アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
ー地球連合軍の宇宙要塞ー
宇宙における高級量産機《グラニ》の開発により武器のバリエーションが増えている。基本は使い勝手の良い無反動砲だが拠点防衛にあたっては機体をデブリに固定し高い威力の兵器を使用することで防衛戦の強化が図られている。
これはマリネロスにおけるシナンジュ戦で基地にカタクラフトを近づけたら終わりと言う考えが広く広まり上層部も真剣に捉えたためにこう言う事になった。
カタクラフトを砲台化することは賛否両論分かれたが自由に展開出来る、自身で身を守れるのと状況によって戦線に復帰出来ると言う点で砲台を増設するより遙かに現実的だと現場からは意外にも指示された。
『愚かにもヴァース帝国の恩情を反故にした地球人は。依然、我らから領地を奪おうとしています』
デューカリオン艦内、伊奈帆は多くの人が集まるブリーフィングルームでアセイラムの演説を聴いていた。
『"光が屈折し海と空が青く見える"ほどの沢山の水と空気を持つ豊かな星を』
モニターに映る姫の後ろにはヴァース帝国の紋章が在るだけで伊奈帆が心配していた人物の姿は確認できなかった。
『それこそが我々ヴァースの切願であり天命なのです…』
「姫様達と戦争…伊奈帆?」
「違う…空が青いのはレイリー散乱だ……」
隣に居た韻子の声も届かず、伊奈帆はただ独り言のように呟くだけだった。
ーーーー
月面基地、謁見の間では演説を終えたアセイラムは責任者であるザーツバルム卿と話していた。
「いかがです?ザーツバルム伯爵…」
「まさにアセイラム姫の生き写し、誰も正体を疑いなどしますまい」
「…これだから殿方は……」
ザーツバルムの言葉にレムリナは不機嫌な顔をするとホログラムを解除し元の姿に戻る。
「誰も正体の話などしていませんわ」
姿を現したレムリナはいまだに不機嫌そうで声のトーンも一つ下がっていた。
そんな様子を見ていたスレインはザーツバルムの横に立ち話す。
「とてもお上手でした…レムリナ姫、堂々としたお言葉、軌道騎士達も感銘を受けたことでしょう」
「ありがとう、サー・スレイン・トロイヤード…演説を褒められた事よりもその気遣いの方に感謝いたします」
「恐悦至極に存じます」
スレインの言葉にレムリナは喜び、嬉しそうにする…その様子で大方の者は察するだろう。彼女が彼に対する好意を…。
「それにしてもエデルリッゾはまだでしょうか?……ケルラ」
「ハッ!」
「エデルリッゾを迎えるついでに部屋に戻りましょう……」
「了解しました」
アセイラム親衛隊の最年少、ケルラはレムリナの言葉に従い車椅子の取っ手を持ち謁見の間から退出する。
その際、ザーツバルムとスレインへの礼を忘れずに。
「ではザーツバルム卿、私も……」
「うむ、ご苦労だった…ゆっくり休め……」
「はい……」
それを見送ったスレインもザーツバルムの前から去りそれに続くように下部であるハークライトもその場から去るのだった。
ーーーー
「では、スレイン様…私はここまでで……」
「ありがとうございます、ハークライトさん……」
とある部屋の前で下がったハークライトを見送ったスレインは部屋の扉を開ける。
「フィアさん…いらしたのですか?」
「あぁ……」
暗い部屋の中、中央のアイソレーションタンクだけが照らされている。
その前には長い銀色の髪を持った少女がいた、フィアは静かに答えると軽くスレインを見る。
「…………準備は良いのですか?」
「機体は万全だ…後のことはジュリがやってくれる」
眠るアセイラム姫に礼をするとフィアに話しかける。
二人が話しているのはマリネロス基地の防衛戦の事だった。
ザーツバルムを始め、多くの戦力を投入する今作戦は当然、親衛隊も含まれていた。
「宇宙における大規模攻防戦…この時点で地球連合はこの月面基地を狙えるわけだ…」
「全ては軌道騎士の怠慢…いえ……傲慢の方が正しいでしょうか…」
「量産機だってステイギスではなくベルガの簡易型にすれば良かったんだ…」
フィアは少しだけため息をつく、親衛隊の使っているベルガ・ギロスは元々、量産機を作るために作られたプロトタイプの装甲と部品を高級化することで製造された機体だ。
まぁ、親衛隊の戦闘目的はあくまで姫を守ること…主に内乱やクーデターが発生したときの楯だ…そんな機体をたとえ簡易型であろうが一般の兵に与えるのは嫌だと言う考えも分からなくは無いが。
「ステイギスは良い機体だと思いますよ…あのデブリ群は人型では少々厳しいかもしれませんし…」
フィアの意見にスレインは少しばかり笑いながら答える。
穏やかな空気、そんな中で二人は目を合わせない…否、合わせられない…何故なら目の前に主君が眠っているのだから。
フィアが目を覚まして一年、肝心のアセイラムは目を覚ます気配すら無い。
暗い感情が過ぎっても仕方が無いが二人は敢えてそれを口にしない。
「まぁ…とにかく…今は変なことで死なないことだな…」
「はい…」
「明日は前哨戦だ…休んでおけよ……では、失礼いたします……」
「はい…フィアさんこそ」
「フッ……」
そう言ってフィアはアセイラムに挨拶をすると部屋から去っていったのだった。
ーーーー
翌日
カタフラクトハンガーでは各機体の最終調整が行われていた。
「シールドにバズーカ砲が付いてるから重量が普通より左に向いてるからね~」
「弾種は?」
「散弾で信管は3秒、後は撤退用の閃光弾だね…カートリッジ着脱式だから自由に切り替えできるし」
「バズーカ砲をロングライフル下部につけるのは分かったがオートか?」
「一応オートだけど…」
「駄目だ、マニュアルにしてくれオートは遅い」
「分かったよ、10秒待って」
《ベルガ・ギロス二号機、三号機発進します、周辺の作業班は退避!!》
親衛隊員のネールとジュリの機体が動き出すと同時に周辺の人々は散開するが、シナンジュ含め様々な機体が最終調整と点検を行っているものだからグチャグチャである。
「調整を兼ねた航路の安全確保さ…」
フェインは横目でベルガを見送りながら言うと作業を続ける。その間にフィアは持っていた時計を見ると立ち上がりコックピットから出る。
「フィア?」
「時間だ…レムリナ姫がステイギスを起動なさるからな、ケルラ!」
「は、はいぃ!ただいま!!」
ワタワタとフィアの後ろについていくケルラに苦笑しながらもフェインは作業を続ける。
「惑星間戦争始まって以来の大規模攻防戦かぁ~」
そんな呟きはハンガーに響く音に紛れ誰にも聞かれずに消えてゆくのだった。
ーーーー
「姫様!?」
「あれ!?」
ステイギスの格納されているハンガー。そこに辿り着いたフィアとケルラは笑いながら格納庫を跳ねるレムリナを見て慌てた。
「あら?どうしたのフィア?」
「レムリナ姫!危ないですよ!!」
「良いじゃない、こうやって歩けるのは重力が操作されてない格納庫ぐらいですもの」
慌てるフィアが面白かったのか余計にピョンピョン跳ねるレムリナを見てスレインは思わず吹き出してしまい肩をプルプルさせるのだった。
ーーーー
思う存分ピョンピョンしたレムリナは蜂の巣の様な場所に格納されているステイギスに乗り込みアルドノアドライブに手を添える。
「ヴァースの血を引く者の名に置いて…目覚めよアルドノア」
その瞬間、中央に居たステイギスのカメラが光るとそれが伝染するように壁一面に広がるステイギスのカメラが光るのだった。
「凄い……」
そんな光景にケルラが驚いていると隣にいたフィアは複雑な表情をする。その理由は本人の知らぬまま…来るべき作戦へ向けて動き始めるのだった。
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地球連合軍軌道要塞《トライデント基地》
その基地の12番埠頭に巨大戦艦《デューカリオン》がゆっくりと相対速度を合わせ停泊するのだった。
「うわ、スゲー戦力」
「招集できるあらゆる部隊が集められましたからね」
ブリッジから見える光景を目の当たりにした祭陽は驚く、横から補足を加えている祐太郎もその光景に少々圧倒されていた。
岩壁にある複数のシャトルに、警戒に当たるアレイオンとグラニは見えるだけでも優に10機は超えている。
「あれ?あんな装備見たことないなぁ」
「無反動バズーカですね、火力支援を目的とした兵器です…グラニが開発されたおかげで武装のバリエーションも豊富になってきていますから」
「へぇ~」
1機、1機をよく見ると確かに手持ちの武器が無反動砲ではないものがチラホラ見える。デブリに機体を固定してあるアレイオンはガトリング砲を持っているようだ。
「今回は戦いが始まって以来の大規模戦になるだろうからな」
そんな二人の話を聞いていた筧は外に広がる光景を見てそう話すのだった。
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デューカリオン艦内、伊奈帆&カーム部屋
その中で伊奈帆は二段ベッドに座りながら膝に乗せたパソコンを操作していた。
「界塚少尉、いらっしゃいますか?」
そんな時、数度のノックの後、韻子の声が部屋に響いた。他人行儀な言葉だがお互いの軍人としての立場を鑑みれば妥当と言ったところだろう。
「開いてるよ…」
操作を一時中断した伊奈帆は静かに答え扉を見やる。プカプカと浮きながらやってきた韻子は器用に脚を床につける。
「調子はどう?伊奈帆…」
「まぁまぁ…少し痛むけど……」
「お薬は?」「飲むと楽になるけど神経接続の感度が悪くなるから……」
「そうなんだ…大変だね……」
心配そうに見つめる韻子を見て一瞬だけ自身の姉を思い出すがすぐに頭の隅に追いやる。パソコンの操作に戻ろうと視線を動かすと少しだけ驚いた。
韻子の顔がすぐそこまで来ていたからだ…もちろんそんな事で動揺もしないし恥ずかしくもない…驚いたとしても目の前に虫が突然通り過ぎたくらいの驚きだ。
ムニィ……
「!?」
「今、ものすごく失礼な事考えてたでしょ?」
「
韻子に両頬を摘ままれ焦る伊奈帆は頑張って否定する。韻子はその言葉に納得はいかない顔をしつつも手を離し話を続ける。
「で?その眼はそんなに凄いものなの?」
「まぁね…開発中の試作機だからプログラムを改良しないといけないけど…はい」
そう言って伊奈帆は近くに置いてあったパックを韻子に放ると義眼であるアナリティカルエンジンを起動させる。
「サンキュー」
「体重48.3㎏…ほんの少し太った?」
「え、なんで分かるの!?」
「200グラムのパックを受け取った時の運動量変化を三次元計測で割り出して総質量を算出、そこから制服の質量の概算を引いた」
「う……」
伊奈帆の説明を聞きつつ韻子はあることを思い出していた。
アレはデューカリオンに乗り込む二ヶ月前だ…死ぬ気で伊奈帆とフィアのAIを倒した時、ライエ、ニーナ、カームとたまたま居た、祭陽、祐太郎とで盛大なディナーを食べた。
それだけで飽き足らず寝る前にニーナとお菓子三昧を繰り返すこと数日……過度な訓練で減り続けた体重は元に戻るどころかそれすら超えて増えていったのである。
「トレーニングで筋肉質になっただけ!!」
「それも嘘、声のホルマント分析に緊張が見られるよ」
軍人とは言え花も恥じらうお年頃、必死に言い訳を並べる韻子に伊奈帆は次々と一刀両断していく。
そんな時、伊奈帆は持っていたパソコンの画面を韻子に見せる。
「彼女の声にも緊張が見られるんだ…特にここ」
『私、アセイラム・ヴァース・アリューシアは』
「え!?もしそれが嘘だとしたら…」
「やっぱり…食べたんだ……」
「……」
「韻子?」
「もうあんたとは口きかない!!」
伊奈帆の気遣いの無さにとうとう堪忍袋が切れた韻子はズカズカと女の子らしくない歩き方で部屋を後にした。
そんな光景を見届けたライエが一言……
「分かったわ…あなた、本当はバカなのね……」
「嘘は…ついてないね……」
「………体重見ないでよ…」
「大丈夫、見ただけじゃ分からないから……」
「そう……」
(何でこんなに信頼がないんだろう…)
そんな的外れな事を思いながら伊奈帆は作業を再開するのだった。
フィア「おい、何か言うことはないか?」
すいませんでしたァァァァァァ!週1日にしたいとかほざきながら一ヶ月近く待たせてすいませんでしたァァァァァァ!!
伊奈帆「弁明は聞くよ」
大学って忙しいですね…
フィア/伊奈帆「「……」」
ごめんなさい!でもそうなんですよ!新入生ってやること一杯なんですよ!
伊奈帆「日曜日は?」
家でRGデスティニー作ってました!
フィア「…死ね」
ギャァァォォァォォォァ!!
ーフィアー
と言うことで汚物は消毒したのだが原稿を預かっている。日付は一ヶ月前のだがまぁいい。
ほうほう、本当は第一次トライデント基地防衛戦まで書きたかったらしいが書いていたら文字が凄いことになったので次に回します?…予定をしっかりとつけないからこうなる。まぁ原作と多少違う会話が入ってる所で勘弁して貰えたら助かる。他にも書いてあるがもう良いだろう。私個人としては我が親衛隊のメンバーをもっと登場させて貰いたいと思うが……まぁ期待せずに待っておこう。
では最後まで読んでくれて感謝する…ありがとう……あのバカがこんな調子だ次回はいつになるか分からんが気長に待ってくれると助かる。
ではまた会おう!