血盟騎士団本部に赴き、会議室で待ち受けていたヒースクリフから、俺達は驚くべき情報を聞かされる事になった。
ヒースクリフによると、ボス部屋は昨日の深夜に発見され、今朝、偵察隊8人がボスの確認に向かって行ったそうなのだが、偵察隊の者達が入り込むや否ボス部屋の扉が閉じられてしまったらしい。そして偵察隊の者達の身を心配した第2部隊が扉の開いたボス部屋を覗き込んだところ、そこにはボスの姿も、偵察隊の者達もいなかったという。
第2部隊が本部に戻って来ても、偵察隊の者達の姿が無い事から、偵察隊の者たちはすべてボスに殺害され、同時にボス部屋全体が結晶無効エリアである事が判明したそうだ。
これまで、ボス部屋に入ったとしても、転移結晶を使えば脱出出来て、体勢を立て直したりする事が出来た。しかし今回の部屋は、転移結晶どころか回復結晶すらも使う事の出来ない、完全なる結晶無効エリア。恐るべき悪条件が揃いまくっている、最悪のボス部屋であると、俺達は瞬時に理解し、戦慄した。その様子を察してくれたのか、ヒースクリフが「自分も戦うから、しっかりと落ち着いて、事に当たってくれ」と言ってくれたが、それでも俺は次のボス戦で繰り広げられる死闘をイメージして、震えるのをやめる事が出来なかった。
いったいどんな姿をしていて、どんな攻撃方法を持ち、どんなソードスキルを会得しているというのだろうか。そしてそれらの威力はどのくらいで、リランの物と比べてどちらが強いのか。これまで戦ってきたモンスター達の姿を連想しても、75層のボスの姿や能力を割り出す事は出来なかった。
人のいなくなった会議室で、シノン、アスナ、リランと共に椅子に座り、俺は顔を押さえた。
「いったいどんな戦いになるんだ……一体、どんな奴が……」
アスナも同じように顔を半分覆っている。
「私も、何が起きるのか全然想像が付かないよ……」
シノンが腕組みをしながら背もたれに凭れ掛かる。
「それでも戦うしかないわ。どんな敵が現れたとしても」
リランが険しい表情を浮かべながら、俺の肩で頷く。
《シノンの言う通りだ。我らはここで止まるわけにはいかない。だが、そもそも節目は75で最後ではないか。これを超えれば、もう強敵に出会う事など無いはずだ》
「確かにそうかもしれないけれど……それでも節目は節目だ。どんな悲劇が起きたって不思議じゃない。それこそ、50層の巨像よりも強い奴が出てくるかもしれないんだぜ」
50層の戦いも、熾烈を極めたものだった事を今でもよく覚えている。あの時リランの力を発現させられなかった、いや、リランを仲間にしなかったまま戦う事になったら、どれだけの被害と犠牲者が出ていたのかと、想像すると寒気が来る。
そして今回の戦いはそれよりも強い奴が居ると思われる75層。リランの力は巨像にも打ち勝ち、事故だったとはいえ《笑う棺桶》を全滅させるくらいの、クォーターポイントのボスと同じくらいの出力だが、たとえそれを持ったとしても、75層のボスには敵わないかもしれない。
「リラン、お前の力を持ったところで、勝てるのか」
《勝てるのかではない。我々は勝たねばならぬのだ。我は、お前達を現実世界へと返してやらねばならないし、その時までキリト、お前を守らなければならぬ。それが我、<使い魔>の使命だ。そしてその力を最大限に利用して他のプレイヤーを、自分の身を守るのが、<ビーストテイマー>のはずだ》
「そうだな……弱気になってても、何も変わらないか」
俺はアスナの方に目を向けた。
「アスナ、もうこの際、総力戦の覚悟で挑もう。もう、全てを投げ打つつもりで」
アスナは顔から手を離した。
「そのつもりだけど、それでも勝てるかどうか……」
「勝つさ。俺達にはリランもいるし、聖竜連合のディアベルも、風林火山のクラインも、エギルも、そして最後の砦のヒースクリフもいるんだ。攻略組の持つありったけの戦力を、ボスにぶつけてやろうぜ」
それでも勝てるかわからないと言うのが本音だが、それ以前に、俺は気になっている事があった。今回のボスはとんでもなく強い固体であり、様々なプレイヤーが死の淵に立たされる事になる戦いとなるだろう。そしてそれは、戦いに参加する、血盟騎士団のヒースクリフにも言える事のはずだ。
ヒースクリフはこれまで、HPを黄色にした事のないプレイヤーだったが、今回のボスがとんでもなく強いとあれば、戦いの最中でHPが黄色になってしまうだろう。しかし、それでも、あいつのHPが黄色になる事が無かったなら、その時は……。
「キリト君の言う通りだね。弱気になってるだけじゃ、何も変わらない。もう何もかも捨てるつもりで、最後のクォーターポイントのボスに挑もうか。それでも、キリト君の二刀流と人竜一体に頼み込む事になっちゃうかもだけど」
アスナの言葉で考えるのを一旦止めて、俺は頷く。
「俺も同じ考えさ。二刀流でゲージを稼ぎ、人竜一体を発動させまくる。あまりに戦いが長引くと、余計な犠牲者が出てしまいかねない。リランの力を使って短期決戦にしよう。まぁ、この辺りはいつもどおりだな」
「私も団員達に指示を出して、なるべく死亡者を出さないようにするわ。目的は死亡者ゼロ人……で」
アスナは立ち上がり、俺達に言った。
「今、本部の1階の大会議室でディアベルさんやクラインさん達が集まってる。どんな戦いを展開するか、意見交換してくるね」
「あぁ頼む。俺も後から参加するから」
アスナは頷いて、会議室を去って行った。部屋の中は俺、リラン、シノンのいつもの3人になったが、誰も言葉を発する事なく、しばらく沈黙を貫いていた。その中、やがてシノンが口を開いた。
「ねぇキリト、次の戦いは、すごく危険な戦いなるかもしれないのよね」
「そうだな。少なくとも犠牲者はかなり出るって思う」
「その中に、あなたはいるの?」
「え?」
「その犠牲者の中に、あなたはいるの」
その時、シノンが小刻みに震えている事と、シノンの考えている事がわかったような気がした。シノンはきっと、俺が犠牲になってしまうのではないかと思ってしまっているのだ。
確かに、次の戦いは熾烈なものとなり、犠牲者が次々出てしまうような事になってしまうかもしれない。そして俺もシノンもリランも、その犠牲者の一人になってしまうかもしれない。が、俺はそんなつもりは毛頭ないし、負けるつもりも微塵もない。
俺は静かに立ち上がると、シノンに近付き、その震える身体をそっと抱きしめた。
「俺は犠牲にならないよ。全ての力を使って君を守る、あの日、そう約束したじゃないか」
シノンは俺の背中に手を回し、くぐもった声で言った。
「そうだけど……ごめんなさい、何だか不安で仕方がないの。あなたが私の目の前で死んじゃいそうな……そんな気がして」
リランがそっとシノンに《声》をかける。
《確かに、次の戦いは我でも想像が付かない。だがな、これだけは宣言しておくぞ》
リランは俺の肩から離れた。2人に一緒になって、羽ばたいて浮かんでいるリランに顔を向ける。
《お前達の事は我が死なせぬ。何としてでも生き延びさせる。お前達を無事に現実世界に返すのが、我の使命であり、役割だ。だからこそ、お前達も生き延びる努力をしてくれ。我はそれに答えよう》
そうだ、俺達にはリランの力もあるし、そもそもリランは頼もしい「仲間」だ。俺達はいつもリランに守られて、ついにここまでやって来た。だけど……。
「ありがとうリラン。お前の力を最大限頼りにさせてもらう。けれど……」
俺はシノンの身体を一旦離すと、飛んでいるリランの身体へ手を伸ばし、そのまますっぽり抱き締めた。シノンとは違う暖かさと、甲殻の硬さ、毛の柔らかさがいっぺんに感じられる。
「お前だって俺達の、俺の大切な仲間なんだ。だから……俺も、お前の事を守る。互いに守りあって……この戦いを乗り越えよう」
リランは何も言わずに、しばらく黙っていたが、やがて《声》を送ってきた。
《全く、我の心配よりも自分とシノンの心配をしろというものだ》
「いや、お前の心配だってするさ。だってお前はずっと俺達に協力してくれて、ここまで来てくれたんだぜ。ここでお前が死ぬような事があったら……」
《キリト、我はお前と過ごしてきてわかった事があるぞ》
「なんだよ」
リランは俺の胸元から離れた。
《お前は時々忘れっぽいところがあるな。我は最初に言ったはずだぞ、絶対に死なぬと。お前達を現実世界に返すまで、お前達を守り続けるとな。まだ100層のうちの75層ではないか。ここで力尽きて、何が<使い魔>であるか》
俺は思わず苦笑いした。もしかしてリランが死ぬんじゃないかって思った時は、結構あったけれど、その都度リランはこうして、《我は死なない、お前を現実に帰すその時まで》と言って否定してくるんだった。そして今もこうして、俺はリランに否定されてしまっている有様だ。
「そうだったな。お前は、死なないんだったな。俺達を現実世界に帰してくれるまで」
《そうだ。だから我の心配よりも、自分の身とシノンの事を、そして皆の事を心配し、守る事を考えろ。我の事は最後でいい》
俺はその言葉を受けて、ここ強さと頼もしさを感じた。リランは元から、心強い言葉と、頼りがいのある力を持っているが、今回のそれは、いつもよりも大きなものに感じられた。
「わかったよ。でも、死なないっていうのは、俺からの絶対の命令にさせてもらおう。いいかリラン、死ぬなよ。絶対に死ぬなよ。これは、何よりも優先すべき命令だからな」
《わかっておる。お前こそ、絶対に死ぬでないぞ。この城を脱するその時までな》
俺は頷き、リランの頭を撫でた。そうだ、俺は死ぬわけにはいかない。この城のラストボスを打ち倒し、ゲームをクリアし、現実世界に帰るその一瞬まで、絶対に死んではならない。俺は生きて、この城からすべてのプレイヤー達を解放する。
◇◇◇
それからしばらくして、俺達はアスナに招集されて、本部1階にある大会議室に集められた。そこにはすでに大勢のギルドのメンバー達、それを率いる者達の姿がある、如何にも精鋭部隊を編成しようとしている雰囲気が感じられた。
確認しただけでも、部屋の中には血盟騎士団と騎士団長ヒースクリフと副団長アスナ、聖竜連合と指揮官ディアベル、風林火山10名近くとそのリーダーであるクライン、プレイヤー達から絶大な信頼を得ている商人エギルの姿があり、そして血盟騎士団所属<ビーストテイマー>の俺と<使い魔>のリラン、アインクラッド唯一の弓使いであるシノンが加わっている、総勢70人のパーティだった。
これだけの人間を集めて舞台を作り上げたヒースクリフ曰く、このパーティでボス攻略に挑み、ボスを打ち倒すとの事。そしてボス戦での行動は、これまでと同じようにレイドを組み、攻撃を仕掛けてるパターンなんだそうだ。しかしそれでも、今回のボスについては一切情報が無く、武気持ちなのか、そうじゃないのか、人型なのか、獣型なのか、全くよくわかっていない状況なので、臨機応変に対応するしかないとヒースクリフは言った。
確かにこれまでも、ボス戦の中で異変的な出来事が起こるのはよくある事だったし、ほぼほぼ即席で作戦を立てて戦っていたようなものだったから、臨機応変に戦えと言うのは想定の範囲内だったらしく、誰一人として混乱していなかった。
その様子を見て、意外と苦戦せずに行けるんじゃないかと、俺は思っていたが、それでも何が起こるか全く想像が付かなかったため、油断せず戦う事を皆に告げたところ、ヒースクリフを含めた全員がその言葉を受け入れてくれた。――その時初めて、俺には騎士団長並みの発言権が持たされている事を自覚した。
そして、俺の発言の後にヒースクリフが指揮をとり、大会議室に集まった全員を率いて、75層の街を出てフィールドに赴き、ダンジョンへ入り込み、そのまま迷宮区まで進撃し、やがてボス部屋の前までやって来た。そこで立ち止まり、目の前に広がっていたのは、血盟騎士団の偵察隊の者達を喰らい尽くしたという、大理石でできた巨大な扉。そしてその中に、偵察隊だけでは飽き足らず、腹を空かせているボスが待ち受けているのがすぐさまわかり、俺達は身構えたが、俺の隣にクラインとディアベルとエギルが並んできて、声をかけてきた。
「キリト、いよいよクォーターポイントだな」
「あぁ。一体どんな敵が待ち受けているのか、全く想像が付かないよ」
「だけど、ここは最後の節目。一端の商人を慰めてくれるくらいのレアアイテムを落としてくれるに違いないぜ。それを手に入れるまで、くたばるつもりはねぇぞ」
「確かに、何らかのレアアイテムを抱えてても不思議じゃなさそうだな。俺も楽しみになってきた」
ディアベルが剣を構えつつ、言う。
「俺も出来る限りの作戦を立てて、攻撃をする。キリトには二刀流とリランがあるから、それを最大限生かして戦ってくれよ」
「ディアベルこそ、今回の戦いも期待させてもらうからな。今回も、勝とうぜ」
ディアベルとクラインは少し口角を上げた。
「当たり前だ。絶対に勝って、75層も突破するぞ」
「キリトこそ、絶対に死ぬんじゃねえぞ」
「一緒に生き残ろうぜ、キリト」
3人の言葉に頷いた直後、シノンとアスナ、リランが寄ってきて、最初にアスナが言った。
「キリト君、一緒にユピテルとユイちゃんのところへ帰りましょう」
「あぁ。家で待ってくれてる子供達のためにも、負けられない。絶対に生き残るぞ」
《次のボスは間違いなく強敵だ。キリト、皆を守れ。そして我がお前を守ろう》
「わかってるさ。お前の力も最大限使わせてもらうから、頑張ってくれよ、リラン」
そして最後に、シノンが俺の隣に並んだ。
「キリト。絶対に生き残りましょう。私も思いっきり本気で行くわ」
「シノンの攻撃も頼りにしてるし、君の事は俺が守る。存分に戦ってくれ。
何も、恐れないでくれ」
シノンが弓を持って身構えた直後、轟音を立てて大理石の扉が開き、ヒースクリフが剣を抜き、高らかに号令した。
「戦闘開始! 全員、突撃――ッ!!」
ヒースクリフの号令に呼応するように、俺達を含めた精鋭攻略組は、咆哮しつつ雪崩の如くボス部屋の中に入り込んだ。
そこで待ち受けていたのは、扉と同じ大理石でできた床の、リランが飛び回っても不自由じゃないくらいの大きさの部屋だった。少し離れたところには、大理石で構成されている奇妙なオブジェクトが多数存在しているが、どこにもボスの姿はないが、すぐ後ろにいたリランの姿が小さくなり、結晶が使えなくなっている事で、既にボス戦が開始されている事を、俺達は悟った。扉は既に閉じられ、開かなくなっている。
「どこだ……どこにいるんだ……」
攻略組全員で、周囲を見回すが、やはりボスの姿はない。一体どこに潜んでいるのか、もしかして、透明化しているボスなのか、それともどこかに強制転移されるボスなのか……そう思った次の瞬間、リランが《声》を上げた。
《上だ!!》
リランの《声》を聞いた俺達は、咄嗟に顔を上げたが、そこで震えあがってしまった。天井に居たのは、腕が鎌状に変化している、骨で構成された人間の上半身を持ち、下半身も同じく骨だけだが、まるでムカデのように長くて、刃状の足が大量に生えており、頭に小さな角が2本あり、赤い4つ目を持つ、体長10メートルはあるであろう、異形の骸骨だった。
「なんだ、あれ……!!?」
そしてすぐさま、頭の近くに5本の<HPバー>と名前が出現する。かの者の名は、《
「スカルリーパーだと……!!?」
辺りを見回せば、血盟騎士団の者達、聖竜連合の者達が、武器をカタカタと言わせて、身体を震わせているのがわかった。あのような異形のボスが待ち受けている事を想定する事が出来ず、恐れているに違いない。
いや、そもそもあのボスの姿は、人間の根幹に座する恐怖心を煽るように出来ているのかもしれない。色んなモンスターと戦いを繰り広げてきた俺ですらも、あの姿には震えが来る。
そしてスカルリーパー――骸鎌百足は口元から軋むような鳴き声をたてながら、天井から身体を切り離し、俺達攻略組目掛けて落ちてきた。このままではあいつの先制攻撃の餌食になる事が瞬時に想定でき、俺は叫んだ。
「下がれ! 攻撃が来るぞッ!!」
「散らばれ!」
俺とほぼ同時にヒースクリフが指示を下し、攻略組の者達は震えながらも交代を開始したが、全員が逃げ切ったところで中央に再度目を向けてみたところ、聖竜連合の2人が逃げ遅れていた。
その2人に向かってディアベルが悲鳴を上げるように急げと叫んだが、直後に骸鎌百足は轟音と衝撃と共に中央部の床に着地し、その際の衝撃波にやられて2人がよろけたところを、両手の鎌で薙いだ。骸鎌百足の死神の鎌を思わせる刃を受けた2人の身体は紅い光を飛ばしながら真っ二つに分かれて、空中で硝子片となって消滅した。
「なっ……!?」
一撃で死亡だと――?
ここにいるプレイヤー達はすべて、ここまで上がって来る事が出来た精鋭の攻略組で、他のプレイヤー達の中でもぬきんでた実力者の集まりのはずだ。――そのはずのプレイヤー達が、骸鎌百足に薙がれただけで、身体を真っ二つにして死亡した。そんな事が出来るくらいに、あの骸鎌百足の攻撃力はばかげた数値になっているらしい。
「む、、無茶苦茶過ぎんだろ……!!」
エギルの言葉に思わず頷くと、周りの者達のいくつかが逃げ出したのが見えた。一撃でこっちを殺してくる、骸鎌百足を恐れたのだろう。しかし、どんなに逃げても扉は閉じてしまっているうえに、転移結晶は使えないから、逃げ出す事など出来やしない。
そして恐れの対象である骸鎌百足は目を光らせて飛び上がり、逃げ惑う者達に狙いを定め、容赦なく鎌を振るった。刃が迫り、逃げ惑う攻略組プレイヤーの身体が切り裂かれようとした刹那に、鎌とプレイヤーの間に何かが入り込み、鎌の動きを火花と共に食い止めた。プレイヤー達を助けたのは、血盟騎士団団長、《神聖剣》使いヒースクリフで、迫り来た鎌を盾で抑え込んでいるのだ。
「下がれッ!!」
ヒースクリフの咄嗟に指示に従った者達は、更に後退したが、すぐさまディアベルが何かを閃いたように指示を下した。
「筋力に自信のある者達はヒースクリフ団長に続け! 皆で力を合わせて、あいつの鎌を押さえつけるんだ! あいつの攻撃手段が塞がれているところを、残っている者達で攻撃するんだ!!」
ディアベルの指示は部屋全体に攻略組に響き渡り、これまで見た事が無いような陣形を組み直してそのまま骸鎌百足に突撃、骸鎌百足の右手をヒースクリフと盾持ちの剣士達5人が、左手をクライン、ディアベル、エギルを含んだ、両手武器を扱う、筋力に自信がありそうな者達15人がブロックを開始。両手をブロックされた事により、骸鎌百足の攻撃は21人に集中し、身体の方ががら空きになった。その隙を突いて、残った者達が攻撃を仕掛けはじめる。これなら、いけるかもしれない!
「アスナ、俺と一緒に攻撃部隊に加わって、ボスの身体を攻撃だ! シノンは遠距離からボスの身体を狙え!」
俺の指示にシノンとアスナは従ってくれて、シノンは後退して弓矢を構え、アスナは俺と共に走り出した。75層ボス、スカルリーパー。これを乗り越えてしまえば、これ以上強いボスが現れる事はそうそうないはず。何としてでも戦い抜き……生き残る!
「うぉおおおおおおおおっ!!」
「はぁああああああああっ!!」
意思を込めた俺とアスナの刃が、骸鎌百足の身体に直撃した。
次回、衝撃の展開。