銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第96話:ジェットコースタードラマ 802年2月24日~3月14日 第一辺境総軍旗艦ゲティスバーグ~イースト・シャンプール宇宙港~第一辺境総軍司令部

 どんなに忙しくても、朝のトレーニングだけは欠かさない。毎朝五時三〇分に起き、ランニングと筋トレをこなす。軍人にとって体力は元手だ。体力さえあれば、激務に耐えることができるし、不眠不休で指揮をとることもできる。

 

 宇宙にいる時もトレーニングに励んだ。恒星間航行能力を持つ艦艇には、トレーニングルームが設置されている。間近にマシンがあるので、地上よりも体を鍛えやすい環境といえるだろう。

 

 ハイネセンを出発した翌日の朝、第一辺境総軍旗艦「ゲティスバーグ」のトレーニングルームでは、三〇人ほどがトレーニングをしていた。仕事が終わった後は、さらに多くの人がこの部屋を利用する。

 

 俺は念入りにストレッチを行った後、バーベルを背負ってスクワットを始めた。大きな筋肉は疲れにくくて傷みにくい。だから、大きな筋肉を先に鍛え、小さな筋肉を後で鍛えるのだ。

 

 右隣では、昇進したばかりの首席副官ユリエ・ハラボフ大佐がバーベルを背負い、スクワットをしている。上半身はピンク色のブラトップ、下半身はピンク色のホットパンツというインストラクターのような服装だ。引き締まった腹筋、くびれた腰、しなやかな手足、美しい背筋がよく目立つ。赤毛特有の白い肌が汗で光る。男性も女性も、彼女の健康的な美しさに見とれた。

 

 肌を露出した女性が隣にいると、落ち着かない気分になる。彼女自身も落ち着かないらしく、トレーニングが終わるとすぐに上着を羽織る。それなのに服装を変えようとしない。

 

 アンドリューによる暗殺未遂の後、彼女は俺の安全に過敏になった。露出が多いトレーニングウェアを選んだのは、「暗殺者に素早く応戦するため」という理由だそうだ。嫌いな上官のためにここまで尽くす人は滅多にいない。小物にはもったいない部下である。

 

 少し離れた場所では、人事部長イレーシュ・マーリア少将が腹筋をハードに追い込む。タンクトップの丈が短いため、きれいに割れた腹筋が露わになった。胸は豊かに膨らみ、腰は細さと丸みを合わせ持ち、太ももには張りがあり、名工が作った彫刻を思わせる。四〇歳手前になっても、スタイルは二〇代の頃と変わらない。誰もが彼女の女性美に圧倒された。

 

 参謀長マルコム・ワイドボーン大将は、一九〇キロのバーベルをあげる。腕はたくましく、胸板は厚く、肩は盛り上がっており、力強い美しさが感じられる。無駄な贅肉も無駄な筋肉もない。男性美の極致と言えるだろう。

 

 副司令官ジェフリー・パエッタ大将は右手でバーを掴み、腰におもり付きのベルトを巻き、片腕だけで懸垂を行う。完璧主義者は肉体の鍛錬も欠かさないのだ。

 

 副参謀長チュン・ウー・チェン中将は、のほほんとした顔でエアバイクをこぐ。機械化が進んでも、パン職人は肉体労働である。だから、「パン屋の二代目」の異名を持つ彼も体を鍛えた。

 

 チーム・フィリップスは、トレーニング好きを優先的に採用した。短期間で効果が出るトレーニングは存在しない。長期間継続しても、漫然と体を動かすだけでは効果が出ない。鍛えられた肉体の持ち主は、努力を継続できる人間であり、創意工夫を欠かさない人間である。

 

 スクワットの三セット目を始めようとした時、緊急速報のチャイムが鳴り響いた。俺はバーベルを置いて周囲を見回す。部下も一斉にトレーニングを止めた。

 

「帝国で政変が発生しました。詳細はテレビか端末をごらんください」

 

 アナウンスの後、トレーニングルームのスクリーンに一人の男性が現れた。帝国軍の軍服を身にまとっている。

 

「オットー・ブラウンシュヴァイク、ウィルヘルム・リッテンハイム、カール・ヴァイセンブルクによる国家転覆の陰謀が明らかになった!

 

 ブラウンシュヴァイク・リッテンハイム・ヴァイセンブルクの一味は、共和主義者及び売国勢力と結託し、エリザベート・ブラウンシュヴァイクを帝位に就け、最高権力を奪取しようと企んだのである!」

 

 軍人は首相ブラウンシュヴァイク公爵、第一副首相リッテンハイム公爵、枢密院議長ヴァイセンブルク公爵の三人を激しく糾弾した。フォンを付けずに呼ぶのは、三人の貴族身分を剥奪したことを示すためだろう。

 

 具体的な罪状については、「エルウィン=ヨーゼフ帝を廃位し、エリザベートを正帝、サビーネを副帝に即位させようと企んだ」「絶対帝政の原則を否定し、皇帝を象徴に祭り上げ、共和主義国家を作る計画を立てた」「クロプシュトックをそそのかし、先帝フリードリヒ四世を暗殺させた」「反乱軍と内通し、敗退行為を繰り返した」「帝国軍の団結を阻害し、反撃を遅らせた」「共和主義を国内に流布した」「サジタリウス腕を反乱者に引き渡した」「国家財産一〇〇〇兆マルクを横領した」「食料を買い占め、六〇億人を餓死させた」などがあげられた。

 

 帝国で政変が起きると、敗者は絶対悪に仕立て上げられる。五八個の罪状の中には、明らかなでっち上げが含まれていた。共和主義国家の建設、フリードリヒ四世の暗殺、ラグナロックにおける敗退行為、共和主義の流布などが事実とは思えない。国家財産の横領、食料買い占めなどは事実であろうが、示された数字は非現実的だ。

 

「すべての権力は、全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の守護者、最も高貴な血筋の継承者、大神オーディンの最高司祭、神聖にして不可侵なる皇帝陛下の御手に帰する! この原則を踏みにじることは決して許されない!

 

 大神が定めたもうた法則と大帝が定めたもうた祖法に背き、銀河の至高権威を否定し、大帝の血筋にとって代わろうとする者は、その思い上がりにふさわしい罰を受けなければならない!

 

 銀河帝国特別軍事法廷は、ブラウンシュヴァイク・リッテンハイム・ヴァイセンブルクが大逆罪に該当すると認定し、死刑判決を下した! 奴らの与党もことごとく懲罰を受けた! 正義は明らかになったのである!」

 

 軍人は空疎な決まり文句を並べ立てたが、肝心なことは何一つ言わなかった。これでも帝国にしては親切な部類だろう。公式発表は何もなく、「誰々が処刑された」「誰々が解任された」などの断片的な情報が流れ、しばらく経ってから「政変が起きたらしい」とわかるのが普通だ。

 

 政変から九時間後の一五時四〇分、「帝国フェザーン高等弁務官臨時代理」を称する帝国人フンメル氏が、同盟のフェザーン高等弁務官ヘンスロー氏に一枚のディスクを手渡した。「帝国摂政 クラウス・フォン・リヒテンラーデ」の肉声メッセージだという。ブラウンシュヴァイク公爵の講和案を破棄し、講和交渉を打ち切るという内容だった。

 

 一七時一五分、フェザーン自治領主ルビンスキーは、リヒテンラーデ摂政の就任を祝うメッセージを送った。これにより、リヒテンラーデ新政権が帝国の全権を掌握したことが判明した。

 

 二二時頃には新政権の輪郭が明確になった。元老会議議長リヒテンラーデ公爵を帝国摂政、経済担当副首相ゲルラッハ子爵を首相、宮内尚書ブラッケ侯爵を第一副首相、大元帥ラインハルトを国防担当副首相とする体制である。リヒテンラーデ摂政とゲルラッハ首相は中道派官僚、ブラッケ侯爵は開明派官僚、ラインハルトは改革派軍人を代表する人物だ。

 

 ラインハルトは軍務尚書・統帥本部総長・宇宙艦隊司令長官の三長官を兼任し、「帝国軍最高司令官」の称号を得た。三長官を兼任する者が現れたのは七二年ぶりとなる。地上軍総司令官と装甲擲弾兵総監のポストも獲得した。一人の人物が宇宙艦隊・地上軍・宇宙軍装甲擲弾兵の指揮権を手に入れたのである。

 

 二六日、同盟の国民投票が中止された。帝国の新政権が講和案を破棄したため、国民投票を実施する理由がなくなった。

 

 講和派は「投票が実施されていたら勝てたのに」と悔しがった。二月二二日の世論調査では、講和支持が講和反対を引き離した。クーデターの前日に開かれた反戦集会は、これまでにないほどの参加者を集めた。勝利は間違いないと思える情勢だったのだ。

 

 反講和派は「中止になってよかった」と胸を撫で下ろした。講和派が勝ったら、レベロ政権よりも容赦ない緊縮財政が実施されたはずだ。反講和派が勝ったら、講和派星系は独立しただろう。いずれにしても同盟分裂は避けられなかった。

 

 帝国で内戦が起きるとの見方が強まり、出兵を求める声が高まった。大衆党右派、憂国騎士団、統一正義党などの右翼勢力が出兵論の中心にいる。

 

 軍部良識派のコートニー・ボウヤー少将が、小規模派兵を提案した。片方の陣営に援軍を送って恩を売り、講和の糸口にするための出兵だ。ヤン・ウェンリー提督が提案した「鎚と金床」作戦が破棄された後も、「講和のための派兵」への支持は根強い。

 

 リッキー・コナハン准将を中心とするトリューニヒト派若手将校グループは、ラグナロックを上回る規模の出兵案を作った。大衆党右派がコナハン・グループを後押しする。

 

 五年前のラグナロック戦役が再現されるかに思われた。支持率低下に苦しむ主戦派政権、勢いのある野党、出兵を求める民衆、功績をほしがる軍人、二つに割れた帝国……。大戦が起きる条件は整った。

 

「出兵はないよ」

 

 俺が確信を込めて言い切ると、次席副官ディッケル大尉は首を傾げた。

 

「トリューニヒト議長としては願ってもないチャンスでしょう」

「頭を抱えてると思うけどね。長期国防計画が始まったばかりなのに、出兵論が盛り上がった。最悪の状況だよ」

「ヤン元帥も喜んで出兵するとお考えのようですが」

「絶対に出兵はない。トリューニヒト議長の目はいつも国内を向いている」

 

 表には出せない話だが、トリューニヒト議長の真の狙いは、フェザーンの天秤を維持することにある。冷戦状態を継続することで、国内をまとめようとしていた。均衡を崩しかねない大規模出兵など論外であろう。

 

 極右が均衡政策の打破を求めても、トリューニヒト議長は聞き入れないはずだ。フェザーンの機嫌を損ねたら、軍需企業から兵器を買うこともできないし、辺境に補助金をばらまくこともできないし、公務員の給料を上げることもできないし、低所得層に福祉の金をばらまくこともできない。トリューニヒト議長が野党だったら、反帝国を叫ぶだけで支持を得られるだろう。しかし、与党には支持者を豊かにする義務も課せられる。

 

 軍部は大規模出兵を望んでいない。ラグナロックは悪夢そのものだった。帝都を落としたのに勝てなかった。解放軍として乗り込んだはずなのに、圧制者として叩き出された。終戦後はすべての責任を押し付けられ、大軍縮を強いられた。良識派もトリューニヒト派も旧ロボス派も過激派も、「大規模出兵はこりごりだ」と思っている。

 

 こうした事情を踏まえれば、二度目のラグナロックが起きる可能性はないと断言できる。もっとも、「議長は全面戦争を望んでいない」とは言えないので、俺の楽観論は説得力に欠けた。

 

 結局、トリューニヒト議長は、「帝国が分裂する可能性は低い」と言って出兵を避けた。極右に対しては、「軍拡競争で帝国を疲弊させ、経済破綻に追い込む」という戦略を披露し、軍拡こそが真の戦いだと説いた。

 

「俺の言ったとおりになっただろう」

「さすがです」

 

 ディッケル大尉は俺を尊敬のまなざしで見る。

 

「ずっと議長にお仕えしてきたからね。あの人の考えることは全部わかる」

「そういうものなんですか?」

「心が通じ合っているんだ。俺にはあの人の考えることがわかるし、あの人には俺の考えることがわかる。こういう関係を以心伝心というんだよ」

「閣下とハラボフさんみたいな関係ですね」

「えっ!?」

 

 俺はコーヒーをこぼしそうになったが、ハラボフ大佐が駆け寄ってカップに手を添えたため、何事もなかった。

 

「こんな感じです」

 

 ディッケル大尉がにっこりと笑う。

 

「ハラボフ大佐は気配りができる人なんだ」

 

 俺が褒めると、ハラボフ大佐は顔を背けて自分の席に戻った。気分を悪くしたのだろう。心がまったく通じ合っていない。

 

「ただの気配りではありません。お二人は深い絆で結ばれているんです。閣下が何かを知りたいと思ったら、ハラボフ大佐がすぐに資料を持ってくる。閣下が物を探したら、ハラボフ大佐がすぐに見つける。閣下がコーヒーを飲みたくなったら、ハラボフ大佐がすぐにいれる。最初はテレパシーで話してるんじゃないかと思いました」

 

 ディッケル大尉は俺とハラボフ大佐を交互に見る。

 

「優秀な副官はこういうもんだよ」

「閣下もハラボフ大佐のお気持ちをよくご存じじゃないですか」

「そうでもないよ。鈍いからね」

 

 俺は苦笑いしながら書類を整頓した。ハラボフ大佐の細かい手癖に合わせ、仕事をしやすいように並べ直すのだ。

 

 チーム・フィリップスのメンバーは、俺とハラボフ大佐の仲が悪いことを知らない。過去を知っているベッカー情報部長は、仲直りしたと思っていた。イレーシュ人事部長は単なるコミュニケーション不足だと考えたようだ。メッサースミス准将に至っては、「ハラボフ大佐はフィリップス提督を好きなのでは」と勘違いした。

 

 他人の評価とは不思議なものだ。俺とトリューニヒト議長はお互いを理解しているのに、他人にはドライな関係に見える。俺とハラボフ大佐は仲が悪いのに、他人には心が通じ合っているように見える。

 

 目の前のディッケル大尉にしても、評価と実質は大きく異なる。幼い頃に両親を殺されて孤児となり、亡命した後に苦学して士官学校に首席で入学したと聞くと、ハングリーな人物のように見える。しかし、一緒に働いてみると、素直でおっとりした感じの人物だった。内面は違うのかもしれないが、知りようがないことだ。

 

 ややこしいことを考えたせいか、糖分がほしくなった。俺の脳みそは燃費が悪い。人の二倍回してようやく人並みなのだ。つまり、人の二倍の栄養が必要になる。

 

「どうぞ」

 

 ハラボフ大佐が砂糖とクリームでドロドロになったコーヒーを置いた。驚くほどに的確なタイミングだ。

 

 もしかしたら、ディッケル大尉の言ってることは、半分だけ正解なのかもしれないと思った。ハラボフ大佐は俺の心を読めるのではないか。時間を逆行した人間がいるのなら、心を読める人間がいてもおかしくない。

 

 試しにハラボフ大佐が喜びそうなことを考えた。だが、彼女はそのまま席に戻ってしまった。心を読まれたのかどうかはわからなかった。

 

 

 

 帝国情勢はトリューニヒト議長が言った通りになりそうだ。フェザーンマスコミの報道、情報機関が入手した情報は、帝国が分裂していないことを指し示した。

 

 ブラウンシュヴァイク公爵家、リッテンハイム公爵家、ヴァイセンブルク公爵家の三家は、「一族全員に対する死刑」の判決を受けた。弑逆者ウィルヘルム・クロプシュトック、戦争犯罪者スタウ・タッツィーと同等の重刑である。女性や生まれたばかりの乳児も処刑対象となった。

 

 連座して処刑された者は数千人と言われる。治安担当副首相フレーゲル侯爵、国務尚書レムシャイド伯爵、近衛兵総監オッペンハイマー元帥、ヴァナヘイム総監グライスヴァルト元帥、アルフヘイム総監エッデルラーク元帥、帝都防衛司令官ヒルデスハイム伯爵らが処刑されたそうだ。

 

 ブラウンシュヴァイク夫人アマーリエ、リッテンハイム夫人クリスティーネ、ブラウンシュヴァイクヴァイク公女で副帝でもあるエリザベート、リッテンハイム公女サビーネは、先帝の血を引いているため、終身刑に減刑となった。

 

 同盟中央情報局によると、貴族・高級官僚・高級軍人・警察幹部など数万名が、反逆者の一党として処刑されたという。国防担当副首相エーレンベルク元帥、枢密院第一副議長シュタインホフ元帥、内務尚書ノルデン子爵、軍務尚書シュタイエルマルク元帥、宇宙艦隊司令長官リンダーホーフ元帥、帝国軍情報総局長官ミヒャールゼン上級大将、フェザーン高等弁務官シェーンコップ男爵、首相府顧問ルッツ博士らの処刑については、裏付けが取れたそうだ。

 

 フェザーンのマスコミは、門閥派拠点がラインハルト派に接収されたことを突き止めた。帝国国内の報道において、ロイエンタール大将がニヴルヘイム総監代行、ミッターマイヤー大将がミズガルズ総監代行、ルッツ大将がスヴァルトアールヴヘイム総監代行、ミュラー中将がガイエスブルク要塞司令官代行、アイヘンドルフ中将がレンテンベルク要塞司令官代行、ビューロー中将がガルミッシュ要塞司令官代行の肩書きで紹介されたらしい。

 

 帝国政府がフェザーンに門閥派要人の手配書を送った。これによって、軍事監察官フレーゲル男爵、ミズガルズ総監オフレッサー元帥、ブラウンシュヴァイク公爵の首席副官アンスバッハ中将ら四七名が逃走中であることが判明した。彼らが武装蜂起する可能性は低いとみられる。

 

 様々な情報から推測すると、門閥派要人の拘束、門閥派拠点の接収は一時間で完了したようだ。フェザーン駐在の高等弁務官ですら、逃れることはできなかった。

 

「鮮やかだな」

 

 俺は感嘆の吐息を漏らした。さすがはラインハルトだ。誰もが不利だと思っていたのに、あっさり逆転してのけた。

 

 クーデターの詳細についてはわからなかった。非民主的な政府には、情報を公開する義務などないし、民衆への説明責任を果たす義務もない。臣民に対しては、「門閥派は滅んだ。今後は我々が国を仕切る」と宣言すれば、それで十分なのだ。

 

 同盟やフェザーンの専門家は、捕虜帰還を祝う式典がクーデターに利用されたとみている。二月二四日は捕虜回収船団の本隊が帝都に到着する日だった。ブラウンシュヴァイク公爵は全土から有力者を呼び集め、自分の功績を誇示しようと考えた。地方では、捕虜回収船団の支隊が捕虜を送り届ける仕事に従事していた。門閥派の権勢を揺るぎないものとするセレモニーは、クーデターの機会でもあった。

 

 祝賀式典を利用したなら辻褄は合うが、それでも疑問は残る。近衛兵と皇宮警察は門閥派の影響下にあった。ラインハルト配下の兵士が式典会場に入ることは難しい。式典参加を許された捕虜五〇〇〇名がラインハルト派だったとしても、近衛兵と皇宮警察を排除することは不可能だ。

 

「天才の考えることはわからないな」

 

 そう言って俺は思考放棄した。公表されている情報は少ない。推測を重ねても、正解に行き着くことはないだろう。

 

 通信端末を開き、マティアス・フォン・ファルストロング伯爵に通信を入れた。帝国人の知り合いはたくさんいるが、彼より帝国政治に詳しい人はいなかった。

 

「宇宙港で仕掛けたんじゃろうな。出迎えに来たオットーらを一網打尽にしたのであろう」

 

 ファルストロング伯爵は事も無げに言った。

 

「それなら辻褄が合いますね」

 

 俺は心の底から納得した。見栄っ張りのブラウンシュヴァイク公爵は、出迎え式を盛大に行うはずだ。そして、警備兵よりも回収船団の兵士の方がずっと多い。兵士が船から降りると同時に雪崩れ込めば、宇宙港に集まった要人を一網打尽にできる。

 

「地方に残った連中は、一か所に集まったところを襲われたんじゃろう。ローエングラムの手下が『みんなで式典を見よう』と言って、大型スクリーンがある部屋に幹部を集める。そうすれば、乗っ取るのは簡単だ」

「ヤン提督のイゼルローン攻略作戦と同じ手ですね。堅固な要塞も中からの攻撃にはもろい」

「大した小僧じゃ。流れを強引に変えおった」

 

 ファルストロング伯爵は、一本取られたといった感じの笑いを浮かべた。百戦錬磨の彼ですら予想できなかったのだ。

 

「今後の政局はどうなるとお考えですか?」

「しばらくは主導権争いが続くじゃろうな。貴族の金を手に入れた者が勝者になる」

「まだ終わったわけではないんですね」

「権力闘争は金の奪い合いだ。敵の首を取るだけでは、勝ったとは言えん。敵の金を手に入れることが肝心なのだ」

「なるほど」

 

 俺は感心したように頷いた。門閥派と先帝側近グループの抗争は、金を守ろうとする者と金を奪おうとする者の抗争だった。金を奪ったら、分け前をめぐって争うのが自然な成り行きだろう。

 

「リヒテンラーデ派が有利じゃろうな。あの連中は宮廷政治に長けている」

「ローエングラム派には、オーベルシュタインという策士がいますよ」

「オーベルシュタインの三男坊が策士か。卿にしては面白い冗談だ」

 

 ファルストロング伯爵は、誰もが恐れるオーベルシュタイン大将を子供扱いした。いかにも親しげといった感じである。

 

「オーベルシュタイン提督をご存じなんですか?」

「子供の頃から知っているぞ。わしの又従兄弟の子供じゃからな」

「親戚じゃないですか!」

 

 俺は心臓が飛び上がるほど驚いた。知人と銀河一の策士が親戚なのだ。平静でいられる方がおかしい。

 

「驚くこともなかろう。門閥貴族は婚姻や養子縁組で繋がっている。全員が親戚のようなものだ。わしの祖父はブラウンシュヴァイク家からの婿養子じゃしな」

「でも、あのオーベルシュタインですよ」

「パウルは真っすぐな奴でな。曲がった道を真っすぐに歩こうとする。そういう奴だから揉め事が絶えなかった」

 

 ファルストロング伯爵の口から語られるオーベルシュタイン像は、策士というイメージとは程遠い。熱い男といった感じだ。

 

「閣下が亡命した後に変わったとは考えられませんか?」

「まったく変わっとらんな。パウルの行動原理はおそろしく単純だ。敵を見つけたら、問答無用で排除する。異論には真っ向から正論をぶつける。駆け引きというものがまるでない」

「目的のために手段を選ばない人は、立派な策士でしょう」

「パウルには妥協や懐柔という選択肢はない。強硬手段を辞さない男ではなく、強硬手段しか使えない男なのだ。策士とはいえんな」

「そういう見方もあるんですね」

 

 オーベルシュタインが強硬手段しか使えないという指摘は、俺の先入観を打ち砕いた。目的のために手段を選ばない人物なら、妥協することもできるし、相手を抱き込むこともできるだろう。しかし、オーベルシュタインはいきなり強硬手段を使う。前の世界でもそれは同じだった。

 

「権力闘争で勝つには味方が必要だ。パウルは敵を潰す方法を知っていても、味方を増やす方法は知らぬ。根っからの戦士じゃよ。政治向きではない」

 

 ファルストロング伯爵はオーベルシュタインをこきおろすが、表情と声は妙に優しい。単純さを褒めているようにすら見える。

 

「そうなると、ローエングラム派は苦しいですね。根回しができない人ばかりですから」

「ローエングラムに勝ってほしいのか?」

「負けてほしいです。敵は弱い方がいいですから」

 

 俺はきっぱりと言い切った。ラインハルトがトップに立てば、強力なリーダーシップで帝国をまとめ上げるだろう。同盟にとってはありがたくない事態だ。

 

「わしの予想なんぞあてにならんがな」

「不吉なことはおっしゃらないでください」

「馬鹿の考えることはわからん。宇宙港に着いた瞬間に仕掛けるなど、わしにはない発想だ」

「あなたは見抜いたじゃないですか」

「終わってから分析しただけに過ぎん。所詮は後知恵じゃよ。わしがオットーの立場だったとしても、虜になったであろうな」

 

 ファルストロング伯爵はお手上げだといったふうに笑う。

 

「ローエングラムは銀河一の大馬鹿だ。真の馬鹿には計算も駆け引きもない。一旦決めたらひたすら突っ走る。曲がった道をまっすぐ歩き、船がないのに海を渡り、翼がないのに空を飛ぶ。不可能を可能にするのはそういう男であろう」

 

 馬鹿は強いというのが、ファルストロング伯爵の持論である。知恵者はすぐに諦めるが、馬鹿は諦めない。知恵者は考えてから行動するが、馬鹿は考えずに行動する。知恵者は冷めているが、馬鹿は情熱がある。それゆえに強いのだという。

 

 ラインハルトがなぜ「天才」なのかが理解できた。彼に匹敵する戦術家は何人もいる。彼に匹敵する戦略家は何人もいる。彼に匹敵する勇者は何人もいる。しかし、彼ほど単純な人はいない。やろうと思ったら、万難を排して成し遂げる。ただそれだけだ。彼が天から与えられた才能とは、単純ゆえの粘り強さ、単純ゆえの行動力、単純ゆえの熱意ではなかろうか。

 

 

 

 俺たちが惑星シャンプールに到着したのは、三月一三日のことだった。惑星と同じ名前の星都は亜熱帯にある。今の気温は二六度。この時期の平均最高気温より三度高い。

 

「懐かしいね」

 

 イレーシュ人事部長が微笑む。この惑星は彼女と俺が出会った星なのだ。

 

「まったくです」

 

 俺は笑いながら頷いた。マー通信部長も頷く。この惑星はマー通信部長と俺が出会った星でもある。

 

 一三年前、シャンプールで幹部候補生養成所の受験勉強に励んだ。イレーシュ人事部長とマー通信部長は、その時の家庭教師だった。そして、この星にある第七幹部候補生養成所に入学した。受験生活と幹部候補生生活を合計すると、二年間半を過ごしたことになる。エル・ファシルから脱出した時に降り立ったのもこの星だった。

 

「暑い星ですなあ」

 

 第一一艦隊司令官ウィレム・ホーランド大将は、苦笑いしながら汗を拭く。上半身はTシャツ、下半身はハーフパンツ、足にサンダルを履き、首にタオルを巻いている。そんな格好なのに暑がっているのだ。

 

「ホルトンと大して変わらないと思うけど」

 

 俺は旧第一一艦隊D分艦隊司令部があった街を例に挙げた。

 

「今だから言えることですが、あの街の暑さには参っておりましたよ」

「怖いもの無しのホーランド提督にも弱点があるんだね」

「雪国育ちですからな」

 

 ホーランド大将は折り畳み式ファンで顔をあおぐ。本当に暑さに弱いらしい。

 

「私は知ってたけどね」

 

 イレーシュ人事部長が意地悪な笑いを浮かべる。ホーランド大将は意外そうな顔をした。

 

「人に話したのは初めてだぞ」

「ずっと前から知ってたよ。士官学校の時からずっとね。夏になると死にそうな顔をしてた」

「ばれてたのか」

「みんな知ってたよ。言わなかっただけでさ」

「隠したつもりだったんだがなあ」

 

 ホーランド大将とイレーシュ人事部長は、打ち解けた様子で会話を交わす。わだかまりは残っていないようだ。

 

「もう見栄を張らなくてもいいの。あんたはただの人なんだから」

「そうだな」

「楽しくやろうよ。ただの人には楽しいことがたくさんある」

 

 イレーシュ人事部長はホーランド大将に笑顔を向けると、売店の方へ歩いて行った。そして、アイスクリームを三個持って戻ってくる。

 

 俺、イレーシュ人事部長、ホーランド大将は一緒にアイスクリームを食べた。そこにワイドボーン参謀長、コレット少将、ドールトン少将らもやってきて雑談が始まる。

 

「ハラボフ大佐はフィリップス提督を好きなんですよ」

 

 ドールトン少将が片手に本を持って力説する。本の題名は『好きな人を避けたくなる心理』。恋愛で失敗し続けているのに、恋愛本が大好きなのだ。

 

「それはないと思うけどなあ」

 

 俺は右前方へ視線を向ける。四メートルほど離れた場所にいるハラボフ大佐は、すぐに目をそらした。こんなに離れていても彼女は嫌がる。好かれてるはずがない。さらに言うと、主張者が信用に値しない。

 

 それでも、ドールトン少将は自説を崩さなかった。俺は困惑し、ホーランド大将とコレット少将は真面目な顔で聞き、ワイドボーン参謀長とイレーシュ人事部長は無責任に冷やかす。

 

 雑談が終わった後、俺とホーランド大将はアイスクリームを買いに行った。シャンプール特産のキウイアイスである。三月は一年で最もキウイがうまい時期なのだ。

 

「暑い星に骨を埋めるのも悪くありませんな」

 

 ホーランド大将は小声で呟いた。彼に残された時間は多くない。司令官職を一期二年務めたら、引退することになるだろう。

 

「シャンプールはいい星だよ」

 

 俺は満面の笑顔で応じた。シャンプールの食べ物は辛いけどうまいんだ。シャンプールの飲み物は甘いけどうまいんだ。シャンプールの街は賑やかなんだ。シャンプールの海は青くて透き通ってるんだ。シャンプールの山は緑が豊かなんだ。シャンプールの祭りは楽しいんだ。シャンプールの人は陽気なんだ。きっと楽しくやれる。

 

 三月一四日、第一辺境総軍は本格的に始動した。五つの軍集団級部隊と四つの軍級部隊を基幹としており、宇宙艦艇五万四六〇〇隻、兵員九三五万人を有する。担当宙域は有人星系五九個、無人星系八九一〇万三〇五七個に及ぶ。名実ともに最大最強の総軍である。

 

 本拠地シャンプールには、サンボラ大将の第七方面軍、俺が直率する第二艦隊、ホーランド大将の第一一艦隊、シューマッハ大将の第二二艦隊、フリスチェンコ大将の第六地上軍、ベロッキオ大将の第二二地上軍、マリノ中将の第五五独立分艦隊、ビューフォート中将の第五七独立分艦隊、セノオ中将の第三七独立作戦軍、ラフマディア中将の第四〇独立作戦軍、ドレムラー中将の第一辺境特殊作戦軍が司令部を置いた。第七方面軍以外の部隊は、特定の警備区域を持たない機動運用部隊である。

 

 シヴァ星系第四惑星ミトラにはシュトライト大将の第二方面軍、アスターテ星系第五惑星アイヤムルにはメイスフィールド大将の第二二方面軍が司令部を置いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 今のところ、第一辺境総軍の管内に大きな問題は起きていない。昨年の辺境正常化作戦と国内平定作戦が、テロリストや宇宙海賊に打撃を与えた。当分の間は部隊の錬成に専念できる。

 

 講和派が独立する可能性は完全に消えた。国民投票が中止された後、講和派は急速に勢いを失っている。地方選挙で講和派が敗北を重ねた。講和派自治体でリコールを求める動きが広がり、首長失職や議会解散が相次いだ。

 

 最近になって、「国民投票を実施しても、講和派は勝てなかった」という見方が出てきた。クーデターの一時間前、ケリム星系議会選挙の開票が終わった。圧勝すると思われた講和派政権は、議席の九割を失う大敗を喫し、現職の星系首相も落選した。講和派の敗北は中止前から始まっていたというのだ。

 

 右翼系マスコミによると、帝国でクーデターが起きたことを知った時、トリューニヒト議長は落胆したらしい。国民投票で完全勝利を収め、講和派に止めを刺すことができなかった。それが残念なのだそうだ。

 

 誰が正しいのかはわからない。講和派の勢いが凄まじかったのは事実だし、講和派が地方選挙で敗北したのも事実だ。「八〇二年四月一七日の国民投票が実施されていたら、同盟はどうなったか?」という問いは、研究者を悩ませ続けるだろう。

 

 国民投票が中止されると、経済問題が新たな争点となった。トリューニヒト政権は、積極財政による経済成長と雇用安定を掲げる。反戦・反独裁市民戦線(AACF)を中心とする反戦勢力は、緊縮財政による財政再建を打ち出した。

 

 同盟の財政赤字は危機的水準を大きく越えていた。借りた金を利子の返済に回し、デフォルトをぎりぎりで回避している状態だ。ハイネセン記念大学経済研究所のベラミー教授は、「我が国の財政を人間に例えるならば、昨年末に死亡した。今はゾンビだ」と述べる。再建会議やAACFが一定の支持を得た背景には、「戦争を続けたら財政が破綻する」という危機感があった

 

 和解推進運動のレベロ代表はリベラル・保守・右翼に対し、「もはや争っている時ではない。挙国一致で緊縮財政を進めよう」と呼びかけた。そして、トリューニヒト議長と会談し、間接税の税率を三倍に引き上げるよう求めた。

 

「増税こそが唯一の景気対策だ。政府が緊縮に転じたことを知れば、投資家は安心し、金融市場が活性化する。間接税は公平に徴収されるため、市民の不満は少ない」

 

 レベロ代表の提言は、学問的にも政治的にも非の打ち所がなかった。大衆党からも賛同の声が相次いだ。

 

 だが、トリューニヒト議長は、「公約に反することはできない」と言って拒否した。彼に政権を与えたのは、緊縮財政に反対する人々だ。市民感情を何よりも優先するのが、彼の流儀である。

 

 それでも、レベロ代表は食い下がった。今が国家滅亡の瀬戸際だと考えた。財政再建に取り組むなら、全面的に協力するとも述べた。ジョアン・レベロに私心はない。自由と民主主義と自由惑星同盟を愛する気持ちが原動力だ。

 

 政界では、レベロ代表への支持がじわじわと広がっている。レベロ代表が設立した議員連盟「財政危機と戦う議員連盟」の役員には、民主主義防衛連盟(DDF)のウィンザー代表、大衆党のシャノン前代表代行といった非リベラルの大物も名を連ねた。AACFのシュミット議員はレベロ批判の急先鋒であったが、涙を流して謝罪し、財政再建に協力することを誓った。大衆党・AACF両党の主流派は加わっていないが、それでも無視しえない勢力だ。

 

 財政危機と戦う議員連盟が発足したことを知った時、俺は微妙な気持ちになった。イデオロギーより国家を優先する政治家がいることは喜ばしい。だが、手放しで喜ぶことはできなかった。

 

「こんなことのために共闘するのはやめてほしいな」

 

 そう呟くと、俺は窓の外を見た。ここは第一辺境総軍司令部仮庁舎の最上階だ。外では基地の建設工事が進んでいる。

 

 惑星シャンプールは建設ラッシュに沸いていた。二個分艦隊・三個陸上軍・二個航空軍を受け入れる設備しかない惑星に、二個正規艦隊・一個即応艦隊・一個常備地上軍・一個即応地上軍・二個独立分艦隊・二個独立作戦軍の司令部が移転してきたのだ。新しい基地を作らなければならない。シャンプールの建設需要は巨大な雇用を生み出し、辺境経済の起爆剤となった。

 

「緊縮財政をやったら、この工事が全部中止になる。外にいる連中はみんな失業する。そうなったら……」

 

 俺は途中で考えるのをやめた。想像するだけで恐ろしくなったからだ。砂糖とクリームでドロドロになったコーヒーを飲み、糖分で気持ちを和らげる。

 

 同盟軍の地方移転は、基地建設事業とセットであった。中央総軍の本拠地テルヌーゼン、イゼルローン総軍の本拠地ラハム、第二辺境総軍の本拠地ウルヴァシー、第三辺境総軍の本拠地ネプティス、第四辺境総軍の本拠地カッファー、第五辺境総軍の本拠地パルメレンドでも、建設ラッシュが起きている。

 

 ハイネセン学派の経済学者は、国家の金で雇われた人間を失業者とみなす。「労働市場の実態を正しくとらえるには、公務員と公共事業従事者を除外するべきだ。国が借金して人を雇えば、失業率が下がるというのはおかしい」というのだ。

 

 しかし、俺には窓の外にいる人が失業者だとは思えなかった。大局的な視点から見れば、国が借金して雇った労働者も、失業者も同じかもしれない。だが、局所的な視点から見れば、仕事がある人と仕事がない人はまったく違う。

 

「ここで『彼らを失業から救うには、財政再建をやるしかない』と考えるのが、レベロ先生なんだろうな」

 

 俺もレベロ代表も、国家を守りたいという点では一致する。国家を守ることは、国民の生活を守ることに等しい。レベロ代表は、彼らを守るために緊縮をやろうとするのだろう。「自由に生きればいい」と突き放す人よりはずっと共感できる。それでも、何かが違うと思う。

 

 思い悩んでいるところにハラボフ大佐が入ってきた。両腕に書類を抱えている。これから一日の仕事が始まるのだ。


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