銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第58話:黄昏の果てる時 798年3月5日~27日 ビフレスト要塞~アースガルズ~ヴァルハラ

 三月五日九時、ビフレスト要塞攻防戦が始まった。同盟軍は要塞駐留艦隊を排除すると、無数の小集団に分かれて上下前後左右の全方位から要塞へと迫った。黒旗軍のジュリオ・フランクールが考案した対要塞戦術「蜂群戦法」である。

 

 蜂の群は要塞主砲「虹の柱」の死角に入り込み、対空砲群と要塞空戦隊を制圧した。丸裸になった要塞に陸戦隊が雪崩れ込む。要塞司令官ミュンツァー伯爵が降伏したのは、一三時二〇分のことだった。わずか四時間で帝国有数の大要塞を攻略してしまったのだ。

 

 ビフレスト要塞には膨大な補給物資が蓄えられていた。弾薬や交換部品は規格が違うために使えないが、食料や水や燃料を獲得できたのは大きい。

 

 三月六日、同盟軍総司令部は第三段作戦「ヴィーグリーズ会戦」を発動し、アースガルズ総管区へと攻めこんだ。第一統合軍集団はビフレスト要塞からトラーバッハ航路に入り、第二統合軍集団はヴァーレンドルフ航路を通り、第三統合軍集団はヨトゥンヘイムからブラウエン航路に進み、三方向から帝国首星オーディンを目指す。

 

 

 

 

 

 アースガルズは帝国総人口の三割とGDPの四割を占めており、名実ともに帝国の中心を成す宙域だ。有力貴族の所領も集中している。それだけに激戦が予想された。

 

 帝国軍のアースガルズ総軍は、ミズガルズ総軍とニヴルヘイム総軍の残党を吸収し、艦艇二二万隻と地上戦闘要員二四〇〇万を擁するに至った。もっとも、正規軍は三割程度で、残りは予備役と私兵軍である。総司令官リッテンハイム公爵が督戦隊を五倍に増やし、名門出身者や復古主義者など「国体意識の強い人材」を指揮官に登用したため、忠誠心は高いとみられる。

 

 同盟軍は高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に戦う。貴族領に重点配備された敵を各個撃破し、集結した敵はまとめて叩く。

 

 アースガルズ全域で反体制派が同盟軍に呼応した。帝国軍の大軍を釘付けにする一方で、同盟軍に情報面や兵站面での支援を行う。

 

 快進撃を続ける第一統合軍集団の前に、一大要塞線「獣の檻」が立ち塞がった。レーヴェンスブルク要塞、ヴォルフスブルク要塞、ティーゲルスブルク要塞、ヤーグアールスブルク要塞が中核となり、小惑星などに築かれた二六個の基地、六万隻の艦隊と連携して防衛網を形成する。軍務尚書エーレンベルク元帥は「小舟一隻すら通さぬ」と豪語した。

 

 ところが、第一三艦隊司令官ヤン中将が、四要塞のうちの二つを同時奇襲で攻め落とした。獣の檻は三〇時間で突破されてしまったのである。

 

 ビルスキルニル星系では三個艦隊四万隻が守りを固めていた。だが、ホーランド少将が率いるD分艦隊の奇襲を受けて大混乱に陥り、ルグランジュ中将が率いる第一一艦隊主力によって殲滅された。

 

 第一統合軍集団司令官ウランフ中将は、第五艦隊を副司令官メネセス少将に任せて全体指揮に徹した。華々しい戦果とは無縁だったものの、軍集団司令官としての役割を完璧にこなし、統合作戦本部長や宇宙艦隊司令長官たるにふさわしい器量を見せた。

 

 第二統合軍集団と第三統合軍集団の活躍も目覚ましい。ルフェーブル中将のラウプハイム会戦、キャボット中将のブラウボイレン会戦、モートン少将のキルトルフ迂回作戦、ヘプバーン少将のムーダウ基地急襲は、獣の檻突破やビルスキルニルに匹敵する勝利であろう。

 

 帝国軍は同盟軍を見ただけで逃げ出すようになった。兵士の脱走や降伏が相次ぎ、数万人単位や数十万人単位での集団降伏も起きた。死守命令や焦土化命令は守られていない。徹底抗戦を叫ぶ指揮官は部下に殺され、督戦隊は率先して逃げ出す。

 

 同盟軍は戦うたびに勝ち、戦わなくても勝ち、ただ進軍するだけで帰順者と物資を獲得した。完全に波に乗ったのだ。

 

「同盟軍に敵なし!」

「正義は勝つ!」

「正規艦隊は宇宙に冠たる精鋭だ!」

 

 新聞紙上に同盟軍を褒め称える文句が乱れ飛ぶ。戦争というドラマは、俳優が出演するテレビドラマよりも、アスリートが演じる筋書きのないドラマよりも人々を楽しませた。

 

 ラグナロック作戦の英雄がメディアを占拠した。新聞は名将の用兵を論評し、テレビは名艦長や撃墜王のスコアを数え上げ、雑誌の表紙を戦場の勇者が飾る。

 

 第一三艦隊司令官ヤン・ウェンリー中将が一番の人気者だ。艦隊戦での活躍もさることながら、要塞戦での活躍が飛び抜けている。遠征軍が攻略した一七個の要塞のうち、五個を第一三艦隊単独で攻略し、三個を他艦隊と共同で攻略した。強いだけでは人気者になれないが、ヤン中将ぐらい強ければ、マスコミ受けしない言動ですら神秘性と受け止められる。

 

 ヤン中将に次ぐのは、第一一艦隊D分艦隊司令官ウィレム・ホーランド少将だろう。武勲・用兵・容姿・言動のすべてが華々しい。三年前に地に落ちたグリフォンは再び宙に舞い上がった。

 

 ホーランド少将に匹敵する人気者としては、ヤン中将の下で要塞戦の前線指揮をとるシェーンコップ准将、全銀河亡命者会議軍総司令官のシューマッハ義勇軍中将、人間離れした戦闘性を有する戦車隊指揮官ザイコフ大佐、「トランプのエース」と呼ばれるポプラン大尉・コーネフ大尉・ヒューズ大尉・シェイクリ大尉の撃墜王四人衆、同盟軍随一の美貌と武勇を誇るムルティ少佐、この一か月で三六隻の敵艦を撃沈した若き天才艦長バジリオ少佐がいる。

 

 ホーランド少将と先頭争いする第二統合軍集団先鋒のグエン少将、第三統合軍集団先鋒のヘプバーン少将の二人もなかなかの人気ぶりだ。なお、ヘプバーン分艦隊の副司令官フィッシャー准将と司令部副官スールズカリッター大尉は、前の世界では有名人だったが、この世界では話題にならない。

 

 第三六機動部隊は最も武勲をあげた機動部隊の一つに数えられる。参戦すれば一番乗りをしないことはなく、敵の艦列に突入すれば突き破らないことはなく、追撃すれば追いつかないことはなかった。

 

「フィリップス機動部隊が今日も勝ちました! 赤毛の驍将フィリップスと黒豹マリノを先頭に、精鋭五〇〇隻が四段構えの縦深陣を完全突破し……」

 

 そこでぷつりと音がした。俺がテレビのスイッチを切ったからだ。

 

「どうして切るんです?」

 

 副官のコレット大尉が不満そうな顔をした。副官付カイエ伍長、将校当番兵マーキス一等兵らはそれに同調するような視線を送る。

 

「フィリップス機動部隊って呼称が嫌なんだ。『エリヤ・フィリップスとその他大勢』みたいに聞こえるだろうが」

 

 小心者にも譲れないことはある。マスコミが良く使う「フィリップス機動部隊」の呼称がその一つだ。有名指揮官の部隊は「ヤン艦隊」「ホーランド分艦隊」などと指揮官名で呼ばれる。カリスマ指揮官ならそれもいいだろう。しかし、凡庸な俺にはふさわしくない。

 

「私はその方が嬉しいですけど」

「司令官は部隊のオーナーじゃない。一時的に預かってるだけに過ぎない。第三六機動部隊の隊員という点ではみんな同じなのに、俺一人が目立つなんて筋違いだ」

「閣下のリーダーシップあっての第三六機動部隊じゃないですか」

「隊員あっての第三六機動部隊、隊員あっての司令官だよ」

 

 俺の言ってることは綺麗事ではなく単なる事実だ。名将は部下を引っ張るが、凡将は部下に引っ張られる。引っ張られているのに主役を名乗るなど滑稽ではないか。

 

「マスコミは俺の突撃を『フィリップス・チャージ』と呼んでるけどな。俺がワーッと突っ込むだけで勝てるってもんじゃない。突っ込むだけで勝てるなら、誰だって突撃の名手になれる」

 

 数ある戦術の中でも突撃ほど才能に左右されるものはない。タイミングとポイントを見極める眼が必要だ。ホーランド少将は戦場を見るだけで正解がわかるという。前の世界で活躍したビッテンフェルト提督は猪突猛進と言われるが、天性の戦術眼を持っていた。

 

 戦術眼がない俺はチーム力に頼った。ベッカー少佐の情報部が情報を集める。ラオ少佐の作戦部がタイミングやポイントを割り出す。チュン・ウー・チェン参謀長は、全体を見ながらアドバイスをする。

 

 突撃に必要な才能は戦術眼の他にもう一つある。それはカリスマ性だ。平凡な兵士に「この人と一緒に死にたい」と思わせる魅力を備えた指揮官が、突撃の名手になれる。ホーランド少将やビッテンフェルト提督は、戦術眼に加えて天性のカリスマ性を持っていた。

 

 カリスマ性のない俺は環境作りに力を入れた。部下を手厚く待遇することで部隊への帰属意識を高め、縦横の風通しを良くすることで隊員同士の戦友意識を高め、「この部隊のために死にたい」「戦友のために死にたい」と思わせるようにする。

 

「名将の突撃は部下を引っ張る突撃だけど、俺の突撃は部下に後から押される突撃だ。第三六機動部隊の勝利は隊員全員の勝利なんだ」

 

 そう言って説明を締め括ったところで、最先任下士官カヤラル准尉が口を挟んできた。

 

「フィリップス提督は七年前からちっとも変わってないですねえ」

「そうか?」

「褒められるたびに『みんなのおかげだ』とおっしゃってました」

「君たちがいなかったら仕事にならなかったからな」

 

 俺がカヤラル准尉と出会った頃のことを思い浮かべる。士官になったばかりで仕事が全然できなかったため、彼女らに頼りきりだった。

 

「その気持ちがあるかぎり、あなたは伸び続けますよ」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長が、焼きたてのパンを見るのと同じ目で俺を見た。その右手には潰れたサンドイッチがある。

 

「参謀長、サンドイッチをもらえるか?」

「どうぞ」

「ありがとう。ちょうどいい潰れ具合だ」

 

 サンドイッチを褒めることで話題を変える作戦に出た。

 

「恥ずかしくなると話題をそらそうとするところも変わってませんね」

 

 カラヤル准尉が目を細める。副官付のカイエ伍長、司令部員のフェーリン少尉やバダヴィ曹長などフィン・マックール以来の部下がうんうんと頷く。

 

「これでも進歩したよ。昔はもっと声が上ずってたから」

 

 イレーシュ副参謀長が余計なことを言う。俺が言い返そうとしたところ、チュン・ウー・チェン参謀長が先に口を開いた。

 

「こうして笑ってられるのは勝ってるからです。負け戦だとこうはいきません」

「それもそうか」

 

 まったくもって参謀長は正しい。勝ってるからこそ笑っていられる。それは同盟軍全体に共通することだ。勝利が戦意を高揚させ、さらなる勝利を呼び込む。そんな好循環が起きた。

 

 前の世界で戦記を読んだ時は、帝国領侵攻作戦が成功することなどありえないと思った。だが、現在の状況から考えると、焦土作戦が実施されなかったら成功したのかもしれない。内戦が起きなかったとしても、反乱分子がこれだけ潜伏していたら、まともに抵抗するのは困難だ。

 

 もしかすると、ラインハルトの焦土作戦には反乱対策の側面もあったのではないか。物資を奪って反乱を抑止し、軍隊を引き上げて内通者を前線から引き離し、同盟軍を足止めして後方の反乱分子を粛清する時間を稼ぐ。この状況から逆算した妄想でしかないが。

 

 帝国軍は悪循環に陥った。敗北が戦意を低下させ、さらなる敗北を呼び込んだ。リッテンハイム公爵は厳罰主義で軍紀を引き締めようとしたが、脱走者や降伏者を増やしただけに終わった。

 

 ギャラルホルン作戦開始からの二週間で、アースガルズ総軍は艦隊戦力の四割と地上戦力の五割を失った。

 

 そんな時にブラウンシュヴァイク派が動き出した。ミュッケンベルガー元帥率いる八万隻が「帝都を救援する」と称し、リヒテンラーデ=リッテンハイム連合の拠点を制圧しながら、オーディンを目指す。

 

 

 

 

 

 同盟軍とアースガルズ総軍が争う段階は終わり、同盟軍とブラウンシュヴァイク派のどちらがオーディンを陥落させるかが焦点となっていた。

 

 

 

 三月二四日、第一統合軍集団、第二統合軍集団、第三統合軍集団が、帝国首星系ヴァルハラから二〇光年の距離に迫った。

 

 ここで後方主任参謀キャゼルヌ少将、第一統合軍集団司令官ウランフ中将、第一三艦隊司令官ヤン中将らが進軍停止を求めた。艦艇部隊が急行軍で疲弊している上に、進軍が早すぎて補給が追いつかなくなっている。そんな状況で進軍を続けるのは危うい。

 

 ヴァルハラ星系には一三万隻から一五万隻が集まっているものと思われた。ラインハルト艦隊が合流したとの情報もある。

 

 仮にヴァルハラの大艦隊を突破したとしても、オーディンの地上部隊三八〇万人と戦わなければならない。一二〇万人の近衛軍と九〇万人の武装憲兵は装甲車両や重火器を保有し、一七〇万人のの帝都防衛軍は機甲部隊・航空部隊・水上部隊まで持っている。それとは別に軽火器で武装した警察官四〇〇万人と社会秩序維持局員一〇〇万人がいるのだ。

 

 大軍と正面から戦うよりは、アースガルズ総軍とブラウンシュヴァイク派が争っている間に態勢を立て直した方がいい。キャゼルヌ少将らはそう考えた。

 

 一方、フォーク准将ら総司令部作戦参謀は進軍続行を主張した。敵に態勢を立て直す時間を与えるべきでないというのがその理由だ。アースガルズ総軍が自壊現象を起こし、ブラウンシュヴァイク派に吸収されてしまう可能性も指摘された。

 

 日頃からの確執が両派の対立を深刻なものとした。総司令部の作戦参謀は正確な情報を持っているにも関わらず、必要最低限しか開示しようとしない。前線部隊は何も知らされないままに作戦を押し付けられる形となった。結果としては連戦連勝でもいい気分はしない。

 

 議論の結果、同盟軍は進軍を続けることになった。二万隻を後方警備に残し、九万六〇〇〇隻がヴァルハラへと進む。

 

 俺はマフィンを食べて決戦に備えた。六個目を口に運ぼうとしたところで、偵察に出ていた独立駆逐艦群司令ビューフォート大佐から通信が入った。画面の中央には「緊急」の文字が浮かんでいる。

 

「どうした?」

「敵を発見しました。距離は四〇〇〇光秒(一二億キロメートル)。総数は九万隻前後。ローエングラム元帥の旗艦ブリュンヒルトの姿が確認されました」

「リッテンハイム公爵の旗艦は?」

「確認されませんでした。ローエングラム元帥が総司令官だと思われます」

「なんだって!?」

 

 常勝の天才が総指揮を取る。そう聞いただけで恐怖を覚えた。

 

「レグニツァの仇を討つ機会ですな」

 

 ビューフォート大佐はダンディに微笑む。さすがは歴戦の勇者だ。こんな時でも平常心を失わない。

 

「君の言う通りだ」

 

 俺は必死で笑顔を作る。苦境にあっても笑い続けるのが指揮官の義務だ。

 

「勝ちましょう」

「そうだな」

 

 笑顔で敬礼を交わし合ってから通信を終えた。その後、ホーランド少将に報告を送る。ビューフォート大佐が得た情報は、ホーランド少将からルグランジュ中将を経て総司令部に伝わり、全軍の共有するところとなった。

 

 三月二五日七時二五分、同盟軍と帝国軍の距離は一〇光秒(三〇〇万キロメートル)まで縮まった。

 

 帝国軍は首星オーディンを半包囲するような弓状の陣を敷いた。左翼に旧中立派のメルカッツ上級大将率いる三個艦隊、右翼にリッテンハイム派のエッデルラーク上級大将率いる三個艦隊、中央部にラインハルト率いる三個艦隊、後方に予備として二個艦隊が布陣する。一四万隻のうち、正規軍は四万隻前後、残りは予備役と貴族の私兵軍であった。

 

 アースガルズ総軍に残された正規軍艦艇戦力は、リッテンハイム艦隊が三万隻、ラインハルト艦隊が二万隻、リンダーホーフ艦隊が一万隻、旧中立派艦隊が二万隻と言われる。このうち、参戦しているのは、ラインハルト艦隊とリッテンハイム艦隊がそれぞれ一万隻、残り二万隻は旧中立派艦隊だ。首星系での決戦にも関わらず、切り札の正規軍を半数しか投入していない。

 

 正規軍の残り半数の行方については、二つの可能性が想定された。一つはブラウンシュヴァイク派を阻止に向かった可能性、もう一つは別働隊として控えている可能性だ。

 

 同盟軍総司令部は別働隊を警戒した。ラインハルトの実績を考慮すると、各方面に戦力を分散するよりは、戦力を集中して同盟軍を一気に叩く方が似つかわしい。前線を薄くして予備を厚くすることで別働隊に備えた。

 

 第七艦隊と第一〇艦隊を基幹とする第三統合軍集団が同盟軍左翼を担う。機動戦に長けた第三統合軍集団司令官ホーウッド中将が指揮をとる。

 

 第三艦隊と第九艦隊を基幹とする第二統合軍集団が同盟軍右翼に展開する。老巧の第二統合軍集団副司令官ルフェーブル中将が指揮をとる。

 

 第五艦隊と第一一艦隊を基幹とする第一統合軍集団が同盟軍中央に布陣した。知勇兼備の第一統合軍集団司令官ウランフ中将が指揮をとる。

 

 三方面の中間点にロボス総司令官率いる本隊が鎮座する。司令官直轄部隊の他、第一統合軍集団から引き抜いた第一三艦隊、第二統合軍集団から引き抜いた第八艦隊を指揮下に置いた。最大の戦力を持つこの部隊が決戦戦力となるだろう。

 

 ヴァルハラに集結した同盟軍は九万六〇〇〇隻。数の上では劣っているが、練度は帝国正規軍よりも高く、戦意は最高潮に達している。旧式艦ばかりの敵と異なり、全軍が現用艦艇だ。総合的な戦力は同盟軍が勝る。

 

 D分艦隊の全艦に緊急放送を知らせるチャイムが鳴り響いた。全艦のスクリーンにホーランド少将の立体画像が現れ、演説を始める。

 

「D分艦隊の精鋭諸君! ローエングラム元帥の常勝神話に幕を閉じる時が来た! 

 誰が閉じるのか? それはウィレム・ホーランドと諸君だ!

 新しい神話の主人公は誰か? それはウィレム・ホーランドと諸君だ!

 我々の神話を今日この場所から始めようではないか!」

 

 ホーランド少将が拳を振り上げた。その顔は紅潮し、両目には恍惚とした光が輝いており、完全に酔っている。同じ酔いを二三〇〇隻が共有した。

 

 周囲が歓声に包まれる中、俺だけは恐怖に震えていた。ホーランド少将がラインハルトに返り討ちにあうイメージしか湧かないのだ。そうなった場合、俺が真っ先に死ぬ。これまでの人生が映像となって脳内を流れ始める。

 

「マフィンをくれ」

 

 俺は必死で糖分を補給したが、一向に震えが止まらない。デスクの上にマフィンの箱がいくつも積み上げられた。

 

「司令官閣下、いかがなさいましたか?」

 

 副官のコレット大尉が心配そうに俺を見る。体が震えてるのに気づいたようだ。

 

「これは武者震いだよ」

「武者震いですか……?」

「あのローエングラム提督に一番槍をつけるんだぞ? 軍人としてこれ以上の名誉はない。戦いたくてうずうずしてるんだ」

 

 爽やかに嘘をつく。

 

「差し出口を叩いてしまいました。申し訳ありません」

「謝ることはないさ。司令官の体調管理は副官の仕事だ。気づいたことがあったら、どんどん言って欲しい」

「ありがとうございます」

 

 コレット大尉の目がきらきらと輝く。素直過ぎる反応に少し罪悪感を覚えた。

 

「礼を言うのは俺の方だよ」

 

 俺はそこで話を打ち切った。いつの間にか震えは収まっている。自分の嘘に励まされてしまったらしい。我ながら本当に単純だ。

 

 やがて戦いが始まった。戦艦と巡航艦の主砲がビームを吐き出す。中和磁場が敵のビームを受け止める。天才との戦いにしては凡庸な幕開けだ。

 

 一〇分ほど砲火の応酬が続いた後、敵が主砲を乱射しながら突っ込んできた。左翼と右翼の敵も突撃を開始する。ラインハルトらしい積極策なのか、ラインハルトらしからぬ粗雑な策なのか、にわかには判断できない。

 

 敵の戦術は稚拙そのものだ。旗艦ブリュンヒルトが先頭に立ち、各部隊がビームやミサイルを派手にばら撒きながら突っ込んでくる。それなのにこれまでの敵よりずっと強い。

 

 

 

 

 

「なんて圧力だ」

 

 俺はメインスクリーンを睨みつけた。指揮官の義務として落ち着いたふりをしているものの、内心は焦りっぱなしだ。

 

「貴族は戦闘経験の多少に関わらず、勇気を見せたがるところがあります。ローエングラム元帥は予備役と私兵軍を活用するために、あえて積極策をとったのはないでしょうか。単純な突進なら数の利が生きてきます」

 

 ラインハルトの狙いをチュン・ウー・チェン参謀長が解説してくれた。

 

「なるほど、さすがはローエングラム元帥だ」

「この勢いでは生半可な策は通用しません。当分は守勢に徹するのみですね」

「頑張ろうか」

 

 状況はまったく変わっていないのに、何が起きているかを理解できるだけで心が落ち着く。こんな時、チュン・ウー・チェン参謀長の助言より有効な鎮静剤はない。

 

 第三六機動部隊は命がけで戦った。戦艦戦隊と巡航艦戦隊が主砲を斉射し、駆逐艦戦隊が短距離砲で弾幕を張り、遠近両方から火力を叩きつける。母艦戦隊配下のスパルタニアンがワルキューレの浸透を防ぐ。独立戦艦群・独立巡航群・独立駆逐艦群・独立母艦群は、予備として戦線の穴を埋める。

 

「ここで食い止めろ! 俺たちに勝敗がかかっているぞ!」

 

 俺はマイクを握って部下を励ました。旗艦アシャンティの中和力場と敵のビームがせめぎ合い、虹色の光がスクリーンを照らす。

 

「司令官閣下、右翼がやや薄くなっております」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長が俺に耳打ちする。

 

「予備を動かそう。独立駆逐群から割ける戦力は?」

「一個駆逐隊が限度です」

「少々心細いな。独立巡航群に余裕はあるか?」

「二個巡航隊は大丈夫かと」

「一個駆逐隊と一個巡航隊を動かそう。これで右翼は支えきれるかな」

「問題ありません」

「よし、予備を動かすぞ」

 

 一個駆逐隊と一個巡航隊が第三六希望部隊の右翼を補強した。予備戦力が一個巡航隊だけでは心許ないため、安定している中央から一個駆逐隊を本隊に戻す。

 

「左翼から支援要請が入りました」

「そこまで差し迫ってるようにも思えないな。参謀長はどう思う?」

「現有戦力で十分に守り切れます。右翼が完全に安定するまでは、予備戦力を確保しておく方がよろしいでしょう」

「そうだな」

 

 左翼には「現有戦力でもうしばらく頑張って欲しい」と伝えた。戦いが続く間、指揮官はひっきりなしに入ってくる支援要請と限られた戦力の板挟みになる。

 

 中央の第一統合軍集団、左翼の第三統合軍集団、右翼の第二統合軍集団は、帝国軍の猛攻を食い止めるだけで精一杯だった。拙劣な攻撃でもこれだけ手数が多いと対処しきれない。

 

「貴族どもは守勢に弱い! 前線は守るのでなく攻めるつもりで戦え! 別働隊を引きずり出せば我が軍の勝ちだ!」

 

 ロボス元帥が全軍を叱咤する。どこかに隠れている別働隊が帝国軍の決戦戦力であり、前線部隊の突撃は目眩ましというのが同盟軍の共通認識だ。

 

 ホーランド少将の指揮のもと、D分艦隊は迫り来る敵を受け流しては撃ち落とす。巧妙な戦いぶりではあるが、いつもの気迫は見られない。受け身の戦いでは英雄願望が満たされないのだろう。

 

 第一一艦隊全体としては奮戦していた。司令官ルグランジュ中将が陣頭に立って部下を鼓舞し、各分艦隊はそれぞれの戦域を固く守り、帝国軍を食い止める。

 

 ルグランジュ中将は駆け引きがうまくないが、部下の士気を高い水準に保つことにかけては並ぶ者がない。前の世界では、ドーリア星域で天才ヤン・ウェンリーと戦い、奇襲を受けたにも関わらず最後の数隻まで抵抗し続けた。駆け引き無しの殴り合いにおそろしく強い提督なのだ。突っ込んでくる敵を迎え撃つだけの戦いは望むところであった。

 

 帝国軍の戦いぶりは凄まじいの一言に尽きた。湯水のように予備を注ぎ込み、撃退されるたびに正規軍をコアとして艦列を立て直し、同盟軍へと突っ込んでいく。帝国貴族の騎士道的ロマン主義は嘲笑の種だが、こんな形で発揮されると手に負えない。

 

 五度目の突撃を撃退してから一時間後、六度目の突撃が始まった。これまでと比べて圧力が弱いような気がする。

 

「敵は疲れてきたようですね」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長は俺の方を見た。

 

「別働隊が出てくる頃だな。気を引き締めないと」

「いないかもしれませんよ」

「えっ?」

 

 何を言ってるのか分からなかった。他の幕僚たちも同じような表情をする。

 

「戦闘開始から一〇時間が過ぎたのに、別働隊は哨戒網にまったく引っかかりません。四万隻の大軍を完全に秘匿するのは不可能です。最初からいないと考えるとしっくりきます」

 

 驚くべき推論ではあったが筋は通っている。

 

「言われてみるとそうだ」

「ローエングラム元帥はありもしない別働隊の存在を信じさせようとしている。私にはそう思えます」

「何のために?」

「対奇襲シフトを敷かせるためではないでしょうか。予備が厚くなった分だけ前線は薄くなりますから。最初から第八艦隊か第一三艦隊が前線に出ていれば、敵の突撃はこんなに続かなかったでしょう」

「別働隊の存在をちらつかせることで、多くの戦力が予備に回るよう仕向ける。そして、薄くなった前線を強襲に次ぐ強襲で突破する。そんなところかな?」

「勢い任せの強襲で勝てると思うほど、ローエングラム元帥は甘くないと思いますよ」

「そうだよなあ」

「戦いを長引かせるのが目的だとは思います。なぜ長引かせたいのかはわかりません」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長にわからないことが、他の者にわかるはずもない。それでも俺は乏しい知恵を振り絞って考えた。

 

「迂回してヨトゥンヘイムからミズガルズを衝くとか」

「何週間もかかります。我が軍を半日や一日拘束したところで無意味です」

「じゃあ、ブラウンシュヴァイク派と和解したんだ。俺たちを挟み撃ちにするつもりだよ」

「それならば、正規軍をすべて投入するはずです」

「確かに弱兵を使うのは変だね」

 

 ラインハルトが同盟軍を挟み撃ちにするつもりなら、配下の八個分艦隊をすべて連れてくるはずだ。ヴァルハラに参戦したのは四個分艦隊に過ぎず、最精鋭のロイエンタール分艦隊とミッターマイヤー分艦隊、最も忠実なキルヒアイス分艦隊とプレスブルク分艦隊が含まれていない。リッテンハイム艦隊やリンダーホーフ艦隊を参戦させないのも変だ。

 

「別働隊は存在しない。今のところ分かるのはそれだけです」

「参謀長、総司令部は気づいてると思うか?」

「コーネフ中将やフォーク准将は私よりずっと有能です。とっくに気づいてるんじゃないでしょうか」

「言うだけ言っておこう。念を入れるに越したことはない」

 

 俺はコレット大尉に具申書を作るよう命じた。しかし、五分後にはその必要がなくなった。

 

 ヤン中将の第一三艦隊が帝国軍左翼の左側面へと回りこんだ。ルフェーブル中将の第二統合軍集団は守勢から攻勢に転じる。総司令部は別働隊が存在しないと判断し、予備を投入したのだ。

 

 帝国軍左翼は三方面の中で最も強い。正規軍比率が飛び抜けて高く、名将メルカッツ上級大将が総指揮をとっている。それでも、二方向からの攻撃には耐えられなかった。正確に言うと、予備役部隊と私兵軍が耐えられなかった。帝国軍左翼の勢いが急速に落ちる。

 

 メルカッツ上級大将は素早く援軍を送り、崩れかけた部分を補強した。惚れ惚れするほどに鮮やかな対処である。第一三艦隊の側面攻撃は阻止されたかに思われた。帝国軍左翼が崩れる気配はない。

 

 ここでヤン中将は予想外の行動に出た。帝国軍左翼が陣形を再編している間に、背後へと回りこんでしまったのである。

 

 メルカッツ上級大将はヤン中将の意図に気づき、正規軍五〇〇〇隻を差し向けた。しかし、帝国正規軍は同盟正規艦隊より練度が低く動きが鈍い。第一三艦隊はあっさりと背後を取った。

 

 

 

 

 

「決まりましたね」

 

 ラオ作戦部長が呟いた。

 

「そうだな」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長が頷く。彼らの言ってることが俺にはわからない。

 

「参謀長、どういうことだ?」

「貴族は逆境に慣れていません。勇敢なのはロマンチシズムに酔っていられる間だけです」

「なるほど、良くわかった」

 

 俺はスクリーンに目をやった。帝国軍左翼が急速に崩れだす。ヤン中将の迂回機動が貴族の酔いを覚ましたのだ。

 

 ラインハルトに左翼を救援する余裕はない。ラインハルト直属のビッテンフェルト分艦隊、ワーレン分艦隊、ルッツ分艦隊、グリューネマン分艦隊は、激戦に次ぐ激戦で疲弊している。予備戦力はとっくに尽きた。

 

 右翼のエッデルラーク上級大将は余裕を残していた。味方を盾にするという門閥貴族らしい作戦のおかげで、手勢を温存できたのである。しかし、中央と左翼を盾にして逃げ切ろうと考えているのか、救援を送ろうとはしない。

 

 孤立した帝国軍左翼部隊はなおも前進を続けた。その姿には悲壮感すら漂っている。足を止めた瞬間、騎士は単なる弱兵に戻ってしまう。一分一秒でも長く騎士でいたいと彼らは願っているように見える。

 

 その後背からヤン中将が猛攻を加えた。後ろから叩くことで、貴族たちに「お前たちは騎士ではない。追い立てられる子羊だ」という現実を突きつける。

 

 前後から挟撃を受けても、メルカッツ上級大将は沈着さを失わない。戦っている部隊の中から兵力を素早く抽出し、にわかにこしらえた援軍を矢継ぎ早に送り、戦線の綻びを取り繕う。行動の一つ一つは平凡だ。速度と正確さが非凡なのである。戦記に書かれた「堅実にして隙なく、常に理に適う」とのメルカッツ評を本当の意味で理解できた。

 

 逆に言うと、これがメルカッツ上級大将の限界であった。単純な強さならヤン中将やラインハルトに匹敵する。しかし、この二人のように戦局を塗り替える強さではない。完敗を惜敗にし、勝利を大勝にすることはできるが、負け戦を勝ち戦にすることはできないのだ。

 

 帝国軍左翼部隊の前進がついに止まった。その瞬間、同盟軍全艦のスクリーンに総司令官ロボス元帥が現れ、決定的な指示を下した。

 

「今だ! 反転攻勢を開始する!」

 

 同盟軍は戦場全域で攻勢に出た。予備の第八艦隊と三個独立分艦隊もこれに加わる。

 

「全艦突撃!」

 

 俺は右腕を力いっぱい振り下ろした。第三六機動部隊が突撃し、D分艦隊が突撃し、第一一艦隊が突撃し、第一統合軍集団が突撃する。同盟軍と帝国軍が真正面からぶつかり合う。

 

 私兵軍と予備役部隊が最初に崩れ、ラインハルト艦隊が巻き込まれるように崩れだす。ラインハルトは混乱の中で陣形再編と戦力集中を行うという離れ業に挑み、ある程度の成果を上げる。それでも、全体としては崩壊状態だった。

 

 第一統合軍集団は正面から突入し、第二統合軍集団と第三統合軍集団が左右から締め付け、第八艦隊と第一三艦隊が背後へと回りこみ、帝国軍を包囲殲滅しようとした。この時、ブラウンシュヴァイク派のミュッケンベルガー元帥がヴァルハラに入り、ヨトゥンヘイムとアルフヘイムへの道を遮った。同盟軍とブラウンシュヴァイク派が暗黙のうちに包囲網を作る。

 

 

 

 

 

 包囲の環が閉じる直前、一本の光の矢がヴァルハラを駆け抜けた。白く優美なブリュンヒルトが先頭に立ち、無骨な灰色の軍艦がその後に続く。一瞬にして包囲網は突破された。

 

 逃げ遅れた帝国軍は降伏の信号を出しながら、ブラウンシュヴァイク派の側へと向かった。彼らはもともと同じ貴族同士だ。鞍替えするのに抵抗感がないのだろう。

 

 敗残兵を収容しようとするブラウンシュヴァイク派とそれを阻もうとする同盟軍の間で、ヴァルハラ会戦の第二ラウンドが始まった。同盟軍は数においても質においても優っているが、心身は疲れきっており、物資が不足をきたしている。苦戦は必至と思われた。

 

 先制したのはブラウンシュヴァイク派だった。若き猛将ヒルデスハイム伯爵が先鋒となり、ノルトルップ上級大将やキッシング上級大将といった勇将が共に攻めかかる。

 

 同盟軍の戦意は異常なほどに高揚していた。ローエングラム元帥とメルカッツ上級大将を一度に打ち破った事実が疲れを忘れさせた。ヒルデスハイム伯爵を一撃で粉砕し、ノルトルップ上級大将とキッシング上級大将を立て続けに突破し、ミュッケンベルガー元帥の本隊へと向かっていく。

 

 しかし、ミュッケンベルガー元帥の前衛にぶつかったところで同盟軍は止まった。エネルギーとミサイルが足りなくなり、十分な火力を発揮できなかったのだ。

 

 膠着状態が続いた後、ブラウンシュヴァイク派が後退に移った。同盟軍の疲弊に付け込むのは難しいと判断したのだろう。敵将ミュッケンベルガー元帥は歴戦の雄だけあって、勝敗を見切るのが早い。

 

 同盟軍は物資不足がたたって追撃を徹底できなかった。それでも敗残兵の半数を撃沈するか捕獲し、ブラウンシュヴァイク派にも相応の打撃を与えた。

 

 三月二六日一四時、同盟軍は帝国首星オーディンへと押し寄せた。第八艦隊と第一三艦隊が軍事衛星群「ドラウプニル」を飽和攻撃で叩き壊す。帝都防衛軍の軌道防衛隊は姿を見せない。衛星軌道をあっさりと制圧できた。

 

「オーディンへ降下せよ!」

 

 ロボス元帥はオーディン降下作戦「スルトの炎剣」を発動させた。地上部隊六一〇万人がシャトルに乗って降下する。

 

 帝国首星の地表は無政府状態に陥っていた。労働者・農民・失業者・奴隷が暴動を起こし、邸宅や公共機関を襲い、刑務所から囚人を解き放った。暴徒の総数は数千万に達する。

 

 総司令部はオーディンの暴動を「自発的革命」と認定し、援助を開始した。暴徒、いやオーディン革命軍は同盟製の武器を手に取り、同盟軍から教えられた通りに「革命万歳!」「民主主義万歳!」と叫んだ。軍隊や警察が動く気配はない。同盟軍と革命軍は快進撃を続けた。

 

 革命の波がオーディン全土を覆い尽くした。街中に掲げられた双頭鷲旗が次々と引きずり下ろされ、代わりに同盟の三色旗が掲げられる。

 

「革命万歳!」

「自由万歳!」

「民主主義万歳!」

「ハイネセン万歳!」

 

 革命軍は三色旗を掲げ、帝国語で民主主義を讃えながら路上を練り歩く。その周囲を同盟軍が固める。

 

 三月二七日午前八時、同盟軍と革命軍が銀河帝国首星オーディンを掌握した。史上最大の作戦は二か月目にして大団円を迎えた。

 

 神々の黄昏は終わり、人間の朝が始まる。




本話終了時点勢力図

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