アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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フィアの戦闘服(軽装)

コンバットズボンにコンバットブーツ、上は白のタンクトップ一枚。
腰に拳銃一丁と両腕の前腕にナイフを一つずつ装備している。防弾チョッキは基本的には着けない。

気まぐれに書いたフィア

【挿絵表示】




第七十八星 刺客 ーAssassinー

 

 

 駅で待っていたのは貨物と乗客を運ぶ列車を同時に運搬する混合列車。前三両が客車、そして後ろ三両は貨物車となっている。貨物の先頭がアルドノアドライブで後二両にはアレイオンが格納されている。

 

「積み込みは終わったわ」

 

「出発させてください。総員、乗車!」

 

 ユキと韻子がアルドノアドライブの積み込みとアレイオンを貨物車にしまうとユキが合図を出す。

 周囲の警戒のために外に出ていたフィアたちは次々と客車に乗り込むと列車が発車する。これからこの列車で約二日間、ここで最初の夜を向かえることになる。

 

「わぁ、すごい」

 

「私、寝台列車なんて初めて」

 

「これが寝台列車って言うのね」

 

 列車に乗り込んだのは元デューカリオンメンバーのみ。後は全員、駅に置いてきた。ここからは少数精鋭で警戒にあたった方がこちらとしても管理しやすい。

 客車の三両のうち二両は個室の寝台車、壊れてもいい古いタイプだがこれはこれで味があっていい。そして残り一両は食堂車になっている。コックはいないが簡易的な料理は作れるようになっている。

 

「こりゃ、中々すごいな」

 

「うん、予想よりいい車両だった」

 

 人生初の寝台車に喜びを表す韻子とニーナと興味深げに辺りを見渡すライエ。それに同意するカームと伊奈帆。

 

「輸送機では寝転べないからな。ある程度、余裕のある奴を手配させた、全員分の個室があるから好きなのを選んでくれ。なにもなければ私たちはゆっくりと旅を楽しめるのだがな」

 

「お、酒がある」

 

「鞠戸大尉」

 

「分かってるって」

 

 全員が乗り込んだ食堂車には備え付けの酒も用意されている。

 

「うお、スピリタスまである」

 

「大尉!」

 

 酒に興味深々の鞠戸にユキは眉を動かしながら叱り、アルコールの棚から引き離す。

 この列車は自動運転で車掌がいらない特殊車両、つまりこの列車にはこの場にいる者たちしかいないことになる。

 

「まぁ、張りつめてばかりじゃ身が持たないわ。少しリラックスしましょう」

 

 ユキの言葉と共に立っていた全員が席に座り、緊張を解く。こう言った解し方はユキの人柄がなければ出来ないことだ。

 

 

「僕は冷蔵庫でも見てくる。夕食を作らなきゃいけないし」

 

「私も行こう」

 

 早速、主夫モードに移行した伊奈帆が食堂車の奥に姿を消す。食堂車のキッチンなど普通では拝めない。彼自身も興味があったのだろう。

 ライエたちも肩に下げていたライフルとかを邪魔にならない位置に置いて談笑を始める。

 

「ある程度は揃ってるね。フィア、手伝って」

 

「あぁ、何をすればいい?」

 

 手際よく準備を始める伊奈帆、それに合わせて忙しく動き回るフィア。二人は黙々と料理を作り始めるのだった。

 

「まったく、地球の素材は豊富すぎて分からんな」

 

「…不思議だ」

 

「ん?」

 

「こうしてフィアと肩を並べて料理してるなんて」

 

 戦時中に出会った二人。そして一時期は殺しあい、そして背中を預け会った戦友。そんな彼女と料理を作ってる、それがとても不思議でそして楽しくもあった。

 

「私も、もう会わないつもりだった。色々あったが、お前たちには本当にお世話になった。とても楽しい記憶、そしてそれがとても恐ろしい」

 

「……」

 

「お前たちといると本当の私が出てきてしまう。そしてもっと触れたい、話したいと思ってしまうんだ。そしてまだ戦場に立ち続けて、今はお前たちを失うのが怖い」

 

 伊奈帆たちと会うまでは自分のことは何も考えずに生きてきた。そるが楽だったし、常に冷静で居られる。喜びを捨てて悲しみを無くそうと努めてきた。

 

「フィア…」

 

「……」

 

 料理を一段落済ませた伊奈帆はボーッと立つフィアたちは元に行き頭を彼女の肩に乗せる。

 

「僕は絶対に死なない。君を置いて先には逝かない」

 

「伊奈帆…」

 

 伊奈帆はそっと彼女を抱き締める。いつもなら抵抗する触れたいだが今回はだけはそれを素直に受け止める。

 

「私が地球に来てからスキンシップが激しくなってないか?」

 

「そうかな」

 

「たぶん」

 

「そうかもしれない」

 

 あの時、最終決戦前に感じたあの温もり。優しく包まれたあの体温が忘れられないというのもあるかもしれない。あまりスキンシップが激しいと嫌われると聞いたことがある。彼女には嫌われたくない、だけど彼女を求めずにはいられない。

 

(不思議だ…本当に彼女は…)

 

 

(むふふ、やっぱり二人にして正解だったわね)

 

(若いっていいな。おじさんには眩しいぜ)

 

(あぁ、もういろいろ通り越して尊い!)

 

(ステキ…)

 

(オコジョ、あの伊奈帆があんなんになってるぜ)

 

(なんか…いいわね)

 

 上からユキ、鞠戸、韻子、ニーナ、カーム、ライエの順にコッソリと盗み見している六人。全員が二人を微笑ましい目で見ており、その後の食事でもしばらく暖かい目で見られたらしい。

 

ーー

 

 運送中の襲撃などなかったかのように静かな電車での時間。時刻は深夜をまわり窓の外の景色は真っ暗だ。室内の光源として蝋燭を使い、その光で本を読む。

 フィアはこの読み方が好きだった、どこか暖かみのある光が文字を照らす光景が彼女をリラックスさせる。

 

「……」

 

 彼女が手にしている本。胡蝶の夢と書かれた文庫本はかなり使い込まれていて読み込んでいるのがよく分かる。昔に書かれた本というのは実に興味深い、なんというか奥深い。頭で理解せずに心で感じるといったものを感じさせるようなものばかりだ。

 

ーー

 

 そんな時、貨物車の手すりを何者かが掴む。それも一人ではない、次々と、貨物車に足を掛け、登り、天井に上がり込む。全身に真っ黒な防寒具をした集団はゆっくりと、静かに車両の上を移動する。その者たちの背中には細身の西洋刀がぶら下がっていた。

 

「……」

 

「……」

 

 施錠された扉を難なく解除し、誰もいない食堂車に10名ほどが侵入を果たす。一切、物音をさせないその行動ぶりは実に見事であった。

 

「っ……」

 

 扉を開けたことにより締め切られていた車両内の気圧が変化。車両間の扉は閉めていないので三両とも気圧は同じ。それが変化したことによりフィアと蝋燭の火が僅かに揺れる。

 

「来たか…」

 

 その以上はフィアの他にもユキや伊奈帆、鞠戸も関知していた。使っているのは古い寝台車両、古い扉が動いて音を出したのだ。

 

「なおくん」

 

「わかってるよ。ユキ姉」

 

 一番奥側の部屋にいた二人は互いに扉を開けて異変を確かめ会う。

 

「おい、界塚、界塚弟」

 

 そこに鞠戸も顔を出す。三人とも、物音をたてずに伊奈帆の部屋に集まり武器を確認していた。

 

「どうするの?」

 

「たぶん、お嬢ちゃんたちは気づいてないぜ」

 

「一番手前はフィアの部屋です。彼女がなにかしらアクションを取ってくれるはずです」

 

 携帯でも鳴らして起こしてやりたいが着信音で敵を警戒させるのは避けたい。

 

ーー

 

 その頃、フィアはベットの布団にくるまる。ショットガンのスライドアクションにて発生する音を抑えるためだ。気休めでしかないが。

 

「……」

 

 準備を終えるとフィアは扉のすぐ横に立ち、呼吸を整える。予備のライフルを足元に置き、ショットガンの銃口を扉の開き口に向ける。

 

…カチャ

 

 ゆっくりと開かれる扉の鍵、そしてゆっくりと静かに開かれる。扉を開けた侵入者が最初に見たのは黒光りする銃口。

 

ズガン!

 

 その瞬間、フィアは引き金を引き侵入者は頭を吹き飛ばされ倒れる。その背後からは侵入者の仲間が剣をこちらに向けて突き刺しながら侵入してくる。

 

「なっ!」

 

 咄嗟に避けたフィアは体勢を崩す、足元のライフルを足で跳ね上げ手にすると侵入者の胴に鉛弾をぶちこむ。絶命した侵入者の剣を取り上げながら部屋の外に出ると食堂車に数名の侵入者を見つける。

 

「ほう、お前たち。ヴァースの特殊部隊だろ」

 

「……」

 

 フィアのその言葉に侵入者たちは僅かながら動揺する。

 

「やっかいな状況になったな」

 

 そう言ってフィアは奪った剣を片手で構えて静かに呟くのだった。

 

 

 





まさかの火星からの刺客。最初に襲撃してきたグループとの関係はいかに、アルドノアドライブ防衛戦第2幕が開幕。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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