる。パエッタ中将やアップルトン少将も、退院したら現役復帰するだろうしな」

「私が少将だよ。クーデターとラグナロックがなければ少佐程度だった女だよ。そんなのが軍司令官クラスなんて終わってる」

「俺が大将になるよりはましだぞ。トリューニヒト議長が目立つ所に置いてくれなかったら、中佐か大佐がせいぜいだ」

「お兄ちゃんは実力だよ」

「運が良かった。アルマみたいな優秀な妹がいるだけで、他の軍人よりずっと恵まれてる」

 

 俺は素直な思いを語った。

 

「ありがとう」

 

 妹は顔を真っ赤にしてうつむく。一〇万人の市民を盾にするという非情な策を立てた彼女も、本質的には俺の妹なのだ。

 

 ムルティ准将が喫煙所から戻り、三人で少し話した後、本番だとの連絡が入った。俺とムルティ准将は英雄の顔になり、妹は自信なさげについてくる。

 

 今日の番組のテーマは「恩師」であった。妹は専科学校時代に第一の恩師クリスチアン大佐が食べさせてくれた焼肉の話、最初の上官モウロ分隊長からもらったクリームパンの話、第二の恩師ディッキンソン将軍と一緒に食べた牛の丸焼きの話などをする。ムルティ准将は控室とは別人のような礼儀正しさで、英雄稼業のベテランとしての貫禄を見せた。

 

「フィリップス提督のお話をお聞かせください」

 

 司会者が俺にマイクを向ける。

 

「出会った人全員が恩師と言いたいところですが、あえて絞るなら……」

 

 俺はこれまで出会った恩師たちの話をした。

 

「――で、考えさせてくれと言うと、今すぐ決めろって怒鳴られたんですよ。ほんと、むちゃくちゃな人です」

 

 自分を軍人にしてくれたクリスチアン大佐の話。

 

「――イレーシュ提督が初めて笑ったんです。子供みたいにね。それを見て合格したって実感がわきました」

 

 勉強の楽しさを教えてくれたイレーシュ准将。

 

「――ドーソン提督から徹底的にご指導いただきました。駆け出しだった俺に真摯に向き合ってくださいました。神経質に見えますが、本当はとても人情味のある方です。最高の師に最高の教育を授けていただきました」

 

 仕事のやり方を教えてくれたドーソン大将の話。

 

「――トリューニヒト議長がおっしゃった言葉は忘れられません。『すべての人間が笑顔で同じ食卓を囲める世界を作りたい。議員と兵士と貴族と農奴が同じ食卓で同じ物を食べるんだ』と。心が震えました。いつか、そんな世界を見たいと思ったのです。あらゆる人々が一緒になってクーデターと戦った時、トリューニヒト議長の理想は現実のものとなりました」

 

 世界を見せてくれたトリューニヒト議長の話。

 

「素晴らしい師に出会えたことに感謝します。生き続けた甲斐がありました。戦い続けた甲斐がありました。本当にありがとうございます」

 

 俺はカメラに向かって頭を下げた。観覧席から割れるような拍手が飛んでくる。

 

 恩師たちはこの放送を見ていてくれるだろうか? ハイネセンポリス地上軍拘置所のクリスチアン大佐、国防委員会庁舎のイレーシュ准将、統合作戦本部のドーソン大将、そして最高評議会ビルのトリューニヒト議長……。

 

「わかってほしい」

 

 そんな思いを込めながら頭を下げた。トリューニヒト議長にわかってほしかった。じゃがいもを食べながら語り合ったことを覚えている。お好み焼き屋で交わした誓いを覚えている。場末の酒場で語ってくれた話を覚えている。今も理想を共有する同志なのだと。


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