アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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※書き方を変えてみました。




第六十一星 ほんの少しの後悔  -little regret-

「オルガくんも逝ってしまったか。私のような年寄りばかり残しおって…」

 

 スカンディア、エレクトリス、オルテギュアの残骸を見たバルト伯爵は悲しげに言葉を漏らす。そして見据えるのは前に立っている敵。

 

「噂のオレンジ色か」

 

バルトは目の前に立つスレイプニールを睨見つけるのだった。

 

ーーーー

 

「なによこれ」

 

「でかっ」

 

 突如出現した巨大なドラゴンは自分たちを睨み付けたまま動かない。オルテギュア相手に弾薬を大きく消耗し疲労も蓄積している。

 それに相手は未知の敵、ここは撤退が妥当だろう。

 

「ここで倒そう」

 

「伊奈帆!?」

 

 マガジンを新しいのに取り替えた伊奈帆は目の前に立つドラゴンを見据える。

 

「一度退いたら他のカタフラクトが合流するかもしれない。ここで倒せばここはこっちの領域になる。マグバレッジ艦長」

 

「司令部からは?」

 

「返答なしです。作戦続行かと」

 

 通信越しに訪ねられたマグバレッジは不見咲に目線を移すが彼女が期待した返事は返ってこなかった。それを聞いて内心、ため息をつくと返答する。

 

「作戦は続行してください。ただし、不可能だと判断したらすぐに退きなさい」

 

「分かりました」

 

 伊奈帆とマグバレッジとのやり取りを聞いていた全員は覚悟を決める。目の前に居る化け物を倒す、それしか道はない。

 互いが睨み合ったまま動かない、先手を打ったのはバルト伯爵の方だった。

 

キャァァァ!!

 

 目がくらむような咆哮と共にドラゴンこと《ギランディア》は口を開け放つ、それと同時に胸部の光るブロックが輝きを増す。

 

「まずい、全機散開!!」

 

 悪寒を感じた鞠戸の声と共にジャンプユニットを噴かし散開する部隊、それと同時にギランディアの口から眩い光が放たれ2機のアレイオンを両断する。

 

「光学兵器ですって!?」

 

 一拍置いて爆発するアレイオンを横目にユキは信じられないと言わんばかりに叫ぶ。あれは間違いない、チューオリンズで戦ったソリスと同じ光学兵器だ。しかも威力はこっちの方が大きい。

 

「このぉ!」

 

「クロイネル22!」

 

 部隊の仲間をやられた事による怒りで一気のアレイオンがギランディアに向けて吶喊する。

 

「煙幕だと!」

 

すると突然、クロイネル22の視界が塞がれた。

 

「違う、これは蒸気だ」

 

「蒸気!?」

 

 ギランディアの両脚、背中、太股の計5つのダクトから排出されたのは高温の蒸気、機体を冷却するための行動だろう。

 

「なぁ!」

 

 大量の蒸気の中から突如現れたのはギランディアの巨大な剣が着いた尻尾だった。それは高速で飛来しアレイオンをオモチャのように空高くかち上げた。

 アレイオンは空中でバラバラになり爆散する。

 

「撃てぇ!」

 

 鞠戸の声と共に残存の部隊はギランディアに向けて射撃を開始するが屈強な装甲に阻まれ全て弾かれる。

 その際、ギランディアは手のようなミサイルランチャーで胸を隠した。

 

「無駄だ、ギランディアに通常兵器は通じん」

 

 必死に発砲するアレイオンたちを見たバルト伯爵は表情を一切変えずに機体を操る。

 腕部に搭載されたミサイルランチャーが火を噴きアレイオンたちに向けて飛翔する。

 

「各機散開!」

 

「全然、効いてないんだけどぉ!」

 

「今はとにかく相手の情報収集」

 

「は、そうだった」

 

 飛来するミサイルを躱しながら韻子とライエはなんとか無事に合流する。

 

「伊奈帆とユキさんは!?」

 

「あそこ…」

 

 ライエが指差方向、そこには大型ライフルを持って反撃するユキと援護する伊奈帆のスレイプニールの姿があった。

 

「大型ライフルも弾く屈強な装甲に有り余る火力か…厄介だな」

 

「どうするの?なおくん」

 

「なにか弱点があるはずなんだ。似たような敵と僕たちは2年前とこの前、宇宙で戦った」

 

「揚陸城の…」

 

 2年前に戦った相手、ディオスクリアも巨大で厄介な能力を複数有していた。そうだ、必ずどこかに取り付く島があるはずなのだ。

 

「ユキ姉、ライフルの弾は温存しといて…。使えるかもしれない」

 

「分かったわ!」

 

 一旦、下がるユキを見送りつつ伊奈帆はギランディアの懐に潜り込み弱点を探すためにマシンガンを乱射する。

 

「各機懐に潜り込め!奴は大きい、足元に入れば対処は難しい」

「「了解!」」

 

 巨体な分、動きは必然的に鈍くなる。そこをついて奴の弱点を探れば…。

 

「自ら懐に入ってくるか…。思惑通りだな」

 

 だがそれは相手を誘った罠だと言う事にこの時は鞠戸も伊奈帆も気づけなかった。

 

 懐に突入し反撃だと言わんばかりに声を上げるアレイオン隊に襲いかかった物体があった。

 それは円柱形のものでアレイオンの胴体ぐらいの物体だった、それは機体に迫ると胸や背中に張り付く。

 

「なんだ、このドラム缶は…ッ!?」

 

パイロットが疑問の声を上げた瞬間、その物体から出て来たのは無数のコード、コードは触手のように動き機体の隙間から内部に侵入していく。

 

「なんだよこれは、誰か取ってくれ!」

 

 侵食されたアレイオンは全身に血管のようなものを浮かび上がらせ停止する。

 

「おい、どうした?」

 

 停止した機体を心配そうに見つめる味方、何があったのか確かめるために近づくアレイオン。

 

「よせ、近づくなぁ!」

 

 ぞわっと鳥肌が立ち、全身が危険を知らせる。鞠戸は近づく味方機を大声で止めるが時既に遅し…。

 侵食されたアレイオンは近づいてきた味方機に向けてマシンガンを撃ち放ったのだ。

 

「おい、なにを…うわぁぁぁ!!」

 

「機体がコントロール出来ない!助けてくれぇ!」

 

 味方機を屠ったアレイオンは他の機体にも攻撃を加える。

 

「おいよせ!止めろ!」

 

「くっ!」

 

 制御を失い、攻撃するアレイオンを見かねた他の部隊員は苦悶の表情を浮かべながらマシンガンを構える。

 マシンガンを構えたアレイオンが引き金を引こうとした瞬間、制御を失ったアレイオンの両腕が吹き飛ばされた。

 

「諦めてはだめですよ」

 

「マスタング00」

 

 攻撃手段を失ったアレイオンは完全に停止し沈黙する。

 

「四肢をもげばどうとでもなる。それは当然な考えだなオレンジ色。だがこの数はどうかな」

 

 機体から大量に射出される子機は全ての機体たちに襲いかかる。

 

「くそっ!」

 

 なんとかそれを迎撃するが数に押されジリジリと押し込まれてしまう。

 

「ッ!」

 

「ライエ、危ない!」

 

 そんな中、ライエがその標的とされてしまう瞬間。韻子が割って入り侵食を許してしまった。

 

「韻子!」

 

「機体の制御が…」

 

「早く脱出して、韻子ちゃん!」

 

「う、動かない!」

 

 韻子との通信が無理やり切断されアレイオンは独自に行動を開始する。しかしその動きは先程のアレイオンとはまったく違っていた。

 

「この動き…」

 

 ナイフを抜き放ちマシンガンを撃ちながら接近してくる。

 先程のように操られているかのような違和感はない、これはシミュレーターで確立した彼女の戦い方だ。

 

 侵食された機体の動きは機体に記録されているパイロットの動きが反映される。

 つまり乗り手が凄腕ならその分、動きもより鋭くなり危険になるというわけだ。

 

「韻子ちゃん、脱出して!」

 

 襲いかかる韻子のアレイオン、ユキはそれに対処するためにナイフで受け止める。

 

「ユキさん下がって!」

 

 アレイオンの背後から銃撃するライエ、だがそれはいとも簡単に避けられ察知された。

 

「マズい!」

 

 撃ち放たれたグレネードは足元に炸裂した、飛行ユニットを損傷させ、ライエの動きを鈍らせる。

 その隙をアレイオンは逃さない、一気に接近しナイフを振るった。

 

「マスタング22!」

 

 鞠戸の叫び声と共にライエのアレイオンはナイフと銃撃によって両腕を失う。

 

-ガンッ…。

 

 マシンガンの銃口がアレイオンの装甲に当たる鈍い音が耳に届く。

 ほんの数センチ先には銃口が存在している、両腕を失い飛行ユニットも損傷した機体は何も出来ない。

 

「ッ!」

 

 あと数秒もすれば弾丸が自身の体をバラバラに吹き飛ばすだろう。

 そんな時に浮かぶのは親友の顔、きっと彼女は泣きながら自分を責めるだろう。

 

「ふっ…」

 

 ライエの口からは意図せず笑い声が漏れる、思考が恐怖を通り越した証拠だ。

 

 

 あぁ、もっと素直になっておくべきだったなぁ…。 

 

-ズドンッ!

 

 一拍の間を置いて大きな銃声が平原に響き渡るのだった。

 

 




どうも砂岩でございます。
次回どうなる!?((((゜д゜;))))
と言う事で新たなカタクラフトギランディアの主な能力は完全電子操作、つまりかなり強力なハッキングと言うわけです。
考え敵にはディオスクリアの上位互換的なものです。果たして伊奈帆たちはこの敵をどう対処するのか?

では最後まで読んで頂きありがとうございます!


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