アルドノア・ゼロ 忠義は主君と共にあり 作:砂岩改(やや復活)
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連合本部強襲から半年…月面基地ではフィアが目覚めその真実を知った数日後…月の司令室ではザーツバルムがおりスレインからフィアの様子を聞いていた。
「して…エルスート卿の様子はどうだ?スレイン」
「はい…アセイラム姫を見た後は酷く落ち込んでいましたが昨日から食事も摂れるようになられています」
「そうか…」
ザーツバルムはスレインの報告を聞き少し感心する…本当は最悪の事態も考えていた彼だがフィアは騎士である事を心得ている…騎士とは時にはその命を持って主の命を守る者であるが決して命を捨てることが忠義では無い…主の為に行動する…それが常識であり義務である……それを分かっているフィアにザーツバルムは密かに評価を上げる。
「ザーツバルム卿…エルスート卿には全てを話すのですか?貴方のことも……」
「……それはお主が決めよ…スレイン…」
「え…」
ザーツバルムの言葉にスレインは驚く…事の全てを話せば後ろから撃たれかねないと言うのにそれを自分に任せるなど普通ではあり得ない。
「スレインよ…私は目的の為ならどの様な事もする…我は民を統べ、導く者だ…手を汚すことは厭わん…我は我が正しいと思うことを全力で成すのみ…彼女にも譲れない正義があるのだ…それが私と相対するなら…この命が亡くなろうとも文句は言わん…もちろんスレイン…お主に殺されてもな…」
「ザーツバルム卿……」
ザーツバルムの言葉にスレインはただ黙るしかなかった。
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フィアside
「フィア?」
「全く情けない…これでは姫様に合わせる顔がない…」
フィアに用意された部屋には来客用の椅子に座るエデルリッゾと古風な机に備えられた椅子に座るフィアが居た…フィアはそう言うと立ち上がり杖を取って騎士服を羽織り立ち上がると部屋を出る…それを見たエデルリッゾは慌てて追いかける。
「どこに行くのです!」
「月面基地の司令室だ…ザーツバルム伯爵が居る筈だろう…」
「何をしに…」
「悲しむのは止めた…私は今、姫様に出来る事を全力でやる、ただそれだけだ…」
この前の状態とは打って変わっていつも通りのキリッとした顔に迷いの無い言葉にエデルリッゾは安心しながらフィアに着いていくのだった。
「失礼します…」
「フィアさん!」
「エルスート卿…」
司令室に入ったのを見たスレインは若干驚き、ザーツバルムは堂々とした態度でフィアの方に向き直るとフィアはザーツバルムに要件を話す。
「ザーツバルム伯爵…謁見の間の使用を許可して下さい…」
「謁見の間?何に使うのだ?」
「私のやれる事をやる為に…」
「………」
「………」
「…分かった……しかし…一つやって貰いたい事がある…」
ザーツバルムとフィアはしばらくの間向かい合うとザーツバルムは許可を出し一つ要件を言うとフィアはしばらく考え了承するのだった。
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フィアは制服を正し謁見の間に入ると中央の石に手を添えて起動させる…するとたった今までの狭い個室が巨大な広場になり、そこにヴァース帝国を納める皇帝…レイレガリア・ヴァース・レイヴァースが姿を現しフィアは杖を横に置きながら跪く。
「フィア・エルスート…参上いたしました…」
「うむ…久しいな…アセイラムが地球で怪我をしたと聞いたが…どうだ?」
「ハッ!姫様は現在、安らかにお眠りになられております…」
フィアは言葉を発しながらも自身に嫌悪感を抱く…いくら安心させる為とは言え…嘘当然の事を発しているのだ……しかし皇帝は今病に伏せっている時…悪い情報は出来るだけ避けて通りたい…そんなフィアを見ながら皇帝は安心したようにする。
「そうか…して…今回は何のようだ?」
「ハッ!許可を頂きに参上いたしました……親衛隊の使用許可を……」
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ザーツバルムside
月面基地司令室…そこでザーツバルムは密かに思案していた…月面基地自体は元々マリーンの働きで自身の配下が半ば占拠している状態だがそこに親衛隊が加わる…親衛隊は身分の低い者達の集まりだが実力はトップクラスの猛者達……その中でトップに立つフィアはアレイオンでゼダスを倒す化け物なのだ…それに続く親衛隊隊員はそれに等しい実力の持ち主……当然頭も切れるだろう。
「計画に支障が出なければ良いが…」
ザーツバルムの計画は終わっていない…封建制度を廃し人の尊厳を取り戻す為に…オルレインの為にこの命が尽きるまで諦める訳にはいかない。
「フッ……騎士たる者…牙向く者を倒すのは凡庸…牙向かせぬ程に格差を見せつける事こそが肝心……」
ザーツバルムはそう呟くと静かに笑うのだった。
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フィアside
レイレガリア皇帝から許可を頂いたフィアは謁見の間を操作すると場所が変わり、突然フィアを囲むように五つの人影が現れる…それを見たフィアは静かに笑うと話しかける。
「久しぶりだな…みんな……」
そこに現れフィアの正面に立つのは紫の髪をフィアと同じように伸ばした少女…彼女はしばらくの沈黙の後、口を開き話す。
「お久しぶりです…隊長……地球で行方不明と聞いて気を揉みました…」
「あぁ…すまない……」
「まっ!流石は我らの隊長!私たちが心配するまでも無かった訳だ!」
副隊長であるリアとフィアが話してるとフィアの左側に居た褐色の肌に紺色の髪をショートにした少女…ネールが元気に笑うとリアが叫ぶ。
「この馬鹿が!ここはシリアスに進めるのが常識でしょうが!?」
「まぁまぁ」
「お二人とも…まずは隊長の無事をお喜びするのが先かと…」
「………」
「え…どうしましょうか…」
そんなリアとネールのやり取りを、金髪を背中まで伸ばし途中で一カ所束ねている髪型の隊員ジュリが硬い声色で止めるが二人の口論は絶えない…それを興味なさそうに直立不動で待つのが肩まで伸ばしている黒髪が特徴のシルエとそれを見てウロウロするウェーブした茶髪を持ったケルラ……そんな光景を見てフィアは笑うと真剣な声色で話し始める。
「総員!傾聴!」
フィアの一言で場は収まり全員が直立不動で立つ…その顔には先程の呑気な影は無く真剣な表情をしていた。
「レイレガリア皇帝陛下の許可を頂き…貴様らは月面基地に向かって貰うと同時に、これからデータを送る人物を月面基地まで護衛する!その任務完了後…正式に私の指揮下で行動して貰う…それまで副隊長であるリアの指揮の下で行動せよ!以上だ!」
「「「「「了解!」」」」」
親衛隊の五人が返事をするとフィアは敬礼をし謁見の間の機能を切ると部屋は薄暗い空間に戻る…あれ程騒いでいた親衛隊のメンバーをたった一言で収める…親衛隊のフィアへの信頼と尊敬がよく分かる一面であると同時に各メンバーの練度の高さを覗えるものであった。
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マリーンside
「ほぅ…これが……」
「はい…まだ調整が必要ですが…ディオスクリアの再建造の為のパーツを取り寄せた時に一緒に…」
月面基地格納庫…そこにはヴァース本国からの長距離輸送艦が入港しており仕入れの備品をチェックする兵の中にマリーンが居た…本当なら目を覚ましたフィアに一言言うべきなのだろうがマリーン自身…どんな顔をして会えば良いか分からなかった…もちろん揚陸城の戦いの事は後悔していないがマリーンはまだ心が未成熟な時期…まして戦争における殺し合いの経験などある訳も無く…会えずに居た。
「試作兵器か…名は?」
「XVM-FZC『レギルス』と言う物です…」
「レギルス…聞いたことがあるな……」
「クウェル卿もですか…七年前に設計図が発見されたのですが当時のヴァースの技術では再現出来なかったらしいです…ですがクウェル卿のゼダスの戦闘データとエルスート卿のシナンジュの調整データを元に機体自体は完成したらしいですね…」
「なる程…そんなに恐ろしい技術を使っているのか…」
マリーンは輸送艦から運ばれる機体を見てそう呟く…赤、青、白のトリコロールでマリーンの愛機であったゼダスと同じスリット状のメインカメラ…背部に羽根のような物と腰の下からは尻尾のようなビームキャノンを装備しており恐竜の様なデザインだ。
実のところ…機体自体は性能の違いはあれどゼダスと比べても特筆すべき技術は使われていない…問題は装備である…レギルスのシールドに内蔵されているビームビット生成機関は今までに無い凶悪な兵器であり、それを操るパイロットはかなりの負担を担わなければならない。
(果たして…私に扱えるかどうか…)
マリーンは心の中で呟き運ばれていくレギルスを見つめるのだった。
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「アナリティカル・エンジン…」
「えぇ…現在研究中ですがほとんど確立されています…付けてみる気はありますか?」
そして地球…そこで一つの決断を提示された少年の姿があった…名は界塚伊奈帆…揚陸城の一件の後…左眼を失った彼は軍上層部にアナリティカル・エンジンを左眼の代わりとして移植する事を提案されていた。
世界で初めて…最も多く火星騎士のカタフラクトを倒した伊奈帆は地球連合としても喉から手が出るほど欲しい人材だ…片眼を失った状態よりも移植してその力を何倍にも拡げる事が出来るならその方が良い…その為ならどんな事だって地球連合はしてくれるだろう…そう思った伊奈帆の決断は姉であるユキの判断を待つ必要は無かった…。
(もし研究中の技術でも僕が戦力として価値があるなら軍は見捨てない…)
「分かりました…お受けします…」
もう二度とあの様な後悔はしたくない…伊奈帆のその強い思いは微かな打算と共に決断を下したのだった。
どうも砂岩でございます!
フィアとマリーンの確執はまだまだですがゆっくりと解決していきたいと思います。
そして親衛隊の初登場!まぁ親衛隊の護衛対象はお分かりの方も多いと思います通称…にんに…ゲフン、ゲフン…。
フィアがその護衛対象を認めたのには理由があるのですがそれはまた次回で…。
アニメしか見ていないですからいつどういう風に伊奈帆がアナティカル・エンジンを付けたかは完全に想像ですね。
では最後まで読んで頂きありがとうございました!