アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
ヴァース帝国軍式典用礼服(訓練兵用)…紺色の制服の色を白色にしボタンや袖口等を銀色に装飾している物。(正規兵はその身分の位の制服を白色にし金色に装飾している物)
腰には刃の潰してある装飾されたサーベルか木で出来たボルトアクション式の単発銃を持っている。
「お前は…」
突然のマリーンの登場にフィアは少し警戒するがマリーンは目だけをフィアに向けると話し掛ける。
「お前も大変だな…こんな奴らの相手に付き合わされて…」
「人気者は辛いとでも言っておこうか」
「フッ…「何をしている!!」…思ったより早かったな…」
フィアの言葉にマリーンは笑うと遠くから教官の怒鳴り声が聞こえた。
辿り着いた教官を前にフィアとマリーンは姿勢を正し、倒れていた連中も急いで立ち上がり姿勢を正した。
「貴様らこんな所で何をやっている!」
「合同のレクリエーションであります!教官殿」
「レクリエーションだと?」
「はい…各員の交流をはかっておりました……」
教官の質問にフィアはサラリと嘘を述べマリーンもそれに続く…バレたら何かしらの罰則が待っている。
そんな物を受ける気は全員サラサラないので教官による目線の質問に全員が黙って頷く。
「フッ…交流だと?こんな所でか?まぁいい…次はもっと場所を選べ」
「「「「「ハッ!!」」」」」
フィアとマリーンの言葉に半信半疑だが教官は納得しその場を立ち去る。
教官が食堂の部屋から完全に退出すると全員が一息をつくが吹き飛んだ連中は不満なようだ。
「お前ら……」
「なんだ?レクリエーションの続きでもやるか?」
「チッ!」
しかしフィアとマリーンが睨むと、それ以上仕掛けること無く食堂から出て行ったのだ…それを見届けたフィアとマリーンは時間も無いのでさっさと食事を済ませる事にした。
「そう言えば名乗って居なかったな…フィア・エルスートだ…」
「私はマリーン・クウェル…お前のことは良く聞いている…麗水だろ…」
さっさと食事を済ませた二人は水を飲みながらお互いが向かい合って座り話していた。
元々人と接するつもりは無かったフィアだがどことなくマリーンに親近感を抱いたのが最大の理由だろう。
それはマリーンも同じでこの出来事を境に二人はよく一緒に行動するようになった。
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「明日か…」
「明日だな」
教練生活から半年が過ぎ、フィアは消灯時間までの僅かな間にこの前、貴重な月一の休暇を利用して買った本を読みながらぼやく。
すると近くで課題をしていたマリーンもその呟きに同意し呟く。
教練生活から三ヶ月で成績順に部屋が割り当てられマリーンとフィアは一、二を争う好成績者だった為に一番広い部屋を二人で使っていたのだ。
「式典か…」
フィアは『宇宙戦闘における戦術基本論』を読み終わると静かに呟く。
「いっぱい人が来るんだろうな…」
マリーンの言葉にフィアは顔を僅かに歪める、皇族は自分たちが困窮しているのを尻目に優雅な生活を送っている。
地球に比べたら優雅かどうか分からないが少なくともこのヴァースの現状を考えればそうである。
「ふざけるな…」
「フィア?」
明らかにフィアの声色が変化したのを聞いてマリーンは話し掛けるが当の本人は「寝る…」と言う言葉を残して布団を被ってしまった。
(全く…またか……)
マリーンはそんな姿を見てヤレヤレと言った感じで終えた課題を片づける。
ヴァースの封建制度にフィアが不満を持っているのは知っている。
だからこそ信用できる…その考えは自身が尊敬する人と同じなのだから。
「明日か……」
マリーンは天井を見上げながらもう一度呟く…明日はヴァース帝国の式典が開かれる事になっている。
そしてその式典には勿論、皇族が参加し訓練兵であるフィア達は交通整備や人の誘導などやることは山ほどある。
(皇族が気に喰わないのは分かるけどな…)
マリーンはフィアの態度を見て少し笑いながら自身も布団に潜るのだった。
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フィアside
次の日
ヴァース帝国宮殿に伸びる大通りには多くの人が集まっていた。
「……」
そしてその人だかりが道に漏れないように道路に沿って立っていたのは白い制服ヴァース帝国軍式典用礼服を着込んだフィア達、訓練兵だった。
式典用礼服に身を固めた兵士たちが歩幅を完璧に合わせて進むと兵が持っていたヴァース帝国の帝国旗が緩やかに揺れる。
「おい!上を見ろ!」
「おぉ!!すげー!」
上にはアセイラム親衛隊に渡る前、宮殿防衛隊に所属しているベルガ・ギロスがビームフラッグでヴァース帝国旗を形成しながらゆっくりと飛ぶ。
そんな中、上で優雅に飛ぶベルガ・ギロスもそれに喜ぶ民衆もフィアには目障りでしかなかった。
すると多数の兵士に囲まれながら現れた車には金髪の髪をなびかせた少女が乗り、優しく手を振る。
「「「「おぉ!!」」」」
可憐な少女が手を振ることで一部の民衆が喜びの声を上げる。
(ヴァース帝国第一皇女…アセイラム・ヴァース・アリューシア)
教練所の座学で姿を知っていたフィアはアセイラムを見るとほんの僅かだが睨みつけるのだった。
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アセイラムside
ベルガ・ギロスがビームフラッグを掲げ、民衆が喜びの声を上げる。その前に立つ兵士も尊敬の眼差しを向けるのがほとんどだ。
しかしその中にアセイラムはフッと違う視線を感じた。
(なに?)
当時のアセイラムは暖かな環境でしか育っていなかったためにフィアから発せられた“敵意“が分からすにただ感じた方を見る。
(綺麗な人…)
フッ目を向けた先には僅かな敵意を滲ませるフィアの姿がある、しかしアセイラムが受けた印象は違う物だった。
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対照的な印象を持つ2人が初めて出会ったのはこの時…この時2人は思いもしなかったであろう。
主を心から愛し、尊敬する忠誠の騎士になろうとは…
その騎士の幸せを心から願いながらも何も出来ないことに悲しむことになろうとは……。
どうもお久しぶりです。砂岩でございます!
更新の方も少しの時間でチョイチョイ書いているのでこんなに遅く…本当に申し訳ありません。(泣)
式典の様子のイメージはガンダムF91のクロスボーンバンガードがコロニー占拠後に行った式典をイメージしてます。
チョイチョイに書いたので何かちょっと違和感…おかしな所があったらよろしくお願いします!