やはり新人類の青春ラブコメはまちがっている。   作:トーマフ・イーシャ

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八幡視点でお送りします。短めです。サラッと流してくれればそれで。


比企谷八幡は奉仕部に入部させられ……ない

「なぁ、比企谷。私が授業で出した課題は何だったかな?」

 

「……はぁ、『高校生活を振り返って』というテーマの作文でしたが?」

 

昼休み、俺は平塚先生に呼び出された。

 

「そうだな。それでなぜ君はこんなこの世界への不満をぶちまけたような文章を書き上げてるんだ?バカなのか?」

 

結構自身あったんだがなー。

 

「罰として奉仕活動を命じる。君にはある部活に所属してもらう。反論は受け付けない」

 

「な、そんなの横暴だ!パワハラだ!ぜったいに訴えてやる!」

 

「そ、そうか。パワハラだよな。もう、帰っていいぞ」

 

え、もう終わり?

 

 

 

「うるっせーんだよケンカすんなら外でしやがれ!!」

 

昼休みの教室に怒涛が響く。金ドリルと巨乳ビッチが言い争っていたところに割って入った。トップカーストに割って入るとかあいつやるな。そのあと、学校一の才女、雪ノ下が来て、事体はさらに混迷を極めた。ていうかあの怒涛を放った男子、寝てんじゃん。

 

 

 

戸塚と初めてペアを組んだ翌日、登校すると戸塚とこの前、教室で怒鳴っていた奴と何か話していた。おい、なに戸塚に話しかけられてるのに寝ているんだ。天使が話しかけいるんだ、これは天啓にも等しい言葉だぞ!

 

「あ、おはよう比企谷くん」

 

「お、おはよう」

 

こっちに来た戸塚。

 

「なあ、さっき何を話していたんだ?」

 

「え、あぁ、今日の昼休み、里見くんがテニスのコーチをしてくれることになってね。それでちょっと……」

 

里見。名前は聞いたことがある。なんでもロリコンでホモでゲイバーのストリッパーだとか。まさかあいつ、戸塚を――――!

 

「なあ、戸塚。昼休み、俺も見に行っていいか?」

 

「え、うん!来てくれるの!いいよ!」

 

守りたい、この笑顔。里見といったか。絶対に戸塚を守って見せる!

 

 

 

 

「オイ、あんた。こんなとこでなにやってんだ」

 

テニスコートで戸塚の練習を見ていたが、飽きてきてアリを見ていたところ、里見が俺のところにやってきた。

 

「里見……だったか。俺は天使を見守りに来ただけだ」

 

「……アリ、好きなのか?」

 

「ああ、好きだね。これは社会の縮図だ。なんでも、アリの巣に住むアリの全体の2割はさぼっているそうだ。そして、さぼるアリは常に一定数存在するそうだ」

 

くだらん会話を続けていた。このボッチ特有の散発的な会話、間違いない、こいつもぼっちだ。

 

と、ズサーっと地面とこすれる音。目を向けると、戸塚が練習中に転んだようだ。雪ノ下テメー!戸塚を傷ものにしやがったな!

 

「と、戸塚!」

 

俺と里見が駆け寄る。里美は手際よく傷の手当をする。

 

「あ、ありがとう」

 

里見のヤツ、羨ま死ね。

 

「あ、テニスしてんじゃん、テニス!」

 

金ドリルとその取り巻きがやってきた。里見が対応に向かう。

 

「失せろ。拒否するならば、業務妨害としてしょっ引くぞ」

 

あいつ柄悪ッ!

 

「まぁまぁ、あんまケンカ腰になんなって。ほら、みんなでやったほうが楽しいしさ。そういうことでいいんじゃないの?」

 

「遊びじゃねえのが分かんねえのか?ほざいてんじゃねえぞクソ野郎。とっとと失せろ」

 

「な、あんた、隼人をクソ野郎呼ばわりとか、ふざけてんの!?」

 

おお、カースト上位の人間に、あれだけ言えるとは、なかなか面白い奴だな。あのキラキライケメン葉山が若干たじろいでんぞ。

 

「じゃあ、こういうのはどうだい?部外者同士で勝負して、勝ったほうが今後のコート使用権を得る。もちろん、勝ったほうは戸塚の練習にも付き合う。これでどうだい?」

 

少し間をあけて、里見が絶対零度のような声色で返答する。

 

「最後通告だ。失せろ。二度とここにその面見せんな」

 

里見が戸塚と巨乳ビッチに指示を出し、練習を再開させる。

 

「お疲れ、いいものを見せてもらったな」

 

クラスカーストの上位の奴らは、怒られるということに耐性が少ない。周囲の人間の1人が下手に何か言えば、同じく周囲の人間みんながそいつを攻撃すると分かっているから誰も言えず、大人が怒っても「あいつウゼー」とか言って分散してしまう。だからこそああやってまっすぐ排除されることに慣れておらず、いまも固まってる。あの葉山の顔、実に滑稽だ。

 

なかなかこいつはいい奴だ。粗暴な言葉遣いではあるが、戸塚の練習に真剣に付き合う面倒見のよさと、物事を正確に図ることが出来る目。いや、単純に俺と物の見方が近いだけかもな。気が合いそうな気がする。

 

 

もちろん、俺もあいつもぼっちなのでそれだけだ。これ以上の進展も何もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「里見くんってなんだかお兄ちゃんみたいだな。僕も里見くんみたいな兄が欲しかったかも」

 

「ん、そうか?うちには年下の居候がいるからな。それでかもしれん」

 

「そうなんだ。ね、ねぇ。里見くんのこと、次から兄さんってよんでいい?」

 

「兄さッ!?いや、さすがにそれはちょっと……」

 

「ふふ、冗談だよ。でも、そうだね、下の名前で呼んでもいい?」

 

「あ、ああ。好きにしろ」

 

「うん、ありがとう、蓮太郎」

 

……あの野郎。

 

俺は血の涙を流した。

 


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