アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
「マリーン…」
「フィア…」
月面基地の展望室でフィアが会ったのは親友でありライバルのマリーン・クウェルだった。
かつて二人はこの展望室で別れ次に会ったのは戦場である揚陸城であった。
「フィア…話したいことがある…多くの事を…お前が忘れてしまった事を…」
その言葉を聞いたフィアは真剣な表情でマリーンと向き合うが、内心ではマリーンの言いたいことは分かっていた。
何だかんだと仲が良かったマリーンが意図的に自分との接触を避けてきたのであれば現在姫様の状況に関係しているのは言われなくても分かることだった。
「いい…分かっている……」
「…流石だな……」
「少し冷静に考えれば済むことだ…」
冷静に答えるフィアを見て若干の冷や汗をかきながら答えるマリーンもそんな事を悟らせない様な堂々とした態度だった。
(やっぱり…フィアには勝てないな…)
「一つだけ…聞きたいことがある……」
フィアの凄さを再確認したマリーンは突然の質問に再び気を引き閉めた。
「お前の態度を見れば大方の予想は当たっているだろう…私が聞きたいのは…お前はその行動を後悔しているか、否かだ…」
「していない…」
フィアの質問にマリーンは即答だった、自身が姫殿下の命を狙ったのも、フィアと殺し合いをしたのも全ては母星を思った恩人の手助けをしたかったからだ。
それでやった行いは自身にとっては何も恥じることの無く、後悔もしていないからだ。
「そうか…お前を殴り殺さずに済んだよ…」
フィアはその答えを聞いて軽くため息を吐いた。
フィアもマリーンの事は分かっているつもりだ、だからこそ聞いた、騎士であり主君は違えどその者に命を差し出した似た者同士…ここで後悔されていたら怒りに身を任せて本当に殺していただろう。
「だがな…私はお前を絶対に許さない…」
「構わない…私が来たのはお前から逃げたくなかったからだ…」
「そうか…」
絶対に許さない…これはフィアの本心だ、だが騎士として戦士として一番に信頼している彼女はフィアにとってかけがえのない人物であることに変わりがなかった。
「それで…これだけじゃないんだろ?」
「…全く……本当にお見通しだな…」
話は終わったとばかりに少しだけ口調が緩くなったフィアの言葉を聞いたマリーンは、頭を掻きながらため息をつきつつも端末を取り出しフィアに見せる。
「作戦命令書だ…私たち二名をご指名らしい…」
「作戦…」
懐かしいようなその響きにフィアは思わず息を飲むのだった。
ーーーー
「地球軍の宇宙進出?そいつは噂じゃないのか~?」
シナンジュ機付き長であるフェイン・クラウスはコーヒーを飲みながら部下の話を聞いていた。
「それが本当なんですよ、この月面基地から最も近いデブリ群にあるって…昨日監視科の奴等が騒いでました」
「ん~出撃命令が出そうだな~」
「はい?」
「全員を叩き起こせ!いつでも出せるようにしとけ!!」
「「「「は、はい!!」」」」
急にスイッチが入ったフェインを見たシナンジュ担当の整備チームは慌ただしく行動を開始する。
「一応、レギルスの方にも連絡入れとけ!10分以内に出せるようにしとけとな!」
「そんな!」
「やりゃ出来るんだよ!」
「はいぃぃ!」
フェインの言葉一つで格納庫に居た者達は動き回り格納庫にあるはずの活気がよみがえるのだった。
ーーーー
「全く…作戦なら作戦と先に言ってくれれば…」
「しこりを残したままにしておきたくなかった…」
「そうか…」
マリーンの答えに少し笑いながらフィアは呟くと月面基地の指令室にたどり着いた二人はドアを開ける。
「失礼します」
「あぁ…そのままでよい…」
そこに居たのはスレインと月面基地を取り仕切りマリーンの主君であるザーツバルムだった。
ザーツバルムはマリーンとフィアの入室を確認すると、礼をしようとした二人を止めてオペレーターに目を向ける。
するとメインモニターが一つの静止画像を出した。
「これは…」
そこに映っていたのは宇宙用の装備をつけたアレイオンと紺色の進化機と思われる機体が模擬演習をしている場面だった。
「見ての通り、敵の軍事施設だ…運の悪いことに月面基地から最も近いデブリ群にある…」
「つまり、敵の新型もろとも基地を殲滅せよと言うことですね…」
「話が早くて助かる…」
話を聞いたフィアはすぐに理解するとザーツバルムは頷く、話は終わったと判断したフィアは部屋から出ようとすると止められ振り向く。
「なんでしょう?」
「この作戦は三機で行ってもらう…」
「三機?」
「あぁ…スレインも連れていって欲しいのだ」
「スレインをですか?」
てっきり二人で行うとばかりに思っていたフィアは驚く、それはマリーンも同じだった様で少々顔が変わっている。
当の本人であるスレインは緊張している様で汗をかいている。
「専用のカタフラクトであるタルシスを持っている以上、騎士としての務めを果たさねばなるまい、操縦は覚えている…後は経験だ」
「なるほど…」
確かにアルドノア搭載機である火星のカタフラクトは数が限られてくる、機体をいつまでも遊ばせて置くわけにはいかないのだろう。
「フィアさん、クウェル子爵…よろしくお願いいたします」
「あぁ…よろしく…」
「硬くなるなよ…スレイン」
「はい!」
フィアとマリーンの言葉にスレインはカチカチになりながら答え、それを見た二人はやれやれと言った感じで微笑むのだった。
ーーーー
指令室を後にしたフィアは私室に戻りフェインと話していた。
「と言う訳です…タルシスの方はどうですか?」
『そっちもか~なんとかする~』
「10分で」
『七分で』
「分かりました…頼みます…」
やり取りを終えるとフィアは電話を戻し椅子に深く座る、すると備え付けの机の上に紅茶が置かれる。
「どうぞ…」
「あぁ…ありがとう…エデルリッゾ」
「いえ…」
フィアは落ち着くために渡された紅茶をゆっくりと飲む、紅茶の豊かな香りと繊細な味がよく出ていてエデルリッゾの淹れ方が上手いとよく分かる。
「美味しいですね…」
「やっぱり専門は違うなぁ…」
「さて…二人ともくつろぐのも良いが聞けよ」
連絡を終え、一段落つくとフィアは部屋の電気を消し、部屋の中央に空中ディスプレイを表示する。空中ディスプレイが現れるとマリーンとスレインは楽しんでいた紅茶をおいて注目する。
「今回の作戦は聞いての通り、この月面基地の安全を確保することになる…今までならカタフラクト一機でも行っていたが今回は宇宙要塞…敵の迎撃は想像を超えるだろう」
「三機でも厳しいじゃないのか?新型がいるんだろ?」
「エデルリッゾ…親衛隊の到着はいつだ?」
「え?はい!少々お待ちを……」
フィアの質問にエデルリッゾは少し慌てながらも思いだすように腕を組み答える。
「最速でも後三日は必要です…」
「そうか…到着が明日なら良かったのだが…敵の脅威がある以上、すぐにでもやるべきだ……幸いな事に敵基地がこの月面基地に最接近するのは30分後だ…15分後にこの月面基地を出なければならない」
「フィアさん、僕のタルシスは間に合いますか?」
「フェインが後五分で仕上げてくれる、座席調整込みでギリギリだろうな…出来るか?スレイン?」
「はい!やって見せます!」
「良い子だ…」
フィアはまるで弟の成長を見た姉のように優しく褒めるとスレインも恥ずかしいのか頭を掻きながら顔を赤くする。
「さて…久しぶりにやるか!フィア!!」
「全く…憎みきれないなお前は……」
「ハッ!!」
「??」
マリーンの言葉にフッと笑いながら呟くと、マリーンは笑いながら部屋を後にしフィアもそれに続く。そんな様子をスレインは少し疑問を抱きながら後に続くのだった。
どうも砂岩でございます!
今回は久しぶりにマリーンとエデルリッゾを出せました…エデルリッゾの方はもっと出したかったのですが……機械があればどんどん出しましょう。
今回は主にフィアとマリーンの和解ですね、最後の方のマリーンはキャラ崩れてませんよ!戦闘でウキウキしてるだけですよ(汗)
まぁ、フィアちゃんにとってもなんだかんだでマリーンは大切な存在の一つですから憎みきれないんですねこれが!
長くなりましたが最後まで読んで頂きありがとうございます。
フィアちゃんを描いてみました!下手なんでご了承ください!!
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