銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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後半、胸糞悪いエピソードあります


第120話:銀河悪役伝説 804年3月末 惑星シャンプール

「なぜ、彼らはルドルフを選んだのか?」

 

 この問いは数世紀にわたって繰り返されてきた。後世の人々には、ルドルフが選ばれた理由が理解できなかった。だから問い続けた。

 

「騙されたからだ」

 

 ある者はそう答えた。まともに考えれば、ルドルフのような狂人を選ぶはずがない。無知な連中がルドルフに騙されたのではないか。

 

「責任を取りたくなかったからだ」

 

 ある者はそう答えた。まともに考えれば、ルドルフのような狂人を選ぶはずがない。無責任な連中がルドルフに政治を丸投げしたのではないか。

 

 銀河連邦末期、有権者は投票するたびに裏切られた。既成政党の堅実さに期待しても、金持ちや大企業を潤わせるだけだった。改革派の清新さに期待しても、綺麗事を聞かされるだけだった。強硬派のパワーに期待しても、闇雲にぶち壊されるだけだった。

 

「誰に投票しても変わらない」

 

 人々はため息をつき、政治に背を向けた。ミーイズムが銀河を覆いつくした。政治や社会を無視し、自分一人の生活を死守することが賢い選択だと思われた。

 

 歴史家に言わせると、その失望こそが無責任であった。投票だけが有権者の仕事ではない。期待に応えるよう要求し、仕事ぶりを監視し、おかしいと思ったら批判を加えるべきだった。政治に期待するだけで、要求も監視も批判もしない。うまくいかなければ、「期待外れだ」と怒って引きずりおろす。政治に失望する前に、自分たちの姿勢を省みるべきではなかったか。

 

「ルドルフの登場は、民衆が根本的に、自主的な思考とそれにともなう責任よりも、命令と従属とそれにともなう責任免除のほうを好むという、歴史上の顕著な例証である。民主政治においては失政は不適格な為政者を選んだ民衆自身の責任だが、専制政治においてはそうではない。民衆は自己反省より、気楽かつ無責任に為政者の悪口を言える境遇を好むものだ」

 

 ハイネセン記念大学文学部のダリル・シンクレア教授は、著書『民衆政治家ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム』にそう記した。

 

 大多数の人々が「失望」し、「賢い選択」を行った。それは単なる責任放棄だった。棄権は反対の意思表示でなく、白紙委任状であることを理解していなかった。その結果、ルドルフという怪物に権力を与えてしまったのだ。

 

 自由惑星同盟では、自主性と自己責任を重視する教育が行われている。自分で考えて判断する。責任をもって行動する。それこそがルドルフを超克する道だと思われた。

 

「無知は罪である。無責任は罪である。それを知るために歴史を学ぶのだ」

 

 ギュンター・マハト師がハイネセン記念大学開校式で語った言葉は、今もなお歴史教科書の冒頭に掲げられている。

 

 人類はルドルフを超克できたのだろうか? その問いに対する答えを知りたいならば、選挙を見ればいい。

 

「ひどい選挙だ」

 

 俺はため息をついた。トリューニヒト最高評議会議長個人を肯定できるかどうかが、争点になっている。肯定派は議長をひたすら持ち上げる。否定派は議長をひたすらこき下ろす。選挙戦は不毛な口喧嘩に堕した。

 

 その発端を作ったのはトリューニヒト議長自身である。特定の集団を敵と決めつけ、特定の価値観を頭ごなしに否定し、特定の人物や地域を名指しで叩いた。

 

「金持ちは泥棒だ。犯罪者に必要なのは減税ではなく懲罰だ」

「帝国には貴族、同盟には知識人という特権階級がいる」

「同盟市民の条件とは何か? 同盟を愛し、同盟文化に馴染み、同盟語を話し、人種に優劣があると勘違いせず、男は女より偉いと思い込まず、セクシャルマイノリティや障害者を差別しないことだ。それができない者は故郷に帰りなさい」

「テロリストは存在自体がギルティだ。裁判にかけるまでもない」

「国立大の学費は安すぎる。二倍にしよう。経済学部と法学部と工学部は五倍、医学部は一〇倍でいい」

「私はこの国の元首だ。市民を豊かにするためなら、帝国人が全員飢え死にしたって構わない。市民に仕事を与えるためなら。帝国人が全員失業したって構わない」

「ラウス反戦党は帝国の手先だ。同盟軍を追い出し、帝国軍を引っ張り込もうとしている」

「地方はいいねえ。空気が臭わない。都会は酷いもんだ。臭くてたまらない。インテリや金融屋がうろついているからね。選民意識の臭いがするのさ」

 

 これらの発言は賛否両論を引き起こした。ある者は「許せない!」と怒り、ある者は「良く言ってくれた!」と喝采する。

 

 トリューニヒト議長個人に注目が集まり、その他の論点は曖昧になった。最重要問題だったはずの経済と道徳は脇に追いやられた。野党が政策論争を望んでも、「そんなことはどうでもいい! トリューニヒトを叩け!」という支持者の叫びに流されてしまう。

 

 そんな中、国防委員会臨時会議が開催された。いろいろと名目を付けているが、実際はサプライズ人事に関する話し合いである。有名軍人を昇進させ、有権者の機嫌を取ろうというのだ。

 

「シェーンコップ大将を昇進させましょう」

 

 サリー・マッカラン人的資源担当国防副委員長の提案は、出席者たちを驚かせた。いろんな意味で有り得ない人事だったからだ。

 

「条件を満たしておりませんぞ」

 

 ゲアハルト・フォン・シュテーガー国防委員が難色を示した。宇宙軍上級大将に昇進するには、「大将として正規艦隊もしくはそれに準ずる艦隊を指揮した経験」、「大将として枢要機関に勤めた経験」のいずれかが必要とされる。シェーンコップ大将はどちらの条件も満たしていない。

 

「特例を認めれば良いではありませんか。近年ではフィリップス提督の例があります。将官五階級制が導入される前の話ですが」

「特例はあくまで特例です。簡単に認めていいものではありません」

 

 シュテーガー委員は孫と同世代の国防副委員長をたしなめた。エリヤ・フィリップス提督は国家分裂の危機を防いだ。シェーンコップ大将にそれだけの功績があるのか。

 

「上級大将は軍のトップですからな」

 

 ファルハード・カリミ国防委員が、遠回しに「あいつはトップにふさわしくない」と指摘した。トリューニヒト政権が重視する能力は、政府の意向を忖度する能力、大勢に迎合する能力、波風を立てない能力、不祥事を揉み消す能力である。シェーンコップ大将は比類ない武勲の持ち主だが、最も必要な能力を欠いていた。

 

「いいじゃないですか。現場で叩き上げた男がトップに立つ。同盟軍サポーターの夢ですよ!」

 

 ワン・ヤンミン国防委員の目がキラキラと輝いた。

 

「お国のために尽くしたら、叩き上げの帝国人でもトップに立てる。同化政策のアピールになりますな」

 

 ハリス・マシューソン後方担当副委員長も前向きな姿勢を示す。

 

「彼は専科学校卒の陸戦隊員です。大将でも異例の出世というべきです。功績に報いるには十分でしょう。あえて前例を破るのであれば、人事の公正を損ない、ひいては彼の名を傷つけることになりましょう」

 

 シュテーガー委員はさらに反論し、他の委員も次々と反対意見を述べた。ウォルター・アイランズ委員長とジョン・ドリンカー・コープ・ジュニア第一副委員長は、だんまりを込め込んだ。反対論が優位に立ったかのように思われた。

 

「前例がないなら、私たちが最初の例を作りましょう」

 

 マッカラン副委員長は、父母や祖父母のような年齢の委員たちを懸命に説いた。最も強硬なシュテーガー委員とカリミ委員が折れると、他の委員も納得した。

 

 会議終了後、俺のもとに四つのホログラムが現れた。金髪碧眼の若い美女はマッカラン国防副委員長、黒髪の野性的な美男子はカリミ国防委員、見るからに平凡な初老の男性はシュテーガー国防委員、ふくよかな老婦人はステレア下院軍事委員長だ。

 

「ありがとうございます」

 

 俺は議員たちに頭を下げた。シェーンコップ昇進をめぐる論戦は、完全なやらせだった。

 

「私からも礼を申し上げます」

 

 マッカラン副委員長は美しい顔に笑みを浮かべ、感謝の言葉を述べた。君主が臣下をねぎらうかのようだ。

 

「恐れ入ります」

 

 カリミ委員とシュテーガー委員が声を揃えて答える。臣下が君主に応答するかのような恭しさである。帝国の諸侯であったシュテーガー委員ですら、「プリンセス・サリー」の圧倒的な気品に抗えない。

 

「……!」

 

 俺は片膝をついて頭を下げたい衝動に駆られたが、辛うじてこらえた。

 

「ご苦労でしたね。後は私に任せてください」

 

 ステレア下院軍事委員長の声は、「不死身のアレクサンドラ」という物騒な異名に似合わぬ優しさだ。将官の昇進には議会の承認が必要となる。彼女の役割は国防委員たちに優るとも劣らない。

 

「よろしくお願いしますね」

 

 マッカラン副委員長は、祖母のような年齢の軍事委員長に微笑みかけた。プリンセスらしい上品な笑顔だが、長いまつ毛の奥の目は笑っていない。視線が「脇役の分際で主役を気取るんじゃねえぞ、クソババア」と語る。

 

 彼女には銀河で最も高貴な家の末裔という自負がある。マッカラン家と比べれば、ゴールデンバウム家など成り上がりに過ぎない。銀河連邦は同盟と異なり、君主国の加盟を認めていた。星々に君臨する諸王家の中でも、第一次九〇年戦争期のハルモニア王の子孫であるマッカラン家は随一の名門だった。本家は連邦とともに滅びた。だが、サジタリウス腕に植民した分家は、五三八年までリューカス・ハルモニア帝国を支配し、現在はハルモニア財閥のオーナーである。そんな家に生まれた彼女は、貴種としてふさわしい才能と美貌を持ち、それを磨くための努力を続けてきた。

 

 才能と環境に恵まれた人間は、自分が選ばれた存在だと信じがちだ。当たり前のようにすべてを与えられ、当たり前のように期待され、当たり前のように結果を出した。そんな経験をしたら、誰だって天命を確信するだろう。

 

「あなた方のご尽力を無にはいたしませんよ」

 

 ステレア軍事委員長は、自分より半世紀遅く生まれた副委員長に柔らかい笑顔を向けた。だが、その目は笑っていない。視線が「しょせん、あんたは前座だよ」と語る。

 

 彼女には実力のみで生き抜いたという自負がある。父親の名前も顔も知らない。ウェイトレス兼娼婦の母親は行方をくらました。養護施設で育ち、一六歳で志願兵となった。乗った艦は六度事故に遭い、四度撃沈され、二度不時着した。宇宙艦隊旗艦「ハードラック」勤務になった半年後、流れ弾が直撃し、アッシュビー司令長官が戦死した。後方勤務に回されると、職場は二度爆破され、三度銃撃された。除隊後は奨学金をもらって大学に通った。一七年の教職生活を経て地方政界に入り、数々の危機を乗り越えて、国会議員に上りつめた。

 

 実力で叩き上げた人間は、自分が選ばれた存在だと信じがちだ。至近距離から後頭部を撃ち抜かれたり、飛行機が高度一万メートルで爆発したりしても生き延びた。そんな経験をしたら、誰だって天命を確信するだろう。

 

 選ばれし者同士は相容れない。「自分こそが本物で、相手は偽物」と信じているからだ。八〇一年初当選の女性国防族として一くくりに比較されることも、彼女たちの対抗意識を煽った。

 

「少しは遠慮しろよ、クソババア」

「礼儀をわきまえな、小娘」

 

 二人の選ばれし者は、笑いながら視線で罵倒しあうという高等技術を披露した。これでも進歩している。国家非常事態委員会(SEC)のメンバーだった頃は、声に出していた。

 

「まとめて消えてくれないかな」

 

 俺は内心でそう呟いた。彼女たちは政策や理念を持ち合わせていない。だから、マウンティング以外の方法では優劣をつけられないのだ。

 

「…………」

 

 シュテーガー議員は困ったような微笑みを浮かべる。気弱な農家のおじさんといった風情だ。元男爵・元帝国宇宙軍中将の威厳はどこにもない。

 

 見るからに平凡なそうな彼を議員に押し上げたのは、「身分制の犠牲者」という看板だ。宇宙軍幼年学校校長でありながら、大貴族の子息にいじめ殺されそうになった孫を救うため、生徒殺しに手を染めた。この話を聞いたら、誰だって同情する。

 

 同盟軍がオーディンを解放した時、刑務所から解放されたシュテーガー元中将は、「首席生徒の不正を暴いたら、相手の実家に陥れられた。生徒殺しは濡れ衣だ」と語った。その場に立ち会った俺も確かにそう聞いた。メディアも彼を冤罪被害者として扱った。

 

 ジャーナリストのパトリック・アッテンボロー氏の調査により、生徒殺しの事実が暴かれた。言い逃れできないだけの証拠が揃っていた。

 

 シュテーガー元中将は弁解すらせずに主張を変えた。帝国批判は何でも正しいとされる風潮の中で、最初の嘘はなかったことになった。ラグナロック戦役が失敗に終わり、帝国批判が下火になると、「外国人でありながら愛国右翼」という芸風に切り替えた。そして、右派言論人から下院議員に転身したのである。

 

 帝国の公式記録によると、シュテーガー元中将はエゴイステックな犯罪者に過ぎない。宇宙軍幼年学校校長でありながら、孫を首席に据えるため、次席生徒を殺し、首席生徒に罪をなすりつけようとした。身分制の問題ではない。

 

 大きな声では言えないが、俺は帝国側の主張が事実に近いと思っている。帝国を信じるというより、シュテーガー議員を信用できないのだ。

 

「…………」

 

 困惑の色を浮かべるカリミ委員は、七九〇年代前半を代表する名艦長の一人で、野性的な雰囲気の美男子だ。それ以外の取り柄はない。

 

 本当にどうしようもない面子である。凡庸でも無能でもない。一般人の基準なら優秀な部類に入る。しかし、叶えたい理想も譲れない信念も持っていない。能力が高いから出世し、結果として議席を手にしただけだ。やりたいことがないので、手にした権力を私利私欲のために使う。このような人間が大衆党議員の九割を占める。

 

 長く付き合いたくない相手だが、今の時点では貴重な手駒だった。同盟議員という肩書きには絶大なパワーがある。俺にできないことが彼らにはできる。俺が知り得ない情報も彼らなら入手できる。理想も信念もない人間は、目先の利益に転びやすい。

 

 俺は政界以外に対しても手を打った。国防委員会の提案が一〇〇パーセント通るとは限らない。前例主義と事なかれ主義に染まった国防官僚は反対するだろう。頭の固い退役将官も良い顔をしないはずだ。さらなる一押しが必要となる。

 

「誠に遺憾ながら……」

 

 俺は第一辺境総軍所属部隊のスキャンダルを公表した。トリューニヒト政権と軍部に対する非難の声が高まった。

 

「シェーンコップ大将の忠誠心に問題あり」

 

 国防監察本部長ドーソン上級大将は、シェーンコップ大将に関する秘密報告書を提出した。トリューニヒト政権は不安に駆られた。

 

「今や、イゼルローン要塞は国家の中の国家である」

 

 統合作戦本部次長セレブレッゼ上級大将は、イゼルローン要塞の実態を密かに報告した。トリューニヒト政権の不安は一層大きくなった。

 

「セミョーノフはヤンに取り込まれた」

 

 イゼルローン憲兵隊司令官コリンズ少将は、要塞事務監セミョーノフ大将の裏切りを伝えた。トリューニヒト政権の不安はどうしようもなく膨らんだ。

 

 新しい情報が与えられたわけではない。第一辺境総軍のスキャンダルは、いずれ公表されるはずのものだった。シェーンコップ大将の危険性、イゼルローン要塞の軍閥化、セミョーノフ大将の裏切りは一年以上前から知られていた。重要なのはタイミングだ。不安を再確認させる情報を繰り返し与え、「シェーンコップを昇格させる」という落としどころを示す。それで十分だった。

 

 シェーンコップ大将は五月一日付で宇宙軍上級大将に昇進し、陸戦隊総監に就任することが内定した。非士官学校卒業者の現役宇宙軍上級大将は三人目、亡命者を含めた帝国人移民一世の現役宇宙軍大将は五人目となる。また、亡命者及び帝国人移民一世の陸戦隊総監は、七八九年就任のエヴェルスヴィンケル大将以来一五年ぶり、通算一二人目となる。

 

「陸戦隊の強化は急務であります。名将シェーンコップ提督を起用することで、育成体制がより一層充実するものと期待しています」

 

 アイランズ国防委員長は、露骨な棒読み口調で起用理由を述べた。特別な意味はない。この人の棒読みはいつものことだ。

 

「意図は別として、いい人事なのは認める」

 

 人々はシェーンコップ昇進を歓迎した。パフォーマンスだとしても、名将が昇進すること自体は喜ばしい。

 

 陸戦隊総監というポストは、様々な意味でシェーンコップ大将にふさわしいと思われた。素人が見れば、最強の陸戦司令官が陸戦隊最高位に就くのは自然なことだ。玄人が見れば、陸戦しかできない人間に閑職をあてがうのは正しい。事情通が見れば、危険な人気者を閑職に押し込めるのはうまいやり方だと思える。

 

 シェーンコップ大将自身にとっても良い話だ。何もなければ、再来年の二月に要塞軍集団司令官の二期目を終え、予備役に退くはずだった。陸戦一筋の人間に務まる大将ポストは少ない。昇進もできず、横滑りもできないならば、引退するしかなかった。そんな人物が上級大将に昇進できた。閑職だとしても、退職金と年金が増えるし、再就職でも有利になる。

 

「誰もが得する人事」

「誰も傷つかない人事」

 

 この人事は好評を博し、トリューニヒト議長のイメージ向上に貢献した。そして、提案者のマッカラン副委員長は大きく株を上げた。

 

「これで統合作戦本部長に一歩近づいた」

 

 ヤン元帥の後退と俺の前進はイコールである。どんなに優れた人物でも、一人ですべてをこなすことはできない。取り巻きを一人一人引き剥がしていけば、ヤン元帥は無力になる。

 

 

 

 三月二九日、同盟上院選挙の投開票が行われた。投票率は四二・〇七パーセント。前回を六・五五ポイント下回り、過去三番目の低水準となった。

 

 主戦派と反戦派という対立構図が完全に消滅し、世俗主義と道徳主義が新たな対立軸として浮上した。「自由か道徳か」の二択を突き付ける選挙になると思われた。だが、トリューニヒト議長が目立ちすぎたため、議論は深まらなかった。

 

 もう一つの対立軸は積極財政と緊縮財政である。大衆党は景気回復と雇用拡大の実績を強調し、積極財政の継続を訴えた。汎銀河左派ブロックを除く野党は、スタンスの違いがあるものの、緊縮財政を求める点では一致する。国論を二分する議論になるはずだった。だが、トリューニヒト擁護派とトリューニヒト批判派の対立に埋没した。

 

「与党と野党が感情的な言い争いに終始し、肝心な議論ができなかった。それがサイレント・マジョリティの失望を招いたのではないか」

 

 国立中央自治大学法学部のセヴェリーノ教授はそう分析した。実名・匿名を問わず、人前で政治を語りたがる者は少数派だ。ノイジー・マイノリティの盛り上がりが、サイレント・マジョリティを白けさせることは珍しくない。

 

 大衆党は得票を減らしたものの、議席を微増させた。徹底した辺境重視戦略により、独立と自由の銀河(IFGP)との選挙協力を行い、辺境票を掘り起こした。放漫財政と政治腐敗に反発した都市中間層が他党に流れた。失った票の方がはるかに多いが、都市部と辺境の一票の格差に救われた。低い投票率も追い風となった。

 

 統一正義党は得票を伸ばしたが、議席は少ししか増えていない。財政再建と道徳主義を掲げ、厳しい秩序を求める人々の共感を得た。大衆党に愛想をつかした道徳主義右翼を取り込み、保守層や無党派層にも支持を広げた。しかし、辺境票をまったく獲得できなかった。

 

 反戦・反独裁市民戦線(AACF)は議席を大きく伸ばし、上院第三党に躍進した。財政再建と世俗主義を打ち出し、苛烈な改革を求める人々の支持を幅広く集めた。リベラル・モラリストの支持を失ったものの、リベラル右派や保守層などハイネセン主義強硬派を取り込み、無党派層にも浸透した。リベラルが弱いとされてきた辺境でも一定の支持を得た。

 

 和解推進運動は改選議席の半数を失った。財政再建と世俗主義という主張は、AACFや民主主義防衛連盟(DDF)とかぶっている。レベロ改革の反省を生かした改革案は、苛烈な改革を望む声に逆行していた。人材も資金も失われた。負けるべくして負けた選挙だった。

 

 DDFは壊滅的敗北を喫した。主戦派と反戦派の消滅は、ハイネセン主義強硬派政党の存在意義を完全に消失させた。

 

 汎銀河左派ブロックは得票率を落とし、上院第五党に転落した。積極財政論者と福祉国家論者は大衆党に流れ、道徳主義者は統一正義党に流れた。大衆党、統一正義党、AACFの三極構造の中で埋没した形だ。

 

 IFGPは手堅く戦い、現有議席を守った。地元の利益とキャスティング・ボートを確保できれば、それで十分なのだ。

 

 AACFから離党したリベラル・モラリストの新党「明日のために」は、議席の大半を失った。「モラルのためなら、大衆党や宗教右派との連携も辞さない」という姿勢は、道徳主義者としては正しい。だが、リベラル層には利敵行為と受け止められた。

 

 初参加の新しい船出は三議席を獲得した。「祖父母の一人が帝国人である者の完全追放」という公約が、既成政党に不満を持つ移民排斥論者の受け皿となった。候補者を建国の父の子孫で固め、先祖と同じ名前を名乗らせるという懐古趣味も、有権者の注目を引いた。

 

 同じく初参加の夜明け前の光は、議席を獲得できなかった。君主制と貴族制の導入を掲げ、インテリや若者を中心に一定の支持を集めたが、既成政党の分厚い壁に阻まれた。

 

 その他、メルカルト未来党やミトラ・トロツキスト党など一二党が一議席獲得した。いずれも地域政党である。

 

「大衆党の辛勝、統一正義党とAACFの躍進か」

 

 俺は右手で胸を軽く押さえた。手放しで喜べる結果ではない。上院の議席は人口に関係なく、各星系に二議席ずつ配分される。辺境の一〇〇万票は都市部の一〇〇〇万票と同等の価値を持つ。上院選だからこそ、大衆党はこの得票率でも勝てた。

 

 テレビ画面の中では、野党系のジャーナリストが「下院選なら野党勝利」と盛んに言い立てる。彼の主張は間違いではない。第一辺境総軍選挙分析チームも同じ見解を示した。下院の議席は一〇〇〇万人あたり一つの割合で配分される。人口一〇〇〇万人以下の星系も一議席持っているが、上院ほど一票の格差は大きくない。下院選ならば、大衆党の過半数割れは確実だろう。

 

 トリューニヒト政権は景気を回復させ、雇用を改善し、治安対策で一定の成果を収めた。政権支持率も決して低くはない。これだけの好条件が揃っていながら、得票率を落とした。

 

「飽きられたんだな」

 

 俺にはそれ以外の理由が思いつかなかった。おいしいマフィンも食べ過ぎると飽きてしまう。サプライズもやり過ぎるとマンネリになる。民主国家の政治家にとって、「有権者の飽き」は避けられない宿命だ。そして、トリューニヒト議長には、「飽き」を跳ね返すだけの強さがない。

 

 大衆党はむしろうまくやったと思う。上院選の勝利という一点に絞れば、うんざりするような罵倒合戦は正しい。

 

 大衆党の最大の弱点は道徳問題だ。世俗主義者は多数派だが、保守寄りの者やリベラル寄りの者が多く、忠誠心に不安がある。道徳主義者は少数派だが、極右や宗教右派などを含んでおり、「トリューニヒト親衛隊」というべき集団だ。トリューニヒト議長の出身母体である同盟警察も、明らかに道徳主義を指向していた。世俗主義を打ち出せば、最も信用できる集団の支持を失う。道徳主義を打ち出せば、数を確保できなくなる。

 

 今の同盟において、道徳問題抜きの政策論争などあり得ない。論争になった時点で、スタンスが明確な他党に後れを取るし、内部対立を招く恐れもある。トリューニヒト議長は論争を避けなければならなかった。

 

 上院選挙の翌日、じゃがいも料理店「じゃがいも天国」のホテル・ビザンチウム・シャンプール店で秘密会議を開いた。参加者は俺を含めた現役軍人一九名、予備役軍人五名だ。半数はシャンプールにいる。残り半数はハイネセンなど別の地域のじゃがいも天国にホログラム通信を持ち込み、立体映像として参加している。階級や役職ではなく、信頼性を基準として集めたメンバーだ。

 

「シェーンコップを消し、政府に恩を売る! 一石二鳥の策ですな!」

 

 サンドル・アラルコン予備役上級大将の笑い声が響いた。

 

「三羽目の鳥は欲張りすぎかな」

「二羽も三羽も変わらんでしょう」

「そうだといいんだけど」

 

 三羽目の鳥とは要塞軍集団司令官のポストである。アルツール・フォン・シュトライト大将をシェーンコップ大将の後釜に据えるつもりだった。

 

 トリューニヒト議長は俺のもとに三名の監視役を派遣した。第七方面軍司令官サンボラ大将がシャンプールを抑え、第二方面軍司令官シュトライト大将がハイネセンへの通路を扼し、警察から出向した第一総軍参事官グッドオール中将が司令部に陣取るという構図だ。サンボラ大将とグッドオール中将を抱き込むことはできた。しかし、シュトライト大将はなびこうとしない。

 

 帝国人亡命者の忠誠心には定評がある。血縁や地縁や学閥を持たないため、雇用者に頼らざるを得ないのだ。

 

 ラグナロック戦役初期、シュトライト男爵家当主シュテファンが同盟軍に降伏した。ブラウンシュヴァイク公爵は分家の裏切りに激怒し、シュトライト一族を皆殺しにするよう命じた。公爵の側に仕えていたシュテファンの弟アルツールは、家族を連れて逃亡した。彼らを救ったのが、トリューニヒト議長であった。

 

 前の世界でラインハルトの忠臣だったアルツール・フォン・シュトライトは、トリューニヒト議長に忠誠を尽くしている。有能で忠実な監視役ほど鬱陶しいものはない。

 

「敵に敵を監視させる。フィリップス提督らしい辛辣な策略だ」

 

 統合作戦本部次長シンクレア・セレブレッゼ上級大将が嘆息を漏らす。一〇年前のことを思い出したのだろう。俺の監視下に置かれたことも、今となっては昔話である。

 

「私の教え子だからな」

 

 国防監察本部長クレメンス・ドーソン上級大将の口ひげが跳ね上がる。エリヤ・フィリップスが褒められると、クレメンス・ドーソンが喜ぶ。宇宙暦七九〇年代に発見された物理法則だ。

 

「貴官あってのフィリップス提督だ。よろしく頼むぞ」

「言われんでもわかっておるわ」

 

 ぶっきらぼうな口調だが、ドーソン上級大将が機嫌を良くしていることは明らかだった。口ひげは飛び上がらんばかりの勢いだ。上半身はこれでもかと言わんばかりにふんぞり返る。目尻が下がり、口元が緩み、鼻が高さを増した。

 

「心強いな。あんたが味方で良かった」

「ははは! 貴官も少しは……」

 

 大きな笑い声とともに衝撃音が響いた。ふんぞり返りすぎて椅子ごとひっくり返ったのだ。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 俺とコレット少将が慌てて助け起こそうとしたが、相手がホログラフだったことに気付いた。

 

「なんでもない! なんでもないぞ!」

 

 ドーソン上級大将はばね仕掛けを思わせる瞬発力で立ち上がり、後ろを向いて怒鳴った。

 

「おい! ラッキー! 勝手に椅子を引っ張るんじゃない!」

「…………」

 

 俺とコレット少将は顔を見合わせる。ラッキーはドーソン家が飼っているマルチーズだが、それらしきものは見当たらない。

 

「いや、ラッキーというのは私の飼い犬でな! やんちゃな犬なのだ! 付いていきたいとうるさくてな! 仕方なく連れて行ったのだ! 大人しくしろと言ったのに、椅子を引っ張りおった! どうしようもない馬鹿犬だ!」

 

 ドーソン上級大将のセリフは、やたらと早口な上に説明じみていた。ラッキーがよぼよぼのマルチーズだとか、彼がいる店舗はペット入店不可だとか、そういった事実を知らない人でも騙されないだろう。

 

 コレット少将の視線が「どうします?」と問うたので、俺は視線で「合わせるしかないだろう。恥をかかせるわけにもいかない」と答えた。「とっくに恥をかいていると思いますが……」という常識的な突っ込みは無視した。

 

 他の出席者は「しょうがない人だ」と言いたげに苦笑した。遠慮を知らないアラルコン予備役上級大将も、無神経なワイドボーン大将も、きつい性格の妹も生暖かい視線を向けるだけに留めた。あえて突っ込まないのが優しさである。

 

「次のターゲットはどうする!? 予定通りか!?」

 

 ドーソン上級大将は無理やり話題を変えた。

 

「ムライ提督で決まりでしょうね。一二星将のまとめ役ですから」

 

 チュン・ウー・チェン中将が何事もないかのように応じ、俺の方を見た。人々の視線がドーソン上級大将から俺に移動する。

 

「いや、ミンツを先に外す」

「彼は後回しで良いのではないですか」

「状況が変わった。あのスティーヴン・ミンツが当選したからね」

 

 その名前を口にするだけで十分だった。ドーソン上級大将は「合格だ」と言わんばかりにふんぞり返り、他の者も納得の色を浮かべる。

 

 新しい船出から初当選したリヒャルト・ミンツ二世ことスティーヴン・ミンツ上院議員は、正真正銘のクズだ。一〇年以上前、遺族年金を横領したことが発覚し、有罪判決を受けた。

 

 遺族年金の横領自体は良くある事件だ。しかし、スティーヴン氏は戦死した兄の子を児童施設に放り込んだにもかかわらず、保護者と称して遺族年金を懐に入れた。ここまで悪質なケースは珍しい。

 

 少し調べれば、リヒャルト二世とスティーヴンが同一人物であること、ユリアン・ミンツ准尉がスティーヴンの甥であることは突き止められるはずだ。横領事件に限れば、ミンツ准尉は被害者である。同情されることはあっても、非難されることはない。

 

 しかし、スティーヴン氏は「醜聞のコンビニ」ともいうべき人物だ。横領事件については「かわいそうな被害者」になるユリアンも、その他の事件については「加害者の甥」になってしまう。同盟法には連座制の規定は存在しない。それでも、市民は親族の罪に連座するのが当然だと考えがちだ。スティーヴン氏の醜聞が明るみに出れば、ユリアンの昇進を望まない世論が生まれる。

 

 昇進できなくても、ユリアン・ミンツ個人は困らない。少尉になったら、人事権が国防委員会に移る。敬愛するヤン元帥の側から離れるよう命じられても、拒否することはできない。だから、幹部候補生養成所への入学推薦を拒否し、准尉に留まっていた。

 

「ミンツ議員は遅かれ早かれ炎上する。その前に甥を昇進させないといけない」

 

 ユリアンが昇進しなければ、俺が困るのだ。たかが准尉と侮ってはいけない。ヤン元帥のプライベートな空間に常駐し、雑事を片付け、来客や通信を取り次ぎ、愚痴に耳を傾ける。側近グループの一員だが、他のグループとも親しく、人間関係を調整できる。優秀極まりない私設秘書だ。下手な大将よりよほど影響力がある。

 

「それにしても、哀れな青年だ」

 

 同情心にあふれた声は、ドーソン上級大将のものだ。皮肉も嫌味も含まれていない。凡人として同情を覚えたのだ。

 

 国防委員会がユリアンを独身者の養子にするという異例の裁定を下した背景には、複雑な事情がある。スティーヴン氏以外の親族もクズだった。祖母の故アンジェリーナ・ミンツ氏は、ユリアンを自分の家に置いたが、遺族年金を横領し、孫が受け継ぐべき遺産や保険金も我が物とした。叔母や従姉妹も、よってたかってユリアンを虐待していたらしい。親族がクズ揃い、女性のいる家庭がNGとなれば、独身者か男性同性婚夫婦という選択しかない。軍部では知る人ぞ知る話だ。

 

「父は戦死、母は病死、親戚はクズ、入った施設はあのガルダ・ハイムですからな。運命が嫌がらせをしているとしか思えません」

 

 アラルコン予備役上級大将が忌々しげに顔をしかめる。「養父はヤン」とは言わなかった。下品なことで有名な彼にも、嫌いなだけの相手を本物のクズと並べない程度の分別はある。

 

「私も幼い頃に両親を亡くしましたが、ミンツ君に比べたら幸福でした」

 

 第一一艦隊司令官ウィレム・ホーランド大将が、ため息をついた。彼を引き取った伯母夫婦は善良な人間だった。

 

 かつて、彼らは対立関係にあった。クレメンス・ドーソンは他の二人を「はみ出し者」として嫌った。サンドル・アラルコンは他の二人を「鼻持ちならないエリート」として嫌った。ウィレム・ホーランドは他の二人を「くだらぬ俗物」として嫌った。そんな三人が同じテーブルを囲み、ユリアン・ミンツへの同情を共有している。

 

 この光景を同盟全土に広げることが、俺の望みであった。人間は憎しみを越えることができる。人間は手を取り合うことができる。人間が人間である限り、ボーナムの奇跡は何度でも起きる。

 

 ユリアンには申し訳ないと思う。敬愛する養父であり、不幸から救い出してくれた救世主から引き離すのだ。どれほど責められても文句は言えない。それでも、やめるわけにはいかない。

 

 俺たちはもう一つの議題についても話し合った。後方勤務本部長ロックウェル上級大将を何としても味方に付けたい。だが、ロックウェル派と旧セレブレッゼ派は、軍需利権をめぐって対立している。金の問題なので、俺やセレブレッゼ上級大将が譲りたくても、下の人間が納得しない。ロックウェル上級大将についても同じことが言える。

 

「ヤン派もロックウェル派を取り込もうとしている。軍需利権を完全に保障するそうだ」

 

 セレブレッゼ上級大将が「ヤン派」と呼んだ連中は、正確に言うと「自称ヤン派」である。俺を追い落としたい連中が、ヤン元帥の統合作戦本部長就任を画策している。自称とはいえ、現役上級大将六名が参加しており、本来のヤン派よりはるかに巨大な勢力だ。

 

 常識的に考えれば、ヤン元帥が「パワハラ容認」「辺境への締め付け強化」「欠陥機チプホの導入」「残業手当廃止」「クーラーの半数を撤去」などという主張に乗るはずがない。しかし、現状においては、俺が最も強硬な反パワハラ派であり、対辺境融和派の最右翼であり、最も先鋭的な反チプホ派であり、最も労働環境改善に熱心な軍幹部だ。それに比べれば、積極的に動かないヤン元帥は物分かりが良さそうに見えるのだろう。

 

「彼らはよほど俺が嫌いなんですね」

 

 俺はにっこりと笑った。自称ヤン派の正体はアンチ・フィリップスだ。ヤン元帥本人を支持する軍人より、フィリップス憎しでヤン支持に流れる軍人がずっと多い。

 

「私は好きだぞ」

 

 フィリップ・ルグランジュ予備役上級大将が初めて口を開いた。

 

「ええ、わかっています」

 

 俺にはわかっている。少なくとも、この部屋にいる人間は俺を好きでいてくれる。わかっているから安心できる。

 

 そして、面白い事に気づいた。『レジェンド・オブ・ザ・ギャラクティック・ヒーローズ』の悪役がやたらと多いのである。クレメンス・ドーソン、シンクレア・セレブレッゼ、フィリップ・ルグランジュ、サンドル・アラルコン、ジェフリー・パエッタ、ウィレム・ホーランド、マルコム・ワイドボーンらは、ヤン元帥やその仲間に敵対したり、足を引っ張ったりした人物だった。

 

『レジェンド・オブ・ザ・ギャラクティック・ヒーローズ』に登場しない者も、ヤン元帥やその仲間との相性は良くない。登場していたら、きっと悪役になっていただろう。

 

 フェザーンにいるアンドリュー・フォーク、仲間に引き込もうとしているスタンリー・ロックウェルも、『レジェンド・オブ・ザ・ギャラクティック・ヒーローズ』では極めつけの悪役として登場する。

 

 悪玉キャラを集め、権力者と結託し、世論を動かし、権力を拡大し、主役に対抗しようとする。まさしく悪役の所業ではないか。

 

 恥じることは何一つない。前の世界の善玉は同盟を守れなかった。ヤン・ウェンリーは不敗を貫いた。アレクサンドル・ビュコックは正義を貫いた。それでも、同盟は滅亡したのだ。悪役なら守れるかどうかはわからないが、試す価値はある。

 

「オリベイラ先生を味方に……」

「却下」

 

 俺はワイドボーン大将の言葉を遮った。悪役なら誰でもいいわけではない。何事にも限度があるのだ。


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