アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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まずは、遅くなってすいませんでしたぁぁぁ!!
言い訳は後書きでします。本当に申し訳ありませんでした。ではどうぞ!




第四十五星 分岐点 前編 -turning point-

 

 

 

ヴァース帝国軍、マリネロス基地カタフラクトハンガーでは小さな騒動が起きていた。

 

「地球人を飼うだけなら酔狂で許されよう…だが、騎士に取り立てるなどいささか戯れが過ぎるのではないかな?」

 

「バルークルス卿、我が家臣について貴公に口を出される筋合いはない…」

 

バルークルス卿とマリルシャン卿に向き合って立っているのはザーツバルム卿、彼はそばに跪いているスレインを庇うように立っていた。

 

「何があった?」

 

「隊長!あぁ…なんて痛ましい姿に…」

 

「よしよし…」

 

そんな様子を遠くから見ていた親衛隊の近寄ってきたのは頬に湿布を貼ったフィアだった。そんな彼女の姿を見てリアは悲しむがフィアに頭を撫でられ、すぐに大人しくなった。

 

「マリルシャン卿、今度はスレインに言いがかりをつけているのです」

 

フィアに状況を知らせたのはジュリだった。彼女は簡潔に話をまとめ伝えるとフィアはすぐに状況を理解した。

 

「しかしともに戦うと言うなら別の話、いつ裏切るとも分からぬ者と共に戦場など出れませぬ!ザーツバルム卿、そなた一人の身勝手で済むことではないぞ!」

 

一見、バルークルス卿の苦し紛れに発した言葉に聞こえるが実に的を得ているとフィアは判断していた。当然ながら地球人と火星人の信頼など言わずもがな最悪…それが味方として共に戦線に出るのは許しがたいと言う言い分は分かるからだ。

 

「ならば、この場で僕を斬って下さい…」

 

ハンガーに響いたスレインの冷たい声に一同が騒然とし隣にいたハークライトすら驚愕の表情を隠せないでいた。それはフィアも例外ではなく表情こそ変えなかったが目は大きく見開かれていた。

 

「貴方の言う通りです…このまま戦場に出ると…私の方が後ろから斬られかねません」

 

「貴様あぁぁ!」

 

流石に切れたマリルシャンは持っていた剣を抜刀しスレインに斬りかかろうとした瞬間…。

 

「諸君、聞かれよ諸君!!」

 

ザーツバルムの突然の声にその成り行きを見守っていた者達の視線が集中した。

 

「ヴァース皇帝の庇護のもと、スレイン・トロイヤードを我が息子とする!この場に同席された諸君が証人である!」

 

まさかの事態に全員が絶句する。地球人が伯爵家の跡取りとしてなってしまったのである。言うなれば玉の輿に乗ったと言うのだろう。

 

「立てスレイン…今日からそなたは我が息子だ」

 

「貴公にそこまでの覚悟がおありなら良いでしょう…しかし僅かでもおかしな真似をすれば容赦なく斬る」

 

地球人とは言え伯爵家の跡取りを殺してしまえば流石にマズい…剣をしまったマリルシャンは捨て台詞を吐き去って行くのだった。

 

「スレイン!」

 

「フィアさん…」

 

「てい!」

 

「痛い!」

 

去って行くのを見送ったスレインは上から降ってきたフィアに驚きながら流れてくる手を受け取り止める。だがすぐに後から来たリアに腕をチョップされスレインは手を離すと威嚇される。

 

「全く心配させて…」

 

「フィアさん…」

 

フィアに優しい笑みを向けられ思わず紅くなるスレインを見てザーツバルムは静かに微笑む。そんな彼を見てフィアはすぐに頭を下げた。

 

「ありがとうございます、ザーツバルム卿」

 

「構わぬ…お主にも色々と苦労をかけるがよろしく頼むぞ…」

 

「ハッ!!」

 

フィアにとってザーツバルムは尊敬できる人物だと判断できた。友であるマリーンが心酔しているのも分かる気がする。

 

「敵衛星基地、最接近までもう間もなくです!」

 

「では御武運を」

 

「うむ、そちらもな…」

 

ハンガーに響き渡った声に全員が顔を引き締める。フィアはザーツバルムにもう一度礼をするとその場を立ち去るのだった。

 

ーーーー

 

「作戦は伝えたとおりだ…我々は対艦攻撃に出る」

 

「「「「了解!」」」」

 

この作戦でフィアたち親衛隊が行う目標は敵のアルドノアドライブ搭載艦、デューカリオンの撃沈であった。

内容は簡単、敵の戦線を突破してマリネロスが離れるまでに撤退する、機動力が売りの親衛隊ならではの作戦である。

 

「進路クリア、発進どうぞ!」

 

「フィア・エルスート…シナンジュ出るぞ!」

 

「………出ます」

 

「ベルガ・ギロス02!ネール行くぜ!」

 

「ベルガ・ギロス03…ジュリで行きます!」

 

親衛隊の機体が次々と出撃するさまを見送ったスレインはタルシスを発進させる。

 

「スレイン・トロイヤード…タルシス行きます」

 

タルシスから送られる未来データをもとに流れる岩石を避けて突き進む。その前方を親衛隊が突き進むがどんどん距離を突き放される。全ての機体がスピード重視の機体とはいえ最小限で岩石を避けて進むさまはまるでどこかのSF映画のようだった。

 

「鍛えてるなぁ…」

 

スレインは改めて親衛隊の実力を実感する。操縦技術がずば抜けているフィアに追随するなど並の兵が出来ることじゃない。

 

ーーーー

 

地球軍、トライデント基地に鳴り響く警告音。ヴァース帝国軍のカタフラクト進行を知らせるアラートだがこちら側も既に準備は完了している。

 

「全隊に通達!作戦開始!!」

 

トライデント基地、司令官の号令は全体に伝わった。それはデューカリオンも同様である。

 

「司令本部より入電、作戦開始命令っす!」

 

「デューカリオン発進!当艦は遊撃隊として攻撃隊を支援する…全艦戦闘態勢!!」

 

「両舵全速前進…」

 

通信士である祭陽の言葉と共にマグバレッジの号令が発せられニーナの操艦でトライデント基地の七番埠頭から発艦する。

 

「トライデント基地より当艦の艦載機が発進します」

 

不見咲の報告と共にマグバレッジは横目で離れていくトライデント基地を見やるがすぐに戻すのだった。

 

ーー

韻子side

 

『マスタング11、クリアード・フォー・ランチ』

 

「ラジャー、マスタング11、クリアード・フォー・ランチ…ブラストオフ」

 

トライデント基地のカタパルトより射出された韻子は襲いかかるGに顔をしかめながら出撃する。

 

「ブラストオフ…」

 

その横のカタパルトからはライエが射出され他の隊と合流、綺麗な横一文字隊形に並び進撃する。あらかじめ展開された《傘》と呼ばれる電磁グリッドを盾に進む。

 

「ターゲットマージ…攻撃開始!」

 

ヴァース帝国軍の先行であるステイギスが子機を分離して四門装備されたマシンガンが火を噴き韻子たちに襲いかかる。

 

『攻撃来ます!』

 

『まだだ!この偏向重力(かぜ)では命中しない、よく引きつけて狙え!』

 

偏向重力により荒れ狂う弾丸が襲いかかるが命中弾はない。落ち着いて対処しなければすぐに殺られてしまう。

そんな時、たまたま弾丸が傘の基部に直撃し破壊されてしまう。

 

「傘をやられた!?」

 

「韻子!」

 

細かいデブリが当たり機体を揺らすが問題はない。それより韻子はレーダーと周囲に目を回すがお目当ての者が見つからない。

 

「フィアはどこ?」

 

「韻子、まえ!」

 

「くっ…」

 

少し目を離していた隙に目の前まで接近していたステイギスがモニターいっぱいに映る。しかし韻子は動揺せずに苦しい表情をすると無反動砲を構え撃つ。するとステイギスに直撃し撃墜する。

 

「よし!」

 

「マスタング00援護する……韻子はカバーをお願い」

 

「あ、うん!」

 

後方から追い越すように進撃する伊奈帆に少々驚きつつ韻子は喜びの声を上げる。なんだか初めて伊奈帆に頼られたような気がしたからだ。

 

「どこにいるの?」

 

ライエは先行する2人を見送りつつ周囲を確認するのだった。

 

ーーーー

 

本隊から先行した伊奈帆と韻子はステイギスを破壊すると戦闘領域に帰還するために反転を行っていた。

 

「三号シュート、ワイヤースイングバイで旋回…戦闘領域に帰還」

 

韻子は一足先に旋回を終了させ帰還ルートに入っている。

 

「旋回終了まで4……3……2……1……リリース」

 

旋回終了と同時に襲いかかる弾丸に伊奈帆は驚くが素早くバレルロールし回避する。

 

「スレイン・トロイヤード…」

 

「界塚伊奈帆!」

 

伊奈帆はタルシスを生で初めて見ると何か奥から沸き上がるものを感じていた。しかしタルシスは伊奈帆の予想より早く接近しブレードを構えていた。

 

「伊奈帆!!」

 

「くっ…」

 

これでは完全に避けられない…多少の損傷を覚悟した彼だったが異変を察知しカバーに入った韻子によってそれは防がれた。スレインは襲いかかる弾丸に対応するために避けねばならず仕方なく攻撃を中断した。

 

「カバーする!」

 

「助かるよ韻子…」

 

ーーーー

 

トライデント基地付近のデブリ空白地点に砲撃のために進行していたデューカリオンはステイギス2機との戦闘に入っていた。

 

「マリネロス基地、最接近まであと三十秒」

 

「主砲発射準備完了しています」

 

「各隊に通達、斜線上に退避せよ」

 

裕太郎と不見咲の言葉にマグバレッジは各隊に向け通信を発する。その瞬間、レーダー手の裕太郎が珍しく叫んだ。

 

「敵機来襲!直上です、猛スピードで4機接近!!」

 

「近寄らせるな!対空砲!!」

 

「駄目です!」

 

直上より接近したのはベルガ・ギロス…ジュリたちはショットランサーを一撃ずつ発射させるとスピードを緩めずにデューカリオンの横をすり抜けていく。

放たれたショットランサーは左舷の対空砲を破壊し四門ある主砲の一つを貫いた。

 

「左舷対空砲四割沈黙!三番砲塔大破!!」

 

「下部ミサイル発射管開け!敵機体に対し牽制攻撃!カタフラクト隊に援軍要請を!!」

 

「り、了解!」

 

一瞬のうちにこちらの攻撃手段を的確に奪ってきた。敵はかなりの手練れだ。マグバレッジはせわしなく指示を出しながら状況を確認するために全力を尽くす。

 

「小型のミサイルらしきものが多数接近!」

 

「なに!?」

 

ーーーー

 

デューカリオン付近のデブリから顔を出したリアはローゼン・ズールのバックパックからアルドノアジャマーを射出し向かわせる。

 

「隊長のご褒美は私のもの!!」

 

ジャマーをデューカリオンの周辺に展開させ綺麗な八角形の形をとらせる。

 

「さぁ…香りに誘われ眠れ!」

 

展開されたジャマーはお互いをつなぎ合わせ巨大なデューカリオンを囲む。

 

「あぁ…あ…」

 

その様子を見てリアは恍惚とした様子だった。

 

ーーーー

 

「一体何が起きたのです!」

 

「分かりません!急にアルドノアドライブが停止して…」

 

戦闘中だというのに暗闇に包まれたデューカリオンのブリッジは混乱に見舞われていた。

 

「予備電源に切り替え!界塚少尉の安否を確認!!」

 

「健在っす!」

 

「一体何が…」

 

デューカリオンの動力源であるアルドノアドライブの突然の停止…まさか伊奈帆がやられたのかと思ったが違う。なら思いつく方法は限られてくる。

 

「まさか…アルドノアドライブ事態に干渉する能力を持つカタフラクト…」

 

「そんな!」

 

「予備電力でも何も出来ません!」

 

筧の言葉に全員が絶望の表情を浮かべるがマグバレッジは決して諦めない…何かしらの方法があるはず。そんな時にニーナが声を上げた。

 

「あの浮いてる奴を壊せば良いんですよね?」

 

「確証はありませんが…可能性はあります……」

 

「だったら……」

 

ニーナの提案に全員が驚くが援軍の到着が分からない今、それに賭けてみるしかなかった。

 

ーーーー

 

「本当に停まりやがった…すげぇな……」

 

「これがアルドノアジャマーの力……」

 

ネールとジュリの感嘆に全員が頷くが問題はこれからだ…何しろアルドノアジャマーの範囲内ではこちらの機体も好きに扱えない。

 

「これでこの艦を沈めれば…隊長の名声は元通りに……」

 

リアは嬉しそうに呟きながら左腕をデューカリオンのブリッジに向ける。近づいて攻撃出来ないなら有線式のこの腕で握りつぶせば良い。

念のためベルガ・ギロスもデューカリオンの周辺を囲むように配置されている。

 

「隊長…」

 

リアは後ろのデブリに仁王立ちしているシナンジュにモノアイを向ける。

 

「これでいいんだ…これで……」

 

拒絶するように襲いかかる頭痛を無視しながらフィアは冷徹に号令を下す。

 

「やれ……」

 

「了解!」

 

射出されたインコムはデューカリオンのブリッジに向けて真っ直ぐ突き進む。その瞬間、フィアは気づいた…デューカリオンの一番砲塔だけが動いていることに…。

 

「全機乱数回避!」

 

フィアの声と共に発射された砲弾は途中で内蔵していた無数の小型爆弾を撒き散らし親衛隊に襲いかかる。

 

「キャニスター弾!?」

 

「きゃぁぁぁぁ!」

 

絶妙なタイミングで放たれた弾はローゼン・ズールの左腕を破壊し近くに居たジュリのベルガ・ギロスに襲いかかる。左腕部のビームシールドで防ぐが基部が破壊され使い物にならなくなった所に背後からスラスターを破壊され墜落するように落ちていく。

 

「ジュリさん!きゃ!」

 

助けに向かおうとしたケルラは援護に来たグラニ一個中隊に阻まれ動きが取れなくなる。ネールもシルエも…損傷しているリアも同様であった。

 

「ジュリ!くうっ!!」

 

墜落するジュリを救わんと駆けるフィアだが再起動したデューカリオンの主砲が直撃し吹き飛ばされる。幸いシールドで防いだが内蔵していたビームナギナタ共に爆発してしまった。

 

「きゃ!」

 

ジュリのベルガ・ギロスはデューカリオンの被弾した左舷対空砲に擱座し停止する。落下の衝撃でアルドノアドライブが停止したようだ。

 

「くっそう!」

 

フィアは自身の不甲斐なさに憤りながらビームライフルをデューカリオンに向けて撃ち放つのだった。

 

 

 

 

 




まずは最後まで読んで頂きありがとうございました。
そして本当にすいませんでしたぁぁぁ!
書く時間はありました、たっぷりありました!でもなんか思いつかなかったんです!スランプって奴ですかね?
気晴らしに他のやつ書いてたら2カ月も…こっちが本命ですからね!それは間違いありませんよ!
最近、案とかも色々と湧いてきてるんでやっていけます!マジです!!

許して?ダメ?

フィア/伊奈帆「慈悲などない…」

ぎいやぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァ!!



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