アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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第七十四星 発掘 ―Excavation―

 

 

 迫り来る銃弾、それを横飛びで避けたフィアは地面に転がりながら打ち返す。

 

「っ!」

 

 放たれた銃弾は相手の頬を擦り背後のコンテナから火花を散らせる。戦況が不利だと察した敵は黒いロングコートを靡かせながらその場を後にした。

 

「フィア!」

 

「伊奈帆、無事か?」

 

「こっちは何とか…その血は」

 

「ただの返り血だ」

 

 心配する伊奈帆を余所に首元に付着した返り血を袖で拭うフィア。彼女は酷く疲労しその場に座り込んだ。

 

「いったいいつまで続くんだ…」

 

 硝煙と血のむせ返るような匂いが立ち込める空間で彼女は珍しく弱音を吐くのだった。

 

―なぜ彼女達がこの様な状況に身を置く必要に迫られたのか…。それはこの場面から時を3ヶ月ほど遡る必要がある。

 

ーーーー

 

 終戦から半年、フィアの地球来訪から3ヶ月が経った頃。復興中の新芦原市はかつての賑わいを思い出しつつあった。各地に散らばっていた住人たちが再び集まってきたのが大きな要因だろう。

 

「ふむ…」

 

 中心街より山側に配置された新芦原基地の一室でフィアは机に大量に積まれた資料を見ながら唸っていた。

 

「どうしたの?」

 

 唸っていた彼女に対し声をかけたのはライエ、彼女は紺の制服のネクタイを緩め、上着を椅子にかけ、真っ白なシャツの袖を捲ったラフなスタイルでパソコンを弄っていた。

 

「これだ…」

 

「なによ…ただの資料じゃない?」

 

「出元が不明なんだ。私が頼むとなぜかすぐに届くんだ」

 

「貴方専属の諜報員でも居るのかしらね」

 

「その方が納得だな」

 

 書類をまとめ上げフォルダーに納めるとフィアはゆっくりと立ち上がる。

 

「昼にするか」

 

「そうね」

 

ーーーー

 

 「まったく、驚いたわよ。朝刊で揚陸城の降伏なんて見せ付けてくれちゃって」

 

「フィアちゃんは本当に凄いよねぇ…」

 

「姫様の騎士として当然のことだ」

 

 基地の近くの定食屋、そこにはフィア、ライエと韻子、ニーナの姿があった。4人は仲良く話しながらフィアの事を褒めたたえる。

 

 フィアの纏っている制服の首元で光るのは少佐の階級章。彼女は予告通り不法滞在していた揚陸城を1つ墜としてみせたのだ。

 

「そう言えば伊奈帆は?」

 

「さぁ、アイツたまに居なくなるのよね」

 

 週に1度、有るか無いかの頻度で伊奈帆は何も言わずに居なくなる。翌日には普通に戻ってくるのだから何をしているのか不思議なものだ。

 

「アイツの事だ。なにかあるんだろう」

 

 食事を終え、暖かいお茶を飲み屋がらゆったりと話す彼女だがその目は鋭く光っていた。

 

「っ!」

 

 そんな彼女の視線にビクッと体を揺らしたのはフィアのちょうど後ろに座っていた少女だった。彼女はサングラスをかけ黒のつまみ帽を被っていた少女はご飯を食べ終わりそそくさと退散するのだった。

 

ーー

 

「流石は隊長、一目見ようとした私がバカでした」

 

 新芦原基地、第1特務隠密部隊。諜報員として行動していたケルラは調査内容を基地に提出したついでにフィアが良く立ち寄ると言う定食屋で昼食をとっていたのだ。

 まさか後ろの席に隊長であるフィアが座るとは夢にも思っていなかったが。

 

「レムリナ様のお見舞いもいかなきゃ」

 

 新芦原市の端っこにある小さな診療所では現在、足の治療を行っているレムリナがいる。全ての始まりの地であるここで治療を行いたいという本人の強い希望によるものだ。

 

「そう言えば耶賀頼先生はしゅーくりーむと言うお菓子が美味しいって行ってたなぁ」

 

 地球にやって来てまだ数ヵ月だが食べ物の種類の豊富さは圧倒される。食事以外の目的で食べるものがあるなんて思っても見なかった。

 

 鼻歌交じりに歩を進めるケルラだが全身黒ずくめの少女が鼻歌を歌ってスキップしているのは嫌でも他人からの目が向くが本人はそれを知らず、続けるのだった。

 

ーーーー

 

 ヴァース本星、宮殿の執務室ではアセイラムが少しだけ慣れてきた執務を行っていた。まだ祖父であるレイレガリアの補佐が助言を加えながら行っているが最初に比べ随分と様になってきた。

 

「姫様、地球の交渉班からの資料をお持ちしました。それと隊長が揚陸城を1つ墜としたそうです」

 

「もう、フィアは少し休めば良いのに」

 

 豊かな地球で信頼する彼女には体を休めて欲しかったが、それを許さない性格をしているのは誰よりアセイラムが知っているだろう。

 

「それで、どうでしたか?」

 

「やはり我々ヴァース帝国が地球に対して優位に立っているのは工業系の技術です。アルドノアドライブを地球に売り出してヴァース帝国の技術力の高さをアピールするべきでしょう」

 

 久々のフィアの話しに思いを馳せる暇も無くリアは届けられた資料を見ながら解説を行う。

 

「アルドノアドライブはヴァース帝国では神聖なものであり高貴な代物。それを易々と地球に送るのはいかがなものかと」

 

「そうですね、そう考える人も多いでしょう」

 

 レイレガリアの副官が漏らしたのは他の者達の反応がどうなるかだ。彼なりにアセイラムの思想には共感しているが客観的に見ると賛同しかねる。

 

「なら姫様しか起動できないアルドノアドライブで良いのでは?」

 

 部屋の片隅で資料を分類していたジュリが山積みの紙束の中から声を上げる。

 

「立派なものを送る必要はありません。我々にはその気持ちがあると言うポーズが必要ではないでしょうか?」

 

「なるほど!それで良いではないでしょうか?」

 

 ジュリの言葉にアセイラムは喜ぶが他2名の顔はあまり優れない。

 

「地球とヴァース帝国の遺恨は根強く生きています。まだ時間が経っていないのでなおさらでしょう。姫様のお言葉で表面化していませんがヴァース帝国でも地球人を劣等民族として考えているのは変わりありません」

 

 そんな状況で神聖であり高貴の象徴であるアルドノアドライブを地球に渡すなど知れれば強硬手段に出るものは必ず出るだろう。

 

「しかし皆様が職を手にし余裕を持つためには必要な事です。それで私の命が狙われても結構です。最終的に皆様が豊かなるのなら」

 

 アセイラムの言葉にその場に居た全てのものが言葉を失う。戦争を肌で感じていた彼女の強さと理念、混沌とした戦場と人の心を見てもなお揺るがない彼女の高潔さに…。

 

「分かりました、手配しましょう。地球への運送は親衛隊が、地球からは何とかエルスート卿に連絡を取りして貰いましょう」

 

「お願いします」

 

「はい」

 

 レイレガリアの補佐は表情を崩さない人物だったがほんの少しだけ微笑み返事をする。

 こっちも堕ちたなっと言わんばかりに顔を合わせ笑いあうリアとジュリは互いに親指を立てるのだった。

 

ーーーー

 

 火星、ティレヌス遺跡。

 ハイパーゲートの次に発見された巨大な遺跡で今だに発掘が終わっていない巨大遺跡だ。この遺跡はクランカインが発掘の指示を出し多くの人々が作業に従事している。

 

「巨大な地下都市ですか。なんと巨大な…」

 

 ティレヌス遺跡は巨大な都市の名残が強く残っており圧巻させられる。

 

「クルーテオ卿!」

 

「どうしました?」

 

 舞い上がる粉塵に対し目をこらす彼の元に駆け寄った副官は血相を抱えながら言葉を出す。

 

「街のど真ん中にカタフラクトが埋まっています」

 

「カタフラクトが?」

 

 まさかの言葉にクランカインは驚きの声を上げるのだった。

 

 

 




どうも砂岩でございます。
今回は短めと言う事でここまでです。話が動くのは次かその次くらいですかね。

と言う事でアルドノアアンケート企画第二弾を開催いたします。今回も活動報告で受付をさせて頂きます。

今回の議題は2つ。

1つ目は今回の話、最後に出てきた発掘のカタフラクトの案を募集します。個人的には鉄血系統を考えていますがこの機体はどう?などを募集します。

2つ目はフィアたちの私生活を描いた番外編の案、そのキーワードを募集します。

例えば、春というキーワードを頂ければそここら作者が連想して書いていく仕組みです。 春でしたら無難に花見ですかね。

と言った具合にやっていきます。皆様のご意見をお待ちしております。

最後まで読んで頂きありがとうございました!


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