Touhou NET-GAME   作:納豆チーズV

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一〇.人殺し(player killer)

 夜の静けさと暗闇に包まれて、どこか幻想的で美しい空気を漂わせていた草原の一角は、一つの火種が放り投げられたことで様変わりしてしまっている。静けさは荒々しさへ、辺りの暗黒は無慈悲さへ、それぞれがそれぞれの小さな地獄を形成するための部品へと生まれ変わってしまった。

 熱い、とさとりは思う。肌を通してその熱気を味わい、まるで炎でできた大蛇にその長い体をもって囲まれているような錯覚を覚える。コンフィグで痛みを三〇パーセントに下げているとしても、こういう温度などに対する質感はダイレクトに伝わってくるらしかった。

 

「ちょっと『紅蓮弾』撃つの早かったかなぁ……全然仕留められてないや。でもあれ以上待ってたらバレてた可能性もあったしー。うーん」

 

 さとりたちに聞かせるように、わざわざ口に出して自分の行いを顧みる襲撃者の少女。その声音や調子はのんきと表現できるだろうほどに至って平静で、それは彼女がこれまで何度もプレイヤーへの襲撃を繰り返してきたことの証明とも言えた。

 すぐに追撃をしかけてこないのは、挑発しているのか。それともさとりとこころがどんな反応をするか楽しんでいるのか。どちらにしても、さとりからしてみれば気分のいいものではなかった。

 そんなさとりの睨むような視線に気づいた少女は、満足げに口の端をつり上げると、爛々と輝く赤い瞳を見せつけるように見開かせ、あざけるように笑う。

 

「ふふ、ふふふっ、あはははっ……いいねぇ、その目。いいわいいわ、そうこなくっちゃ面白くないもん」

「……残念だったわね、最初の不意打ちであまりダメージを与えられなくて」

「あぁ、それ? 別にどうでもいいわよ、あんなの。どうせ最後には全員殺すもん」

「さきほどは早く撃ちすぎたことを後悔しているように見えたけど?」

「そうだっけ? 私は早すぎたかなって独り言してただけで、反省とか後悔とかしたつもりはないわよー? ふふっ」

 

 最後の小さな含み笑いから、少女が暗に、実際に言葉として外に出すことでさとりとこころをおちょくっていたと自分から言っていることが、さとりにはわかった。

 やはり、趣味が悪い。さとりは眉をひそめた。そして同時に、これは決して話し合いでどうにかなる問題ではないことを少女の性質から察し、こころと視線を交換する。

 戦うか、逃げるか。ここまでなめられたからにはやり返したいところではあるものの、それが想像以上に難しいだろうことがさとりにはわかっていた。

 なにせ、まず間違いなく目の前の少女のレベルはさとりやこころを軽く上回っている。《恐ろしい波動》なんて渾名がつけられるほどに幾度となくプレイヤーを狩ってきたことは、裏を返せば、それをなせるだけの力がこの少女にあるということ。

 そしてなにより、二対一という不利な局面においても少女は平然と完全に『狩る側』の気持ちでいる。自分がやられるはずがない、と。これまで何人ものプレイヤーを狩ってきたその眼から見て、こんな相手二人程度ならば簡単に狩りつくせる、と絶対の自信を持っているように見える。

 どうしますか? そんな風に問いかけるさとりの目線に、こころが答えようとして。

 

「『紅蓮弾』」

「なっ――」

 

 少女の手のひらから〝魔弾〟の性質をそのまま炎に置き換えたかのような炎の球体が生まれ、こころへと放たれる。少女は、背後に隠した片手ですでに魔法陣を構築し終えていたようだった。

 突然の事態に、しかしこころは慌てることはなく、素早く薙刀を縦に振るうことでそれを真っ二つにしてみせる。

 

「あら」

 

 少女の関心したような声。

 二つの半球がこころの左右を抜けて後ろへ流れていき、数瞬後には爆音が空気を轟かせ、爆風がさとりたちの服をなびかせた。

 

「ふんっ、この我にそんな姑息な手(不意打ち)、二度も通じないわっ!」

「へえ、思ってたよりはやるみたいね。じゃーあー、これならどうかなー」

 

 少女がその手を自身の胸元へ運び、そこにある十字架の首飾りを握り込んだ。そして、ぱきんっ、と十字架を引きちぎる。

 するとその十字架から灰色の光がこぼれ出し、それが少し眩しくて、瞬きを一つ。

 再び瞼を開けた時には、少女の手にはその身長の二倍はあろうほどの煤色の鉄塊が握られていた。かろうじて十字架のような、あるいは剣のような形をしているのだが、どこもかしこもでこぼことしている上に、刀身に当たる部分に刃はない。ただ単に純度の低い金属の塊をそのまま大剣のような形にくり抜いてみた、と言った表現がもっとも当てはまるような不格好な鉄塊だ。

 少女はその鉄塊の切っ先を天空へと振り上げると、まっすぐにこころを見据え、にやりと笑った。

 

「『大紅蓮剣(オーバーブレイズブレイド)』」

 

 ぼうっ――と。少女の持つ鉄塊から炎が発生した。〝紅蓮弾〟の煙を掻き消すほどの勢いで漏れ出したそれは、天空を真っ赤に染め上げ、その眩さゆえに星々の光を隠す。

 そして、その炎は徐々に縮小をしていく。しかしそれは決して熱気が消えたわけではなかった。収縮しているのだ。天にのぼる黒煙を掻き消すほどの炎の本流がすべて、少女の持つ鉄塊へと圧縮されていく。

 そうして生まれたのは今にも暴れ出さんばかりの熱気が無理矢理込められた、すべてを焼き切る業火の大剣。

 

「ほら――これも通じないって言うんなら、防いでみせてよっ!」

「えっ!? わっ、ちょ!?」

 

 少女が地面を蹴り、こころへと詰め寄った。振り下ろされる莫大な熱気の塊を前に、こころは無表情ながら慌てた様相で横に飛んで、その直線状からそれた。さとりもまた危険を覚え、即座にその場から離脱する。

 そして、鉄塊の剣抑えられていた焔が解放される。

 ――莫大なまでの熱エネルギーが、少女の視界に映っていたありとあらゆるものを焼き尽くした。

 自然を抉り、大地を溶かす。振るわれると同時に圧縮されていた熱エネルギーが切っ先を起点に解放され、それによる砲撃、あるいは衝撃波が、少女の視界に移っていただろう文字通りすべてのものを消し炭にしたのだ。

 跡に残ったのは、およそ剣でできたとは思えない、溶け出した土だったものがドロドロと流れるだけの異常な地表。小さなマグマの池。

 

「あらら、外れちゃった。残念」

 

 さとりには、わかっていた。そしてさとりにわかったのだから、それを受けかけたこころもまた理解しただろう。

 この少女は、最初から今の攻撃を当てる気がなかった。当たればいいなぁ、程度の気持ちで思い切り振り下ろしただけ。

 つまりは自分の力を見せつけたかっただけなのだ。さとりとこころの反応を楽しむために。

 

「……こころさん」

「う、うん」

 

 さとりはこの時点で逃亡の選択肢を取ることに決めた。想像していたよりもはるかに、あまりにも格が違いすぎる。戦っても、まず勝ち目はない。

 さとりは素早く視線を巡らせ、街のある方角を確認した。

 そんなさとりに気づいた少女は、あざけるようにくすくすと笑う。

 

「鬼ごっこってさぁ、楽しいよねぇ。私に恐怖して逃げる人たちを見るのがとっても愉快なの。追いついた時の、相手の絶望した顔がたまんないのよ。こういうの、ぞくぞくするって言うのかな?」

「あなたは……」

「ふふっ、ふふふ、あははははっ! ほらぁ、逃げるんでしょ? するなら早くしないと焼き殺しちゃうよ? まぁ早くしても、いくらでも追いついて後ろから焼き殺すけどねぇ」

 

 この少女は、追いかけることにも慣れていると言っている。逃げる相手を仕留めることも何度もやってきた、とさとりたちに教えている。

 わざわざそんな風に言葉にして話してくる理由は一つだろう。より絶望を与えて、その反応を楽しむため。自身への恐怖をあらわにするところをその目で見るため。

 だが、それをわかっていながら相手の望む感情をさらすつもりはない。

 さとりは意識的に少女の声と言葉を頭から遮断し、左手で素早く魔法陣を描いた。相手の少女もそれに即座に反応する。

 

「〝魔弾〟」

「あははっ! 〝紅蓮弾〟っ!」

 

 電球のように溢れんばかりの力が込められた紫色の塊と、轟々と燃え盛る炎の弾丸が激突する。互いが互いを刺激し合い、二つの塊はさとりと少女の間で爆砕した。

 魔力と熱気の飛び散る衝突地点を横目に、さとりはこころの手を取って街のある方角へと走り出す。今の爆発が少しでもあの少女の気を引いてくれればいいのだが、やはりそううまくはいかないだろう。

 振り返れば、少女が炎に包まれた鉄塊の切っ先を上空へ向けているのが見えた。

 

「ふふっ、そんなに遠くにいて避けられるかな?」

 

 空気を焼き切って振り下ろされた業火の大剣から、刃の形に抑え込まれていた焔が弾け出す。

 切っ先を起点に莫大なまでの炎の砲撃が発射され、放射状に広がったそれは容赦なく刹那にさとりとこころに迫る。

 少女の近くにいればその横に回る等をして回避の手段もあったのだが、十数メートルは離れてしまった現状でそれを避けるすべはない。

 〝円盾(シールド)〟を――と左手を構えるさとりを押しのけて、こころが業火の奔流へ薙刀を振りかぶった。

 

「『真空斬』! 『仮面舞踏』エヴォリューションっ!」

 

 縦に振るわれた薙刀の刃から、真空で作られた不可視の衝撃波が放たれる。一帯を飲み込まんばかりの炎の波を前にしては一見無力に見えるそれは、しかし容易く業火の一角を引き裂いた。

 膨大な熱気の砲撃の中に、人がぎりぎり二人入れる程度の穴が開く。そして次の瞬間には、さとりの視界が真っ赤な焔に染め上がった。

 空気が薄くなり、温度が急激に上昇する。けれど、自身の身が焼かれる感覚はない。

 炎の波が収まった後のさとりの周囲には、つい数瞬前の草木の豊かな草原からは想像できないくらいの、焼け焦げて荒れた大地が広がっていた。すぐ隣の地面が溶け、マグマのようにドロドロとしている。

 さとりは体を震わせながら〝円盾(シールド)〟でこれを防ぐことができたかと自問自答する。おそらく、いや間違いなくそれは無理だった。

 さとりとこころのいる位置だけが無事な現状を目にし、プレイヤーキラーの少女は初めてその目を驚愕に見開いた。

 

「……なんで? おかしいなぁ。この程度の相手になら、なにされたって私の炎の方が強いはずなのに……」

「ふ、ふんっ! この我に二度も同じ手は通じぬと言ったではないかっ!」

「むぅ……」

 

 なぜかこころも少しばかり動揺しているように見えた。もしかしたら、さすがのこころも完全に防げるとは思っていなかったのかもしれない。

 

「真空です」

「え?」

 

 今の状況は好機だ。小首を傾けるこころの手を引き、あの少女が動揺している隙に距離を稼ごうと街へ向かって駆け出した。

 

「火が燃えるには酸素というものが必要……らしいです。無酸素、つまり真空の空間では、火が広がることはかなわない」

「酸素? なに、それ」

「この星に満ちる生命のエネルギーの源みたいなものです。どんな動物もそれがなければ生きることはできません。そして炎もまた、酸素がなければ生きることはできない」

「そうなの? でも、太陽って燃えてるんだよね。なんで? 太陽も酸素を持ってるの?」

「八咫烏の炎がそんな『科学』の理屈で消えるわけがない、ということでしょう。神さまの炎ですから」

「なるほどっ!」

 

 外の世界の本に書かれていることは冗談半分のような事柄も多いので、無酸素が云々だとかはさとりは一切信用していなかったのだが、どうやら今回は本当のことだったようだ。本には例外もあると書かれていたので、つまりは太陽などの神秘の炎は酸素など関係なく燃え続けるということなのだろう。

 とにかく重要なのは、こころの『真空斬』はあの少女の炎に対してとても相性がいいということだ。これはかなり有用な情報である。

 

「《恐ろしい波動》が攻撃の準備をするたびにこころさんに〝真空斬〟を撃ってもらえれば、逃げ切れるかもしれません」

「おおっ!」

 

 幸い、あの少女の足はそう速くはないようだった。事実、レベルがかなり離れているはずなのに、走る速度はさとりたちとほぼ同じ――。

 ふと、さとりたちを追いかけていた少女がその足を止めた。また『大紅蓮剣(オーバーブレイズブレイド)』とやらを撃つつもりなのか、それとも諦めたのか。

 訝しげに後ろの様子を確認するさとりの瞳に、面白くなさそうに口を尖らせながら魔法陣を描く少女の姿が目に入る。

 

「なにかしてくるつもりみたいです。こころさん、注意して――」

「――――『大紅蓮噴射(オーバーブレイズジェット)』」

 

 少女の作った魔法陣から、否、少女の両手から膨大な炎のエネルギーが放射される。その向けられる方角はさとりたちのいる方向ではなく、そのまったく逆。

 彼女は自身の背後に炎を一気に噴射することで推進力とし、焼け焦げた地面を滑りながらさとりたちとの間を詰め始めた。その速度はさきほどまでの比ではなく、数秒もすれば追いつかれてしまいそうなほど。

 さとりは『魔弾』の準備をしながら、こころに目くばせをした。

 

「『真空斬』!」

 

 不可視の真空の衝撃波が相手の少女に襲いかかる。この攻撃はいくら炎を展開しようとも防ぐことはできない、少女にとって天敵の技。

 さすがに避けるだろうと思っていたそれを、しかし彼女は真正面から迎え撃った。

 

「邪魔ぁ!」

 

 片手で後方に炎を放射しながら、もう片方の手で鉄塊の大剣を操作し、彼女は巨大な刀身の腹にその身を隠した。真空の刃はその大剣に直撃し、ガリガリと音を立てて引き裂こうとするのだが、ただほんの小さな傷を刻むだけ。

 森のクマの『真空斬』でさえ木の数本は容易く切り裂いてみせたというのに、『仮面舞踏』でさらに威力が上がっているはずの『真空斬』であれだけなんて。

 いや、これもあるいは当然の結果か。さきほどは相性がよすぎるくらいだったから対抗できただけで、本来はこれだけの力の差があるということなのだ。

 右手で大剣を前にかざしながらも、左手の炎の噴出は止まっていない。ガードしつつもさらに近づいてくる少女へ、さとりは慌てて『魔弾』を撃ち込んだ。

 しかし『真空斬』をものともしなかった相手にそんなものが通じるはずもない。まるで障害にもならないとでも言うように大剣の腹で防がれた。

 新たに『円盾(シールド)』の魔法陣を描こうとした時にはもう、少女の大剣の届く範囲にさとりとこころはいる。

 

「『紅蓮剣(ブレイズブレイド)』!」

 

 横なぎに振るわれる炎の大剣を前に、さとりは本能的な危機感にしたがってしゃがんだ。圧倒的な熱量が頭上を通りすぎ、カチューシャのように結んでいたリボンの両先端がちりちりと音を立てて焦げる。

 咄嗟にはさとりは攻撃を避けることしかできなかったが、こころは姿勢を低くして回避しながらも前へ踏み込んで《恐ろしい波動》の懐へもぐり込んでいた。

 距離が近すぎるゆえに薙刀を十全に振るうことはできないが、なにも刃を使うことだけが攻撃方法というわけではない。

 こころは刃に近い方へと柄を掴む両手を素早く持ち替えると、柄頭を少女へと突き出した。

 

「この程度――」

「えっ」

 

 しかし少女はそれを左の手の平で容易く受け止める。

 こころの薙刀の柄頭は金属製、それも刺突用に作られている。だというのに軽く止められた。予想打にしていなかったその事実にこころの動きが一瞬硬直する。

 

「私には、効かないのよっ!」

「え、わ!? わぁあああぁああああああっ!?」

 

 相手の少女はその隙を見逃さない。薙刀の柄頭を強く掴むと、それを思い切り上方へと放り投げた。

 少女としては武器を取り上げることが目的だったのかもしれない。だが、こころは薙刀の柄を強く握りしめて離さなかった――武器と一緒に、上空へと身を投げ出すことになった。

 こころは少女のすぐ近くにいた。即座に武器から手を離す選択をしてさえいれば、さらに素手での追撃が可能だっただろう。それをしなかったのはきっと、彼女の中に『この武器は絶対に手放してはいけない』という思いがあったから。さとりとの会話を、この場面においては『真空斬』が鍵を握ることを覚えていたから。

 けれど今はそのせいで少女に対して決定的な隙をさらしてしまっていた。なにせ妖力で飛べる現実とは違い、こころに空を飛ぶ手段はないのだから。

 

「でっかいおまけがついてきたみたいねぇ、あはは」

 

 薙刀に加え、人一人を片手で軽く投げ飛ばしてみせた少女が、口の端を吊り上げつつ大剣を構えた。刀身に熱線が這い、膨大な熱量が刃の形に収縮し始める。

 さとりは少女が『大紅蓮剣(オーバーブレイズブレイド)』を放とうとしているのに気がついた。今のこころには逃げ道がないうえに、投げ出されたばかりのために不安定な体勢で、しかもそれを立て直しにくい空中にいる。いくら『真空斬』が相手の技に対して相性がよくとも、これでは迎撃することなんてできやしない。

 ならばさとりがどうにか『大紅蓮剣(オーバーブレイズブレイド)』の発動を止めるしかない。急いで立ち上がると、さとりは少女のもとへ駆け出した。

 だが、それこそが少女の狙いだった。

 少女は走り寄ってくるさとりの方へ振り返ると、その赤い瞳を爛々と輝かせながら口の端を吊り上げる。

 

「『大紅蓮剣(オーバーブレイズブレイド)』」

「なっ、ん!?」

 

 さとりは、ぎりぎりで少女がさとりの方へ技を撃とうとしていることに気づき、慌てて体を横に投げ出した。すぐ横をとてつもない熱気の焔が流れていくのを感じながら、さとりは地面を転がる。

 こころへ撃とうと見せていたのは、慌てて近寄ってきたさとりを騙しうちするためのフェイク。

 さとりは、今回避できたのは運がよかったからだと直感した。少女がさとりの正確な位置を把握するために振り返ってくれたから。立ち上がることなんて考えずに全力で横へ飛び込んだから。さきほどの『紅蓮剣(ブレイズブレイド)』のようにしゃがまれて避けられることを考慮してか、少女が大剣を縦に振ってくれたから。

 しかし、その運のよさは完全なる危機の回避へは直結しない。

 体の回転を止め、立ち上がろうと顔を上げたさとりの視界に、すでに書き終えた魔法陣が映る。少女はさとりが起き上がろうとする瞬間を狙っていたのだ。

 

「『紅蓮弾』!」

「ぅ――――!」

 

 膨張する光を前に、咄嗟に剣を構えることができたのは恐怖ゆえなのかもしれない。この攻撃をまともに食らってはいけないという危機感が、その臆病さゆえにちょうど手に持っていた剣を顔の前に突き出させた。

 おそらく、持っていたものがガードに使おうとしてもなんの意味もなさない木の棒や本などだったとしても、それをこうして自分の体を守るために使おうとしていただろう。手に持っているものがなにかなど意識しようともしない、それほどまでに本能的な行動だった。

 だが、そのおかげで窮地を免れる。少女の放った〝紅蓮弾〟はさとりの立てかけた剣の刃により真っ二つに割れ、さとりの左右を抜けて、すぐ近くの地面に着弾した。

 なんとか直撃は避けることができたが、真後ろで発生した爆風がさとりの体を吹き飛ばし、そしてその方角は今まさに〝紅蓮弾〟を撃った少女のいる方向。

 

「っ、ぁああああ!」

 

 体勢が悪すぎるだとか考える余裕はなかった。目まぐるしく変化する視界に、一瞬だけ少女が大剣を振り払おうとする姿が目に入り、無理矢理にでも腕を動かして強く握りしめた剣を振るう。

 がきんっ、と甲高い音を立てて火花が散った。

 力の差は歴然だった。さとりの剣はすぐに押し返され、横腹に大剣の刀身が衝突する。

 

「あははっ!」

「ぁ――――」

 

 勢いのままに振り抜かれた大剣に、さとりは突き飛ばされた。苦悶の声を上げることすらできない。

 幸いだったのは、その大剣の刃がぼろぼろだったことだろう。もしもこれが研ぎ澄まされた刃だったなら、こうして宙を飛ばされることはなく、体を上下で半分ずつにされて死んでいた。

 ……いや、実際はそれも幸いと言えるかどうか。

 無防備に大地に体を落とし、何度も転がったすえにようやく体が止まる。痛む全身を叱咤して、どうにか起き上がろうとして気がついた。

 口から真っ赤な液体がこぼれ落ちてくる。少しでも体を捩じろうとすると、お腹の奥から、体内から激しい痛みが伝わってくる。無数の針で突き刺されるような激痛が全身を駆け巡る。

 どこかまずいところの骨が折れて、内臓に突き刺さったか。ゲームのくせにどうしてこんなところまでリアルなんだ、と苦悶の表情を浮かべながら、さとりは心の中で文句を漏らした。

 幾度試そうと痛みがひどすぎて立ち上がれなかった。ただただ地面に横になって苦痛に喘ぐさとりの前に、小さな影が差す。口の端を吊り上げた、紅蓮の瞳の輝く残虐な悪魔の姿が目に入る。

 

「ぁ……ぐ、ぅう……!」

「ふふっ、そう、それよ! その目よ! 私が見たかったのは、そういう風に恐怖に満ちた、震えた目……あぁ、たまんない。たまんないっ、たまんないっ! ふふっ、ふふふ、あははははははっ!」

「あ、なた……は……」

「あ、そうだぁ。ねぇ、知ってるー? この世界での死は本物じゃあないから命はなくならないけどね、失わないものがないっていうわけでもないの」

「どういう……」

「レアアイテム」

 

 さとりの眉がぴくりと動いた。それを少女は見逃さない。

 

「そのログイン中で手に入れたアイテムは、一度でもログアウトしない限りは『仮の所有者権限』しか持っていないことになってる。そしてこの世界で死ぬと、その人はレベルアップに必要な経験値の一割と、『仮の所有者権限』で所持しているいくつかのアイテムを失う。正しくは、倒した魔物と同じように死体っていうオブジェクトになって、その中にそのアイテムが保存されるんだけどね」

「それは、つまり」

 

 ここで死んでしまえば、〝子鬼の王(ゴブリンキング)の宝玉〟をなくす可能性があるということ。この少女に奪われる可能性があるということ。

 そんな思考に至ったさとりを察し、少女はさらに面白そうに付け足した。

 

「それからね、そのいくつかのアイテムの中には、そのプレイヤーが『仮の所有者権限』で持っていた中で一番ランクの高いアイテムが必ず一つは含まれる。言ってる意味わかる?」

「……レアアイテムは、必ず失う……」

「正解! ふふっ、あはは、あはははははははっ!」

 

 さとりを見下ろしながら、少女は本当におかしそうに笑う。

 

「その様子だと、当然! 持ってるんだよねぇ! あっははははははっ! あぁ! 面白い! やっぱり、こうやって失うものを意識したイキモノは最高っ! 恐怖に混じる絶望の色! 黒く濁った、めちゃくちゃにぐちゃぐちゃな最高の色彩っ! その奥に見える、見逃してほしいっていう哀れなまでに憐れな嘆願の感情! なんて素晴らしいのかなぁ、なんて楽しいのかなぁ、この世界は!」

「こ、の」

「はは、あははは、あっはははははは! あぁ、ほんっと、これを私にくれたことだけはあいつに感謝しないとねぇ。数百年間ずっと一人で生きてきたけど、こんなに楽しい娯楽は一度も味わったことがなかった! こんなに心躍る瞬間は知らなかった! こんな、こんな、こんな! ふふっ、ふふふ、あはは!」

 

 高笑いを繰り返す少女を眺め、狂っている、とさとりは思った。

 妖怪はその多くが人間の恐怖を糧にする。だから、人間の恐怖を楽しむくらいならば、一応は普通の範疇であるとは言えた。

 だが、これはあまりにもそれがすぎるのではないか。妖怪として到達する自然の域の性質を越えている、あまりに他者を見下しすぎる――まるで、この世に存在する自分以外のモノのすべてが、自分の『玩具』のように。

 満足したのか、ようやっと笑いの収まってきた少女が、無慈悲にさとりへ告げる。

 

「ふふ、メインディッシュは楽しんだし……それじゃあそろそろ、デザートとしゃれ込もうかしら」

 

 少女は無情に、動けないさとりへ向けてこれ見よがしに大剣を振り上げた。

 

「ぐ、ぅ」

 

 これを受ければ間違いなく死ぬ。立ち上がれなくても、地面を転がってでもかわさないと。でなければ自分は。

 わかっていた。わかっていても、それでも痛みが邪魔してろくに動けなかった。たった三〇パーセントの痛みに耐え切れない。

 

「さぁ、あなたはこうやって死ぬ瞬間、いったいどんな顔をするのかな――」

 

 少女は、無駄に足掻こうとするさとりを恍惚とした表情で見下ろしながら、剣を持つ力を緩めた。

 重力にしたがって大剣が落ちてくる。その落ちる先にいるさとりは、それを眺めていることしかできなかった。

 時間にしてみれば一瞬。しかしさとりには、何十秒にも長い時に感じられた。

 そういえばこんなことが書いてある本もあったな、と。死ぬ瞬間はこうやって時間がゆっくりに感じられることがあるだなんて、外の世界に書いてあったな、と。そんな風なことを考えられるくらい、長く。

 しかしそのおかげでさとりには見えた。大剣を振り下ろす少女の向こう側、十数メートル上空で人の形をした影が長い棒のようなものを構える光景を。

 

「――『真、空斬』っ! 『仮面舞踏』エヴォリューション、二連打ぁ!」

「む」

 

 少女はさとりに当たる寸前だった大剣を咄嗟に引き戻すと、刀身を盾のようにして上部に構えた。その後すぐに振ってきた二つの不可視の刃のうち一つがそれに直撃し、ほんの少しだけ金属の削られるような音が響いた。

 残る一つの斬撃は明後日の方向にそれ、大地に傷を刻んでいる。

 さとりには見えていた。こころは体勢を整えるなんてことは度外視して、体を捩じって同じ方向に複数回回転させることで、一回ごとに薙刀を振るって〝真空斬〟を連続で繰り出していた。

 だが、これはあまりにも。

 

「このっ……『紅蓮弾』!」

「まだだ、まだいける……! 三、連打目!」

 

 迫り来る炎の球体を、こころは三回目の回転で斬り裂いてみせた。しかし三発目の真空の斬撃もまた、少女のいる位置とは関係のない方向へすっ飛んでいく。

 これはあまりにも、命中力が悪すぎる。ただめちゃくちゃに撃ちまくっているだけだ。

 これではMPを無駄に消耗するだけ――そう考えるさとりの目に、どこかイライラとした様相でこころを見上げる少女の姿が映る。そうして、こころの狙いを理解した。

 

「もう、一度ぉ! 四連打! さらにもう一回っ、五連打ぁああああ!」

「ああ、もう! 鬱陶しい! 『大紅蓮(オーバーブレイズ)――」

 

 当たる確率が低くとも、当たるかもしれないのなら少女はそれに注意を向けなくてはならない。つまりこころはこの少女の気を引いているのだ。どうにかさとりが殺される暇を少女に与えないように。

 こころはさとりのためにがんばってくれている。なにもせず見ていれば自分に攻撃が飛んでこない確率が高かったのに、わざわざそれを捨ててまで。

 さとりは拳を握りしめた。

 また足手まといになるのは、嫌だった。私もこころの力になりたい。全力を尽くして、今できる精一杯をするんだ。

 さとりは地面に転がったまま、少女の足に触れる。それから、もう片方の手で魔法陣を描き始めた。

 剣を振ることができなくとも、体に力を入れられなくとも、立ち上がれなくとも。さとりには一つだけ少女に対抗する手段がある。

 

(ブレイ)――」

「〝衝、撃(イン、パクト)〟!」

 

 それは、触れた対象にのみ効果を与えることのできる『魔術師』の力。

 猛烈な荷重がさとりの手の平から刹那のうちに発出され、皮膚を通し、その内側の筋や骨にさえ衝撃を伝える。

 

「いっ、つぅ!?」

 

 痛みでスキルを中断してしまったのか、少女の持っていた大剣から炎が消え、がくんっと膝をつく。それからさとりへと恨みのこもった視線を向けた。

 さとりはただ、してやったり、と笑みを浮かべてみせる。

 

「この――」

 

 ――そこへこころの放った真空の刃が振ってくる。

 それはさとりにも当たりかねない軌道にあった。元々めちゃくちゃに撃っているだけなのだから、さとりに当たる確率だってもちろんある。しかしどういうわけか、この少女との戦いにおいてのさとりの運はかなり高いようだった。

 

「がっ、ぁ――!」

 

 不可視の斬撃は運よくさとりからそれて少女の右肩へと直撃し、強烈な裂傷をその身に刻む。驚きなのは、これを受けても真っ二つにならなかったことであるが、それでも深いダメージを与えたことには変わりなかった。

 少女は大剣を取りこぼし、あまりの痛みにその表情を苦悶に満ちたそれへと染める。そしてその頃にはこころは少女のすぐ頭上、ほんの数メートル上で薙刀を構えていた。

 

「これで、最後ぉ!」

 

 こころは薙刀の刃を少女の右肩の傷に押し込み、振り切る。両断する。

 その瞬間、少女は目を見開いて――その瞳から光が消えた。

 

「うぐぅっ!?」

 

 空中で何度も薙刀なんて重たいものを振り回していたから当然であるが、こころは受け身も取れずにさとりのすぐ隣の地面に激突した。

 鉄球が土の中に落ちたような音とともに、さとりの視界が土埃に包まれる。それが晴れた後には、そこには凄惨な姿のこころが転がっていた。

 右手と左足がありえない方へ曲がって使い物にならなくなり、さとりと同様に折れた骨が内臓に突き刺さったか、げほげほっと咳とともに大量の血を吐いて苦しそうにしている。

 こころは何十メートルと上空から無防備に突き落とされたに等しい状況なのだ。これほどまでになってしまうのは必然だった。

 

「こ、ころさん……」

「さと、り……」

 

 互いに手を伸ばし合い、手の平同士で触れる。本当は力を入れて、ぱしんっといつものようにハイタッチをしたかったのだが、今のさとりとこころにそんなことをなせるだけの力はなかった。

 

「運が、よかったですね……」

 

 ぎりぎりだった。逃げるのが失敗し、それでもぎりぎりで、本当にぎりぎりでなんとか勝つことができた。

 きっともう一度勝てと言われても、絶対にかなわない。それほどまでに運がいいことがたくさん起こっていた。

 さとりは体勢をなんとか仰向けに切り替えると、そのまま空を見上げた。体を動かすと痛みが走るし、うつ伏せはちょっとばかり苦しすぎる。とりあえずは、この体勢のまま回復を待つのが賢明だろう。

 ゲームなのだから、しばらく待っていれば動けるくらいまではすぐに回復できるはずだ。

 

「妖怪だった頃は……というか、現実なら……こんな傷、どうってことないのだけど……」

 

 妖怪は人間と違って体が丈夫にできているし、回復能力もかなりのものだ。たかが内臓に骨が刺さった程度で、全身に痛みが走るくらいで動けなくなったりはしない。

 ……しかし、こうしてじっとしていると、そのぶん針を刺すような痛みを意識してしまう。今だけは、〝メニュー〟から〝コンフィグ〟を選んで、痛覚を〇にでもしようか。〇だと触覚の方にも影響が出てきたり、いろいろと大変そうだけど……。

 そんな風に悩むさとりの耳に、消え失せそうなくらい小さくも、しかしどこか満足げな声音が届いた。

 

「さとり……楽し、かったね」

「……ぼろぼろにやられてますよ、私たち。もう痛すぎて、動けません」

「でも私は……なんだかちょっと、わくわくしてたみたい。一人じゃ、まず間違いなく勝てないって敵に二人で挑んで、打ち破ろうとがんばる……クマの時と一緒だね」

「元々は逃げるつもりだったんですが……でも、そうですね」

 

 わくわく、か。目を閉じて、《恐ろしい波動》の少女と相対した直後の時のことを思い出してみる。それから、自分を見下ろして狂気的なまでに高笑いする少女の姿も。

 

「……いや、やっぱりないです」

「そうなの? もしかして、私だけ?」

「かもしれません」

「むぅ、そうかぁ。残念」

 

 もしかしたら、こころにとっては、少女と戦うことはクマや巨大ゴブリンなどのボスと戦うのと同じことだったのかもしれない。勝てるかわからない敵に二人で挑んで、倒すために四苦八苦する。ただ、その相手が魔物かプレイヤーかだけが違い。

 あの少女に立ち向かうのが楽しかったか、と聞かれれば即座に首を横に振れる。でも。

 

「……こころさんと一緒に戦うのは、楽しかったですよ」

「さとり?」

「ふふっ……いえ、なんでもありません」

 

 薄い雲が広がっていたはずの空はいつの間にか晴れ、星々が満月と共演を繰り広げていた。

 あまりに綺麗なそれに、思わず手を伸ばして。

 ――どくんっ、となにかが強く鼓動したのが大地を通して伝わってきた。

 

「これ、は……」

 

 ゆらり、と何者かが立ち上がったのがさとりの視界の端に映る。それは当然ながらさとりではなく、こころでもない。胴体を二つの斬撃に斬り裂かれ、そのダメージで動かなくなったはずの小さな悪魔。

 満月を背にするそれは、驚愕の視線を受ける中でさらに変化を見せる。

 確かにその身の半分以上を裂いていたはずの傷がたった十数秒で治癒し、口元の八重歯がより鋭く冴えわたる。背中からは、赤茶色の枝のようなものにに七色の結晶をぶら下げたような、おかしな形をした翼が飛び出した。

 赤い瞳はさらなる深さへ。纏う雰囲気は、まるで本物の吸血鬼のそれへ。

 なにかのスキルか、アビリティか。まるでわけがわからないことが立て続けに起こる中、それでもわかることが一つある。

 

「……こころさん、すみません。あのアイテムで武器を作るという約束……果たせそうにありません」

 

 それは、この勝負がさとりとこころの敗北で終わるということだった。

 

「ここで私がやられると、どうやらあのアイテムはロストしてしまうみたいで……ごめんなさい」

「……さとりは悪くないわ」

「でも」

 

 少女がその紅の瞳の焦点をこころへと合わせた。斬られたことへの怒りゆえか、恨みゆえか、その目は震えている。

 申し訳なさそうにするさとりに、こころはこんな状況でも満足そうな声音で答えてみせた。

 

「明日も一緒に遊ぼう。そうすれば、またいいのが手に入るよ。必ず」

「……はい」

「すっごく楽しかったわ、さとり――」

 

 こころの姿が炎の中に掻き消える。その熱量もまたつい数分前のものよりもはるかに上昇しているようで、こころを原型すら残さずに消し去ってしまった。

 少女の瞳が、今度はさとりの方へ向く。爛々と輝く紅色の眼は、こころを見る時と同じ狂気の怒りにまみれていた。

 その内に抱える負の感情ゆえか、つい数分前のように楽しもうともせず、その手に灯した膨大な熱量で無情に焼き尽くそうとしてくる。これをかわすことは、どんな奇跡が起ころうとも不可能だろう。

 だからさとりは、さきほどたくさん笑われたことへの意趣返しのつもりで、少女に対して満足そうに表情を綻ばせてみせた。

 

「次は必ず勝つわ。こころさんと一緒に、あんたを打ち倒してみせる」

「っ――――」

 

 怨みがないと言えば嘘になる。怖くないと言えば嘘になる。それでも、たった数日と言えど信頼し合える関係になれた彼女と一緒に挑むのならば、それは決して悪くないことのような気がした。

 炎に飲み込まれる直前、少女の眉がぴくりと動いたのがさとりにはわかった。デザートだと言っていた死ぬ瞬間のさとりの表情が気に食わなかったのか。それともこの笑いが自分への意趣返しだとわかって、かんにさわったのか。

 それがどんな思いによるものなのか、さとりに知るすべはない。けれどどうしてか、その時さとりには、この少女の真っ赤な瞳が寂しそうに震えているように見えて。

 しかし、それも一瞬。

 さとりはとてつもない熱量に焼き尽くされ、意識を暗転させた。




・古明地さとり(調教師+斥候(筋力と敏捷)+魔術師)
 筋力C 耐久C+ 知力A+ 精神A+ 敏捷B
・本作の主人公。原作よりも臆病さ丁寧さ五割増し。服装は頭にカチューシャのようにリボンを結び、ブラウスの上に革のワンピース。
 心を読む能力のせいで他人とまともに交流できない上に引きこもりという、いかにも現実にいればネトゲをしていそうな性質をしている。
 本当は「剣士」をやらせたかったが、いかにも激しく動きまくりそうなジョブを引きこもりのさとりが進んで選びそうにない気がしたので、妥協した結果として「剣士」をやらせずに剣を握らせることにした。
 なお、一章では「魔術師」以外活躍していないどころか息をしていなかった。二章以降は出番があるといいですね。

・秦こころ(槍士+奇術師(耐久と精神)+精霊術師)
 筋力B+ 耐久C 知力B+ 精神B 敏捷A
・本作のヒロイン()。原作よりも優しさ二〇割増し。服装はぶかぶかの青いコートにフレアスカート、あとお面。
 仲間思いだし気遣いできるし、ネトゲでも現実の自分のこと普通に語っちゃうくらい純粋な超いい子。
 ぶっちゃけ性格があまり掴めていなくてかなり書きにくいのだが、メインキャラゆえに書かなければならないというジレンマ。でも好きだからやっぱり書きたい。
 主人公(さとり)よりつおい上に頼りになるので、たぶんこの子が主人公でも物語は成り立つ。さすがこころちゃんさすが。

・恐ろしい波動(戦士+炎術師+魔術師)
 筋力B+ 耐久C 知力A+ 精神B+ 敏捷D+
・一章のボスキャラ。原作よりも狂気度三〇割増し、というか完全捏造。服装は頭にベレー帽、ブラウスの上にカーディガンを羽織り、下はプリーツスカート、あとニーソ。
 他人が這いつくばって命乞いをしてくるところを見るのが楽しみの超ドSっ子。
 狂気をどう書けばいいのかわからなかったので、とりあえずSの極みにでもしてみたらこうなった。でも可愛い。さすがフランちゃん可愛い。
 しかし、この少女の正体はいったいなんなのだろうか(すっとぼけ)。なんとなく、なんとかドール・スカーレットな気がする。

・洩矢諏訪子
 能力値不明
・よろずや店主。服装はカエルの着ぐるみ。
 なんかたまに強そうな雰囲気を放ったりする。すごい。
 店にあまり客が来ないので、主にお茶を飲んだり寝転がったりぐーたらしている。客引きにも興味がなく、完全に趣味の模様。例えるなら駄菓子屋を経営するお婆さん(幼女)。

・サル
 能力値不明(決めてない)
・序盤の森に出てきた猿。ただの猿。最初の敵がゴブリンだとありきたりだと思ったので、猿にした。

・鋭き右の柔熊
 能力値不明(決めてない)
・クマさん。右の爪だけ超長くできる。最後にはこころちゃんのお面になった。
 体が柔らかいという設定が全然生かされなかったが、本当はカンフーとかできたりする。どうやらスーパーパンダに習ったようだ。

・ゴブリン
 能力値不明(決めてない)
・子鬼。二、三番目の敵だからもうゴブリンでいいじゃん、と思ったのでゴブリンになった。

・ゴブリンキング
 能力値不明(決めてない)
・大子鬼。大きいのに子鬼とはこれいかに。さとりとこころが成長したことを示すための踏み台になった。
 なお、こいつの鳴き声であるガガギゴは遊戯王のモンスターの名前である。

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