アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり   作:砂岩改(やや復活)

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今回は短めで韻子たちが主役です。


第三十二星 鳴り始める序曲 ーBeginning overtureー

 

 

『でやぁぁぁぁ!』

 

『行くわよ!』

 

シミュレーションルームの一画、そこの閲覧エリアに居るカームとニーナの視線の先にはフィア、伊奈帆チームと戦っている韻子とライエが映っていた。

 

「フィアちゃんと伊奈帆君のってデータでしょ?強いね~」

 

「まぁな、伊奈帆とフィアのデータはあの新芦原の時から揚陸城までのデータを統合して作り上げたデータだ…苦労したぜ」

 

ニーナの言葉に得意げに言うカームはどこか誇らしげだったがよく見ると隈等の疲労の色が見て取れた。

 

「勝てると思う?」

 

「う~ん…3分が限度だな…」

 

カームはそう答えると同時に画面の中のアレイオン二機が爆発するタイマーを見るとカームの予想通りだいたい3分だった。

 

「やっぱりな…」

 

「すご~い、なんで分かったの?」

 

「まぁ…勘かな」

 

ここだけの話、カタフラクトのパイロットをまだ目指していたカームがこのシミュレーターをやって10秒位しか持たなかったのは心に留めておくことにした。

 

『カーム!』

 

「おう!どうだった?」

 

『もう一回やらせて!!』

 

『私からもお願いするわ…』

 

「了解!好きなだけやれ!!」

 

ニーナと話していたカームは韻子とライエの言葉に喜びながら答え、すぐにシミュレーターを再開させるのだった。

 

ーーーー

 

「はぁ…はぁ……」

 

もう何回になるだろう…シミュレーターを何度も繰り返して行っているが倒すどころか反撃の光さえ見えてこない。

 

『どう?そっちは?』

 

「駄目…もう左腕が使えない……」

 

『困ったわね…これじゃ……ッ!』

 

物影に隠れて一旦呼吸を整え、何とか反撃をしようと話していると綺麗な放物線を描きながらグレネードが韻子とライエのアレイオンの間に落ちる。

 

「ッ!」

 

韻子とライエは急いで退避行動を取ると、ちょうど間に弾が落ちたがため結果的に二人が離れてしまった。

 

「しまった!!」

 

その事にすぐさま気づいた韻子はライエと早急に合流しようとするが既に遅かった…04のナンバーが描かれたスレイプニールがナイフを持って迫っていたのだ。

 

「くっ!!」

 

韻子はアレイオンの間接の悲鳴を聞きつつ無理矢理動かし何とか回避する。

 

「やった!!」

 

韻子は思わず歓喜の声を上げる、目の前にいるのはナイフをあて損なり体勢が若干崩れているスレイプニールの姿、確実に当たるであろうナイフを避けられたにしては体勢が崩れなさすぎるがそんな事構わない、やっと一機。

 

「貰った!…ハッ!!」

 

しかしその歓喜は恐怖へとすぐに塗り変わった、伸びきった左腕、その腋からこちらへと覗いているマシンガンの銃口。

 

「読んでた!?」

 

韻子の悲鳴と共にシミュレーターの画面が真っ黒になる、殺されたのだ。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

ボタボタと汗を流しなからシミュレーターの中で俯くと中で響くのは自身の荒い息づかいだけだった。

 

「大丈夫?そろそろ休んだ方が…」

 

「ん?…ありがとう……」

 

そんな時、シミュレーターの扉を開けて入ってきたのはニーナだった、ニーナはタオルと飲み物を持って韻子に差し出すとすぐに受け取り一気に飲み物を飲み干す。

 

「ライエは?」

 

「外で倒れてるよ~」

 

「そっか……」

 

そう言った彼女はライエに見習い外に出ることにした、そして隣で倒れてる相棒と呼べる存在の横に倒れる、熱が篭もったシミュレーターより空調の効いたシミュレーションルームは心地よく、動く気力すら奪っていく。

 

「どうだ?あの二人は?」

 

「これ本当にデータなの?強すぎるんだけど…」

 

「当たり前だろ」

 

倒れた二人に降ってきたカームの言葉に答えたのはライエだった、ライエの質問にカームは当然のように答える。

 

「そう…」

 

「伊奈帆もそうだけどフィアは何手先も計算して動いてる…常に最悪の状況を想定して……それに一番有効な対処を実行してる」

 

「本当に凄いね~あの二人は~」

 

「「まったく……」」

 

ライエと韻子の言葉にニーナがのんびり答えると二人は口をそろえて同意するのだった。

 

「その様子じゃ、今日は無理だな…そろそろ時間だし今日は終わりな、先に戻ってるぜ」

 

「先に食堂で待ってるね~」

 

二人の様子を見たカームとニーナは新しい飲み物を二人の近くに置くとシミュレーションルームを去って行った。

 

「ねぇ…ライエ……」

 

「なに?」

 

「次は……次こそはあの二人にぎゃふんと言わしてやる…」

 

「そうね…必ず見返してやるわ……」

 

韻子の言葉にライエは強く同意すると何の変哲もない天井を見上げる。

この時の二人は何も考えていなかった…いや正確にはデータの向こうの二人にもう殺されたくなく、そしてただ勝ちたいと言う思いだけだった。

 

ーーーー

月面基地、展望室

 

「へっくち!」(風邪かな?)

 

その時、月の展望室から地球を見ていたフィアがくしゃみをしていると背後からとある人物が現れた。

 

「フィア…」

 

「マリーン……」

 

真剣味を帯びたマリーンの雰囲気にフィアは顔を引き締めてマリーンに向き直るのだった。

 

ーーーー

航宙船、ブリッジ

 

「見えてきました、地球です」

 

「望遠で見られるか?」

 

「はい…」

 

ブリッジクルーの言葉に親衛隊副長であるリア・シャーウィンは反応するとブリッジの大型空中ディスプレイに青い地球が映る。

 

「姫様…見えてきました……」

 

「えぇ…そのようね……」

 

リアの言葉に紫の髪を持った少女が短く答える。

 

(あそこに…お姉様が……)

 

しかしその瞳はしっかりと豊かな大地を持った地球を映しているのだった。

 





どうもお久しぶりでございます!
砂岩でございます!
そろそろ役者達が揃いますね!さてどうなるのやら。
そしてシミュレーションのお陰で韻子たちもパワーアップ!本編以上に活躍して貰いましょう!
では!最後まで読んで頂きありがとうございました!

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