銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第105話:エリヤ・フィリップスのイゼルローン日記 下 802年10月3日~10月11日 レストラン「ル・セルマン・デュ・ジュー・ドゥ・ポーム」~イゼルローン市街~第一辺境総軍臨時司令部

 週末の一〇月三日、俺はお忍びの視察を行った。髪を茶色に染め、目に青いカラーコンタクトをはめ、帽子をかぶり、ハラボフ大佐が選んだ服を着用し、ふわふわな若者に変装する。

 

 護衛兼話し相手として、妹、イレーシュ・マーリア少将、ハンス・ベッカー少将、シェリル・コレット少将、ユリエ・ハラボフ大佐、エリオット・カプラン准将の六名が随行した。全員が変装しているのは言うまでもない。

 

「今からスイーツを食べに行く」

 

 俺は六名の部下に対し、重々しく宣言した。

 

「勘違いしないでもらいたいが、これは重要な調査である。スイーツは市民生活を理解するためのバロメーターだ。俺の好みとは関係ない」

「イエッサー!」

 

 全員が一斉に答えた。妹とコレット少将は真剣な顔をしている。イレーシュ少将とベッカー少将は苦笑いを浮かべた。ハラボフ大佐は冷ややかに俺を見た。カプラン准将は気の抜けた顔だ。

 

 俺たちは、イゼルローンで一番タルトがうまい「ル・セルマン・デュ・ジュー・ドゥ・ポーム」に足を踏み入れた。客も従業員も一斉にこちらを見る。

 

「変装していても、フィリップス提督の威厳は隠せないんですね」

 

 コレット少将が俺の耳元に口を寄せ、小声でささやいた。髪を人参色の赤毛に染め、露出の多い服装をしているせいで、ただでさえ過剰気味の色気がさらに増した。胸を小さく見せる下着を使っているにも関わらず、その胸は見る者を圧倒するサイズを保っていた。

 

「あんたが目立ってるのよ」

 

 妹がとがめるような目でコレット少将を見た。豪奢な金髪のウィッグをかぶり、大人っぽいメイクをほどこし、特製パッドで胸を大きく盛り上げているため、ものすごく目立つ。

 

「自分を棚に上げるのはやめようね。でかいってだけで目立つんだから」

 

 イレーシュ少将は自分が目立つことを自覚していた。身長一八〇センチ以上の身長と豊かな胸を持つ女性は、どこにいても注目を浴びる。メイクも服装も地味で、胸を小さく見せる下着を使っているのに、高い身長と豊かすぎる胸が強烈な存在感をアピールする。

 

 一八〇センチレディースほどではないが、ハラボフ大佐も目立つ外見だった。一六九・一一センチの身長は、女性としてはかなり高い。メイクのおかげでやけに若く見える。へそ出しで背中が大きく開いたセーターが、鍛え上げられた腹筋と背筋を強調する。おそろしく丈の短いスカートから見える足がとても美しい。

 

 三〇歳の宇宙軍大佐とは思えないハラボフ大佐の服装は、俺を護衛するためだった。コレット少将が露出度の高い服装をするようになったのも、ハラボフ大佐の影響だ。前副官と現副官は、一緒に風呂に入るような付き合いをしていた。

 

 エリート風のベッカー少将、体育会系美男子のカプラン准将らも一八〇センチを超えており、かなり目立つだろう。一六九・四五センチの俺だけが目立たない。

 

「ちび兄ちゃん!」

 

 右の方から大きな声が聞こえた。窓際の席で一人の老人が帽子を振っている。窓から差し込んでくる人工太陽の光が、老人のハゲ頭に反射してまばゆい輝きを放つ。

 

「いきなりちび呼ばわりなんて、失礼なハゲだね」

 

 妹がむっとした顔になり、コレット少将が同意した。仲の悪い二人だが、こういう時だけは意見が一致する。

 

「人違いでしょ。普段と違う格好なんだし」

 

 イレーシュ少将がなだめるように言うと、妹たちは納得した。

 

「そうですね。あんなハゲはほっといて……」

「いや、あの人は知り合いだ」

 

 俺は窓の方を向いた。ハゲ頭の老人が一人で使っている四人掛けの円卓には、スイーツや料理が所狭しと並んでいる。銀河広しといえども、これほど食い意地の汚い年寄りは一人しか知らない。

 

「そうなの?」

「挨拶してくる。みんなは座っててくれ」

 

 部下たちを席に行かせ、俺は早足で老人のもとに向かう。

 

「ご無沙汰しておりました」

「おお、やはりちび兄ちゃんであったか!」

 

 老人は口を大きく開けて笑った。産毛すらないハゲ頭を持つ彼は、パリ・コミューンの開店当初からの常連客である。二〇年前からハゲ頭で反戦主義者だった。パラスなまりの公用語を話し、食器を両手で持ち、ピーチパイにこだわることから、「パラスの爺ちゃん」と呼ばれる。

 

「こんなところで会えるとはなあ!」

「まったくです」

 

 俺はつられるように笑った。演技の必要はまったくなかった。

 

「わしは嬉しいよ。君に友達がいることがわかったんでな」

「これでも友達は多い方なんですよ。ハイネセンっ子は社交的ですから」

 

 俺はいたずらっぽく見えるようにウインクした。パリ・コミューンでは、「ハイネセン出身」という設定で通している。

 

「何でイゼルローンに来たんだ? 旅行か?」

「まあ、そんなところです」

「運が悪かったな。あのフィリップスが来ている真っ最中だ。空気がすっかり汚染されておる」

 

 パラスの爺ちゃんは、いわゆる「オールド・パシフィスト」である。反戦市民連合結成のきっかけとなった「七六九年の衝撃」以前からの反戦主義者だった。エリヤ・フィリップスを好きになる理由など持ち合わせていない。

 

「何も感じませんが……」

「ファシズムの臭いがわからんのか? 臭くて臭くてたまらぬわ」

「鼻が悪いもので……」

「わしは自由な空気を吸いたくてイゼルローンに来たんだ。なけなしの貯金をはたいてな。フィリップスのちびが、孤独な老人の楽しみを台無しにしおった」

「すぐ帰るでしょう。ただの出張みたいですし」

「それはともかくだ」

 

 パラスの爺ちゃんは真顔になり、声を潜める。

 

「誰が本命だね?」

「どういうことです?」

「べっぴんさんを四人も連れてるんだ。何もないってことはなかろう」

「まあ、秘密です」

 

 俺は頭をかいてごまかした。幸いなことにそれ以上の追及はなかった。

 

「そろそろあっちに行ったらどうだね。彼女を待たせるのはよろしくない」

 

 パラスの爺ちゃんは苦笑しながら部下のいるテーブルを見た。

 

「それでは、お元気で」

 

 俺はパラスの爺ちゃんに頭を下げると、部下のもとに向かった。いささか話が弾みすぎた。彼女でなかったとしても、人を待たせるのは良くない。

 

 八人掛けの円卓につくと、俺は空いている二つの席の左側に荷物を置き、右側に腰を下ろした。プライベートでは、左隣に誰も座らせないことに決めている。エリヤ・フィリップスの左隣は、ダーシャ・ブレツェリの指定席なのだ。

 

 席に着いて間もなく、店員がタルトを大量に運んできた。これからが調査の本番だ。タルトの味を舌に刻み付ける。

 

 イチゴタルト、ピーチタルト、プリンタルト、グレープフルーツタルト、ブルーベリータルト、バナナタルト、レモンタルト、マロンタルト、チェリータルト、キウイタルト、チーズタルト、キャラメルタルト、アップルタルト、オレンジタルト、カスタードタルト、イチジクタルト、アンズタルト、ティラミスタルト……。

 

 タルトを食べつつ、ピザ、パスタ、サラダ、スープを口に入れ、甘味以外の成分も補給する。こうすることで甘味がより引き立つ。

 

「味、質、値段ともに申し分なし」

 

 俺は舌によってイゼルローンの豊かさを理解した。

 

「本当に調査してたんですねー」

 

 カプラン准将は心の底から感心したようだった。

 

「理屈じゃわからないこともあるんだ。君だって理屈は苦手だろう?」

「そうですねー」

「考えるんじゃなくて感じる。結局のところ、感性が一番頼りになるんだ」

 

 もっともらしい俺の言葉をカプラン准将が真顔で聞いている。その周囲では、妹とイレーシュ少将がタルトを貪り食い、ベッカー少将がグリーンティーを楽しみ、コレット少将がメモを取り、ハラボフ大佐はぼんやりしている。

 

 妹とイレーシュ少将が火花を散らしあった。妹は一か月後に四〇歳を迎えるイレーシュ少将に対し、「本当に肌がきれいですよね。四〇歳なのに」「スタイルが良いですね。四〇歳には見えません」などと嫌味を言った。イレーシュ少将は胸パッドを詰め込んだ妹に対し、巨乳特有の悩みを語り、「あんたもわかるでしょ」と皮肉をぶつける。女の戦いは恐ろしい。

 

 困り果てた俺は話題を探すために周囲を見回した。窓の外に救い主がいた。金褐色の髪を持つ美人が、亜麻色の髪を持つ美青年と並んで歩いていたのだ。

 

「イゼルローン一の美人と美青年が歩いているぞ」

 

 この一声で不毛な戦いは終わり、妹もイレーシュ少将も窓の外を見た。他の四人も窓の外に注目した。

 

「やっぱり、グリーンヒル提督とミンツ准尉は付き合ってんだね」

 

 イレーシュ少将が目を輝かせる。超然とした雰囲気を持っているが、中身は普通のお姉さんである。有名人同士のゴシップには食いつかずにはいられない。

 

 二八歳のフレデリカ・グリーンヒル宇宙軍准将は、イゼルローン総軍一の美女だ。大きなヘイゼルの瞳、緩くウェーブした金褐色の髪、優しげな美貌、すらりとした肢体には、女性を恋愛対象とする者すべてを惹きつける魅力がある。

 

 二〇歳のユリアン・ミンツ宇宙軍准尉は、イゼルローン総軍一の美青年だ。さらさらの亜麻色の髪、繊細で儚げな美貌、柔らかい笑顔には、男性を恋愛対象とする者すべてを惹きつける魅力がある。

 

 美しい二人が一緒に歩いている姿は、一枚の名画のようであった。知性、品性、美貌のすべてにおいて均衡が取れていた。彼らが交際するのは定められた運命のように思われた。

 

「付き合ってないですよ」

 

 そう断言したのはコレット少将だった。

 

「なんでわかるの?」

「ミンツ君に聞きましたから」

「えっ!?」

 

 コレット少将以外の全員が目を丸くした。銀河一のフィリップス信者が、銀河一のヤン信者と会話したという事実がみんなを驚かせた。しかも、かなり親しげな口ぶりである。

 

「ユリアン・ミンツと話したの?」

 

 最年長のイレーシュ少将が全員を代表して質問する。

 

「ええ、一緒にご飯を食べた時に聞きました」

「そこまで仲良くなってるの?」

「ええ、フィリップス提督のご指示通りにいたしました」

 

 コレット少将は忠犬が主人を見るような目を俺に向けた。他の者も彼女と同じ方向を見る。

 

「そんな指示はしていないぞ」

「はっきり指示なさったでしょう? 『イゼルローンの連中と仲良くしろ』と」

「確かに言ったけど……」

 

 俺は困惑していた。ここまでやれと言ったつもりはなかった。喧嘩しないように釘を刺しただけなのに、コレット少将はあのユリアン・ミンツと一緒に食事をする仲になったのだ。

 

「あなたのご指示の賜物です」

 

 コレット少将は誇らしげに胸を張った。指示した以上のことをやっても、彼女は指示が正しかったおかげで成功したと思い込んでしまう。

 

 俺たちは、「あの二人は誰を好きなのか?」という話題で盛り上がった。ただ、妹だけは輪に入ろうとせず、冷ややかな目を向けた。

 

 議論の結果、「ユリアン・ミンツはヤン元帥の愛人もしくは配偶者」との結論でまとまった。ユリアンはヤン元帥と同じ官舎に住み、家庭内では家事を行い、外では非公式のボディーガードとして付き従っている。また、ヤン元帥と正式な養子縁組を結んでおらず、ヤン姓を名乗っていない。

 

 これだけの条件が揃えば、常識的な同盟人は愛人関係か別姓の配偶者だと考えるだろう。同性同士の恋愛や結婚があり得ないと考えるのは、新移民(ラグナロック会戦以降に移住してきた帝国人)ぐらいのものだ。俺は反論したかったが、客観的な根拠がないので諦めた。

 

 グリーンヒル准将については、「わからない」との意見が大勢を占めた。今のところ、男性の影も女性の影も見当たらない。

 

「メッサ―スミス君でしょう」

 

 コレット少将はチーム・フィリップス発足当初からの友人の名前をあげた。だが、彼がグリーンヒル准将に相手にされていないことは明白だったので、誰も同意しなかった。

 

「グリーンヒル提督の本命はヤン元帥だよ。エル・ファシルで彼女を救ったのはヤン元帥だ。副官として身近で仕えていれば、憧れが恋心に変わる機会もある。要塞艦隊に転属したのは、ヤン元帥に本気でアタックするためだね。直属の上官とは結婚できないから」

 

 俺は前の世界の知識にもっともらしい根拠を付け、ヤン元帥こそが本命だと言い張る。

 

「違います!」

 

 どういうわけか、ハラボフ大佐が顔を真っ赤にして否定した。勢いに押された俺は持論を引っ込めざるを得なかった。

 

 前の世界を知る者から見れば、ユリアン・ミンツとフレデリカ・グリーンヒルをゴシップネタにするなど、大それた行為であろう。この二人は天才ヤン・ウェンリーの側近であり、銀河に共和主義の種を残した指導者であった。俺ごときとは根本的な格が違う。

 

 前の世界のユリアン・ミンツは、「ヤン・ウェンリーの思想的後継者」とされる。ヤン・ウェンリーの養子になり、家事や護衛を行った点はこの世界と同じだ。しかし、前の世界では八〇〇年にヤンが暗殺されて、ユリアンがヤン派残党の軍事部門指導者となった。シヴァ会戦で判定勝ちを収め、ラインハルトに共和主義の存続を認めさせた。ヤン派残党がローエングラム朝に帰順すると、政治の世界から身を引き、ヤンの顕彰活動に取り組んだ。

 

 一方、前の世界のフレデリカ・グリーンヒルは、「ヤン・ウェンリーの政治的後継者」と言われた。ヤン・ウェンリーを副官として支えた点は、この世界と変わらない。だが、前の世界ではヤンと結婚し、ヤンが暗殺された後はヤン派残党の政治的指導者を務めた。ヤン派残党がローエングラム朝に帰順すると、フレデリカは初代自治政府議長や与党八月党党首を歴任した。

 

 以前の俺には、ユリアンとフレデリカが高く評価される理由がわからなかった。有能な側近だったことは認めるが、単体では大したことのない人物だと思っていた。ヤン・ウェンリーの威光を借りて偉くなったように見えたのだ。

 

 指導者としての経験を積んだ今なら、彼らの苦労と偉大さが理解できる。自分で獲得した名声を持つ俺ですら苦労した。借り物の名声を使った彼らは、さらに苦労したはずだ。覇王ラインハルト相手に戦い抜いただけでも立派であろう。バーラト自治区の衰退については、条件が悪すぎた。俺を苦しめた戦犯追及法にしても、リベラル勢力の支持を得るためには、ああするしかなかったのだろうと思う。

 

 みんながゴシップに興じている間、妹はひたすらタルトを食べ続けた。人見知りするタイプではないが、イレーシュ少将、コレット少将、ハラボフ大佐を大嫌いなので、話の輪に入らなかった。

 

 伝票に記された数字は馬鹿げた額になった。三分の一は妹、六分の一は俺、六分の一はイレーシュ少将、残り三分の一はコレット少将ら四人が食べた分だった。

 

 精算を終えた俺は、パラスの爺ちゃんに向かって軽く会釈した。山積みのタルトと料理を平らげていた爺ちゃんはこちらに気づき、右手を上げた。

 

「ん?」

 

 俺の目は爺ちゃんが右手に持った紙に釘付けになった。その紙には、オールド・パシフィストが使う独特の崩し字で、「君の彼女が誰かわかったぞ」と書いてあった。

 

 一体、誰を彼女だと勘違いしたのだろう? 不審に思っていると、爺ちゃんはにやりと笑い、右手の紙を取り替える。

 

「…………」

 

 新しい紙には「茶髪の子じゃな。ずっと君を見ていた。恋する乙女の目じゃ」と書かれていた。

 

「どうしたんですか?」

 

 緩くウェーブした茶髪の女性が、微笑みながらこちらを見た。その女性の名前はユリエ・ハラボフという。今日は「可愛い女の子」という設定なので、俺に対しても愛想が良い。

 

「いや、何でもない」

 

 俺は微笑み返してから、爺ちゃんの方を向いて両手でバツ印を作った。天地がひっくり返ったとしても、俺とハラボフ大佐が付き合うことはない。そもそも、彼女は俺を嫌っているのだ。

 

 他の人には、俺と爺ちゃんが何をしているのかわからないようだった。普通の人にはオールド・パシフィストの崩し字など読めない。俺にしても、パリ・コミューンに通わなければ読めなかっただろう。

 

 調査を終えた俺たちは店を出た。爺ちゃんが、「素直になりなさい。つんつんするほど人生は長くないぞ」と書かれた紙を掲げていたが、見なかったことにして通り過ぎた。

 

 イゼルローンの豊かさを実感できたので、今度は健康事情について調べることにした。一五フロアをぶち抜いた超巨大スポーツセンターへと足を運ぶ。

 

「素晴らしい……」

 

 俺は感動した。これほど広いトレーニング室など見たことがない。しかも、イゼルローン陥落の際に接収された帝国製の高級マシンが設置されている。

 

 美しい肉体こそが優等人種の証であると考えたルドルフは、トレーニングを奨励した。建国当初の重臣や貴族は、アスリートのような肉体を持っていた。帝国が堕落すると、支配層もトレーニングを怠るようになり、アウグスト流血帝のような弛んだ肉体を持つ皇帝も現れた。それでも、建前上はトレーニングを重んじ、多額の予算を投じた。帝国軍の提督にマッチョが多いのは、ルドルフの遺風によるところが大きい。

 

 ルドルフが残した唯一のまともな遺産を存分に使わせてもらった。体にため込んだ糖分が燃焼する。筋肉がフル回転する。汗が体中から噴き出す。俺たちは人間機関車だ。

 

 周囲には見知った顔がいくつもあった。地味なジャージを着たパエッタ大将は、無表情で逆立ち腕立て伏せを続ける。ワイドボーン大将は、はちきれんばかりの筋肉をぴちぴちのタンクトップで包み、筋肉美を見せつけた。昨日、「ミス・グリーンヒルを映画に誘います」と笑っていたメッサースミス准将は、黙々と腹筋を繰り返す。最近男に逃げられたドールトン少将は、サンドバッグにパンチの猛打を浴びせる。

 

「お姉さん、一人で来てるの?」

 

 タオルで顔の汗を拭いているコレット少将に声を掛けたのは、遊び人風の青年であった。

 

「友達と一緒ですよ」

 

 コレット少将はにっこりと笑い、ハラボフ大佐の方を指さす。ハラボフ大佐が微笑みながら頷いた。この二人は姉妹同然の仲だ。

 

「そっか。頑張ってね」

 

 青年は笑顔で立ち去り、少し離れた場所へ移動した。そして、プロテインドリンクを飲んでいる妹に声を掛けた。

 

「お姉さん、それおいしそうだね」

「あんまおいしくないですけど」

 

 妹は不機嫌そうに青年を睨みつけた。遊び人が大嫌いなのだ。金髪のかつらと特製胸パッドで変装していても、性格はいつもと変わらない。

 

「ごめんね」

 

 青年は笑いながら頭を下げると、別の場所に移動して、レオタードを着た黒髪の女性に声を掛けた。今度はうまくいったようだった。

 

 トレーニングそっちのけでナンパに励む青年の名前は、オリビエ・ポプランという。人々が彼の名前を聞けば、「通算撃墜数第一位の撃墜王」「自由戦士勲章受章者」「スパルタニアン八〇〇〇機を擁する要塞空戦隊のトップ」といった華々しい経歴を思い浮かべるであろう。そんな大物がその辺の若者のようにナンパをしているのだ。イゼルローンならではの光景といえよう。

 

 体を鍛えた後は、風呂に入って汗を流す。帝国統治時代のスポーツセンターでは、高級将校と貴族だけが豪華な浴場を使った。しかし、今は提督も一兵卒も同じ浴場を利用できる。民主主義は素晴らしい。

 

 風呂を出た俺たちは街中をぶらぶらと歩いた。ひんやりした秋風が心地良い。イゼルローン要塞の気候は、ハイネセン北半球と同じになるように調節されている。今は秋なのだ。

 

「あの人、トレイマー博士じゃない?」

 

 イレーシュ少将がこじゃれたレストランの前で立ち止まり、ガラス越しに店内を見た。みんなもつられるように立ち止まる。

 

「本当ですね。あのトレイマー博士がこんなところで飯を食ってる」

 

 俺は目を丸くした。確かに「同盟最高の知性」トレーマー博士だった。哲学界のヤン・ウェンリーともいうべき人物が、なぜイゼルローンにいるのだろうか?

 

「トレイマー博士の向かいにいる人も見覚えがあります。ラヴリーヌ博士です」

 

 コレット少将の視線の先には、「知の巨人」ラヴリーヌ博士がいた。この人は社会学界のラインハルト・フォン・ローエングラムである。

 

「クラルク博士とペニー博士もいるよ」

 

 イレーシュ少将が切れ長の目を大きく見開いた。「人類の至宝」クラルク博士と「真理に最も近づいた女」ペニー博士までいるのだ。

 

 俺たちは呆然とした。帝国出身のベッカー少将も例外ではなかった。四人の雷名は銀河の隅々まで轟いている。読み書きができない者でも、名前だけは聞いたことがあるはずだ。そんな偉人がガラス一枚隔てた場所で飯を食っている。

 

 四人の天才の他にも、有名な知識人を何人か見かけた。面識のある無名知識人も数人いた。知らない人も知識人かもしれない。そう思うと、通行人全員が知識人に見えてくる。

 

「やけに知識人が多いなあ」

「逃げてきたんじゃない? 締め付けがきつくなってるから」

 

 妹の推測は納得できるものだった。同盟における言論の自由は、急速に縮小しつつある。自由に発言できる環境を求めて逃げてきたとしても、不思議ではない。

 

 イゼルローンには、軍人家族向けの学校がたくさんある。転勤が多い士官の子弟のための通信制大学も置かれた。知識人たちはこうした学校の教員として雇われたのだろう。

 

 ハイネセン主義者はルーチンワークを軽視し、クリエイティブな仕事を重視する。イゼルローンでもその傾向は変わらない。イゼルローンの教員給与は全国平均を上回る。大学教員の給与は、ハイネセンの一流大学に匹敵するほどだ。教員の拘束時間は極めて短かいため、研究活動に没頭できた。一流知識人がイゼルローンに集まるのは、当然の成り行きといえる。

 

「知識人の天国、労働者の地獄か」

 

 俺は飲食店の求人ポスターを眺めた。給与は全国最低時給ぎりぎりの額で、「年齢不問。学生とお年寄り歓迎。同盟語が苦手な方でも働けます」と書いてある。

 

「連立政権時代と同じですな」

 

 ベッカー少将は冷ややかに切り捨てた。イゼルローンに住む未成年者と老人は、軍人の扶養家族なので、低い時給でも生活できる。同盟語が話せない移民は仕事を選べない。

 

 求人ポスターの隣には、全国最低賃金撤廃を訴える講演会のポスターが貼ってある。講演者はエル・ファシル改革、解放区経済改革、レベロ改革に参画し、現在はイゼルローン大学教授を務める学者だった。

 

「地球教の教会がやたらと多いですな。今日だけで四軒も見つけました」

 

 ベッカー少将が視線を向けた先には、太陽車輪のエンブレムを付けた建物があった。門前に「教会バザー」と書かれた看板が掲げられており、大勢の人が出入りしていた。

 

「イゼルローンは軍人の街だからね。地球教徒も多いんだ」

 

 俺はバザーの客を眺めた。その三分の一が軍服を着用している。地球教は軍人信徒を多く抱える宗教であった。

 

 イゼルローン軍政府のリベラリストは宗教を嫌っていたが、信教の自由は尊重した。カルト指定を受けた団体以外の宗教団体は、民間人居住区での宗教活動を許可された。二〇〇団体以上の宗教団体がイゼルローンで活動している。

 

 この世界の地球教の勢いは凄まじい。クーデター鎮圧に大きく貢献したことで、著しく評価を高めた。昨年の補欠選挙では、地球教の支援を受けた候補が大勢当選した。地球教徒の地方首長や地方議員は数多い。軍拡によって、失業中に地球教の世話になった予備役軍人が再招集されたため、同盟軍内部での影響力が拡大しつつある。

 

 地球回帰の精神運動は、国家の垣根を越えた一大ムーブメントに発展し、同盟・帝国・フェザーンの三国に巡礼協定を結ばせるに至った。地球への巡礼船は国籍によらず、帝国領を通過することが認められた。これにより、同盟人も地球に巡礼できるようになったのだ。

 

「一三日戦争以前もこんな感じだったんですかね」

 

 ベッカー少将は宗教の信用を失墜させた戦争の名前をあげた。古い記録によると、一三日戦争以前の世界では、宗教が支配的な地位を占めていたという。

 

 この問いに答えられる者は一人もいなかった。士官学校卒業者は戦史に詳しくても、歴史には詳しくない。宗教の影響力が大きかったことは義務教育で習う。けれども、具体的にどうだったのかは知らなかった。

 

 駅に入り、構内を歩いていると書店が目に入った。店頭に「社会の問題は自分の問題 社会派フェア」と書かれたポップが置いてある。台の上には、体制を批判する本や社会の暗部に迫る本が平積みになっていた。

 

「駅の書店にもこういう本が置かれているんだな」

 

 俺はパトリック・アッテンボロー氏の本を手に取った。大書店でしか見かけないような本が、駅の書店にも置いてある。さすがはリベラルの楽園だ。

 

「この人たちがいないからじゃない?」

 

 妹は憂国騎士団のイラストが表紙に描かれた本を指さした。イゼルローン要塞では、憂国騎士団の活動は禁止されている。

 

「ああ、そういうことか」

 

 俺はようやく事情を理解した。文句をつけに来る人間がいないから、駅の書店でも体制批判の本を堂々と置けるのだ。

 

 トリューニヒト政権が発足した頃から、憂国騎士団一般会員の抗議行動が激しくなった。体制に批判的な組織・団体に対し、抗議のメールや電話をしたり、大人数で押しかけたりした。声がでかいだけの一般人でも、束になると行動隊員より厄介だ。威力業務妨害や不法侵入の罪を犯しても、警察は取り締まろうとしない。被害者が裁判を起こしたら、優秀な弁護士を雇って対抗してくる。その結果、「目をつけられたら面倒だ。体制批判は控えよう」という空気が生じた。

 

 書店も憂国騎士団一般会員の標的となった。体制批判の本を置くと、一般会員がやってきて「なぜあんな本を置くんだ!」と怒鳴り出す。お引き取りを願っても帰ろうとしない。警備員が強制的に排除しようとしたら、仲間が集まってくる。警察に通報しても、憂国騎士団だと聞いたら帰ってしまう。トラブル慣れした書店以外は、体制批判の本を置かなくなった。

 

「慣れって恐ろしいな。こういう本が見当たらないのが普通だと錯覚した。本当は異常なのに」

「考え直した方がいいんじゃない?」

「何を考え直すんだ?」

「ボスとの関係」

 

 妹はさりげない顔でとんでもないことを言い放った。イレーシュ少将とベッカー少将が無言で頷いた。チーム・フィリップスの中核メンバーですら、トリューニヒト議長と距離をとるべきだという考えに傾きつつある。

 

 俺は無言で首を振った。こんな世界は望んでいなかった。みんなが笑いながら同じ食卓を囲む世界を望んでいた。明るい世界を作るために戦ったはずだった。どこでボタンを掛け違えたのだろうか?

 

 

 

 イゼルローン要塞は平穏を保っていた。第一辺境総軍とイゼルローン総軍の不仲は相変わらずであったが、軍務に支障が出るほどではない。

 

 俺が国防委員会に送った作戦案は却下された。費用のわりに効果が少ないという理由である。密航対策と考えれば、コストパフォーマンスが悪いのは事実だった。

 

 次善の策として、「回廊封鎖訓練」の名目で二個分艦隊を動員し、機動要塞の通路になりそうなワープポイントに艦艇を配置する計画を立てた。とにかくワープポイントに何かを置いておけば、大質量物質のワープアウトは困難になる。

 

 ところが、回廊封鎖訓練案も却下されてしまった。しかも、ネグロポンティ国防委員長からお叱りを受けた。帝国軍の侵攻に備えるつもりではないかと疑われたのだ。

 

 国防情報本部は、帝国軍が攻めてくる可能性を「無視できる程度に低い」と見積もった。そんな時に帝国軍の侵攻に備えたら、国防情報本部の分析を信用していないと言ったに等しい。「国防情報本部の面子を潰すな」というのが、ネグロポンティ国防委員長の言い分であった。

 

「ここまで言われたらどうしようもないな」

 

 機動要塞のワープを防ぐことは諦めるしかない。それでも、機動要塞対策を完全に諦めるつもりはなかった。

 

 俺は配下の宇宙部隊に対し、帝国軍のヘルムート・レンネンカンプ上級大将を仮想敵とした訓練を行うよう命じた。

 

「レンネンカンプ提督は正統派の用兵家だ。彼を仮想敵とすることで、帝国軍の標準的な用兵に対応できる力が身に着くだろう」

 

 第一辺境総軍の提督たちはこの説明に納得し、レンネンカンプ上級大将と戦うことを想定した訓練を始めた。イゼルローン要塞に駐留する第二艦隊は、宇宙空間を好きなだけ使えるという地の利を生かし、実戦的な訓練を行った。ラハムに駐留する第一一艦隊、第五五独立分艦隊、第五七独立分艦隊は、訓練スペースの確保に苦労したものの、最大限の努力を重ねた。

 

 もっともらしい理由を付けたが、これも機動要塞対策だった。要塞ワープ実験の責任者を務めたのはレンネンカンプ上級大将である。現時点では、彼以外に機動要塞を運用できる提督はいない。機動要塞がイゼルローンに攻めてくるならば、レンネンカンプ上級大将が指揮をとるはずだ。

 

「ずいぶん積極的に作戦を立てていますね」

 

 総軍副参謀長チュン・ウー・チェン中将が、俺の作った作戦方針書をめくる。

 

「有事のために準備を整えておきたいんだ。才能のなさを努力でカバーしたい」

「立派な心掛けです」

「ありがとう。で、俺の作戦はどうだ?」

「全然だめですね。細かすぎます。実戦では通用しません」

 

 チュン・ウー・チェン副参謀長の返答は、のんびりした口調とは裏腹に容赦ないものだった。

 

「きっちり決めないと安心できないんだ」

「作戦は精神安定剤ではないですよ」

「そ、そうだな」

 

 俺は少しうろたえた。機動要塞対策は自分が安心するために作成したものだった。本当に攻めてくるとは思っていないが、対策を用意しておかないと不安になる。

 

「余計なところは我々が削っておきます」

「ありがとう」

「それが参謀の仕事ですので」

 

 涼しい顔で答えると、チュン・ウー・チェン副参謀長は、潰れたハムクロワッサンを俺の手に乗せた。作戦立案は参謀の仕事、潰れたパンの提供は彼個人の仕事である。

 

 ワイドボーン参謀長、ラオ作戦部長、メッサースミス作戦副部長ら参謀八名がやって来て、チュン・ウー・チェン副参謀長とともに作戦案の検討を始めた。チュン・ウー・チェン副参謀長が天使に見えるほどに厳しい指摘が飛び交う。

 

 俺は心の中で参謀たちに頭を下げた。真の意図を隠していることが申し訳なかった。不要な仕事をさせているわけではない。密航防止が必要なことは確かだ。レンネンカンプ上級大将を仮想敵とする訓練は、それなりの効果をあげるだろう。作戦の必要性を否定した参謀は一人もいなかった。それでも、後ろめたさを感じる。

 

「我々がいる間は、帝国軍との戦いはないんじゃないですかね」

 

 ラオ作戦部長が楽観論を述べた。

 

「どうしてそう思う?」

「あなたが心配したことは起きなかったでしょう。クーデターの時だって、あなたが警戒した人は動きませんでした」

「…………」

 

 俺には何も言えなかった。彼の言うことは実際正しかった。過去を振り返ると、心配したことは起きないのに、起きないと思ったことは起きた。

 

 帝国軍が攻めてくる気配はない。駐フェザーン弁務官事務所経由の情報で、キルヒアイス元帥が二万隻を率いて出撃したことが判明したが、正統政府を討伐するための出兵だそうだ。国防情報本部が入手した情報によると、メルカッツ艦隊の動員は演習目的だという。機動要塞に関する情報はなかった。

 

 水面下ではテロへの警戒を続けている。戦犯タッツィーの妻子の暗殺をはかった正統政府の工作員が、ティアマト星系の宇宙港で逮捕された。また、個人によるテロ計画をいくつか摘発した。それでも油断はできない。さらなる警戒が必要だろう。

 

 国防委員会の指示により、イゼルローンに居住する戦犯とその家族に十分な警護を付けた。トリューニヒト政権は治安対策を売り物にしている。嫌われ者の戦犯を全力で守らなければ、テロに強い政権というイメージを保つことはできない。

 

 公共安全局から驚くべき情報が送られてきた。逃走中の麻薬王ルチオ・アルバネーゼがイゼルローンに潜入し、地球への巡礼船に乗り込み、帝国領に渡ろうとしているというのだ。

 

「これを全部貼らなきゃいけないのか」

 

 俺は顔を軽くしかめた。予想できる変装パターンが二〇通りもあるのだ。アルバネーゼはライオンのたてがみのようなふさふさ頭で、ほおひげと口ひげを繋げて生やし、あごひげを剃るという特異な風貌で有名だった。目鼻立ちは平凡なので、ひげと髪型をいじればどうにでも化けられる。

 

 資料の備考欄に、「アルバネーゼを発見したら必ず応援を呼ぶこと。最低でも一個分隊は必要」と書いてあった。俺は「一個分隊」を「一個小隊」に書き直した。相手は完全武装の憂国騎士団四人を素手でぼこぼこにした怪物だ。武器を持ったら、憲兵一個分隊など軽く片付けるだろう。

 

 イゼルローンの治安維持は予想以上に大変だった。繁華街では軍人同士の喧嘩が頻発した。ポプラン少将のように、自ら喧嘩沙汰を引き起こす将官の存在は頭痛の種となった。新移民による差別事件が後を絶たない。治安維持を担う憲兵は、実戦派軍人から軽視されているため、やる気に欠ける。

 

 軍政府というより、アッテンボロー大将の対応は手ぬるいの一言に尽きた。軍人同士の喧嘩については、「好きにやらせておけ」というスタンスだ。差別事件については、被害が重いものは厳しく処罰したが、被害が小さいものについては穏便な解決をはかった。そのため、不満を抱く者が少なくなかった。

 

 俺が修正を求めても、アッテンボロー大将は聞き入れない。そもそも喧嘩を悪いことだと思っていなかった。より弱い者を擁護するというスタンスなので、ちょっとしたことで強制送還されかねない移民に肩入れした。

 

 実戦派将校、管理局員、知識人たちは、アッテンボロー大将の姿勢を「寛容だ」と褒め称える。イゼルローンの「自由」と「寛容」は、非凡な人を満足させる一方で、凡人の不満を募らせた。

 

 本筋とは関係ない仕事に忙殺されている間に、ヤン元帥がハイネセンに到着し、査問会が始まった。ヤン元帥が自ら辞表を書いた時に、査問会は終わるだろう。

 

 俺の中には、早く終わってほしいという思いと、ヤン元帥を引退させたくないという思いがあった。終われば俺は楽になるが、ヤン元帥は引退させられる。ヤン元帥が引退しなければ、俺は楽にならない。どっちにしても茨の道だ。

 

 一〇月一一日、通信端末のチャイム音が俺を叩き起こした。時計を見ると、四時三〇分だった。いつもの起床時間より一時間早い。

 

「何があったんだ……」

 

 寝ぼけ眼をこすりながら通信画面を開く。

 

「ああ、君か。どうした」

「――――」

 

 相手の言葉が右耳から左耳に抜けていく。脳みそがまだ眠っているらしい。

 

「すまん、よく聞き取れなかった。もう一度言ってくれ。ゆっくりはっきりと喋るんだ」

「――――」

「何だって……!?」

 

 俺の脳みそはあっという間に覚醒した。眠気は数万光年の彼方まで飛んで行った。しばらくは眠れないだろう。

 

 一〇月一一日四時三〇分、イゼルローン回廊に巨大要塞と艦隊が出現した。偵察衛星の情報から推定される兵力は、四万五〇〇〇隻から五万五〇〇〇隻。休戦は三年一か月で破られた。


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